説明

照明装置

【課題】発熱を抑制して延命と低消費電力を実現することのできる照明装置を提供する。
【解決手段】所定の交流電圧を生成する電圧生成手段50と、内部に所定のガスが充填され、両端部に一対の電極が設けられた照明管9とを備え、前記電圧生成手段50により電流を抑えた高電圧を生成し、前記一対の電極の一方21に前記電流を抑えた高電圧を印加して該一対の電極間に所定の電位差を形成し、前記一方の電極21から放電させて前記照明管9を点灯させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のガスを封入した照明管内で放電させ、前記照明管を発光させる照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蛍光管の点灯装置の構成として、熱電極型と呼ばれるものがある。この熱電極型の点灯装置は、例えば図6に示すように安定器60とグローランプ61(点灯管)とを有している。安定器60は、蛍光管62の点灯を安定に維持するための電流制限素子として機能し、グローランプ61は、蛍光管62を点灯させるための放電管として機能する。
【0003】
蛍光管62の点灯の際には、グローランプ61による放電後、内部に例えば水銀ガスが充満されている蛍光管62において、フィラメント53が熱せられ、電子が放出される。そして、放出された電子が水銀ガスに衝突することによって電位が上昇し、その電位が基底レベルに下がる際、紫外線を発し、蛍光管内部に付着させた蛍光物質に当たって発光する。
【0004】
ところで、このような従来の蛍光管の点灯装置にあっては、フィラメント63が高温に発熱する。そのため、点灯を重ねるごとにフィラメント63が切断されやすくなり、蛍光管としての寿命が短くなる。蛍光管が寿命に達すると点滅、ちらつき、不点灯等が発生し、使用に堪えられないため、そのような不具合の発生前に蛍光管を交換したいという要求(課題)があった。
このような課題に対し、特許文献1においては、蛍光管の電極間にパルス電圧を発生させて点灯させる回路において、電極間のパルス電圧を計数し、所定のパルス数を超えた場合に、寿命が近いと判断する蛍光灯装置が開示されている。
【特許文献1】特開2005−123027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の蛍光灯装置によれば、蛍光管の不具合が発生する前に、その寿命を検出することができる。
しかしながら、特許文献1に開示の蛍光灯装置にあっては、蛍光管の寿命を検出することはできても、フィラメントを用いた蛍光管に対する寿命検出を行うものであるため、発熱や寿命(延命)の問題、点灯以外に使用する消費電力の問題等に関しては解決することができなかった。
【0006】
本発明は、前記したような事情の下になされたものであり、発熱を抑制して延命と低消費電力を実現することのできる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためになされた、本発明にかかる照明装置は、所定の交流電圧を生成する電圧生成手段と、 内部に所定のガスが充填され、両端部に一対の電極が設けられた照明管とを備え、前記電圧生成手段により電流を抑えた高電圧を生成し、前記一対の電極の一方に前記電流を抑えた高電圧を印加して該一対の電極間に所定の電位差を形成し、前記一方の電極から放電させて前記照明管を点灯させることに特徴を有する。
【0008】
このように、照明管の一方の電極を低電流・高電圧の状態とすることにより、その電極からの放電を発生させ、照明管を点灯させることができる。
特に、照明管が蛍光管の場合、従来の蛍光管点灯装置のように、グローランプや蛍光管電極におけるフィラメントを用いる必要がない。
したがって、従来の蛍光管点灯装置よりも発熱が抑制され、また、低電流であるため消費電力を格段に低く抑えることができる。
また、蛍光管においてフィラメントを必要としないため、蛍光管の寿命を延命することができ、蛍光管の点滅、ちらつき、不点灯といった不具合を解消することができる。
【0009】
また、前記電圧生成手段は、所定周波数の交流電圧を生成する正弦波生成手段と、前記正弦波生成手段により生成された交流電圧を昇圧する昇圧手段とを備え、前記昇圧手段は、昇圧トランスと該トランスの一次側に配置された共振用コンデンサとにより並列共振回路を構成し、前記トランスの二次側において電流を抑えると共に電圧を昇圧することが望ましい。
このように構成することにより低電流で高電圧の状態を生成し、照明管内で放電させて点灯させることができる。
【0010】
また、前記照明管は、直列に複数接続され、前記各照明管に夫々並列接続された複数の放電管を備え、前記放電管の放電電位は、前記照明管の放電電位よりも高く設定されていることが望ましい。
このように照明管を直列に複数本接続することにより、それらを点灯させることができる。
また、各照明管に放電管を並列接続し、放電電位を前記のように設定することにより、直列接続された複数の照明管のうち、いずれかが不具合により点灯不可能となった場合に、放電管により放電し後続の照明管に電圧を印加することができる。
【0011】
また、前記照明管の側方に設けられた反射板及び該反射板と前記照明管との間に設けられた板状の絶縁体、若しくは、前記照明管の側方に設けられ、高分子の絶縁体により全体が形成された反射板を備えることが望ましい。
このように構成することにより、放電された電子が照明管器具の反射板の金属表面に達することがなく、放電された電子の導通路が形成されるという問題を解決することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発熱を抑制して延命と低消費電力を実現することのできる照明装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明にかかる実施の形態につき、図に基づいて説明する。図1は、本発明に係る照明装置の全体構成並びに、その回路構成を示す図である。
図1の回路図に示すように、この照明装置100は、所定の交流電圧を生成する電圧生成部50(電圧生成手段)と、点灯を行う照明管部51とで構成される。電圧生成部50においては、先ず通常の交流電源(例えば100V)を整流回路1により直流電源に変換し、コルビッツ形の発振回路2により所定の周波数(矩形波)が得られる。
発振回路2の出力である所定周波数の矩形波は、コイル3の帰還ループ等により生成されるが、コンデンサ4とトランス5により所定周波数の正弦波となされる。
尚、これら整流回路1、発振回路2、コイル3、コンデンサ4、トランス5等により正弦波生成手段が構成される。
【0014】
また、トランス5は、電流センサとして機能し、出力電流を制限するため、最終段のトランス6(昇圧トランス)にリーケージトランスを用いる必要はない。トランス6は、一般的な昇圧トランスが用いられる。
また、トランス6の一次側には共振用のコンデンサ7、8が配置され、コンデンサ7の並列共振により所定の周波数において流れる電流が最小限に抑えられる。また、同時にコンデンサ8により交流波形が共振され、トランス6の二次側において高電圧が発生する。即ち、出力電圧を共振で昇圧しながら、電流は低く抑えられた状態となされる。このように、トランス6、コンデンサ7,8により昇圧手段が構成される。
また、トランス6の二次側は、一端が接地され、他端に負荷である照明管部51が設けられる。
【0015】
照明管部51は、蛍光管9(照明管)が複数本、直列に接続されて設けられる。複数接続された最後の蛍光管9の終端は接地状態となされる。
即ち、トランス6の二次側に接続された最初の蛍光管9の一方の電極は、電源投入されると、低電流で高電圧の状態となされる。これにより、その電極から放電し、最初の蛍光管9が点灯する。そして、最初の蛍光管9を介して後続の蛍光管9の一方の電極に電圧が印加され、同様に点灯する。さらに後続の蛍光管9も同様にして次々と点灯するように構成されている。
【0016】
また、各蛍光管9には並列に放電管10が接続され設けられている(放電管同士は直列接続)。これは、直列接続された複数の蛍光管9のうち、いずれかが不具合により点灯不可能となった場合に、放電管10により放電し、後続の蛍光管9に電圧を印加するための構成である。即ち、放電管10の放電電位は、蛍光管9の放電電位よりも高く設定されており、通常は、蛍光管9で放電され、蛍光管9の断線や脱落等の発生時のみ放電管10で放電し、後続の蛍光管9に通電するようになされている。
【0017】
図2は、本発明に係る照明装置100で使用される蛍光管9の一方のステム部周辺の断面図である。図示しない他方のステム部も、同様の構成であるため、ここでは一方のみの説明を行う。
図2に示すように、蛍光管9においては、紫外線により発光する蛍光体13の膜が内面に形成されたガラス管12の端部に口金11が取り付けられている。この口金11には例えば2本のステム14が貫通し、それらの一端は、口金11の外側に端子として突出している。
【0018】
また、口金11のガラス管12側には、ラッパ状の金属筒15が、ガラス管12内方向に筒口15aが拡がる状態で設けられている。前記ステム14の他端は、前記金属筒15の内側に貫通し、その先端に電極としてリード線21が接続され、それらは前記筒口15a付近で折り曲げられている。
この構造は、金属筒15がラッパ型の形状であることにより、その内面から電子をより放出し易くすると同時に、それをリード線21が誘導し、反対面にある電極は同形状により電子を捉え易くなるという理由による。
また、ガラス管12内には、例えば、放出された電子と衝突することにより紫外線を発するための所定のガス(水銀ガス等)が封入されている。
【0019】
この構成において、一方の電極に電流を抑えた所定の高電圧(例えば6000V)が印加されると、電子が放出され、管内で対向する他方の電極に到達する。尚、電極に設けられている2本のステム14は、蛍光管9の取り付けに必要なだけであり、管内部では接続されているので同電位である。
一方の電極から対向する他方の電極に向けて電子が放出されると、放出された電子がガラス管内のガスに衝突して電位が上昇する。そして、その電位が基底レベルに下がるときに紫外線が発生し、この紫外線が蛍光体13に当たることにより照明管9が点灯状態となる。
【0020】
このように、照明装置100においては、蛍光管9の一方の電極を低電流・高電圧の状態とすることにより、その電極からの放電を発生させ、蛍光管9の点灯がなされる。即ち、従来の蛍光管点灯装置のように、グローランプや蛍光管電極におけるフィラメントを用いる必要がない構成となされている。
【0021】
また、本発明に係る照明装置100で用いられる蛍光管9においては、ガラス管12の内側だけでなく、外側においても若干の放電が生じる。そのため、この蛍光管9を従来の蛍光灯器具に取り付けた場合、放電された電子が蛍光灯器具の反射板の金属表面に達し、そこに導通路が形成されるという問題がある。
【0022】
この問題を解決するには、図3に示すようにカバー16内に設けられた反射板17において、蛍光管9側(蛍光管9と反射板17との間)に例えば薄い無色透明の絶縁板18(板状の絶縁体)を貼り付けて設ければよい。この絶縁板18の取り付けは、例えば図4に示すように、反射板17及び絶縁板18を貫通する孔19を複数個所に形成し、その孔19に絶縁体で形成されたリベット20を嵌合し固定することにより行うことができる。
尚、前記構成の他、取り付け金具や反射板全体を絶縁性を有する高分子材料で形成してもよい。
【0023】
以上のように、本発明に係る実施の形態によれば、照明装置100において、蛍光管9の一方の電極を低電流・高電圧の状態とすることにより、その電極からの放電を発生させ、蛍光管9を点灯させることができる。
即ち、従来の蛍光管点灯装置のように、グローランプや蛍光管電極におけるフィラメントを用いる必要がない。
したがって、従来の蛍光管点灯装置よりも発熱が抑制され、また、低電流であるため消費電力を格段に低く抑えることができる。
また、蛍光管9においてフィラメントを必要としないため、蛍光管の寿命を延命することができ、蛍光管の点滅、ちらつき、不点灯といった不具合を解消することができる。
【0024】
尚、前記実施の形態においては、点灯させる照明管として蛍光管を例に説明したが、本発明に係る照明装置により点灯可能な照明管は、蛍光管に限定されず、内部にネオンガスが封入されたネオン管を用いることもできる。
【実施例】
【0025】
続いて、本発明に係る照明装置について、実施例に基づきさらに説明する。本実施例では、前記実施の形態に示した構成の照明装置を用い、実際に実験を行うことにより、その効果を検証した。
〔実施例1〕
図5に示すように、電圧生成部50に照明管部51を接続した構成とし、照明管部51に、20本の蛍光管9を直列に接続した。
この構成において、入力電圧を徐々に上げ、蛍光管9の発光輝度が十分な時点での入力電圧及び電流を測定した。
その結果、入力電圧は80V、電流は3.0Aであった。即ち、消費電力は240Wであり、蛍光管9の一本あたりの消費電力は12Wとなった。
また、蛍光管9の表面温度は、室温に対して+1℃の上昇に止まった。
【0026】
〔実施例2〕
実施例1で用いた構成のうち、照明管部51に蛍光管ではなく、長さ50cmのネオン管を20本直列に接続した。直列接続されたネオン管の最終端は接地状態とした。
この構成において、入力電圧を徐々に上げ、ネオン管の発光輝度が十分な時点での入力電圧及び電流を測定した。
その結果、入力電圧は80V、電流は3.5Aであった。このとき、消費電力は280Wとなり、1本あたりの消費電力は14Wとなった。
一般にネオン管の長さは様々であるが、20本のネオン管を1本と捉えても、従来ネオン管の点灯に必要な最高電圧は15000Vであるため、格段に消費電力が抑えられた。
【0027】
以上の実施例の結果、本発明に係る照明装置によれば、発熱が抑制され、また、低電流により消費電力が格段に低く抑制されることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明にかかる照明装置は、所定のガスを封入した照明管内で放電させ、該照明管を発光させる照明装置に関し、照明装置等の製造業で好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明に係る照明装置の全体構成並びに、その回路構成を示す図である。
【図2】図2は、図1の照明装置で使用される蛍光管の一方のステム部周辺の断面図である。
【図3】図3は、図2の蛍光管が取り付けられる蛍光灯器具の側面図である。
【図4】図4は、図3の蛍光灯器具において、反射板に対する絶縁板の取り付け方法の一例を示す断面図である。
【図5】図5は、実施例の概略構成を示す図である。
【図6】図6は、従来の蛍光管点灯装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 整流回路(正弦波生成手段)
2 発振回路(正弦波生成手段)
3 コイル(正弦波生成手段)
4 コンデンサ(正弦波生成手段)
5 トランス(正弦波生成手段)
6 トランス(昇圧手段、昇圧トランス)
7 コンデンサ(昇圧手段、共振用コンデンサ)
8 コンデンサ(昇圧手段、共振用コンデンサ)
9 蛍光管(照明管)
10 放電管
50 電圧生成部(電圧生成手段)
51 照明管部
100 照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の交流電圧を生成する電圧生成手段と、
内部に所定のガスが充填され、両端部に一対の電極が設けられた照明管とを備え、
前記電圧生成手段により電流を抑えた高電圧を生成し、
前記一対の電極の一方に前記電流を抑えた高電圧を印加して該一対の電極間に所定の電位差を形成し、前記一方の電極から放電させて前記照明管を点灯させることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記電圧生成手段は、所定周波数の交流電圧を生成する正弦波生成手段と、
前記正弦波生成手段により生成された交流電圧を昇圧する昇圧手段とを備え、
前記昇圧手段は、昇圧トランスと該トランスの一次側に配置された共振用コンデンサとにより並列共振回路を構成し、前記トランスの二次側において電流を抑えると共に電圧を昇圧することを特徴とする請求項1に記載された照明装置。
【請求項3】
前記照明管は、直列に複数接続され、
前記各照明管に夫々並列接続された複数の放電管を備え、
前記放電管の放電電位は、前記照明管の放電電位よりも高く設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された照明装置。
【請求項4】
前記照明管の側方に設けられた反射板及び該反射板と前記照明管との間に設けられた板状の絶縁体、
若しくは、前記照明管の側方に設けられ、高分子の絶縁体により全体が形成された反射板を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−32437(P2009−32437A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193022(P2007−193022)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(507251398)株式会社シナジー総合研究所 (1)
【出願人】(507251435)株式会社つくばジェネシス (2)
【Fターム(参考)】