説明

照明装置

【課題】部品点数の削減と薄型化を図ることができるとともに、密閉防水構造の簡略化を図ることができる照明装置を提供すること。
【解決手段】
LED(光源)4を搭載した回路基板5を備え、同心の球面を備えた半球状のレンズ6とジョイント7を、前記回路基板5を挟んでこれの両側に配置して成る光学モジュール3と、
前記光学モジュール3を回動可能に保持するように、開口部2aが設けられたハウジング2と、
前記ハウジング2の開口部2a周縁は、前記レンズ6の球面に当接し、該ハウジング2に固定されて前記ジョイント7の球面に当接するサスペンション11と、を有する照明装置1において、
前記レンズ6の球面に当接する前記ハウジング2の開口部2a及び前記レンズ6の球面に防水用ラバー(弾性部材)9を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全方向に回動可能な光学モジュールを備えた車両用ルームランプ等の照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両の天井に設置されるルームランプとして、光源及びレンズを備える光源部(光学モジュール)を回転させることによって照射方向を変更可能としたものが特許文献1等において提案されている。斯かるルームランプは、光源部を互いに直交する2つの回転軸を中心として回転可能に支持することによって照射方向を自由に変更することができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−083792号公報
【特許文献2】特開2009−083794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のルームランプにおいては、光源部を互いに直交する2つの回転軸を中心として回転させる機構が必要であるために部品点数が増える他、厚さが厚くなって全体に大型化するという問題があった。
【0005】
又、光源部の可動構造が2軸によって制限されているため、密閉防水機構の点数が増えて構造が複雑化するという問題もあった。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、部品点数の削減と薄型化を図ることができるとともに、密閉防水構造の簡略化を図ることができる照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
光源を搭載した回路基板を備え、同心の球面を備えた半球状のレンズとジョイントを、前記回路基板を挟んでこれの両側に配置して成る光学モジュールと、
前記光学モジュールを回動可能に保持するように、開口部が設けられたハウジングと、
前記ハウジングの開口部周縁は、前記レンズの球面に当接し、該ハウジングに固定されて前記ジョイントの球面に当接するサスペンションと、を有する照明装置において、
前記レンズの球面に当接する前記ハウジングの開口部及び前記レンズの球面に弾性部材を設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記弾性部材は、前記ハウジングの開口部周縁と、前記レンズ球面の当接範囲に設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記回路基板の周囲にリング状の電力供給ガイドを取り付け、前記レンズの球面に摺接する円弧部を有して前記電力供給ガイドに当接する第1の電力供給端子を前記ハウジングに固定するとともに、前記ジョイントと前記サスペンションを金属で構成し、前記サスペンションに形成された第2の電力供給端子を前記ジョイントの球面に当接させたことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記弾性部材は、防水用ラバーであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、光学モジュールをハウジングに対して全方向に回動させて照射方向を自由に変更することができ、光学モジュールを従来のように2軸回りに回転させる必要がないため、構造が単純化して部品点数が削減されるとともに、大きな厚みを必要としないために装置の薄型化が可能となる。
【0012】
又、光学モジュールを構成するレンズとジョイントを同心の球面を備えた半球状としたため、光学モジュールの姿勢に関係なく該光学モジュールの保持モーメントの方向は常に一定に保たれるため、レンズとこれを保持するハウジングの開口部周縁とが常に円で接し、ハウジングの開口部周縁に防水用ラバーを設けるだけの簡単な構成によってハウジングと光学モジュールとの密閉と防水を確実に行うことができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、レンズの球面にも防水用ラバーを設けたため、ハウジングと光学モジュールとの密閉と防水が一層確実になされる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、光学モジュールの姿勢に関係なく第1の電力供給端子と電力供給端子及びジョイントと第2の電力供給端子との接触が確実になされ、これらを介してLEDへの給電がなされるためにワイヤーハーネス等を用いた配線が不要となり、給電構造を簡素化することができる。又、ジョイントとサスペンションを金属で構成したため、LEDにおいて発生した熱をジョイントからサスペンションを経て周囲に放熱させることができ、LEDの温度上昇を抑えて発光効率の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る照明装置の直下照射時の状態を示す側断面図である。
【図2】本発明に係る照明装置の斜め照射時の状態を示す側断面図である。
【図3】本発明に係る照明装置の平面図である。
【図4】本発明に係る照明装置のサスペンションを取り外して示す平面図である。
【図5】本発明の変更例に係る照明装置の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明に係る照明装置の直下照射時の状態を示す側断面図、図2は同照明装置の斜め照射時の状態を示す側断面図、図3は同照明装置の平面図、図4は同照明装置のサスペンションを取り外して示す平面図である。
【0018】
本実施の形態1に係る照明装置1は、車両の天井に設置されるルームランプであって、樹脂にて略円筒状に一体成形されたハウジング2によって光学モジュール3を全方向に回動可能に保持して構成されている。
【0019】
上記光学モジュール3は、光源であるLED4を搭載した円板状の回路基板5を備え、同心(中心点Oが同一位置にある)球面を備えた半球状のレンズ6とジョイント7を前記回路基板5を挟んでこれの両側(下側と上側)に配置して構成されている。ここで、回路基板5には不図示の配線パターンが形成されており、その周囲には金属製の電力供給ガイド8が固定されている。又、レンズ6は、透明樹脂によって構成されて回路基板5の下面に取り付けられており、ジョイント7は、導電性及び熱伝導性の高い金属によって構成されて回路基板5の上面中心部に取り付けられている。
【0020】
前記ハウジング2の底部には円形の開口部2aが形成され、この開口部2aの周縁には弾性部材である防水用ラバー9が取り付けられている。そして、ハウジング2の内部に収容された光学モジュール3を構成するレンズ6の球面はハウジング2の開口部2aの周縁に前記防水用ラバー9を介して当接しており、該レンズ6の球面の一部はハウジング2の開口部2aから下方へ突出している。このようにレンズ6の球面が防水用ラバー9を介してハウジング2の開口部2aの周縁に当接することによって、光学モジュール3はハウジング2によって全方向に回動可能に保持されている。
【0021】
又、図3に示すように、ハウジング2の内周部の周方向3箇所にはブロック状の係止部2Aが周方向に等角度ピッチ(120°ピッチ)で一体に形成されており、これらの係止部2Aの中間には計3つの円柱状のボス2Bが周方向に等角度ピッチで一体に形成されている。そして、各係止部2Aには直線状の係止溝2bがそれぞれ形成され、各ボス2Bにはネジ孔2cがそれぞれ形成されている。
【0022】
ハウジング2に形成された各係止部2Aには金属製の第1の電力供給端子10がそれぞれ固定されている。ここで、各第1の電力供給端子10は、V字状に折曲成形されており、その一端は光学モジュール3のレンズ6の球面に摺接する円弧部10aを成しており、他端は折り曲げられて係止片10bを構成している。そして、各第1の電力供給端子10は、その係止片10bをハウジング2の各係止部2Aに形成された係止溝2bに差し込んで係止することによってハウジング2に固定され、該第1の電力供給端子10の円弧部10aは光学モジュール3のレンズ6の鏡面に摺接し、該円弧部10aは電力供給ガイド8に接触している。
【0023】
又、ハウジング2の上面開口部には円板状のサスペンション11が取り付けられている。このサスペンション11は、導電性及び熱伝導性の高い金属によって構成され、図4に示すように、その中心部には切り起こしによって3つの第2の電力供給端子11aが周方向に等角度ピッチ(120°ピッチ)で形成されており、各第2の電力供給端子11aの中心部に向かう先端部はジョイント7の球面に当接して光学モジュール3全体を下方に押圧している。従って、光学モジュール3はハウジング2からの浮き上がりが第2の電力供給端子11aによって防がれており、該光学モジュール3は全方向に回転可能な状態でハウジング2内に収容されている。ここで、図4に示すように、サスペンション11の周囲には3つの円孔11bが周方向に等角度ピッチで形成されており、サスペンション11は、各円孔11bに挿通する不図示のネジをハウジング2の各ボス2Bに形成されたネジ孔2c(図4参照)にねじ込むことによってハウジング2の上部に取り付けられている。
【0024】
而して、以上のように構成された照明装置1において、第1の電力供給端子10から電力供給ガイド8、回路基板5、LED4、回路基板5、ジョイント7及び第2の電力供給端子11aの順に電流が流れることによってLED4が駆動されて発光するが、図1に示すように光学モジュール3が垂直に保持されている場合には、LED4からの光Lはレンズ6を通過することによって拡散して真下の円形スポット状の照射エリアA1を照らす。
【0025】
そして、図1に示す状態から光学モジュール3を回動させて図2に示すように垂直に対して傾斜させると照射方向が変えられ、LED4からの光Lはレンズ6を通過することによって拡散して真下からずれた照射エリアA2を照らす。このように光学モジュール3を自由に回動させることによって照射方向を任意に変更することができるが、該光学モジュール3の半球状のレンズ6とジョイント7の球面の中心点Oは同一位置にあるため、この中心点Oを中心として光学モジュール3が回動し、この中心点Oの位置は不変であって、光学モジュール3の姿勢に関係なく該光学モジュール3の保持モーメントの方向は常に一定に保たれる。このため、レンズ6とこれを保持するハウジング2の開口部2aの周縁とが防水用ラバー9を介して常に円で接し、ハウジング2の開口部2aの周縁に防水用ラバー9を設けるだけの簡単な構成によってハウジング2と光学モジュール3との密閉と防水が確実になされる。
【0026】
又、光学モジュール3がどのように回動しても、第1の電力供給端子10の円弧部10aはレンズ6の球面に摺接し、該円弧部10aは電力供給ガイド8に常に接触するとともに、第2の電力供給端子11aの先端部はジョイント7の球面に接触するため、LED4への給電が常に安定的になされ、ワイヤーハーネス等を用いた配線が不要となり、給電構造を簡素化することができる。
【0027】
以上のように、本実施の形態に係る照明装置1によれば、光学モジュール3をハウジング2に対して全方向に回動させて照射方向を自由に変更することができ、該光学モジュール3を従来のように2軸回りに回転させる必要がないため、当該照明装置1の構造が単純化して部品点数が削減されるとともに、大きな厚みを必要としないために薄型化が可能となる。
【0028】
又、ジョイント7とサスペンション11を導電性及び熱伝導性の高い金属で構成したため、LED4において発生した熱をジョイント7からサスペンション11を経て周囲に放熱させることができ、LED4の温度上昇を抑えて発光効率の低下を防ぐことができるという効果も得られる。
【0029】
尚、以上の実施の形態では、防水用ラバー9をハウジング2の開口部2aの周縁だけに取り付けたが、図5に示すように、2色成形等によってレンズ6の球面の所定範囲(ハウジング2の開口部2a周縁への当接範囲)にも防水用ラバー12を設ければ、両防水用ラバー9,12によってハウジング2と光学モジュール3との密閉と防水が一層確実になされる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、自動車、航空機、列車、船舶、建築、住居、オフィス、各種施設等のインテリア及びエクステリアと使用される照明装置に対して適用可能であって、照明装置は、座席、天井、ドア、壁、その他の製品内で等、厚みに制約を受ける箇所への設置も可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 照明装置
2 ハウジング
2A ハウジングの係止部
2B ハウジングのボス
2a ハウジングの開口部
2b ハウジングの係止溝
2c ハウジングのネジ孔
3 光学モジュール
4 LED(光源)
5 回路基板
6 レンズ
7 ジョイント
8 電力供給ガイド
9 防水用ラバー(弾性部材)
10 第1の電力供給端子
10a 第1の電力供給端子の円弧部
10b 第1の電力供給端子の係止片
11 サスペンション
11a 第2の電力供給端子
11b サスペンションの円孔
12 防水用ラバー
A1,A2 照射エリア
L 光
O レンズとジョイントの球面の中心点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を搭載した回路基板を備え、同心の球面を備えた半球状のレンズとジョイントを、前記回路基板を挟んでこれの両側に配置して成る光学モジュールと、
前記光学モジュールを回動可能に保持するように、開口部が設けられたハウジングと、
前記ハウジングの開口部周縁は、前記レンズの球面に当接し、該ハウジングに固定されて前記ジョイントの球面に当接するサスペンションと、を有する照明装置において、
前記レンズの球面に当接する前記ハウジングの開口部及び前記レンズの球面に弾性部材を設けたことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記ハウジングの開口部周縁と、前記レンズ球面の当接範囲に設けられていることを特徴とする請求項1記載の照明装置。
【請求項3】
前記回路基板の周囲にリング状の電力供給ガイドを取り付け、前記レンズの球面に摺接する円弧部を有して前記電力供給ガイドに当接する第1の電力供給端子を前記ハウジングに固定するとともに、前記ジョイントと前記サスペンションを金属で構成し、前記サスペンションに形成された第2の電力供給端子を前記ジョイントの球面に当接させたことを特徴とする請求項1又は2記載の照明装置。
【請求項4】
前記弾性部材は、防水用ラバーであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の照明装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−146239(P2011−146239A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5885(P2010−5885)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】