説明

照明装置

【課題】半導体発光素子と蓄光材料とを組合せて使用する場合において、好適な照明環境が容易に実現することができる照明装置を提供する。
【解決手段】白色発光部5のLED13の消灯後に封止部材の蓄光材で蓄光された光が青緑色で封止部材から外方に出射し、消灯していた赤色発光部6のLED61が点灯を開始する。このような状態になると、各白色発光部5の封止部材から出射した青緑色光と赤発光部6から放射された赤色光により白色となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発光ダイオード等の半導体発光素子を用いる照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体発光素子、特に発光ダイオード(以下「LED」と称す。)を用いた発光装置は、白熱電球に代替可能な電球形のLEDランプ等の光源体、さらにはダウンライト、スポットライト等の各種照明器具の光源として多方面への展開が進んでいる。また、その長寿命、低消費電力、高速応答性、軽薄短小化等を実現できることから、一般照明用のみならず、各種産業分野での応用が進んでいる。
【0003】
そして、更なる省電力化を図ることを目的にLEDと蓄光材料とを組合せることも知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来技術は、LEDが消灯しても蓄光材料からの発光により消費電力が無い状態であっても明かりを確保することができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−36166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来から周知の蓄光材料の発光色は、青から緑となるものが殆どであるため例えばLEDの点灯時は所望の白色光が得られていたとしても蓄光材料のみの発光時では光色が異なってしまうという課題があった。また、蓄光材料のみでの発光では、視作業をする場合に相応しくない光色となってしまうため、使用者が蓄光材料のみで発光する環境下で視作業をすることは難しく、LEDと蓄光材料とを組合せる照明環境における実用的な省電力化を実現することが困難な場合があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、半導体発光素子と蓄光材料とを組合せて使用する場合において、好適な照明環境が容易に実現することができる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の本実施形態における発光装置は、半導体発光素子を有する白色発光部と、白色発光部の照射光によって蓄光するとともに白色発光部の消灯後には青色光または緑色を発光する蓄光部と、半導体発光素子を有し、少なくとも白色発光部が消灯した後には赤色を照射するように点灯する赤色発光部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、白色発光部の消灯後であっても蓄光部による発光と赤色発光部からの照射光によって白色発光を得ることができるため、半導体発光素子と蓄光材料とを組み合わせた場合であっても好適な照明環境が得られながら省電力化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1の照明装置であるLED電球を示す側面図である。
【図2】同じく図1における発光装置を示す正面図である。
【図3】同じく図2における発光装置の白色発光部を示す断面図である。
【図4】同じく図2における発光装置の白色発光部を示す正面図である。
【図5】同じく図2における発光装置の赤色発光部を示す断面図である。
【図6】同じく図2における発光装置の赤色発光部を示す正面図である。
【図7】一実施例における蓄光材料からの発光の分光分布と赤色LEDからの発光の分光分布及びそれらが混色された場合の白色の分光分布の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態に係る照明装置は、半導体発光素子を有する白色発光部と、白色発光部の照射光によって蓄光するとともに白色発光部の消灯後には青色光または緑色光を放射する蓄光部と、半導体発光素子を有し、少なくとも白色発光部が消灯した後には赤色を照射するように点灯する赤色発光部とを具備するものである。また、本実施形態において、赤色発光部は、白色発光部が点灯している場合には消灯するものである。または、赤色発光部は、白色発光部の消灯から所定期間後に自動消灯するものである。さらにまた、赤色発光部は、白色発光部の消灯後に点灯する際の光出力から所定期間後の光出力が低下するように光出力を変化させるものである。
【0011】
以下、本発明の一実施例について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、照明装置の一例であるLED電球1を開示している。LED電球1は、電球本体2、透光性カバー3、E26型の口金4、点灯装置およびSMD型のLEDを実装した発光モジュール8を備えている。
【0013】
電球本体2は、例えばアルミニウムのような金属材料で構成されている。電球本体2は、一端にフラットな図示しない支持面を有する筒形である。また、電球本体2は、複数の放熱フィン12を有している。放熱フィン12は、電球本体2の外周面から放射状に突出されているとともに、電球本体2の他端から一端の方向に進むに従い電球本体2の径方向に沿う外側に向けて張り出している。
【0014】
透光性カバー3は、例えば乳白色の合成樹脂材料を用いて略半球形に形成されている。透光性カバー3は、電球本体2に向けて開口する開口縁部を有し、この開口縁部を電球本体の内側に嵌め込むことで電球本体2に結合されて、電球本体2の支持面を覆っている。そして、発光装置である発光モジュール6は、電球本体2の支持面に取り付けられて、透光性カバー3により覆われている。
【0015】
そして発光モジュール8は、図2に示したように円環状の基板81に4つの白色発光部5と白色発光部5の中央に位置するように赤色発光部6が設けられている。
【0016】
このうち、白色発光部5は、図3及び図4に示したように、放熱性および剛性を有するアルミニウム(Al)やニッケル(Ni)、ガラスエポキシ樹脂などの平板状の基板14、この基板14の一面に形成された白色の絶縁層15、この絶縁層15上に形成された回路パターン層16、これら絶縁層15および回路パターン層16上に一体に形成された反射体17を有している。
【0017】
絶縁層15は、絶縁性を有する白色樹脂が用いられ、基板14の一面の全体を覆って形成されている。絶縁層15の表面の反射率は波長400〜740nm域において85%以上であることが好ましい。
【0018】
また、回路パターン層16には、発光素子配設位置である各LED13の配設位置毎に、陰極側と陽極側の回路パターン(配線パターン)16a,16bが形成され、その回路パターン16a,16bの端部がLED13を電気的に接続するための発光素子接続部としての接続部として形成されている。回路パターン層16は、例えば、基板14の絶縁層15上にCu層を形成し、回路パターン層16以外のCu層の部分を除去した後、電界メッキによってCu層上にNi層およびAg層を形成して構成されている。
【0019】
反射体17は、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)やPPA(ポリフタルアミド)、PC(ポリカーボネート)などの樹脂を基板14の一面に流し込んで一体に成形されている。各LED13の配設位置毎に、各LED13を収容する凹部である複数の収容部19が形成されている。各収容部19は、基板14に対して反対側へ向けて漸次拡開する円錐台状に形成されている。
【0020】
各収容部19内の底面19aには、その収容部19の底面19aの中心域を含む大部分に白色の絶縁層15が臨み、収容部19の底部の周縁域に回路パターン16a,16bの接続部が位置している。接続部は、ワイヤボンディングを許容する範囲内で必要最小限の寸法とされ、この接続部が収容部19内の中心域に配設されるLED13から離反した収容部19内の周辺近くに位置する。
【0021】
各LED13は、青色に発光するものであって、サフャイヤ基板上に発光ピークが450〜460nmの青色の光を発光する例えば窒化ガリウム(GaN)系半導体が積層されており、その表面にはワイヤボンディングするための陰極側と陽極側の電極がそれぞれ設けられたいわゆるダブルワイヤタイプが用いられている。そして、収容部19の底面19aの中心域で絶縁層15上に例えば透明なエポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの透明接着剤21を用いて固定されている。
【0022】
LED13の表面の各電極と各回路パターン16a,16bの接続部とは、ワイヤボンディングによるボンディングワイヤ23によって電気的に接続されている。
【0023】
蓄光部である封止部材27は、収納部19の内側に充填されるものあって、透光性を有するシリコーン樹脂やエポキシ樹脂などの熱硬化性透明樹脂にLED13からの青色発光を受光して黄色に蛍光発光する黄色蛍光体を主体として配合するとともに、LED13から放射される光を蓄光する蓄光材料が含有されているものである。
【0024】
また、封止部材27の黄色系蛍光体は、例えば、RE3(Al,Ga)5O12:Ce蛍光体(REは、Y、GdおよびLaから選ばれる少なくとも1種を示す。)などのYAG蛍光体、AE2SiO4:Eu蛍光体(AEは、Sr、Ba、Caなどのアルカリ土類元素を示す。)などの珪酸塩蛍光体の中から選択される。このような黄色系蛍光体として、主波長が異なる2種類の蛍光体を使用することができる。
【0025】
また、封止部材27の蓄光材としては、様々なものが使用できるが、例えば、希土類付活二価金属アルテミン塩酸で構成されたもの、希土類付活二価金属ホウ酸置換アルミン塩酸で構成されたもの、Eu付活および希土類等共付活ケイ酸塩で構成されたもの、Eu付活希土類酸硫酸化物で構成されたものなどが使用できる。
【0026】
次に赤色発光部6について図5及び図6を参照して説明する。基本的な構成は、白色発光部5と共通であるが、LED61は赤色に発光し、その表面にはワイヤボンディングするための陰極側と陽極側の電極がそれぞれ設けられたいわゆるダブルワイヤタイプが用いられている。そして、収容部19の内側にはLED61を保護するために透明シリコーン樹脂からなる透明封止部材62が充填されている。また、LED61は4個の白色発光部6が全て点灯した場合の消費電力よりも小さな消費電力となる特性を有するものが用いられている。
【0027】
ここで本実施例におけるLED電球1の作用について説明する。
【0028】
図示しない点灯装置からの電力供給によって発光装置2の白色発光部5のLED13が点灯する。この場合は、本実施例においては、赤色発光部6のLED61は消灯している状態である。そして、白色発光部5のLED13から放射される青色によって封止部材27の黄色蛍光体が励起されて黄色光が発生することにより、白色発光部5からは白色が出射することになる。
【0029】
この状態において、点灯装置からの電力供給が停止されると白色発光部5のLED13は消灯するが、白色発光部5が点灯していたことによって封止部材27の蓄光材で蓄光された光が青緑色で封止部材27から外方に放射される。すると、消灯していた赤色発光部6のLED61が点灯を開始する。このような状態になると、各白色発光部5の封止部材27から放射された青緑色光と赤発光部6から放射された赤色光が透光性カバー3の拡散作用も用いることで混色して白色となり、LED電球1からの出射する光は白色発光部5が点灯していた場合の光色と大きな差異が生じないようになっている。このとき、発光装置2に対する点灯装置からの電力供給は、赤色発光部6のLED61が点灯できる程度の電力でよいので、省電力化が実現しながらも好適な照明環境を実現することが可能となる。
【0030】
また、赤色発光部6は白色発光部5が点灯している場合には消灯しているため、本システムを実現する場合であっても余分な電力を消費することがないため、省電力化を図ることがより容易となる。
【0031】
なお、白色発光部5が点灯している場合に赤色発光部6は任意に点灯してもよいものであり、上記実施例の形態に限定される態様ではないものである。
(変形例)
【0032】
実施例1においては、白色発光部5の発光ダイオード13が消灯すると赤色発光部6のLED素子61が点灯するとしたが、本変形例においては、所定時間後に自動的に赤色のLED素子61が消灯するように制御することができる。この場合の実現方法としては、例えば点灯装置等に設けられている制御部において、タイマーを内臓しておき、白色発光部5のLED13が消灯後にこのタイマーが予め定められた時間をカウントすることによって自動的にLED素子61を消灯するように制御してもよい。また、他の例では、白色発光部5の蓄光材のみによる封止部材27からの光量を検出手段によって検出することによって赤色発光部6の消灯のタイミングを制御するようにしてもよい。要するに、自動的に赤色発光部6の消灯を制御できるものであれば特に限定しないが、例示した手段であると実現が容易となるため好適である。特にタイマーによる制御は、タイマーを動作する電力が小さいレベルで可能であるため、省電力化を図る目的においては、より好適である。
【0033】
また、異なる変形例としては、白色発光部5の発光ダイオード13が消灯後に赤色発光部6のLED61が点灯した場合において、時間の経過に応じてLED61の光出力を減少させる制御を実施するものである。これは、蓄光材から放射される光量は時間の経過とともに低下するものであるが、LED61の光量が変化しない場合には、時間の経過とともに混色された光の赤みが強くなり、好適な色温度を保つことができなくなるものである。そこで、本変形例においては、時間の経過に応じて赤色を放射するLED61の光量を減少させることによって、時間が経過したとしても白色発光部5の蓄光材による発光と赤色発光部6からの放射光との混色光の色温度が大きく変化してしまうことを抑制することができる。
【0034】
そして、本変形例におけるLED61からの光量の減少制御方法としては、たとえば時間の経過に対して予め対応する光量を設定することによって自動的に光量を減少させることもできるし、例えば白色発光部5の蓄光材のみによる封止部材27からの光量を検出手段によって検出することによって赤色発光部6から光量を制御するようにしてもよい。要するに、自動的に赤色発光部6の光量が時間の経過とともに減少できる制御できるものであれば特に限定しない。なお、光量の減少度合いは、光量が連続的に減少する形態であってもよいし、段階的に減少する形態であってもよい。
【0035】
次に本実施形態の作用についてデータを用いて説明する。図7には蓄光材料からの発光の分光分布と赤色LEDであるLED61からの発光の分光分布、それらが混色された場合の白色の分光分布の例を示した。
【0036】
この場合には、蓄光材料からの青緑光:赤光=72:28で混色することにより、5000K程度の白色光を作り出すことが可能である。この例において、分光分布は、蓄光材料の青色発光のものはピーク波長490nm、半値幅60nm、緑色発光のものはピーク波長530nm、半値幅60nm、赤色LEDチップはピーク波長640nm、半値幅20nmのものである。
【0037】
そして、例えば、光出力100lmを蓄光材料と赤LED又は白色LEDのみで得る場合での消費電力を計算した。蓄光材料と赤色LEDの場合は、青緑光:赤光=72:28なので、赤色LEDは28lmの出力が必要となる。赤色LEDの効率を実現されている範囲における任意値の55lm/Wとして計算すると、100lm得るための蓄光材料と赤色LEDの消費電力は約では0.5Wとなった。一方、白色発光部であるLED13の効率を実現されている範囲における任意値の100lm/Wとすると100lm得るために必要な消費電力は1Wとなることから、蓄光材料と赤色LEDでは白色発光部のみの発光時に比べ約50%程度の電力消費で実施可能である。したがって、白色発光部のみの発光と白色発光部が消灯した後の赤色発光部を利用する組み合わせにおいて、好適な照明環境を維持しながら総合的な省電力化を図ることができる。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1…照明装置であるLED電球、5…白色発光部、6…赤色発光部、27…蓄光部である封止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光素子を有する白色発光部と;
白色発光部の照射光によって蓄光するとともに白色発光部の消灯後には青色または緑色を発光する蓄光部と;
半導体発光素子を有し、少なくとも白色発光部が消灯した後には赤色を照射するように点灯する赤色発光部と;
を具備することを特徴とする照明装置。
【請求項2】
赤色発光部は、白色発光部が点灯している場合には消灯することを特徴とする請求項1記載の照明装置。
【請求項3】
赤色発光部は、白色発光部の消灯から所定期間後に自動消灯することを特徴とする請求項1または2記載の照明装置。
【請求項4】
赤色発光部は、白色発光部の消灯後に点灯する際の光出力から所定期間後の光出力が低下するように光出力を変化させることを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−69881(P2013−69881A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207526(P2011−207526)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】