説明

煽り扉のロック機構

【課題】 手動によって容易に開閉操作を行うことのできるロック機構を提供する。
【解決手段】 支持手段2によって保持され、所定方向に進退可能な可動軸6と、可動軸に軸支され、支持部本体3に連続してなる支持部基端31と、支持手段を支持する基部1と、基部に装着されて、該基端を回動可能に軸支する5支持軸と、支持軸により支持手段が回動するとき、可動軸の軌道を案内するように基部の端縁を所定形状にしてなる案内面12a,12bと、案内面に摺接するように可動軸によって支持された摺接部32,33と、摺接部を案内面に付勢する付勢手段7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックなど荷台または荷箱に設けられる煽り扉のロック機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な煽り扉のロック機構は、荷台の支柱に突設されたフックに係止部材を係止することにより、フックと係止部材によって、煽り扉の一部を挟持する構成である(特許文献1参照)。この種のロック機構は、係止部材をフックに係止させるために、係止部材を回動自在に支持する支持部材を操作することによるものであった。すなわち、支持部材は、係止部材を支持するための枢軸と、この枢軸とは偏心位置に設けられた回動軸と、この回動軸から延出するハンドルとを備え、上記ハンドルを回動させることにより、係止部材をフックに係止させるようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2−33184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術は、係止部材がフックに係止された状態を維持させるため、支持部材のハンドルと回動軸との間に付勢手段が介在されており、この付勢に抗してハンドルを回動させることにより、最も付勢力が強く作用する位置を越えた状態で、ハンドルの反転が抑制されるものである。
【0005】
しかしながら、ハンドルの回動は、上記のように付勢手段の付勢に抗するように操作しなければならず、係止状態の強固な維持には、上記付勢力を強くしなければならなかった。すなわち、荷台または荷箱に積載される荷物の重量が大きい場合、特に、煽り扉によって支えられる荷物の重量が大きい場合には、煽り扉が開放しないように、十分に係止されていなければならず、上記係止状態が解除されないためには、係止状態を維持するための付勢力を強化せざるを得ないものであった。
【0006】
そこで、付勢力を強化させる場合には、一般的に、ハンドルを大型化し、支点と力点の距離を長くして、小さい力で付勢に抗してハンドルを回動できるように構成されていた。しかし、このような大型の係止装置を設置できるスペースが十分に確保されているとは限らず、そのようなスペースが確保されていない場合は、やむをえず小型の係止装置を装着せざるを得ず、この場合には、手動によるハンドル操作は容易でなかった。
【0007】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、手動によって容易に開閉操作を行うことのできるロック機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、煽り扉を支持する支柱に突設されたフックと、このフックに係止可能な係止部材と、この係止部材に連続して設けられた支持部本体と、この支持部本体を回動可能な状態で前記支柱に装着する支持手段とを備えたロック機構において、前記支持手段によって保持され、所定方向に進退可能な可動軸と、この可動軸に軸支され、前記支持部本体に連続してなる支持部基端と、前記支持手段を支持する基部と、この基部に装着されて、前記基端を回動可能に軸支する支持軸と、この支持軸により前記支持手段が回動するとき、前記可動軸の軌道を案内するように基部の端縁を所定形状にしてなる案内面と、この案内面に摺接するように前記可動軸によって支持された摺接部と、この摺接部を前記案内面に付勢する付勢手段とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
上記構成によれば、基部に支持される回動可能な支持手段によって、支柱に装着される支持部本体は、上記支持手段の回動に伴って姿勢を変化させることとなり、支持部本体の姿勢は、支持部基端を軸支する可動軸の進退方向の移動と、案内面に沿った支持部基端の移動に委ねられることとなる。そこで、上記可動軸には、摺接部が設けられるとともに、この摺接部が案内面に摺接することによって、可動軸の進退方向が案内されることとなる。そして、上記案内面に起伏を設ける(所定の形状とする)ことにより、可動軸の可動範囲が限定されることとなり、所定の位置において可動軸の移動を停止させることも可能となる。これにより、係止部材がフックに係止される状態において、上記可動軸の移動を停止させることによって、その係止状態を維持させることが可能となるのである。なお、付勢手段により、可動軸(摺接部)は、案内面に摺接するように付勢されることから、案内面の形状を複雑にしたとしても、その案内面に沿って移動させることができるものである。
【0010】
上記発明においては、前記案内面が、前記支持手段が回動できる範囲の限界付近に到達したとき、前記可動軸に支持される摺接部を係入させるための係入凹部が設けられている構成とすることができる。
【0011】
上記構成によれば、可動軸(摺接部)は、案内面に沿って移動することから、係入凹部まで案内された可動軸(摺接部)は、当然に当該係入凹部に係入されることとなる。ここで、支持手段が回動できる範囲の限界とは、専ら係止部材がフックを係止する位置を意味するが、係止部材がフックの係止を解除し、支持手段の回動により反対方向に回動した場合の限界状態、すなわち、係止部材が荷台の支柱または煽り扉の一部などに接触する状態をも意味する。従って、係止部材がフックを係止する状態のときに可動軸が係入凹部に係入する場合は、係入凹部に係入された可動軸は、この係入凹部を脱することができなければフックを係止する状態を解除することができなくなり、その係止状態を強固に維持させることができる。可動軸が係入凹部から脱するためには、付勢手段の付勢力に抗して移動する必要があるが、係入凹部の深さまたは形状によっては、人為的な外力によらなければ係入凹部から脱することができない状態とすることができる。そして、係止部材がフックの係止を解除した状態のときに可動軸が係入凹部に係入する場合には、係止部材によるロック解除の状態においても、係止部材および支持手段の位置を固定させることができる。
【0012】
また、上記発明において、前記案内面が、前記支持手段が回動できる範囲の中間に位置する状態のとき、前記付勢手段による付勢力が弱くなる緩和部を有する構成としてもよい。
【0013】
上記構成によれば、支持手段の回動の限界ではない位置においても支持手段の回動を一時的に停止させることができる。すなわち、支持手段が回動できる範囲の限界でのみ可動軸を係入凹部に係入させる場合は、係止状態および解除状態を安定させることとなるが、その中間位置において停止するような場合に、不安定な状態となることを解消させることができるのである。このような構成の場合には、例えば、支持手段の回動範囲が180°である場合、その中間である90°の状態に緩和部による停止位置を設けることにより、支持手段(ならびに支持部本体および係止部材)が180°の範囲で勢いよく回動することを緩和させることができるのである。
【0014】
また、本発明は、上記に示した各構成の煽り扉のロック機構であって、前記支持軸によって回動可能に装着された操作用基部と、この操作用基部に連続して設けられ、かつ、前記基部の外方に突出する操作部と、前記操作用基部に連続して設けられ、かつ、前記支持部基端に摺接可能な作用部とをさらに備えることを特徴するものである。
【0015】
上記構成によれば、基部に装着される支持軸は、支持手段を軸支するものであるところ、この支持軸に軸支される操作用基部に連続して設けられる作用部は、その支持軸の軸回りに回動可能となる。これに対し、支持部基端は、支持手段によって支持されていることから、操作用基部が支持軸の軸回りに回動することにより、支持部基端に接触することが可能となるのである。また、操作用基部には、上記作用部の他に操作部が設けられていることから、操作部に対して外力を付与することにより、操作用基部を支持軸の軸回りに回動させることができ、さらに、その回動により作用部が支持部基端に摺接し、この支持部基端を支持する可動部を所定方向に進退させることが可能となる。従って、例えば支持部基端が係入凹部に係入した状態において、作用部が支持部基端の位置を変更させることにより、可動軸を進退させることができ、支持部基端を係入凹部から脱するように回動軸を移動させることが可能となる。
【0016】
そこで、本発明は、上記のように案内面に係入凹部を設けた構成の発明にかかる煽り扉のロック機構であって、前記支持軸によって回動可能に装着された操作用基部と、この操作用基部に連続して設けられ、かつ、前記基部の外方に突出する操作部と、前記操作用基部に連続して設けられ、かつ、前記支持部基端に摺接可能な作用部とをさらに備え、前記作用部は、前記操作用基部が前記支持軸の軸回りに回動するとき、前記支持部基端を前記係入凹部から脱する方向に案内する作用部であることを特徴するものである。
【0017】
上記構成によれば、作用部は、支持部基端を前記係入凹部から脱する方向に案内するものであるから、この作用部とは異なる位置で操作用基部に設けられた操作部を操作すること(操作用基部を回動すること)により、支持部基端を容易に係入凹部から脱出させることが可能となる。
【0018】
さらに、本発明は、上記発明の煽り扉のロック機構であって、前記支持部基端と一体的に設けられ、前記作用部による該支持部基端の案内が開始されるとき、該作用部が当接して優先的に案内される当接片部をさらに備えたことを特徴とするものである。
【0019】
上記構成によれば、支持部基端には、この支持部基端と一体的に設けられた当接片部が備えられていることから、前記操作用基部に設けられる作用部が直接支持部基端に当接できない状態、または、支持部基端を所望方向に案内することが容易でない状態の場合(例えば、深く形成された係入凹部に支持部基端が係入されている場合)において、作用部による案内が開始された直後に、作用部は支持部基端を直接案内しないが、これと一体的な当接片部を案内することによって、結果的に支持部基端を所望方向に案内することが可能となる。
【0020】
上記各発明においては、前記支持手段が、少なくとも二枚の平行な板状部材を備え、この各板状部材の所定方向に同方向かつ同長の長孔を有する支持手段であり、前記可動軸が、前記各板状部材の長孔に挿通されて、該長孔に沿って摺動可能に配置された可動軸である構成としてもよい。
【0021】
上記構成によれば、平行な板状部材により可動軸が懸架される状態となるから、両板状部材の中間に支持部基端を配置することができる。さらに、可動部が移動すべき進退方向を長孔によって規制することができることから、当該所望の進退方向が直線的である場合には、その直線状の進退を可能にすることができる。
【0022】
また、上記各発明において、前記基部が、前記支持手段の二枚の平行な板状部材の内側に配置されており、前記操作用基部が、前記基部の内側に配置されている構成としてもよい。
【0023】
上記構成によれば、支持手段を構成する二枚の板状部材は、本発明のロック機構を構成する他の構成部材の最も外側に位置することとなるから、当該二枚の板状部材が基部および操作用基部を跨いだ状態で配置できることとなる。従って、支持手段の回動によって位置が変化しない基部等の周囲を支持部本体および係止部材が回動することとなり、その回動範囲を拡大することができる。そして、この範囲内を回動する途中において、支持部基端が基部端縁の案内面によって案内されることとなるのである。
【0024】
また、上記各発明において、前記長孔が、前記支持手段を支持する支持軸に最も近接する位置が前記支持軸の軸心から偏った位置に設けられている長孔とすることができる。
【0025】
上記構成により、煽り扉が急激な振動を受けた場合でも係止状態が解除されないようにしている。すなわち、可動軸が支持軸に最も近い位置に存在する状態とは、例えば、支持部基端が係入凹部に係入している状態であり、係止部材がフックを係止しているような場合である。このような場合において、外部からの衝撃により、付勢手段による付勢に抗するような振動を支持部基端が受けたとしても、支持軸の位置が支持部基端の位置から偏っている場合には、支持軸が容易に回動できず、支持部基端の係入状態を維持させることができる。
【0026】
さらに、上記各発明において、前記長孔が、前記支持手段を支持する支持軸側から自由端側に向かって長尺で、かつ、その長手方向が前記支持軸から放射方向に対して所定角度で斜状に構成されてなるようにしてもよい。
【0027】
上記構成によれば、例えば、支持手段が鉛直方向に起立したとき、係止部材がフックを係止するような場合、長孔の長手方向は、鉛直方向から僅かに傾いた方向となることから、外部からの衝撃により単純な上下後方の振動を受けたとしても、支持部基端が係入凹部から容易に脱することがないようにすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、支持手段を基部の支持軸の軸回りに回動させることにより、支持手段の可動軸に軸支される支持部基端が案内させることから、手動により支持手段を回動させることにより、支持部基端の位置を的確な状態に案内でき、さらに、その支持部基端を案内する案内面の形状により、一時的に支持部基端を停止させることが可能となることから、煽り扉の開閉を手動によって容易に操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態の概略を示す説明図である。
【図2】本発明の実施形態の斜視図である。
【図3】III−III断面図である。
【図4】実施形態の作動態様を示す説明図である。
【図5】実施形態の作動態様を示す説明図である。
【図6】実施形態の変形例を示す説明図である。
【図7】実施形態の変形例を示す説明図である。
【図8】実施形態の変形例を示す説明図である。
【図9】変形例の作動態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態の概略を示す図である。この図に示すように、本実施形態は、基部1に回動可能に装着される支持手段2とで構成されており、支持部材2は、支持部本体3と、その先端に連続する係止部材4とを支持している。係止部材4は、荷台の支柱等に設けられるフックFに係止できるように、円環状に形成されており、支持手段2が回動することにより、この円環状の係止部材4がフックF係止、その解除を可能にしているのである。
【0031】
基部1は、前記フックFと同じ支柱等の表面に固着されるものであり、本実施形態では、二枚の板状部材11a,11bによって構成され、さらに、その端縁によって案内面12a,12bが構成されている。この基部1には、支持軸5が装着できるように貫通孔13a,13bが設けられている。なお、案内面12a,12bは弧状面を基準とし、貫通孔13a,13bの中心からの距離を変化させるように形成されている。すなわち、二つの係入凹部14a,14b,15a,15bと、一つの平面部16a,16bが形成されるとともに、この平面部16a,16bに隣接する部分は、前記貫通孔13a,13bの中心からの距離が長くなるように形成されている。
【0032】
支持手段2の本体部分は、二枚の板状部材21,22と、これを平行に維持するように一体的に構成された中間部材23とでコ字状に設けられている。この本体部分を構成する板状部材21,22には、同じ方向に長尺な長孔24,25が設けられるとともに、中間部材23には、前記支持部本体3が挿通できる貫通孔26が設けられている。上記長孔24,25には、可動軸6が挿通可能であり、この可動軸6によって、前記支持部本体3の先端に連続する支持部基端31が軸支されている。また、支持手段2を構成する板状部材21,22には、上記基部1に装着するための貫通孔27,28が設けられている。
【0033】
なお、支持部基端31の軸線方向両端には、円環状の摺接部32,33が同じ可動軸6に挿通され、回動可能に設けられている。また、支持手段2の本体部分を構成する中間部材23と上記支持部基端31との間には、付勢手段としての圧縮バネ7が介在され、支持部基端31を中間部材23から遠ざかる方向に付勢している。この圧縮バネ7は、支持手段2の内部に延出する支持部本体3に挿通される状態で設けられ、支持手段2から離脱できないようになっている。
【0034】
上記のような構成であるから、基部1を構成する二枚の板状部材11a,11bの外側に、上記支持手段2を構成する二枚の板状部材21,22を配置し、支持軸5を挿通することにより、支持手段2は、支持部本体3および形成部材3をとともに、支持軸5の軸回りに回動可能に設けられるものである。
【0035】
なお、本実施形態では、支持軸5には、操作手段8を回動可能に軸支できるようになっている。この操作手段8は、円筒状の操作用基部81と、この操作用基部81に連続する操作部82と、作用部83とで構成されている。操作用基部81は、基部1の二枚の板状部材11a,11bの中間に介在されるように、両者の間隔に合致する長さで構成され、操作部82は、基部1から外方に突出するように形成されている。また、作用部83は、湾曲した曲面を有する板状部材で構成され、操作用基部81が支持手段2とともに基部1に装着されることによって、支持部基端31に当接するように設けられている。
【0036】
本実施形態は、上記のような構成であることから、基部1に支持手段2および操作手段8を装着することによって、図2に示すように、これら支持手段2および操作手段8は、基部1に挿通される支持軸5を中心に、それぞれ回動可能となるものである。そして、可動軸6によって軸支される円環状の摺接部32,33は、基部1の案内面12a,12bの表面に当接し、支持手段2が支持軸5の軸回りに回動するとき、基部1の案内面12a,12bの表面を摺接することとなる。ところで、可動軸6に軸支される支持部基端31は、付勢手段としての圧縮バネ7によって付勢されていることから、この付勢力は可動軸6を付勢することとなり、その付勢に抗する外力が作用しない場合には、当該可動軸6は長孔24,25の基端に位置することとなる。しかしながら、当該付勢に抗する外力が作用するとき、可動軸6は、上記長孔24,25の範囲内で移動できるようになっている。
【0037】
そこで、摺接部32,33が、案内面12a,12bの最も大きく切り欠かれた係入凹部14a,14b(図1)に係入されている場合は、可動軸6は、付勢手段(圧縮バネ)7の付勢により、長孔24,25の基端に位置することとなる。摺接部32,33が、この係入凹部14a,14bから脱するときは、上記付勢手段(圧縮バネ)7による付勢に抗して移動させることから、可動軸6は、長孔24,25を長尺方向に沿って移動し(長孔24,25を反対方向に進行し)、その位置を変更させることとなる。また、摺接部32,33が再び同じ係入凹部14a,15bまたは他の係入凹部15a,15bに係入する場合は、付勢手段(圧縮バネ)7の付勢により、当該係入凹部14a,14b,15a,15b(図1)に係入されることとなり、この係入深さに応じて可動軸6が長孔24,25に沿って移動(後退)するのである。
【0038】
このような可動軸6の進退は、案内面12a,12bに沿った摺接部32,33の位置の変動により、支持部本体3およびその先端の係止部材4の位置(状態)を制限するものである。なお、長孔24,25は、支持手段の支持軸側(支持軸5により支持されている側)から自由端側(支持軸5から最も離れた側)に向かって長尺に設けられており、その長手方向は、支持軸5の軸心から放射方向に延びる直線に対して斜状になっている。そして、この長手方向の向きは、図示のように、係止部材4がフックFを係止した状態において、支持軸5から先端に向かって徐々に支柱Pとの間隙を小さくしてなる方向にしている。このような斜状の長孔24,25により、可動軸6の上昇を容易にしているのである。すなわち、係入凹部14a,14bを形成するための切欠部分の形状が、隣接する案内面12a,12bとの境界部分と支持軸5の軸心とを結ぶ仮想直線を越えて大きく入り込むようにしていることから、摺接部32,33を当該係入凹部14a,14bから脱するためには、当該摺接部32,33を上方かつ支柱Pに接近する方向に移動することが好ましく、その好適な方向に可動軸6を案内するように長孔24,25の長手方向を斜状にしているのである。
【0039】
本実施形態は、上記のような構成であることから、次のような作動態様となる。すなわち、図3は、係入凹部(14a,)14bに支持部基端31(実質的には摺接部32,33)が係入している状態を示している。この図に示すように、係入凹部(14a,)14bに支持部基端31が係入される状態では、支持手段2は、支持軸5を中心に回動できず、フックFを係止することができる状態となっている。すなわち、支持部本体3および係止部材4を支持する支持手段2は、全体として支持軸5を中心として回動可能に装着されているが、係入凹部(14a,)14bに支持部基端31が係入するとき、基部1の他の案内面(12a,)12bによって回動が阻害される。特に、支持部基端31が、付勢手段(圧縮バネ)7によって強力に付勢されることにより、結果的に可動軸6が前記長孔24,25の方向に強力に付勢されることとなり、摺接部32,33が係入凹部(14a,)14bから脱することができず、支持手段2の回動を制限して起立状態とすることができるのである。なお、支持部基端31が付勢手段(圧縮バネ)7の付勢に抗して上昇する場合には、係入凹部(14a,)14bから脱することが可能であるが、外力なしに振動等のみでは、このような上昇を生じさせることは皆無である。特に、図示のように、支持部基端31の軸心が、支持軸5の軸心よりも外方(設置される支柱等P)から離れる位置)に偏って設けることにより、支持部基端31の軸心に対して回動方向に作用する外力が作用しても、支持軸5に対する回動方向の外力として作用することがない。これにより、煽り扉Dの内側から急激な衝撃を受けて、係止部材4がフックFから遠ざかるような外力を受ける場合においても、係止部材4の係止状態が解除させることを抑制しているのである。
【0040】
次に、外力により上記係止状態を解除する場合は、図4および図5に示すように、操作手段8を操作することにより容易に行うことができる。すなわち、操作手段8の操作部82を支柱等P(図3)に向かって押し付けることにより、操作用基部81が支持軸5の軸回りに回動し、この回動により、作用部83が支持部基端31を押し上げることとなる(図4(a)参照)。さらに、作用部83によって支持部基端31が押し上げられると、当該支持部基端31(摺接部32,33)は嵌入凹部(14a,)14bから十分に脱する状態となる(図4(b)参照)。そして、作用部83の回動方向に支持部基端31が移動(支持手段2が回動)することにより、当該支持部基端31(実質的には摺接部(32,)33)は、嵌入凹部(14a,)14bとは異なる案内面(12a,)12bに移動させることとなる(図4(c)参照)。このように係入凹部(14a,)14bに隣接する案内面(12a,)12bに摺接部(32,)33が案内されることによって、付勢手段(圧縮バネ)7は大きく圧縮され、案内面(12a,)12bに対し、強力に付勢することとなり、その付勢力に伴って、当該案内面(12a,)12bの形状に沿って案内されるのである。そして、その案内される向きが支持軸5の軸回りに回動する方向であることから、結果として、支持手段2の全体が支持軸5を中心に回動するのである(図5(a)〜(c))。
【0041】
なお、案内面(12a,)12bのうち、係入凹部(14a,)14bの近傍は、支持軸5からの距離が大きく、その後徐々に小さくなるように形成され、支持軸5の水平方向において、直線部(16a,)16bが形成されている(図5(b)参照)。この直線部(16a,)16bに摺接部32,33が案内されるとき、支持部基端31が、支持軸5に接近する状態となることから、当該部分において、付勢手段(圧縮バネ)7による付勢力が弱く作用する(緩和する)こととなる(これにより直線部を緩和部と称する)。そして、支持部基端31(摺接部32,33)が緩和部に到達すると、その緩和部を越えるためには、さらに、付勢手段(圧縮バネ)7の付勢に抗する外力が必要となるから、支持部基端31(摺接部32,33)が当該緩和部に到達した時点で、支持手段2の回動は一旦停止することとなるのである。
【0042】
ところで、支持手段2の全体を、係止状態から逆向きとなる状態(垂下した状態)まで回動させるためには、支持部基端31(摺接部32,33)をさらに案内面(12a,)12bに沿って移動させればよく、そのためには、支持手段2の全体を支持軸5の軸回りに回動させるか、または、係止部材4を引っ張って、付勢手段(圧縮バネ)7の付勢に抗する方向の外力を付与すればよいのである。そして、支持手段2が垂下した状態においても、支持部基端31(摺接部32,33)は、もう一つの係入凹部(15a,)15bに係入されることにより、当該垂下状態で回動を停止させることができるのである(図5(c)参照)。
【0043】
なお、この状態から、再び係止状態とするためには、係止部材4を下方に引っ張ることにより、係入凹部(15a,)15bから脱するようにし、その後は案内面(12a,)12bに沿って支持部基端31(摺接部32,33)を移動させることにより行うこととなる。すなわち、このように、支持部基端31(摺接部32,33)を案内面(12a,)12bに沿うように移動(支持手段2を回動)させることにより、最終的には、反対側の(上側の)係入凹部(14a,)14bに摺接部32,33を係入させることができるのである。つまり、摺接部32,33が係入凹部(14a,)14bに到達することにより(図4(a)参照)、支持部基端31に対する付勢手段(圧縮バネ)7の付勢により、摺接部32,33は係入凹部(14a,)14bに強制的に係入されることとなるのである。
【0044】
このように、上側の係入凹部(14a,)14bから脱した摺接部32,33が、容易に案内面(12a,)12bに沿って移動できるのは、当該案内面(12a,)12bの起伏の高低差を緩やかに形成し、または、起伏のある各部の境界差を緩慢に形成しているからである。
【0045】
また、支持手段2を構成する二枚の板状部材(21,)22は、基部1を構成する板状部材(11a,)11bよりも外方に位置し、当該支持手段2の板状部材(21,)22が、最も外側に配置されていることから、支持手段2が回動するときに、支持手段2を構成する各部および支持手段2によって支持される部材は、基部1から離れた外側を回動することとなり、上記起立状態から上記垂下状態までの範囲を何ら支障なく変化させることができるのである。
【0046】
さらに、操作部8は、支持軸5に対して回動自在に設けられていることから、その回動が強制されるものではない。しかしながら、支持手段2が垂下状態から直立状態へ(ロックの開放状態から係止状態へ)移動する際に、作動部83が支持部基端31に摺接し、その後は、支持部基端31によって作動部83が回動させられることとなり、支持手段2が直立状態(係止状態)となるとき、操作手段8は当初の状態(図3参照)となるのである。
【0047】
本発明の実施形態は、上記のとおりであるが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、種々の形態とすることができるものである。例えば、図6に示すように、操作手段8を設けず、支持部本体3と係止部材4との境界部付近に把持部9を設け、この把持部9を持って支持部本体3および係止部材4を上昇させることによって、係止状態を解除させる構成としてもよい。この場合、把持部9を上昇させた後、支持部基端31(摺接部32,33)を係入凹部14a,14bから脱出させ、基部1の案内面12a,12bに当接させることによって、支持手段2は、容易に開放状態に移行することとなる。
【0048】
また、図7に示すように、前記実施形態における操作手段8の作動部83と支持部基端31との当接を容易にすべく、支持部基端31から作動部83に向かって突出する当接片部34を設けてもよい。このような形態は、支持部基端31(摺接部32,33)を係入凹部14a,14bから脱出させ、かつ、案内面12a,12bに支持部基端31(摺接部32,33)を当接させるために、作動部83により当該支持部基端31を案内することを補助するものである。すなわち、支持手段2に設けられる長孔24,25の長手方向が、垂直方向に対して斜状に設けられる場合、この斜状方向に沿って可動軸6(支持部基端31)を移動させるために設けたものである。つまり、作動部83の軌道のみでは支持部基端31を長孔24,25の長手方向に沿った上昇をさせることが困難な場合に、弧状の作動部83とは異なる方向に突出する当接片部34を設けることにより、その向きを変化させることとしているのである。
【0049】
さらに、操作手段8の操作部82を長尺に構成してもよい。この場合、操作部82を単純に長尺に構成する場合、装置全体から大きく外方に突出することとなる。これを解消する構造としては、例えば、図8に示すように、操作手段108を操作用基部181および作用部183を主たる構成とする部分と、操作部182との二つの構成部材によることができる。すなわち、操作部182の基部184を、操作用基部181から突設する突出部185,186によって支持させるように構成するのである。このとき、突出部185,186には貫通孔を穿設し、これに挿通する支持軸187を設け、他方、操作部182の基部184には長孔部188を設け、この長孔部188が支持軸187によって回動自在に支承するのである。しかも、この操作部182の基部184は、操作用基部181に接近して支承されており、長孔部188の所定位置に支持軸187が存在するとき、基部184の外部表面が操作用基部181の外部表面に当接するように配置されている。
【0050】
上記のような構成とした操作手段108によれば、図9に示すように、操作部182が立設した状態において、その自重により、支持軸187が長孔部188の後端側(操作部182の先端側)に位置することとなる(図9(a)参照)。これに対し、操作部182が垂下した状態においては、支持軸187が長孔部188の先端部(操作部182の根元側)に位置することとなる(図9(d)参照)。ところで、支持軸187が長孔部188の先端部に位置する場合(図9(d))には、基部184の外部表面は操作用基部181の外部表面に当接せず、回動が自在な状態となるが、支持軸187が長孔部188の後端側に位置する場合(図9(a))には、回動の途中において、両者の外部表面が当接することとなる。
【0051】
そこで、上記構成の操作手段108により、作動部183の状態を変化させるためには、まず、操作部182が直立状態(図9(a))から、支持軸187の位置を変更せずに、操作部182を傾倒させるのである。所定の角度まで操作部182を傾倒させた時点で、操作部182の基部184の外部表面は操作用基部181の外部表面に当接することとなる(図9(b)参照)。この状態において、操作部182は、操作用基部181が回動しなければさらに傾倒させることができない状態となる。そこで、操作部182をさらに傾倒させることにより、上記当接状態を維持しつつ、操作用基部181が回動し、その結果として操作部183の状態が変化することとなる(図9(c)参照)。このようにして、十分に作用部183の状態を変化させることにより、前述のように支持部基端31を所定方向に移動させることができるのである(図4参照)。なお、支持部基端31を十分に移動させた後は、支持手段2が支持軸5を中心に回動することから、操作部182は回動自在な状態(図9(d))となってもよく、この回動自在の状態となることによって、支持手段2が大きく回動した際、支持手段2の移動に支障を来さないようにすることができるのである。なお、直立状態(図9(a))から当接状態(図9(b))まで傾倒させる間は、操作部182の回動は自在となっていることから、上記直立状態を維持させるためには、操作部182を支持部基端31に掛止させる構成としてもよく、磁石等を使用することにより一時的に支持手段2に磁着等させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 基部
2 支持手段
3 支持部本体
4 係止部材
5 支持軸
6 可動軸
7 付勢手段(圧縮バネ)
8,108 操作手段
9 把持部
11a,11b 板状部材
12a,12b 案内面
13a,13b 貫通孔
14a,14b,15a,15b 係入凹部
16a,16b 平面部(緩和部)
21,22 板状部材
23 中間部材
24,25 長孔
26 貫通孔
31 支持部基端
32,33 摺接部
34 当接片部
81,181 操作用基部
82,182 操作部
83,183 作用部
184 操作部の基部
185,186 突出部
187 支持軸
188 長孔部
D 煽り扉
F フック
P 支柱等

【特許請求の範囲】
【請求項1】
煽り扉を支持する支柱に突設されたフックと、このフックに係止可能な係止部材と、この係止部材に連続して設けられた支持部本体と、この支持部本体を回動可能な状態で前記支柱に装着する支持手段とを備えたロック機構において、
前記支持手段によって保持され、所定方向に進退可能な可動軸と、この可動軸に軸支され、前記支持部本体に連続してなる支持部基端と、前記支持手段を支持する基部と、この基部に装着されて、前記支持手段を回動可能に軸支する支持軸と、この支持軸により前記支持手段が回動するとき、前記可動軸の軌道を案内するように基部の端縁を所定形状にしてなる案内面と、この案内面に摺接するように前記可動軸によって支持された摺接部と、この摺接部を前記案内面に付勢する付勢手段とを備えることを特徴とする煽り扉のロック機構。
【請求項2】
前記案内面は、前記支持手段が回動できる範囲の限界付近に到達したとき、前記可動軸に支持される摺接部を係入させるための係入凹部が設けられている案内面であることを特徴とする請求項1に記載の煽り扉のロック機構。
【請求項3】
前記案内面は、前記支持手段が回動できる範囲の中間に位置する状態のとき、前記付勢手段による付勢力が弱くなる緩和部を有する案内面である請求項1または2に記載の煽り扉のロック機構。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の煽り扉のロック機構であって、前記支持軸によって回動可能に装着された操作用基部と、この操作用基部に連続して設けられ、かつ、前記基部の外方に突出する操作部と、前記操作用基部に連続して設けられ、かつ、前記支持部基端に摺接可能な作用部とをさらに備えることを特徴する煽り扉のロック機構。
【請求項5】
請求項2または3に記載の煽り扉のロック機構であって、前記支持軸によって回動可能に装着された操作用基部と、この操作用基部に連続して設けられ、かつ、前記基部の外方に突出する操作部と、前記操作用基部に連続して設けられ、かつ、前記支持部基端に摺接可能な作用部とをさらに備え、前記作用部は、前記操作用基部が前記支持軸の軸回りに回動するとき、前記支持部基端を前記係入凹部から脱する方向に案内する作用部であることを特徴する煽り扉のロック機構。
【請求項6】
請求項5に記載の煽り扉のロック機構であって、前記支持部基端と一体的に設けられ、前記作用部による該支持部基端の案内が開始されるとき、該作用部が当接して優先的に案内される当接片部をさらに備えたことを特徴とする煽り扉のロック機構。
【請求項7】
前記支持手段は、少なくとも二枚の平行な板状部材を備え、この各板状部材の所定方向に同方向かつ同長の長孔を有する支持手段であり、前記可動軸は、前記各板状部材の長孔に挿通されて、該長孔に沿って摺動可能に配置された可動軸であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の煽り扉のロック機構。
【請求項8】
前記基部は、前記支持手段の二枚の平行な板状部材の内側に配置されており、前記操作用基部は、前記基部の内側に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の煽り扉のロック機構。
【請求項9】
前記長孔は、前記支持手段を支持する支持軸に最も近接する位置が前記支持軸の軸心から偏った位置に設けられている長孔であることを特徴とする請求項7または8に記載の煽り扉のロック機構。
【請求項10】
前記長孔は、前記支持手段を支持する支持軸側から自由端側に向かって長尺で、かつ、その長手方向が前記支持軸から放射方向に対して所定角度で斜状に構成されてなる長孔であることを特徴とする請求項7ないし9のいずれかに記載の煽り扉のロック機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−95163(P2013−95163A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236548(P2011−236548)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(596103949)株式会社三愛自動車 (2)
【Fターム(参考)】