熱アシスト磁気記録ヘッドの主磁極の形成方法
【課題】後端面が基板の上面に対して垂直またはほぼ垂直で、前端面において、基板の上面により近い第1の端部が、基板の上面からより遠い第2の端部に比べてトラック幅方向の幅が小さい形状の主磁極を容易に形成する。
【解決手段】第1の開口部を有する第1のエッチングマスクを用いて、RIEによって初期収容層20Pをエッチングして溝部20P1を形成する。次に、溝部20P1が収容部になるように、第2の開口部を有する第2のエッチングマスク54を用いて、RIEによって初期収容層20Pの溝部20P1を含む部分をエッチングする。次に、収容部内に主磁極を形成する。第1のエッチングマスクは、トラック幅方向について第1の間隔をあけて対向する第1および第2の側壁を有する。第2のエッチングマスク54は、第1の間隔よりも大きい第2の間隔をあけて対向する側壁54a,54bを有する。
【解決手段】第1の開口部を有する第1のエッチングマスクを用いて、RIEによって初期収容層20Pをエッチングして溝部20P1を形成する。次に、溝部20P1が収容部になるように、第2の開口部を有する第2のエッチングマスク54を用いて、RIEによって初期収容層20Pの溝部20P1を含む部分をエッチングする。次に、収容部内に主磁極を形成する。第1のエッチングマスクは、トラック幅方向について第1の間隔をあけて対向する第1および第2の側壁を有する。第2のエッチングマスク54は、第1の間隔よりも大きい第2の間隔をあけて対向する側壁54a,54bを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に近接場光を照射して記録媒体の保磁力を低下させて情報の記録を行う熱アシスト磁気記録ヘッドにおける主磁極の形成方法、および熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク装置等の磁気記録装置では、高記録密度化に伴い、薄膜磁気ヘッドおよび記録媒体の性能向上が要求されている。薄膜磁気ヘッドとしては、基板に対して、読み出し用の磁気抵抗効果素子(以下、MR(Magnetoresistive)素子とも記す。)を有する再生ヘッドと書き込み用の誘導型電磁変換素子を有する記録ヘッドとを積層した構造の複合型薄膜磁気ヘッドが広く用いられている。磁気ディスク装置において、薄膜磁気ヘッドは、磁気記録媒体の表面からわずかに浮上するスライダに設けられる。
【0003】
磁気記録装置において、記録密度を高めるためには、記録媒体の磁性微粒子を小さくすることが効果的である。しかし、磁性微粒子を小さくすると、磁性微粒子の磁化の熱安定性が低下するという問題が発生する。この問題を解消するには、磁性微粒子の異方性エネルギーを大きくすることが効果的である。しかし、磁性微粒子の異方性エネルギーを大きくすると、記録媒体の保磁力が大きくなって、既存の磁気ヘッドでは情報の記録が困難になるという問題が発生する。
【0004】
上述のような問題を解決する方法として、いわゆる熱アシスト磁気記録という方法が提案されている。この方法では、保磁力の大きな記録媒体を使用し、情報の記録時には、記録媒体のうち情報が記録される部分に対して記録磁界と同時に熱も加えて、その部分の温度を上昇させ保磁力を低下させて情報の記録を行う。情報が記録された部分は、その後、温度が低下して保磁力が大きくなり、磁化の熱安定性が高まる。以下、熱アシスト磁気記録に用いられる磁気ヘッドを、熱アシスト磁気記録ヘッドと呼ぶ。
【0005】
熱アシスト磁気記録では、記録媒体に対して熱を加える方法としては、近接場光を用いる方法が一般的である。近接場光を発生させる方法としては、レーザ光によって励起されたプラズモンから近接場光を発生する金属片であるプラズモンジェネレータを用いる方法が知られている。また、一般的に、近接場光の発生に利用されるレーザ光は、スライダに設けられた導波路によって、スライダの媒体対向面の近傍に設けられたプラズモンジェネレータに導かれる。
【0006】
特許文献1には、導波路を伝播する光を、プラズモンジェネレータに対して、緩衝部を介して表面プラズモンモードで結合させて、プラズモンジェネレータに表面プラズモンを励起させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−160872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、記録磁界を発生する主磁極と、上記導波路およびプラズモンジェネレータを備えた熱アシスト磁気記録ヘッドでは、媒体対向面の近傍の非常に小さな領域内に、主磁極と、導波路のコアの一部と、プラズモンジェネレータとを配置することが要求される。
【0009】
上記の要求に応えるための熱アシスト磁気記録ヘッドの構成としては、プラズモンジェネレータに対して、基板の上面からより遠い側にコアが配置され、コアは媒体対向面に向いた端面であって媒体対向面から離れた位置に配置された端面を有し、このコアの端面と媒体対向面との間に主磁極が配置された構成が考えられる。
【0010】
上記の構成では、主磁極は、媒体対向面に配置された端面である前端面と、それとは反対側の端面である後端面とを有する。上記の構成を採用する場合には、主磁極の前端面のうち、プラズモンジェネレータにより近い部分から局所的に大きな記録磁界が発生することが求められる。そのためには、主磁極の前端面の形状としては、基板の上面により近い第1の端部が、基板の上面からより遠い第2の端部に比べてトラック幅方向の幅が小さい形状であることが好ましい。
【0011】
また、上記の構成を採用する場合には、コアを伝播する光が効率よく近接場光に変換されることが求められる。そのためには、媒体対向面に向いたコアの端面をできるだけ媒体対向面に近づけ、プラズモンジェネレータにおける表面プラズモンの励起をできるだけ媒体対向面の近くで行わせることが好ましい。また、コアの端面と主磁極の後端面との接触面積が大きいと、コアを伝播する光のうち主磁極に吸収される光の割合が多くなることから、コアの端面と主磁極の後端面との接触面積をできるだけ小さくすることが好ましい。これらを考慮すると、主磁極の後端面は、基板の上面に対して垂直またはほぼ垂直であることが好ましい。
【0012】
以上のことから、上記の構成を採用する場合には、主磁極としては、後端面が基板の上面に対して垂直またはほぼ垂直であって、前端面において、前記第1の端部が第2の端部に比べてトラック幅方向の幅が小さい形状のものであるものが好ましい。しかしながら、このような形状の主磁極を形成することは容易ではない。
【0013】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、プラズモンジェネレータに対して、基板の上面からより遠い側に導波路のコアが配置され、コアは、媒体対向面に向いた端面であって媒体対向面から離れた位置に配置された端面を有し、このコアの端面と媒体対向面との間に主磁極が配置された構成の熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、後端面が基板の上面に対して垂直またはほぼ垂直で、前端面において、基板の上面により近い第1の端部が、基板の上面からより遠い第2の端部に比べてトラック幅方向の幅が小さい形状の主磁極を容易に形成できるようにした主磁極の形成方法を提供することにある。
【0014】
本発明の第2の目的は、プラズモンジェネレータに対して、基板の上面からより遠い側に導波路のコアが配置され、コアは、媒体対向面に向いた端面であって媒体対向面から離れた位置に配置された端面を有し、このコアの端面と媒体対向面との間に主磁極が配置された構成の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法であって、後端面が基板の上面に対して垂直またはほぼ垂直で、前端面において、基板の上面により近い第1の端部が、基板の上面からより遠い第2の端部に比べてトラック幅方向の幅が小さい形状の主磁極を容易に形成できるようにした熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の主磁極の形成方法および熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法が適用される熱アシスト磁気記録ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面と、情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する主磁極と、主磁極を収容する収容部を含む収容層と、光を伝播させるコアとクラッドとを有する導波路と、プラズモンジェネレータと、上面を有する基板とを備えている。主磁極、収容層、導波路およびプラズモンジェネレータは、基板の上面の上方に配置されている。プラズモンジェネレータは、媒体対向面に配置された近接場光発生部を有し、コアを伝播する光に基づいてプラズモンが励起され、このプラズモンに基づいて近接場光発生部より近接場光を発生するものである。
【0016】
コアは、媒体対向面に向いた端面であって媒体対向面から離れた位置に配置された端面を有し、プラズモンジェネレータに対して、基板の上面からより遠い側に配置されている。主磁極は、媒体対向面に配置された前端面と、前端面とは反対側の後端面とを有し、コアの端面と媒体対向面との間に配置されている。収容層は、収容部に面する壁面であって、主磁極の後端面の形状を規定する壁面を有している。主磁極の前端面は、基板の上面により近い第1の端部と、基板の上面からより遠い第2の端部とを有し、第1の端部は第2の端部に比べてトラック幅方向の幅が小さい。
【0017】
本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法は、プラズモンジェネレータを形成する工程と、プラズモンジェネレータの形成後に導波路を形成する工程と、プラズモンジェネレータの形成後に収容層および主磁極を形成する工程とを含んでいる。
【0018】
本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法における収容層および主磁極を形成する工程、あるいは本発明の主磁極の形成方法は、
上面を有する初期収容層を形成する工程と、
初期収容層の上面上に、第1の開口部を有する第1のエッチングマスクを形成する工程と、
第1のエッチングマスクを用いて、反応性イオンエッチングによって初期収容層をエッチングして、初期収容層に溝部を形成する第1のエッチング工程と、
第1のエッチング工程の後で、初期収容層の上面上に、第2の開口部を有する第2のエッチングマスクを形成する工程と、
初期収容層が収容層になり、溝部が収容部になるように、第2のエッチングマスクを用いて、反応性イオンエッチングによって初期収容層における溝部を含む部分をエッチングする第2のエッチング工程と、
収容部内に主磁極を形成する工程とを含んでいる。
【0019】
第1のエッチングマスクは、第1の開口部に面する第1および第2の側壁を有し、第1および第2の側壁はトラック幅方向について第1の間隔をあけて対向している。第2のエッチングマスクは、第2の開口部に面する第3および第4の側壁を有し、第3および第4の側壁は、トラック幅方向について第1の間隔よりも大きい第2の間隔をあけて対向している。収容部の媒体対向面に平行な任意の断面において、基板の上面に最も近い端は、基板の上面から最も遠い端に比べて、トラック幅方向の幅が小さい。
【0020】
本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法における収容層および主磁極を形成する工程、あるいは本発明の主磁極の形成方法は、更に、第1のエッチングマスクを形成する工程の前に、初期収容層の上面上に、収容層の壁面の位置を規定するための第3のエッチングマスクを形成する工程を含んでいてもよい。この場合には、第1のエッチング工程は、第1のエッチングマスクと第3のエッチングマスクを用いて初期収容層をエッチングする。また、第2のエッチング工程は、第2のエッチングマスクと第3のエッチングマスクを用いて初期収容層をエッチングする。
【0021】
また、本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法、あるいは本発明の主磁極の形成方法において、収容層の壁面が基板の上面に垂直な方向に対してなす角度は、10°以下であってもよい。
【0022】
また、本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法、あるいは本発明の主磁極の形成方法において、収容層は、コアを兼ねていてもよいし、クラッドを兼ねていてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法、あるいは本発明の主磁極の形成方法によれば、後端面が基板の上面に対して垂直またはほぼ垂直で、前端面において、基板の上面により近い第1の端部が、基板の上面からより遠い第2の端部に比べてトラック幅方向の幅が小さい形状の主磁極を容易に形成することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの要部を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの構成を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドにおける主磁極および収容層を示す正面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドにおける主磁極および収容層を示す断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法における一工程を示す断面図である。
【図7】図6に示した工程に続く工程を示す断面図である。
【図8】図7に示した工程に続く工程を示す断面図である。
【図9】図8に示した工程に続く工程を示す断面図である。
【図10】図9に示した工程に続く工程を示す断面図である。
【図11】図10に示した工程に続く工程を示す断面図である。
【図12】比較例の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法における一工程を示す断面図である。
【図13】図12に示した工程に続く工程の第1の例を示す断面図である。
【図14】図12に示した工程に続く工程の第2の例を示す断面図である。
【図15】本発明の第1の実施の形態における第1の変形例の熱アシスト磁気記録ヘッドの主磁極および収容層を示す正面図である。
【図16】本発明の第1の実施の形態における第2の変形例の熱アシスト磁気記録ヘッドの主磁極および収容層を示す正面図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの要部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1ないし図3を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの構成について説明する。図1は、熱アシスト磁気記録ヘッドの要部を示す斜視図である。図2は、熱アシスト磁気記録ヘッドの構成を示す断面図である。図3は、熱アシスト磁気記録ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
【0026】
本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドは、垂直磁気記録用であり、回転する記録媒体の表面から浮上するスライダの形態を有している。記録媒体が回転すると、記録媒体とスライダとの間を通過する空気流によって、スライダに揚力が生じる。スライダは、この揚力によって記録媒体の表面から浮上するようになっている。
【0027】
図2に示したように、熱アシスト磁気記録ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面40を備えている。ここで、X方向、Y方向、Z方向を以下のように定義する。X方向は、記録媒体のトラック横断方向すなわちトラック幅方向である。Y方向は、媒体対向面40に垂直な方向である。Z方向は、スライダから見た記録媒体の進行方向である。X方向、Y方向、Z方向は互いに直交している。
【0028】
図2および図3に示したように、熱アシスト磁気記録ヘッドは、アルミニウムオキサイド・チタニウムカーバイド(Al2O3・TiC)等のセラミック材料よりなり、上面1aを有する基板1と、この基板1の上面1a上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層2と、この絶縁層2の上に配置された磁性材料よりなる下部シールド層3と、絶縁層2の上において下部シールド層3の周囲に配置された絶縁層4とを備えている。絶縁層2,4は、例えばアルミナ(Al2O3)によって形成されている。Z方向は、基板1の上面1aに垂直な方向でもある。
【0029】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、下部シールド層3および絶縁層4の上面の上に配置された絶縁膜である下部シールドギャップ膜5と、この下部シールドギャップ膜5の上に配置された再生素子としてのMR(磁気抵抗効果)素子6と、このMR素子6に接続された2つのリード(図示せず)と、MR素子6の上に配置された絶縁膜である上部シールドギャップ膜7とを備えている。
【0030】
MR素子6の一端部は、記録媒体に対向する媒体対向面40に配置されている。MR素子6には、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子あるいはTMR(トンネル磁気抵抗効果)素子等の磁気抵抗効果を示す感磁膜を用いた素子を用いることができる。GMR素子としては、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ平行な方向に流すCIP(Current In Plane)タイプでもよいし、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ垂直な方向に流すCPP(Current Perpendicular to Plane)タイプでもよい。
【0031】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、上部シールドギャップ膜7の上に配置された磁性材料よりなるリターン磁極層10と、上部シールドギャップ膜7の上においてリターン磁極層10の周囲に配置された絶縁層11とを備えている。絶縁層11は、例えばアルミナによって形成されている。
【0032】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、媒体対向面40の近傍においてリターン磁極層10の上に配置された磁性材料よりなるシールド層12と、シールド層12に対して、媒体対向面40からより遠い位置においてリターン磁極層10の上に配置された磁性材料よりなる連結層13と、リターン磁極層10および絶縁層11の上において、シールド層12および連結層13の周囲に配置された絶縁層14とを備えている。シールド層12は、媒体対向面40に配置された端面を有している。絶縁層14は、例えばアルミナによって形成されている。
【0033】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、連結層13の上に配置された磁性材料よりなる連結層15と、シールド層12および絶縁層14の上において連結層15の周囲に配置された絶縁層16とを備えている。絶縁層16は、例えばアルミナによって形成されている。連結層15および絶縁層16の上面は平坦化されている。
【0034】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、媒体対向面40の近傍において絶縁層16の上に配置されたプラズモンジェネレータ18を備えている。プラズモンジェネレータ18は、金属によって形成されている。具体的には、プラズモンジェネレータ18は、例えば、Au、Ag、Al、Cu、Pd、Pt、Rh、Irのいずれか、またはこれらのうちの複数の元素よりなる合金によって形成されている。プラズモンジェネレータ18の形状については、後で詳しく説明する。
【0035】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、プラズモンジェネレータ18の上方に配置された磁性材料よりなる主磁極22と、主磁極22の上に配置された磁性材料よりなる連結層24とを備えている。主磁極22および連結層24は、それぞれ、媒体対向面40に配置された前端面と、前端面とは反対側の後端面とを有している。図2に示したように、連結層24の後端面は、基板1の上面1aに垂直な方向(Z方向)に対して傾いている。連結層24の後端面における任意の位置の媒体対向面40からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。主磁極22については、後で詳しく説明する。
【0036】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、コア21とクラッドとを有する導波路を備えている。コア21は、プラズモンジェネレータ18に対して、基板1の上面1aからより遠い側に配置されている。コア21は、媒体対向面40に向いた端面であって媒体対向面40から離れた位置に配置された端面21aを有している。主磁極22は、端面21aと媒体対向面40との間に配置されている。
【0037】
クラッドは、クラッド層19,23,25を含んでいる。クラッド層19は、連結層15、絶縁層16およびプラズモンジェネレータ18の上に配置されている。コア21と主磁極22は、クラッド層19の上に配置されている。プラズモンジェネレータ18とコア21および主磁極22との間には、クラッド層19が介在している。クラッド層23は、クラッド層19の上においてコア21の周囲に配置されている。コア21、主磁極22およびクラッド層23の上面は平坦化されている。クラッド層25は、コア21およびクラッド層23の上において連結層24の周囲に配置されている。
【0038】
コア21は、近接場光の発生に用いられるレーザ光を通過させる誘電体材料によって形成されている。コア21には、図示しないレーザダイオードから出射されたレーザ光が入射され、このレーザ光はコア21内を伝播する。クラッド層19,23,25は、コア21の屈折率よりも小さい屈折率を有する誘電体材料によって形成されている。コア21の材料としては、例えば、Ta2O5等の酸化タンタルや酸窒化ケイ素(SiON)が用いられ、クラッド層19,23,25の材料としては、例えば、酸化ケイ素(SiO2)やアルミナが用いられる。コア21については、後で更に詳しく説明する。
【0039】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、媒体対向面40から離れた位置においてクラッド層19,23,25に埋め込まれた2つの連結部17A,17Bを備えている。連結部17A,17Bは、磁性材料によって形成されている。連結部17A,17Bは、コア21のトラック幅方向の両側において、コア21に対して間隔をあけて配置されている。図示しないが、連結部17A,17Bは、それぞれ、連結層15の上に配置された第1層と、この第1層の上に順に配置された第2層および第3層とを有している。
【0040】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、連結層24の上に配置された磁性材料よりなる連結層27と、連結部17A,17Bの上に配置された磁性材料よりなる連結層28とを備えている。
【0041】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、クラッド層25の上に配置された絶縁層26と、絶縁層26に上に配置されたコイル30と備えている。コイル30は、平面渦巻き形状をなし、連結層28を中心として巻回されている。絶縁層26は、例えばアルミナによって形成されている。コイル30は、銅等の導電材料によって形成されている。
【0042】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、コイル30の巻線間および周囲ならびに連結層27,28の周囲に配置された絶縁層31と、コイル30および絶縁層31の上に配置された絶縁層32とを備えている。連結層27,28および絶縁層32の上面は平坦化されている。絶縁層31,32は、例えばアルミナによって形成されている。
【0043】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、連結層27,28および絶縁層32の上に配置された磁性材料よりなるヨーク層33と、ヨーク層33を覆うように配置された保護層35とを備えている。ヨーク層33は、連結層27と連結層28を磁気的に連結している。保護層35は、例えばアルミナによって形成されている。
【0044】
下部シールド層3からリターン磁極層10までの部分は、再生ヘッドを構成する。リターン磁極層10からヨーク層33までの部分は、記録ヘッドを構成する。コイル30は、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。シールド層12、リターン磁極層10、連結層13,15、連結部17A,17B、連結層28、ヨーク層33、連結層27,24および主磁極22は、コイル30が発生する磁界に対応した磁束を通過させる磁路を形成する。主磁極22は、コイル30によって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面40と再生ヘッドと記録ヘッドとを備えている。再生ヘッドと記録ヘッドは、基板1の上に積層されている。記録ヘッドは、再生ヘッドに対して、記録媒体の進行方向(Z方向)の前側(トレーリング側)に配置されている。
【0046】
再生ヘッドは、再生素子としてのMR素子6と、媒体対向面40側の一部がMR素子6を挟んで対向するように配置された、MR素子6をシールドするための下部シールド層3および上部シールド層とを備えている。本実施の形態では、記録ヘッドのリターン磁極層10は、再生ヘッドの上部シールド層を兼ねている。再生ヘッドは、更に、MR素子6と下部シールド層3との間に配置された下部シールドギャップ膜5と、MR素子6とリターン磁極層10との間に配置された上部シールドギャップ膜7とを備えている。
【0047】
記録ヘッドは、コイル30と、主磁極22と、導波路と、プラズモンジェネレータ18とを備えている。導波路は、コア21とクラッドとを有している。クラッドは、クラッド層19,23,25を含んでいる。コイル30は、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。主磁極22は、コイル30によって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。
【0048】
記録ヘッドは、更に、主磁極22を収容する収容部を含む収容層を備えている。本実施の形態では、収容層は、コア21を兼ねている。以下、図1、図4および図5を参照して、コア21、主磁極22および収容層について詳しく説明する。図4は、主磁極22および収容層を示す正面図である。図5は、主磁極22および収容層を示す断面図である。なお、図5は、媒体対向面40および基板1の上面1aに垂直な断面を示している。
【0049】
まず、収容層について説明する。本実施の形態では、特に、収容層は、コア21そのものである。図1、図4および図5に示したように、収容層20(コア21)は、主磁極22を収容する収容部201を含んでいる。また、収容層20は、収容部201に面する壁面20a,20b,20cを有している。収容部201の形状は、壁面20a,20b,20cによって規定される。壁面20aは、媒体対向面40から離れた位置に配置され、収容部201の媒体対向面40とは反対側の端部を規定している。壁面20b,20cは、収容部201のトラック幅方向の両側の端部を規定している。
【0050】
壁面20aは、基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直である。図5には、壁面20aが基板1の上面1aに垂直である例を示しているが、壁面20aは、基板1の上面1aに垂直な方向(Z方向)に対してわずかに傾いていてもよい。この場合、壁面20aにおける任意の位置の媒体対向面40からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから離れるに従って大きくなってもよいし、小さくなってもよい。壁面20aが基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は、例えば10°以下である。
【0051】
壁面20bは、連続する下部20b1と上部20b2とを含んでいる。壁面20cは、連続する下部20c1と上部20c2とを含んでいる。下部20b1,20c1と上部20b2,20c2は、いずれも、基板1の上面1aに垂直な方向に対して傾いている。収容部201の媒体対向面40に平行な任意の断面において、トラック幅方向(X方向)についての壁面20b,20c間の距離は、基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。図1および図4に示した例では、下部20b1と下部20c1がなす角度は、上部20b2と上部20c2がなす角度よりも小さい。また、収容部201の媒体対向面40に平行な任意の断面において、基板1の上面1aに最も近い端は、基板1の上面1aから最も遠い端に比べて、トラック幅方向(X方向)の幅が小さい。
【0052】
次に、主磁極22について説明する。主磁極22は、媒体対向面40に配置された前端面22aと、前端面22aとは反対側の後端面22bと、上面22cと、下面22dと、第1および第2の側面22e,22fとを有している。
【0053】
後端面22bは、収容層20の壁面20aに接している。後端面22bの形状は、壁面20aによって規定されている。前述のように壁面20aは基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直であることから、後端面22bも、基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直である。
【0054】
第1の側面22eは、収容層20の壁面20bに接している。第1の側面22eの形状は、壁面20bによって規定されている。第1の側面22eは、壁面20bと同様に、連続する下部22e1と上部22e2とを含んでいる。
【0055】
第2の側面22fは、収容層20の壁面20cに接している。第2の側面22fの形状は、壁面20cによって規定されている。第2の側面22fは、壁面20cと同様に、連続する下部22f1と上部22f2とを含んでいる。
【0056】
主磁極22の媒体対向面40に平行な任意の断面において、トラック幅方向(X方向)についての側面22e,22f間の距離は、基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。図1および図4に示した例では、下部22e1と下部22f1がなす角度は、上部22e2と上部22f2がなす角度よりも小さい。
【0057】
前端面22aは、基板1の上面1aにより近い第1の端部22a1と、基板1の上面1aからより遠い第2の端部22a2と、トラック幅方向の両側に位置する第3および第4の端部22a3,22a4とを有している。第1の端部22a1は、下面22dの端に位置している。第2の端部22a2は、上面22cの端に位置している。第1の端部22a1は、第2の端部22a2に比べてトラック幅方向の幅が小さい。
【0058】
第3の端部22a3は、連続する下部22a31と上部22a32とを含んでいる。下部22a31は、第1の側面22eの下部22e1の端に位置している。上部22a32は、第1の側面22eの上部22e2の端に位置している。
【0059】
第4の端部22a4は、連続する下部22a41と上部22a42とを含んでいる。下部22a41は、第2の側面22fの下部22f1の端に位置している。上部22a42は、第2の側面22fの上部22f2の端に位置している。
【0060】
次に、コア21について説明する。コア21は、媒体対向面40に向いた端面であって媒体対向面40から離れた位置に配置された端面21aと、媒体対向面40に配置された2つの端面21b1,21b2と、上面21cと、下面21dと、2つの側面21e,21fとを有している。本実施の形態では、特に、端面21aは、収容層20の壁面20aでもある。2つの端面21b1,21b2は、主磁極22の前端面22aのトラック幅方向の両側に配置されている。主磁極22の第1および第2の側面22e,22fは、コア21によって覆われている。
【0061】
次に、図1を参照して、プラズモンジェネレータ18の形状の一例について説明する。図1に示した例では、プラズモンジェネレータ18は、三角柱形状を有している。また、プラズモンジェネレータ18は、媒体対向面40に配置された前端面18aと、その反対側の後端面と、第1および第2の斜面と、下面とを有している。下面は、第1および第2の斜面を接続している。第1および第2の斜面は、それぞれ、基板1の上面1aに垂直な方向に対して傾いている。
【0062】
プラズモンジェネレータ18は、更に、第1および第2の斜面を接続するエッジ部18eと、媒体対向面40に配置され、近接場光を発生する近接場光発生部18gとを有している。近接場光発生部18gは、エッジ部18eの一端に位置している。第1および第2の斜面の互いの距離は、エッジ部18eに近づくに従って小さくなっている。エッジ部18eは、コア21の下面21dおよび主磁極22の下面22dに対して、所定の間隔をもって対向して、媒体対向面40に垂直な方向(Y方向)に延びている。
【0063】
前端面18aの形状は、三角形である。前端面18aの頂点の1つは、エッジ部18eの端に位置する。この頂点は、近接場光発生部18gを形成する。
【0064】
媒体対向面40に垂直な方向(Y方向)についてのプラズモンジェネレータ18の長さは、基板1の上面1aに垂直な方向(Z方向)についての前端面18aの長さよりも大きい。前端面18aの下端部の幅とZ方向の長さは共に、コア21を伝播する光の波長以下であり、例えば100〜500nmの範囲内である。プラズモンジェネレータ18のY方向の長さは、例えば0.25〜2.5μmの範囲内である。また、エッジ部18eとコア21の下面21dとの間の間隔は、例えば10〜50nmの範囲内である。
【0065】
なお、プラズモンジェネレータ18の形状は、図1を参照して説明した上記の例に限られない。
【0066】
次に、本実施の形態における近接場光発生の原理と、近接場光を用いた熱アシスト磁気記録の原理について詳しく説明する。図示しないレーザダイオードから出射されたレーザ光はコア21に入射される。図2に示したように、レーザ光50は、コア21内を媒体対向面40に向けて伝播して、プラズモンジェネレータ18の近傍に達する。ここで、コア21の下面21dにおいて、レーザ光50が全反射することによって、クラッド層19内にしみ出すエバネッセント光が発生する。その結果、このエバネッセント光と、プラズモンジェネレータ18におけるエッジ部18eおよびその近傍部分における電荷の集団振動すなわち表面プラズモンとが結合した系である表面プラズモン・ポラリトンが励起される。このようにして、プラズモンジェネレータ18におけるエッジ部18eおよびその近傍部分に表面プラズモンが励起される。
【0067】
プラズモンジェネレータ18に励起された表面プラズモンは、エッジ部18eに沿って近接場光発生部18gに伝播される。その結果、近接場光発生部18gにおいて表面プラズモンが集中し、この表面プラズモンに基づいて、近接場光発生部18gから近接場光が発生する。この近接場光は、記録媒体に向けて照射され、記録媒体の表面に達し、記録媒体の磁気記録層の一部を加熱する。これにより、その磁気記録層の一部の保磁力が低下する。熱アシスト磁気記録では、このようにして保磁力が低下した磁気記録層の一部に対して、主磁極22より発生される記録磁界を印加することによってデータの記録が行われる。
【0068】
次に、図2および図3を参照して、本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法について説明する。本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法は、複数の熱アシスト磁気記録ヘッドの基板1となる部分を含む基板上に、複数の熱アシスト磁気記録ヘッドの基板1以外の構成要素を形成して、それぞれ後に熱アシスト磁気記録ヘッドとなるヘッド予定部が複数列に配列された基礎構造物を作製する工程と、この基礎構造物を切断することによって複数のヘッド予定部を互いに分離して、複数の熱アシスト磁気記録ヘッドを形成する工程とを備えている。複数の熱アシスト磁気記録ヘッドを形成する工程では、切断によって形成された面を研磨して媒体対向面40を形成する。
【0069】
以下、1つの熱アシスト磁気記録ヘッドに注目して、本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法を更に詳しく説明する。本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法では、まず、基板1の上に絶縁層2を形成する。次に、絶縁層2の上に下部シールド層3を形成する。次に、下部シールド層3を覆うように絶縁層4を形成する。次に、例えば化学機械研磨(以下、CMPと記す。)によって、下部シールド層3が露出するまで絶縁層4を研磨する。
【0070】
次に、下部シールド層3および絶縁層4の上に下部シールドギャップ膜5を形成する。次に、下部シールドギャップ膜5の上にMR素子6と、MR素子6に接続される図示しない2つのリードとを形成する。次に、MR素子6およびリードを覆うように上部シールドギャップ膜7を形成する。次に、上部シールドギャップ膜7の上にリターン磁極層10を形成する。次に、リターン磁極層10を覆うように絶縁層11を形成する。次に、例えばCMPによって、リターン磁極層10が露出するまで絶縁層11を研磨する。
【0071】
次に、リターン磁極層10の上にシールド層12と連結層13を形成する。次に、リターン磁極層10、シールド層12および連結層13を覆うように絶縁層14を形成する。次に、例えばCMPによって、シールド層12および連結層13が露出するまで絶縁層14を研磨する。
【0072】
次に、連結層13の上に連結層15を形成する。次に、連結層15を覆うように絶縁層16を形成する。次に、例えばCMPによって、連結層15が露出するまで絶縁層16を研磨して、連結層15および絶縁層16の上面を平坦化する。
【0073】
次に、絶縁層16の上にプラズモンジェネレータ18を形成する。また、連結層15の上に、連結部17A,17Bのそれぞれの第1層を形成する。次に、プラズモンジェネレータ18および連結部17A,17Bのそれぞれの第1層を覆うようにクラッド層19を形成する。次に、例えばCMPによって、連結部17A,17Bのそれぞれの第1層が露出するまでクラッド層19を研磨する。
【0074】
次に、連結部17A,17Bのそれぞれの第1層の上に、連結部17A,17Bのそれぞれの第2層を形成する。また、クラッド層19の上にコア21、主磁極22およびクラッド層23を形成する。コア21、主磁極22およびクラッド層23を形成する工程については、後で詳しく説明する。
【0075】
次に、連結部17A,17Bのそれぞれの第2層の上に、連結部17A,17Bのそれぞれの第3層を形成する。次に、コア21および連結部17A,17Bのそれぞれの第3層を覆うようにクラッド層25を形成する。次に、例えばCMPによって、連結部17A,17Bのそれぞれの第3層が露出するまでクラッド層25を研磨する。次に、クラッド層25を選択的にエッチングして、クラッド層25に、連結層24を収容する収容部を形成する。次に、クラッド層25の収容部内に連結層24を形成する。
【0076】
次に、積層体の上面全体の上に、絶縁層26を形成する。次に、絶縁層26を選択的にエッチングして、絶縁層26に、連結層24の上面を露出させる開口部と、連結部17A,17Bのそれぞれの第3層の上面を露出させる開口部とを形成する。次に、連結層24の上に連結層27を形成する。また、連結部17A,17Bのそれぞれの第3層の上に連結層28を形成する。次に、絶縁層26の上にコイル30を形成する。次に、コイル30の巻線間および周囲ならびに連結層27,28の周囲に絶縁層31を形成する。次に、積層体の上面全体の上に、絶縁層32を形成する。次に、例えばCMPによって、連結層27,28が露出するまで絶縁層32を研磨して、連結層27,28および絶縁層32の上面を平坦化する。
【0077】
次に、連結層27,28および絶縁層32の上にヨーク層33を形成する。次に、ヨーク層33を覆うように保護層35を形成する。次に、保護層35の上面に配線や端子等を形成する。
【0078】
このようにして、基礎構造物が完成したら、この基礎構造物を切断することによって複数のヘッド予定部を互いに分離し、媒体対向面40の研磨、浮上用レールの作製等を行って、熱アシスト磁気記録ヘッドが完成する。
【0079】
次に、図6ないし図11を参照して、コア21、主磁極22およびクラッド層23を形成する工程について詳しく説明する。図6ないし図11は、熱アシスト磁気記録ヘッドの製造過程における積層体を示している。図6ないし図11において、(a)は、それぞれ、積層体における媒体対向面40が形成される予定の位置における断面を表している。図6ないし図11において、(b)は、それぞれ、積層体における媒体対向面40および基板1の上面1aに垂直な断面を表している。なお、コア21および主磁極22を形成する工程は、本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法における収容層および主磁極を形成する工程、ならびに本発明の主磁極の形成方法に対応する。
【0080】
図6は、クラッド層19を形成した後の工程を示している。この工程では、まず、クラッド層19の上に、上面を有し、後に収容部201および壁面20a,20b,20cが形成されることによって収容層20(コア21)となる初期収容層20Pを形成する。次に、初期収容層20Pの上面上に、マスク材料層51Pを形成する。マスク材料層51Pの材料としては、例えばC、NiFe、NiCr、Ruのいずれかを用いることができる。次に、媒体対向面40が形成される予定の位置から離れた位置において、マスク材料層51Pの上面上に、エッチングマスク52を形成する。エッチングマスク52は、フォトリソグラフィによってフォトレジスト層をパターニングして形成する。エッチングマスク52は、媒体対向面40が形成される予定の位置に向いた側壁52aを有している。
【0081】
次に、エッチングマスク52をエッチングマスクとして用いて、例えばイオンビームエッチングによって、マスク材料層51Pをエッチングする。なお、図6(b)において、矢印はイオンビームを表している。これにより、マスク材料層51Pは、エッチングマスク51となる。次に、エッチングマスク52を除去する。
【0082】
エッチングマスク51は、側壁52aによってその位置が規定された端部51aを有している。端部51aと媒体対向面40が形成される予定の位置との間の距離は、後に形成される収容層20の壁面20aと媒体対向面40との間の距離と等しい。エッチングマスク51は、後に、収容層20の壁面20aの位置を規定するために用いられる。エッチングマスク51は、本発明における第3のエッチングマスクに対応する。
【0083】
図7は、次の工程を示す。この工程では、初期収容層20Pおよびエッチングマスク51の上面上に、少なくとも媒体対向面40が形成される予定の位置からエッチングマスク51の端部51aにかけて開口する第1の開口部531を有するエッチングマスク53を形成する。エッチングマスク53は、フォトリソグラフィによってフォトレジスト層をパターニングして形成する。エッチングマスク53は、第1の開口部531に面する側壁53a,53b,53cを有している。側壁53a,53bは、トラック幅方向(X方向)について第1の間隔D1をあけて対向している。側壁53cは、媒体対向面40が形成される予定の位置に向いている。また、側壁53cは、エッチングマスク51の端部51aに対して、媒体対向面40が形成される予定の位置からより遠い位置に配置されている。エッチングマスク53は、本発明における第1のエッチングマスクに対応する。また、側壁53aは、本発明における第1の側壁に対応し、側壁53bは、本発明における第2の側壁に対応する。
【0084】
図8は、次の工程を示す。この工程では、まず、エッチングマスク51,53を用いて、反応性イオンエッチング(以下、RIEと記す。)によって初期収容層20Pをエッチングして、初期収容層20Pに溝部20P1を形成する。溝部20P1は、その底部がクラッド層19の上面に達しないように形成される。この工程を第1のエッチング工程と呼ぶ。エッチングガスとしては、例えばCl2とBCl3とを含むガスが用いられる。次に、エッチングマスク53を除去する。
【0085】
第1のエッチング工程では、初期収容層20Pには、溝部20P1に面する壁面20Pa,20Pb,20Pcが形成される。壁面20Pa,20Pb,20Pcは、いずれも、基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直である。壁面20Paの位置は、エッチングマスク51の端部51aによって規定される。壁面20Pb,20Pcの位置は、それぞれエッチングマスク53の側壁53a,53bによって規定される。
【0086】
図9は、次の工程を示す。この工程では、初期収容層20Pおよびエッチングマスク51の上面上に、少なくとも媒体対向面40が形成される予定の位置からエッチングマスク51の端部51aにかけて開口する第2の開口部541を有するエッチングマスク54を形成する。エッチングマスク54は、フォトリソグラフィによってフォトレジスト層をパターニングして形成する。エッチングマスク54は、第2の開口部541に面する側壁54a,54b,54cを有している。側壁54a,54bは、トラック幅方向(X方向)について第1の間隔D1よりも大きい第2の間隔D2をあけて対向している。側壁54cは、媒体対向面40が形成される予定の位置に向いている。また、側壁54cは、エッチングマスク51の端部51aに対して、媒体対向面40が形成される予定の位置からより遠い位置に配置されている。エッチングマスク54は、本発明における第2のエッチングマスクに対応する。また、側壁54aは、本発明における第3の側壁に対応し、側壁54bは、本発明における第4の側壁に対応する。
【0087】
図10は、次の工程を示す。この工程では、まず、初期収容層20Pが収容層20(コア21)になり、溝部20P1が収容部201になるように、エッチングマスク51,54を用いて、RIEによって初期収容層20Pにおける溝部20P1を含む部分をエッチングする。このエッチングは、クラッド層19の上面が露出するまで行う。この工程を第2のエッチング工程と呼ぶ。次に、エッチングマスク54を除去する。
【0088】
第2のエッチング工程では、収容層20には、収容部201に面する壁面20a,20b,20cが形成される。エッチングマスク54の側壁54a,54bは、溝部20P1の縁よりもトラック幅方向(X方向)の外側に配置されている。そのため、初期収容層20Pの上面のうちエッチングマスク54によって覆われずに露出している部分と、溝部20P1の上端近傍の部分には、溝部20P1の底部に比べて、より多くのエッチングガスが供給される。これにより、第2のエッチング工程では、初期収容層20Pの上面の露出している部分および溝部20P1の上端近傍の部分におけるエッチング速度は、溝部20P1の底部におけるエッチング速度よりも大きくなる。その結果、第2のエッチング工程では、図10(a)に示したように、基板1の上面1aから離れるに従ってトラック幅方向(X方向)についての壁面20b,20c間の距離が大きくなるように、壁面20b,20cが形成される。そのため、収容部201の媒体対向面40に平行な任意の断面において、基板1の上面1aに最も近い端は、基板1の上面1aから最も遠い端に比べて、トラック幅方向の幅が小さくなる。
【0089】
また、第2のエッチング工程では、壁面20Paの真上にエッチングマスク51の端部51aが位置している。第2のエッチング工程において、初期収容層20Pの上面のうち、エッチングマスク51によって覆われている部分はエッチングされない。そのため、第2のエッチング工程では、端部51aの下方、すなわち壁面20Paの下方に、初期収容層20Pのエッチングが進行し、その結果、エッチングマスク51の端部51aの真下に、基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直な壁面20aが形成される。このように、エッチングマスク51は、壁面20aの位置を規定するために用いられる。
【0090】
第2のエッチング工程では、第1のエッチング工程と同様に、エッチングガスとしては、例えばCl2とBCl3とを含むガスが用いられる。初期収容層20Pが酸化タンタルまたは酸窒化ケイ素によって形成されている場合には、Cl2とBCl3とを含むガスの代りに、CF4を含むガスを用いてもよい。特に、初期収容層20Pが酸窒化ケイ素によって形成されている場合には、エッチングガスとして、CF4を含むガスが適している。
【0091】
なお、第1および第2のエッチング工程による初期収容層20Pの全エッチング深さに対する、第1のエッチング工程による初期収容層20Pのエッチング深さの割合は、例えば30%から70%の範囲内である。
【0092】
また、第1のエッチング工程では、時間の経過と共にトラック幅方向(X方向)についての側壁53a,53bの間隔が徐々に大きくなるように、エッチングマスク53がエッチングされてもよい。この場合には、基板1の上面1aから離れるに従ってトラック幅方向についての壁面20Pb,20Pc間の距離が大きくなるように、初期収容層20Pが形成される。
【0093】
同様に、第2のエッチング工程でも、時間の経過と共にトラック幅方向(X方向)についての側壁54a,54bの間隔が徐々に大きくなるように、エッチングマスク54がエッチングされてもよい。この場合には、基板1の上面1aに垂直な方向に対する収容層20の壁面20b,20cの傾きが大きくなる。
【0094】
図11は、次の工程を示す。この工程では、まず、例えばめっき法によって、収容部201内に、後に主磁極22となる磁性層を形成する。この磁性層は、その上面がエッチングマスク51の上面よりも上方に配置されるように形成される。次に、積層体の上面全体の上に、クラッド層23を形成する。クラッド層23は、その上面がエッチングマスク51の上面よりも上方に配置されるように形成される。次に、例えばCMPによって、収容層20の上面が露出するまで、磁性層、クラッド層23およびエッチングマスク51を研磨する。これにより、磁性層は、主磁極22となる。
【0095】
主磁極22の後端面22bは、収容層20の壁面20aに沿って形成される。これにより、後端面22bの形状が規定される。同様に、主磁極22の側面22e,22fは、それぞれ、収容層20の壁面20b,20cに沿って形成される。これにより、側面22e,22fの形状が規定される。
【0096】
以上説明したように、本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドでは、コア21は、媒体対向面40に向いた端面であって媒体対向面40から離れた位置に配置された端面21aを有し、プラズモンジェネレータ18に対して、基板1の上面1aからより遠い側に配置されている。主磁極22は、前端面22aおよび後端面22bを有し、コア21の端面21aと媒体対向面40との間に配置されている。主磁極22の前端面22aは、基板1の上面1aにより近い第1の端部22a1が、基板1の上面1aからより遠い第2の端部22a2に比べてトラック幅方向の幅が小さい形状を有している。これにより、本実施の形態によれば、主磁極22の前端面22aのうち、基板1の上面1aにより近い部分、すなわち、プラズモンジェネレータ18により近い部分から局所的に大きな記録磁界を発生させることができる。
【0097】
また、本実施の形態では、主磁極22は、収容層20の収容部201に収容されている。収容層20は、主磁極22の後端面22bの形状を規定する壁面20aを有している。主磁極22の後端面22bの形状は、壁面20aによって規定されている。壁面20aは基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直であることから、後端面22bも、基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直である。これにより、本実施の形態によれば、主磁極22の後端面22bが基板1の上面1aに垂直な方向に対して傾いている場合に比べて、後端面22bに接する収容層20の壁面20aすなわちコア21の端面21aを媒体対向面40に近づけて、プラズモンジェネレータ18における表面プラズモンの励起を媒体対向面40の近くで行わせることが可能になると共に、コア21の端面21aと主磁極22の後端面22bとの接触面積を小さくして、コア21を伝播する光のうち主磁極22に吸収される光の割合を小さくすることが可能になる。その結果、本実施の形態によれば、コア21を伝播する光を効率よく近接場光に変換することが可能になる。
【0098】
また、本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法における収容層20および主磁極22を形成する工程、ならびに本実施の形態に係る主磁極22の形成方法では、まず、上面を有する初期収容層20Pを形成する。次に、初期収容層20Pの上面上に、エッチングマスク51を形成する。次に、初期収容層20Pおよびエッチングマスク51の上面上に、第1の開口部531を有するエッチングマスク53を形成する。エッチングマスク53は、第1の開口部531に面する側壁53a,53bを有している。側壁53a,53bは、トラック幅方向(X方向)について第1の間隔D1をあけて対向している。次に、エッチングマスク51,53を用いて、RIEによって初期収容層20Pをエッチングして、初期収容層20Pに溝部20P1を形成する第1のエッチング工程を行う。次に、初期収容層20Pおよびエッチングマスク51の上面上に、第2の開口部541を有するエッチングマスク54を形成する。エッチングマスク54は、第2の開口部541に面する側壁54a,54bを有している。側壁54a,54bは、トラック幅方向について第1の間隔D1よりも大きい第2の間隔D2をあけて対向している。次に、初期収容層20Pが収容層20になり、溝部20P1が収容部201になるように、エッチングマスク51,54を用いて、RIEによって初期収容層20Pにおける溝部20P1を含む部分をエッチングする第2のエッチング工程を行う。
【0099】
このような方法によれば、前述のように、壁面20aが基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直になり、収容部201の媒体対向面40に平行な任意の断面において、基板1の上面1aに最も近い端が、基板1の上面1aから最も遠い端に比べて、トラック幅方向の幅が小さくなるように、収容部201を形成することができる。そして、このような形状の収容部201内に主磁極22を形成することによって、所望の形状、すなわち後端面22bが基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直で、前端面22aにおいて、第1の端部22a1が第2の端部22a2に比べてトラック幅方向の幅が小さい形状の主磁極22を容易に形成することが可能になる。
【0100】
本実施の形態では、エッチングマスク51によって、収容層20の壁面20aの位置を規定している。しかし、エッチングマスク51を設けずに、エッチング53の側壁53cの位置、およびエッチング54の側壁54cの位置を、壁面20aを形成すべき位置に合わせて、側壁53c,54cによって壁面20aの位置を規定することも可能である。
【0101】
次に、比較例の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法と比較しながら、本実施の形態の効果について更に詳しく説明する。始めに、図12ないし図14を参照して、比較例の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法について説明する。図12ないし図14は、比較例の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造過程における積層体を示している。図12ないし図14において、(a)は、それぞれ、積層体における媒体対向面40が形成される予定の位置における断面を表している。図12ないし図14において、(b)は、それぞれ、積層体における媒体対向面40および基板1の上面1aに垂直な断面を表している。
【0102】
比較例の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法では、エッチングマスク51を形成する工程までは、図6に示した本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法と同じである。図12は、エッチングマスク51を形成した後の工程を示している。この工程では、初期収容層20Pおよびエッチングマスク51の上面上に、開口部551を有するエッチングマスク55を形成する。エッチングマスク55は、開口部551に面する側壁55a,55b,55cを有している。側壁55a,55bは、トラック幅方向(X方向)について所定の間隔をあけて対向している。側壁55cは、媒体対向面40が形成される予定の位置に向いている。また、側壁55cは、エッチングマスク51の端部51aに対して、媒体対向面40が形成される予定の位置からより遠い位置に配置されている。
【0103】
比較例の製造方法では、次に、エッチングマスク51,55を用いて、初期収容層20Pが収容層20になるように、例えばRIEによって初期収容層20Pをエッチングする。この工程を比較例のエッチング工程と呼ぶ。
【0104】
図13は、比較例のエッチング工程の第1の例を示している。第1の例では、収容部201に面し、基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直な収容層20の壁面120a,120b,120cが形成されるように、初期収容層20Pをエッチングする。第1の例では、エッチングガスとしては、例えばCl2とBCl3とを含むガスが用いられる。壁面120a,120b,120cは、それぞれ、本実施の形態における壁面20a,20b,20cに対応する。
【0105】
図14は、比較例のエッチング工程の第2の例を示している。第2の例では、収容部201に面し、基板1の上面1aに垂直な方向に対して傾いた収容層20の壁面220a,220b,220cが形成されるように、初期収容層20Pをテーパーエッチングする。第2の例では、エッチングガスとしては、例えばCl2およびBCl3と、N2とCF4の少なくとも一方とを含むガスが用いられる。壁面220a,220b,220cは、それぞれ、本実施の形態における壁面20a,20b,20cに対応する。
【0106】
比較例の製造方法では、収容部201に面する収容層20の壁面は、全て基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直な面になるか、全て基板1の上面1aに垂直な方向に対して傾いた面になる。このように、比較例では、壁面20aが基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直になり、収容部201の媒体対向面40に平行な任意の断面において、基板1の上面1aに最も近い端が、基板1の上面1aから最も遠い端に比べて、トラック幅方向の幅が小さくなるような収容部201を形成することができない。従って、比較例では、後端面22bが基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直で、前端面22aにおいて、第1の端部22a1が第2の端部22a2に比べてトラック幅方向の幅が小さい、所望の形状の主磁極22を形成することができない。
【0107】
これに対し、本実施の形態によれば、前述のように、壁面20aが基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直になり、収容部201の媒体対向面40に平行な任意の断面において、基板1の上面1aに最も近い端が、基板1の上面1aから最も遠い端に比べて、トラック幅方向の幅が小さくなるように、収容部201を形成することができる。これにより、所望の形状の主磁極22を容易に形成することが可能になる。
【0108】
以下、本実施の形態におけるその他の効果について説明する。本実施の形態では、プラズモンジェネレータ18のエッジ部18eが、コア21の下面21dに対して、所定の間隔をもって対向している。そして、エッジ部18eにおいて、コア21を伝播するレーザ光に基づいてコア21の下面21dにおいて発生するエバネッセント光と結合することによって表面プラズモンが励起され、この表面プラズモンがエッジ部18eに沿って近接場光発生部18gに伝播され、この表面プラズモンに基づいて近接場光発生部18gより近接場光が発生される。本実施の形態によれば、レーザ光をプラズモンジェネレータ18に直接照射して近接場光を発生させる場合に比べて、コア21を伝播する光の近接場光への変換の効率を高めることができる。
【0109】
[変形例]
次に、図15および図16を参照して、本実施の形態における第1および第2の変形例について説明する。図15は、本実施の形態における第1の変形例の熱アシスト磁気記録ヘッドの主磁極および収容層を示す正面図である。図16は、本実施の形態における第2の変形例の熱アシスト磁気記録ヘッドの主磁極および収容層を示す正面図である。
【0110】
第1の変形例では、収容層20は、壁面20b,20cの代りに、壁面60b,60cを有している。収容部201の媒体対向面40に平行な任意の断面において、トラック幅方向(X方向)についての壁面60b,60c間の距離は、基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。
【0111】
また、第1の変形例では、主磁極22は、第1および第2の側面22e,22fの代りに、第1および第2の側面122e,122fを有している。第1および第2の側面122e,122fは、コア21によって覆われている。第1の側面122eは、壁面60bに接している。第2の側面122fは、壁面60cに接している。主磁極22の媒体対向面40に平行な任意の断面において、トラック幅方向(X方向)についての側面122e,122f間の距離は、基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。
【0112】
第2の変形例では、収容層20は、壁面20b,20cの代りに、壁面70b,70cを有している。壁面70bは、下部70b1と、上部70b2と、下部70b1と上部70b2とを連結する連結部70b3とを含んでいる。壁面70cは、下部70c1と、上部70c2と、下部70c1と上部70c2とを連結する連結部70c3とを含んでいる。下部70b1,70c1と上部70b2,70c2は、いずれも、基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直である。連結部70b3,70c3は、いずれも、基板1の上面1aに平行またはほぼ平行である。下部70b1,70c1の間隔は、上部70b2,70c2の間隔よりも小さい。
【0113】
また、第2の変形例では、主磁極22は、第1および第2の側面22e,22fの代りに、第1および第2の側面222e,222fを有している。第1および第2の側面222e,222fは、コア21によって覆われている。第1の側面222eは、壁面70bに接している。第1の側面222eは、壁面70bと同様に、下部222e1、上部222e2および連結部222e3を含んでいる。第2の側面222fは、壁面70cに接している。第2の側面222fは、壁面70cと同様に、下部222f1、上部222f2および連結部222f3を含んでいる。
【0114】
図4に示した壁面20b,20c、第1の変形例の壁面60b,60cや、第2の変形例の壁面70b,70cの形状は、第1および第2のエッチング工程におけるエッチング速度等のエッチング条件を変えることによって制御することが可能である。
【0115】
[第2の実施の形態]
次に、図17を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図17は、本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの要部を示す斜視図である。本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドは、第1の実施の形態における収容層20、コア21およびクラッド層23の代りに、収容層80、コア81およびクラッド層83を備えている。収容層80は、コア81とクラッド層83を兼ねている。
【0116】
収容層80は、主磁極22を収容する収容部801を有している。また、収容層80は、収容部801に面する壁面80a,80b,80cを有している。壁面80a,80b,80cの形状および配置は、第1の実施の形態における壁面20a,20b,20cと同じである。
【0117】
コア81は、媒体対向面40に向いた端面であって、媒体対向面40から離れた位置に配置された端面81aを有している。本実施の形態では、コア81は、第1の実施の形態におけるコア21と異なり、媒体対向面40に配置された端面を有していない。収容層80の壁面80aは、コア81の端面81aの一部によって構成されている。
【0118】
主磁極22と、クラッド層83の一部は、コア81の端面81aと媒体対向面40との間に配置されている。主磁極22の第1および第2の側面22e,22fは、クラッド層83によって覆われている。クラッド層83は、収容層80の壁面80b,80cを構成する2つの壁面を有している。
【0119】
本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法における収容層80および主磁極22を形成する工程、ならびに本実施の形態に係る主磁極22の形成方法は、以下の点で第1の実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法における収容層20および主磁極22を形成する工程、ならびに第1の実施の形態に係る主磁極22の形成方法と異なっている。本実施の形態では、第1の実施の形態における初期収容層20Pの代りに、後に収容層80となる初期収容層を形成する。この初期収容層は、コア81と、後にクラッド層83となる誘電体層とによって構成されている。また、本実施の形態における第1のエッチング工程では、RIEによって、初期収容層のうち、上記誘電体層をエッチングして、初期収容層(誘電体層)に溝部を形成する。また、本実施の形態における第2のエッチング工程では、初期収容層が収容層80になり、上記溝部が収容部801になるように、RIEによって、上記誘電体層における上記溝部を含む部分をエッチングする。
【0120】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0121】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明において、収容層20の壁面20b,20c(収容層80の壁面80b,80c)は、曲面であってもよい。
【符号の説明】
【0122】
1…基板、18…プラズモンジェネレータ、20…収容層、20P…初期収容層、21…コア、22…主磁極、22a…前端面、22b…後端面、40…媒体対向面、53,54…エッチングマスク、531…第1の開口部、541…第2の開口部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に近接場光を照射して記録媒体の保磁力を低下させて情報の記録を行う熱アシスト磁気記録ヘッドにおける主磁極の形成方法、および熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク装置等の磁気記録装置では、高記録密度化に伴い、薄膜磁気ヘッドおよび記録媒体の性能向上が要求されている。薄膜磁気ヘッドとしては、基板に対して、読み出し用の磁気抵抗効果素子(以下、MR(Magnetoresistive)素子とも記す。)を有する再生ヘッドと書き込み用の誘導型電磁変換素子を有する記録ヘッドとを積層した構造の複合型薄膜磁気ヘッドが広く用いられている。磁気ディスク装置において、薄膜磁気ヘッドは、磁気記録媒体の表面からわずかに浮上するスライダに設けられる。
【0003】
磁気記録装置において、記録密度を高めるためには、記録媒体の磁性微粒子を小さくすることが効果的である。しかし、磁性微粒子を小さくすると、磁性微粒子の磁化の熱安定性が低下するという問題が発生する。この問題を解消するには、磁性微粒子の異方性エネルギーを大きくすることが効果的である。しかし、磁性微粒子の異方性エネルギーを大きくすると、記録媒体の保磁力が大きくなって、既存の磁気ヘッドでは情報の記録が困難になるという問題が発生する。
【0004】
上述のような問題を解決する方法として、いわゆる熱アシスト磁気記録という方法が提案されている。この方法では、保磁力の大きな記録媒体を使用し、情報の記録時には、記録媒体のうち情報が記録される部分に対して記録磁界と同時に熱も加えて、その部分の温度を上昇させ保磁力を低下させて情報の記録を行う。情報が記録された部分は、その後、温度が低下して保磁力が大きくなり、磁化の熱安定性が高まる。以下、熱アシスト磁気記録に用いられる磁気ヘッドを、熱アシスト磁気記録ヘッドと呼ぶ。
【0005】
熱アシスト磁気記録では、記録媒体に対して熱を加える方法としては、近接場光を用いる方法が一般的である。近接場光を発生させる方法としては、レーザ光によって励起されたプラズモンから近接場光を発生する金属片であるプラズモンジェネレータを用いる方法が知られている。また、一般的に、近接場光の発生に利用されるレーザ光は、スライダに設けられた導波路によって、スライダの媒体対向面の近傍に設けられたプラズモンジェネレータに導かれる。
【0006】
特許文献1には、導波路を伝播する光を、プラズモンジェネレータに対して、緩衝部を介して表面プラズモンモードで結合させて、プラズモンジェネレータに表面プラズモンを励起させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−160872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、記録磁界を発生する主磁極と、上記導波路およびプラズモンジェネレータを備えた熱アシスト磁気記録ヘッドでは、媒体対向面の近傍の非常に小さな領域内に、主磁極と、導波路のコアの一部と、プラズモンジェネレータとを配置することが要求される。
【0009】
上記の要求に応えるための熱アシスト磁気記録ヘッドの構成としては、プラズモンジェネレータに対して、基板の上面からより遠い側にコアが配置され、コアは媒体対向面に向いた端面であって媒体対向面から離れた位置に配置された端面を有し、このコアの端面と媒体対向面との間に主磁極が配置された構成が考えられる。
【0010】
上記の構成では、主磁極は、媒体対向面に配置された端面である前端面と、それとは反対側の端面である後端面とを有する。上記の構成を採用する場合には、主磁極の前端面のうち、プラズモンジェネレータにより近い部分から局所的に大きな記録磁界が発生することが求められる。そのためには、主磁極の前端面の形状としては、基板の上面により近い第1の端部が、基板の上面からより遠い第2の端部に比べてトラック幅方向の幅が小さい形状であることが好ましい。
【0011】
また、上記の構成を採用する場合には、コアを伝播する光が効率よく近接場光に変換されることが求められる。そのためには、媒体対向面に向いたコアの端面をできるだけ媒体対向面に近づけ、プラズモンジェネレータにおける表面プラズモンの励起をできるだけ媒体対向面の近くで行わせることが好ましい。また、コアの端面と主磁極の後端面との接触面積が大きいと、コアを伝播する光のうち主磁極に吸収される光の割合が多くなることから、コアの端面と主磁極の後端面との接触面積をできるだけ小さくすることが好ましい。これらを考慮すると、主磁極の後端面は、基板の上面に対して垂直またはほぼ垂直であることが好ましい。
【0012】
以上のことから、上記の構成を採用する場合には、主磁極としては、後端面が基板の上面に対して垂直またはほぼ垂直であって、前端面において、前記第1の端部が第2の端部に比べてトラック幅方向の幅が小さい形状のものであるものが好ましい。しかしながら、このような形状の主磁極を形成することは容易ではない。
【0013】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、プラズモンジェネレータに対して、基板の上面からより遠い側に導波路のコアが配置され、コアは、媒体対向面に向いた端面であって媒体対向面から離れた位置に配置された端面を有し、このコアの端面と媒体対向面との間に主磁極が配置された構成の熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、後端面が基板の上面に対して垂直またはほぼ垂直で、前端面において、基板の上面により近い第1の端部が、基板の上面からより遠い第2の端部に比べてトラック幅方向の幅が小さい形状の主磁極を容易に形成できるようにした主磁極の形成方法を提供することにある。
【0014】
本発明の第2の目的は、プラズモンジェネレータに対して、基板の上面からより遠い側に導波路のコアが配置され、コアは、媒体対向面に向いた端面であって媒体対向面から離れた位置に配置された端面を有し、このコアの端面と媒体対向面との間に主磁極が配置された構成の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法であって、後端面が基板の上面に対して垂直またはほぼ垂直で、前端面において、基板の上面により近い第1の端部が、基板の上面からより遠い第2の端部に比べてトラック幅方向の幅が小さい形状の主磁極を容易に形成できるようにした熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の主磁極の形成方法および熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法が適用される熱アシスト磁気記録ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面と、情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する主磁極と、主磁極を収容する収容部を含む収容層と、光を伝播させるコアとクラッドとを有する導波路と、プラズモンジェネレータと、上面を有する基板とを備えている。主磁極、収容層、導波路およびプラズモンジェネレータは、基板の上面の上方に配置されている。プラズモンジェネレータは、媒体対向面に配置された近接場光発生部を有し、コアを伝播する光に基づいてプラズモンが励起され、このプラズモンに基づいて近接場光発生部より近接場光を発生するものである。
【0016】
コアは、媒体対向面に向いた端面であって媒体対向面から離れた位置に配置された端面を有し、プラズモンジェネレータに対して、基板の上面からより遠い側に配置されている。主磁極は、媒体対向面に配置された前端面と、前端面とは反対側の後端面とを有し、コアの端面と媒体対向面との間に配置されている。収容層は、収容部に面する壁面であって、主磁極の後端面の形状を規定する壁面を有している。主磁極の前端面は、基板の上面により近い第1の端部と、基板の上面からより遠い第2の端部とを有し、第1の端部は第2の端部に比べてトラック幅方向の幅が小さい。
【0017】
本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法は、プラズモンジェネレータを形成する工程と、プラズモンジェネレータの形成後に導波路を形成する工程と、プラズモンジェネレータの形成後に収容層および主磁極を形成する工程とを含んでいる。
【0018】
本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法における収容層および主磁極を形成する工程、あるいは本発明の主磁極の形成方法は、
上面を有する初期収容層を形成する工程と、
初期収容層の上面上に、第1の開口部を有する第1のエッチングマスクを形成する工程と、
第1のエッチングマスクを用いて、反応性イオンエッチングによって初期収容層をエッチングして、初期収容層に溝部を形成する第1のエッチング工程と、
第1のエッチング工程の後で、初期収容層の上面上に、第2の開口部を有する第2のエッチングマスクを形成する工程と、
初期収容層が収容層になり、溝部が収容部になるように、第2のエッチングマスクを用いて、反応性イオンエッチングによって初期収容層における溝部を含む部分をエッチングする第2のエッチング工程と、
収容部内に主磁極を形成する工程とを含んでいる。
【0019】
第1のエッチングマスクは、第1の開口部に面する第1および第2の側壁を有し、第1および第2の側壁はトラック幅方向について第1の間隔をあけて対向している。第2のエッチングマスクは、第2の開口部に面する第3および第4の側壁を有し、第3および第4の側壁は、トラック幅方向について第1の間隔よりも大きい第2の間隔をあけて対向している。収容部の媒体対向面に平行な任意の断面において、基板の上面に最も近い端は、基板の上面から最も遠い端に比べて、トラック幅方向の幅が小さい。
【0020】
本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法における収容層および主磁極を形成する工程、あるいは本発明の主磁極の形成方法は、更に、第1のエッチングマスクを形成する工程の前に、初期収容層の上面上に、収容層の壁面の位置を規定するための第3のエッチングマスクを形成する工程を含んでいてもよい。この場合には、第1のエッチング工程は、第1のエッチングマスクと第3のエッチングマスクを用いて初期収容層をエッチングする。また、第2のエッチング工程は、第2のエッチングマスクと第3のエッチングマスクを用いて初期収容層をエッチングする。
【0021】
また、本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法、あるいは本発明の主磁極の形成方法において、収容層の壁面が基板の上面に垂直な方向に対してなす角度は、10°以下であってもよい。
【0022】
また、本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法、あるいは本発明の主磁極の形成方法において、収容層は、コアを兼ねていてもよいし、クラッドを兼ねていてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法、あるいは本発明の主磁極の形成方法によれば、後端面が基板の上面に対して垂直またはほぼ垂直で、前端面において、基板の上面により近い第1の端部が、基板の上面からより遠い第2の端部に比べてトラック幅方向の幅が小さい形状の主磁極を容易に形成することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの要部を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの構成を示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドにおける主磁極および収容層を示す正面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドにおける主磁極および収容層を示す断面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法における一工程を示す断面図である。
【図7】図6に示した工程に続く工程を示す断面図である。
【図8】図7に示した工程に続く工程を示す断面図である。
【図9】図8に示した工程に続く工程を示す断面図である。
【図10】図9に示した工程に続く工程を示す断面図である。
【図11】図10に示した工程に続く工程を示す断面図である。
【図12】比較例の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法における一工程を示す断面図である。
【図13】図12に示した工程に続く工程の第1の例を示す断面図である。
【図14】図12に示した工程に続く工程の第2の例を示す断面図である。
【図15】本発明の第1の実施の形態における第1の変形例の熱アシスト磁気記録ヘッドの主磁極および収容層を示す正面図である。
【図16】本発明の第1の実施の形態における第2の変形例の熱アシスト磁気記録ヘッドの主磁極および収容層を示す正面図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの要部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1ないし図3を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの構成について説明する。図1は、熱アシスト磁気記録ヘッドの要部を示す斜視図である。図2は、熱アシスト磁気記録ヘッドの構成を示す断面図である。図3は、熱アシスト磁気記録ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
【0026】
本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドは、垂直磁気記録用であり、回転する記録媒体の表面から浮上するスライダの形態を有している。記録媒体が回転すると、記録媒体とスライダとの間を通過する空気流によって、スライダに揚力が生じる。スライダは、この揚力によって記録媒体の表面から浮上するようになっている。
【0027】
図2に示したように、熱アシスト磁気記録ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面40を備えている。ここで、X方向、Y方向、Z方向を以下のように定義する。X方向は、記録媒体のトラック横断方向すなわちトラック幅方向である。Y方向は、媒体対向面40に垂直な方向である。Z方向は、スライダから見た記録媒体の進行方向である。X方向、Y方向、Z方向は互いに直交している。
【0028】
図2および図3に示したように、熱アシスト磁気記録ヘッドは、アルミニウムオキサイド・チタニウムカーバイド(Al2O3・TiC)等のセラミック材料よりなり、上面1aを有する基板1と、この基板1の上面1a上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層2と、この絶縁層2の上に配置された磁性材料よりなる下部シールド層3と、絶縁層2の上において下部シールド層3の周囲に配置された絶縁層4とを備えている。絶縁層2,4は、例えばアルミナ(Al2O3)によって形成されている。Z方向は、基板1の上面1aに垂直な方向でもある。
【0029】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、下部シールド層3および絶縁層4の上面の上に配置された絶縁膜である下部シールドギャップ膜5と、この下部シールドギャップ膜5の上に配置された再生素子としてのMR(磁気抵抗効果)素子6と、このMR素子6に接続された2つのリード(図示せず)と、MR素子6の上に配置された絶縁膜である上部シールドギャップ膜7とを備えている。
【0030】
MR素子6の一端部は、記録媒体に対向する媒体対向面40に配置されている。MR素子6には、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子あるいはTMR(トンネル磁気抵抗効果)素子等の磁気抵抗効果を示す感磁膜を用いた素子を用いることができる。GMR素子としては、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ平行な方向に流すCIP(Current In Plane)タイプでもよいし、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ垂直な方向に流すCPP(Current Perpendicular to Plane)タイプでもよい。
【0031】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、上部シールドギャップ膜7の上に配置された磁性材料よりなるリターン磁極層10と、上部シールドギャップ膜7の上においてリターン磁極層10の周囲に配置された絶縁層11とを備えている。絶縁層11は、例えばアルミナによって形成されている。
【0032】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、媒体対向面40の近傍においてリターン磁極層10の上に配置された磁性材料よりなるシールド層12と、シールド層12に対して、媒体対向面40からより遠い位置においてリターン磁極層10の上に配置された磁性材料よりなる連結層13と、リターン磁極層10および絶縁層11の上において、シールド層12および連結層13の周囲に配置された絶縁層14とを備えている。シールド層12は、媒体対向面40に配置された端面を有している。絶縁層14は、例えばアルミナによって形成されている。
【0033】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、連結層13の上に配置された磁性材料よりなる連結層15と、シールド層12および絶縁層14の上において連結層15の周囲に配置された絶縁層16とを備えている。絶縁層16は、例えばアルミナによって形成されている。連結層15および絶縁層16の上面は平坦化されている。
【0034】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、媒体対向面40の近傍において絶縁層16の上に配置されたプラズモンジェネレータ18を備えている。プラズモンジェネレータ18は、金属によって形成されている。具体的には、プラズモンジェネレータ18は、例えば、Au、Ag、Al、Cu、Pd、Pt、Rh、Irのいずれか、またはこれらのうちの複数の元素よりなる合金によって形成されている。プラズモンジェネレータ18の形状については、後で詳しく説明する。
【0035】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、プラズモンジェネレータ18の上方に配置された磁性材料よりなる主磁極22と、主磁極22の上に配置された磁性材料よりなる連結層24とを備えている。主磁極22および連結層24は、それぞれ、媒体対向面40に配置された前端面と、前端面とは反対側の後端面とを有している。図2に示したように、連結層24の後端面は、基板1の上面1aに垂直な方向(Z方向)に対して傾いている。連結層24の後端面における任意の位置の媒体対向面40からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。主磁極22については、後で詳しく説明する。
【0036】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、コア21とクラッドとを有する導波路を備えている。コア21は、プラズモンジェネレータ18に対して、基板1の上面1aからより遠い側に配置されている。コア21は、媒体対向面40に向いた端面であって媒体対向面40から離れた位置に配置された端面21aを有している。主磁極22は、端面21aと媒体対向面40との間に配置されている。
【0037】
クラッドは、クラッド層19,23,25を含んでいる。クラッド層19は、連結層15、絶縁層16およびプラズモンジェネレータ18の上に配置されている。コア21と主磁極22は、クラッド層19の上に配置されている。プラズモンジェネレータ18とコア21および主磁極22との間には、クラッド層19が介在している。クラッド層23は、クラッド層19の上においてコア21の周囲に配置されている。コア21、主磁極22およびクラッド層23の上面は平坦化されている。クラッド層25は、コア21およびクラッド層23の上において連結層24の周囲に配置されている。
【0038】
コア21は、近接場光の発生に用いられるレーザ光を通過させる誘電体材料によって形成されている。コア21には、図示しないレーザダイオードから出射されたレーザ光が入射され、このレーザ光はコア21内を伝播する。クラッド層19,23,25は、コア21の屈折率よりも小さい屈折率を有する誘電体材料によって形成されている。コア21の材料としては、例えば、Ta2O5等の酸化タンタルや酸窒化ケイ素(SiON)が用いられ、クラッド層19,23,25の材料としては、例えば、酸化ケイ素(SiO2)やアルミナが用いられる。コア21については、後で更に詳しく説明する。
【0039】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、媒体対向面40から離れた位置においてクラッド層19,23,25に埋め込まれた2つの連結部17A,17Bを備えている。連結部17A,17Bは、磁性材料によって形成されている。連結部17A,17Bは、コア21のトラック幅方向の両側において、コア21に対して間隔をあけて配置されている。図示しないが、連結部17A,17Bは、それぞれ、連結層15の上に配置された第1層と、この第1層の上に順に配置された第2層および第3層とを有している。
【0040】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、連結層24の上に配置された磁性材料よりなる連結層27と、連結部17A,17Bの上に配置された磁性材料よりなる連結層28とを備えている。
【0041】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、クラッド層25の上に配置された絶縁層26と、絶縁層26に上に配置されたコイル30と備えている。コイル30は、平面渦巻き形状をなし、連結層28を中心として巻回されている。絶縁層26は、例えばアルミナによって形成されている。コイル30は、銅等の導電材料によって形成されている。
【0042】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、コイル30の巻線間および周囲ならびに連結層27,28の周囲に配置された絶縁層31と、コイル30および絶縁層31の上に配置された絶縁層32とを備えている。連結層27,28および絶縁層32の上面は平坦化されている。絶縁層31,32は、例えばアルミナによって形成されている。
【0043】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、連結層27,28および絶縁層32の上に配置された磁性材料よりなるヨーク層33と、ヨーク層33を覆うように配置された保護層35とを備えている。ヨーク層33は、連結層27と連結層28を磁気的に連結している。保護層35は、例えばアルミナによって形成されている。
【0044】
下部シールド層3からリターン磁極層10までの部分は、再生ヘッドを構成する。リターン磁極層10からヨーク層33までの部分は、記録ヘッドを構成する。コイル30は、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。シールド層12、リターン磁極層10、連結層13,15、連結部17A,17B、連結層28、ヨーク層33、連結層27,24および主磁極22は、コイル30が発生する磁界に対応した磁束を通過させる磁路を形成する。主磁極22は、コイル30によって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面40と再生ヘッドと記録ヘッドとを備えている。再生ヘッドと記録ヘッドは、基板1の上に積層されている。記録ヘッドは、再生ヘッドに対して、記録媒体の進行方向(Z方向)の前側(トレーリング側)に配置されている。
【0046】
再生ヘッドは、再生素子としてのMR素子6と、媒体対向面40側の一部がMR素子6を挟んで対向するように配置された、MR素子6をシールドするための下部シールド層3および上部シールド層とを備えている。本実施の形態では、記録ヘッドのリターン磁極層10は、再生ヘッドの上部シールド層を兼ねている。再生ヘッドは、更に、MR素子6と下部シールド層3との間に配置された下部シールドギャップ膜5と、MR素子6とリターン磁極層10との間に配置された上部シールドギャップ膜7とを備えている。
【0047】
記録ヘッドは、コイル30と、主磁極22と、導波路と、プラズモンジェネレータ18とを備えている。導波路は、コア21とクラッドとを有している。クラッドは、クラッド層19,23,25を含んでいる。コイル30は、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。主磁極22は、コイル30によって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。
【0048】
記録ヘッドは、更に、主磁極22を収容する収容部を含む収容層を備えている。本実施の形態では、収容層は、コア21を兼ねている。以下、図1、図4および図5を参照して、コア21、主磁極22および収容層について詳しく説明する。図4は、主磁極22および収容層を示す正面図である。図5は、主磁極22および収容層を示す断面図である。なお、図5は、媒体対向面40および基板1の上面1aに垂直な断面を示している。
【0049】
まず、収容層について説明する。本実施の形態では、特に、収容層は、コア21そのものである。図1、図4および図5に示したように、収容層20(コア21)は、主磁極22を収容する収容部201を含んでいる。また、収容層20は、収容部201に面する壁面20a,20b,20cを有している。収容部201の形状は、壁面20a,20b,20cによって規定される。壁面20aは、媒体対向面40から離れた位置に配置され、収容部201の媒体対向面40とは反対側の端部を規定している。壁面20b,20cは、収容部201のトラック幅方向の両側の端部を規定している。
【0050】
壁面20aは、基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直である。図5には、壁面20aが基板1の上面1aに垂直である例を示しているが、壁面20aは、基板1の上面1aに垂直な方向(Z方向)に対してわずかに傾いていてもよい。この場合、壁面20aにおける任意の位置の媒体対向面40からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから離れるに従って大きくなってもよいし、小さくなってもよい。壁面20aが基板1の上面1aに垂直な方向に対してなす角度は、例えば10°以下である。
【0051】
壁面20bは、連続する下部20b1と上部20b2とを含んでいる。壁面20cは、連続する下部20c1と上部20c2とを含んでいる。下部20b1,20c1と上部20b2,20c2は、いずれも、基板1の上面1aに垂直な方向に対して傾いている。収容部201の媒体対向面40に平行な任意の断面において、トラック幅方向(X方向)についての壁面20b,20c間の距離は、基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。図1および図4に示した例では、下部20b1と下部20c1がなす角度は、上部20b2と上部20c2がなす角度よりも小さい。また、収容部201の媒体対向面40に平行な任意の断面において、基板1の上面1aに最も近い端は、基板1の上面1aから最も遠い端に比べて、トラック幅方向(X方向)の幅が小さい。
【0052】
次に、主磁極22について説明する。主磁極22は、媒体対向面40に配置された前端面22aと、前端面22aとは反対側の後端面22bと、上面22cと、下面22dと、第1および第2の側面22e,22fとを有している。
【0053】
後端面22bは、収容層20の壁面20aに接している。後端面22bの形状は、壁面20aによって規定されている。前述のように壁面20aは基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直であることから、後端面22bも、基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直である。
【0054】
第1の側面22eは、収容層20の壁面20bに接している。第1の側面22eの形状は、壁面20bによって規定されている。第1の側面22eは、壁面20bと同様に、連続する下部22e1と上部22e2とを含んでいる。
【0055】
第2の側面22fは、収容層20の壁面20cに接している。第2の側面22fの形状は、壁面20cによって規定されている。第2の側面22fは、壁面20cと同様に、連続する下部22f1と上部22f2とを含んでいる。
【0056】
主磁極22の媒体対向面40に平行な任意の断面において、トラック幅方向(X方向)についての側面22e,22f間の距離は、基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。図1および図4に示した例では、下部22e1と下部22f1がなす角度は、上部22e2と上部22f2がなす角度よりも小さい。
【0057】
前端面22aは、基板1の上面1aにより近い第1の端部22a1と、基板1の上面1aからより遠い第2の端部22a2と、トラック幅方向の両側に位置する第3および第4の端部22a3,22a4とを有している。第1の端部22a1は、下面22dの端に位置している。第2の端部22a2は、上面22cの端に位置している。第1の端部22a1は、第2の端部22a2に比べてトラック幅方向の幅が小さい。
【0058】
第3の端部22a3は、連続する下部22a31と上部22a32とを含んでいる。下部22a31は、第1の側面22eの下部22e1の端に位置している。上部22a32は、第1の側面22eの上部22e2の端に位置している。
【0059】
第4の端部22a4は、連続する下部22a41と上部22a42とを含んでいる。下部22a41は、第2の側面22fの下部22f1の端に位置している。上部22a42は、第2の側面22fの上部22f2の端に位置している。
【0060】
次に、コア21について説明する。コア21は、媒体対向面40に向いた端面であって媒体対向面40から離れた位置に配置された端面21aと、媒体対向面40に配置された2つの端面21b1,21b2と、上面21cと、下面21dと、2つの側面21e,21fとを有している。本実施の形態では、特に、端面21aは、収容層20の壁面20aでもある。2つの端面21b1,21b2は、主磁極22の前端面22aのトラック幅方向の両側に配置されている。主磁極22の第1および第2の側面22e,22fは、コア21によって覆われている。
【0061】
次に、図1を参照して、プラズモンジェネレータ18の形状の一例について説明する。図1に示した例では、プラズモンジェネレータ18は、三角柱形状を有している。また、プラズモンジェネレータ18は、媒体対向面40に配置された前端面18aと、その反対側の後端面と、第1および第2の斜面と、下面とを有している。下面は、第1および第2の斜面を接続している。第1および第2の斜面は、それぞれ、基板1の上面1aに垂直な方向に対して傾いている。
【0062】
プラズモンジェネレータ18は、更に、第1および第2の斜面を接続するエッジ部18eと、媒体対向面40に配置され、近接場光を発生する近接場光発生部18gとを有している。近接場光発生部18gは、エッジ部18eの一端に位置している。第1および第2の斜面の互いの距離は、エッジ部18eに近づくに従って小さくなっている。エッジ部18eは、コア21の下面21dおよび主磁極22の下面22dに対して、所定の間隔をもって対向して、媒体対向面40に垂直な方向(Y方向)に延びている。
【0063】
前端面18aの形状は、三角形である。前端面18aの頂点の1つは、エッジ部18eの端に位置する。この頂点は、近接場光発生部18gを形成する。
【0064】
媒体対向面40に垂直な方向(Y方向)についてのプラズモンジェネレータ18の長さは、基板1の上面1aに垂直な方向(Z方向)についての前端面18aの長さよりも大きい。前端面18aの下端部の幅とZ方向の長さは共に、コア21を伝播する光の波長以下であり、例えば100〜500nmの範囲内である。プラズモンジェネレータ18のY方向の長さは、例えば0.25〜2.5μmの範囲内である。また、エッジ部18eとコア21の下面21dとの間の間隔は、例えば10〜50nmの範囲内である。
【0065】
なお、プラズモンジェネレータ18の形状は、図1を参照して説明した上記の例に限られない。
【0066】
次に、本実施の形態における近接場光発生の原理と、近接場光を用いた熱アシスト磁気記録の原理について詳しく説明する。図示しないレーザダイオードから出射されたレーザ光はコア21に入射される。図2に示したように、レーザ光50は、コア21内を媒体対向面40に向けて伝播して、プラズモンジェネレータ18の近傍に達する。ここで、コア21の下面21dにおいて、レーザ光50が全反射することによって、クラッド層19内にしみ出すエバネッセント光が発生する。その結果、このエバネッセント光と、プラズモンジェネレータ18におけるエッジ部18eおよびその近傍部分における電荷の集団振動すなわち表面プラズモンとが結合した系である表面プラズモン・ポラリトンが励起される。このようにして、プラズモンジェネレータ18におけるエッジ部18eおよびその近傍部分に表面プラズモンが励起される。
【0067】
プラズモンジェネレータ18に励起された表面プラズモンは、エッジ部18eに沿って近接場光発生部18gに伝播される。その結果、近接場光発生部18gにおいて表面プラズモンが集中し、この表面プラズモンに基づいて、近接場光発生部18gから近接場光が発生する。この近接場光は、記録媒体に向けて照射され、記録媒体の表面に達し、記録媒体の磁気記録層の一部を加熱する。これにより、その磁気記録層の一部の保磁力が低下する。熱アシスト磁気記録では、このようにして保磁力が低下した磁気記録層の一部に対して、主磁極22より発生される記録磁界を印加することによってデータの記録が行われる。
【0068】
次に、図2および図3を参照して、本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法について説明する。本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法は、複数の熱アシスト磁気記録ヘッドの基板1となる部分を含む基板上に、複数の熱アシスト磁気記録ヘッドの基板1以外の構成要素を形成して、それぞれ後に熱アシスト磁気記録ヘッドとなるヘッド予定部が複数列に配列された基礎構造物を作製する工程と、この基礎構造物を切断することによって複数のヘッド予定部を互いに分離して、複数の熱アシスト磁気記録ヘッドを形成する工程とを備えている。複数の熱アシスト磁気記録ヘッドを形成する工程では、切断によって形成された面を研磨して媒体対向面40を形成する。
【0069】
以下、1つの熱アシスト磁気記録ヘッドに注目して、本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法を更に詳しく説明する。本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法では、まず、基板1の上に絶縁層2を形成する。次に、絶縁層2の上に下部シールド層3を形成する。次に、下部シールド層3を覆うように絶縁層4を形成する。次に、例えば化学機械研磨(以下、CMPと記す。)によって、下部シールド層3が露出するまで絶縁層4を研磨する。
【0070】
次に、下部シールド層3および絶縁層4の上に下部シールドギャップ膜5を形成する。次に、下部シールドギャップ膜5の上にMR素子6と、MR素子6に接続される図示しない2つのリードとを形成する。次に、MR素子6およびリードを覆うように上部シールドギャップ膜7を形成する。次に、上部シールドギャップ膜7の上にリターン磁極層10を形成する。次に、リターン磁極層10を覆うように絶縁層11を形成する。次に、例えばCMPによって、リターン磁極層10が露出するまで絶縁層11を研磨する。
【0071】
次に、リターン磁極層10の上にシールド層12と連結層13を形成する。次に、リターン磁極層10、シールド層12および連結層13を覆うように絶縁層14を形成する。次に、例えばCMPによって、シールド層12および連結層13が露出するまで絶縁層14を研磨する。
【0072】
次に、連結層13の上に連結層15を形成する。次に、連結層15を覆うように絶縁層16を形成する。次に、例えばCMPによって、連結層15が露出するまで絶縁層16を研磨して、連結層15および絶縁層16の上面を平坦化する。
【0073】
次に、絶縁層16の上にプラズモンジェネレータ18を形成する。また、連結層15の上に、連結部17A,17Bのそれぞれの第1層を形成する。次に、プラズモンジェネレータ18および連結部17A,17Bのそれぞれの第1層を覆うようにクラッド層19を形成する。次に、例えばCMPによって、連結部17A,17Bのそれぞれの第1層が露出するまでクラッド層19を研磨する。
【0074】
次に、連結部17A,17Bのそれぞれの第1層の上に、連結部17A,17Bのそれぞれの第2層を形成する。また、クラッド層19の上にコア21、主磁極22およびクラッド層23を形成する。コア21、主磁極22およびクラッド層23を形成する工程については、後で詳しく説明する。
【0075】
次に、連結部17A,17Bのそれぞれの第2層の上に、連結部17A,17Bのそれぞれの第3層を形成する。次に、コア21および連結部17A,17Bのそれぞれの第3層を覆うようにクラッド層25を形成する。次に、例えばCMPによって、連結部17A,17Bのそれぞれの第3層が露出するまでクラッド層25を研磨する。次に、クラッド層25を選択的にエッチングして、クラッド層25に、連結層24を収容する収容部を形成する。次に、クラッド層25の収容部内に連結層24を形成する。
【0076】
次に、積層体の上面全体の上に、絶縁層26を形成する。次に、絶縁層26を選択的にエッチングして、絶縁層26に、連結層24の上面を露出させる開口部と、連結部17A,17Bのそれぞれの第3層の上面を露出させる開口部とを形成する。次に、連結層24の上に連結層27を形成する。また、連結部17A,17Bのそれぞれの第3層の上に連結層28を形成する。次に、絶縁層26の上にコイル30を形成する。次に、コイル30の巻線間および周囲ならびに連結層27,28の周囲に絶縁層31を形成する。次に、積層体の上面全体の上に、絶縁層32を形成する。次に、例えばCMPによって、連結層27,28が露出するまで絶縁層32を研磨して、連結層27,28および絶縁層32の上面を平坦化する。
【0077】
次に、連結層27,28および絶縁層32の上にヨーク層33を形成する。次に、ヨーク層33を覆うように保護層35を形成する。次に、保護層35の上面に配線や端子等を形成する。
【0078】
このようにして、基礎構造物が完成したら、この基礎構造物を切断することによって複数のヘッド予定部を互いに分離し、媒体対向面40の研磨、浮上用レールの作製等を行って、熱アシスト磁気記録ヘッドが完成する。
【0079】
次に、図6ないし図11を参照して、コア21、主磁極22およびクラッド層23を形成する工程について詳しく説明する。図6ないし図11は、熱アシスト磁気記録ヘッドの製造過程における積層体を示している。図6ないし図11において、(a)は、それぞれ、積層体における媒体対向面40が形成される予定の位置における断面を表している。図6ないし図11において、(b)は、それぞれ、積層体における媒体対向面40および基板1の上面1aに垂直な断面を表している。なお、コア21および主磁極22を形成する工程は、本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法における収容層および主磁極を形成する工程、ならびに本発明の主磁極の形成方法に対応する。
【0080】
図6は、クラッド層19を形成した後の工程を示している。この工程では、まず、クラッド層19の上に、上面を有し、後に収容部201および壁面20a,20b,20cが形成されることによって収容層20(コア21)となる初期収容層20Pを形成する。次に、初期収容層20Pの上面上に、マスク材料層51Pを形成する。マスク材料層51Pの材料としては、例えばC、NiFe、NiCr、Ruのいずれかを用いることができる。次に、媒体対向面40が形成される予定の位置から離れた位置において、マスク材料層51Pの上面上に、エッチングマスク52を形成する。エッチングマスク52は、フォトリソグラフィによってフォトレジスト層をパターニングして形成する。エッチングマスク52は、媒体対向面40が形成される予定の位置に向いた側壁52aを有している。
【0081】
次に、エッチングマスク52をエッチングマスクとして用いて、例えばイオンビームエッチングによって、マスク材料層51Pをエッチングする。なお、図6(b)において、矢印はイオンビームを表している。これにより、マスク材料層51Pは、エッチングマスク51となる。次に、エッチングマスク52を除去する。
【0082】
エッチングマスク51は、側壁52aによってその位置が規定された端部51aを有している。端部51aと媒体対向面40が形成される予定の位置との間の距離は、後に形成される収容層20の壁面20aと媒体対向面40との間の距離と等しい。エッチングマスク51は、後に、収容層20の壁面20aの位置を規定するために用いられる。エッチングマスク51は、本発明における第3のエッチングマスクに対応する。
【0083】
図7は、次の工程を示す。この工程では、初期収容層20Pおよびエッチングマスク51の上面上に、少なくとも媒体対向面40が形成される予定の位置からエッチングマスク51の端部51aにかけて開口する第1の開口部531を有するエッチングマスク53を形成する。エッチングマスク53は、フォトリソグラフィによってフォトレジスト層をパターニングして形成する。エッチングマスク53は、第1の開口部531に面する側壁53a,53b,53cを有している。側壁53a,53bは、トラック幅方向(X方向)について第1の間隔D1をあけて対向している。側壁53cは、媒体対向面40が形成される予定の位置に向いている。また、側壁53cは、エッチングマスク51の端部51aに対して、媒体対向面40が形成される予定の位置からより遠い位置に配置されている。エッチングマスク53は、本発明における第1のエッチングマスクに対応する。また、側壁53aは、本発明における第1の側壁に対応し、側壁53bは、本発明における第2の側壁に対応する。
【0084】
図8は、次の工程を示す。この工程では、まず、エッチングマスク51,53を用いて、反応性イオンエッチング(以下、RIEと記す。)によって初期収容層20Pをエッチングして、初期収容層20Pに溝部20P1を形成する。溝部20P1は、その底部がクラッド層19の上面に達しないように形成される。この工程を第1のエッチング工程と呼ぶ。エッチングガスとしては、例えばCl2とBCl3とを含むガスが用いられる。次に、エッチングマスク53を除去する。
【0085】
第1のエッチング工程では、初期収容層20Pには、溝部20P1に面する壁面20Pa,20Pb,20Pcが形成される。壁面20Pa,20Pb,20Pcは、いずれも、基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直である。壁面20Paの位置は、エッチングマスク51の端部51aによって規定される。壁面20Pb,20Pcの位置は、それぞれエッチングマスク53の側壁53a,53bによって規定される。
【0086】
図9は、次の工程を示す。この工程では、初期収容層20Pおよびエッチングマスク51の上面上に、少なくとも媒体対向面40が形成される予定の位置からエッチングマスク51の端部51aにかけて開口する第2の開口部541を有するエッチングマスク54を形成する。エッチングマスク54は、フォトリソグラフィによってフォトレジスト層をパターニングして形成する。エッチングマスク54は、第2の開口部541に面する側壁54a,54b,54cを有している。側壁54a,54bは、トラック幅方向(X方向)について第1の間隔D1よりも大きい第2の間隔D2をあけて対向している。側壁54cは、媒体対向面40が形成される予定の位置に向いている。また、側壁54cは、エッチングマスク51の端部51aに対して、媒体対向面40が形成される予定の位置からより遠い位置に配置されている。エッチングマスク54は、本発明における第2のエッチングマスクに対応する。また、側壁54aは、本発明における第3の側壁に対応し、側壁54bは、本発明における第4の側壁に対応する。
【0087】
図10は、次の工程を示す。この工程では、まず、初期収容層20Pが収容層20(コア21)になり、溝部20P1が収容部201になるように、エッチングマスク51,54を用いて、RIEによって初期収容層20Pにおける溝部20P1を含む部分をエッチングする。このエッチングは、クラッド層19の上面が露出するまで行う。この工程を第2のエッチング工程と呼ぶ。次に、エッチングマスク54を除去する。
【0088】
第2のエッチング工程では、収容層20には、収容部201に面する壁面20a,20b,20cが形成される。エッチングマスク54の側壁54a,54bは、溝部20P1の縁よりもトラック幅方向(X方向)の外側に配置されている。そのため、初期収容層20Pの上面のうちエッチングマスク54によって覆われずに露出している部分と、溝部20P1の上端近傍の部分には、溝部20P1の底部に比べて、より多くのエッチングガスが供給される。これにより、第2のエッチング工程では、初期収容層20Pの上面の露出している部分および溝部20P1の上端近傍の部分におけるエッチング速度は、溝部20P1の底部におけるエッチング速度よりも大きくなる。その結果、第2のエッチング工程では、図10(a)に示したように、基板1の上面1aから離れるに従ってトラック幅方向(X方向)についての壁面20b,20c間の距離が大きくなるように、壁面20b,20cが形成される。そのため、収容部201の媒体対向面40に平行な任意の断面において、基板1の上面1aに最も近い端は、基板1の上面1aから最も遠い端に比べて、トラック幅方向の幅が小さくなる。
【0089】
また、第2のエッチング工程では、壁面20Paの真上にエッチングマスク51の端部51aが位置している。第2のエッチング工程において、初期収容層20Pの上面のうち、エッチングマスク51によって覆われている部分はエッチングされない。そのため、第2のエッチング工程では、端部51aの下方、すなわち壁面20Paの下方に、初期収容層20Pのエッチングが進行し、その結果、エッチングマスク51の端部51aの真下に、基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直な壁面20aが形成される。このように、エッチングマスク51は、壁面20aの位置を規定するために用いられる。
【0090】
第2のエッチング工程では、第1のエッチング工程と同様に、エッチングガスとしては、例えばCl2とBCl3とを含むガスが用いられる。初期収容層20Pが酸化タンタルまたは酸窒化ケイ素によって形成されている場合には、Cl2とBCl3とを含むガスの代りに、CF4を含むガスを用いてもよい。特に、初期収容層20Pが酸窒化ケイ素によって形成されている場合には、エッチングガスとして、CF4を含むガスが適している。
【0091】
なお、第1および第2のエッチング工程による初期収容層20Pの全エッチング深さに対する、第1のエッチング工程による初期収容層20Pのエッチング深さの割合は、例えば30%から70%の範囲内である。
【0092】
また、第1のエッチング工程では、時間の経過と共にトラック幅方向(X方向)についての側壁53a,53bの間隔が徐々に大きくなるように、エッチングマスク53がエッチングされてもよい。この場合には、基板1の上面1aから離れるに従ってトラック幅方向についての壁面20Pb,20Pc間の距離が大きくなるように、初期収容層20Pが形成される。
【0093】
同様に、第2のエッチング工程でも、時間の経過と共にトラック幅方向(X方向)についての側壁54a,54bの間隔が徐々に大きくなるように、エッチングマスク54がエッチングされてもよい。この場合には、基板1の上面1aに垂直な方向に対する収容層20の壁面20b,20cの傾きが大きくなる。
【0094】
図11は、次の工程を示す。この工程では、まず、例えばめっき法によって、収容部201内に、後に主磁極22となる磁性層を形成する。この磁性層は、その上面がエッチングマスク51の上面よりも上方に配置されるように形成される。次に、積層体の上面全体の上に、クラッド層23を形成する。クラッド層23は、その上面がエッチングマスク51の上面よりも上方に配置されるように形成される。次に、例えばCMPによって、収容層20の上面が露出するまで、磁性層、クラッド層23およびエッチングマスク51を研磨する。これにより、磁性層は、主磁極22となる。
【0095】
主磁極22の後端面22bは、収容層20の壁面20aに沿って形成される。これにより、後端面22bの形状が規定される。同様に、主磁極22の側面22e,22fは、それぞれ、収容層20の壁面20b,20cに沿って形成される。これにより、側面22e,22fの形状が規定される。
【0096】
以上説明したように、本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドでは、コア21は、媒体対向面40に向いた端面であって媒体対向面40から離れた位置に配置された端面21aを有し、プラズモンジェネレータ18に対して、基板1の上面1aからより遠い側に配置されている。主磁極22は、前端面22aおよび後端面22bを有し、コア21の端面21aと媒体対向面40との間に配置されている。主磁極22の前端面22aは、基板1の上面1aにより近い第1の端部22a1が、基板1の上面1aからより遠い第2の端部22a2に比べてトラック幅方向の幅が小さい形状を有している。これにより、本実施の形態によれば、主磁極22の前端面22aのうち、基板1の上面1aにより近い部分、すなわち、プラズモンジェネレータ18により近い部分から局所的に大きな記録磁界を発生させることができる。
【0097】
また、本実施の形態では、主磁極22は、収容層20の収容部201に収容されている。収容層20は、主磁極22の後端面22bの形状を規定する壁面20aを有している。主磁極22の後端面22bの形状は、壁面20aによって規定されている。壁面20aは基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直であることから、後端面22bも、基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直である。これにより、本実施の形態によれば、主磁極22の後端面22bが基板1の上面1aに垂直な方向に対して傾いている場合に比べて、後端面22bに接する収容層20の壁面20aすなわちコア21の端面21aを媒体対向面40に近づけて、プラズモンジェネレータ18における表面プラズモンの励起を媒体対向面40の近くで行わせることが可能になると共に、コア21の端面21aと主磁極22の後端面22bとの接触面積を小さくして、コア21を伝播する光のうち主磁極22に吸収される光の割合を小さくすることが可能になる。その結果、本実施の形態によれば、コア21を伝播する光を効率よく近接場光に変換することが可能になる。
【0098】
また、本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法における収容層20および主磁極22を形成する工程、ならびに本実施の形態に係る主磁極22の形成方法では、まず、上面を有する初期収容層20Pを形成する。次に、初期収容層20Pの上面上に、エッチングマスク51を形成する。次に、初期収容層20Pおよびエッチングマスク51の上面上に、第1の開口部531を有するエッチングマスク53を形成する。エッチングマスク53は、第1の開口部531に面する側壁53a,53bを有している。側壁53a,53bは、トラック幅方向(X方向)について第1の間隔D1をあけて対向している。次に、エッチングマスク51,53を用いて、RIEによって初期収容層20Pをエッチングして、初期収容層20Pに溝部20P1を形成する第1のエッチング工程を行う。次に、初期収容層20Pおよびエッチングマスク51の上面上に、第2の開口部541を有するエッチングマスク54を形成する。エッチングマスク54は、第2の開口部541に面する側壁54a,54bを有している。側壁54a,54bは、トラック幅方向について第1の間隔D1よりも大きい第2の間隔D2をあけて対向している。次に、初期収容層20Pが収容層20になり、溝部20P1が収容部201になるように、エッチングマスク51,54を用いて、RIEによって初期収容層20Pにおける溝部20P1を含む部分をエッチングする第2のエッチング工程を行う。
【0099】
このような方法によれば、前述のように、壁面20aが基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直になり、収容部201の媒体対向面40に平行な任意の断面において、基板1の上面1aに最も近い端が、基板1の上面1aから最も遠い端に比べて、トラック幅方向の幅が小さくなるように、収容部201を形成することができる。そして、このような形状の収容部201内に主磁極22を形成することによって、所望の形状、すなわち後端面22bが基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直で、前端面22aにおいて、第1の端部22a1が第2の端部22a2に比べてトラック幅方向の幅が小さい形状の主磁極22を容易に形成することが可能になる。
【0100】
本実施の形態では、エッチングマスク51によって、収容層20の壁面20aの位置を規定している。しかし、エッチングマスク51を設けずに、エッチング53の側壁53cの位置、およびエッチング54の側壁54cの位置を、壁面20aを形成すべき位置に合わせて、側壁53c,54cによって壁面20aの位置を規定することも可能である。
【0101】
次に、比較例の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法と比較しながら、本実施の形態の効果について更に詳しく説明する。始めに、図12ないし図14を参照して、比較例の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法について説明する。図12ないし図14は、比較例の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造過程における積層体を示している。図12ないし図14において、(a)は、それぞれ、積層体における媒体対向面40が形成される予定の位置における断面を表している。図12ないし図14において、(b)は、それぞれ、積層体における媒体対向面40および基板1の上面1aに垂直な断面を表している。
【0102】
比較例の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法では、エッチングマスク51を形成する工程までは、図6に示した本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法と同じである。図12は、エッチングマスク51を形成した後の工程を示している。この工程では、初期収容層20Pおよびエッチングマスク51の上面上に、開口部551を有するエッチングマスク55を形成する。エッチングマスク55は、開口部551に面する側壁55a,55b,55cを有している。側壁55a,55bは、トラック幅方向(X方向)について所定の間隔をあけて対向している。側壁55cは、媒体対向面40が形成される予定の位置に向いている。また、側壁55cは、エッチングマスク51の端部51aに対して、媒体対向面40が形成される予定の位置からより遠い位置に配置されている。
【0103】
比較例の製造方法では、次に、エッチングマスク51,55を用いて、初期収容層20Pが収容層20になるように、例えばRIEによって初期収容層20Pをエッチングする。この工程を比較例のエッチング工程と呼ぶ。
【0104】
図13は、比較例のエッチング工程の第1の例を示している。第1の例では、収容部201に面し、基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直な収容層20の壁面120a,120b,120cが形成されるように、初期収容層20Pをエッチングする。第1の例では、エッチングガスとしては、例えばCl2とBCl3とを含むガスが用いられる。壁面120a,120b,120cは、それぞれ、本実施の形態における壁面20a,20b,20cに対応する。
【0105】
図14は、比較例のエッチング工程の第2の例を示している。第2の例では、収容部201に面し、基板1の上面1aに垂直な方向に対して傾いた収容層20の壁面220a,220b,220cが形成されるように、初期収容層20Pをテーパーエッチングする。第2の例では、エッチングガスとしては、例えばCl2およびBCl3と、N2とCF4の少なくとも一方とを含むガスが用いられる。壁面220a,220b,220cは、それぞれ、本実施の形態における壁面20a,20b,20cに対応する。
【0106】
比較例の製造方法では、収容部201に面する収容層20の壁面は、全て基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直な面になるか、全て基板1の上面1aに垂直な方向に対して傾いた面になる。このように、比較例では、壁面20aが基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直になり、収容部201の媒体対向面40に平行な任意の断面において、基板1の上面1aに最も近い端が、基板1の上面1aから最も遠い端に比べて、トラック幅方向の幅が小さくなるような収容部201を形成することができない。従って、比較例では、後端面22bが基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直で、前端面22aにおいて、第1の端部22a1が第2の端部22a2に比べてトラック幅方向の幅が小さい、所望の形状の主磁極22を形成することができない。
【0107】
これに対し、本実施の形態によれば、前述のように、壁面20aが基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直になり、収容部201の媒体対向面40に平行な任意の断面において、基板1の上面1aに最も近い端が、基板1の上面1aから最も遠い端に比べて、トラック幅方向の幅が小さくなるように、収容部201を形成することができる。これにより、所望の形状の主磁極22を容易に形成することが可能になる。
【0108】
以下、本実施の形態におけるその他の効果について説明する。本実施の形態では、プラズモンジェネレータ18のエッジ部18eが、コア21の下面21dに対して、所定の間隔をもって対向している。そして、エッジ部18eにおいて、コア21を伝播するレーザ光に基づいてコア21の下面21dにおいて発生するエバネッセント光と結合することによって表面プラズモンが励起され、この表面プラズモンがエッジ部18eに沿って近接場光発生部18gに伝播され、この表面プラズモンに基づいて近接場光発生部18gより近接場光が発生される。本実施の形態によれば、レーザ光をプラズモンジェネレータ18に直接照射して近接場光を発生させる場合に比べて、コア21を伝播する光の近接場光への変換の効率を高めることができる。
【0109】
[変形例]
次に、図15および図16を参照して、本実施の形態における第1および第2の変形例について説明する。図15は、本実施の形態における第1の変形例の熱アシスト磁気記録ヘッドの主磁極および収容層を示す正面図である。図16は、本実施の形態における第2の変形例の熱アシスト磁気記録ヘッドの主磁極および収容層を示す正面図である。
【0110】
第1の変形例では、収容層20は、壁面20b,20cの代りに、壁面60b,60cを有している。収容部201の媒体対向面40に平行な任意の断面において、トラック幅方向(X方向)についての壁面60b,60c間の距離は、基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。
【0111】
また、第1の変形例では、主磁極22は、第1および第2の側面22e,22fの代りに、第1および第2の側面122e,122fを有している。第1および第2の側面122e,122fは、コア21によって覆われている。第1の側面122eは、壁面60bに接している。第2の側面122fは、壁面60cに接している。主磁極22の媒体対向面40に平行な任意の断面において、トラック幅方向(X方向)についての側面122e,122f間の距離は、基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。
【0112】
第2の変形例では、収容層20は、壁面20b,20cの代りに、壁面70b,70cを有している。壁面70bは、下部70b1と、上部70b2と、下部70b1と上部70b2とを連結する連結部70b3とを含んでいる。壁面70cは、下部70c1と、上部70c2と、下部70c1と上部70c2とを連結する連結部70c3とを含んでいる。下部70b1,70c1と上部70b2,70c2は、いずれも、基板1の上面1aに対して垂直またはほぼ垂直である。連結部70b3,70c3は、いずれも、基板1の上面1aに平行またはほぼ平行である。下部70b1,70c1の間隔は、上部70b2,70c2の間隔よりも小さい。
【0113】
また、第2の変形例では、主磁極22は、第1および第2の側面22e,22fの代りに、第1および第2の側面222e,222fを有している。第1および第2の側面222e,222fは、コア21によって覆われている。第1の側面222eは、壁面70bに接している。第1の側面222eは、壁面70bと同様に、下部222e1、上部222e2および連結部222e3を含んでいる。第2の側面222fは、壁面70cに接している。第2の側面222fは、壁面70cと同様に、下部222f1、上部222f2および連結部222f3を含んでいる。
【0114】
図4に示した壁面20b,20c、第1の変形例の壁面60b,60cや、第2の変形例の壁面70b,70cの形状は、第1および第2のエッチング工程におけるエッチング速度等のエッチング条件を変えることによって制御することが可能である。
【0115】
[第2の実施の形態]
次に、図17を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図17は、本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの要部を示す斜視図である。本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドは、第1の実施の形態における収容層20、コア21およびクラッド層23の代りに、収容層80、コア81およびクラッド層83を備えている。収容層80は、コア81とクラッド層83を兼ねている。
【0116】
収容層80は、主磁極22を収容する収容部801を有している。また、収容層80は、収容部801に面する壁面80a,80b,80cを有している。壁面80a,80b,80cの形状および配置は、第1の実施の形態における壁面20a,20b,20cと同じである。
【0117】
コア81は、媒体対向面40に向いた端面であって、媒体対向面40から離れた位置に配置された端面81aを有している。本実施の形態では、コア81は、第1の実施の形態におけるコア21と異なり、媒体対向面40に配置された端面を有していない。収容層80の壁面80aは、コア81の端面81aの一部によって構成されている。
【0118】
主磁極22と、クラッド層83の一部は、コア81の端面81aと媒体対向面40との間に配置されている。主磁極22の第1および第2の側面22e,22fは、クラッド層83によって覆われている。クラッド層83は、収容層80の壁面80b,80cを構成する2つの壁面を有している。
【0119】
本実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法における収容層80および主磁極22を形成する工程、ならびに本実施の形態に係る主磁極22の形成方法は、以下の点で第1の実施の形態に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法における収容層20および主磁極22を形成する工程、ならびに第1の実施の形態に係る主磁極22の形成方法と異なっている。本実施の形態では、第1の実施の形態における初期収容層20Pの代りに、後に収容層80となる初期収容層を形成する。この初期収容層は、コア81と、後にクラッド層83となる誘電体層とによって構成されている。また、本実施の形態における第1のエッチング工程では、RIEによって、初期収容層のうち、上記誘電体層をエッチングして、初期収容層(誘電体層)に溝部を形成する。また、本実施の形態における第2のエッチング工程では、初期収容層が収容層80になり、上記溝部が収容部801になるように、RIEによって、上記誘電体層における上記溝部を含む部分をエッチングする。
【0120】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0121】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明において、収容層20の壁面20b,20c(収容層80の壁面80b,80c)は、曲面であってもよい。
【符号の説明】
【0122】
1…基板、18…プラズモンジェネレータ、20…収容層、20P…初期収容層、21…コア、22…主磁極、22a…前端面、22b…後端面、40…媒体対向面、53,54…エッチングマスク、531…第1の開口部、541…第2の開口部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対向する媒体対向面と、
情報を前記記録媒体に記録するための記録磁界を発生する主磁極と、
前記主磁極を収容する収容部を含む収容層と、
光を伝播させるコアとクラッドとを有する導波路と、
前記媒体対向面に配置された近接場光発生部を有し、前記コアを伝播する光に基づいてプラズモンが励起され、このプラズモンに基づいて前記近接場光発生部より近接場光を発生するプラズモンジェネレータと、
上面を有する基板とを備え、
前記基板の上面の上方に、前記主磁極、収容層、導波路およびプラズモンジェネレータが配置され、
前記コアは、前記媒体対向面に向いた端面であって前記媒体対向面から離れた位置に配置された端面を有し、前記プラズモンジェネレータに対して、前記基板の上面からより遠い側に配置され、
前記主磁極は、前記媒体対向面に配置された前端面と、前記前端面とは反対側の後端面とを有し、前記コアの端面と前記媒体対向面との間に配置され、
前記収容層は、前記収容部に面する壁面であって、前記主磁極の後端面の形状を規定する壁面を有し、
前記主磁極の前端面は、前記基板の上面により近い第1の端部と、基板の上面からより遠い第2の端部とを有し、前記第1の端部は第2の端部に比べてトラック幅方向の幅が小さい熱アシスト磁気記録ヘッドにおける前記主磁極を形成する方法であって、
上面を有する初期収容層を形成する工程と、
前記初期収容層の上面上に、第1の開口部を有する第1のエッチングマスクを形成する工程と、
前記第1のエッチングマスクを用いて、反応性イオンエッチングによって前記初期収容層をエッチングして、前記初期収容層に溝部を形成する第1のエッチング工程と、
前記第1のエッチング工程の後で、前記初期収容層の上面上に、第2の開口部を有する第2のエッチングマスクを形成する工程と、
前記初期収容層が前記収容層になり、前記溝部が前記収容部になるように、前記第2のエッチングマスクを用いて、反応性イオンエッチングによって前記初期収容層における前記溝部を含む部分をエッチングする第2のエッチング工程と、
前記収容部内に前記主磁極を形成する工程とを含み、
前記第1のエッチングマスクは、前記第1の開口部に面する第1および第2の側壁を有し、前記第1および第2の側壁はトラック幅方向について第1の間隔をあけて対向し、
前記第2のエッチングマスクは、前記第2の開口部に面する第3および第4の側壁を有し、前記第3および第4の側壁は、トラック幅方向について前記第1の間隔よりも大きい第2の間隔をあけて対向し、
前記収容部の前記媒体対向面に平行な任意の断面において、前記基板の上面に最も近い端は、前記基板の上面から最も遠い端に比べて、トラック幅方向の幅が小さいことを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッドの主磁極の形成方法。
【請求項2】
主磁極の形成方法は、更に、前記第1のエッチングマスクを形成する工程の前に、前記初期収容層の上面上に、前記収容層の前記壁面の位置を規定するための第3のエッチングマスクを形成する工程を含み、
前記第1のエッチング工程は、前記第1のエッチングマスクと第3のエッチングマスクを用いて前記初期収容層をエッチングし、
前記第2のエッチング工程は、前記第2のエッチングマスクと第3のエッチングマスクを用いて前記初期収容層をエッチングすることを特徴とする請求項1記載の熱アシスト磁気記録ヘッドの主磁極の形成方法。
【請求項3】
前記収容層の前記壁面が前記基板の上面に垂直な方向に対してなす角度は、10°以下であることを特徴とする請求項1記載の熱アシスト磁気記録ヘッドの主磁極の形成方法。
【請求項4】
前記収容層は、前記コアを兼ねていることを特徴とする請求項1記載の熱アシスト磁気記録ヘッドの主磁極の形成方法。
【請求項5】
前記収容層は、前記クラッドを兼ねていることを特徴とする請求項1記載の熱アシスト磁気記録ヘッドの主磁極の形成方法。
【請求項6】
記録媒体に対向する媒体対向面と、
情報を前記記録媒体に記録するための記録磁界を発生する主磁極と、
前記主磁極を収容する収容部を含む収容層と、
光を伝播させるコアとクラッドとを有する導波路と、
前記媒体対向面に配置された近接場光発生部を有し、前記コアを伝播する光に基づいてプラズモンが励起され、このプラズモンに基づいて前記近接場光発生部より近接場光を発生するプラズモンジェネレータと、
上面を有する基板とを備え、
前記基板の上面の上方に、前記主磁極、収容層、導波路およびプラズモンジェネレータが配置され、
前記コアは、前記媒体対向面に向いた端面であって前記媒体対向面から離れた位置に配置された端面を有し、前記プラズモンジェネレータに対して、前記基板の上面からより遠い側に配置され、
前記主磁極は、前記媒体対向面に配置された前端面と、前記前端面とは反対側の後端面とを有し、前記コアの端面と前記媒体対向面との間に配置され、
前記収容層は、前記収容部に面する壁面であって、前記主磁極の後端面の形状を規定する壁面を有し、
前記主磁極の前端面は、前記基板の上面により近い第1の端部と、基板の上面からより遠い第2の端部とを有し、前記第1の端部は第2の端部に比べてトラック幅方向の幅が小さい熱アシスト磁気記録ヘッドを製造する方法であって、
前記プラズモンジェネレータを形成する工程と、
前記プラズモンジェネレータの形成後に前記導波路を形成する工程と、
前記プラズモンジェネレータの形成後に前記収容層および主磁極を形成する工程とを含み、
前記収容層および主磁極を形成する工程は、
上面を有する初期収容層を形成する工程と、
前記初期収容層の上面上に、第1の開口部を有する第1のエッチングマスクを形成する工程と、
前記第1のエッチングマスクを用いて、反応性イオンエッチングによって前記初期収容層をエッチングして、前記初期収容層に溝部を形成する第1のエッチング工程と、
前記第1のエッチング工程の後で、前記初期収容層の上面上に、第2の開口部を有する第2のエッチングマスクを形成する工程と、
前記初期収容層が前記収容層になり、前記溝部が前記収容部になるように、前記第2のエッチングマスクを用いて、反応性イオンエッチングによって前記初期収容層における前記溝部を含む部分をエッチングする第2のエッチング工程と、
前記収容部内に前記主磁極を形成する工程とを含み、
前記第1のエッチングマスクは、前記第1の開口部に面する第1および第2の側壁を有し、前記第1および第2の側壁はトラック幅方向について第1の間隔をあけて対向し、
前記第2のエッチングマスクは、前記第2の開口部に面する第3および第4の側壁を有し、前記第3および第4の側壁は、トラック幅方向について前記第1の間隔よりも大きい第2の間隔をあけて対向し、
前記収容部の前記媒体対向面に平行な任意の断面において、前記基板の上面に最も近い端は、前記基板の上面から最も遠い端に比べて、トラック幅方向の幅が小さいことを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法。
【請求項7】
前記収容層および主磁極を形成する工程は、更に、前記第1のエッチングマスクを形成する工程の前に、前記初期収容層の上面上に、前記収容層の前記壁面の位置を規定するための第3のエッチングマスクを形成する工程を含み、
前記第1のエッチング工程は、前記第1のエッチングマスクと第3のエッチングマスクを用いて前記初期収容層をエッチングし、
前記第2のエッチング工程は、前記第2のエッチングマスクと第3のエッチングマスクを用いて前記初期収容層をエッチングすることを特徴とする請求項6記載の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記収容層の前記壁面が前記基板の上面に垂直な方向に対してなす角度は、10°以下であることを特徴とする請求項6記載の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記収容層は、前記コアを兼ねていることを特徴とする請求項6記載の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法。
【請求項10】
前記収容層は、前記クラッドを兼ねていることを特徴とする請求項6記載の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法。
【請求項1】
記録媒体に対向する媒体対向面と、
情報を前記記録媒体に記録するための記録磁界を発生する主磁極と、
前記主磁極を収容する収容部を含む収容層と、
光を伝播させるコアとクラッドとを有する導波路と、
前記媒体対向面に配置された近接場光発生部を有し、前記コアを伝播する光に基づいてプラズモンが励起され、このプラズモンに基づいて前記近接場光発生部より近接場光を発生するプラズモンジェネレータと、
上面を有する基板とを備え、
前記基板の上面の上方に、前記主磁極、収容層、導波路およびプラズモンジェネレータが配置され、
前記コアは、前記媒体対向面に向いた端面であって前記媒体対向面から離れた位置に配置された端面を有し、前記プラズモンジェネレータに対して、前記基板の上面からより遠い側に配置され、
前記主磁極は、前記媒体対向面に配置された前端面と、前記前端面とは反対側の後端面とを有し、前記コアの端面と前記媒体対向面との間に配置され、
前記収容層は、前記収容部に面する壁面であって、前記主磁極の後端面の形状を規定する壁面を有し、
前記主磁極の前端面は、前記基板の上面により近い第1の端部と、基板の上面からより遠い第2の端部とを有し、前記第1の端部は第2の端部に比べてトラック幅方向の幅が小さい熱アシスト磁気記録ヘッドにおける前記主磁極を形成する方法であって、
上面を有する初期収容層を形成する工程と、
前記初期収容層の上面上に、第1の開口部を有する第1のエッチングマスクを形成する工程と、
前記第1のエッチングマスクを用いて、反応性イオンエッチングによって前記初期収容層をエッチングして、前記初期収容層に溝部を形成する第1のエッチング工程と、
前記第1のエッチング工程の後で、前記初期収容層の上面上に、第2の開口部を有する第2のエッチングマスクを形成する工程と、
前記初期収容層が前記収容層になり、前記溝部が前記収容部になるように、前記第2のエッチングマスクを用いて、反応性イオンエッチングによって前記初期収容層における前記溝部を含む部分をエッチングする第2のエッチング工程と、
前記収容部内に前記主磁極を形成する工程とを含み、
前記第1のエッチングマスクは、前記第1の開口部に面する第1および第2の側壁を有し、前記第1および第2の側壁はトラック幅方向について第1の間隔をあけて対向し、
前記第2のエッチングマスクは、前記第2の開口部に面する第3および第4の側壁を有し、前記第3および第4の側壁は、トラック幅方向について前記第1の間隔よりも大きい第2の間隔をあけて対向し、
前記収容部の前記媒体対向面に平行な任意の断面において、前記基板の上面に最も近い端は、前記基板の上面から最も遠い端に比べて、トラック幅方向の幅が小さいことを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッドの主磁極の形成方法。
【請求項2】
主磁極の形成方法は、更に、前記第1のエッチングマスクを形成する工程の前に、前記初期収容層の上面上に、前記収容層の前記壁面の位置を規定するための第3のエッチングマスクを形成する工程を含み、
前記第1のエッチング工程は、前記第1のエッチングマスクと第3のエッチングマスクを用いて前記初期収容層をエッチングし、
前記第2のエッチング工程は、前記第2のエッチングマスクと第3のエッチングマスクを用いて前記初期収容層をエッチングすることを特徴とする請求項1記載の熱アシスト磁気記録ヘッドの主磁極の形成方法。
【請求項3】
前記収容層の前記壁面が前記基板の上面に垂直な方向に対してなす角度は、10°以下であることを特徴とする請求項1記載の熱アシスト磁気記録ヘッドの主磁極の形成方法。
【請求項4】
前記収容層は、前記コアを兼ねていることを特徴とする請求項1記載の熱アシスト磁気記録ヘッドの主磁極の形成方法。
【請求項5】
前記収容層は、前記クラッドを兼ねていることを特徴とする請求項1記載の熱アシスト磁気記録ヘッドの主磁極の形成方法。
【請求項6】
記録媒体に対向する媒体対向面と、
情報を前記記録媒体に記録するための記録磁界を発生する主磁極と、
前記主磁極を収容する収容部を含む収容層と、
光を伝播させるコアとクラッドとを有する導波路と、
前記媒体対向面に配置された近接場光発生部を有し、前記コアを伝播する光に基づいてプラズモンが励起され、このプラズモンに基づいて前記近接場光発生部より近接場光を発生するプラズモンジェネレータと、
上面を有する基板とを備え、
前記基板の上面の上方に、前記主磁極、収容層、導波路およびプラズモンジェネレータが配置され、
前記コアは、前記媒体対向面に向いた端面であって前記媒体対向面から離れた位置に配置された端面を有し、前記プラズモンジェネレータに対して、前記基板の上面からより遠い側に配置され、
前記主磁極は、前記媒体対向面に配置された前端面と、前記前端面とは反対側の後端面とを有し、前記コアの端面と前記媒体対向面との間に配置され、
前記収容層は、前記収容部に面する壁面であって、前記主磁極の後端面の形状を規定する壁面を有し、
前記主磁極の前端面は、前記基板の上面により近い第1の端部と、基板の上面からより遠い第2の端部とを有し、前記第1の端部は第2の端部に比べてトラック幅方向の幅が小さい熱アシスト磁気記録ヘッドを製造する方法であって、
前記プラズモンジェネレータを形成する工程と、
前記プラズモンジェネレータの形成後に前記導波路を形成する工程と、
前記プラズモンジェネレータの形成後に前記収容層および主磁極を形成する工程とを含み、
前記収容層および主磁極を形成する工程は、
上面を有する初期収容層を形成する工程と、
前記初期収容層の上面上に、第1の開口部を有する第1のエッチングマスクを形成する工程と、
前記第1のエッチングマスクを用いて、反応性イオンエッチングによって前記初期収容層をエッチングして、前記初期収容層に溝部を形成する第1のエッチング工程と、
前記第1のエッチング工程の後で、前記初期収容層の上面上に、第2の開口部を有する第2のエッチングマスクを形成する工程と、
前記初期収容層が前記収容層になり、前記溝部が前記収容部になるように、前記第2のエッチングマスクを用いて、反応性イオンエッチングによって前記初期収容層における前記溝部を含む部分をエッチングする第2のエッチング工程と、
前記収容部内に前記主磁極を形成する工程とを含み、
前記第1のエッチングマスクは、前記第1の開口部に面する第1および第2の側壁を有し、前記第1および第2の側壁はトラック幅方向について第1の間隔をあけて対向し、
前記第2のエッチングマスクは、前記第2の開口部に面する第3および第4の側壁を有し、前記第3および第4の側壁は、トラック幅方向について前記第1の間隔よりも大きい第2の間隔をあけて対向し、
前記収容部の前記媒体対向面に平行な任意の断面において、前記基板の上面に最も近い端は、前記基板の上面から最も遠い端に比べて、トラック幅方向の幅が小さいことを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法。
【請求項7】
前記収容層および主磁極を形成する工程は、更に、前記第1のエッチングマスクを形成する工程の前に、前記初期収容層の上面上に、前記収容層の前記壁面の位置を規定するための第3のエッチングマスクを形成する工程を含み、
前記第1のエッチング工程は、前記第1のエッチングマスクと第3のエッチングマスクを用いて前記初期収容層をエッチングし、
前記第2のエッチング工程は、前記第2のエッチングマスクと第3のエッチングマスクを用いて前記初期収容層をエッチングすることを特徴とする請求項6記載の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記収容層の前記壁面が前記基板の上面に垂直な方向に対してなす角度は、10°以下であることを特徴とする請求項6記載の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記収容層は、前記コアを兼ねていることを特徴とする請求項6記載の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法。
【請求項10】
前記収容層は、前記クラッドを兼ねていることを特徴とする請求項6記載の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−243384(P2012−243384A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−9717(P2012−9717)
【出願日】平成24年1月20日(2012.1.20)
【出願人】(500475649)ヘッドウェイテクノロジーズ インコーポレイテッド (251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月20日(2012.1.20)
【出願人】(500475649)ヘッドウェイテクノロジーズ インコーポレイテッド (251)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]