説明

熱バリア被覆系、それらで被覆された部品、および熱バリア被覆系の部品への適用方法

ベース材料(1)上の熱バリア被覆系(5)であって、下面で前記ベース材料(1)と直接接触し、且つ上面で第一のセラミック層(3)と直接接触するボンディングコート層(2)を含む被覆系が提案される。該熱バリア被覆系は、さらに、第二のセラミック層(4)を、被覆系の最外の熱ガスに晒される表面上に含む。第一のセラミック層(3)は、イットリア含有率6〜8質量%の範囲(6w/o〜8w/o Y22)を有するイットリア安定化ジルコニア(ZrO2)である、YTaO4ドープジルコニア、および/またはチタニアドープジルコニアからなる。第二のセラミック層(4、4a、4b)の材料は、YTaO4ドープジルコニア、チタニアドープジルコニア、スカンジア安定化ジルコニア、セリア含有ペロブスカイト材料、イットリウムアルミニウムガーネット材料、モナザイト材料、スピネル材料、およびそれらの組み合わせ、混合物、合金、配合物または多層構造の群から選択され、ただし、第一のセラミック層(3)がYTaO4ドープジルコニアおよび/またはチタニアドープジルコニアからなる場合、第二のセラミック材料(4、4a、4b)はYTaO4ドープジルコニアおよび/またはチタンドープジルコニアからは選択されない。さらには、本発明は、かかる熱バリア被覆系の適用方法、並びにかかる被覆系を用いて提供される2つの部品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は熱バリア被覆(TBC)系の分野、特に多層YSZベースの被覆系、それらで被覆された部品、およびかかる熱バリア被覆系の部品への適用方法に関する。
【0002】
先行技術
今までのところ、TBC系は、溶射(例えば大気プラズマ溶射)、または気相堆積法(例えば物理気相堆積)のいずれかによって堆積されるイットリア安定化ジルコニアのセラミック層に基づき、ベース材料の上に堆積されているMCrAlYまたはPtAlボンディングコート上に堆積されている。
【0003】
今までのところ、第一候補のTBC材料は、US4485151号においてStecuraによって発表された6〜8質量%のイットリア安定化ジルコニア(YSZ)組成物である。6〜8質量%のイットリア安定化ジルコニアを用いて製造されたTBCは、被覆工程の後、準安定な正方晶相で大部分が構成され、それは、高温への曝露の間に分解する。この分解工程は、TBC系の不安定化および層間剥離をみちびくことがある。過去20年の間、(TBC)系の改善で多くの試みが行われている。2つの主な課題が目標とされている:
・ TBC材料の熱伝導性を低減し、冷却の必要性を低減させること
・ TBC材料の高温安定性を向上し、高い表面温度での被覆パーツの稼働を可能にすること。
【0004】
それらの課題は、冷却の必要性を低減することと関連し、そのことはガスタービンの効率の向上と相関する。
【0005】
改善されたTBC材料における初めの研究の間、ジルコニアベースの材料を使用し、且つ材料の高温安定性の改善または熱伝導性の低減を得るようにそれらのドーピングを最適化することに着目されていた。
【0006】
本発明の文脈においては、以下の文献が注目に値する:
US4335190号は、約1.5pm厚である中間層を有するイットリア安定化ジルコニア製の多層系を開示している。US5840434号は、柱状構造を有する外層を有する多層ジルコニア被覆物を開示している。EP0605196号は、内層において0%の開孔率を有し、且つ、外層において10〜20%の開孔率を有する多層ジルコニア被覆物を開示している。US6930066号は、30質量%より多いY23で安定化された単層のジルコニア被覆物を開示している。
【0007】
EP1514953号は、立方晶のYSZからなる外層を有する多層ジルコニア被覆物を開示している。US6887595号は、1) Yb、Nd、Yb+La、Nd+La (5〜49mol%); 2) Y、Ca、Ce、Sc、Mg、In (<4mol%); 3) Hf (0.5〜40mol%)またはTa (0.5〜10mol%)によって安定化された立方晶のジルコニアからなる外層を有する多層系を開示している。
【0008】
US4328285号は、セリア安定化ジルコニア製の単層被覆物を開示している。WO01/83851号は、セリア安定化ジルコニアから構成される外層を有し、且つ、その外層は内層よりも著しく薄い、環境汚染に耐性のある多層系を開示している。
【0009】
US6812176号およびUS7186466号は、ドープ元素で形成される多重クラスタで安定化されたジルコニア製の単層被覆物を開示しており、該ドーピング元素は大多数の希土類用である。EP1550642号は、YSZ(>91mol%) +1) Y、Ca、Ce、Sc、MgまたはIn +2) La、Gd、Nd、SmまたはDy +3) YbまたはEr製の単層被覆物を開示している。
【0010】
EP1550645号は、LaおよびNdでドープされた、またはLaおよびYbでドープされたYSZ製の単層被覆物を開示している。EP1627862号は、Y、Gd、Ca、Ce、Mg、Sc、Inの群からの1つの元素で安定化された、ランタンドープジルコニア製の被覆物を開示している。US6890668号は、立方晶系のフルオライト構造を有する(Er,Nd,Sm)−SZ製の単層被覆物を開示している。EP1588992号は、Y、Ca、Ce、Sc、Mg、In、La、Gd、Nd、Dy、Er、Yb、EuまたはPrでドープされたHf−SZ製の多層被覆物を開示している。
【0011】
US4913961号は、Sc−SZ製の単層被覆物を開示している。
【0012】
US4335190号は、約1.5pm厚の内層を有するカルシア安定化ジルコニア製の多層系を開示している。
【0013】
W00183851号(優先日2000年4月27日)は、カルシア安定化ジルコニアから構成される外層を有し、その外層は内層よりも著しく薄い、環境汚染に耐性のある多層系を開示している。
【0014】
EP1507022号は、Ta(1〜4mol%)であってよい五価の酸化物でドープされたYSZ製の単層被覆物を開示している。
【0015】
US2002164430号は、Caが部分的に他の元素、例えばSrで置換されたCaZrO3製の単層被覆物を開示している。
【0016】
EP1900848号は、ガーネット構造を有する材料製の外層を有する多層被覆物を開示し、該被覆物は砂に関連する問題(sand related distress)を減少する。
【0017】
US6863999号は、希土類元素ホスフェート(ゼノタイムまたはモナザイト)の単層被覆物を開示している。
【0018】
JP63274751号は、安定化ジルコニア製の外層および内層系を有し、且つ、中間層がスピネルで構成される、多層被覆物を開示している。
【0019】
US2006/0078750号は、部品上で第一の結合層が適用され、その後、7YSZからなる第一のセラミック層が適用される層構造を開示している。この第一のセラミック層上に、第二のセラミック層が提供される。第二のセラミック層についての種々の可能性の中で、多重希土類ドープイットリア安定化ジルコニアが提案されている。類似の構造物がUS6887595号並びにEP1806435号内に開示されている。
【0020】
発明の概要
従って、本発明の課題は、特に熱い腐蝕性ガス流に晒される部品、例えばガスタービンの流通部分、圧縮器、およびその種のものにおける部品のための、改善された熱バリア被覆物系を提供することである。さらには、本発明の課題は、かかる熱バリア被覆系を製造するための方法を提供すること、および少なくとも部分的にかかる熱バリア被覆物系で被覆された部品を提供することである。
【0021】
従って、本発明の課題は、請求項1に記載の熱バリア被覆物系、請求項14に記載の方法、および請求項15に記載の部品である。特に、ベース材料上の熱バリア被覆物系であって、下面で前記ベース材料と直接接触し、上面で第一のセラミック層と直接接触するボンディングコート層を含み、且つ、第二のセラミック層を、被覆系の最外の熱ガスに晒される表面上に含む被覆物系が提案される。言い換えれば、ベース材料、典型的には金属(合金を含む)上に、第一のボンディングコート層があり、続いて、且つ第一のセラミック層と直接接触し、その後、直接続いて第二のセラミック層が被覆系の最外の熱ガスに晒される表面を形成するか、またはこの第二のセラミック層と第一のセラミック層との間にさらなる中間層がある。第二のセラミック層が、数種の含浸物によって、または薄い保護層によって、熱ガスに晒される表面上で上塗りされてもよいことに留意すべきである。さらには、第一のセラミック層並びに第二のセラミック層は、異なる材料または同一の材料が使用される多層構造であってもよいことに留意すべきである。表記「異なる材料」は、同一の成分(原子)であるが、異なる比率または異なる相を有する材料を含むものとする。典型的には、第一のセラミック層および第二のセラミック層は、異なる材料で作製されている。
【0022】
本発明によれば、第一のセラミック層は、6〜8質量%(6w/o〜8w/o Y22)の範囲のイットリア含有率を有するイットリア安定化ジルコニア(ZrO2)からなる。
【0023】
特に、6〜8質量%の範囲のイットリア含有率を有するイットリア安定化ジルコニア(ZrO2)を、US4485151号内に記載される通りに提供でき、且つ、第一のセラミック層のためのこの可能な材料の選択に関して、US4485151号の明細書は特に本明細書内に含まれるものとする。
【0024】
選択的に、第一のセラミック層はYTaO4ドープジルコニアまたはチタニアドープジルコニアからなる。第一のセラミック層が、それらの種々の材料の組み合わせ(混合物および/または層)からなることも可能である。好ましくは、YTaO4ドープされたジルコニアの場合、ZrO2は15〜22mol%のYTaO4でドープされている。
【0025】
本発明によれば、第二のセラミック層の材料はさらには、以下の材料の1つまたはいくつかから選択される:
YTaO4ドープジルコニア、チタニアドープジルコニア、スカンジア安定化ジルコニア、多重希土類ドープイットリア安定化ジルコニア、セリア安定化ジルコニア、セリア含有ペロブスカイト材料、イットリウムアルミニウムガーネット材料、モナザイト材料 (典型的には一般構造RE(PO4)、前記RE=Ce、La、Nd、Pr、Y、さらに20%までのThを含んでもよい)、スピネル材料、およびそれらの組み合わせ、混合物、合金、配合物または多層構造。第一のセラミック層および第二のセラミック層についての材料の上記の定義は、ただし、第一のセラミック層がYTaO4ドープジルコニアおよび/またはチタニアドープジルコニアからなる場合、第二のセラミック層の材料はYTaO4ドープジルコニアおよび/またはチタニアドープジルコニアからは選択されないと理解されるべきである。言い換えれば、第一のセラミック層のための材料と、第二のセラミック層のための材料とは、どんな場合でも異なっていなければならない。
【0026】
今までのところ、TBC系は、技術水準を上回る著しい改善を提供してこなかった。成功しなかった理由の1つが、いくつかのYSZ特性の組み合わせられた効果にあることが提唱されている:
1) 正方晶のジルコニアは、材料に強化機構を提供する強弾性挙動を示す;
2) 正方晶のジルコニアは、低温で単斜晶のジルコニアに、且つ高温で立方晶のジルコニアに転移することがある。任意のそれらの相転移は、TBCの不安定化およびその不全をみちびく。この理由のため、6質量%のY23ドープZrO2から約12質量%のY23ドープZrO2までにおよぶ、相図のいわゆる非転移正方晶領域である場合のみ、正方晶のジルコニアをTBC中で使用することができる。強化機構は、ボンディングコート−TBC界面で重要であるとみなされ、そこでは、熱応力が最大であり、且つ、通常、クラックによってTBCの不全が生じる。強化機構は、クラックの伝搬を減速するための機構を提供する。TBCの外表面で、YSZの高温安定性はTBCの寿命について決定的であり、なぜなら、TBCが経験する温度はYSZの著しい分解を誘発するからである。TBCの分解は低イットリア含有層を形成し、それは冷却で正方晶から単斜晶に転移し、加熱で正方晶に戻ることがある。この相転移は体積変化を伴い、それが追加的な応力をTBC中で誘発し、且つ、その不全をみちびくことがある。
【0027】
多層TBCの場合においては、状況は異なり、なぜなら、ボンディングコートとの界面で良好な機械的特性を有する材料および最外層のための高温安定性を有する他の材料を使用できるからである。
【0028】
従って、我々は、ベース材料として金属(優先的にはNiベースの超合金)、ボンディングコート(優先的にはMCrAlY)、6〜8質量%のイットリアを有するイットリア安定化ジルコニアまたは良好な強化メカニズムを有する他の材料の第一のセラミック層、および6〜8質量%のイットリアを有するイットリア安定化ジルコニアと比較して高温安定性が向上した材料製の第二のセラミック層を有する多層TBC系を提案する。上記で議論された通り、6〜8質量%のイットリア層を有するイットリア安定化ジルコニアは、ボンディングコート−TBC界面で強化メカニズムを提供することを可能にし、且つ、その外層は6〜8質量%のイットリアを有するイットリア安定化ジルコニアが高温で分解して、冷却で単斜晶相に転移する望ましくない低イットリア含有率の正方晶相を形成する、現在の問題を低減するであろう。さらには、新規のTBC材料は、高温での低減された焼結速度を有することができる。TBCの焼結はTBCの剛さの増加をみちびき、TBC系内の応力水準の増加およびTBC不全の危険の増加をみちびく。
【0029】
上述の通り、第一のセラミック層は好ましくはYTaO4ドープジルコニア、またはチタニアドープジルコニア、またはそれらの種々の材料の組み合わせ(混合物および/または層)からなる。この場合、第二のセラミック層を、1つまたはそれより多くの以下の材料:YTaO4ドープジルコニア、チタニアドープジルコニア、スカンジア安定化ジルコニア、多重希土類ドープイットリア安定化ジルコニア、セリア安定化ジルコニア、セリア含有ペロブスカイト材料、イットリウムアルミニウムガーネット材料、モナザイト材料 (典型的には一般構造RE(PO4)、前記RE=Ce、La、Nd、Pr、Y、さらに20%までのThを含んでよい)、スピネル材料、およびそれらの組み合わせ、混合物、合金、配合物または多層構造から選択でき、但し、ここでもまた、第一のセラミック層がYTaO4ドープジルコニアおよび/またはチタニアドープジルコニアからなる場合、第二のセラミック層の材料はYTaO4ドープジルコニアおよび/またはチタニアドープジルコニアからは選択されない。言い換えれば、第一のセラミック層のための材料と、第二のセラミック層のための材料とは、どんな場合でも異なっていなければならない。
【0030】
第一のセラミック層が6〜8質量%の範囲(6w/o〜8w/o Y22)のイットリア含有率を有するイットリア安定化ジルコニア(ZrO2)からなる場合、好ましくは第二のセラミック層は以下の材料:YTaO4ドープジルコニア、チタニアドープジルコニア、スカンジア安定化ジルコニア、セリア含有ペロブスカイト材料、イットリウムアルミニウムガーネット材料、モナザイト材料 (典型的には一般構造RE(PO4)、前記RE=Ce、La、Nd、Pr、Y、さらに20%までのThを含んでよい)、スピネル材料、およびそれらの組み合わせ、混合物、合金、配合物または多層構造の1つまたはいくつかから選択され、但し、ここでもまた、第一のセラミック層がYTaO4ドープジルコニアおよび/またはチタニアドープジルコニアからなる場合、第二のセラミック層の材料はYTaO4ドープジルコニアおよび/またはチタニアドープジルコニアからは選択されない。言い換えれば、第一のセラミック層のための材料と、第二のセラミック層のための材料とは、どんな場合でも異なっていなければならない。従って好ましくはこの場合、第二のセラミック層は多重希土類ドープイットリア安定化ジルコニアまたはセリア安定化ジルコニアを含まない。この関連で、技術水準の上記の文献、とりわけUS2006/0078750号、US6887595号並びにEP1806435号内では、全て、部品上に第一のボンディングコート層が適用され、その後、7YSZからなる第一のセラミック層が適用され、且つ、この特定の第一のセラミック層の上に、多重希土類ドープされたイットリア安定化ジルコニアに基づく第二のセラミック層が提供される層構造を明白に開示しているのみであることが特筆される。
【0031】
本発明のさらに好ましい実施態様において、ベース材料は金属、好ましくは超合金、より好ましくはNiベースの超合金である。一般に、ガスタービンの熱ガス経路内で使用される典型的なベース材料は、本発明による熱バリア被覆系のためのベース材料を形成できる。
【0032】
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、ボンディングコート層は、CrAlベースの材料を含み、好ましくはすべてそれからなる。好ましくは、MCrAlRXベース材料を含む、またはそれからなり、前記MはFe、Co、NiまたはCo/Niから選択され、前記RはYまたはYbから選択され、前記Xは任意であり、且つ、例えばPt、Hf、Si、Zr、Ta、ReおよびRuおよびそれらの組み合わせから選択されてよい。
【0033】
上記の通り、さらに好ましい実施態様によれば、第二のセラミック層はその下面で第一のセラミック層(の上面)と直接接触し、それは第一および第二のセラミック層が互いに直接接触し、且つ、中間層がないことを意味する。多層構造の充分な機械的強度のために、2つの層(第一および第二のセラミック層)の間の界面に勾配をつけるか、または粗い界面を提供し、2つの層の間に機械的付着を提供することが好ましい。
【0034】
第一並びに第二のセラミック層は、当然、材料が上記の通りに選択される条件下で、いくつかのセラミック層で構成される層構造であってよい。しかしながら、さらに好ましい実施態様によれば、第一並びに第二のセラミック層は単層である。単層の表記は、全ての層が1つの同一の材料(同一の層、同一の組成/成分比)で作製されていることを意味するものとする。しかしながら、その単層が単独の堆積工程で製造されることを含意する必要はなく、かかる単層はそれぞれの段階で同一の材料が堆積される一連の堆積工程で製造されてもよい。
【0035】
さらに好ましい実施態様によれば、特に、第二のセラミック層は異なる組成および/または微細構造および/または層組成の少なくとも2つのセラミック層で構成されてよい。
【0036】
第一または第二のセラミック層のためにYTaO4ドープジルコニアが使用される場合、好ましくは、ジルコニアは14〜17mol%のYTaO4でドープされている。
【0037】
第一または第二のセラミック層のためにチタニアドープジルコニアが使用される場合、好ましくは、ジルコニアは4〜14mol%のTiO2でドープされている。
【0038】
第二のセラミック層のために、多重希土類ドープイットリア安定化ジルコニアが使用される場合、好ましくは、イットリアのドーピングはNd/Yb、Gd/Ybおよび/またはSm/Ybの組み合わせによって与えられる。
【0039】
第二のセラミック層のために、セリア安定化ジルコニアが使用される場合、好ましくは、ジルコニアは20〜30mol%のCeO2でドープされる。
【0040】
第二のセラミック層のために、セリア含有ペロブスカイト材料が使用される場合、好ましくは、これはBaCeO3および/またはSrCeO3から選択される。
【0041】
第二のセラミック層のためにモナザイトが使用される場合、好ましくは、モナザイト、これは随意にThを含むLaPO4として選択される。
【0042】
第二のセラミック層のためにスピネルが使用される場合、好ましくは、これはBaY24および/またはSrY24から選択される。
【0043】
本発明のさらに他の好ましい実施態様によれば、第一のセラミック層は、水銀ポロシメトリーによって、または画像解析によって測定される、10〜40%の範囲、好ましくは15〜30%の範囲の開孔率を有している。
【0044】
さらに好ましくは、第一のセラミック層は、50〜1000μmの範囲、好ましくは100〜500μmの範囲の厚さを有する。
【0045】
第二のセラミック層に関して、好ましくは、それは5〜80%の範囲、好ましくは5〜25%の範囲の開孔率を有する。
【0046】
第二のセラミック層は、好ましくは、第一のセラミック層との界面で20〜80%の範囲、好ましくは20〜25%の範囲の開孔率を有し、且つ熱ガスとの界面の5〜20%の範囲、好ましくは5〜10%の範囲の開孔率へと減少する勾配のついた開孔率を有する。
【0047】
さらに好ましい実施態様によれば、第二のセラミック層は300〜2000μmの範囲の厚さを有している。
【0048】
さらには、一般に、第一のセラミック層の厚さは、単独の第二のセラミック層の場合、第二のセラミック層の厚さよりも薄いことが好ましく、且つ、多重の第二のセラミック層の場合、多重の第二のセラミック層の総厚よりも薄いことが好ましい。
【0049】
さらには、本発明は上述の熱バリア被覆物系を作製する方法に関する。
【0050】
好ましくは、該方法は第一の段階において(随意に、金属ベース材料の予めの表面処理、例えば粉砕および/または洗浄および/または化学処理の後)、ボンディングコート層を金属ベースの材料の部品に適用することを特徴とする。ボンディングコート層は、好ましくは、溶射および/または電子ビーム物理気相堆積を使用することによって適用される。引き続き、第二の段階において、第一のセラミック層をボンディングコート層上に直接的に、1つまたはそれより多くの段階で適用する。好ましくは、このセラミック層を、電気泳動堆積、プラズマ溶射、電子ビーム物理気相堆積、粉末被覆、真空粉末溶射堆積、化学堆積、レーザーアシスト堆積、イオンビームアシスト堆積から選択される方法を使用して適用する。ここで中間のセラミック層を適用し、その後、第二のセラミック層を適用するか、または、好ましくは、第二のセラミック層を第一のセラミック層上に適用する。それに応じて、第三の段階において、第二のセラミック層またはいくつかの第二のセラミック層を第一のセラミック層の上に1つまたはいくつかの段階で適用し、随意に次に、表面の保護層または保護含浸物を適用する。この第二のセラミック層の適用方法は、好ましくは第一のセラミック層の適用のために上記で示された方法の1つから選択される。
【0051】
さらには、本発明は、好ましくは上述の方法を使用して製造される上述の被覆系を含む部品、特にガスタービンの熱ガスに晒される部品に関する。
【0052】
本発明のさらなる実施態様は従属請求項内で概略が述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】a) 2つのセラミック層を有する熱バリア被覆物系を有する部品の表面に対して垂直に切った模式図、b) 3つのセラミック層を有する模式図。
【0054】
本発明の好ましい実施態様を、図面を参照しながら以下で説明するが、それらは本発明の好ましい実施態様を例証するためであり、且つ、それを限定するためではない。図面において、図1a)は、2つのセラミック層を有する熱バリア被覆物系を有する部品の表面に対して垂直に切った模式図であり、b)はa)と同様であるが、3つのセラミック層を有するものである。
【0055】
好ましい実施態様の説明
本発明は、金属ベース材料1、ボンディングコート2、6〜8質量%のイットリアを有するイットリア安定化ジルコニアの第一のセラミック層3、および以下の材料のいずれかで作製される第二のセラミック層4を有する多層TBC系からなる:
・ YTaO4ドープジルコニア(優先的に、14〜17mol%のYTaO4を有する);
・ チタニアドープジルコニア(優先的に、4〜14mol%のTiO2を有する);
・ スカンジア安定化ジルコニア;
・ 多重希土類ドープイットリア安定化ジルコニア(Nd&Yb、またはGd&Yb、またはSm&Ybの組み合わせ(comination));
・ セリア安定化ジルコニア(優先的に、20〜30mol%のCeO2を有する)
・ Ce含有ペロブスカイト材料(優先的にBaCeO3またはSrCeO3);
・ イットリウムアルミニウムガーネット(YAG);
・ モナザイト(LaPO4
・ スピネル(例えばBaY24またはSrY24)。
【0056】
他の可能性は、上述の多層系であるが、チタニアドープジルコニアまたはYTaO4ドープジルコニアのいずれかを使用して第一のセラミック層の組成を変更して使用することである。それらの組成の両方は、第一のセラミック層3に対して強度を改善することが予想される。この場合、第一のセラミック層3および第二のセラミック層4は、同一の材料で構成されているべきではない。
【0057】
図1bに図示される通り、特に第二のセラミック層4は、4aおよび4bとして示される異なる材料のいくつかの層を含んでよい。それらの層は同一または異なる厚さを有してよい。重要なのは、第二のセラミック層4または一番上の第二のセラミック層4bが、熱ガス流6に晒される表面7を形成していることである。しかしながらこれは、薄い表面層が第二のセラミック層上に存在することができ、さらには、この上部のセラミック層上で含浸物があってよいことを除外しない。
【0058】
第一のセラミック層と第二のセラミック層との間の界面は、勾配がついているか(界面に沿った組成勾配を有する両方の材料の混合)、または粗い界面であって、2つのセラミック層の間に機械的な付着を提供してもよい。
【0059】
第一のセラミック層は通常、10〜40%(好ましくは15〜30%)の開孔率レベルおよび50〜1000ミクロン(好ましくは100〜500ミクロン)の厚さを有する。
【0060】
第二のセラミック層を、異なる微細構造または層組成の1つまたはそれより多くのセラミック層で構成してよい。
【0061】
第二のセラミック層は、5〜80%(好ましくは5〜25%)の開孔率レベルおよび300〜2000ミクロンの厚さを有する。
【0062】
第二のセラミック層の開孔率レベルは、1"セラミック層を有する界面での20〜80%(好ましくは20〜25%)から出発して、熱ガスとの界面での5〜19%へと減少する勾配がついていてよい。
【0063】
ボンディングコートを、プラズマ溶射またはEB−PVDによって加工し、且つ同一の実施態様においては、特定の組成を有するように規定できる。
【0064】
実験において、ベース材料1(特にガスタービン部品)を、ボンディングコート層(質量による組成、US6221181号も参照: 28〜35% Co、11〜15% Cr、10〜13% Al、0〜1% Re、1〜2% Si、0.2〜1% Ta、0.005〜0.5% Y、0〜5% Ru、0〜1% Ca、0〜1% Mg、0〜0.5% La(またはLa列からの元素)、0〜0.1% B、残り Ni、および付随する不純物)を、プラズマ溶射堆積を使用して被覆することによって試作品を製造した。得られるボンディングコート層の厚さは、300〜400μmの範囲であった。
【0065】
引き続き、上記で規定されたイットリア含有率を有するYSZの第一のセラミック層を、溶射堆積を使用して適用し、300〜500μmの範囲の層厚および約20〜25%の開孔率を有する第一のセラミック層をもたらした。
【0066】
その後、第二のセラミック層を、第一のセラミック層の粗い上部表面上に、溶射堆積を使用して堆積させ、その際、材料としてはYTaO4ドープジルコニア(YTaO4において14%ドーピング)が使用された。得られる第二のセラミック層は、600〜800μmの範囲の層厚を有し、且つ、第二のセラミック層は約20〜25%の開孔率を有する。
【0067】
第一の層(YTaO4ドープジルコニア)におけるYTaO4についてのさらなる実験データ:
試料を、ZrO2と20mol%のYTaO4とを混合し、1500℃で、600℃でアニール後、製造した。試料を、室温でのX線回折を用いて調査し、且つ、正方晶YTaO4−ZrO2相の分解は観察されず、且つ、単斜晶のZrO2は観察されない(ZrO2とYTaO4との分離はない)。
【0068】
対照的に、7質量%のY23安定化ZrO2(/YSZ)試料においては、かかる温度およびアニール時間で、正方晶相は立方晶および単斜晶のジルコニアに完全に分解されている。
【0069】
これは、YTaO4の増加と共に、正方晶から単斜晶のジルコニアへの転移温度が低下し、正方晶ジルコニア構造を室温まで保持することが可能になることを示すデータと一致する。
【0070】
従って、15〜22mol%のYTaO4で安定化されたZrO2は、以下の理由のために、より特別には、ボンディングコートとTBCとの間の界面で、魅力的なTBC材料である:
1) 高められた温度での長期安定性
2) 加熱および冷却での相転移がないこと
3) 低い熱伝導性
4) 正方晶のジルコニア層の強弾性挙動による高い破損強度。
【0071】
Y−Ta−Zr−O系において、通常、わずかな部分の系(15mol%のYTaO4でドープされたZrO2から22mol%のYTaO4でドープされたZrO2まで)のみがこの特性の組み合わせを示すことを述べなければならない。
【0072】
得られる熱バリア被覆構造物は、破砕、層間剥離、並びに不安定化に対する耐性の向上を示し、且つ、理想的に改善された熱伝導値を示した。
【符号の説明】
【0073】
1 ベース材料、部品
2 ボンディングコート層
3 第一のセラミック層
4 第二のセラミック層
4a 下部の第二のセラミック層
4b 表面の第二のセラミック層
5 熱バリア被覆系
6 熱ガス流の領域
7 1の表面
【図1a)】

【図1b)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース材料(1)上の熱バリア被覆系(5)であって、下面で前記ベース材料(1)と直接接触し、且つ、上面で第一のセラミック層(3)と直接接触するボンディングコート層(2)を含み、且つ、被覆系の最外の熱ガスに晒される表面上に第二のセラミック層(4)を含み、第一のセラミック層(3)は、
6〜8質量%の範囲のイットリア含有率を有するイットリア安定化ジルコニアの、YTaO4ドープジルコニア、
チタニアドープジルコニア、
およびそれらの組み合わせ、混合物、合金、配合物または多層構造
の群から選択される材料からなり、且つ、第二のセラミック層(4、4a、4b)の材料は、
YTaO4ドープジルコニア、チタニアドープジルコニア、
スカンジア安定化ジルコニア、
セリア含有ペロブスカイト材料、
イットリウムアルミニウムガーネット材料、
モナザイト材料、
スピネル材料、
およびそれらの組み合わせ、混合物、合金、配合物または多層構造
の群から選択され、但し、第一のセラミック層(3)がYTaO4ドープジルコニアおよび/またはチタンドープジルコニアからなる場合、第二のセラミック層(4、4a、4b)はYTaO4ドープジルコニアおよび/またはチタンドープジルコニアから選択されない、被覆系。
【請求項2】
ベース材料(1)が金属、好ましくは超合金、より好ましくはNiベースの超合金である、請求項1に記載の被覆系。
【請求項3】
ボンディングコート層(2)が、PtAlベースの材料および/またはMCrAlRXベースの材料からなり、前記MがFe、Co、NiまたはCo/Niから選択され、前記RがYまたはYbから選択され、且つ、前記Xは随意であり、且つ好ましくはPt、Hf、Si、Zr、Ta、ReおよびRuおよびそれらの組み合わせから選択されてよい、請求項1または2に記載の被覆系。
【請求項4】
第二のセラミック層(4)が、その下面で第一のセラミック層(3)と直接接触し、2つの層(3、4)の間の界面は勾配がつけられるか、または粗い界面が提供されて、その2つの層(3、4)の間の機械的付着を提供する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の被覆系。
【請求項5】
第一並びに第二のセラミック層(4)が単層である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の被覆系。
【請求項6】
第二のセラミック層(4)が、異なる組成および/または微細構造および/または相組成の少なくとも2つのセラミック層で構成される、請求項1から5までのいずれか1項に記載の被覆系。
【請求項7】
YTaO4ドープジルコニアの場合、ジルコニアは14〜17mol%のYTaO4でドープされている; および/または
チタニアドープジルコニアの場合、ジルコニアは4〜14mol%のTiO2でドープされている; および/または
セリア含有ペロブスカイト材料の場合、これはBaCeO3および/またはSrCeO3から選択される; および/または
モナザイトの場合、該材料、これは随意にThを含むLaPO4として選択される; および/または
スピネルの場合、該材料はBaY24および/またはSrY24から選択される、
請求項1から6までのいずれか1項に記載の被覆系。
【請求項8】
第一のセラミック層(3)が、10〜40%の範囲、好ましくは15〜30%の範囲の開孔率を有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の被覆系。
【請求項9】
第一のセラミック層(3)が、50〜1000μmの範囲、好ましくは100〜500μmの範囲の厚さを有する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の被覆系。
【請求項10】
第二のセラミック層(4)が、5〜80%の範囲、好ましくは5〜25%の範囲の開孔率を有する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の被覆系。
【請求項11】
第二のセラミック層(4)が、第一のセラミック層(3)との界面で、20〜80%の範囲、好ましくは20〜25%の範囲の開孔率を有し、熱ガスとの界面(6)の、5〜20%の範囲、好ましくは5〜10%の範囲の開孔率へと減少する勾配のついた開孔率を有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の被覆系。
【請求項12】
第二のセラミック層(4)が、300〜2000μmの範囲の厚さを有する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の被覆系。
【請求項13】
第一のセラミック層(3)の厚さが、単独の第二のセラミック層の場合、第二のセラミック層(4)の厚さよりも薄く、且つ、多重の第二のセラミック層の場合、多重の第二のセラミック層(4a、4b)の総厚よりも薄い、請求項1から12までのいずれか1項に記載の被覆系。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項に記載の被覆系を作製するための方法であって、第一の段階において、ボンディングコート層(2)を金属の部品(1)に、好ましくはプラズマ溶射および/または電子ビーム物理気相堆積を使用することによって適用し、第二の段階において、第一のセラミック層(3)をボンディングコート層(2)の上に1つまたはいくつかの段階で、好ましくは溶射、例えば大気プラズマ溶射、気相堆積、物理気相堆積、電気泳動堆積、プラズマ溶射、電子ビーム物理気相堆積、粉末被覆、真空粉末溶射堆積、化学堆積、レーザーアシスト堆積、イオンビームアシスト堆積から選択される方法を使用することによって適用し、且つ、第三の段階において、第二のセラミック層(4)またはいくつかの第二のセラミック層(4a、4b)を第一のセラミック層(3)の上に1つまたはいくつかの段階で適用し、随意に次に表面の保護層または保護含浸物を適用する、被覆系を作製するための方法。
【請求項15】
好ましくは請求項14に記載の方法を使用して製造される、請求項1から13までのいずれか1項に記載の被覆系を含む部品、特にガスタービンの熱ガスに晒される部品。

【公表番号】特表2012−512330(P2012−512330A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541375(P2011−541375)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067065
【国際公開番号】WO2010/069912
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】