説明

熱ローラ用ジャケット室の密封装置

【課題】熱ローラの周壁に形成した気液二相の熱媒体を注入したジャケット室の封入口を、中空内を金属薄板で二分した弁を破損することなく簡単かつ確実に閉塞することができるようにすること。
【解決手段】熱ローラ本体の周壁1内に、端部に外部と連通する封入孔3を有するジャケット室2を設け、前記封入孔3から前記ジャケット室に気液二相の熱媒体を注入したあと前記封入孔3の開口を、中空8a内を金属薄板6で仕切られその両側に前記中空8a内と連通する貫通孔8b、8cを有する弁8で閉塞する際、前記弁8を円柱状に形成し、封入孔3が開口する端面と前記弁8の端面との間にオーリング9を挿入するとともに、弁8の端面とねじ7の端面とが当接する構成とする。これにより各孔の開口角部に、締め付け力が集中しなくなり弁8の破損を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱ローラ用ジャケット室の密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばローラ本体の中空内に誘導コイルあるいは鉄心に誘導コイルを巻回した交番磁束発生機構を設置し、交番磁束発生機構が発生する交番磁束によりジュール発熱する、いわゆる誘導発熱ローラでは、一つの誘導コイルの長手方向の中心部における発熱量が多く、端部に行くにしたがい発熱量が小さくなる性質を有し、そのためにローラの長手方向における表面温度が不均一となる。この不均一を解消するためにローラ本体の周壁内に長手方向に沿ってジャケット室を設け、このジャケット室に水などの熱媒体を適量注入し、そのあと注入口を密封するようにしている。このようにすると発熱量が多い箇所で熱媒体が熱を奪って気化し、気化した熱媒体は発熱量が小さい箇所に移動して熱を放出して液化する。この潜熱移動によりローラ本体の長手方向の表面温度を均一化する。
【0003】
ところで、気液二相の熱媒体を注入したジャケット室を密封すると、ローラ本体が異常に加熱された場合には、ジャケット室内部の圧力が異常に高められ、その圧力によってジャケット室ひいてはローラ本体が破損乃至は爆発する恐れがある。この恐れを防止するために、ジャケット室の注入口は、ジャケット室内部の圧力が所定の圧力以上になると開通する密封装置により密封するようにしている。
【0004】
図3は、このような密封装置の一例を示すもので、図3において1は中空内に誘導コイルなどの加熱源を備えた熱ローラ本体の周壁、2は熱ローラ本体の周壁1の肉厚部内に熱ローラ本体1の長手方向に沿ってドリルなどで形成された図示しない一端が閉塞されたジャケット室、3はジャケット室2内に通じる小径の封入孔、4は封入孔3に連通し封入孔3と同心の大径のねじ孔であり、ジャケット室2は封入孔3およびねじ孔4を介して外気と連通している。
【0005】
5はスチールからなる中空球状の弁であり、この弁5は、銅などの金属薄板6により、その中空内5aを二分しており、金属薄板6で二分された両側の半球体のそれぞれの中央部に中空内5aと連通する貫通孔5bおよび5cが形成されている。つまり金属薄板6の周縁は半球体の端面で挟まれて固着されており、貫通孔5bと貫通孔5cは延長線上に位置している。7はねじで、ねじ7は工具を差し込む周壁が6角状をなす凹状の穴7aとこの穴7aに連通する貫通孔7bが形成されている。
【0006】
そして、中空球状の弁5を、その弁5の貫通孔5bを封入孔3に対向させ、また貫通孔5cをねじ7の貫通孔7bに対向させて大径のねじ孔4内に配置し、ねじ7の締め付けで小径の封入孔3の端部を閉塞する。 これによりローラ本体の加熱時ジャケット室2内の圧力が金属薄板6の厚みなどで設定した所定の圧力以下では金属薄板6でジャケット室2は密封された状態が維持されるが、その圧力を越えると金属薄板6は破裂し、この破裂によってジャケット室2内の圧力は弁5の貫通孔5b、5c、ねじ7の貫通孔7bおよび穴7aを経由して外部に放出される。この放出によりジャケット室2ひいてはローラ本体の破損乃至は爆発を防止することができる。
【特許文献1】特開2006−092822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように構成した密封装置では、中空球状の弁5の球面と封入孔3の角部周囲およびねじ7の貫通孔7bの角部周囲と当接してねじ7で締め付けられるので、その締め付け力が円形線の当接部に集中し、ジャケット室2内の許容圧力を高めるなどのため締め付け力を大きくすると弁5がその締め付け力で破損する場合があるといった問題があった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、中空内を金属薄板で二分した弁でジャケット室の封入孔を、該弁を破損することなく簡単かつ確実に密封することができるようにし、斯かる問題を解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、熱ローラ本体の周壁内に、端部に外部と連通する封入孔を有するジャケット室を設け、前記封入孔から前記ジャケット室に気液二相の熱媒体を注入したあと前記封入孔の開口を閉塞し、前記ジャケット室を密封してなる熱ローラ用ジャケット室の密封装置において、前記密封装置は、中空内を金属薄板で仕切られその両側に前記中空内と連通する貫通孔を有する弁と前記封入孔の開口を囲むオーリングと貫通孔を有するねじとからなり、前記弁を、前記弁の片側の貫通孔の開口を前記封入孔の開口と対向させて前記オーリングに当接して配置し、その弁の他の片側の貫通孔を有する端部を前記ねじでねじ締め固定して前記封入孔の開口を閉塞してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
発明では、金属薄板で仕切られた貫通孔を有する弁を、封入孔の開口を囲繞するオーリングに当接してねじ締め固定するので、ねじ締め力を低減することができ、ねじ締め力による弁の破損を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
中空内を金属薄板で二分した弁でジャケット室の封入孔を、該弁を破損することなく簡単かつ確実に密封することができるようにする目的を、ジャケット室の封入孔の開口を囲むオーリングを配置し、そのオーリングを介して前記弁をねじ締め固定することにより実現した。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の一実施例に係る熱ローラ用ジャケット室の密封装置の構成を示す断面図である。なお、図3に示す密封装置と同一部分および対応する部分には同一の符号を付し、その部の詳細な説明は省略する。図1において、7はねじ、8は弁、9はオーリングである。ねじ7は図3に示す密封装置のねじと同様に、工具を差し込む周壁が6角状をなす凹状の穴7aと中央部にこの穴7aに連通する貫通孔7bが形成されている。
【0013】
弁8は、中空8aを有し、ねじ孔4の内径と略同径の外径を有し、一方の端部に外径を小さくした段差8dを有する円柱状に形成され、中空8aを銅などの金属薄板6により二分しており、金属薄板6で二分された両側の柱状体のそれぞれの中央部に中空内8aと連通する貫通孔8bおよび8cが形成されている。オーリング9は、ねじ孔4の内径と略同径の外径を有し、弁8の外径を小さくした段差8dの外径と略同径の内径を有し、弁8の外径を小さくした段差8dの寸法より多少厚く形成されている。
【0014】
ジャケット室2内に気液二相の熱媒体を注入したあと封入孔3の開口を閉塞する際、弁8の外径を小さくした段差8dにオーリング9を嵌め込んだ弁8をねじ孔4内に挿入し、ねじ7をねじ孔4内にねじ込み、ねじ7の端面を弁8の端面に当接させて、弁8をねじ締め固定する。この固定で弁8の片側の貫通孔8bの開口と封入孔3の開口と対向し、弁8の他方の片側の貫通孔8cの開口と、ねじ7の貫通孔7bの開口が対向する。また、封入孔3が開口する端面と弁8の端面との間はオーリング9によってシールされる。
【0015】
すなわち、ねじ7による締め付け力はオーリング9によってシールされる程度で済み、またその締め付け力を多少大きくしても封入孔3の開口角部、弁8の貫通孔の開口角部に、その締め付け力が集中して加えられることがなく、これによりねじ7の締め付けで弁8が破損することを防止することができる。勿論、ローラ本体の加熱時ジャケット室2内の圧力が金属薄板6の厚みなどで設定した所定の圧力以下では金属薄板6でジャケット室2は密封された状態が維持されるが、その圧力を越えると金属薄板6は破裂し、この破裂によってジャケット室2内の圧力は弁8の貫通孔8b、中空8a、貫通孔8c、ねじ7の貫通孔7bおよび穴7aを経由して外部に放出され、この放出によりローラ本体の破損乃至は爆発を防止することができる。
【実施例2】
【0016】
図2は、本発明の他の実施例に係る熱ローラ用ジャケット室の密封装置の構成を示す断面図である。なお、図1に示す実施例と対応する部分には同一の符号を付している。図2において、10は弁、11はねじである。ねじ11は工具を差し込む周壁が6角状をなす凹状の穴11aと端面の外周近傍位置で開口する穴11aに連通する複数の貫通孔11bが形成されている。弁10は中空10aを有し、片側がねじ孔4の内径と略同径の外径を有し、一方の端部に外径を小さくした段差10dを有する円柱状に形成され、他の片側が半球状に形成され、中空10aを銅などの金属薄板6により二分しており、金属薄板6で二分された一方の柱状体の中央部に中空内10aと連通する貫通孔10bが形成され、他方の半球体にはその端部で開口する中空内10aと連通する貫通孔10bが形成されている。
【0017】
ジャケット室2内に気液二相の熱媒体を注入したあと封入孔3の開口を閉塞する際、弁10の外径を小さくした段差10dにオーリング9を嵌め込んだ弁10をねじ孔4内に挿入し、ねじ11をねじ孔4内にねじ込み、ねじ10の端面を弁10の球面に当接させて、弁10をねじ締め固定する。この固定で弁10の片側の貫通孔10bの開口と封入孔3の開口と対向し、封入孔3が開口する端面と弁8の端面との間はオーリング9によってシールされる。弁10の他方の片側の貫通孔10cとねじ7の貫通孔11bはねじ孔4内の空隙を介して連通する。
【0018】
以上のように密封装置を構成しても、ねじ11による締め付け力はオーリング9によってシールされる程度で済み、またまたその締め付け力を多少大きくしても封入孔3の開口角部、弁10の貫通孔の開口角部に、その締め付け力が集中して加えられることがなく、これによりねじ11の締め付けで弁10が破損することを防止することができる。勿論、ローラ本体の加熱時ジャケット室2内の圧力が金属薄板6の厚みなどで設定した所定の圧力以下では金属薄板6でジャケット室2は密封された状態が維持されるが、その圧力を越えると金属薄板6は破裂し、この破裂によってジャケット室2内の圧力は弁10の貫通孔10b、中空10a、貫通孔10c、ねじ孔4、ねじ11の貫通孔11bおよび穴11aを経由して外部に放出され、この放出によりローラ本体の破損乃至は爆発を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例に係る密封装置の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の他の実施例に係る密封装置の構成を示す図である。
【図3】従来の密封装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 熱ローラ本体の周壁
2 ジャケット室
3 封入孔
4 ねじ孔
6 金属薄板
7、11 ねじ
7b、11b 貫通孔
8、10 弁
8a、10a 中空部
8b、8c、10b、10c 貫通孔
9 オーリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱ローラ本体の周壁内に、端部に外部と連通する封入孔を有するジャケット室を設け、前記封入孔から前記ジャケット室に気液二相の熱媒体を注入したあと前記封入孔の開口を閉塞し、前記ジャケット室を密封してなる熱ローラ用ジャケット室の密封装置において、前記密封装置は、中空内を金属薄板で仕切られその両側に前記中空内と連通する貫通孔を有する弁と前記封入孔の開口を囲むオーリングと貫通孔を有するねじとからなり、前記弁を、前記弁の片側の貫通孔の開口を前記封入孔の開口と対向させて前記オーリングに当接して配置し、その弁の他の片側の貫通孔を有する端部を前記ねじでねじ締め固定して前記封入孔の開口を閉塞してなることを特徴とする熱ローラ用ジャケット室の密封装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−335239(P2007−335239A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165989(P2006−165989)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(000110158)トクデン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】