説明

熱交換器の取付構造

【課題】オイルクーラのような熱交換器を、溶接したブラケットを備えることなく、またコアの幅を小さくすることなく設置することができる、熱交換器の取付構造を提供する。
【解決手段】熱交換器の取付構造が、直方体状の熱交換器(4)の相対する少なくとも一対の縁部(4a、4d)それぞれに設けられたフレーム部材(6)と、このフレーム部材(6)それぞれに対向して外方に配設された、熱交換器(4)の支持部材(8)と、この支持部材(8)とフレーム部材(6)に挟持され熱交換器(4)を支持部材(8)に保持する弾性部材(10)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器の取付構造、さらに詳しくは、オイルクーラのような熱交換器の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両には、例えば油圧装置の作動油を冷却するオイルクーラのような熱交換器が種々装備されている。
【0003】
この熱交換器は、車体の振動伝達によるコアの破損防止のために、両側に溶接したブラケットを車体の固定部に、ゴムマウントを介して、あるいは複数の梁部材(例えば、特許文献1参照)を介して取付けられている。
【特許文献1】特開2003−285653号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の熱交換器の取付構造には、次のとおりの解決すべき課題がある。
【0005】
すなわち、熱交換器の両側にブラケットを溶接しているために、両側のブラケットの幅の分だけ、熱交換器のコアの幅を小さくしなくてはならない。
【0006】
また、溶接したブラケットを備えるために製造コストが増加する。ブラケットの溶接部分からの亀裂、油漏れなどの不具合発生の懸念もある。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、オイルクーラのような熱交換器を、溶接したブラケットを備えることなく、またコアの幅を小さくすることなく設置することができる、熱交換器の取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば上記技術的課題を解決する熱交換器の取付構造として、直方体状の熱交換器の相対する少なくとも一対の縁部それぞれに設けられたフレーム部材と、このフレーム部材それぞれに対向して外方に配設された、熱交換器の支持部材と、この支持部材とフレーム部材に挟持され熱交換器を支持部材に保持する弾性部材と、を備えている、ことを特徴とする熱交換器の取付構造が提供される。
【0009】
好適には、フレーム部材は、外方に向けて開口した矩形溝を備え、該縁部の略全長にわたって延び、弾性部材は、この矩形溝に嵌合する矩形断面を備えている。
【0010】
また、フレーム部材は、熱交換器の他の縁部に相対して備えた一対のタンクの間に設けられている。弾性部材は、支持部材に接着されている。
【0011】
そして、熱交換器は、作業車両に装備されたオイルクーラである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に従って構成された熱交換器の取付構造は、熱交換器の相対する少なくとも一対の縁部それぞれに設けられたフレーム部材と、このフレーム部材それぞれに対向して外方に配設された、熱交換器の支持部材と、この支持部材とフレーム部材に挟持され熱交換器を支持部材に保持する弾性部材を備えている。
【0013】
したがって、熱交換器は、挟持した弾性部材によって支持部材に保持されるので、熱交換器を、溶接したブラケットを備えることなく、またブラケットがないのでコアの幅を小さくすることなく、設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に従って構成された熱交換器の取付構造について、好適実施形態を図示している添付図面を参照して、さらに詳細に説明する。
【0015】
図1を参照して説明する。全体を番号2で示す熱交換器の取付構造は、直方体状の熱交換器であるオイルクーラ4の相対する上下一対の縁部4a、4bそれぞれに設けられたフレーム部材6,6と、フレーム部材6,6それぞれに対向して外方に配設された、オイルクーラ4の支持部材であるハウジング8と、ハウジング8とフレーム部材6、6に挟持されオイルクーラ4をハウジング8に保持する弾性部材10を備えている。
【0016】
オイルクーラ4は、直方体のコア4cと、その縁部4a、4bに隣接した他の(左右の)縁部に、縁部の長手方向長さよりも長く設けられた一対の円筒状のタンク4d、4dを備えている。タンク4d、4dの一端(上端)には配管接続口4eが形成されている。
【0017】
フレーム部材6は、鋼板によって形成され、縁部4a、4bの略全長にわたってコア4cと略同じ幅を有して延び、外方に向けて開口した矩形溝を備えている。タンク4d、4dの間に位置するフレーム部材6は、コア4cに接合されるとともに長手方向の両端部はタンク4d、4dに接合されている。
【0018】
弾性部材10は、フレーム部材6の矩形溝に嵌合する矩形断面の棒状に形成され、矩形溝の長さと同じ長さを有している。弾性部材10の矩形断面の他側は、ハウジング8に接着されている。弾性部材10は、耐候性、対油性、耐熱性を有した合成ゴム、例えばウレタンゴムによって形成されている。
【0019】
図1とともに図2、主として図2を参照してハウジング8について説明する。ハウジング8は、成形した鋼板を接合して形成され、オイルクーラ4が載置される主ハウジング12と、オイルクーラ4が載置された主ハウジング12に被せられ一体に組立てられるカバーハウジング14を備えている。主ハウジング12とカバーハウジング14を一体に組立てることによりオイルクーラ4が取付けられた直方体箱状のハウジング8が形成される。
【0020】
主ハウジング12は、直方体の一部を形成する底板12a、一方の側板12b、他方の側板12c、奥板12dを有し、手前側および上方は開放されている。奥板12dには、オイルクーラ4に流す冷却風を生成するファン(図示していない)が取付けられる円形開口12eが形成されている。底板12a、側板12b、12cには、手前側の外方に取付用帯板12f、12g、12hがそれぞれ取付けられている。奥板12dには上方開放部側に取付用帯板12jが取付けられている。これらの取付用帯板には、ボルト穴12kがそれぞれ3個備えられている。
【0021】
主ハウジング12の底板12aには、弾性部材10が、オイルクーラ4のフレーム部材6の矩形溝に嵌合する位置に接着され取付けられている。側板12b、12cには、オイルクーラ4のタンク4dの両側に向けて突出させた一対の帯板それぞれにタンク4dに当接する帯板状の側部シール部材16が接着され取付けられている。側部シール部材16も弾性部材10と同じ合成ゴム、例えばウレタンゴムによって形成されている。一対の側部シール部材16は、オイルクーラ4に流す冷却風の一部が側板12b、12cとオイルクーラ4の間から流出するのを防止している。
【0022】
カバーハウジング14は、直方体の一部を形成する、底板14a、一方の側板14b、他方の側板14c、手前板14d、天板14eを有し、主ハウジング12に面する奥側は開放されている。側板14b、14cには、略全面に冷却風用の開口が形成されている。底板14a、側板14b、14cには、主ハウジング12に面する奥側に取付用帯板14f、14g、14hがそれぞれ取付けられている。これらの取付用帯板および天板14eには、主ハウジング12の取付用帯板の複数個のボルト穴12kに対応した位置にボルト穴14jがそれぞれ3個備えられている。
【0023】
カバーハウジング14の天板14eには、弾性部材10が、オイルクーラ4のフレーム部材6の矩形溝に嵌合する位置に接着され取付けられている。
【0024】
支持部材であるハウジング8にオイルクーラ4を取付けるには、先ず主ハウジング12内にオイルクーラ4を上方から一対の側部シール部材16,16の間に挿入し、オイルクーラ4の下部(縁部4b)のフレーム部材6の矩形溝に底板12aの弾性部材10を嵌合させる。次にカバーハウジング14を主ハウジング12に、オイルクーラ4の上部(縁部4a)のフレーム部材6の矩形溝に天板14eの弾性部材10を嵌合させて被せる。その後、主ハウジング12の複数個のボルト穴12kとカバーハウジング14の複数個のボルト穴14jの位置を合わせ、ボルト(図示していない)により、主ハウジング12とカバーハウジング14を一体にしてハウジング8を組立てる。
【0025】
オイルクーラ4の一対のタンク4d、4dの配管接続口4eには、それぞれ冷却するオイルの配管26a、26bが接続される。
【0026】
図2とともに図3、主として図3を参照して、オイルクーラ4を支持したハウジング8の作業車両への取付けについて説明する。作業車両の代表例である全体を番号20で示すホイールローダは、屈折操向を自在に連結された前車体22と後車体24を備えている。前車体22には、前車輪22a、作業装置22bが備えられ、後車体24には、後車輪224a、運転室24b、エンジン室24cが備えられている。
【0027】
オイルクーラ4を支持した支持部材であるハウジング8は、前車体22の前端部の左右一対の平行な前フレーム22c、22cの間に取付けられている。ハウジング8は、主ハウジング12の左右の取付用帯板12g、12hとカバーハウジング14の取付用帯板14g、14hを相互に連結するボルト(図示していない)を、前フレーム22c、22cに備えた固定部(図示していない)に固定することにより、前車体22に取付けられる。
【0028】
オイルクーラ4を通した冷却風は、上記のように取付けられたハウジング8の左右の開口から、矢印Wで示すように前車体22の側方に放出される。したがって、冷却風はホイールローダ20前方の作業装置22bの部分に吹き付けられないので、土砂等の粉塵を発生させない。
【0029】
主として図1を参照して、上述したとおりの熱交換器の取付構造2の作用効果について説明する。
【0030】
熱交換器の取付構造2は、熱交換器4の相対する少なくとも一対の縁部4a、4bそれぞれに設けられたフレーム部材6と、このフレーム部材6それぞれに対向して外方に配設された、熱交換器4の支持部材8と、この支持部材8とフレーム部材6に挟持され熱交換器4を支持部材8に保持する弾性部材10を備えている。
【0031】
したがって、熱交換器4を、溶接したブラケットを備えることなく、またブラケットがないのでコアの幅を小さくすることなく、設置することができる。
【0032】
また、フレーム部材6は、外方に向けて開口した矩形溝を備え、縁部4a、4bの略全長にわたって延び、弾性部材10は、この矩形溝に嵌合する矩形断面を備えている。
【0033】
したがって、フレーム部材6の全長にわたって延びた矩形溝は、熱交換器4を挟持する弾性部材10を確実に保持する。また、矩形状の溝はフレーム部材6の強度を向上させることができる。
【0034】
さらにフレーム部材6は、熱交換器4の他の縁部に相対して備えた一対のタンク4d、4dの間に設けられている。また、弾性部材10は、支持部材8に接着されている。
【0035】
したがって、フレーム部材6の両端部をタンク4d、4dに接合すれば、熱交換器4をより強固に確実に支持部材8に保持することができる。また、熱交換器4へのフレーム部材6の設置も容易であり、熱交換器4そのものの強度も向上させることができる。
【0036】
そして、熱交換器4は、作業車両20に装備されたオイルクーラである。すなわち、油圧アクチュエータが多数装備される作業車両において、稼動条件、稼動形態などに応じて増設が要求される作動油を冷却するオイルクーラを、限られた空間に、容量を確保して、かつ容易に取付けることができる。
【0037】
以上、本発明を実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、例えば下記のように、本発明の範囲内においてさまざまな変形あるいは修正ができるものである。
【0038】
本発明の実施の形態においては、熱交換器としてオイルクーラが採用されているが、熱交換器は、エアコンディショナのコンデンサ、あるいは冷却水のラジエータなど、他の熱交換器であってもよい。
【0039】
本発明の実施の形態においては、フレーム部材6は一対の縁部4a、4bに設けられているが、他の縁部であるタンク4d、4dの部分にも設けて、さらに確実に熱交換器4を保持できるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に従って構成された熱交換器の取付構造の要部の説明図。
【図2】図1に示す熱交換器の取付構造を分解状態で示した斜視図。
【図3】図1に示す熱交換器の取付構造を備えた作業車両であるホイールローダの側面図。
【符号の説明】
【0041】
2:熱交換器の取付構造
4:オイルクーラ(熱交換器)
4a、4b:縁部
4d:タンク
6:フレーム部材
8:ハウジング(支持部材)
10:弾性部材
20:ホイールローダ(作業車両)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体状の熱交換器の相対する少なくとも一対の縁部それぞれに設けられたフレーム部材と、
このフレーム部材それぞれに対向して外方に配設された熱交換器の支持部材と、
この支持部材とフレーム部材に挟持され熱交換器を支持部材に保持する弾性部材と、を備えている、
ことを特徴とする熱交換器の取付構造。
【請求項2】
フレーム部材が、外方に向けて開口した矩形溝を備え、
弾性部材が、この矩形溝に嵌合する矩形断面を備えている、
ことを特徴とする請求項1記載の熱交換器の取付構造。
【請求項3】
フレーム部材が、該縁部の略全長にわたって延びている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の熱交換器の取付構造。
【請求項4】
フレーム部材が、熱交換器の他の縁部に相対して備えた一対のタンクの間に設けられている、
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の熱交換器の取付構造。
【請求項5】
弾性部材が、支持部材に接着されている、
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれかに記載の熱交換器の取付構造。
【請求項6】
熱交換器が、作業車両に装備されたオイルクーラである、
ことを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の熱交換器の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−32085(P2010−32085A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193063(P2008−193063)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】