説明

熱交換器の細管検査方法及びその装置

【課題】検査する細管の間違い、検査漏れの防止、検査作業の効率向上、及び検査の信頼性向上が可能な熱交換器の細管検査方法及びその装置を提供する。
【解決手段】管巣図18上の配管列21及び配管列21内の細管20を特定する識別コードを付与する工程と、配管列21の細管20の識別コードが記載された識別片22を、実配管ピッチで並べて部分模擬管板24を作製する工程と、検査する細管20を含む配管列21に対応する熱交換器11の実検査配管列25の隣りに、配管列21に対応する部分模擬管板24を設置する第3工程と、検査する細管20に対応する熱交換器11の細管13の隣に配置された識別片22の識別コードを読取ってから細管13内に検査用センサ15を挿入する工程と、識別コードによる細管13位置が、検査する細管20位置に合致する場合は検査を開始し、合致しない場合は検査用センサ15を細管13から回収する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器の管板に接合された多数の細管内に挿入治具を用いて検査用センサを順次挿入して各細管の検査を行う熱交換器の細管検査方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器の管板に多数の細管が接合されている多管式の熱交換器の製作では、細管と管板との接合を、細管1本ごとに行っている。このため、細管と管板との接合を行う場合、細管と管板の接合が完了する度に、接合完了データを入力し、予め求めておいた細管配列データと組合わせて、接合が完了した細管と未接合の細管との区別が容易に見分けられるようにすると共に、接合漏れの細管の発生を防止することを図った装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−340534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、使用中の多管式の熱交換器の定期検査を行う場合、熱交換器の設置現場において、管板に接合されている細管を1本毎に検査するため、検査を行っている間に、検査終了の細管と未検査の細管の区別が不明になったり、検査漏れが発生したりする可能性が高い。このため、例えば、多数の細管を複数の配管列に区分して番号(符号)付けを行うと共に、各配管列に属する細管の番号付けを行い、配管列毎にその配管列に含まれる細管の検査を1本毎に行っている。このとき、配管列及びその配管列に含まれる細管の確認のため、細管の検査を行う際に、配管列番号と、その配管列の最初に検査を行う細管番号及び最後に検査を行う細管番号をそれぞれ確認している。しかしながら、この確認作業では、配管列の途中の細管の検査が間違いなく行われたことの保証はなく、検査の信頼性の観点からは問題がある。更に、検査作業中に、配管列番号及び細管番号の確認という検査作業とは異なる作業を間に組み込むため、検査作業が煩雑になると共に、検査作業の効率が低下するという問題も生じる。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、検査する細管の間違い及び検査漏れの防止を図ると共に、検査作業の効率向上及び検査の信頼性向上も図ることが可能な熱交換器の細管検査方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る熱交換器の細管検査方法は、熱交換器の管板に接合された多数の細管A内に挿入治具を用いて検査用センサを順次挿入し該各細管Aの検査を行う熱交換器の細管検査方法において、
前記熱交換器の設計データに基づいて前記管板に設けられた前記細管Aの配置を示す管巣図を作成し、該管巣図に記載された多数の細管Bを複数の配管列に区分し、該各細管Bに、該細管Bが属する前記配管列を特定する配管列番号及び該配管列内の該細管Bの位置を特定する順位番号を備えた識別コードをそれぞれ付与する第1工程と、
前記各配管列に対応して、該配管列に含まれる前記各細管Bの前記識別コードが記載された識別片を、該各細管Bにそれぞれ対応する前記設計データ中の配管ピッチで並べて配置した部分模擬管板をそれぞれ作製する第2工程と、
検査しようとする前記配管列を前記管巣図上で検査配管列として設定し、該検査配管列に対応する前記部分模擬管板を、該検査配管列に対応する前記熱交換器の実検査配管列の隣りの実配管列上に、該部分模擬管板の前記各識別片と前記実検査配管列に属する前記細管Aとがそれぞれ隣り同士となる状態で設置する第3工程と、
前記検査配管列の前記細管Bに対応する前記実検査配管列の前記細管Aの検査を行う際に、該細管Aの隣に配置された前記部分模擬管板の前記識別片の前記識別コードを、前記挿入治具に取付けた読取り機で読取ってから該細管A内に前記挿入治具を用いて前記検査用センサを挿入する第4工程と、
前記読取り機で読取った前記識別片の前記識別コードから前記配管列番号及び前記順位番号を求めて、前記細管Aの位置を前記管巣図に重ねて表示し、表示された該細管Aの位置が該管巣図上の前記検査配管列の前記細管Bの位置に合致する場合は、前記検査用センサを挿入した前記細管Aの検査を開始し、合致しない場合は、前記検査用センサを該細管Aから回収する第5工程とを有する。
【0007】
第1の発明に係る熱交換器の細管検査方法において、前記部分模擬管板は、前記識別片を前記細管Aの外径の50〜150%の幅を備えた細長部材の表側に並べて配置したものとすることができる。
第1の発明に係る熱交換器の細管検査方法において、前記識別コードは、前記配管列番号と前記順位番号を示すバーコードとすることができる。
【0008】
第1の発明に係る熱交換器の細管検査方法において、前記配管列を前記配管列番号が奇数であるグループと、該配管列番号が偶数であるグループに分け、前記検査配管列を前記各グループ内でそれぞれ設定することが好ましい。
【0009】
前記目的に沿う第2の発明に係る熱交換器の細管検査装置は、熱交換器の管板に接合された多数の細管A内に挿入治具を用いて検査用センサを順次挿入して該細管Aの検査を行う熱交換器の細管検査装置において、
前記熱交換器の設計データに基づいて、前記管板に設けられた前記細管Aの配置を示す管巣図を作成する管巣図作成手段と、
前記管巣図に記載された多数の細管Bを複数の配管列に区分し、該各細管Bに、該細管Bが属する前記配管列を特定する配管列番号及び該配管列内の該細管Bの位置を特定する順位番号を備えた識別コードが記載された識別片を作製する識別片作製手段と、
前記各配管列に対応して、該配管列に含まれる前記各細管Bの前記識別コードが記載された識別片が、該各細管Bにそれぞれ対応する前記設計データ中の配管ピッチで並べて配置された部分模擬管板と、
検査しようとする前記配管列を前記管巣図上で検査配管列として設定し、該検査配管列に対応する前記部分模擬管板を、該検査配管列に対応する前記熱交換器の実検査配管列の隣りの実配管列上に、該部分模擬管板の前記各識別片と前記実検査配管列に属する前記細管Aとがそれぞれ隣り同士となる状態で設置して、前記検査配管列の前記細管Bに対応する前記実検査配管列の前記細管A内に前記挿入治具を用いて前記検査用センサを挿入する際に、該挿入治具に取付けられて該細管Aの隣に配置された前記部分模擬管板の前記識別片の前記識別コードを読取る読取り機と、
前記読取り機で読取った前記識別片の前記識別コードから前記配管列番号及び前記順位番号を求めて、該識別片に対応する前記細管Aの位置を前記管巣図に重ねて表示し、表示された該細管Aの位置が該管巣図上の前記検査配管列の前記細管Bの位置に合致するか否かを判定し、合致する場合は、前記検査用センサを挿入した前記細管Aの検査開始を、合致しない場合は、該細管Aから前記検査用センサの回収をそれそれ指示する検査操作手段とを有している。
【0010】
第2の発明に係る熱交換器の細管検査装置において、前記部分模擬管板の裏面側には、該部分模擬管板を前記実検査配管列の隣りの前記実配管列上に設置する際に、該実配管列の前記細管Aの端部に嵌入して該実検査配管列の前記各細管Aに対する該部分模擬管板の前記識別片の位置決めを行うガイド部材が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明に係る熱交換器の細管検査方法及び第2の発明に係る熱交換器の細管検査装置においては、細管の配置を示す管巣図を作成し、管巣図上で検査対象の細管を決め、実際に検査用センサを挿入した細管が、管巣図上で決めた検査対象の細管であるか否かの確認を行うので、検査する細管の間違い及び検査漏れの防止ができ、検査の信頼性向上が可能になる。また、細管の確認の作業が、検査作業の一環として行われるため、検査作業の効率向上が可能になる。
【0012】
第1の発明に係る熱交換器の細管検査方法において、部分模擬管板が、識別片を細管Aの外径の50〜150%の幅を備えた細長部材の表側に並べて配置したものである場合、部分模擬管板を実検査配管列と干渉させずに実検査配管列の隣りに配置することができ、実検査配管列の検査を効率的に行うことができる。
第1の発明に係る熱交換器の細管検査方法において、識別コードが、配管列番号と順位番号を示すバーコードである場合、識別コードの読取りが迅速かつ容易にできる。
【0013】
第1の発明に係る熱交換器の細管検査方法において、配管列を配管列番号が奇数であるグループと、配管列番号が偶数であるグループに分け、検査配管列を各グループ内でそれぞれ設定する場合、検査配管列を奇数グループ内に設定すると部分模擬管板を偶数グループに属する実配管列に、検査配管列を偶数グループ内に設定すると部分模擬管板を奇数グループに属する実配管列にそれぞれ配置することができ、熱交換器の管板上で実検査配管列を容易に区別することができる。その結果、検査作業の効率の更なる向上が可能になる。
【0014】
第2の発明に係る熱交換器の細管検査装置において、部分模擬管板の裏面側に、部分模擬管板を実検査配管列の隣りの実配管列上に設置する際に、実配管列の細管Aの端部に嵌入して実検査配管列の各細管Aに対する部分模擬管板の識別片の位置決めを行うガイド部材が設けられている場合、部分模擬管板の実検査配管列の隣りの実配管列上への設置を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る熱交換器の細管検査装置の検査実行手段、検査操作手段の説明図である。
【図2】同細管検査装置の部分模擬管板の説明図である。
【図3】同細管検査装置の検査操作手段の説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る熱交換器の細管検査方法を適用して細管の検査を行う熱交換器の説明図である。
【図5】同熱交換器の細管検査方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1(A)、(B)に示すように、本発明の一実施の形態に係る熱交換器の細管検査装置10は、熱交換器11(図4参照)の管板12に設けられた多数(例えば、1000〜10000本程度)の細管(細管A)13内に挿入治具(例えば、挿入エアーガン)14を用いて検査用センサの一例である渦流センサ15を順次挿入して細管13の検査を行うもので、熱交換器11の設置場所に配置される検査実行手段16と、細管13の検査指示及び確認を行う検査操作手段17とを有している。更に、熱交換器の細管検査装置10は、熱交換器11の設計データに基づいて、管板12に設けられた細管13の配置を示す管巣図18を作成する管巣図作成手段19(図3参照)と、管巣図18に記載された多数の細管(細管B)20を複数の配管列21に区分し、各細管20に、細管20が属する配管列21を特定する配管列番号X及び配管列21内の細管20の位置を特定する順位番号Yを備えた識別コードの一例であるバーコードZが記載された識別片22を作製する図示しないバーコードラべラ(識別片作製手段の一例)とを有している。以下詳細に説明する。ここで、バーコードラべラには、市販のものを使用することができる。
【0017】
検査実行手段16は、渦流センサ15と、挿入治具14と、管巣図18の各配管列21に対応して、配管列21に含まれる各細管20の識別コードが記載された識別片22が、配管列21に含まれる各細管20にそれぞれ対応する設計データ中の配管ピッチで、例えば、熱交換器11の細管13の外径の50〜150%の幅を備えた細長部材23の表側に並べて配置された部分模擬管板24とを有している。更に、検査実行手段16は、検査しようとする配管列21を管巣図18上で検査配管列として設定し、検査配管列に対応する部分模擬管板24を、検査配管列に対応する熱交換器11の実検査配管列25の隣りの実配管列26上に、部分模擬管板24の各識別片22と実検査配管列25に属する細管13とがそれぞれ隣り同士となる状態で設置して、検査配管列の細管20に対応する実検査配管列25の細管13内に挿入治具14を用いて渦流センサ15を挿入する際に、挿入治具14に取付けられて検査する細管13の隣に配置された部分模擬管板24の識別片22のバーコードZを読取るバーコードリーダ(読取り機の一例)27を有している。
【0018】
ここで、図2に示すように、部分模擬管板24の細長部材23の裏面側には、部分模擬管板24を実検査配管列25の隣りの実配管列26上に設置する際に、実配管列26の複数の細管13の端部にそれぞれ嵌入して実検査配管列25の各細管13に対する部分模擬管板24の識別片22の位置決めを行う、例えば、管状のガイド部材28が設けられている。なお、バーコードリーダ27には、市販のものを使用することができる。
【0019】
図3に示す管巣図作成手段19は、データ入力器29を介して入力された熱交換器11の設計データから、管板12に接合される細管13の接合位置(列、番)を求めると共に仮想管板を形成し、求めた接合位置を仮想管板上に細管20の位置として設定して、管板12上の細管13の配置関係を示す細管配置データを作成し、表示器30に管巣図18として表示する管巣図作成機能を備えている。ここで、管巣図作成手段19は、管巣図作成機能を発現するプログラムを、パーソナルコンピュータに搭載することで形成できる。そして、データ入力器29には、パーソナルコンピュータ用の入力機器(例えば、キーボード)、表示器30には、パーソナルコンピュータ用の表示機器がそれぞれ使用できる。
【0020】
検査操作手段17は、図3に示すように、検査しようとする配管列21を管巣図18上で検査配管列として設定する配管列指定データ及び検査配管列の内の検査対象の細管20を設定する細管指定データがデータ入力器29を介して入力された際に、配管列指定データ及び細管指定データを記憶すると共に、配管列指定データ及び細管指定データから管巣図18上に検査対象の細管20の位置を表示する機能を備えた細管指定器31と、バーコードリーダ27とケーブル32を介して接続し、読取った識別片22の識別コードから配管列番号X及び順位番号Yを求めて、識別片22に対応する細管13の位置を管巣図18に重ねて表示する機能を備えた検査細管表示器33とを有している。
【0021】
また、検査操作手段17は、検査細管表示器33を介して求めた識別片22に対応する細管13の位置が、細管指定器31に記憶されている配管列指定データ及び細管指定データから決まる検査対象の細管20の位置に合致するか否かを判定する機能を備えた判定器34と、合致する場合は、渦流センサ15を挿入した細管13の検査開始を指示する信号を表示器30に表示し、合致しない場合は、細管13から渦流センサ15の回収を指示する信号を表示器30に表示する機能を備えた検査操作器35とを有している。更に、検査操作手段17は、細管13の検査が終了したことを示すデータがデータ入力器29を介して入力された際に、検査終了の細管13に対応する管巣図18上の細管20に検査終了済のデータを記載する機能を備えた検査作業表示器36を有している。ここで、検査終了済のデータの記載は、例えば、管巣図18上の細管20の表示色を変えることにより行う。また、細管指定器31、検査細管表示器33、判定器34、検査操作器35、及び検査作業表示器36は、各機器に対応した機能を発現する各プログラムを、パーソナルコンピュータに搭載することで形成できる。
【0022】
続いて、本発明の一実施の形態に係る熱交換器の細管検査方法について説明する。
本発明の一実施の形態に係る熱交換器の細管検査方法は、図4に示すように、熱交換器11の管板12に接合された多数の細管13内に挿入治具14を用いて検査用センサの一例である渦流センサ15を順次挿入して各細管13の検査を行うもので、5つの工程を有している。以下、詳細に説明する。
【0023】
先ず、管巣図作成手段19にデータ入力器29を用いて熱交換器11の設計データを入力し、設計データに基づいて管板12に設けられた細管13の配置を示す管巣図18(図1(B)参照)を作成する。そして、管巣図18に記載された多数の細管20を複数の配管列21に区分し、各細管20に、細管20が属する配管列21を特定する配管列番号X及び配管列21内の細管20の位置を特定する順位番号Yを備えた識別コードをそれぞれ付与する(第1工程)。これによって、管巣図18上で、多数の細管20の中から特定の細管20を、配管列番号Xと順位番号Yを用いて区別することができる。
【0024】
次いで、細管20にそれぞれ付与した識別コードは、バーコードラべラを用いてバーコードZに変換すると共に、バーコードZが記載された識別片22を作成する。そして、識別片22を配管列21毎に区分し、各配管列21内の各細管20にそれぞれ対応する設計データ中の配管ピッチで、細管13の外径の50〜150%の幅を備えた細長部材23(例えば、厚さが1〜3mm程度の樹脂製の板材)の表側に並べて配置した部分模擬管板24をそれぞれ作製する(第2工程)。これによって、配管列21に対応する部分模擬管板24を、配管列21の順序に従って配置することで、管板12に対応する実寸大の模擬管板が形成できる。
【0025】
そして、検査しようとする配管列21を管巣図18上で検査配管列として設定し、配管列指定データをデータ入力器29を介して細管指定器31に入力する。また、この検査配管列に対応する部分模擬管板24を、検査配管列に対応する熱交換器11の実検査配管列25の隣りの実配管列26上に、部分模擬管板24の各識別片22と実検査配管列25に属する各細管13とがそれぞれ隣り同士となる状態で設置する。ここで、部分模擬管板24を実配管列26上に設置する作業は、図4に示す熱交換器11に端部に設けられたマンホール37から作業者が熱交換器11内に入って行う。このとき、配管列21を、配管列番号Xが奇数であるグループ(奇数グループ)と、配管列番号Xが偶数であるグループ(偶数グループ)に分け、検査配管列を各グループ内でそれぞれ設定する。例えば、検査配管列を奇数グループ内で設定する場合、奇数グループの配管列21に対応する部分模擬管板24を、奇数番の検査配管列に対応する奇数番の実検査配管列25の隣りの偶数番の実配管列26上に設置する。なお、部分模擬管板24を実配管列26上に設置する場合、部分模擬管板24に設けられた任意の識別片22のバーコードZをバーコードリーダ27で読取って、部分模擬管板24の配管列番号Xが実検査配管列25の配管列番号と一致するか否かを確認しながら行う。(第3工程)。
【0026】
管板12に設けられた細管13の検査を実施する場合、図5に示すように、渦流センサ15が装着された挿入治具14を携帯した作業者がマンホール37から熱交換器11内に入り、細管13に渦流センサ15を挿入治具14を用いて挿入して行う。ここで、検査配管列の内の細管20の検査を行う場合、この細管20の細管指定データをデータ入力器29を介して細管指定器31に入力する。これにより、表示器30に表示されている管巣図18上に検査対象の細管20が表示される。そして、検査操作手段17側に配置された検査操作手段17のオペレータが、図示しない通信手段(例えば、無線機、携帯電話機)を介して、細管指定データを熱交換器11内の作業者に、検査配管列の配管列番号X及び検査配管列内の検査対象の細管20の順位番号Yとして伝達する。細管指定データを入手した作業者は、細管指定データに対応する実検査配管列25の細管13を管板12に設けられている細管13の中から選定し、選定した細管13の隣に配置された部分模擬管板24上の識別片22のバーコードZを、挿入治具14に取付けたバーコードリーダ27で読取ってから、選定した細管13内に挿入治具14を用いて渦流センサ15を挿入する(第4工程)。ここで、実検査配管列25の隣りの実配管列26には部分模擬管板24が設置されているので、部分模擬管板24がガイドとなって、細管指定データに対応する実検査配管列25の細管13を容易に選定することができる。
【0027】
選定した細管13内に渦流センサ15が挿入された際に、バーコードリーダ27で読取った識別片22のバーコードZから配管列番号X及び順位番号Yが求められて、選定された(渦流センサ15が挿入された)細管13の位置が管巣図18に重ねて表示され、表示された細管13の位置が、管巣図18上の検査配管列の細管20の位置に合致するか否かが判定器34により判定される。そして、渦流センサ15が挿入された細管13の位置が、管巣図18上の検査配管列の細管20の位置に合致する場合は、検査操作器35から検査開始の信号が表示器30に出力されて、検査操作手段17のオペレータは熱交換器11内の作業者に検査開始を指示し、渦流センサ15が挿入された細管13の検査が開始される。一方、渦流センサ15が挿入された細管13の位置が、管巣図18上の検査配管列の細管20の位置に合致しない場合は、検査操作器35を介して細管13からの渦流センサ15の回収を指示する信号が表示器30に出力されて、検査操作手段17のオペレータは熱交換器11内の作業者に渦流センサ15の回収を指示し、渦流センサ15が細管13から回収される(第5工程)。
【0028】
細管13の検査を開始すると、検査データは、渦流センサ15に接続された信号ケーブル38を介して、図示しない検査データ解析装置に入力されて検査結果が得られる。また、渦流センサ15を回収した場合、細管指定データに対応する実検査配管列25の細管13を、実検査配管列25に属する細管13の中から再度選定し、再選定した細管13の隣に配置された部分模擬管板24上の識別片22のバーコードZを、挿入治具14に取付けたバーコードリーダ27で読取ってから、再選定した細管13内に挿入治具14を用いて渦流センサ15を挿入する。
【0029】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、この実施の形態では、識別片を細長部材の上に貼着しているが、管板の一部又は全部の形状に合わせたシートに、設計データ中の配管ピッチで並べて貼る場合であっても、本発明は適用できる。
【符号の説明】
【0030】
10:熱交換器の細管検査装置、11:熱交換器、12:管板、13:細管、14:挿入治具、15:渦流センサ、16:検査実行手段、17:検査操作手段、18:管巣図、19:管巣図作成手段、20:細管、21:配管列、22:識別片、23:細長部材、24:部分模擬管板、25:実検査配管列、26:実配管列、27:バーコードリーダ、28:ガイド部材、29:データ入力器、30:表示器、31:細管指定器、32:ケーブル、33:検査細管表示器、34:判定器、35:検査操作器、36:検査作業表示器、37:マンホール、38:信号ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器の管板に接合された多数の細管A内に挿入治具を用いて検査用センサを順次挿入し該各細管Aの検査を行う熱交換器の細管検査方法において、
前記熱交換器の設計データに基づいて前記管板に設けられた前記細管Aの配置を示す管巣図を作成し、該管巣図に記載された多数の細管Bを複数の配管列に区分し、該各細管Bに、該細管Bが属する前記配管列を特定する配管列番号及び該配管列内の該細管Bの位置を特定する順位番号を備えた識別コードをそれぞれ付与する第1工程と、
前記各配管列に対応して、該配管列に含まれる前記各細管Bの前記識別コードが記載された識別片を、該各細管Bにそれぞれ対応する前記設計データ中の配管ピッチで並べて配置した部分模擬管板をそれぞれ作製する第2工程と、
検査しようとする前記配管列を前記管巣図上で検査配管列として設定し、該検査配管列に対応する前記部分模擬管板を、該検査配管列に対応する前記熱交換器の実検査配管列の隣りの実配管列上に、該部分模擬管板の前記各識別片と前記実検査配管列に属する前記細管Aとがそれぞれ隣り同士となる状態で設置する第3工程と、
前記検査配管列の前記細管Bに対応する前記実検査配管列の前記細管Aの検査を行う際に、該細管Aの隣に配置された前記部分模擬管板の前記識別片の前記識別コードを、前記挿入治具に取付けた読取り機で読取ってから該細管A内に前記挿入治具を用いて前記検査用センサを挿入する第4工程と、
前記読取り機で読取った前記識別片の前記識別コードから前記配管列番号及び前記順位番号を求めて、前記細管Aの位置を前記管巣図に重ねて表示し、表示された該細管Aの位置が該管巣図上の前記検査配管列の前記細管Bの位置に合致する場合は、前記検査用センサを挿入した前記細管Aの検査を開始し、合致しない場合は、前記検査用センサを該細管Aから回収する第5工程とを有することを特徴とする熱交換器の細管検査方法。
【請求項2】
請求項1記載の熱交換器の細管検査方法において、前記部分模擬管板は、前記識別片を前記細管Aの外径の50〜150%の幅を備えた細長部材の表側に並べて配置したものであることを特徴とする熱交換器の細管検査方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の熱交換器の細管検査方法において、前記識別コードは、前記配管列番号と前記順位番号を示すバーコードであることを特徴とする熱交換器の細管検査方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱交換器の細管検査方法において、前記配管列を前記配管列番号が奇数であるグループと、該配管列番号が偶数であるグループに分け、前記検査配管列を前記各グループ内でそれぞれ設定することを特徴とする熱交換器の細管検査方法。
【請求項5】
熱交換器の管板に接合された多数の細管A内に挿入治具を用いて検査用センサを順次挿入して該細管Aの検査を行う熱交換器の細管検査装置において、
前記熱交換器の設計データに基づいて、前記管板に設けられた前記細管Aの配置を示す管巣図を作成する管巣図作成手段と、
前記管巣図に記載された多数の細管Bを複数の配管列に区分し、該各細管Bに、該細管Bが属する前記配管列を特定する配管列番号及び該配管列内の該細管Bの位置を特定する順位番号を備えた識別コードが記載された識別片を作製する識別片作製手段と、
前記各配管列に対応して、該配管列に含まれる前記各細管Bの前記識別コードが記載された識別片が、該各細管Bにそれぞれ対応する前記設計データ中の配管ピッチで並べて配置された部分模擬管板と、
検査しようとする前記配管列を前記管巣図上で検査配管列として設定し、該検査配管列に対応する前記部分模擬管板を、該検査配管列に対応する前記熱交換器の実検査配管列の隣りの実配管列上に、該部分模擬管板の前記各識別片と前記実検査配管列に属する前記細管Aとがそれぞれ隣り同士となる状態で設置して、前記検査配管列の前記細管Bに対応する前記実検査配管列の前記細管A内に前記挿入治具を用いて前記検査用センサを挿入する際に、該挿入治具に取付けられて該細管Aの隣に配置された前記部分模擬管板の前記識別片の前記識別コードを読取る読取り機と、
前記読取り機で読取った前記識別片の前記識別コードから前記配管列番号及び前記順位番号を求めて、該識別片に対応する前記細管Aの位置を前記管巣図に重ねて表示し、表示された該細管Aの位置が該管巣図上の前記検査配管列の前記細管Bの位置に合致するか否かを判定し、合致する場合は、前記検査用センサを挿入した前記細管Aの検査開始を、合致しない場合は、該細管Aから前記検査用センサの回収をそれそれ指示する検査操作手段とを有することを特徴とする熱交換器の細管検査装置。
【請求項6】
請求項5記載の熱交換器の細管検査装置において、前記部分模擬管板の裏面側には、該部分模擬管板を前記実検査配管列の隣りの前記実配管列上に設置する際に、該実配管列の前記細管Aの端部に嵌入して該実検査配管列の前記各細管Aに対する該部分模擬管板の前記識別片の位置決めを行うガイド部材が設けられていることを特徴とする熱交換器の細管検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−153804(P2011−153804A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17141(P2010−17141)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(591053856)新日本非破壊検査株式会社 (29)
【Fターム(参考)】