説明

熱交換器

【課題】 複数の熱交換器コアを互いに接続して、大容量の熱交換器を組み立てるものにおいて、その接続部の流体の流通抵抗を可及的に少なくすると共に、その接続部に異物が堆積しないコンパクトな熱交換器の提供。
【解決手段】 コア3,4の各チューブプレート2を互いに対向すると共に、それらの間に厚板ゴム9を介装する。そして、厚板ゴム9に設けられた多数のチューブ挿通孔8にチューブ1の端部を挿通し、チューブプレート2と厚板ゴム9とを液密に接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の小型熱交換器コアを直列に接続して、大型の熱交換器を形成するものに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、大容量の熱交換器を生産する場合、それに応じて設備が大型になり莫大な設備投資を必要とする。しかしながら、その生産台数が少ない場合、設備投資の償却が困難であり、結果として大型ラジエータのコストアップにつながる。
【0003】
そこで、小型の熱交換器を組み合わせて大型の熱交換器とする提案が下記特許文献に記載されている。即ち、チューブとフィンとからなる複数の熱交換器コアを製作しておき、コアの一端どうしをパッキンを介して接続するものである。
即ち、図8に示す如く、多数のチューブ1を並列すると共に、その外面にフィン5を取り付け各チューブ1の両端部に一対のチューブプレート2を配置し、コア3,4を形成する。そして両コア3,4の一方側にそれぞれタンク6,7を被嵌する。そしてコア3,4の他方側どうしを枠形パッキン17を介して着脱自在に締結固定したものである。
【0004】
そのため、コア3とコア4の間には、枠形パッキン17による中間タンク18が形成される。そしてこの例では、図9に示すごとく上側タンク6のパイプ11から高温の流体が流入し、上側コア3の各チューブ1をそれが流下し、中間タンク18を介して下側のコア4の各チューブ1を流下し、そのタンク7、パイプ11から外部に導かれる。そしてコア3,4の外面には、図示しないファンによって冷却風が流通し、その冷却風とチューブ1内の流体との間に熱交換が行われるものである。
【0005】
上記の例は、ボルト及びナット並びに枠形パッキン17を介して一対のコア3,4間を接続したが、これに代えてコア3,4のそれぞれのチューブプレート2を鍋型に形成し、その縁どうしを溶接またはろう付けにより一体に接合することできる。
【0006】
【特許文献1】特開昭62−221919号公報
【特許文献2】特開昭63−29190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の二つのコアを直列に接続した熱交換器は、その接続部に中間タンク18が形成されるため、その中間タンク18で、おおきな流体の圧力損失がおこる欠点がある。即ち、図9に示す如く、上側のコアのチューブ1から中間タンク18内に導かれた流体は、中間タンク18内で急拡大して広がる。次いで、その流体は下側のコアのチューブ1の開口から流入する際に、急縮小して内部に導かれる。それらの急拡大,急縮小に伴い、流体の圧力損失が大きくなる。そのため、その流体を流通させるための駆動ポンプ等の駆動力が大きくなる欠点がある。
【0008】
また、中間タンク18内に各種異物が溜まり易い欠点がある。図8の例では、その場合にボルトナットを外して中間タンク18内を清掃する必要が生じる。
他の例として、チューブプレート2を浅い皿状に形成し、その周縁部を互いにろう付け又は溶接したものにおいても、その中間タンク18内に異物が堆積する。この場合には、それを取り除くとこができないという不都合が生ずる。さらには、その接合部のシール性に問題が生ずる。
そこで本発明は、これらの問題点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の本発明は、それぞれ、同一ピッチで並列した多数のチューブ(1) の端部がチューブプレート(2) に貫通してろう付け固定された一対のコア(3) (4)と、
各コア(3) (4)の一方側に配置された一対のタンク(6)(7) と、
前記チューブ(1) の前記ピッチでチューブ挿通孔(8) が貫通された厚板ゴム (9) と、を具備し、
各コア(3) (4)の他方側のチューブプレート(2) が互いに対向すると共に、それらの間に前記厚板ゴム(9) が介装され、それらのチューブプレート(2) の表面から突出した各チューブ(1) の端部が前記チューブ挿通孔(8) に挿通され、チューブプレート(2) と厚板ゴム(9) とが液密に接合された熱交換器である。
【0010】
請求項2に記載の本発明は、請求項1において、
前記他方側の各チューブプレート(2) は、その周縁が立ち上げられた浅い鍋状に形成されると共に、その縁にフランジ部(2a)が形成され、そのフランジ部(2a)どうしがカシメまたは溶接により接合された熱交換器である。
【0011】
請求項3に記載の本発明は、請求項1において、
前記他方側の各チューブプレート(2) は、その周縁が立ち上げられた浅い鍋状に形成されると共に、その周縁部に多数の爪部(2b)が一体に形成され、その爪部(2b)が前記厚板ゴム(9) の外周に咬着されてなる熱交換器である。
【0012】
請求項4に記載の本発明は、請求項1〜請求項3において、
前記厚板ゴム(9) の外表面に浅い凹凸のラビリンス形状部(10)が設けられ、その外表面に接着剤を介して、その厚板ゴム(9) と前記チューブプレート(2) とが接合された熱交換器である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱交換器は、一対のコア3,4の両チューブプレート2間に厚板ゴム9が介装され、それぞれのチューブ1がその厚板ゴム9のチューブ挿通孔8に挿通されて、チューブプレート2と厚板ゴム9とが液密に接合されて、両コア3,4により大型の熱交換器を構成するものである。
しかも、各コア3,4のそれぞれのチューブ1は、厚板ゴム9のチューブ挿通孔8内でそのまま延長して接続された状態となり、チューブの断面に変化がない。そのため、その接続部における圧力損失を可及的に少なくし、チューブ1内の流体の流通を円滑に行い得る。即ち、ポンプ等によるチューブ1内の流通駆動力を可及的に少なくし、省エネルギーの熱交換器を提供できる。さらに、その接続部に異物が堆積することがない。
【0014】
上記構成において、チューブプレート2の周縁を立ち上げて浅い鍋状に形成し、その縁に設けたフランジ部2aどうしをカシメまたは溶接により接合することができる。
この場合には、厚板ゴム9とチューブプレート2との液密性を容易に形成することができる。
【0015】
上記構成において、チューブプレート2の周縁を立ち上げ形成し、その周縁部に多数の爪部2bを一体に形成し、その爪部2bが厚板ゴム9の外周に咬着するように構成しても良い。
この場合には、さらに製造容易で且つ、コアどうしの接続部における液密性を確実に確保し得る。
【0016】
上記構成において、厚板ゴム9の外周面に浅い凹凸のラビリンス形状部10を設け、その外表面に接着剤を介し、厚板ゴム9とチューブプレート2とを接合することができる。
この場合には、接着剤の接合強度を充分保持し、液密性を確保し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1〜図3は本発明の第1の実施の形態を示し、図1はその要部縦断面図であって、図2の一部拡大図である。また図2は同熱交換器の全体を示す正面略図であり、図3は同熱交換器の要部組立説明図である。
この熱交換器は、一例としてエンジン冷却水冷却用熱交換器として用いることかできる。この例では、一対のコア3,4とそれらを連結する厚板ゴム9と各コア3,4の一方端側に配置された一対のタンク6,7とを有する。
なお、この例では一対のコア3,4を厚板ゴム9によって連結したが、3つ以上のコアを二つの厚板ゴム9によって連結することも、本発明に含まれる。
【0018】
各コア3,4は、それぞれ同一ピッチで並列した多数のチューブ1の間に、コルゲート型(プレート型でもよい)フィン5がろう付けされ、それぞれのチューブ1の両端がチューブプレート2に貫通して、その貫通部がろう付け固定されている。そしてコア3,4の両側には、それぞれサイド材13が設けられている。この例では、コア3,4の上下両端に位置する図示しないチューブプレートにはタンク6,7が被嵌され、その接合部が一体にろう付けまたは、パッキン等の手段により接合されている。
また、上側コア3の下端におけるチューブプレート2及び下側コア4の上端におけるチューブプレート2は、図1に示す如く周縁が環状に立ち上げられた浅い鍋型に形成され、その縁部にフランジ部2aが突設されている。この例では、上側に位置するフランジ部2aの周縁は、下側のそれよりも長く突出されている。
【0019】
次に、厚板ゴム9はその外周がチューブプレート2の内周に略整合する。そして各チューブ1のピッチで多数のチューブ挿通孔8が貫通されている。このチューブ挿通孔8の形状は、チューブ1の外周に整合するか、或いは僅かにそれより小であってもよい。好ましくは、後にチューブ1の端部を厚板ゴム9に挿通する都合上、チューブ挿通鋼8をチューブ1の外周よりも僅かに大に形成しておく。さらに厚板ゴム9の外周には、極めて浅い小さな線状の溝が多数形成され、その凹凸によってラビリンス形状部10を構成する。そして、タンク6,7を有するコア3,4が一体にろう付け固定された後に、コア3とコア4とが厚板ゴム9および接着剤を介して連結される。
【0020】
このとき各コアのチューブプレート2から突出された各チューブ1の端部は、厚板ゴム9のチューブ挿通孔8に挿入される。なお、厚板ゴム9の外周又は各チューブプレート2の内周には、予め接着剤16が塗布される。次いで、この例では上側のチューブプレート2のフランジ部2aの縁部がカシメられてカシメ部14を形成する。このとき接着剤16は、各ラビリンス形状部10の凹凸部に保持され、厚板ゴム9とチューブプレート2との液密性を確実に保持する。
【0021】
このようにしてなる熱交換器は、図2において一方のタンク6のパイプ11から一例として高温の冷却水が流入し、一方のコア3の各チューブ1内を流通して厚板ゴム9に達する。厚板ゴム9においてチューブ挿通孔8は、チューブ1と略同一の形状を有するため、高温の冷却水はそのまま他方のコア4のチューブ1に導かれ、そのタンク7からパイプ11を介し外部に導かれる。即ち、この例においては、コア3とコア4の接続部に中間タンクが存在しないと共に、コア3のチューブ1と、コア4のチューブ1とが実質的に連続したものとなる。そのために、厚板ゴム9内における流体の圧力損失が殆どない。
【0022】
なお、図3は下側のコア4に厚板ゴム9を嵌着した状態を示す要部であり、この厚板ゴム9に上側のコア3のチューブプレート2が嵌着される。
【0023】
次に、図4は本発明の第2の実施の形態を示す要部縦断面図であり、この例は上側のチューブプレート2のフランジ部2aと下側のそれとが同一形状からなり、それらの端面どうしが互いに接触した状態で、その短縁に溶接部15が形成されたものである。
なお、この例においても各コア3,コア4の各チューブ1は、厚板ゴム9を介して直接、直列に接続されたものと同様の作用をなす。
【0024】
次に、図5〜図7は本発明の第3の実施の形態を示し、この例ではチューブプレート2の外周に定間隔に多数の爪部2bを設け、その爪部2bが厚板ゴム9内に咬着するようにしたものである。その一例として、例えば図7の如く、チューブプレート2の外周面に工字状のスリット2cを形成し、その縦線の両側に一対の爪部2bを設け、その爪部2bを厚板ゴム9側に押し込むことにより、チューブプレート2と厚板ゴム9とを咬着固定することができる。
なお、この場合にもチューブプレート2と厚板ゴム9とは接着剤を介して接合することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の熱交換器の要部縦断面図であって、図2の一部拡大図。
【図2】同熱交換器の正面略図。
【図3】同熱交換器を組み立てる際の要部斜視説明図。
【図4】本発明の第2の熱交換器の要部縦断面図。
【0026】
【図5】同第3の熱交換器の要部縦断面図。
【図6】同要部正面図。
【図7】同熱交換器のチューブプレート2の部分拡大図。
【図8】従来型熱交換器の説明図。
【図9】同熱交換器の作用を示す説明図。
【符号の説明】
【0027】
1 チューブ
2 チューブプレート
2a フランジ部
2b 爪部
2c スリット
3,4 コア
5 フィン
6,7 タンク
8 チューブ挿通孔
【0028】
9 厚板ゴム
10 ラビリンス形状部
11 パイプ
12 給水キャップ
13 サイド材
14 カシメ部
15 溶接部
16 接着剤
17 枠形パッキン
18 中間タンク
19 ろう材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ、同一ピッチで並列した多数のチューブ(1) の端部がチューブプレート(2) に貫通してろう付け固定された一対のコア(3) (4)と、
各コア(3) (4)の一方側に配置された一対のタンク(6)(7) と、
前記チューブ(1) の前記ピッチでチューブ挿通孔(8) が貫通された厚板ゴム (9) と、を具備し、
各コア(3) (4)の他方側のチューブプレート(2) が互いに対向すると共に、それらの間に前記厚板ゴム(9) が介装され、それらのチューブプレート(2) の表面から突出した各チューブ(1) の端部が前記チューブ挿通孔(8) に挿通され、チューブプレート(2) と厚板ゴム(9) とが液密に接合された熱交換器。
【請求項2】
請求項1において、
前記他方側の各チューブプレート(2) は、その周縁が立ち上げられた浅い鍋状に形成されると共に、その縁にフランジ部(2a)が形成され、そのフランジ部(2a)どうしがカシメまたは溶接により接合された熱交換器。
【請求項3】
請求項1において、
前記他方側の各チューブプレート(2) は、その周縁が立ち上げられた浅い鍋状に形成されると共に、その周縁部に多数の爪部(2b)が一体に形成され、その爪部(2b)が前記厚板ゴム(9) の外周に咬着されてなる熱交換器。
【請求項4】
請求項1〜請求項3において、
前記厚板ゴム(9) の外表面に浅い凹凸のラビリンス形状部(10)が設けられ、その外表面に接着剤を介して、その厚板ゴム(9) と前記チューブプレート(2) とが接合された熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−47396(P2009−47396A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216673(P2007−216673)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)
【Fターム(参考)】