説明

熱交換器

【課題】従来よりも部品点数および組み付け工数の低減を図るとともに、フィンによる伝熱促進効果の向上を図る。
【解決手段】箱体150の内部にオフセットフィン部171を形成するフィン形成部材170を配置した水冷媒熱交換器において、フィン形成部材170に対して仕切部172となる平坦面177を複数設け、隣り合う平坦面177の間に形成された細流路181毎に、切り起こし形成面176を複数配置した構成を採用することにより、複数の仕切部172と複数のフィン部171とを一体化させる。これにより、部品点数を低減でき、さらに、フィン部171と仕切部172との間隔を狭くできるので、フィン部171と仕切部172との間を流れる水の流量を低減し、フィン部172を流れる水の流量を増大させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器に関するものであり、水と冷媒とを熱交換して水を加熱するヒートポンプ式給湯器に搭載される水冷媒熱交換器に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に開示された水冷媒熱交換器は、水が流れる水流路を内部に有する箱体と、箱体の内部を仕切って蛇行状、すなわち、多数の折り返した水流路を形成する波形状の仕切部材と、箱体の外面に接して設けられ、冷媒が流れる冷媒流路を形成するチューブとによって構成されている。
【0003】
さらに、特許文献2に開示された水冷媒熱交換器では、1つの仕切部材によって形成された多数の折り返した水流路毎に、仕切部材とは別部品の伝熱促進用のフィンが配置されている。このフィンは、波形状であって、部分的に切り起こされた切り起こし部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−314975号公報
【特許文献2】特開2009−074772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の通り、特許文献2に開示の水冷媒熱交換器は、仕切部材とフィンとが別部品のため、1つの仕切部材と多数のフィンとが必要となり、熱交換器の部品点数が多く、水冷媒熱交換器の製造時に、1つの仕切部材を配置する工程と、多数のフィンをそれぞれ配置する工程が必要となり、組み付けに時間がかかるという問題があった。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、従来よりも部品点数および組み付け工数の低減が可能な熱交換器を提供することを第1の目的とする。
【0007】
また、特許文献2に開示の水冷媒熱交換器は、仕切部材とフィンとが別部品のため、箱体内部における仕切部材とフィンとの配置関係において、仕切部材とフィンとの組み付け寸法を考慮して、仕切部材とフィンとの間隔を広くとる必要があった。これは、仕切部材を配置した後に各水流路にフィンを設置する際に、仕切部材およびフィンの寸法バラツキがあっても、各水流路にフィンを設置できるようにするためである。なお、従来では、各水流路に設置されたフィンは、仕切部材に設けられた爪部によって位置決めおよび仮固定されていた。
【0008】
このため、フィンと仕切部材との間が、フィンを迂回して水が流れるバイパス流路となり、フィンに対して低圧損であるバイパス流路に多くの水が流れてしまい、フィンによる伝熱促進効果が十分に発揮されないことが、本発明者の検討結果よりわかった。
【0009】
なお、水冷媒熱交換器の製造時に、仕切部材とフィンとを接合して、仕切部材とフィンとの間隔が無い状態とした後に、これを箱体の内部に配置する方法が考えられるが、この方法では、仕切部材とフィン同士の接合、これらと箱体の接合の2回の接合が必要となり、製造コストがかかるため、好ましくない。
【0010】
本発明は上記点に鑑みて、フィンによる伝熱促進効果の向上が可能な熱交換器を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記第1の目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、箱体(150)内に配置されたフィン形成部材(170)は、山部(173)と谷部(174)をつなぐ壁面として、切り起こし部(176a)が形成された切り起こし形成面(176)と、切り起こし部が形成されていない平坦面(177)とを有し、
平坦面(177)によって仕切部(172)が構成されるとともに、隣り合う平坦面(177)によって一方向に延びる1つの細流路(181)が形成され、平坦面(177)の一方向での端部に、隣り合う細流路(181)同士を連通する連通部(178)が設けられることによって、蛇行状の水流路が形成されており、
切り起こし形成面(176)によってフィン部(171)が構成されるとともに、隣り合う平坦面(177)の間に位置する複数の切り起こし形成面(176)によって、細流路(181)毎にフィン部(171)が形成されていることを特徴としている。
【0012】
このように、本発明では、フィン部を形成するフィン形成部材に対して仕切部となる平坦面を複数設け、隣り合う平坦面同士の間に形成された細流路毎に、切り起こし形成面を複数配置した構成を採用することにより、複数の仕切部と複数のフィン部とを一体化している。これにより、本発明によれば、仕切部とフィン部とが別部品で構成された場合と比較して、部品点数を低減でき、組み付け工程数も低減できる。
【0013】
また、上記第2の目的を達成するため、請求項2に記載の発明では、フィン部(171)は、切り起こし部(176a)によって形成される断面波形状部分が、水流れ方向で隣接する断面波形状部分に対して、オフセットしているオフセットフィンであり、
隣り合う切り起こし形成面(176)同士の平均間隔を第1の幅(L1)とし、平坦面(177)とその平坦面に最も近い切り起こし形成面(176)との平均間隔を第2の幅(L2)としたとき、第2の幅(L2)は、第1の幅(L1)と同等もしくはそれよりも短いことを特徴としている。
【0014】
また、上記第2の目的を達成するため、請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、第2の幅(L2)は、第1の幅(L1)の60%未満であることを特徴としている。
【0015】
ここで、仕切部とフィン部とが別部品の場合では、組み付け寸法を考慮しなければならなかったので、仕切部とフィン部との間隔を広くとる必要があったが、仕切部とフィン部とを一体化した構成を採用することで、請求項2、3に記載の発明のように、仕切部とフィン部との間隔を狭くすることができる。
【0016】
ちなみに、仕切部とフィン部とが別部品の場合、本発明者の検討結果では、第2の幅(L2)を狭く設計しようとしても、第1の幅(L1)の60%の長さまでが限界であったが、仕切部とフィン部とを一体化した構成とすることで、請求項3に記載のように、第2の幅(L2)を第1の幅(L1)の60%未満にすることができる。
【0017】
この結果、請求項2に記載の発明によれば、第2の幅(L2)が第1の幅(L1)よりも長い場合と比較して、バイパス流路を流れる水の量を低減でき、フィン部を流れる水の量を増加できるので、フィン部による伝熱促進の効果を向上できる。また、請求項3に記載の発明によれば、仕切部とフィン部とが別部品の場合と比較して、バイパス流路を流れる水の量を低減でき、フィン部を流れる水の量を増加できるので、フィン部による伝熱促進の効果をさらに向上できる。
【0018】
また、請求項4に記載の発明では、連通部(178)は、平坦面(177)の一方向での一端側と他端側のどちらかの端部に配置されており、
隣り合う平坦面のそれぞれの連通部(178)は、箱体(150)の水出口(152)から離れた側では、互いに異なる側の端部に配置されるとともに、箱体(150)の水出口(152)に近い側では、互いに同一側の端部に配置されていることを特徴としている。
【0019】
連通部の設置箇所をこのように設定することで、箱体内部のうち水出口から離れた側の領域では、蛇行状の1本の流路を形成し、水出口側の領域では、1本の流路が複数本の流路に分岐する水流路を形成できる。箱体内部のうち水出口に近い側を流れる水は、冷媒との熱交換によって温度が高いため、水流路内にカルシウムが析出するが、本発明によれば、流路本数が1本の場合と比較して、流路断面積を増大できるので、カルシウムによって水が流れなくなることを抑制できる。
【0020】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態におけるヒートポンプ式給湯器の全体構成を示す図である。
【図2】図1中の水冷媒熱交換器15の一部透過平面図である。
【図3】図2中の箱体150の分解斜視図である。
【図4】図2中の箱体150の縦断面図である。
【図5】図4中の領域A1の拡大図である。
【図6】図2中の箱体150の横断面図である。
【図7】比較例における箱体の横断面図である。
【図8】第1実施形態における1つの細流路181内の流量分布を示す図である。
【図9】比較例における1つの細流路内の流量分布を示す図である。
【図10】第2実施形態における水冷媒熱交換器の箱体150の縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0023】
(第1実施形態)
本実施形態は、本発明に係る熱交換器をヒートポンプ式給湯器の水冷媒熱交換器に適用したものである。図1に、本実施形態におけるヒートポンプ式給湯器の全体構成図を示す。
【0024】
図1に示すように、ヒートポンプ式給湯器は、給湯水を貯留する貯湯タンク10、貯湯タンク10内の給湯水を循環する水循環通路11、および、給湯水を加熱するためのヒートポンプサイクル装置12を備えている。
【0025】
貯湯タンク10は、高温の給湯水を長時間保温することができる温水タンクである。貯湯タンク10に貯留された給湯水は、貯湯タンク10の上部に設けられた出湯口10aから出湯され、台所や風呂等に給湯される。貯湯タンク10内の下部に設けられた給水口10bから水道水が補給されるようになっている。
【0026】
水循環通路11には、給湯水を循環させる電動水ポンプ13が配置されており、給湯水は、貯湯タンク10下部の給湯水出口10c→電動水ポンプ13→水冷媒熱交換器15→貯湯タンク10上部の給湯水入口10dの順に流れる。
【0027】
ヒートポンプサイクル装置12は、電動圧縮機14、水冷媒熱交換器15、膨張弁16、蒸発器17等を順次配管接続した周知の冷凍サイクルである。
【0028】
水冷媒熱交換器15は、給湯水が流れる水流路15aと、電動圧縮機14吐出冷媒(高温高圧冷媒)が流れる冷媒流路15bとを有し、給湯水と電動圧縮機14の吐出冷媒との間で熱交換させて、給湯水を加熱する加熱用熱交換器である。
【0029】
次に、本実施形態の水冷媒熱交換器15の具体的構造について説明する。図2に水冷媒熱交換器15の一部透過平面図を示す。
【0030】
図2に示すように、水冷媒熱交換器15は、内部に水流路15aを形成する薄型矩形状の箱体150と、内部に冷媒流路を形成する冷媒チューブ160とを備えている。
【0031】
箱体150は、縦方向(図の上下方向)、横方向(図の左右方向)および高さ方向(紙面垂直方向)のうち、高さ方向の長さが最も短くなっており、横方向の長さが最も長くなっている。そして、箱体150は、その高さ方向が重力方向に一致するように配置されている。
【0032】
箱体150内に形成された水流路15aにおける水の流れ方向は水平方向であり、箱体150の横方向における一端側に設けられた水入口151から他端側に設けられた水出口152に向かって、図中の矢印のように、蛇行しながら水が流れるようになっている。なお、水入口151には、図1中の電動水ポンプ13に連なる水入口側水配管が接続され、水出口152には、図1中の貯湯タンク10の給湯水入口10dに連なる水出口側水配管が接続されている。
【0033】
冷媒チューブ160は、箱体150の外面に接して設けられている。具体的には、冷媒チューブ160は、3本の細管161、162、163から構成されている金属製チューブである。3本の細管161、162、163は1組となって、箱体150の外周を螺旋状に巻くように形成されている。なお、冷媒チューブ160は、3本の細管161、162、163を1組としているが、2本の細管を1組としても良い。
【0034】
3本の細管161、162、163の上流側端部には、分岐管164が接続されている。分岐管164は、電動圧縮機14から吐出された冷媒を細管161、162、163に分流する。また、3本の細管161、162、163の下流側端部には、分岐管165が接続されている。分岐管165は、細管161、162、163から流出する冷媒を集合して膨張弁16の入口側に流す。
【0035】
図3に、箱体150の分解斜視図を示す。
【0036】
図3に示すように、箱体150は、空間を挟んで対向する2枚のプレート153、154の周縁を接合することにより形成されている。2枚のプレート153、154の間には、1つのフィン形成部材170が配置されている。2枚のプレート153、154およびフィン形成部材170は金属製であり、例えば銅製である。
【0037】
フィン形成部材170は、オフセットフィン部171を形成するとともに、箱体150内部の水流路15aを形成する仕切部172を形成しており、オフセットフィン部171と仕切部172とが一体化した構成となっている。なお、一体化とは、同一材料で連続した形状であって、接続部を有していないことを意味する。
【0038】
具体的には、フィン形成部材170は、水流れ方向に略垂直な断面形状が山部173と谷部174とを複数有する矩形の波形状となっており、山部173と谷部174とをつなぐ壁面(山部と谷部とを除く壁面)175を複数有している。この壁面175としては、壁面の一部を切り起こした切り起こし部176aが形成された切り起こし形成面176と、水流れ方向全域で切り起こし部が形成されていない平坦面177とがある。
【0039】
複数の切り起こし形成面176がオフセットフィン部171を構成し、平坦面177が仕切部172を構成している。オフセットフィン部171では、水流れ方向から見たときに、切り起こし部176aによって形成される断面波形状部分が、水流れ方向で隣接する断面波形状部分に対して、オフセットしている。
【0040】
図4に箱体150の縦断面図を示し、図5に図4中の領域A1の拡大図を示す。なお、図4では、フィン形成部材170のうち仕切部172を構成する平坦面177を主に示し、フィン部171を一部省略している。また、図5では、フィン形成部材170のみを示している。
【0041】
図4に示すように、箱体150の内部は、平坦面177によって、蛇行状の水流路が形成されている。
【0042】
具体的には、複数の平坦面177のうち隣り合う平坦面177によって挟まれた部分が1つの細流路181となっている。この細流路181は、一方向、本例では、箱体150の縦方向(図4中の左右方向)に延びており、複数の細流路181が平行に配置されている。
【0043】
平坦面177には、箱体150の縦方向、すなわち、図4中の左右方向での一端と他端のどちらかに、隣り合う細流路181同士を連通する連通部178が設けられている。連通部178は、平坦面177の端部を全て除去することで形成されている。なお、平坦面177の端部の一部に設けた開口部によって、連通部178を構成しても良い。
【0044】
この連通部178は、水出口152から離れた側では、隣り合う平坦面177において、互いに異なる側の端部に配置されている。すなわち、箱体150の縦方向での一端側の第1連通部178aと、他端側の第2連通部178bとが、箱体150の横方向、すなわち、水入口151と水出口152とが対向する方向で、交互に並んでいる。
【0045】
この連通部178によって、水が1つの細流路181を流れた後、Uターンして、流れ方向を反対方向に変えて、隣の細流路181を流れるようになっている。このようにして、1本の蛇行状の水流路が形成されている。
【0046】
一方、水出口152に近い側では、連通部178は、隣り合う平坦面177において、互いに同一側の端部に配置されている。これにより、水入口151から水出口152までの全域で1本の蛇行状の水流路ではなく、水出口152に近い側の流路途中で1本から複数本に分岐する蛇行状の水流路となっている。本例では、水出口152側の4本の細流路181での矢印で示す水流れ方向からわかるように、1本の流路が2本に分岐している。
【0047】
また、図5に示すように、隣り合う平坦面177同士の間に、複数の切り起こし形成面176が位置している。この複数の切り起こし形成面176によって、細流路181毎に配置されたオフセットフィン部171が構成されている
図6に、箱体150の横断面図を示す。図6は、1つの細流路181における水流れ方向に対して直交する方向での断面図である。図6に示すように、フィン形成部材170が2枚のプレート153、154に挟まれており、フィン形成部材170の山部173と谷部174とがプレート153、154に接合されている。
【0048】
そして、フィン部171における隣り合う切り起こし形成面176同士の平均間隔を第1の幅(フィン幅)L1とし、仕切部172である平坦面177とその平坦面177に最も近い切り起こし形成面176との平均間隔を第2の幅(バイパス流路幅)L2としたとき、第2の幅L2は、第1の幅L1よりも短く(L2<L1)、第1の幅L1の長さに対して40%以上50%以下の長さとなっている。図6に示す本例では、第2の幅L2は、第1の幅L1の約45%の長さである。なお、第1の幅L1は1つの山部および谷部の幅に相当し、第1の幅L1と第2の幅L2は図6に示すように、フィン高さ方向(図6中の上下方向)の中央位置での長さに相当する。
【0049】
このような構造のフィン形成部材170は、次のようにして製造することができる。
【0050】
まず、一般的なオフセットフィンは、平らな銅板に対して切り込みを入れた後、型でプレスして、銅板を波形状にすると同時に切り起こし部を形成することで製造される。
【0051】
これに対して、本実施形態のフィン形成部材170は、1枚の平らな銅板に対して、フィン部171となる部位にのみ切り込みを入れ、仕切部172となる部位に切り込みを入れないように変更する。また、フィン形成部材170の断面波形状は、図6に示すように、平坦面177に連なる谷部174の幅が他の谷部174の幅と異なるので、図6に示すフィン形成部材170の形状を一単位として、一単位毎にプレス成形する。なお、プレス成形の前もしくは後に、連通部178となる部位を除去する。このようにして、上述の構造のフィン形成部材170を製造することができる。
【0052】
次に、本実施形態の水冷媒熱交換器15における主な特徴について説明する。
【0053】
(1)本実施形態では、オフセットフィン部171を形成するフィン形成部材170に対して、仕切部172となる平坦面177を複数設け、隣り合う平坦面177の間に形成された細流路181毎に、切り起こし形成面176を複数配置した構成を採用することにより、複数の仕切部172と複数のフィン部171とを一体化して1部品としている。
【0054】
したがって、本実施形態によれば、仕切部172とフィン部171とが別部品で構成された場合と比較して、部品点数を低減でき、水冷媒熱交換器15の組み付け時では、箱体150の内部に1つのフィン形成部材170を設置すれば良いことから、組み付け工程数を低減できる。
【0055】
(2)本実施形態では、仕切部172とフィン部171とを一体化しているので、仕切部材とフィンとが別部品の場合のように組み付け寸法を考慮する必要がなく、箱体150内部における仕切部172とフィン部171との間隔を狭くできる。
【0056】
ここで、図7に、比較例における箱体の横断面図を示す。図7は、図6と同様に、1つの細流路における水流れ方向に対して直交する方向での断面図である。
【0057】
図7に示す比較例では、別部品であるオフセットフィン210と仕切板220とが、箱体150の内部に配置されている。この比較例の構成では、第2の幅L2を狭く設計しようとしても、第1の幅L1の60%の長さまでが限界であった。
【0058】
これに対して、本実施形態では、第2の幅L2の長さを第1の幅L1に対して40%以上50%以下の長さにすることができる。このため、以下の通り、本実施形態によれば、フィン部171と仕切部172との間の隙間であって、フィン部171を迂回して水が流れるバイパス流路の流量を比較例よりも低減できる。
【0059】
図8に本実施形態における1つの細流路181内の流量分布を示し、図9に比較例における1つの細流路内の流量分布を示す。なお、図8、9は、それぞれ、図6、図7に示す断面構造について、解析ソフト(STAR-CD)を用いた定常計算(SIMPLE法)による解析結果である。また、図8、9では、縦軸の目盛は同じ流量を示しており、横軸の0%から100%は、図6、7に示す1つの細流路の左端から右端までの位置を示している。
【0060】
図9に示す比較例の流量分布では、図9中の10%付近および90%付近の位置が、図7中のフィン210と仕切板220との間に形成されるバイパス流路の位置であり、20%〜80%の位置がフィン210の位置である。図9からわかるように、比較例の構成では、バイパス流路での流量がフィン210での流量よりも多くなっている。
【0061】
これに対して、図8に示す本実施形態の流量分布では、図8中の10%付近および90%付近の位置が、図6中のフィン部171と仕切部172との間に形成されるバイパス流路の位置であるが、このバイパス流路での流量が、20%〜80%の位置のフィン部171での流量と同程度となっている。また、フィン部171での流量は、比較例のフィン210での流量よりも増大している。
【0062】
よって、本実施形態によれば、図7の比較例と比較して、フィン部171による伝熱促進効果を向上できていると言える。
【0063】
なお、本実施形態では、第2の幅L2の長さが、第1の幅L1に対して40%以上50%以下の長さとなっていたが、第2の幅L2の長さをL2<L1の範囲内で他の長さに変更しても良い。ただし、第2の幅L2の長さを第1の幅L1の60%未満となる範囲内で設定することが好ましい。少なくとも60%未満にすることで、比較例よりもバイパス流路の流量を低減できるからである。
【0064】
また、本実施形態では、第2の幅L2の長さを、第1の幅L1の長さを基準に説明したが、第3の幅L3を基準にすると、図6の例における第2の幅L2の長さは、第3の幅L3の長さの1.2倍であり(L2/L3=1.2/1)、本実施形態によれば、第2の幅L2の長さを、第3の幅L3と同じ長さまで狭くできる。ここで、第3の幅L3は、水流れ方向からみたフィン形成部材170の断面形状において、オフセット関係の切り起こし面同士の平均間隔である。一方、図7の比較例では、第2の幅L2の長さは、第3の幅L3の長さの1.5倍である(L2/L3=1.2/1)。
【0065】
(3)本実施形態では、図4に示すように、水出口152から離れた側では、隣り合う平坦面177において、互いに異なる側の端部に連通部178を配置し、水出口152に近い側では、隣り合う平坦面177において、互いに同一側の端部に連通部178を配置している。これにより、箱体150の内部において、水出口152から離れた側の領域では、蛇行状の1本の流路を形成し、水出口152側の領域では、1本の流路が2本の流路に分岐する水流路を形成している。すなわち、水出口152側の領域では、1本の流路の幅を水出口152から離れた側と同一としたまま、流路の本数を2本に増大させている。
【0066】
ここで、箱体150の内部を流れる水は、冷媒と熱交換されることにより加熱されるので、水入口151から水出口152に向かうにつれて水温が上昇するため、水出口152側を流れる水はカルシウムが析出するほど高温になる。このため、カルシウムの析出によって水が流れなくなるという問題がある。
【0067】
これに対して、本実施形態では、水出口152側の領域において、2本の細流路181を水が並列に流れる水流路を形成しているので、流路本数が1本のままの場合と比較して、流路断面積を実質的に増大でき、カルシウムの析出によって水が流れなくなることを抑制できる。
【0068】
なお、水出口152側の細流路181の幅を、水入口151側の細流路181の幅よりも大きくすることで、水出口152側での流路断面積を増大させることも考えられるが、この場合、水入口側と水出口側でフィン形成部材170の波形状を変更しなければならない。これに対して、本実施形態によれば、水入口側と水出口側で波形状を変更せず、連通部178の位置を設定するだけで、水出口152側での流路断面積を増大させることができる。
【0069】
(第2実施形態)
図10に、本実施形態における箱体150の縦断面図を示す。図10は、図4に対応している。
【0070】
本実施形態では、箱体150の内部の水入口151から水出口152までの全域において、連通部178が、隣り合う平坦面177において、互いに異なる側の端部に配置されている。すなわち、一方向での一端側の第1連通部178aと、他端側の第2連通部178bとが、箱体150の横方向で、交互に並んでいる。これにより、箱体150の内部の水入口151から水出口152までの全域において、1本の蛇行流路が形成されている。
【0071】
本実施形態においても、仕切部172とフィン部171とを一体化しているので、第1実施形態で説明した(1)、(2)の効果を奏する。
【0072】
(他の実施形態)
(1)上述の各実施形態では、箱体150を2枚のプレート153、154で構成したが、1枚のプレートを折り曲げて箱体を構成しても良く、また、箱体を他の構成としても良い。
【0073】
(2)上述の各実施形態では、フィンによる伝熱促進効果の向上のために、第2の幅L2を第1の幅L1よりも短くしたが(L2<L1)、部品点数の低減という観点では、第2の幅L2を第1の幅L1と同じ(L1=L2)としても良い。
【0074】
この場合、フィン形成部材170の全域において、山部173および谷部174の幅が均一となるので、フィン形成部材170の製造が容易となる。
【0075】
(3)上述の各実施形態では、箱体150の内部にフィン形成部材170を1つ配置したが、フィン形成部材170は1つでなくても良く、部品点数が従来よりも少ない範囲であれば、複数に分割しても良い。
【0076】
(4)上述の各実施形態では、フィン部171がオフセットフィンであったが、フィン部171はオフセットフィンに限らず、横断面が波形状の壁面に対して部分的に切り起こし部が形成されたフィンであれば、他の種類のフィンとしても良い。例えば、平板状の切り起こし部が、水流れ方向に対して斜めに配置されたルーバフィンとしても良い。
【0077】
(5)上述の各実施形態では、水冷媒熱交換器に本発明を適用したが、水冷媒熱交換器以外の熱交換器に本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0078】
150 箱体
160 冷媒チューブ
170 フィン形成部材
171 フィン部
172 仕切部
173 山部
174 谷部
176 切り起こし形成面
176a 切り起こし部
177 平坦面
178 連通部
181 細流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が流れる水流路を内部に有する箱体(150)と、
前記箱体(150)内に設けられ、前記箱体(150)の内部を仕切って前記水流路を蛇行状に形成する仕切部(172)と、
前記水流路内に設けられ、壁面に対して部分的に切り起こされた切り起こし部を有する伝熱促進用のフィン部(171)と、
前記箱体(150)の外面に接して設けられ、冷媒が流れる冷媒流路を形成する冷媒チューブ(160)とを備え、水と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器において、
前記箱体(150)内には、前記箱体(150)の内面に接する山部(173)及び谷部(174)を複数有する断面波形状であって、前記仕切部(172)及び前記フィン部(171)を構成するフィン形成部材(170)が配置されており、
前記フィン形成部材(170)は、前記山部(173)と前記谷部(174)とをつなぐ壁面として、前記切り起こし部(176a)が形成された切り起こし形成面(176)と、前記切り起こし部が形成さていない平坦面(177)とを有し、
前記平坦面(177)によって前記仕切部(172)が構成されるとともに、隣り合う前記平坦面(177)によって一方向に延びる1つの細流路(181)が形成され、前記平坦面(177)の前記一方向での端部に、隣り合う前記細流路(181)同士を連通する連通部(178)が設けられることによって、蛇行状の前記水流路が形成されており、
前記切り起こし形成面(176)によって前記フィン部(171)が構成されるとともに、隣り合う前記平坦面(177)の間に位置する複数の前記切り起こし形成面(176)によって、前記細流路(181)毎に前記フィン部(171)が形成されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記フィン部(171)は、前記切り起こし部(176a)によって形成される断面波形状部分が、水流れ方向で隣接する断面波形状部分に対して、オフセットしているオフセットフィンであり、
隣り合う前記切り起こし形成面(176)同士の平均間隔を第1の幅(L1)とし、前記平坦面(177)とその平坦面に最も近い前記切り起こし形成面(176)との平均間隔を第2の幅(L2)としたとき、前記第2の幅(L2)は、前記第1の幅(L1)と同等もしくはそれよりも短いことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記第2の幅(L2)は、前記第1の幅(L1)の60%未満であることを特徴とする請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記連通部(178)は、前記平坦面(177)の前記一方向での一端側と他端側のどちらかの前記端部に配置されており、
隣り合う前記平坦面のそれぞれの前記連通部(178)は、前記箱体(150)の水出口(152)から離れた側では、互いに異なる側の前記端部に配置されるとともに、前記箱体(150)の水出口(152)に近い側では、互いに同一側の前記端部に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の熱交換器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−169497(P2011−169497A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32722(P2010−32722)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000126632)株式会社アタゴ製作所 (31)
【出願人】(504336733)株式会社柿生精密 (10)
【Fターム(参考)】