熱交換器
【課題】いわゆる螺旋チューブタイプの伝熱管内の圧力が高くなった際に伝熱管とこの伝熱管に連結されたヘッダなどの連結部材との間に回転モーメントが発生する現象を適切に防止または抑制し、伝熱管や連結部材の取り付けの安定性などを高めることが可能な熱交換器を提供する。
【解決手段】複数の伝熱管T1と、これらに固定連結された連結部材2A,2Bと、を備えており、複数の伝熱管T1は、連結部材2A,2Bとの連結位置から略同一方向に延びた複数の直状管体部1を有し、かつこれら複数の直状管体部1の内面には、螺旋状の凹部12が形成されている、熱交換器HE1であって、複数の直状管体部1として、第1および第2の直状管体部1L,1Rが設けられており、これら第1および第2の直状管体部1L,1Rは、凹部12の螺旋の巻き方向が互いに相違している。
【解決手段】複数の伝熱管T1と、これらに固定連結された連結部材2A,2Bと、を備えており、複数の伝熱管T1は、連結部材2A,2Bとの連結位置から略同一方向に延びた複数の直状管体部1を有し、かつこれら複数の直状管体部1の内面には、螺旋状の凹部12が形成されている、熱交換器HE1であって、複数の直状管体部1として、第1および第2の直状管体部1L,1Rが設けられており、これら第1および第2の直状管体部1L,1Rは、凹部12の螺旋の巻き方向が互いに相違している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水やその他の所望の流体を伝熱管内に流通させて、この流体の加熱または冷却を行なうタイプの熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器を構成する伝熱管としては、内面および外面に螺旋状の凹部および凸部を形成したいわゆる螺旋チューブタイプのものがある(たとえば、特許文献1,2を参照)。このような伝熱管によれば、この伝熱管の外面および内面の表面積(伝熱面積)が大きくなることに加え、伝熱管内を流通する流体や伝熱管の外面に作用する熱交換用媒体に乱流を生じさせて、それらと伝熱管との接触時間を長くとることができる。したがって、伝熱効率を高くするのに好ましい。このような伝熱管を複数本用いる場合には、フィン付きチューブなどの他のタイプの伝熱管と同様に、流体の流入出用のヘッダに連結して用いられる。
【0003】
しかしながら、前記した螺旋チューブタイプの伝熱管に、ヘッダを連結して用いる場合には、次のような不具合が生じることを、本件発明者は発見した。
【0004】
すなわち、伝熱管の内部に連通した流体流通経路において、たとえばウォータハンマが発生し、伝熱管内の圧力が相当に高くなったときには、伝熱管に捩じり力(伝熱管の長手方向に延びる中心軸を中心とするトルク)が発生する。この現象は、伝熱管の内面に形成されている凹部が螺旋状であることに起因して生じる。前記捩じり力の方向は、前記凹部の螺旋の巻き方向とは反対の方向であり、伝熱管内における流体流通方向とは無関係である。伝熱管にヘッダが固定して連結されている場合、前記した伝熱管の捩じり力は、ヘッダを回転させる回転モーメントを発生させる場合がある。この場合、前記回転モーメントは、その反作用として、ヘッダが伝熱管を回転させる力としても働く。このような力は、伝熱管の本数が多くなるほど、大きくなる。ヘッダと伝熱管との間に前記した回転モーメントが発生することは、ヘッダや伝熱管の取り付け箇所に不必要な応力を生じさせるといった要因となり、これらヘッダや伝熱管の取り付けの安定性や信頼性を高める観点からすると、好ましいものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4082058号公報
【特許文献2】特開平9−310991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、いわゆる螺旋チューブタイプの伝熱管内の圧力が高くなった際に、伝熱管とこの伝熱管に連結されたヘッダなどの連結部材との間に回転モーメントが発生する現象を、適切に防止または抑制し、伝熱管や連結部材の取り付けの安定性や信頼性を高めることが可能な熱交換器を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供される熱交換器は、複数の伝熱管と、これら複数の伝熱管に固定して
連結された連結部材と、を備えており、前記複数の伝熱管は、前記連結部材との連結位置から略同一方向に延びた複数の直状管体部を有し、かつこれら複数の直状管体部の内面には、螺旋状の凹部が形成されている、熱交換器であって、前記複数の直状管体部として、第1および第2の直状管体部が設けられており、これら第1および第2の直状管体部は、前記凹部の螺旋の巻き方向が互いに相違していることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、伝熱管内の圧力が高くなって複数の直状管体部において捩じり力が発生しても、第1および第2の直状管体部のそれぞれにおいて発生する捩じり力の方向は、互いに反対となる。したがって、これらの捩じり力が発生させる回転モーメントは、相殺または減殺されることとなって、伝熱管と連結部材との間に大きな回転モーメントを生じないようにすることができる。その結果、前記回転モーメントに起因して伝熱管や連結部材の取り付け箇所に大きな応力が生じるといったことが回避され、それらの取り付けの安定性や信頼性を高めることが可能である。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記複数の伝熱管として、前記第1の直状管体部を有する伝熱管と、前記第2の直状管体部を有する伝熱管とが設けられている。
【0011】
このような構成によれば、第1の直状管体部を有する伝熱管と、第2の直状管体部を有する伝熱管とを組み合わせて、本発明が意図する熱交換器の構成を容易に実現することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記第1および第2の直状管体部のそれぞれの数は、略同一とされている。
【0013】
このような構成によれば、第1および第2の直状管体部のそれぞれにおいて発生する捩じり力の大きさを均衡させ易くなり、伝熱管と連結部材との間に発生する回転モーメントを小さくするのに、より好ましいものとなる。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記複数の直状管体部は、1または複数の列に並んでおり、かつこれらの各列において、前記第1および第2の直状管体部は、1つずつ交互に位置するように並んでいる。
【0015】
このような構成によれば、第1および第2の直状管体部どうしを互いに接近させることができる。このため、第1の直状管体部周りに発生する回転モーメントを、第2の直状管体部周りに発生する回転モーメントによって相殺または減殺されることが効率良く行なわれる。したがって、伝熱管と連結部材との間に発生する回転モーメントを小さくするのに一層好ましい。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記複数の伝熱管の全部または一部は、前記第1および第2の直状管体部の双方を有し、かつこれら第1および第2の直状管体部が管体長手方向に直列状に並んだ構成とされている。
【0017】
このような構成によれば、各伝熱管の第1の直状管体部において発生する捩じり力を、第2の直状管体部において発生する捩じり力によって相殺または減殺することが可能であり、各伝熱管から連結部材に対して大きな捩じり力が作用することを抑制することが可能である。したがって、伝熱管と連結部材との連結箇所などに発生する応力を減少させる上で、より好ましい。
【0018】
本発明において、好ましくは、前記各直状管体部の外面には、螺旋状の凸部が形成されている。
【0019】
このような構成によれば、各伝熱管の伝熱面積を大きくし、伝熱効率を一層高めるのに好適となる。
【0020】
本発明において、好ましくは、前記各伝熱管は、前記各直状管体部に対して曲状管体部を介して繋がった追加の直状管体部をさらに有しており、この追加の直状管体部の内面および外面にも、螺旋状の凹部および凸部が形成されている。
【0021】
このような構成によれば、追加の直状管体部が設けられていることによって伝熱管の伝熱面積の拡大が図られるばかりか、この追加の直状管体部に形成された螺旋状の凹部および凸部の存在によって伝熱面積のさらなる拡大が図られる。したがって、伝熱管の総数を少なくして全体の大型化を抑制しつつ、高い熱交換効率を得るのに一層好適となる。
【0022】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は、本発明に係る熱交換器の一例を示す平面断面図であり、(b)は、(a)のI−I断面説明図である。
【図2】(a)は、図1に示す熱交換器において用いられている伝熱管の例を示す一部省略正面図であり、(b)は、(a)のA部拡大断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、図1に示す熱交換器における第1および第2の直状管体部の他の配列例を示す断面説明図である。
【図4】(a)は、本発明に係る熱交換器の他の例を示す斜視図であり、(b)は、(a)のIV−IV断面説明図である。
【図5】(a)は、本発明に係る熱交換器の他の例を示す斜視図であり、(b)は、(a)のV−V断面説明図である。
【図6】本発明に係る熱交換器の他の例を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る熱交換器の他の例を示す斜視図である。
【図8】(a)は、本発明に係る熱交換器の他の例を示す平面断面図であり、(b)は、(a)のVIII−VIII断面図である。
【図9】本発明に係る熱交換器の他の例を示す平面断面図である。
【図10】図9に示す熱交換器において用いられている伝熱管の例を示す一部省略正面図である。
【図11】本発明に係る熱交換器の他の例を示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0025】
図1および図2は、本発明が適用された熱交換器の一例を示している。
本実施形態の熱交換器HE1は、たとえば給湯装置の構成部品として用いられて、給湯用の湯水加熱を行なうためのものであり、複数の伝熱管T1、一対のヘッダ2A,2B、およびこれらを内部に収容するケース3を備えている。この熱交換器HE1は、複数の伝熱管T1の構成に特徴があり、これ以外の熱交換器HE1の全体的な基本構造は、従来既知のものと同様である。したがって、複数の伝熱管T1の構成以外の説明は簡単なものとする。
【0026】
ケース3は、各伝熱管T1に作用させる加熱用媒体の流入口30および排出口31を有している。加熱用媒体としては、たとえば燃焼装置(図示略)によって発生された燃焼ガスが用いられる。一対のヘッダ2A,2Bは、本発明でいう「連結部材」の一例に相当し
、各伝熱管T1への湯水の流出入を行なわせるとともに、各伝熱管T1を支持する役割を果たす。各伝熱管T1の両端部10は、一対のヘッダ2A,2Bの壁部に対して、ろう付け、あるいは溶接などの手段により固定して連結されている。ヘッダ2Aの内部には、給水口21に繋がった入水用のチャンバ20aと、出湯口22に繋がった出湯用のチャンバ20bとが形成されており、ヘッダ2Bの内部には、湯水戻し用のチャンバ20cが形成されている。給水口21から入水用のチャンバ20aに給水がなされると、この水は、流入口30寄りの複数の伝熱管T1を通過して湯水戻し用のチャンバ20cに到り、その後はこのチャンバ20cから排出口31寄りの複数の伝熱管T1を通過して出湯用のチャンバ20bに流入する。このような過程において、前記の水は、ケース3内に供給されてくる加熱用媒体によって加熱されて、温水の生成がなされ、この温水は出湯口22から所定の箇所に供給される。
【0027】
各伝熱管T1は、たとえばステンレスや銅などの金属製であり、一定方向に延びた直管状である。すなわち、本実施形態においては、各伝熱管T1の全体が、直状管体部1となっている。図2によく表われているように、直状管体部1のうち、両端部10を除く略全長域の外面には、螺旋状の凸部11が形成されているとともに、内面には、螺旋状の凹部12が形成されている。凸部11どうしの間は螺旋状の凹部となっており、凹部12どうしの間は螺旋状の凸部となっている。図2には、螺旋状の凸部11および凹部12が、4条ネジなどの多条ネジの形態とされた例が示されている。凸部11および凹部12を、多条ネジの形態にすると、凸部11および凹部12を密に設けることが容易となる。ただし、これに限定されず、凸部11および凹部12を単条ネジの形態とすることもできる。
【0028】
複数の直状管体部1としては、第1および第2の直状管体部1(1L,1R)の2種類が設けられている。第1の直状管体部1Lは、螺旋状の凸部11および凹部12が左ネジ(左回りで前進するネジ)と同様な巻き方向とされたものであり、図2(a)に示されたものがこれに該当する。これに対し、第2の直状管体部1Rは、螺旋状の凸部11および凹部12が右ネジ(右回りで前進するネジ)と同様な巻き方向とされたものである。複数の伝熱管T1としては、第1の直状管体部1Lを有するものと、第2の直状管体部1Rを有するものとの2種類がある。なお、図1においては、螺旋状の凸部11を、実線の斜線を用いて簡略的に示している。螺旋状の凹部12は、凸部11の裏面側に形成されている。このような点は、後述する他の実施形態の図面においても同様である。
【0029】
前記したような螺旋状の凸部11および凹部12は、伝熱管T1の原材料となる金属製チューブに、転造処理を施すことにより形成することが可能である。転造処理によれば、金属製チューブの外面に雄ネジ状の凸部11を形成する際に、雌ネジ状の凹部を前記金属製のチューブの内面に同時に形成することができる。また、転造処理を終えたチューブに、捩じり加工をさらに施すと、螺旋状の凸部11および凹部12のそれぞれのピッチを狭めることができ、伝熱管T1の表面積を大きくするのにより有利となる。
【0030】
複数の直状管体部1は、互いに略平行となるように並んでおり、第1および第2の直状管体部1L,1Rは、たとえば図1(b)に示すような配列となっている。同図において、第1の直状管体部1Lには「L」、第2の直状管体部1Rには「R」の符号を付している。この点は、図3などの他の図においても同様である。第1および第2の直状管体部1L,1Rは、たとえば千鳥配列とされており、その縦列(上下高さ方向の列であり、図面では8列とされている)のそれぞれにおいては、第1および第2の直状管体部1L,1Rが、1つずつ交互に位置するように並んでいる。なお、本実施形態とは異なり、複数の直状管体部1を縦横にマトリクス状に並べる場合には、第1および第2の直状管体部1L,1Rは、縦方向の列に加えて、横方向の列においても、1つずつ交互に並ぶ配置とされることが好ましい。第1および第2の直状管体部1L,1Rのそれぞれの総数は、略同数(同数を含む)である。
【0031】
次に、前記した熱交換器HE1の作用について説明する。
【0032】
湯水加熱を行なう場合には、流入口30からケース3内に加熱用媒体を流入させるとともに、給水口21に給水を行なって各伝熱管T1内に水を流通させる。各伝熱管T1の外面および内面には、螺旋状の凸部11および凹部12が形成されているために、背景技術の欄において述べたのと同様に、伝熱管T1の伝熱面積を大きくし、また加熱用媒体や水を乱流としてこれらと伝熱管T1との接触時間を長くとることが可能となり、伝熱効率が良くなる。
【0033】
給水口21や出湯口22に連通する湯水流通経路(図示略)において、たとえばウォータハンマが発生し、各伝熱管T1内の圧力が相当に高くなった場合には、各直状管体部1において捩じり力が発生する。これは、既述したとおり、各直状管体部1の内面に螺旋状の凹部12が形成されていることに起因する。また、前記捩じり力の方向は、凹部12の螺旋の巻き方向とは反対方向である。このため、図1(b)に示すように、第1の直状管体部1Lにおいては、右回りの捩じり力Taが発生するのに対し、第2の直状管体部1Rにおいては、左回りの捩じり力Tbが発生する。したがって、これらの捩じり力Ta,Tbのそれぞれが発生させる回転モーメント、すなわち複数の伝熱管T1とヘッダ2A,2Bとを相対回転させようとする回転モーメントは、相殺または減殺される。とくに、本実施形態においては、第1および第2の直状管体部1L,1Rの数が略同数とされ、かつこれらが縦方向の各列において1つずつ交互に配置されて互いに接近しているために、捩じり力Ta,Tbのそれぞれが発生させる回転モーメントの相殺または減殺がより適切に図られる。
【0034】
このように、この熱交換器HE1においては、ウォータハンマなどの現象が生じても、伝熱管T1とヘッダ2A,2Bとの間にこれらを相対回転させようとする大きな回転モーメントが発生しないようにすることができる。その結果、伝熱管T1とヘッダ2A,2Bとの連結部(ろう付け部分など)やその他の部分に大きな応力が生じることを適切に防止し、これら伝熱管T1やヘッダ2A,2Bの取り付けの安定性、信頼性を高めることができる。
【0035】
図3〜図11は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、先の実施形態と同一または類似の要素には、先の実施形態と同一の符号を付している。
【0036】
図3(a)に示す構成においては、複数の直状管体部1の上下高さ方向に並んだ複数の縦列として、第1の直状管体部1Lのみが並んだ列と、第2の直状管体部1Rのみが並んだ列とがあり、これらの列が横方向に1列ずつ交互に位置している。同図(b)に示す構成においては、第1の直状管体部1Lのみが並んだ縦列と第2の直状管体部1Rのみが並んだ縦列とが、横方向に2列ずつ交互に位置している。同図(c)に示す構成においては、複数の直状管体部1が、第1の直状管体部1Lのみが一纏めに集められた複数の例と、第2の直状管体部1Rのみが一纏めに集められた複数の列とに2分されている。
【0037】
前記したいずれの構成においても、第1および第2の直状管体部1L,1Rのそれぞれにおいて発生する捩じり力Ta,Tbに基づく回転モーメントを好適に相殺または減殺することが可能である。これらの構成から理解されるように、第1および第2の直状管体部1L,1Rの具体的な配列としては、種々の配列とすることができる。この点は、後述するような他の構成の熱交換器HE2〜HE6についても同様である。
【0038】
図4(a)に示す熱交換器HE2においては、各伝熱管T2が、U字管として構成されており、一対の直状管体部1の一端部どうしが曲状管体部4を介して繋がった構成を有し
ている。一対の直状管体部1のそれぞれの他端部は、ヘッダ2Aに連結されている。螺旋状の凹部11および凸部12は、各直状管体部1には設けられているものの、曲状管体部4には設けられていない。また、直状管体部1としては、前記実施形態と同様に、凸部11や凹部12の螺旋の巻き方向が互いに相違する第1および第2の直状管体部1L,1Rの2種類が設けられている。同図(b)に示すように、伝熱管T2が並ぶ方向(同図では横方向)において、第1および第2の直状管体部1L,1Rは、1つずつ交互に位置するように並んでいる。
【0039】
本実施形態によれば、先に述べた実施形態と同様に、第1および第2の直状管体部1L,1Rのそれぞれにおいて発生する捩じり力Ta,Tbに基づく回転モーメントを小さくすることが可能である。各伝熱管T2は、一端部側のみがヘッダ2Aに連結されて拘束され、他端部側が自由端となった片もち状であり、各伝熱管T2とヘッダ2Aとを相対的に回転させようとする大きな回転モーメントが生じた場合には、各伝熱管T2に歪みを生じる虞があるものの、本実施形態では、そのようなことを適切に防止することが可能である。曲状管体部4は、伝熱管T2に曲げ加工を施して形成されるが、この曲状管体部4には、螺旋状の凸部11および凹部12が設けられていないために、前記の曲げ加工を容易に行なうことが可能である。すなわち、本実施形態とは異なり、曲状管体部4として形成される部分に螺旋状の凸部11および凹部12が設けられていたのでは、この部分の剛性が高くなり、曲げ加工が難しくなるが、本実施形態によれば、そのようなことが適切に回避される。
【0040】
図5(a)に示す熱交換器HE3においては、伝熱管T2としての1つのU字管を構成する一対の直状管体部1のうち、一方は、第1の直状管体部1Lとされ、かつ他方は、第2の直状管体部1Rとされている。このような構成によれば、同図(b)に示すように、複数の伝熱管T2が並ぶ横方向において、第1および第2の直状管体部1L,1Rを1つずつ交互に配置させることができることに加え、縦方向において第1および第2の直状管体部1L,1Rどうしを並ばせて接近させることもできる。本実施形態から理解されるように、1つの伝熱管に複数の直状管体部を設ける場合、これら複数の直状管体部に形成される凸部11や凹部12の螺旋の巻き方向は、必ずしも同一方向に揃えられていなくてもよい。
【0041】
図6に示す熱交換器HE4においては、各伝熱管T2の一対の直状管体部1が、2つのヘッダ2B,2Cに個別に連結されている。これら2つのヘッダ2B,2Cは、図4(a)および図5(a)に示したヘッダ2Aを2分割した構成に相当しており、ヘッダ2Bは入水用、ヘッダ2Cは出湯用である。このように、U字管として構成された伝熱管T2の一対の直状管体部1を2つのヘッダ2B,2Cに対して個別に連結した場合においても、図4や図5に示した実施形態と同様な作用が得られる。ヘッダを2分割した構成としてもよいことは、次の図7に示す実施形態についても同様である。
【0042】
図7に示す熱交換器HE5において、各伝熱管T3は、全体が蛇行した形態を有する蛇行管として構成されている。より具体的には、各伝熱管T3は、ヘッダ2Dに一端部が接続された一対の直状管体部1どうしの間に、複数の曲状管体部4a〜4cと、複数の追加の直状管体部5(同図では、一対の直状管体部5)とが設けられた構成である。螺旋状の凸部11および凹部12は、直状管体部1のみならず、追加の直状管体部5にも設けられている。曲状管体部4a〜4cには、凸部11および凹部12は設けられていない。複数の直状管体部1は、各伝熱管T3が並んだ方向(同図では上下高さ方向)において、たとえば第1および第2の直状管体部1L,1Rが1つずつ交互に並んだ配置とされている。
【0043】
本実施形態においては、各伝熱管T3の全長寸法を長くとることが可能であり、全体の伝熱面積を大きくするのに有利となる。加えて、追加の直状管体部5にも直状管体部1と
同様に、螺旋状の凸部11および凹部12が設けられているために、この部分も直状管体部1と同様に伝熱効率が良好な部分となって、高い熱交換効率を得るのにより好ましいものとなる。なお、追加の直状管体部5は、ヘッダ2Dに直接連結されておらず、この追加の直状管体部5において仮に捩じり力が発生しても、ヘッダ2Dと伝熱管T3とを相対的に回転させようとする回転モーメントを生じさせることは殆どない。したがって、追加の直状管体部5に設けられる凸部11および凹部12の螺旋の巻き方向は問わず、この追加の直状管体部5に繋がった直状管体部1に設けられている凸部11および凹部12の巻き方向と同一、非同一のいずれであってもよい。
【0044】
図8に示す熱交換器HE6においては、各伝熱管T4が、平面視長円状の螺旋ループ管体部LOを有するものとして構成されている。より具体的に説明すると、この熱交換器HE6においては、上下に分離して設けられた入水用および出湯用のヘッダ2E,2Fを有しており、複数の直状管体部1としては、下側の入水用のヘッダ2Eに曲管90を介して一端部が連結された複数の下側の直状管体部1と、上側の出湯用のヘッダ2Fに一端部が連結された複数の上側の直状管体部1とがある。
【0045】
各直状管体部1は、ケース3Aの壁部32を貫通しており、この壁部32にろう付けなどの手段を用いて固定されている。したがって、本実施形態においては、ケース3Aが本発明でいう「連結部材」に相当し、直状管体部1において発生した捩じり力は、ケース3Aの壁部30と複数の伝熱管T4とを相対回転させようとする回転モーメントを生じさせる可能性がある。ヘッダ2E,2Fは、ケース3Aの外部に位置しているため、前記した捩じり力は受けない。複数の下側および上側の直状管体部1は、それぞれ略水平方向に1列に並んでいるが、このような配列において、第1および第2の直状管体部1L,1Rは、略水平方向に1つずつ交互に位置するように並んでいる。
【0046】
螺旋ループ管体部LOは、平面視長円状の複数のループ部が一連に繋がって上下高さ方向に積層した構成を有している。前記のループ部は、直状管体部1と同方向に延びて,ケース3Aの前後方向に間隔を隔てて位置する一対の追加の直状管体部5Aと、これら一対の追加の直状管体部5Aの両端部を繋ぐ曲状管体部4e,4fとを有している。複数の伝熱管T4どうしは、螺旋ループ管体部LOの大きさが互いに相違するように構成され、これらの螺旋ループ管体部LOは、略同心状の重ね巻き状となっている。螺旋ループ管体部LOは、その下端部が下側の直状管体部1の一端に繋がり、かつ上端部が上側の直状管体部1の一端に繋がっている。図面では省略しているが、螺旋ループ管体部LOは、ケース3A内において適当な支持部材を用いて支持され、不用意に位置ずれを生じないように設けられている。追加の直状管体部5Aの外面および内面には、直状管体部1と同様に、螺旋状の凸部11や凹部12が形成されている。曲状管体部4d,4eには、凸部11や凹部12は形成されていない。
【0047】
本実施形態においては、各伝熱管T4が螺旋ループ管体部LOを有しているために、全体の嵩張りを抑制しつつ、その全長寸法を長くして伝熱面積をかなり大きくすることができる。したがって、伝熱管T4の総数を少なくして全体の小型化を図りつつ、高い熱交換効率を得るのに、より好ましいものとなる。追加の直状管体部5Aには、螺旋状の凸部11や凹部12が形成されているために、熱交換効率をより高めることが可能である。一方、複数の直状管体部1は、第1および第2の直状管体部1L,1Rが略水平方向に1つずつ交互に並んだ状態で、ケース3Aの壁部32に固定されているために、各伝熱管T4内の圧力が相当に高くなって第1および第2の直状管体部1L,1Rのそれぞれにおいて捩じり力が発生しても、第1の直状管体部1Lにおいて発生する捩じり力に基づく回転モーメントと、第2の直状管体部1Rにおいて発生する捩じり力に基づく回転モーメントとは、やはり互いに相殺され、または減殺される。したがって、複数の伝熱管T4とケース3Aの壁部30とを相対的に回転させようとする回転モーメントの発生は適切に防止または
抑制される。その結果、たとえば伝熱管T4と壁部30とのろう付け箇所やその他の伝熱管4の支持部分に、前記回転モーメントに起因する大きな応力を発生させないようにすることができる。
【0048】
図9に示す熱交換器HE7においては、複数の伝熱管T5のそれぞれが、第1および第2の領域A1,A2に区分され、かつこれらの領域A1,A2が、第1および第2の直状管体部1R,1Lとして形成されている。図10によく表われているように、第1および第2の直状管体部1R,1Lは、伝熱管T5の長手方向略中央部の非螺旋状部10aを挟んで伝熱管T5の長手方向に直列に並んでいる。非螺旋状部10aは、伝熱管T5を製造すべくその原材料パイプに捩じり加工を施す際に、前記原材料パイプをクランプするための部分である。この熱交換器HE7においては、複数の伝熱管T5が全て同じ向き(たとえば、第1の直状管体部1Rが左側に位置し、第2の直状管体部1Lが右側に位置する向き)に揃えられている。図9に示す熱交換器HE7の伝熱管T5以外の構成は、図1に示した熱交換器HE1と同様である。
【0049】
本実施形態においては、給水口21や出湯口22に連通する湯水流通経路(図示略)においてウォータハンマが発生し、各伝熱管T5内の圧力が相当に高くなった場合、各伝熱管T5の第1の直状管体部1Rでは左回りの捩じり力Tcが発生し、第2の直状管体部1Lでは右回りの捩じり力Tdが発生する。各伝熱管T5において、このような2つの捩じり力Tc,Tdが発生すると、これらは互いに相殺または減殺されることとなる。したがって、各伝熱管T5とヘッダ2A,2Bとの連結部分に作用する各伝熱管T5の捩じり力を小さくし、それらの連結部分に大きな応力が生じないようにすることが可能である。
【0050】
図9および図10に示した実施形態から理解されるように、本発明においては、複数の伝熱管として、第1の直状管体部を有するものと第2の直状管体部を有するものとを用いることに代えて、管体長手方向に直列状に並んだ第1および第2の直状管体部を有するものを用いた構成とすることもできる。1本の伝熱管に第1および第2の直状管体部を直列状に並べて設ける場合、その適用対象となる伝熱管は、直線状に延びた伝熱管に限定されない。たとえば、図4〜図8に示したようなU字管、蛇行管、および螺旋状などの伝熱管であっても、その直状部分には第1および第2の直状管体部の双方を適切に設けることが可能である。
【0051】
図11に示す熱交換器HE8は、複数の伝熱管T5の向き(第1および第2の直状管体部1R,1Lの左右の配置)が同一に揃えられておらず、複数の伝熱管T5の配列方向において、第1および第2の直状管体部1R,1Lが交互に位置するように設定されている。このような構成によれば、各伝熱管T5において発生する捩じり力Tc,Tdが互いに相殺または減殺される効果に加えて、互いに隣り合う伝熱管T5からヘッダ2A,2Bに作用する回転モーメントが相殺または減殺される効果も得られることとなる。したがって、各伝熱管T5とヘッダ2A,2Bとの連結部分に生じる応力を減少させる上で、一層好ましいものとなる。
【0052】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る熱交換器の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0053】
上述した実施形態では、伝熱管を、いわゆる直状管、U字管、蛇行管、螺旋ループ管として構成した例を示したが、これ以外の形態のものに形成することができる。伝熱管は、要は、直状管体部を少なくとも一部に有し、かつこの直状管体部の内面に、螺旋状の凹部が形成されていればよい。螺旋状の凹部は、直状管体部の内面の全長域にわたって形成されていなくてもよく、直状管体部の一部分のみに形成されていてもよい。また、螺旋状の凹部は、たとえば切削加工など、転造や捩じり加工以外の手段を用いて形成してもかまわ
ない。伝熱効率を高める観点からすると、直状管体部の外面に螺旋状の凸部を設けることが好ましいものの、この凸部が形成されていない構成とすることもできる。また、螺旋状の凸部に代えて、非螺旋状の単なる円板状などの熱交換用のフィンを、各伝熱管の外面部に設けて、伝熱効率を高めた構成とすることもできる。
【0054】
本発明でいう第1および第2の直状管体部は、要は、それらの内面に形成されている凹部の螺旋の巻き方向が相違していればよい。前記した実施形態とは反対に、凹部の螺旋の巻き方向が右方向のものを第1の直状管体部と称し、左方向のものを第2の直状管体部と称してもよい。第1および第2の直状管体部どうしは、凹部の螺旋の巻き方向以外にも相違点があってもよく、たとえば凹部の数、ピッチ、あるいは全体の管体長さなどの項目において相違点があってもかまわない。本発明でいう連結部材としては、上述した実施形態のように、ヘッダや、伝熱管を囲むケースを具体例として挙げることができるものの、やはりこれらに限定されるものではない。
【0055】
本発明に係る熱交換器は、給湯装置用のものに限定されない。流体の加熱用途に代えて、冷却用途に用いることもできる。したがって、伝熱管の外面に作用させる媒体の種類は問わない。伝熱管内を流通する流体としては、水以外の種々の液体、あるいは気体(水蒸気を含む)を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
HE1〜HE8 熱交換器
T1〜T5 伝熱管
1 直状管体部
1L 第1の直状管体部
1R 第2の直状管体部
2A〜2D ヘッダ(連結部材)
3A ケース(連結部材)
4,4a〜4e 曲状管体部
5,5A 追加の直状管体部
11 螺旋状の凸部
12 螺旋状の凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、水やその他の所望の流体を伝熱管内に流通させて、この流体の加熱または冷却を行なうタイプの熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器を構成する伝熱管としては、内面および外面に螺旋状の凹部および凸部を形成したいわゆる螺旋チューブタイプのものがある(たとえば、特許文献1,2を参照)。このような伝熱管によれば、この伝熱管の外面および内面の表面積(伝熱面積)が大きくなることに加え、伝熱管内を流通する流体や伝熱管の外面に作用する熱交換用媒体に乱流を生じさせて、それらと伝熱管との接触時間を長くとることができる。したがって、伝熱効率を高くするのに好ましい。このような伝熱管を複数本用いる場合には、フィン付きチューブなどの他のタイプの伝熱管と同様に、流体の流入出用のヘッダに連結して用いられる。
【0003】
しかしながら、前記した螺旋チューブタイプの伝熱管に、ヘッダを連結して用いる場合には、次のような不具合が生じることを、本件発明者は発見した。
【0004】
すなわち、伝熱管の内部に連通した流体流通経路において、たとえばウォータハンマが発生し、伝熱管内の圧力が相当に高くなったときには、伝熱管に捩じり力(伝熱管の長手方向に延びる中心軸を中心とするトルク)が発生する。この現象は、伝熱管の内面に形成されている凹部が螺旋状であることに起因して生じる。前記捩じり力の方向は、前記凹部の螺旋の巻き方向とは反対の方向であり、伝熱管内における流体流通方向とは無関係である。伝熱管にヘッダが固定して連結されている場合、前記した伝熱管の捩じり力は、ヘッダを回転させる回転モーメントを発生させる場合がある。この場合、前記回転モーメントは、その反作用として、ヘッダが伝熱管を回転させる力としても働く。このような力は、伝熱管の本数が多くなるほど、大きくなる。ヘッダと伝熱管との間に前記した回転モーメントが発生することは、ヘッダや伝熱管の取り付け箇所に不必要な応力を生じさせるといった要因となり、これらヘッダや伝熱管の取り付けの安定性や信頼性を高める観点からすると、好ましいものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4082058号公報
【特許文献2】特開平9−310991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであって、いわゆる螺旋チューブタイプの伝熱管内の圧力が高くなった際に、伝熱管とこの伝熱管に連結されたヘッダなどの連結部材との間に回転モーメントが発生する現象を、適切に防止または抑制し、伝熱管や連結部材の取り付けの安定性や信頼性を高めることが可能な熱交換器を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供される熱交換器は、複数の伝熱管と、これら複数の伝熱管に固定して
連結された連結部材と、を備えており、前記複数の伝熱管は、前記連結部材との連結位置から略同一方向に延びた複数の直状管体部を有し、かつこれら複数の直状管体部の内面には、螺旋状の凹部が形成されている、熱交換器であって、前記複数の直状管体部として、第1および第2の直状管体部が設けられており、これら第1および第2の直状管体部は、前記凹部の螺旋の巻き方向が互いに相違していることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、伝熱管内の圧力が高くなって複数の直状管体部において捩じり力が発生しても、第1および第2の直状管体部のそれぞれにおいて発生する捩じり力の方向は、互いに反対となる。したがって、これらの捩じり力が発生させる回転モーメントは、相殺または減殺されることとなって、伝熱管と連結部材との間に大きな回転モーメントを生じないようにすることができる。その結果、前記回転モーメントに起因して伝熱管や連結部材の取り付け箇所に大きな応力が生じるといったことが回避され、それらの取り付けの安定性や信頼性を高めることが可能である。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記複数の伝熱管として、前記第1の直状管体部を有する伝熱管と、前記第2の直状管体部を有する伝熱管とが設けられている。
【0011】
このような構成によれば、第1の直状管体部を有する伝熱管と、第2の直状管体部を有する伝熱管とを組み合わせて、本発明が意図する熱交換器の構成を容易に実現することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記第1および第2の直状管体部のそれぞれの数は、略同一とされている。
【0013】
このような構成によれば、第1および第2の直状管体部のそれぞれにおいて発生する捩じり力の大きさを均衡させ易くなり、伝熱管と連結部材との間に発生する回転モーメントを小さくするのに、より好ましいものとなる。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記複数の直状管体部は、1または複数の列に並んでおり、かつこれらの各列において、前記第1および第2の直状管体部は、1つずつ交互に位置するように並んでいる。
【0015】
このような構成によれば、第1および第2の直状管体部どうしを互いに接近させることができる。このため、第1の直状管体部周りに発生する回転モーメントを、第2の直状管体部周りに発生する回転モーメントによって相殺または減殺されることが効率良く行なわれる。したがって、伝熱管と連結部材との間に発生する回転モーメントを小さくするのに一層好ましい。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記複数の伝熱管の全部または一部は、前記第1および第2の直状管体部の双方を有し、かつこれら第1および第2の直状管体部が管体長手方向に直列状に並んだ構成とされている。
【0017】
このような構成によれば、各伝熱管の第1の直状管体部において発生する捩じり力を、第2の直状管体部において発生する捩じり力によって相殺または減殺することが可能であり、各伝熱管から連結部材に対して大きな捩じり力が作用することを抑制することが可能である。したがって、伝熱管と連結部材との連結箇所などに発生する応力を減少させる上で、より好ましい。
【0018】
本発明において、好ましくは、前記各直状管体部の外面には、螺旋状の凸部が形成されている。
【0019】
このような構成によれば、各伝熱管の伝熱面積を大きくし、伝熱効率を一層高めるのに好適となる。
【0020】
本発明において、好ましくは、前記各伝熱管は、前記各直状管体部に対して曲状管体部を介して繋がった追加の直状管体部をさらに有しており、この追加の直状管体部の内面および外面にも、螺旋状の凹部および凸部が形成されている。
【0021】
このような構成によれば、追加の直状管体部が設けられていることによって伝熱管の伝熱面積の拡大が図られるばかりか、この追加の直状管体部に形成された螺旋状の凹部および凸部の存在によって伝熱面積のさらなる拡大が図られる。したがって、伝熱管の総数を少なくして全体の大型化を抑制しつつ、高い熱交換効率を得るのに一層好適となる。
【0022】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は、本発明に係る熱交換器の一例を示す平面断面図であり、(b)は、(a)のI−I断面説明図である。
【図2】(a)は、図1に示す熱交換器において用いられている伝熱管の例を示す一部省略正面図であり、(b)は、(a)のA部拡大断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、図1に示す熱交換器における第1および第2の直状管体部の他の配列例を示す断面説明図である。
【図4】(a)は、本発明に係る熱交換器の他の例を示す斜視図であり、(b)は、(a)のIV−IV断面説明図である。
【図5】(a)は、本発明に係る熱交換器の他の例を示す斜視図であり、(b)は、(a)のV−V断面説明図である。
【図6】本発明に係る熱交換器の他の例を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る熱交換器の他の例を示す斜視図である。
【図8】(a)は、本発明に係る熱交換器の他の例を示す平面断面図であり、(b)は、(a)のVIII−VIII断面図である。
【図9】本発明に係る熱交換器の他の例を示す平面断面図である。
【図10】図9に示す熱交換器において用いられている伝熱管の例を示す一部省略正面図である。
【図11】本発明に係る熱交換器の他の例を示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0025】
図1および図2は、本発明が適用された熱交換器の一例を示している。
本実施形態の熱交換器HE1は、たとえば給湯装置の構成部品として用いられて、給湯用の湯水加熱を行なうためのものであり、複数の伝熱管T1、一対のヘッダ2A,2B、およびこれらを内部に収容するケース3を備えている。この熱交換器HE1は、複数の伝熱管T1の構成に特徴があり、これ以外の熱交換器HE1の全体的な基本構造は、従来既知のものと同様である。したがって、複数の伝熱管T1の構成以外の説明は簡単なものとする。
【0026】
ケース3は、各伝熱管T1に作用させる加熱用媒体の流入口30および排出口31を有している。加熱用媒体としては、たとえば燃焼装置(図示略)によって発生された燃焼ガスが用いられる。一対のヘッダ2A,2Bは、本発明でいう「連結部材」の一例に相当し
、各伝熱管T1への湯水の流出入を行なわせるとともに、各伝熱管T1を支持する役割を果たす。各伝熱管T1の両端部10は、一対のヘッダ2A,2Bの壁部に対して、ろう付け、あるいは溶接などの手段により固定して連結されている。ヘッダ2Aの内部には、給水口21に繋がった入水用のチャンバ20aと、出湯口22に繋がった出湯用のチャンバ20bとが形成されており、ヘッダ2Bの内部には、湯水戻し用のチャンバ20cが形成されている。給水口21から入水用のチャンバ20aに給水がなされると、この水は、流入口30寄りの複数の伝熱管T1を通過して湯水戻し用のチャンバ20cに到り、その後はこのチャンバ20cから排出口31寄りの複数の伝熱管T1を通過して出湯用のチャンバ20bに流入する。このような過程において、前記の水は、ケース3内に供給されてくる加熱用媒体によって加熱されて、温水の生成がなされ、この温水は出湯口22から所定の箇所に供給される。
【0027】
各伝熱管T1は、たとえばステンレスや銅などの金属製であり、一定方向に延びた直管状である。すなわち、本実施形態においては、各伝熱管T1の全体が、直状管体部1となっている。図2によく表われているように、直状管体部1のうち、両端部10を除く略全長域の外面には、螺旋状の凸部11が形成されているとともに、内面には、螺旋状の凹部12が形成されている。凸部11どうしの間は螺旋状の凹部となっており、凹部12どうしの間は螺旋状の凸部となっている。図2には、螺旋状の凸部11および凹部12が、4条ネジなどの多条ネジの形態とされた例が示されている。凸部11および凹部12を、多条ネジの形態にすると、凸部11および凹部12を密に設けることが容易となる。ただし、これに限定されず、凸部11および凹部12を単条ネジの形態とすることもできる。
【0028】
複数の直状管体部1としては、第1および第2の直状管体部1(1L,1R)の2種類が設けられている。第1の直状管体部1Lは、螺旋状の凸部11および凹部12が左ネジ(左回りで前進するネジ)と同様な巻き方向とされたものであり、図2(a)に示されたものがこれに該当する。これに対し、第2の直状管体部1Rは、螺旋状の凸部11および凹部12が右ネジ(右回りで前進するネジ)と同様な巻き方向とされたものである。複数の伝熱管T1としては、第1の直状管体部1Lを有するものと、第2の直状管体部1Rを有するものとの2種類がある。なお、図1においては、螺旋状の凸部11を、実線の斜線を用いて簡略的に示している。螺旋状の凹部12は、凸部11の裏面側に形成されている。このような点は、後述する他の実施形態の図面においても同様である。
【0029】
前記したような螺旋状の凸部11および凹部12は、伝熱管T1の原材料となる金属製チューブに、転造処理を施すことにより形成することが可能である。転造処理によれば、金属製チューブの外面に雄ネジ状の凸部11を形成する際に、雌ネジ状の凹部を前記金属製のチューブの内面に同時に形成することができる。また、転造処理を終えたチューブに、捩じり加工をさらに施すと、螺旋状の凸部11および凹部12のそれぞれのピッチを狭めることができ、伝熱管T1の表面積を大きくするのにより有利となる。
【0030】
複数の直状管体部1は、互いに略平行となるように並んでおり、第1および第2の直状管体部1L,1Rは、たとえば図1(b)に示すような配列となっている。同図において、第1の直状管体部1Lには「L」、第2の直状管体部1Rには「R」の符号を付している。この点は、図3などの他の図においても同様である。第1および第2の直状管体部1L,1Rは、たとえば千鳥配列とされており、その縦列(上下高さ方向の列であり、図面では8列とされている)のそれぞれにおいては、第1および第2の直状管体部1L,1Rが、1つずつ交互に位置するように並んでいる。なお、本実施形態とは異なり、複数の直状管体部1を縦横にマトリクス状に並べる場合には、第1および第2の直状管体部1L,1Rは、縦方向の列に加えて、横方向の列においても、1つずつ交互に並ぶ配置とされることが好ましい。第1および第2の直状管体部1L,1Rのそれぞれの総数は、略同数(同数を含む)である。
【0031】
次に、前記した熱交換器HE1の作用について説明する。
【0032】
湯水加熱を行なう場合には、流入口30からケース3内に加熱用媒体を流入させるとともに、給水口21に給水を行なって各伝熱管T1内に水を流通させる。各伝熱管T1の外面および内面には、螺旋状の凸部11および凹部12が形成されているために、背景技術の欄において述べたのと同様に、伝熱管T1の伝熱面積を大きくし、また加熱用媒体や水を乱流としてこれらと伝熱管T1との接触時間を長くとることが可能となり、伝熱効率が良くなる。
【0033】
給水口21や出湯口22に連通する湯水流通経路(図示略)において、たとえばウォータハンマが発生し、各伝熱管T1内の圧力が相当に高くなった場合には、各直状管体部1において捩じり力が発生する。これは、既述したとおり、各直状管体部1の内面に螺旋状の凹部12が形成されていることに起因する。また、前記捩じり力の方向は、凹部12の螺旋の巻き方向とは反対方向である。このため、図1(b)に示すように、第1の直状管体部1Lにおいては、右回りの捩じり力Taが発生するのに対し、第2の直状管体部1Rにおいては、左回りの捩じり力Tbが発生する。したがって、これらの捩じり力Ta,Tbのそれぞれが発生させる回転モーメント、すなわち複数の伝熱管T1とヘッダ2A,2Bとを相対回転させようとする回転モーメントは、相殺または減殺される。とくに、本実施形態においては、第1および第2の直状管体部1L,1Rの数が略同数とされ、かつこれらが縦方向の各列において1つずつ交互に配置されて互いに接近しているために、捩じり力Ta,Tbのそれぞれが発生させる回転モーメントの相殺または減殺がより適切に図られる。
【0034】
このように、この熱交換器HE1においては、ウォータハンマなどの現象が生じても、伝熱管T1とヘッダ2A,2Bとの間にこれらを相対回転させようとする大きな回転モーメントが発生しないようにすることができる。その結果、伝熱管T1とヘッダ2A,2Bとの連結部(ろう付け部分など)やその他の部分に大きな応力が生じることを適切に防止し、これら伝熱管T1やヘッダ2A,2Bの取り付けの安定性、信頼性を高めることができる。
【0035】
図3〜図11は、本発明の他の実施形態を示している。これらの図において、先の実施形態と同一または類似の要素には、先の実施形態と同一の符号を付している。
【0036】
図3(a)に示す構成においては、複数の直状管体部1の上下高さ方向に並んだ複数の縦列として、第1の直状管体部1Lのみが並んだ列と、第2の直状管体部1Rのみが並んだ列とがあり、これらの列が横方向に1列ずつ交互に位置している。同図(b)に示す構成においては、第1の直状管体部1Lのみが並んだ縦列と第2の直状管体部1Rのみが並んだ縦列とが、横方向に2列ずつ交互に位置している。同図(c)に示す構成においては、複数の直状管体部1が、第1の直状管体部1Lのみが一纏めに集められた複数の例と、第2の直状管体部1Rのみが一纏めに集められた複数の列とに2分されている。
【0037】
前記したいずれの構成においても、第1および第2の直状管体部1L,1Rのそれぞれにおいて発生する捩じり力Ta,Tbに基づく回転モーメントを好適に相殺または減殺することが可能である。これらの構成から理解されるように、第1および第2の直状管体部1L,1Rの具体的な配列としては、種々の配列とすることができる。この点は、後述するような他の構成の熱交換器HE2〜HE6についても同様である。
【0038】
図4(a)に示す熱交換器HE2においては、各伝熱管T2が、U字管として構成されており、一対の直状管体部1の一端部どうしが曲状管体部4を介して繋がった構成を有し
ている。一対の直状管体部1のそれぞれの他端部は、ヘッダ2Aに連結されている。螺旋状の凹部11および凸部12は、各直状管体部1には設けられているものの、曲状管体部4には設けられていない。また、直状管体部1としては、前記実施形態と同様に、凸部11や凹部12の螺旋の巻き方向が互いに相違する第1および第2の直状管体部1L,1Rの2種類が設けられている。同図(b)に示すように、伝熱管T2が並ぶ方向(同図では横方向)において、第1および第2の直状管体部1L,1Rは、1つずつ交互に位置するように並んでいる。
【0039】
本実施形態によれば、先に述べた実施形態と同様に、第1および第2の直状管体部1L,1Rのそれぞれにおいて発生する捩じり力Ta,Tbに基づく回転モーメントを小さくすることが可能である。各伝熱管T2は、一端部側のみがヘッダ2Aに連結されて拘束され、他端部側が自由端となった片もち状であり、各伝熱管T2とヘッダ2Aとを相対的に回転させようとする大きな回転モーメントが生じた場合には、各伝熱管T2に歪みを生じる虞があるものの、本実施形態では、そのようなことを適切に防止することが可能である。曲状管体部4は、伝熱管T2に曲げ加工を施して形成されるが、この曲状管体部4には、螺旋状の凸部11および凹部12が設けられていないために、前記の曲げ加工を容易に行なうことが可能である。すなわち、本実施形態とは異なり、曲状管体部4として形成される部分に螺旋状の凸部11および凹部12が設けられていたのでは、この部分の剛性が高くなり、曲げ加工が難しくなるが、本実施形態によれば、そのようなことが適切に回避される。
【0040】
図5(a)に示す熱交換器HE3においては、伝熱管T2としての1つのU字管を構成する一対の直状管体部1のうち、一方は、第1の直状管体部1Lとされ、かつ他方は、第2の直状管体部1Rとされている。このような構成によれば、同図(b)に示すように、複数の伝熱管T2が並ぶ横方向において、第1および第2の直状管体部1L,1Rを1つずつ交互に配置させることができることに加え、縦方向において第1および第2の直状管体部1L,1Rどうしを並ばせて接近させることもできる。本実施形態から理解されるように、1つの伝熱管に複数の直状管体部を設ける場合、これら複数の直状管体部に形成される凸部11や凹部12の螺旋の巻き方向は、必ずしも同一方向に揃えられていなくてもよい。
【0041】
図6に示す熱交換器HE4においては、各伝熱管T2の一対の直状管体部1が、2つのヘッダ2B,2Cに個別に連結されている。これら2つのヘッダ2B,2Cは、図4(a)および図5(a)に示したヘッダ2Aを2分割した構成に相当しており、ヘッダ2Bは入水用、ヘッダ2Cは出湯用である。このように、U字管として構成された伝熱管T2の一対の直状管体部1を2つのヘッダ2B,2Cに対して個別に連結した場合においても、図4や図5に示した実施形態と同様な作用が得られる。ヘッダを2分割した構成としてもよいことは、次の図7に示す実施形態についても同様である。
【0042】
図7に示す熱交換器HE5において、各伝熱管T3は、全体が蛇行した形態を有する蛇行管として構成されている。より具体的には、各伝熱管T3は、ヘッダ2Dに一端部が接続された一対の直状管体部1どうしの間に、複数の曲状管体部4a〜4cと、複数の追加の直状管体部5(同図では、一対の直状管体部5)とが設けられた構成である。螺旋状の凸部11および凹部12は、直状管体部1のみならず、追加の直状管体部5にも設けられている。曲状管体部4a〜4cには、凸部11および凹部12は設けられていない。複数の直状管体部1は、各伝熱管T3が並んだ方向(同図では上下高さ方向)において、たとえば第1および第2の直状管体部1L,1Rが1つずつ交互に並んだ配置とされている。
【0043】
本実施形態においては、各伝熱管T3の全長寸法を長くとることが可能であり、全体の伝熱面積を大きくするのに有利となる。加えて、追加の直状管体部5にも直状管体部1と
同様に、螺旋状の凸部11および凹部12が設けられているために、この部分も直状管体部1と同様に伝熱効率が良好な部分となって、高い熱交換効率を得るのにより好ましいものとなる。なお、追加の直状管体部5は、ヘッダ2Dに直接連結されておらず、この追加の直状管体部5において仮に捩じり力が発生しても、ヘッダ2Dと伝熱管T3とを相対的に回転させようとする回転モーメントを生じさせることは殆どない。したがって、追加の直状管体部5に設けられる凸部11および凹部12の螺旋の巻き方向は問わず、この追加の直状管体部5に繋がった直状管体部1に設けられている凸部11および凹部12の巻き方向と同一、非同一のいずれであってもよい。
【0044】
図8に示す熱交換器HE6においては、各伝熱管T4が、平面視長円状の螺旋ループ管体部LOを有するものとして構成されている。より具体的に説明すると、この熱交換器HE6においては、上下に分離して設けられた入水用および出湯用のヘッダ2E,2Fを有しており、複数の直状管体部1としては、下側の入水用のヘッダ2Eに曲管90を介して一端部が連結された複数の下側の直状管体部1と、上側の出湯用のヘッダ2Fに一端部が連結された複数の上側の直状管体部1とがある。
【0045】
各直状管体部1は、ケース3Aの壁部32を貫通しており、この壁部32にろう付けなどの手段を用いて固定されている。したがって、本実施形態においては、ケース3Aが本発明でいう「連結部材」に相当し、直状管体部1において発生した捩じり力は、ケース3Aの壁部30と複数の伝熱管T4とを相対回転させようとする回転モーメントを生じさせる可能性がある。ヘッダ2E,2Fは、ケース3Aの外部に位置しているため、前記した捩じり力は受けない。複数の下側および上側の直状管体部1は、それぞれ略水平方向に1列に並んでいるが、このような配列において、第1および第2の直状管体部1L,1Rは、略水平方向に1つずつ交互に位置するように並んでいる。
【0046】
螺旋ループ管体部LOは、平面視長円状の複数のループ部が一連に繋がって上下高さ方向に積層した構成を有している。前記のループ部は、直状管体部1と同方向に延びて,ケース3Aの前後方向に間隔を隔てて位置する一対の追加の直状管体部5Aと、これら一対の追加の直状管体部5Aの両端部を繋ぐ曲状管体部4e,4fとを有している。複数の伝熱管T4どうしは、螺旋ループ管体部LOの大きさが互いに相違するように構成され、これらの螺旋ループ管体部LOは、略同心状の重ね巻き状となっている。螺旋ループ管体部LOは、その下端部が下側の直状管体部1の一端に繋がり、かつ上端部が上側の直状管体部1の一端に繋がっている。図面では省略しているが、螺旋ループ管体部LOは、ケース3A内において適当な支持部材を用いて支持され、不用意に位置ずれを生じないように設けられている。追加の直状管体部5Aの外面および内面には、直状管体部1と同様に、螺旋状の凸部11や凹部12が形成されている。曲状管体部4d,4eには、凸部11や凹部12は形成されていない。
【0047】
本実施形態においては、各伝熱管T4が螺旋ループ管体部LOを有しているために、全体の嵩張りを抑制しつつ、その全長寸法を長くして伝熱面積をかなり大きくすることができる。したがって、伝熱管T4の総数を少なくして全体の小型化を図りつつ、高い熱交換効率を得るのに、より好ましいものとなる。追加の直状管体部5Aには、螺旋状の凸部11や凹部12が形成されているために、熱交換効率をより高めることが可能である。一方、複数の直状管体部1は、第1および第2の直状管体部1L,1Rが略水平方向に1つずつ交互に並んだ状態で、ケース3Aの壁部32に固定されているために、各伝熱管T4内の圧力が相当に高くなって第1および第2の直状管体部1L,1Rのそれぞれにおいて捩じり力が発生しても、第1の直状管体部1Lにおいて発生する捩じり力に基づく回転モーメントと、第2の直状管体部1Rにおいて発生する捩じり力に基づく回転モーメントとは、やはり互いに相殺され、または減殺される。したがって、複数の伝熱管T4とケース3Aの壁部30とを相対的に回転させようとする回転モーメントの発生は適切に防止または
抑制される。その結果、たとえば伝熱管T4と壁部30とのろう付け箇所やその他の伝熱管4の支持部分に、前記回転モーメントに起因する大きな応力を発生させないようにすることができる。
【0048】
図9に示す熱交換器HE7においては、複数の伝熱管T5のそれぞれが、第1および第2の領域A1,A2に区分され、かつこれらの領域A1,A2が、第1および第2の直状管体部1R,1Lとして形成されている。図10によく表われているように、第1および第2の直状管体部1R,1Lは、伝熱管T5の長手方向略中央部の非螺旋状部10aを挟んで伝熱管T5の長手方向に直列に並んでいる。非螺旋状部10aは、伝熱管T5を製造すべくその原材料パイプに捩じり加工を施す際に、前記原材料パイプをクランプするための部分である。この熱交換器HE7においては、複数の伝熱管T5が全て同じ向き(たとえば、第1の直状管体部1Rが左側に位置し、第2の直状管体部1Lが右側に位置する向き)に揃えられている。図9に示す熱交換器HE7の伝熱管T5以外の構成は、図1に示した熱交換器HE1と同様である。
【0049】
本実施形態においては、給水口21や出湯口22に連通する湯水流通経路(図示略)においてウォータハンマが発生し、各伝熱管T5内の圧力が相当に高くなった場合、各伝熱管T5の第1の直状管体部1Rでは左回りの捩じり力Tcが発生し、第2の直状管体部1Lでは右回りの捩じり力Tdが発生する。各伝熱管T5において、このような2つの捩じり力Tc,Tdが発生すると、これらは互いに相殺または減殺されることとなる。したがって、各伝熱管T5とヘッダ2A,2Bとの連結部分に作用する各伝熱管T5の捩じり力を小さくし、それらの連結部分に大きな応力が生じないようにすることが可能である。
【0050】
図9および図10に示した実施形態から理解されるように、本発明においては、複数の伝熱管として、第1の直状管体部を有するものと第2の直状管体部を有するものとを用いることに代えて、管体長手方向に直列状に並んだ第1および第2の直状管体部を有するものを用いた構成とすることもできる。1本の伝熱管に第1および第2の直状管体部を直列状に並べて設ける場合、その適用対象となる伝熱管は、直線状に延びた伝熱管に限定されない。たとえば、図4〜図8に示したようなU字管、蛇行管、および螺旋状などの伝熱管であっても、その直状部分には第1および第2の直状管体部の双方を適切に設けることが可能である。
【0051】
図11に示す熱交換器HE8は、複数の伝熱管T5の向き(第1および第2の直状管体部1R,1Lの左右の配置)が同一に揃えられておらず、複数の伝熱管T5の配列方向において、第1および第2の直状管体部1R,1Lが交互に位置するように設定されている。このような構成によれば、各伝熱管T5において発生する捩じり力Tc,Tdが互いに相殺または減殺される効果に加えて、互いに隣り合う伝熱管T5からヘッダ2A,2Bに作用する回転モーメントが相殺または減殺される効果も得られることとなる。したがって、各伝熱管T5とヘッダ2A,2Bとの連結部分に生じる応力を減少させる上で、一層好ましいものとなる。
【0052】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る熱交換器の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0053】
上述した実施形態では、伝熱管を、いわゆる直状管、U字管、蛇行管、螺旋ループ管として構成した例を示したが、これ以外の形態のものに形成することができる。伝熱管は、要は、直状管体部を少なくとも一部に有し、かつこの直状管体部の内面に、螺旋状の凹部が形成されていればよい。螺旋状の凹部は、直状管体部の内面の全長域にわたって形成されていなくてもよく、直状管体部の一部分のみに形成されていてもよい。また、螺旋状の凹部は、たとえば切削加工など、転造や捩じり加工以外の手段を用いて形成してもかまわ
ない。伝熱効率を高める観点からすると、直状管体部の外面に螺旋状の凸部を設けることが好ましいものの、この凸部が形成されていない構成とすることもできる。また、螺旋状の凸部に代えて、非螺旋状の単なる円板状などの熱交換用のフィンを、各伝熱管の外面部に設けて、伝熱効率を高めた構成とすることもできる。
【0054】
本発明でいう第1および第2の直状管体部は、要は、それらの内面に形成されている凹部の螺旋の巻き方向が相違していればよい。前記した実施形態とは反対に、凹部の螺旋の巻き方向が右方向のものを第1の直状管体部と称し、左方向のものを第2の直状管体部と称してもよい。第1および第2の直状管体部どうしは、凹部の螺旋の巻き方向以外にも相違点があってもよく、たとえば凹部の数、ピッチ、あるいは全体の管体長さなどの項目において相違点があってもかまわない。本発明でいう連結部材としては、上述した実施形態のように、ヘッダや、伝熱管を囲むケースを具体例として挙げることができるものの、やはりこれらに限定されるものではない。
【0055】
本発明に係る熱交換器は、給湯装置用のものに限定されない。流体の加熱用途に代えて、冷却用途に用いることもできる。したがって、伝熱管の外面に作用させる媒体の種類は問わない。伝熱管内を流通する流体としては、水以外の種々の液体、あるいは気体(水蒸気を含む)を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
HE1〜HE8 熱交換器
T1〜T5 伝熱管
1 直状管体部
1L 第1の直状管体部
1R 第2の直状管体部
2A〜2D ヘッダ(連結部材)
3A ケース(連結部材)
4,4a〜4e 曲状管体部
5,5A 追加の直状管体部
11 螺旋状の凸部
12 螺旋状の凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の伝熱管と、これら複数の伝熱管に固定して連結された連結部材と、を備えており、
前記複数の伝熱管は、前記連結部材との連結位置から略同一方向に延びた複数の直状管体部を有し、かつこれら複数の直状管体部の内面には、螺旋状の凹部が形成されている、熱交換器であって、
前記複数の直状管体部として、第1および第2の直状管体部が設けられており、これら第1および第2の直状管体部は、前記凹部の螺旋の巻き方向が互いに相違していることを特徴とする、熱交換器。
【請求項2】
前記複数の伝熱管として、前記第1の直状管体部を有する伝熱管と、前記第2の直状管体部を有する伝熱管とが設けられている、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記第1および第2の直状管体部のそれぞれの数は、略同一とされている、請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記複数の直状管体部は、1または複数の列に並んでおり、かつこれらの各列において、前記第1および第2の直状管体部は、1つずつ交互に位置するように並んでいる、請求項3に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記複数の伝熱管の全部または一部は、前記第1および第2の直状管体部の双方を有し、かつこれら第1および第2の直状管体部が管体長手方向に直列状に並んだ構成とされている、請求項1ないし4のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項6】
前記各直状管体部の外面には、螺旋状の凸部が形成されている、請求項1ないし5のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項7】
前記各伝熱管は、前記各直状管体部に対して曲状管体部を介して繋がった追加の直状管体部をさらに有しており、
この追加の直状管体部の内面および外面にも、螺旋状の凹部および凸部が形成されている、請求項1ないし6のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項1】
複数の伝熱管と、これら複数の伝熱管に固定して連結された連結部材と、を備えており、
前記複数の伝熱管は、前記連結部材との連結位置から略同一方向に延びた複数の直状管体部を有し、かつこれら複数の直状管体部の内面には、螺旋状の凹部が形成されている、熱交換器であって、
前記複数の直状管体部として、第1および第2の直状管体部が設けられており、これら第1および第2の直状管体部は、前記凹部の螺旋の巻き方向が互いに相違していることを特徴とする、熱交換器。
【請求項2】
前記複数の伝熱管として、前記第1の直状管体部を有する伝熱管と、前記第2の直状管体部を有する伝熱管とが設けられている、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記第1および第2の直状管体部のそれぞれの数は、略同一とされている、請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記複数の直状管体部は、1または複数の列に並んでおり、かつこれらの各列において、前記第1および第2の直状管体部は、1つずつ交互に位置するように並んでいる、請求項3に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記複数の伝熱管の全部または一部は、前記第1および第2の直状管体部の双方を有し、かつこれら第1および第2の直状管体部が管体長手方向に直列状に並んだ構成とされている、請求項1ないし4のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項6】
前記各直状管体部の外面には、螺旋状の凸部が形成されている、請求項1ないし5のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項7】
前記各伝熱管は、前記各直状管体部に対して曲状管体部を介して繋がった追加の直状管体部をさらに有しており、
この追加の直状管体部の内面および外面にも、螺旋状の凹部および凸部が形成されている、請求項1ないし6のいずれかに記載の熱交換器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−226763(P2011−226763A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13047(P2011−13047)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】
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