説明

熱交換器

【課題】熱交換器要素と一体化された入口配管及び出口配管がハウジングを貫通する熱交換器において、熱交換要素が加熱・冷却により膨張・収縮をしたときのハウジングの破損を抑制することを目的とする。
【解決手段】チューブ17に接続され、チューブ17において加熱される熱媒体が流入する入口ヘッダ22と、チューブ17に接続され、チューブ17において加熱された熱媒体が流出される出口ヘッダ23と、熱媒体が入口ヘッダ22に向けて流れる入口配管22aと、熱媒体が出口ヘッダ23から外部に向けて流れる出口配管23aと、チューブ17を流れる熱媒体を加熱するPTCヒータ18と、を有する。入口配管22a及び出口配管23aは、下部ハウジング11bにその周囲が封止されている。また、下部ハウジング11bは、入口配管22aと出口配管23aの間に、下壁112の面外方向へ突出する蛇腹状断面部113を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばPTCヒータを用いて熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置に適用される熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、ハイブリッド車などに適用される車両用空調装置において、暖房用の熱源となる非加熱媒体を加熱する熱媒体加熱装置として、正特性サーミスタ素子(Positive Temperature Coefficient,以下、PTC素子)を発熱要素として用いるPTCヒータが知られている。PTCヒータは、温度の上昇とともに抵抗値が上昇し、これによって消費電流が制御されるとともに温度上昇が緩やかになり、その後、消費電流及び発熱部の温度が飽和領域に達して安定するものであり、自己温度制御特性を備えている。
【0003】
PTCヒータを用いた熱媒体加熱装置として、例えば、特許文献1〜特許文献3に開示されるものが知られている。これらはいずれも、流通路を流れる熱媒体がPTCヒータで発生した熱の伝達を受けて熱媒体が加熱される点で共通しているが、具体的にはいくつかの形態に分かれる。
例えば、特許文献1のように、熱媒体の入口及び出口を供えるハウジングの内部に複数のPTCヒータエレメントを独立して配置する装置(タイプ1)がある。このタイプ1による熱媒体加熱装置は、入口から流入した熱媒体はPTCヒータエレメントの周囲を流れながら加熱され、出口から外部に流出する。
この他のタイプとして、特許文献2、3のように、内部を熱媒体が流れるチューブにPTCヒータを密着させる装置(タイプ2)もある。このタイプ2による熱媒体加熱装置は、加熱される熱媒体をチューブに運ぶ入口配管及び加熱された熱媒体をチューブから外部に向けて運ぶ出口配管が、チューブを含む熱交換器要素と一体的に組み付けられている。そして、この形態は、ハウジング内にチューブを含む熱交換器要素を収納するとともに、所定の間隔を設けて配置されている入口配管及び出口配管がハウジングを貫通し、かつその周囲がハウジングに封止されている。熱交換要素から漏れた熱媒体が外部に漏れるのを阻止するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−109137号公報
【特許文献2】特開2009−142000号公報
【特許文献3】特許第4052197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タイプ1による熱媒体加熱装置は、ハウジングの内部であってPTCヒータエレメントの周囲を熱媒体が流れ、外部に流出する構造である。したがって、PTCヒータエレメントが加熱・冷却により膨張・収縮したとしても、その熱変形がハウジングに影響を及ぼすことはない。
これに対してタイプ2による熱媒体加熱装置は、チューブを含む熱交換器要素と一体化された入口配管及び出口配管の周囲がハウジングに密に封止されている。したがって、PTCヒータにより熱交換器要素が加熱され膨張すると、入口配管及び出口配管はその間隔が拡がるように位置が移動する。通常、ハウジングは、PTCヒータと離間しているので、PTCヒータによる熱の影響を受けにくい。そのために、ハウジングに入口配管及び出口配管が干渉し、ハウジングを破損するおそれがある。特に、コスト削減の観点から、ハウジングを樹脂で形成する場合には、一般的にアルミニウム合金から形成される入口配管及び出口配管に比べてハウジングの強度が低くなるため、破損のおそれが大きい。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、熱交換器要素と一体化された入口配管及び出口配管の周囲がハウジングにより封止されている熱交換器において、熱交換要素が加熱・冷却により膨張・収縮をしたときのハウジングの破損を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、熱交換器要素と同じ材料でハウジングを形成すれば、入口配管及び出口配管とハウジングの干渉を低減することができる。また、ハウジングの剛性を高くすることで、ハウジングの破損を抑制することもできる。
しかし、熱交換器要素と同じ材料、つまりアルミニウム合金等の金属材料でハウジングを形成すれば、熱媒体加熱装置の製造コストをあげる要因になる。また、ハウジングの剛性を高くすることでハウジングの破損を短期的には防ぐことはできるが、PTCヒータによる加熱が行われている間、入口配管及び出口配管とハウジングの間には熱応力が付与されるので、疲労による入口配管及び出口配管又はハウジングの破損が懸念される。
【0007】
そこで本発明は、入口配管及び出口配管の熱変形にともなって、ハウジングの中で変形が生ずる領域の剛性を他の領域に比べてあえて弱くすることを提案する。
本発明の熱交換器は、熱交換器要素と、熱交換器要素を収容するハウジングと、を備える。
熱交換器要素は、熱媒体が内部を流れる単数又は複数の熱交換用管体と、入口ヘッダと、出口ヘッダと、を備える。入口ヘッダ及び出口ヘッダは、各々、熱交換用管体に接続され、熱交換用管体において加熱される熱媒体が入口ヘッダから流入し、熱交換用管体で加熱された熱媒体が、出口ヘッダから流出する。また、入口ヘッダには熱媒体が熱交換用管体に向けて流れる入口配管が接続され、出口ヘッダには熱媒体が外部に向けて流れる出口配管が接続される。
熱交換器要素は、また、熱交換用管体を流れる熱媒体を加熱する加熱源を備える。
本発明の熱交換器における入口配管及び出口配管は、各々、その周囲がハウジングにより封止されている。
そして本発明におけるハウジングは、入口配管と出口配管の間に、ハウジングの面外方向へ突出する断面形状を有することを特徴とする。
【0008】
本発明におけるハウジングは、入口配管と出口配管を結ぶ線分の方向において、入口配管よりもハウジングの外側、及び、出口配管よりも外側に、ハウジングの面外方向へ突出する断面形状を有することが好ましい。
PTCヒータが加熱されているとき、入口配管よりもハウジングの外側、及び、出口配管よりも外側には、縮みが生じることになるが、この縮みに追従してハウジングの当該外側の部分が縮みやすくなるように剛性を弱くするのである。
【0009】
本発明の熱交換器において、ハウジングの面外方向へ突出する断面形状を、突出が連続的に繰り返されるものにすることが好ましい。突出する方向のスペースを抑えながら、剛性を弱くするのに有利だからである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱交換器要素と一体化された入口配管及び出口配管がハウジングを貫通する熱交換器において、熱交換要素が加熱・冷却により膨張・収縮をしたときのハウジングの破損を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態における熱媒体加熱装置の分解斜視図である。
【図2】図1に示す熱媒体加熱装置を示し、(A)は平面図、(B)は側縦面図である。
【図3】図1に示す熱媒体加熱装置に適用する扁平状の熱交換チューブを示し、(A)は縦断面図、(B)は平面図、(C)は(B)の3C−3C断面図である。
【図4】図1に示す熱媒体加熱装置を背面側から示す斜視図である。
【図5】図1に示す熱媒体加熱装置の熱交換チューブの周囲を下部ハウジングとともに示す縦断面図であり、上段が通常時を示し、下段が加熱により熱膨張した状態を示す。
【図6】本発明による他の実施形態を示す縦断面図であり、(A)は入口配管及び出口配管よりも外側にも蛇腹状の凹凸を形成した例を示し、(B)は曲率の大きい下向きの凸を一つだけ設けた例を示す。
【図7】本発明による他の凹凸の例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は7B−7B線断面図、(C)は7C−7C線断面図である。
【図8】熱媒体加熱装置が用いられる車両用空調装置の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
[第1実施形態]
本実施形態に係る熱媒体加熱装置10(熱交換器)は、図1〜図3に示されるように、制御基板13と、電極板14(図3(B)参照)と、IGBT等からなる複数個の半導体スイッチング素子12(図2(B)参照)と、熱交押え部材16と、複数枚(例えば、3枚)の扁平状の熱交換用のチューブ17と、複数組のPTC素子(Positive Temperature Coefficient)18a(図2(B)参照)と、これら制御基板13、電極板14、半導体スイッチング素子12、積層されたチューブ17(熱交換用管体)、および熱交押え部材16等を収容するハウジング11と、を備えている。
なお、電極板14、PTC素子18aおよび絶縁体(図示せず)等により、複数組のPTCヒータ18が構成される。
【0013】
<ハウジング>
ハウジング11は、上半部と下半部とに2分割された構成になっており、上半部を構成する上部ハウジング11a(図2(B)参照)と、下半部を構成する下部ハウジング11bとを備えている。また、上部ハウジング11aおよび下部ハウジング11bの内部には、下部ハウジング11bの上方から下部ハウジング11bの開口部11cに上部ハウジング11aを載置することによって、制御基板13、半導体スイッチング素子12、電極板14、熱交押え部材16、積層された複数枚のチューブ17、および複数組のPTCヒータ18等を収容する空間が形成されるようになっている。
【0014】
下部ハウジング11bの下面には、積層された3枚のチューブ17に導入される熱媒体を導くための熱媒体入口路11dおよびチューブ17内を流通した熱媒体を導出するための熱媒体出口路11eが一体的に形成されている。下部ハウジング11bは、その内部空間に収容されるチューブ17を形成しているアルミニウム合金と線膨張係数ができるだけ近い樹脂材料(例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate))により形成されていることが、ハウジング11の軽量化、低コストかにとって好ましい。なお、上部ハウジング11aも下部ハウジング11bと同様の樹脂材料により成形されていることが好ましい。
【0015】
また、下部ハウジング11bの下面には、電源ハーネス27およびLVハーネス28の先端部を貫通するための電源ハーネス用孔11fおよびLVハーネス用孔11g(図2(A)参照)が開口されている。電源ハーネス27は、制御基板13および半導体スイッチング素子12を介してPTCヒータ18に電力を供給するものであり、先端部が二股状に分岐され、制御基板13に設けられている2つの電源ハーネス用端子台13cに電源ハーネス接続用ネジ13bによってネジ止めされる。また、LVハーネス28は、制御基板13に制御用の信号を送信するものであり、その先端部は、制御基板13にコネクタ接続可能とされている。
【0016】
さらに、下部ハウジング11bの下壁112には、図4、図5に示されるように、その断面が面外方向に凹凸が連続して形成される蛇腹状断面部113が設けられている。この蛇腹状断面部113は、熱媒体入口路11dと熱媒体出口路11eの間に形成される。また、蛇腹状断面部113は、その凸部(または凹部)の稜線が、熱媒体入口路11dと熱媒体出口路11eを結ぶ線分に対して直交するように形成されている。蛇腹状断面部113は、面内方向への剛性が低減されている。なお、蛇腹の段数は任意であり、特定の段数に本発明は限定されるものではない。
蛇腹状断面部113は、下部ハウジング11bが図5の矢印Tに示すように引っ張られることを想定すると面内方向への延び代を備えており、また、下部ハウジング11bが図5の矢印Pに示すように圧縮されることを想定すると面内方向への縮み代を備えていることになる。
下壁112には、入口配管22aが入口ヘッダ22にかしめにより接合されるフランジ22bの周囲に嵌合されるOリング29を収容するリング状の保持溝122aが、また、出口配管23aが出口ヘッダ23にかしめにより接合されるフランジ23bの周囲に嵌合されるOリング29を収容するリング状の保持溝123aが、形成されている。
ここで、面外方向とは、基準となる下壁112の平坦な部分の面に直交する方向をいい、本発明でいうところの「面外方向に突出」とは、当該平坦な部分を基準として突出している(又は、へこんでいる)部分があることをいう。
【0017】
<半導体スイッチング素子12および制御基板13>
半導体スイッチング素子12および制御基板13は、上位制御装置(例えば、ECU(Engine Control Unit)からの指示に基づいて複数組のPTCヒータ18に対する通電制御を行う制御系を構成するものであり、IGBT等の複数個の半導体スイッチング素子12を介して複数組のPTCヒータ18に対する通電状態が切替えできるように構成されている。そしてこの複数組のPTCヒータ18をその両面側から挟み込むように複数枚のチューブ17が積層されている。
【0018】
<チューブ17>
チューブ17は、アルミニウム合金製であり、図3(A)に示されるように、例えば3枚のチューブ17が互いに平行になるように積層されている。この3枚のチューブ17は、下段、中段および上段のチューブ17c、17b、17aの順に積層される。各チューブ17a、17b、17cの扁平チューブ部20の内部には、図3(C)に示されるように、コルゲート状のインナーフィン21が形成されている。これによって、各チューブ17a、17b、17cには、その軸方向に連通している複数の熱媒体流通路が形成されることとなる。
【0019】
各チューブ17a、17b、17cは、図3に示されるように、扁平チューブ部20と、その両端に成形されている熱媒体と供給する入口ヘッダ22および熱媒体が導出される出口ヘッダ23と、積層された入口ヘッダ22間および出口ヘッダ23間に設けられるシール状の液状ガスケット(シール材)26と、を備えている。各チューブ17a、17b、17cは、図2(B)に示されるように、PTCヒータ18を挟んでその両面側に設けられる電極板14を両側から挟みこむように互いに平行に積層されている。
【0020】
また、各チューブ17a、17b、17cは、平面視した場合、軸方向(図3(B)において左右方向)に長い扁平状を呈している。このチューブ17a、17b、17cは、扁平方向、すなわち、軸方向と直交する厚さ方向(図3(B)において上下方向)に幅広となっている。各チューブ17a、17b、17cの軸方向の両端部、すなわち、扁平チューブ部20の両端部には、入口ヘッダ22と出口ヘッダ23とが設けられており、入口ヘッダ22および出口ヘッダ23の中心部には、それぞれ連通孔24、25が設けられている。
【0021】
また、各チューブ17a、17b、17cを、上記のように積層することによって、上段のチューブ17a、中段のチューブ17bおよび下段のチューブ17の各連通孔24、25が連通され、入口ヘッダ22同士および出口ヘッダ23同士が互いに連通されるとともに、各連通孔24、25の周囲が液状ガスケット(シール材)26によって密封状態にシールされるようになっている。
【0022】
チューブ17の入口ヘッダ22には入口配管22aが接続され、また、出口ヘッダ23には出口配管23aが接続されている。入口ヘッダ22と入口配管22aの境界、出口ヘッダ23と出口配管23aの境界から、熱媒体が容易に漏れないように接続方法が選択されるべきであるが、本実施形態では管端部にフランジ22b、23bを形成することで、かしめにより接合している。
チューブ17が下部ハウジング11bの所定位置に配置されると、入口配管22aは熱媒体入口路11dの内部に嵌挿され、また、出口配管23aは熱媒体出口路11eの内部に嵌挿される(図5参照)。
入口配管22a(フランジ22b)と下部ハウジング11bの下壁112の間、及び、出口配管23a(フランジ23b)と下部ハウジング11bの下壁112の間には、Oリング29が設けられているので、入口ヘッダ22と入口配管22aの境界、あるいは、出口ヘッダ23と出口配管23aの境界から、熱媒体が漏れても、ハウジング11外への漏洩が阻止される。
以上のように、入口配管22a及び出口配管23aは、下部ハウジング11bにより、その周囲が封止されている。なお、本発明における封止とは、Oリング29等を介して下部ハウジング11bにより間接的に封止される場合を包含する。
【0023】
熱媒体入口路11d(入口配管22a)から導かれた熱媒体は、各入口ヘッダ22から各チューブ17a、17b、17cの扁平チューブ部20内へと供給される。この熱媒体は、扁平チューブ部20内を流通する過程でPTCヒータ18により昇温される。この熱媒体は、各出口ヘッダ23に流出し、熱媒体出口路11e(出口配管23a)を経て熱媒体加熱装置10の外部へと導出されるようになっている。該熱媒体加熱装置10から導出された熱媒体は、例えば後述するように、熱媒体循環回路10A(図8参照)を介して放熱器6に供給されることになる。
【0024】
<電極板14>
また、電極板14は、PTC素子18aに電力を供給するものであり、平面視において、矩形状を呈するアルミニウム合金製の板材とされている。電極板14は、図2(B)に示されるように、PTC素子18aを挟んでその両面に、PTC素子18aの上面に接するように一枚、また、PTC素子18aの下面に接するように一枚がそれぞれ積層されている。これら2枚の電極板14によって、PTC素子18aの上面と、PTC素子18aの下面とが挟み込まれるようになっている。
【0025】
さらに、PTC素子18aの上面側に位置する電極板14は、その上面がチューブ17の下面に接するように配置され、PTC素子18aの下面側に位置する電極板14は、その下面がチューブ17の上面に接するように配置されている。本実施形態の場合には、電極板14は、下段のチューブ17cと中段のチューブ17bとの間、中段のチューブ17bと上段のチューブ17aとの間に各々2枚、合計4枚が配置されている。
【0026】
4枚の各電極板14は、各チューブ17a、17b、17cと略同形とされている。各電極板14は、その長辺側に1つの端子14aが設けられている。電極板14に設けられている端子14aは、各電極板14を積層させた場合に重なることなく、電極板14の長辺に沿って位置している。各端子14aは、上方に突出するように設けられ、制御基板13に設けられている端子13aに端子接続用ネジ14bを介して接続されるようになっている。
【0027】
<基板サブアッセンブリ15>
基板サブアッセンブリ15は、制御基板13と熱交押え部材16とを互いに平行に配設し、熱交押え部材16の上面に設置されているIGBT等の複数個の半導体スイッチング素子12を間に挟み込んでいるものである。制御基板13と熱交押え部材16は、例えば4本の基板サブアッセンブリ接続用ネジ15aで固定されており、これによって、基板サブアッセンブリ15は、一体化されている。
【0028】
基板サブアッセンブリ15を構成している制御基板13には、各電極板14に直列に配列されている4つの端子14aに対応して、その一辺の下面に直列に4つの端子13aが配列されている。また、4つの端子13aと両端側に直列に並ぶように、電源ハーネス27の2分岐されている先端部と接続される2つの電源ハーネス用端子台13cが設けられている。
【0029】
図2(B)に示すように、IGBT等からなる半導体スイッチング素子12は、略長方形状に樹脂成形されたトランジスタである。この半導体スイッチング素子12は、作動することによって熱を生じる発熱素子であり、熱交押え部材16の上面であって、上段のチューブ17aの入口ヘッダ22近傍に接続用ネジ12aを介してねじ止めされ熱交押え部材16をヒートシンクとして冷却されるようになっている。
【0030】
基板サブアッセンブリ15を構成している熱交押え部材16は、平面視した際に扁平状のアルミニウム合金製板材とされている。この熱交押え部材16は、制御基板13よりも軸方向(図2(A)の左右方向)に大きくされたものであり、各チューブ17a、17b、17cを覆うことができる大きさとされている。制御基板13よりも軸方向に大きくなっている熱交押え部材16には、該熱交押え部材16を下部ハウジング11bに固定する基板サブアッセンブリ固定用ネジ15b(図2(A)参照)が貫通可能な孔(図示せず)が4箇所に設けられている。
【0031】
基板サブアッセンブリ15は、積層された上段のチューブ17aの上方に載置されている。すなわち、基板サブアッセンブリ15は、熱交押え部材16の下面が上段のチューブ17aの上面に接するようにして配置されている。この基板サブアッセンブリ15は、熱交押え部材16を4本の基板サブアッセンブリ固定用ネジ15bを介して下部ハウジング11bにネジ止めすることにより、熱交押え部材16の下面と下部ハウジング11bの内底面との間で積層された3枚のチューブ17a、17b、17cおよびその間に挟まれている2枚のPTCヒータ18を挟みこんでいる。
【0032】
このように、基板サブアッセンブリ15を下部ハウジング11bにネジ止め固定することにより、下部ハウジング11bの内底面方向に積層された3枚のチューブ17a、17b、17cおよびその間に挟まれている2枚のPTCヒータ18が押圧付勢されるようになっている。また、基板サブアッセンブリ15を構成している熱交押え部材16は、アルミニウム合金製板材であるため、チューブ17a、17b、17c内を流れる熱媒体の冷熱を介して、熱交押え部材16上に設置されているIGBT等の半導体スイッチング素子12を冷却するヒートシンクとして用いられるようになっている。
【0033】
<効果>
さて、以上の構成を有する熱媒体加熱装置10において、通電することによりPTCヒータ18を昇温すると、チューブ17の内部を流れる熱媒体は加熱される。そうすると、チューブ17はその軸方向に延びるが、これにともない入口配管22aと出口配管23aの間隔は拡がる(図5の下段参照)。この熱変形に伴い、下部ハウジング11bも当該軸方向に延びようとする。本実施形態の場合、熱媒体入口路11dと熱媒体出口路11eの間は、下部ハウジング11bの下面が蛇腹状の断面形状を有しているので、軸線方向の剛性が弱いことに加えて、延び代を備えていることが相俟って、入口配管22aと出口配管23aの間隔が拡がるのに追従して、下部ハウジング11bの下壁112は熱媒体入口路11dと熱媒体出口路11eの間隔が拡がるのが容易である。したがって、熱媒体加熱装置10は、加熱源であるPTCヒータ18の昇温に伴ってハウジング11(下部ハウジング11b)が破損するのを抑制できる。
【0034】
また、熱媒体加熱装置10は、下部ハウジング11bの下壁112に蛇腹状断面部113を有しており、下壁112の全域が平坦な場合に比べて、下壁112の表面積が大きいので、ハウジング11の内部で生じた熱を外部に放出するのに有利である、という効果をも奏する。
【0035】
以上説明した熱媒体加熱装置10はあくまで一例であり、本発明では少なくとも以下に説明する変更を加えることができる。
[第2実施形態]
本発明においては、図6(A)に示すように、下部ハウジング111bに、蛇腹状断面部113に加えて、入口配管22aと出口配管23aを結ぶ線分の方向において、入口配管22a及び出口配管23aよりも外側に、面外方向へ突出する突出断面部114を設けることができる。
PTCヒータ18が昇温されると、通常、入口配管22aと出口配管23aの間隔が拡がることは前述の通りである。一方、熱媒体入口路11dよりも外側の領域は、入口配管22aにより押され、また、熱媒体出口路11eよりも外側の領域は、出口配管23aにより押されることで、縮むことになる。したがって、この領域の破損をより効果的に防止するために、突出断面部114を設けるのである。
【0036】
また、図6(A)に示す例では、Oリング29に代えて、ゴム製のグロメット120を用いる。
このグロメット120は、Oリング29と同様に、入口配管22aと下部ハウジング111bの間、及び、出口配管23aと下部ハウジング111bの間、に嵌装される。したがって、グロメット120は、入口ヘッダ22と入口配管22aの境界、あるいは、出口ヘッダ23と出口配管23aの境界から、熱媒体が漏れても、ハウジング11外へ漏洩するのを阻止する。
グロメット120は、また、下部ハウジング111bの破損防止にも効果を発揮する。すなわち、PTCヒータ18の発熱により、入口配管22aと出口配管23aの間隔が拡がる際に、グロメット120は弾性的に変形して間隔の拡がりを吸収することができる
なお、図6(A)に示す下部ハウジング111bは、熱媒体入口路11d及び熱媒体出口路11eを備えていないが、本発明はこのような形態をも包含することは言うまでもない。
【0037】
[第3実施形態]
以上説明した実施形態では面外方向へ突出する断面形状として蛇腹状断面を示してきたが、本発明はこれに限らず、図6(B)に示すように、曲率の大きな下向きの凸を一つだけ備えることを包含する。この場合も、下部ハウジング211bの下壁212はその面内方向の剛性が低く、かつ、面内方向への延び代及び縮み代を備えることになる。したがって、入口配管22aと出口配管23aの間隔が拡がるのに追従して、下部ハウジング11bは熱媒体入口路11dと熱媒体出口路11eの間隔が容易に拡がることができる。
第3実施形態のように曲率の大きな下向きの凸を一つだけ備えるものを上述した蛇腹状断面と比べると、以下の相違がある。
下部ハウジング11b〜211bは、樹脂で形成されるものであり、射出成形で作製される。その際に用いる金型の制作費は、加工工数が多くなる蛇腹状断面の方が高くなる。つまり、コスト的には、第3実施形態の下部ハウジング211bが有利である。
一方、入口配管22aと出口配管23aの間隔が拡がるのに対する追従性については、蛇腹状断面のように振幅の小さい凸(または凹)を連続的に繰り返す方が有利である。つまり、面内方向の直線距離に対する下壁112の総延長の長さが大きいほど、面内方向の剛性は低くなる。また、熱媒体加熱装置10は自動車に設置されるものであり、その周囲のスペースは限られる。この制約をも考慮すると、第1実施形態の下部ハウジング11bで採用した蛇腹状断面の方がより狭いスペースで面内方向の直線距離に対する総延長の長さを大きくできるのである。
【0038】
<車両用空調装置への適用例>
以上説明した本実施形態による熱媒体加熱装置の適用例として、車両用空調装置1を説明する。
車両用空調装置1は、図8に示すように、外気または車室内空気を取り込んで温調し、それを車室内へと導く空気流路2を形成するためのケーシング3を備えている。
ケーシング3の内部には、空気流路2の上流側から下流側にかけて順次、外気または車室内空気を吸い込んで昇圧し、それを下流側へと圧送するブロア4と、ブロア4により圧送される空気を冷却する冷却器5と、冷却器5を通過して冷却された空気を加熱する放熱器6と、放熱器6を通過する空気量と放熱器6をバイパスする空気量との流量割合を調整し、その下流側でエアミックスさせることによって、温調風の温度を調節するエアミックスダンパ7と、が設置されている。
【0039】
ケーシング3の下流側は、図示しない吹き出しモード切り替えダンパおよびダクトを介して温調された空気を車室内に吹き出す複数の吹き出し口に接続されている。
冷却器5は、図示省略された圧縮機、凝縮器、膨張弁等と共に冷媒回路を構成し、膨張弁で断熱膨張された冷媒を蒸発させることによって、そこを通過する空気を冷却するものである。放熱器6は、タンク8、ポンプ9および熱媒体加熱装置10とともに熱媒体循環回路10Aを構成し、熱媒体加熱装置10により高温に加熱された熱媒体(例えば、不凍液等)がポンプ9を介して循環されることにより、そこを通過する空気を加温するものである。
【0040】
以上の車両用空調装置1によれば、放熱器6に、上述した熱媒体加熱装置(ヒータユニット)により加熱された熱媒体が循環可能に構成されているため、この熱媒体を放熱器6に供給し、空気加温用の熱源とすることができる。従って、冷却水が用いられるエンジンが搭載されていない電気自動車等の空調装置に用いて好適な車両用空調装置を得ることができる。また、エンジンが搭載され、その冷却水を空気加温用の熱源とする車両用空調装置に適用することにより、起動時に低温冷却水を素早く加熱して放熱器に循環させることができるため、空調装置起動時の立ち上がり性能を改善することができる。
【0041】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、以上ではPTCヒータを用い熱媒体加熱装置(熱交換器)に適用した例を説明したが、樹脂製のハウジング内に熱交換器本体が収容され、かつこの熱交換器本体に接続される入口配管及び出口配管がハウジングを貫通する形態の熱媒体加熱装置に広く適用することができる。
また、入口配管22aと出口配管23aの間に設けられる面外方向へ突出する断面形状については、以上説明した形態に限るものでない。例えば、図7に示すように、凹凸が二次元方向に連なる断面を有する下壁312を有する下部ハウジングとすることもできる。
また、面外方向へ突出する断面形状については、その稜線が、入口配管22aと出口配管23aを結ぶ線分に対して直交するように形成されている例を示した。これは剛性を低くする上で最も好ましい形態ではあるが、本発明はこれに限定されず、当該線分に対して交差するようにしてもよい。このときの交差角度は、45°以下にするのが好ましい。
さらに、以上では、入口配管22aと出口配管23aの間隔が拡がる例について説明したが、車両用空調装置1に用いる場合、外気が0℃以下と低い場合には、入口配管22aと出口配管23aの間隔が縮むことも想定されるが、そのような場合も本発明は有効であることはいうまでもない。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
10…熱媒体加熱装置
11…ハウジング、11a…上部ハウジング、11b,111b,211b…下部ハウジング
112,212,312…下壁、113…蛇腹状断面部、114…突出断面部、122a,123a…保持溝
17,17a,17b,17c…熱交換チューブ、18…PTCヒータ、18a…PTC素子
22…入口ヘッダ、22a…入口配管、23…出口ヘッダ、23a…出口配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器要素と、前記熱交換器要素を収容するハウジングと、を備え、
前記熱交換器要素は、
熱媒体が内部を流れる単数又は複数の熱交換用管体と、
前記熱交換用管体に接続され、前記熱交換用管体において加熱される前記熱媒体が流入する入口ヘッダと、
前記熱交換用管体に接続され、前記熱交換用管体において加熱された前記熱媒体が流出する出口ヘッダと、
前記入口ヘッダに接続され、前記熱媒体が前記熱交換用管体に向けて流れる入口配管と、
前記出口ヘッダに接続され、前記熱媒体が外部に向けて流れる出口配管と、
前記熱交換用管体を流れる前記熱媒体を加熱する加熱源と、
を有し、
前記入口配管及び前記出口配管は、各々、その周囲が前記ハウジングにより封止され、
前記ハウジングは、前記入口配管と前記出口配管の間に、前記ハウジングの面外方向へ突出する断面形状を有することを特徴とする、
熱交換器。
【請求項2】
前記ハウジングは、
前記入口配管と前記出口配管を結ぶ線分の方向において、前記入口配管よりも外側、及び、前記出口配管よりも外側、に、
前記ハウジングの面外方向へ突出する断面形状を有する、
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記ハウジングの面外方向へ突出する前記断面形状は、突出が連続的に繰り返される、
請求項1又は2に記載の熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−121372(P2012−121372A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271644(P2010−271644)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】