説明

熱交換型風管

【課題】風管内の空気と熱交換可能な構成とすることで、風管内の気温を制御可能な風管を提供する。
【解決手段】可撓性を有する生地により折り曲げ自在で中空形状に形成される風管本体と、該風管本体の内周に固着されて内部に流体を貫通させる流体流路とを有することで、前記風管本体内部を通過する気体と前記流体との間で熱交換が可能であるとともに中空形状を維持するよう構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス、粉塵などの有害物質で汚染されたトンネル内等で換気用の空気を導入するための風管に関し、特に換気用の空気を特定の温度に維持することができるように熱交換を可能にする熱交換型風管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル工事等ではガス、粉塵などの有害物質で汚染されているためトンネル内の作業環境を良好に維持するために換気システムが重要である。
【0003】
たとえば、特許文献1では、風管ガイド60は、先端62が移動送風管としてのサクションホース64の後端66と接続可能な先端レジューサ68と、後端66が固定送風管としての送風用鋼管72の先端62に接続可能な後端ジョイント管76と、先端レジューサ68に最内筒80が接続され後端ジョイント管76に最外筒82が接続される多重筒体84と、先端62が先端レジューサ68に連通し、後端66が後端ジョイント管76に連通するように多重筒体84内全体にわたり、伸縮自在に収容されたジョイント管76とから構成されている。このように構成することで、トンネル内にコンパクトに設置でき、トンネルの進行に合わせて効率よく延長できる提案がなされている。
【0004】
一方、特許文献2は、上流側の風管本体86の接続端部の内側には、漏風防止筒88が縫着、接着、溶着などにより取り付けられている。該漏風防止筒88は上記風管本体86と同様の可撓性(気密性は絶対条件ではない)を有する膜材料により構成されている。また、該漏風防止筒88は、風管本体86の接続端部から外方に延出していて、その先端には、環状縁90が形成されている。該環状縁90は、適宜天然繊維または合成繊維を束ねた紐92、あるいはこれらの繊維から成る糸を編んだ紐94、または発泡樹脂製の紐状のものを芯材として、これを漏風防止筒88の端縁膜材料により包み込んで構成されている。このように構成されることで、漏風防止筒の先端に柔軟性を有する環状縁を形成したので、漏風を完全に防止することができると共に送風抵抗の増加を防ぎ、さらに、コンパクトに折り畳んで持ち運びや収納に好都合となる提案がなされている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−18798号公報
【特許文献2】特開2000−65416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、トンネル工事等では、特に日本国は火山帯であるためもあって、地熱によるトンネル内温度の上昇が無視できない現場も少なくない。このため、トンネルクーラーを使用して冷却された空気を作業場まで送風する必要性があることも多い。このような場所において、トンネル長が長くなればなるほど風管で送風する距離は増大し、その結果風管内の空気の温度がトンネル内の気温に影響されることとなる。この場合に、従来の風管では気温の影響を防ぐ対策はなされていなかった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、風管内の空気と熱交換可能な構成とすることで、風管内の気温を制御可能な風管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、熱交換型風管は、可撓性を有する生地により折り曲げ自在で中空形状に形成される風管本体と、該風管本体の内周に固着されて内部に流体を貫通させる流体流路とを有することで、前記風管本体内部を通過する気体と前記流体との間で熱交換が可能であるとともに中空形状を維持するよう構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る熱交換型風管により、風管内の空気と熱交換可能な構成とすることで、風管内の気温を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、この発明の実施形態例を、図面を用いて説明する。図1は本発明に係る熱交換型風管2の側面図である。可撓性を有する生地により折り曲げ自在で中空形状に形成される風管本体4と、該風管本体4の内周に固着されて内部に流体を貫通させる流体流路6と、該風管本体4に設けられる貫通口10,12と、隣接する風管本体4と結合するために風管本体4の端部に設けられる線ファスナ用のエレメント14,16とが設けられる。
【0011】
風管本体4は、可撓性および気密性を有する膜材料、例えば、合成樹脂を含浸あるいは被覆した布などを筒状に形成して作成される。膜材料としては、PVC(polyvinyl chloride:ピーブイシー)、EVA(ethylene vinyl acetate copolymer:イーブイエー),ウレタン,PP(polypropylene:ピーピー),PE(Polyethylene:ピーイー)などが適している。また膜材量に防炎加工や撥水処理さらには帯電電化密度を規定値より低くするとともに抵抗値を下げる静電気帯電防止機能を備えてもよい。気密性を高めるために熱溶着加工を行うことが望ましい。さらに必要に応じて、トンネル内部で支持するための吊り手段を設けてもよい。風管本体4の両端部には線ファスナ用のエレメントが外周に沿って縫着される。
【0012】
流体流路6は、ゴム・ビニール・プラスチック・布・金属などで作られた、液体や気体などの流体を送るための中空の管である。熱伝導性が高く熱交換が容易な柔らかい素材でできており、随時任意に曲げて利用する用途に適する構成となる。管形状は蛇腹形状とすることもできる。流体流路6の両端には隣接する風管本体4に備わる流体流路6と連結するための中間継手8が結合される。但し、短時間しか結合しない場合や連結距離が短い場合にはニップルで連結することもできる。図2に示すように、流体流路6は、風管本体4の端部に開口された貫通口10から風管本体4の内部に挿入されて風管本体4の内周に螺旋状に固着される。このホースの風管本体4の内周に固着することで、湾曲させた場合でも、風管が常に一定の口径を保持できることとなる。
【0013】
風管本体4を接続させる方法は、3種類提案されており、図3及び図4に示されている。図3(a)、(b)に示される線ファスナであり、さらに漏風防止膜17を設けたジョイント方式について説明する。線ファスナのエレメント18は、風管本体4の一方の開口端部に開口に沿って縫着される。一方、他方のエレメント19は、他方の開口端部から漏風防止膜17だけ距離が離れた位置に縫着される。エレメント18とエレメント19とが係合して風管本体4が連結して漏風防止膜17のある側から空気が送風されると、漏風防止膜17が風管本体4の内周に押圧されて密着するので、風管本体4の内部の端幕が振動するフラッタリングを防止することとなる。
【0014】
一方、図3(c)、(d)に示されるカップリング方式について説明する。
【0015】
風管本体4は、その一方の端部に端部形状の形成されるカップリング用大枠部21と、他方の端部に前記カップリング用大枠部21より小型に形成されるカップリング用小枠部22と、前記カップリング用大枠部とカップリング用小枠部22とを締付け固定するカップリング固定部24とを備えられる。流体流路6は、中間継手8で連結される。前記カップリング用大枠部21の内部と、カップリング固定部24の内部とにカップリング用小枠部22を挿入してカップリング用小枠部22がカップリング用大枠部21に係止して固定され、さらにその固定した部分に外周からカップリング固定部24が締め付け固定することで隣接する風管本体同士を連結する。流体流路6は、中間継手8で連結される。
【0016】
風管本体4を接続させる第3の方法は、図4に示されるように風管本体4はその両方の端部に端部形状の形成される可撓性のジョイント用枠部28,30とを備えて、風下側のジョイント用枠部28の内側に風上側のジョイント端部30を貫通させることにより風下側風管本体4内に風上側風管本体端部を挿入させて、風下側ジョイント用枠部28によって風上側ジョイント用枠部30が係止されて、隣接する風管本体同士を連結する。
【0017】
以上のように連結することで、トンネル工事等において熱交換型風管2を導入することができる。
【0018】
シールドトンネル工事においては、地上部から発進立坑等を経由して敷設された換気設備によって送風を行い、坑内の換気を行っている。図5は、本発明に係る熱交換型風管を用いた小口径シールドトンネルの施工状況を示した縦断設備配置図である。切羽32に面したシールド掘削機34の後方にはシールド掘削機34の運転設備を搭載した複数台の後続台車36が配置されている。これらの後続台車36は、シールド掘削機34により牽引され、切羽32の進行に伴って僅かずつ前進できるようになっている。このとき、掘削土砂を搬出する鋼製台車(図示せず)がトンネル内を支障なく通過できるように、後続台車36は走行レールがトンネル側壁に沿って敷設され、その車両幅も鋼製台車とすれ違える程度に狭く設定されている。
【0019】
一方、発進立坑40の地上坑口近傍には送風機42が設置されている。この送風機42には固定された送風管として送風用鋼管44が接続されている。この送風用鋼管44は、発進立坑40の側壁に沿ってトンネル坑口まで導かれる。
【0020】
さらに、地上にある水道蛇口46にホース48が接続されて発進立坑に沿って地下までホース48が延伸され、直近の風管本体4の連結するための流体流路6の中間継手8に接続される。なお、ホース48は、風管本体4の端部で折り返して、再び水道蛇口まで配管されて排水または、冷却後に再利用がなされる。なお、本実施例では冷媒として水道水について説明したが、他の液体を用いてもよい。
【0021】
一方、送風用鋼管44は冷却器50に接続されこの冷却器50が風管本体4に接続され冷却された気体が送風される。なお冷却器50の冷却用の冷媒を風管本体4の冷媒と共有することもできる。
【0022】
ここで、本発明に係る熱交換型風管を適用することで冷却器50によって冷却された空気が、坑道内の外気に影響されることなく流体流路6を通過する水温程度に維持されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る熱交換型風管の側面図である。
【図2】本発明に係る熱交換型風管の正面図である。
【図3】本発明に係る熱交換型風管のジョイント方式を示す構成図である。
【図4】本発明に係る熱交換型風管のジョイント方式を示す構成図である。
【図5】本発明に係る熱交換型風管を用いた小口径シールドトンネルの施工状況を示した縦断設備配置図である。
【符号の説明】
【0024】
2 熱交換型風管
4 風管本体
6 流体流路
10,12 貫通口
14,16 エレメント
17 漏風防止膜
18 エレメント
19 エレメント
21 カップリング用大枠部
22 カップリング用小枠部
24 カップリング固定部
28,30 ジョイント用枠部
32 切羽
34 シールド掘削機
36 後続台車
40 発進立坑
42 送風機
44 送風用鋼管
46 水道蛇口
48 ホース
50 冷却器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する生地により折り曲げ自在で中空形状に形成される風管本体と、該風管本体の内周に固着されて内部に流体を貫通させる流体流路とを有することで、前記風管本体内部を通過する気体と前記流体との間で熱交換が可能であるとともに中空形状を維持するよう構成される熱交換型風管。
【請求項2】
流体流路は、前記風管本体を中空形状に保形せしめる硬度を備える請求項1記載の熱交換型風管。
【請求項3】
流体流路は、風管本体の両端部では風管本体の表面を貫通して外周に配置される請求項2記載の熱交換型風管。
【請求項4】
風管本体は、その一方の端部に端部形状の形成されるカップリング用大枠部と、他方の端部に前記カップリング用大枠部より小型に形成されるカップリング用小枠部と、前記カップリング用大枠部とカップリング用小枠部とを締付け固定するカップリング固定部とを備えて隣接する風管本体同士を連結する請求項3記載の熱交換型風管。
【請求項5】
風管本体は、その両方の端部に端部形状の形成される可撓性のジョイント用枠部とを備えて、風上側のジョイント用枠部の内側に風下側のジョイント端部を貫通させることにより風上側風管本体内に風下側風管本体端部を挿入させて、風上側ジョイント用枠部によって風下側ジョイント用枠部が係止されて、隣接する風管本体同士を連結する請求項3記載の熱交換型風管。
【請求項6】
風管本体は、その両端部にエレメントが縫着されており、一方のエレメントにスライダを設けて線ファスナによって隣接する風管本体同士を連結する請求項3記載の熱交換型風管。
【請求項7】
風管本体は、一方のエレメントと風管端部との間に漏風防止膜を設ける請求項6記載の熱交換型風管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−162416(P2009−162416A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341535(P2007−341535)
【出願日】平成19年12月29日(2007.12.29)
【出願人】(390010537)株式会社ナショナルマリンプラスチック (5)
【Fターム(参考)】