説明

熱交換装置

【課題】冷却すべき部分の温度が高くなった場合、又は加熱すべき部分の温度が低くなった場合に、熱交換面積が大きくなる熱交換装置を提供する。
【解決手段】この熱交換装置は、温度が変化することにより曲がり、かつ温度が元に戻ることにより形状が元に戻る材料により形成された放熱層10と、放熱層10の第1の面に設けられ、放熱層10を他の物(例えばヒートシンク)に固定する接合層20と、放熱層10の一部であり、第1の面に接合層20が設けられていない非接合領域22と、非接合領域22の周縁部を、一部を除いて放熱層10の本体から切り離すことにより形成されている熱変形部12とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の冷却又は加熱を行う熱交換装置に関する。特に本発明は、冷却すべき部分の温度が高くなった場合、又は加熱すべき部分の温度が低くなった場合に、熱交換面積が大きくなる熱交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体装置を利用している電子部品は、設計通りの性能を得るためには電子部品の温度を所定の範囲に収める必要がある。電子部品は動作中に発熱するため、動作中の電子部品の温度を上限以下に収めるためには、電子部品を冷却する必要がある。電子部品の冷却効率を上げるために、一般的には電子部品にヒートシンクが取り付けられる。
【0003】
一方、特許文献1には、ゴムシートに覆われた圧電素子を筐体の内部に配置し、この圧電素子に電圧を印加するときに生じる振動によってゴムシートの膨張及び収縮を繰り返させることにより、筐体の通気口から空気が出入りさせ、筐体の内部の冷却効率を上げる技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−145661号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば電子部品の動作を考えてみる。電子部品に異常な負荷が生じ、異常発熱が生じる可能性があることを考えると、ヒートシンクの熱伝達能力は大きいほうがよい。しかし、ヒートシンクの熱伝達能力が大きすぎると、例えば寒冷地における通常動作時では電子部品の温度が十分に上昇せず、電子部品が設計通りの能力を発揮しない可能性がある。
【0006】
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、冷却すべき部分の温度が高くなった場合、又は加熱すべき部分の温度が低くなった場合に、熱交換面積が大きくなる熱交換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る第1の熱交換装置は、温度が変化することにより第1の面方向に曲がり、かつ温度が元に戻ることにより形状が元に戻る材料により形成された放熱層と、
前記放熱層の第2の面に設けられ、前記放熱層を他の物に固定する接合層と、
前記放熱層の一部であり、前記第2の面に前記接合層が設けられていない非接合領域と、
前記非接合領域の周縁部を、一部を除いて前記放熱層の本体から切り離すことにより形成されている熱変形部とを具備する。
【0008】
前記放熱層は、例えば形状記憶合金、又は熱膨張率が互いに異なる2つの金属層を重ねたバイメタルにより形成されている。
【0009】
本発明に係る第2の熱交換装置は、放熱層と、
温度が変化することにより第1の面方向に曲がり、かつ温度が元に戻ることにより形状が元に戻る材料により形成されており、第2の面の一部が前記放熱層に熱伝導可能な状態で固定されている熱変形部とを具備する。
【0010】
前記熱変形部は、例えば形状記憶合金、又は熱膨張率が互いに異なる2つの金属層を重ねたバイメタルにより形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、冷却又は加熱対象となる物の温度が一定値未満又は一定値超の場合、前記熱変形部では第1の面のみで熱交換が行われるが、冷却又は加熱対象となる物の温度が一定値以上又は一定値以下になると、前記熱変形部が変形し、第1及び第2の面の双方で熱交換が行われる。従って、冷却すべき部分の温度が高くなった場合、又は加熱すべき部分の温度が低くなった場合に、熱交換面積が大きくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1(A)は本発明の第1の実施形態に係る熱交換装置の平面図であり、図1(B)は図1(A)のB−B´断面図である。この熱交換装置は例えばシート状であり、放熱層10及び接合層20を有している。接合層20は、放熱層10の下面に設けられている。
【0013】
放熱層10は、例えば形状記憶合金又は熱膨張率が互いに異なる2つの金属層を重ねたバイメタルにより形成されており、温度が上昇することにより上面側に曲がり、かつ温度が下がることにより形状が元に戻る。
【0014】
接合層20は、放熱層10を冷却対象又は加熱対象となる物の表面に接合(例えば粘着)させるための層であり、放熱層10のうち、複数の非接合領域22を除いた領域の下面に設けられている。本実施形態において非接合領域22は、複数の列を形成し、かつ隣接する列相互間で互い違いになるように配置されている。接合層20は、熱伝導率が高い熱伝導性接着剤(例えば接着剤に、該接着剤より熱伝導率が高いフィラーを混入したもの)により形成されているのが好ましい。
【0015】
放熱層10には複数の熱変形部12が設けられている。熱変形部12は、非接合領域22に位置する放熱層10の周縁部を、一部を除いて放熱層10の本体から切り離すことにより形成されている。本実施形態において熱変形部12は、放熱層10の本体から非接合領域22の周縁部を略U字状に切り離すことにより形成されているが、長方形を構成する4辺のうち3辺に沿って放熱層10の本体から切り離すことにより形成されても良いし、三角形を構成する3辺のうち2辺に沿って放熱層10の本体から切り離すことにより形成されても良い。本実施形態において熱変形部12は、複数の列を形成し、かつ隣接する列相互間で互い違いになるように配置されている。また熱変形部12のうち放熱層10の本体に繋がっている部分は同一の方向を向いており、非接合領域22内においては略同一の位置(本図においては左端)に揃えられている。
【0016】
図2は、図1に示した熱交換装置の動作を説明する為の断面図である。本図において熱交換装置は、適切な形状に切り出された後、電子部品のヒートシンク50に貼り付けられる。ヒートシンク50から熱が伝わると、放熱層10の表面から空気に放熱される。
【0017】
熱変形部12は、放熱層10のうち、熱変形部12の周囲に位置する部分から熱が伝導する。上記したように熱変形部12の下面には接合層20が設けられておらず、このため、熱変形部12はヒートシンク50に固定されていない。従って、放熱層10は、温度が一定値未満の間は放熱層10の本体と略面一の状態にあるが、温度が一定値以上になると、矢印Aで示すように上に向けて反る。上に向けて沿った状態では、熱は熱変形部12の表面と裏面の双方から空気に放熱されるため、放熱層10の放熱面積が大きくなる。
【0018】
従って、電子機器に異常な負荷が加わりヒートシンク50の温度が一定値以上になると、放熱層10の放熱面積が大きくなってヒートシンク50の温度を低下させる。一方、電子機器が定常状態にある場合にはヒートシンク50の温度は一定値未満であり、熱変形部12は上方に反らない。このため、放熱層10の放熱面積が大きくならず、ヒートシンク50の温度は必要以上に低下しない。
【0019】
なお、本実施形態に係る熱交換装置はヒートシンク50以外のもの、例えば電子機器の筐体の内面や樹脂パッケージされた後の半導体装置に貼り付けられても良い。
【0020】
以上、第1の実施形態によれば、電子機器に異常な負荷が加わりヒートシンク50の温度が一定値以上になると、放熱層10の放熱面積が大きくなってヒートシンク50の温度を低下させる。一方、電子機器が定常状態にある場合にはヒートシンク50の温度は一定値未満であり、放熱層10の放熱面積が大きくならないため、ヒートシンク50の温度は必要以上に低下しない。このため、例えば寒冷地においても、電子部品の温度が、設計通りの性能が出せる範囲内に収まる確率が高くなる。
【0021】
また、熱変形部12は熱によって反るため、電力は必要なく、かつ耐久性が高い。また、シート形状であるため、設置のために大きなスペースを必要とせず、ヒートシンク50等の任意の場所に直接貼り付けることができる。
【0022】
なお、熱交換装置は、ボイラー内の水管内面に貼り付けられても良い。この場合、ボイラーの熱効率が向上する。
【0023】
図3(A)は、本発明の第2の実施形態に係る熱交換装置の平面図であり、図3(B)は図3(A)のB−B´断面図である。本図に示す熱交換装置は、接合層20に通気路24が設けられている点を除いて、第1の実施形態に係る熱交換装置と同様の構成である。また、熱交換装置の使用方法も第1の実施形態と同様である。通気路24は、接合層20に溝を設けることにより、又は接合層20を部分的に設けないことにより形成されている。
【0024】
本実施形態において通気路24は、同一の列に属する熱変形部12の下方の空間を相互に繋ぎ、かつ最も外周側に位置する熱変形部12の下方の空間を熱交換装置の外部に繋いでいる。なお、図中横方向に延伸する通気路を更に形成し、この通気路により、互いに異なる列に属する熱変形部12の下方の空間を相互に繋いでも良い。
【0025】
本実施形態においても第1の実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。また、熱変形部12が動くときに通気路24内を空気が流動するため、ヒートシンク等の冷却効率は更に向上する。
【0026】
図4(A)は、本発明の第3の実施形態に係る熱交換装置の平面図であり、図4(B)は図4(A)のB−B´断面図である。本図に示す熱交換装置は、熱変形部12の略中央に貫通孔12aが設けられている点を除いて第1の実施形態に係る熱交換装置と同様の構成である。また、熱交換装置の使用方法も第1の実施形態と同様である。
【0027】
本実施形態においても第1の実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。また、熱変形部12が放熱層10の本体と略面一になっている状態において、熱変形部12の下方の空間に位置する空気はヒートシンク等によって暖まった後、貫通孔12aを介して上方に流れ出る。このため、ヒートシンク等の冷却効率は更に向上する。
【0028】
なお、本実施形態において、第2の実施形態で示した通気路24を設けても良い。この場合、通気路24を介して空気が熱変形部12の下方の空間に流入し、その後貫通孔12aを介して上方に流れ出る。このため、熱変形部12の下方の空間における空気の流れが良くなり、ヒートシンク等の冷却効率は更に向上する。
【0029】
図5(A)は、第4の実施形態に係る熱交換装置の平面図であり、図5(B)は図5(A)のB−B´断面図である。本実施形態に係る熱交換装置は、放熱層10が形状記憶合金又はバイメタルではなく通常の金属により形成されている点、放熱層10に熱変形部が形成されていない点、放熱層10の下面の全面に接合層20が設けられている点、及び放熱層10の上面に複数の熱変形部32が取り付けられている。以下、第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0030】
熱変形部32は形状記憶合金又はバイメタルにより形成されており、温度が上昇することにより上方に曲がり、かつ温度が下がることにより形状が元に戻る。熱変形部32は、一端部32aが熱伝導性接着剤30を介して放熱層10の表面に接続されている。複数の熱変形部32は、一端部32aが互いに同一の方向を向いている。なお熱変形部32の平面形状及び配置は、第1の実施形態における熱変形部12と同様である。
【0031】
熱変形部32は、温度が一定値未満の状態では、一端部32a及びその近傍を除いて放熱層10の表面に当接している。また熱変形部32は、放熱層10からの熱伝導により温度が一定値以上になると上方に反る。
従って、本実施形態においても、第1の実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0032】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば第1〜第4の実施形態において熱変形部12、32は、隣接する列相互間で互い違いになるように配置されているが、隣接する列相互間で互いに重なるように配置されてもよい。
【0033】
また、第1〜第3の実施形態における放熱層10、及び第4の実施形態における熱変形部32は、温度が下がることにより上方に曲がり、かつ温度が上昇することにより元に戻る材料により形成されてもよい。このようにすると、熱交換装置を、外部から熱を吸収する加熱シートとして使用することができる。この場合、熱交換装置は、例えばボイラー内の水管の外壁に取り付けられ、外壁の加熱効率を上昇させるために用いられる。
【0034】
また、第1〜第4の実施形態において放熱層10及び熱変形部32の厚さは特に限定はなく、放熱層10が厚くなって棒状になってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、熱交換が必要な部分に接合されることにより利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】(A)は第1の実施形態に係る熱交換装置の平面図、(B)は(A)のB−B´断面図。
【図2】熱交換装置の使用方法を説明する為の断面図。
【図3】(A)は第2の実施形態に係る熱交換装置の平面図、(B)は(A)のB−B´断面図。
【図4】(A)は第3の実施形態に係る熱交換装置の平面図、(B)は(A)のB−B´断面図。
【図5】(A)は第4の実施形態に係る熱交換装置の平面図、(B)は(A)のB−B´断面図。
【符号の説明】
【0037】
10…熱伝達層、12,32…変形部、12a…貫通孔、20…粘着層、22…非接合領域、24…通気路、30…熱伝導性接着材、50…ヒートシンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度が変化することにより第1の面方向に曲がり、かつ温度が元に戻ることにより形状が元に戻る材料により形成された放熱層と、
前記放熱層の第2の面に設けられ、前記放熱層を他の物に固定する接合層と、
前記放熱層の一部であり、前記第2の面に前記接合層が設けられていない非接合領域と、
前記非接合領域の周縁部を、一部を除いて前記放熱層の本体から切り離すことにより形成されている熱変形部と、
を具備する熱交換装置。
【請求項2】
前記放熱層は、形状記憶合金、又は熱膨張率が互いに異なる2つの金属層を重ねたバイメタルにより形成されている、請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項3】
前記非接合領域及び前記変形部を複数具備し、
前記複数の変形部は、前記放熱層の本体に繋がっている部分が互いに略同一の方向を向いている、請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項4】
前記非接合領域及び前記変形部を複数具備し、
前記接合層に設けられ、前記複数の非接合領域の下に位置する空間を相互に接続し、かついずれかの前記非接合領域の下に位置する空間を大気に接続する通気路を具備する、請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項5】
前記変形部に設けられた貫通孔を更に具備する請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項6】
放熱層と、
温度が変化することにより第1の面方向に曲がり、かつ温度が元に戻ることにより形状が元に戻る材料により形成されており、第2の面の一部が前記放熱層に熱伝導可能な状態で固定されている熱変形部と、
を具備する熱交換装置。
【請求項7】
前記熱変形部は、形状記憶合金、又は熱膨張率が互いに異なる2つの金属層を重ねたバイメタルにより形成されている、請求項6に記載の熱交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−98397(P2008−98397A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278455(P2006−278455)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(502135990)沖パワーテック株式会社 (25)
【Fターム(参考)】