説明

熱処理ローラ用温度検出装置

【課題】既存の温度制御装置を流用可能とすることを前提とするものであって、温度検出装置の異常の発生を温度制御装置に認識させるための技術を提供する。
【解決手段】温度検出装置は、シェル102の温度を検知するための測温抵抗体11と、前記測温抵抗体11によって検知した温度値を取得する取得部8aと、前記取得部8aによって取得された温度値を記憶する記憶部9(15)と、前記記憶部9(15)に記憶された温度値を前記温度制御装置200へ送信可能な送信部14bと、測温抵抗体11に関連した不具合が発生したら、前記送信部14bが前記温度制御装置200へ送信する上記温度値を仕様範囲外の温度値へと置換する置換部8cと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理ローラ用温度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として特許文献1(特開2007−218708号公報)は、回転するローラの回転側に設置された温度検知器の温度検知信号(温度データ)を、前記ローラ外の固定側に設置された前記ローラの表面温度を制御する温度制御装置に伝送してなるローラ用温度検出装置を開示する。この文献1によれば、回転側と固定側との間の信号伝送として回転変圧器に代え無線送信器を採用することで、温度制御装置が精度の高い温度検知信号を取得できるようになっている。また、この文献1の温度検出装置は、温度検知器(白金型の熱電対が例示されている。)の特性がリニアでなく若干の誤差を含んでいることを踏まえ、所定のリニアライズ処理を実施するマイコンを搭載することとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記文献1の技術によると、温度制御装置は、温度検出装置から受信した温度検知信号(温度データ)をモニタリングすることで、温度データの想定され得る温度範囲としての仕様範囲から温度データが外れた場合や、そもそも温度検知信号の受信が途絶えた場合、温度検出装置の異常の発生を認識することができる。しかし、温度データが仕様範囲内である限りにおいては、温度制御装置は、温度検出装置が正常に動作しているものとしか認識することができない。従って、例えば、温度検知器に不具合が発生したにも拘わらず出力する温度データに大きな変化が起きなかった場合は、温度制御装置は、温度検出装置が正常に動作しているものとして誤った認識をしてしまう。
【0004】
この問題に対し、例えば、温度検出装置に一対の温度検知器を同一箇所に設けることで、特段の問題がなければ一対の温度検知器の抵抗値が全く同一となるような構成とし、この一対の温度検知器の抵抗値が異なる値となった場合は、温度検出装置が温度制御装置に対して異常信号を送信できるよう、温度検出装置と温度制御装置との間に信号線を追加する対策が考えられる。しかし、この対策では、温度検出装置と温度制御装置との間に信号線を新たに追加する必要があることから、既存の温度制御装置の流用の観点から、採用することは難しい。
【0005】
上記の問題は温度検知器についての不具合に関するものであるが、他の構成要素についての不具合に関しても同様に、信号線を新たに追加することなく温度検出装置の不具合を温度制御装置に認識させたい。
【0006】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、既存の温度制御装置を流用可能とすることを前提とするものであって、異常の発生を温度制御装置に認識させるための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本願発明の観点によれば、熱処理ローラの温度を検知し、その温度値を、前記熱処理ローラの温度を制御する温度制御装置へ送信する、熱処理ローラ用温度検出装置は、以下のように構成される。即ち、熱処理ローラ用温度検出装置は、前記熱処理ローラの温度を検知するための検知手段と、前記検知手段によって検知した温度値を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された温度値を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された温度値を前記温度制御装置へ送信可能な送信手段と、何らかの異常が発生したら、前記送信手段が前記温度制御装置へ送信する上記温度値を仕様範囲外の温度値へと置換する置換手段と、を備える。
【0009】
即ち、前記熱処理ローラ用温度検出装置が前記温度制御装置に対して温度値を送信している点については従来と変わらないので、既存の温度制御装置をそのまま使い続けることができる。この既存設備の活用を前提とした上で、上記の構成によれば、仕様範囲外の温度値を積極的に利用することで、前記温度制御装置に異常の発生を認識させることが可能となる。
【0010】
なお、「仕様範囲」とは、前記検知手段が正常に機能していることを前提とした上で定めた範囲を意味する。
【0011】
上記の熱処理ローラ用温度検出装置は、更に、以下のように構成される。即ち、前記検知手段は、前記熱処理ローラの同一箇所に一対で設けられる。前記記憶手段に記憶された一対の温度値を比較する比較手段を設ける。前記一対の温度値が一致しないと前記比較手段が判定した場合は、前記置換手段は、前記送信手段が前記温度制御装置へ送信する上記温度値を仕様範囲外の温度値へと置換する。以上の構成によれば、前記検知手段に僅かな狂いが発生したような軽微な異常の発生であっても、前記温度制御装置に異常の発生を認識させることができる。
【0012】
なお、上記「同一箇所」とは、前記一対の検知手段が共に正常に機能している限りは、それらが検知した温度値が不可避的な製造上の誤差を除いて略等しくなる程度の同一の箇所を意味する。また、上記「前記一対の温度値が一致」するとは、前記一対の温度値の差分の絶対値が不可避的な製造上の誤差程度に収まっていることを意味する。
【0013】
上記の熱処理ローラ用温度検出装置は、更に、以下のように構成される。即ち、前記検知手段は、前記熱処理ローラの長手方向に間隔を空けた複数箇所夫々に設けられる。前記記憶手段に記憶された複数の温度値を相互に比較する比較手段を設ける。前記複数の温度値が相互に一致しないと前記比較手段が判定した場合は、前記置換手段は、前記送信手段が前記温度制御装置へ送信する上記温度値を仕様範囲外の温度値へと置換する。以上の構成によれば、前記熱処理ローラの長手方向における温度ムラか、又は、前記複数の検知手段のうち何れかに不具合が発生したことを、前記温度制御装置に異常の発生として認識させることができる。
【0014】
上記の熱処理ローラ用温度検出装置は、更に、以下のように構成される。即ち、前記検知手段は、前記熱処理ローラの長手方向に間隔を空けた少なくとも3箇所夫々に設けられる。前記記憶手段に記憶された複数の温度値を相互に比較する比較手段を設ける。前記複数の温度値が相互に一致しないと前記比較手段が判定した場合は、前記複数の温度値のうち最も特異な温度値に対応する前記検知手段を特定する特定手段を設ける。前記複数の温度値が相互に一致しないと前記比較手段が判定した場合は、前記置換手段は、前記送信手段が前記温度制御装置へ送信する上記温度値を、仕様範囲外であって、前記特定手段によって特定された前記検知手段に対応する温度値へと置換する。以上の構成によれば、前記熱処理ローラの長手方向における温度ムラか、又は、前記複数の検知手段のうち何れかに不具合が発生したことを、前記温度制御装置に異常の発生として認識させることができる。加えて、前記温度制御装置は異常の発生の位置を具体的に認識することができるようになる。
【0015】
上記の熱処理ローラ用温度検出装置は、更に、以下のように構成される。即ち、前記置換手段は、発生した異常の種別を判別し、その異常の種別に応じて、上記の仕様範囲外の温度値を設定する。以上の構成によれば、前記温度制御装置に発生した異常の種別を認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ゴデッドローラの全体概略図
【図2】本願発明の第一実施形態に係るゴデッドローラの機能ブロック図
【図3】熱電対の設置態様の説明図
【図4】本願発明の第二実施形態に係るゴデッドローラの機能ブロック図
【図5】本願発明の第三実施形態に係るゴデッドローラの機能ブロック図
【図6】熱電対の設置態様の説明図
【図7】本願発明の第四実施形態に係るゴデッドローラの機能ブロック図
【図8】本願発明の第五実施形態に係るゴデッドローラの機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第一実施形態>
以下、図1〜3を参照しつつ、本願発明の第一実施形態として、紡糸巻取機のゴデッドローラに適用された温度検出装置について説明する。
【0018】
紡糸巻取機は、糸Y(合成繊維糸、図3参照)を紡糸する紡糸部と、この紡糸部によって紡糸された糸Yを巻き取ってパッケージとする巻取部と、走行する糸Yに対して所定の熱処理を施す熱処理部1と、を主たる構成として備えている。そして、熱処理部1は一対のゴデッドローラ2から構成されており、紡糸部から巻取部に向かって走行する糸Yは、上記一対のゴデッドローラ2間で複数回、往復するようになっている。このゴデッドローラ2は、図1に示すように、ゴデットローラ本体100と、温度検出器101と、から構成されている。
【0019】
(ゴデットローラ本体100)
ゴデットローラ本体100は、糸Yが巻き掛けられる円筒形状の鉄製のシェル102(熱処理ローラ)と、このシェル102を駆動軸103を介して回転可能に支持する駆動モータ104と、シェル102の内側に設けられるヒータ105と、を主たる構成として備えている。この構成で、ヒータ105は駆動モータ104によって支持されており、シェル102は、ヒータ105によって誘導加熱されるようになっている。以下、説明の便宜上、ゴデットローラ本体100のロータ側106とはシェル102と駆動軸103を含む上位概念であり、ゴデットローラ本体100のステータ側107とは駆動モータ104とヒータ105を含む上位概念であるものとする。また、上記のシェル102は図示しない熱媒を有し、この熱媒はヒータ105を用いて昇温したシェル102の温度(=表面温度、以下同様。)を略均一にする働きをする。
【0020】
(温度検出器101)
温度検出器101は、駆動軸103を介してシェル102と共回りするロータ108と、駆動モータ104に対して固定されるステータ109と、から構成されている。このロータ108は、シェル102と駆動モータ104を挟んで反対側に設けられ、図2に示すように、アンテナコイル6と、電源部7と、第1制御部8と、記憶部9(記憶手段)と、再生部10と、を主たる構成としている。また、図1及び図2に示すように上記のシェル102には測温抵抗体11(検知手段)が設けられ、この測温抵抗体11は信号変換回路18及びADC19を介して上記の第1制御部8に接続されている。一方、ステータ109は、アンテナコイル12と、RF回路ブロック17と、第2制御部14と、記憶部15(記憶手段)と、を主たる構成としている。RF回路ブロック17は、コイル電流検出部13と、電源供給用発振回路16と、から構成されている。
【0021】
以下、上述した各構成要素を詳細に説明する。ロータ108のアンテナコイル6とステータ109のアンテナコイル12は、図2に示すように相互に電磁結合するアンテナとして機能するコイルである。アンテナコイル6とアンテナコイル12何れも本実施形態では空心コイルが採用されている。
【0022】
電源部7は、図示しない整流回路とコンデンサを有し、ステータ109から上記電磁結合を介して供給され、上記整流回路によって整流された電気エネルギーをコンデンサを用いて蓄積すると共に、蓄積した電気エネルギーをロータ108の構成要素である第1制御部8や再生部10などに供給する。
【0023】
第1制御部8は、マイコンによって構成されており、取得部8a(取得手段)と、比較部8b(比較手段)と、置換部8c(置換手段)と、をハードウェアとソフトウェアとの協動によって実現している。取得部8aは、測温抵抗体11によって検知した温度値を取得するものである。比較部8b及び置換部8cについては、後述する。上記第1制御部8は、例えばDRAMなどによって構成される記憶部9に対して、取得部8aが取得した温度値を書き込んだり、記憶部9から読み込んだ温度値を再生部10に送信したり、できるようになっている。
【0024】
再生部10は、134.7kHzのパルス信号を出力する発振回路10aと、123.7kHzのパルス信号を出力する発振回路10bと、を備え、各発振回路10a、10bから出力されたパルス信号を選択的にアンテナコイル6へ送信する、所謂FM変調方式を採用している。この構成で、上記の第1制御部8は再生部10によるパルス信号の選択を制御可能となっており、これにより第1制御部8は、所望のデータをステータ109の第2制御部14にFM変調で送信できるようになっている。例えば、第1制御部8が第2制御部14に対して88bitのデータを送信したいとすると、第1制御部8は、再生部10によるパルス信号の送信の選択、即ち切替動作を少なくとも88回、繰り返すこととなる。
【0025】
測温抵抗体11は、シェル102の温度を検知するためのものである。即ち、測温抵抗体11は、測温抵抗体11の取付位置における温度の大小を自身の電気抵抗の大小に略リニアに変換する性質を有しており、この測温抵抗体11の抵抗値は信号変換回路18によって電圧値へと変換され、この電圧値がADC19(Analog Digital Converter)によって例えば16ビットのデジタル信号へと変換された上で第1制御部8に入力されるようになっている。本実施形態では、上記測温抵抗体11は、図1及び図2に示すように一対で同一箇所に配置されている。従って、一対の測温抵抗体11が共に正常に機能している限りにおいては、それらが検知した温度値は不可避的な製造上の誤差を除いて略等しくなるようになっている。
【0026】
コイル電流検出部13は、アンテナコイル12に流れる電流(コイル電流)を検出するものである。
【0027】
電源供給用発振回路16は、アンテナコイル12に134.2kHzのON/OFFパルス信号を与えるものであって、コイル間の電磁誘導による電力送信を実現している。
【0028】
第2制御部14は、マイコンによって構成されており、復調部14aと、送信部14b(送信手段)と、をハードウェアとソフトウェアとの協動によって実現している。復調部14aは、コイル電流検出部13によって検出されたFM変調方式(134.7kHzと123.7kHzの切り替わり)のコイル電流に基づいてデータを取得するものである。復調部14aは、取得したデータを、例えばDRAMなどによって構成される記憶部15に対して書き込む。送信部14bは、記憶部15に記憶されたデータをDAC20(Digital Analog Converter)を介して温度制御装置200に送信する。更に、アナログ信号をV/F変換器21でパルス信号に変更して、温度制御装置200に送信するアプリケーションもある。
【0029】
以上の構成で、ステータ109からロータ108への電源供給と、ロータ108からステータ109への信号伝達と、は所謂時分割で行われる。即ち、RF回路ブロック17は、最初の80msecではアンテナコイル12と電源供給用発振回路16とを択一的に接続させることにより、電源供給用発振回路16で発生したパルス信号をアンテナコイル12に与え、続く20msecではアンテナコイル12とコイル電流検出部13とを択一的に接続させる。これに呼応するように、電源部7が上記の80msecで電気エネルギーを蓄積した後、第1制御部8は、上記の電力供給が中断している20msecの間に、再生部10やアンテナコイル6、アンテナコイル12、コイル電流検出部13を介して第2制御部14にデータを送信するようになっている。
【0030】
また、ゴデッドローラ2の外部に設けられる温度制御装置200は、温度検出器101のステータ109から受信したシェル102の温度値に基づいてヒータ105の作動を適宜にフィードバック制御する。
【0031】
本実施形態において熱処理ローラ用温度検出装置は、少なくとも、測温抵抗体11と、取得部8aと、記憶部9(15)と、送信部14bと、置換部8cと、を含んで構成されている。
【0032】
以上の構成で、シェル102の温度は測温抵抗体11によって検知され、取得部8aは測温抵抗体11によって検知されたシェル102の温度値を取得し、記憶部9は取得部8aによって取得された温度値を記憶する。記憶部9に記憶された温度値は、アンテナコイル6とアンテナコイル12との電磁結合によってステータ109へ非接触送信され、コイル電流検出部13を介して第2制御部14に入力され、記憶部15に記憶される。記憶部15に記憶された温度値は、送信部14bによって温度制御装置200へ送信される。温度制御装置200は、温度検出器101から受信した温度値に基づいてヒータ105の作動をフィードバック制御する。
【0033】
次に、上記第1制御部8の比較部8bと置換部8c、それと温度制御装置200について詳しく説明する。
【0034】
本実施形態では、上述したように一対の測温抵抗体11がシェル102に設けられている。従って、取得部8aは一対の測温抵抗体11によって検知された一対の温度値を取得し、記憶部9は取得部8aが取得した一対の温度値を記憶するようになっている。その上で、前述の比較部8bは、記憶部9に記憶された一対の温度値を比較する。そして、前記一対の温度値が一致すると比較部8bが判定した場合は、第1制御部8は、一対の温度値のうち何れか一方を再生部10へ送信し、送信された温度値は、送信部14bによって温度制御装置200に送信される。一方で、前記一対の温度値が一致しないと比較部8bが判定した場合は、前述の置換部8cは、上記の送信部14bが温度制御装置200へ送信する上記の温度値を仕様範囲外の温度値へと送信前に予め置換する。
【0035】
(比較部8b)
比較部8bは、具体的には、記憶部9に記憶された一対の温度値を取得して、この一対の温度値の差分をとり、この差分の絶対値が所定の値未満となったとき、一対の温度値は一致していると判定する。一方、この差分の絶対値が所定の値以上となったとき、一対の温度値は一致していないと判定する。ここで「所定の値」とは、測温抵抗体11の不可避的な製造上の誤差によって判定結果が左右されることのないように例えば1[℃]とされる。従って、「一対の温度値が一致」するとは、一対の温度値の差分の絶対値が不可避的な製造上の誤差程度に収まっていることを意味する。
【0036】
(置換部8c)
置換部8cは、具体的には、記憶部9に記憶されている一対の温度値の双方を、仕様範囲外の温度値へと書き換える。ここで、「仕様範囲」とは、測温抵抗体11が正常に機能していることを前提とした上で定めた範囲を意味し、例えば、0〜300[℃]とする。そして、仕様範囲外の温度値とは、測温抵抗体11が正常に機能しなくなったときに限り発現するような温度値であり、例えば400[℃]や420[℃]などである。
【0037】
(温度制御装置200)
温度制御装置200は、温度検出器101から受信した温度値が仕様範囲内か仕様範囲外かを判定し、仕様範囲内であると判定した場合は、温度検出器101から受信した温度値に基づいてヒータ105の作動をフィードバック制御する。一方、仕様範囲外であると判定した場合は、温度検出器101から受信した温度値に基づいてヒータ105の作動をフィードバック制御することに代えて、熱処理ローラ用温度検出装置に異常が発生したと認識し、そして、異常発生時に必要な作動をする。異常発生時に必要な作動とは、例えば、ヒータ105の作動を停止させてシェル102を自然放熱させる作動や、図示しない警告ランプを点滅又は点灯させて紡糸巻取機の作業オペレータに異常発生を報知する作動、などを意味する。
【0038】
(まとめ)
(請求項1)
以上説明したように本実施形態において熱処理ローラ用温度検出装置は、以下のように構成されている。即ち、熱処理ローラ用温度検出装置は、シェル102の温度を検知するための測温抵抗体11と、前記測温抵抗体11によって検知した温度値を取得する取得部8aと、前記取得部8aによって取得された温度値を記憶する記憶部9(15)と、前記記憶部9(15)に記憶された温度値を前記温度制御装置200へ送信可能な送信部14bと、測温抵抗体11に関連した不具合が発生したら、前記送信部14bが前記温度制御装置200へ送信する上記温度値を仕様範囲外の温度値へと置換する置換部8cと、を備える。即ち、熱処理ローラ用温度検出装置が前記温度制御装置200に対して温度値を送信している点については従来と変わらないので、既存の温度制御装置200をそのまま使い続けることができる。この既存設備の活用を前提とした上で、上記の構成によれば、仕様範囲外の温度値を積極的に利用することで、前記温度制御装置200に異常の発生を認識させることが可能となる。
【0039】
なお、上記第一実施形態では、置換部8cは、記憶部9に記憶されている一対の温度値の双方を、仕様範囲外の温度値へと書き換えることとしたが、これに代えて、置換部8cは、記憶部9に記憶されている一対の温度値のうち何れか一方だけを仕様範囲外の温度値へと書き換えることとしてもよい。というのは、記憶部9に記憶されている一対の温度値のうち、第1制御部8が読み込んで再生部10へ送信する温度値が何れの温度値であるかが予め定められている場合は、闇雲に一対の温度値の双方を書き換える必要はなく、少なくとも、第1制御部8が読み込んで再生部10へ送信する温度値のみを書き換えれば十分である、ということである。更に言えば、送信部14bが温度制御装置200へ送信する上記温度値を置換するための具体的な作動としては、記憶部9に記憶されている温度値の書き換えに限られない。即ち、結果的に温度制御装置200へ送信される温度値が仕様範囲外の温度値となっていれば、その具体的手段の種別を問わない。
【0040】
(請求項2)
また、前記測温抵抗体11は、シェル102の同一箇所に一対で設けられる。前記記憶部9に記憶された一対の温度値を比較する比較部8bを設ける。前記一対の温度値が一致しないと前記比較部8bが判定した場合は、前記置換部8cは、前記送信部14bが前記温度制御装置200へ送信する上記温度値を仕様範囲外の温度値へと置換する。以上の構成によれば、前記測温抵抗体11に僅かな狂いが発生したような軽微な異常の発生であっても、前記温度制御装置200に異常の発生として認識させることができる。
【0041】
なお、上記第一実施形態では、測温抵抗体11を同一箇所に一対で設けることとしたが、これに代えて、測温抵抗体11を同一箇所に3つ、又は、4つ以上で設けることとしてもよい。
【0042】
<第二実施形態>
次に、図4を参照しつつ、本願発明の第二実施形態を説明する。以下、本実施形態が上記第一実施形態と相違する点を中心に説明し、重複する説明については適宜、割愛する。
【0043】
上記第一実施形態では図2に示すように、前記の比較部8bと置換部8cをロータ108の第1制御部8に設けることとしたが、本実施形態では、ロータ108の第1制御部8に比較部8bと置換部8cを設けることに代えて、ステータ109の第2制御部14に比較部14cと置換部14dを設けることとした。
【0044】
従って、本実施形態では、熱処理ローラ用温度検出装置は、以下のように作動する。即ち、取得部8aによって取得された一対の温度値は記憶部9に記憶される。第1制御部8は、記憶部9に記憶されている一対の温度値を読み込んで、再生部10に送信する。この一対の温度値は、アンテナコイル6やアンテナコイル12などを介して第2制御部14に送信される。第2制御部14に送信された一対の温度値は記憶部15に記憶される。これ以降の作動については、上記第一実施形態における記憶部9と比較部8bと置換部8cとの関係と、本実施形態における記憶部15と比較部14cと置換部14dとの関係と、は同様であるから説明を割愛する。
【0045】
<第三実施形態>
次に、図5及び図6を参照しつつ、本願発明の第三実施形態を説明する。以下、本実施形態が上記第一実施形態と相違する点を中心に説明し、重複する説明については適宜、割愛する。
【0046】
上記第一実施形態では、図3に示すように、測温抵抗体11を同一箇所に一対で設けた。これに対し、本実施形態では、図6に示すように、測温抵抗体11を、シェル102の長手方向に間隔を空けた複数箇所夫々に設けた。そして、図5によれば、取得部8aは測温抵抗体11によって検知された複数の温度値を取得し、取得部8aによって取得された複数の温度値は記憶部9に記憶される。比較部8bは、記憶部9に記憶された複数の温度値を相互に比較する。そして、複数の温度値が相互に一致していると比較部8bが判定した場合は、第1制御部8は、複数の温度値のうち何れか一つを再生部10へ送信し、送信された温度値は、送信部14bによって温度制御装置200に送信される。一方で、複数の温度値が相互に一致していないと判定した場合は、置換部8cは、送信部14bが温度制御装置200へ送信する上記の温度値を仕様範囲外の温度値へと送信前に予め置換する。
【0047】
(比較部8b)
詳しくは、「複数の温度値が相互に一致」するとは、複数の温度値のバラツキ幅が不可避的な製造上の誤差程度に収まっていることを意味する。
【0048】
(置換部8c)
詳しくは、置換部8cは、記憶部9に記憶されている複数の温度値のすべてを、仕様範囲外の温度値へと書き換える。ただし、必ずしも、置換部8cが記憶部9に記憶されている複数の温度値のすべてを書き換える必要がないことは前述した通りである。
【0049】
(まとめ)
(請求項3)
以上説明したように本実施形態において熱処理ローラ用温度検出装置は、更に、以下のように構成されている。即ち、測温抵抗体11は、シェル102の長手方向に間隔を空けた複数箇所夫々に設けられる。記憶部9に記憶された複数の温度値を相互に比較する比較部8bを設ける。前記複数の温度値が相互に一致しないと前記比較部8bが判定した場合は、前記置換部8cは、前記送信部14bが前記温度制御装置200へ送信する上記温度値を仕様範囲外の温度値へと置換する。以上の構成によれば、シェル102の長手方向における温度ムラか、又は、前記複数の測温抵抗体11のうち何れかに不具合が発生したことを、前記温度制御装置200に異常の発生として認識させることができる。なお、上記の温度ムラは、主として、シェル102が有する前述の熱媒の働きに不具合が生じたことに起因するものである。
【0050】
<第四実施形態>
次に、図7を参照しつつ、本願発明の第四実施形態を説明する。以下、本実施形態が上記第三実施形態と相違する点を中心に説明し、重複する説明については適宜、割愛する。
【0051】
本実施形態に係る第1制御部8には、上記第三実施形態の構成に加えて、特定部8dが設けられている。この特定部8dは、複数の温度値が相互に一致しないと比較部8bが判定した場合、複数の温度値のうち最も特異な温度値に対応する測温抵抗体11を特定するものである。そして、この場合、置換部8cは、送信部14bが温度制御装置200に送信する上記温度値を、仕様範囲外であって、特定部8dによって特定された測温抵抗体11に対応する温度値へと置換する。
【0052】
詳しくは、図7に示すように、本実施形態に係る記憶部9には、各測温抵抗体11に割り当てられた番号(No.1〜3)と、各番号に関連付けられた温度値と、をテーブル形式で関連付けて記憶する関連付け記憶部9aが設けられている。各番号に関連付けられた温度値は、相互に重複のないように相互に異なる値となっており、また、何れも仕様範囲外の値となっている。ここで、仮に、各測温抵抗体11によって検知された温度値が、正常であれば同一値となるはずだが、200℃(No.1)、200℃(No.2)、220℃(No.3)だったとする。この場合、複数の温度値のうち最も特異な温度値は、No.3の測温抵抗体11が検知した220℃である。従って、特定部8dは、最も特異な温度値に対応する測温抵抗体11として、No.3の測温抵抗体11を特定する。そして、置換部8cは、特定部8dによって特定された測温抵抗体11(No.3)に対応する温度値(430℃)を関連付け記憶部9aから取得し、記憶部9に記憶されている複数の温度値のすべてを、関連付け記憶部9aから取得した温度値(430℃)へと置換する。そして、この温度値(430℃)が温度制御装置200へと送信されることとなる。
【0053】
一方、温度制御装置200には、上記関連付け記憶部9aと同じ内容を記憶する記憶部31が設けられている。この記憶部31を適宜に参照することにより、温度制御装置200は、受信した温度値に基づいて、特異な温度値を検知した測温抵抗体11を特定し、認識することができる。
【0054】
(まとめ)
(請求項4)
以上説明したように本実施形態において温度検出器101は、以下のように構成されている。即ち、測温抵抗体11は、シェル102の長手方向に間隔を空けた3箇所夫々に設けられる。記憶部9に記憶された複数の温度値を相互に比較する比較部8bを設ける。前記複数の温度値が相互に一致しないと前記比較部8bが判定した場合は、前記複数の温度値のうち最も特異な温度値に対応する測温抵抗体11を特定する特定部8dを設ける。前記複数の温度値が相互に一致しないと前記比較部8bが判定した場合は、前記置換部8cは、前記送信部14bが前記温度制御装置200へ送信する上記温度値を、仕様範囲外であって、前記特定部8dによって特定された測温抵抗体11に対応する温度値へと置換する。以上の構成によれば、シェル102の長手方向における温度ムラか、又は、前記複数の測温抵抗体11のうち何れかに不具合が発生したことを、前記温度制御装置200に異常の発生として認識させることができる。加えて、前記温度制御装置200は異常の発生の位置を具体的に認識することができるようになる。
【0055】
(請求項5)
また、置換部8cは、発生した異常の種別を判別し、その異常の種別に応じて、上記の仕様範囲外の温度値を設定している。以上の構成によれば、前記温度制御装置200に発生した異常の種別を認識させることができる。なお、上記実施形態において「発生した異常の種別」としては、「異常の発生の位置の別」が相当する。
【0056】
<第五実施形態>
次に、図8を参照しつつ、本願発明の第五実施形態を説明する。以下、本実施形態が上記第一実施形態と相違する点を中心に説明し、重複する説明については適宜、割愛する。
【0057】
図8に示すように、本実施形態に係る記憶部9には、異常の種別と、異常の種別に関連付けられた温度値と、をテーブル形式で関連付けて記憶する関連付け記憶部9bが設けられている。各異常の種別に関連付けられた温度値は、相互に重複のないように相互に異なる値となっており、また、何れも仕様範囲外の値となっている。具体的には、測温抵抗体11の不具合については460℃が関連付けられ、第1制御部8の不具合については470℃が関連付けられ、その他の不具合(例えばシェル102内の配線の断線など)については480℃が関連付けられている。また、ロータ108には、マイコンで構成された第1制御部8の温度が上昇して保護機能が働いたときにこの温度上昇を検知したり、その他の不具合(シェル102内の配線の断線)を検知したり、する異常検知部23が設けられている。この構成で、比較部8bによって測温抵抗体11の不具合が検知されたり、異常検知部23によって第1制御部8の不具合やその他の不具合が検知されたり、したら、置換部8cは、発生した異常の種別を判別し、その異常の種別に応じて、関連付け記憶部9bを参照しつつ、上記の仕様範囲外の温度値を設定するようになっている。
【0058】
一方、温度制御装置200には、上記関連付け記憶部9bと同じ内容を記憶する記憶部32が設けられている。そして、この記憶部32を参照することにより、温度制御装置200は、受信した温度値に基づいて、発生した異常の種別を特定し、認識することができるようになっている。
【0059】
(請求項5)
以上説明したように、置換部8cは、発生した異常の種別を判別し、その異常の種別に応じて、上記の仕様範囲外の温度値を設定している。以上の構成によれば、前記温度制御装置200に発生した異常の種別を認識させることができる。なお、上記実施形態において「発生した異常の種別」としては、測温抵抗体11の不具合、第1制御部8の不具合、その他の不具合が挙げられる。
【0060】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の実施形態は以下のように変更して実施することができる。
【0061】
即ち、例えば、シェル102の長手方向に間隔を空けた複数箇所夫々に一対の測温抵抗体11を設ける構成が考えられる。この場合、測温抵抗体11自体の不具合を検知可能な構成であることから、以下のような効果が発揮される。即ち、上記複数箇所で検知された複数の温度値のうち何れかが特異な温度値となった場合、上記第三実施形態の構成では、温度ムラが発生したのか、測温抵抗体11に不具合が発生したのか、を判別することが難しい。この点、上述したように複数箇所夫々に一対の測温抵抗体11を設けることで、温度ムラが発生したのか、測温抵抗体11に不具合が発生したのか、をはっきりと判別することができるようになる。
【符号の説明】
【0062】
1 熱処理部
2 ゴデッドローラ
8 第1制御部
8b 比較部
8c 置換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理ローラの温度を検知し、その温度値を、前記熱処理ローラの温度を制御する温度制御装置へ送信する、熱処理ローラ用温度検出装置であって、
前記熱処理ローラの温度を検知するための検知手段と、
前記検知手段によって検知した温度値を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された温度値を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された温度値を前記温度制御装置へ送信可能な送信手段と、
何らかの異常が発生したら、前記送信手段が前記温度制御装置へ送信する上記温度値を仕様範囲外の温度値へと置換する置換手段と、
を備える、熱処理ローラ用温度検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱処理ローラ用温度検出装置であって、
前記検知手段は、前記熱処理ローラの同一箇所に一対で設けられ、
前記記憶手段に記憶された一対の温度値を比較する比較手段を設け、
前記一対の温度値が一致しないと前記比較手段が判定した場合は、前記置換手段は、前記送信手段が前記温度制御装置へ送信する上記温度値を仕様範囲外の温度値へと置換する、
熱処理ローラ用温度検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の熱処理ローラ用温度検出装置であって、
前記検知手段は、前記熱処理ローラの長手方向に間隔を空けた複数箇所夫々に設けられ、
前記記憶手段に記憶された複数の温度値を相互に比較する比較手段を設け、
前記複数の温度値が相互に一致しないと前記比較手段が判定した場合は、前記置換手段は、前記送信手段が前記温度制御装置へ送信する上記温度値を仕様範囲外の温度値へと置換する、
熱処理ローラ用温度検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の熱処理ローラ用温度検出装置であって、
前記検知手段は、前記熱処理ローラの長手方向に間隔を空けた少なくとも3箇所夫々に設けられ、
前記記憶手段に記憶された複数の温度値を相互に比較する比較手段を設け、
前記複数の温度値が相互に一致しないと前記比較手段が判定した場合は、前記複数の温度値のうち最も特異な温度値に対応する前記検知手段を特定する特定手段を設け、
前記複数の温度値が相互に一致しないと前記比較手段が判定した場合は、前記置換手段は、前記送信手段が前記温度制御装置へ送信する上記温度値を、仕様範囲外であって、前記特定手段によって特定された前記検知手段に対応する温度値へと置換する、
熱処理ローラ用温度検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の熱処理ローラ用温度検出装置であって、
前記置換手段は、発生した異常の種別を判別し、その異常の種別に応じて、上記の仕様範囲外の温度値を設定する、
熱処理ローラ用温度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−33530(P2011−33530A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181559(P2009−181559)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(502455511)TMTマシナリー株式会社 (91)
【Fターム(参考)】