説明

熱処理用ローラ装置

【課題】ロールシェルの外面長手方向における温度分布の均一化を気液2相の熱媒体を封入した密閉室で図るとともに、効果的に外表面からの入熱によりロールシェルの直径を部分的に加熱膨張させることができるようにすること。
【解決手段】 肉厚内部に長手方向に伸びる気液2相の熱媒体を封入する密閉室を複数形成してなる中空のロールシェル有し、回転する前記ロールシェルの外面に被処理物を圧接し、前記ロールシェルの中空内に設けた熱源により熱処理する熱処理用ローラにおいて、ロールシェル11の前記密閉室4をロールシェル11の熱源を配置した内面側11cにできるだけ寄せて形成し、熱源に伴う温度斑を防ぐとともに、外部入熱による部分的加熱膨張の機能を高め、直径斑の発生を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱又は奪熱など熱を伴う処理に用いる熱処理用ローラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムを加熱したり、所定の温度にまで奪熱したりする場合、樹脂フィルムなどの被処理物を所定の温度に加熱した回転する中空のローラ本体(以下、ロールシェルという。)に圧接して通過する間に加熱又は奪熱などの熱処理を実行することが行われている。この場合、ロールシェルを加熱する熱源として、電磁誘導発熱機構または加熱流体あるいはヒータが使用され、その熱源は、通常、ロールシェルの中空内に、ロールシェルの長手方向に沿って設けられている。
【0003】
そして、ロールシェルには、ロールシェルの外面長手方向における、熱源に少なからず存在する温度斑を防止するために、ロールシェルの外表面近傍の肉厚部に例えばドリルなどで長手方向に伸びる孔を円周方向に複数形成し、その孔内に水などを適量減圧注入してその孔を封止する密閉室が設けられている。このように、ロールシェルの外表面近傍の肉厚内部に長手方向に伸びる気液2相の熱媒体を封入した密閉室を設けることにより、密閉室の熱媒体が温度の高い部分で熱を奪って気化し、温度の低い部分に移動して熱を放出して液化する。この潜熱の移動により、熱源に伴う温度斑を防ぎロールシェルの外表面温度を均一化し、被処理物を均一に熱処理することができる。
【0004】
ところで、ロールシェルを被処理物の表面の平滑性や光沢を得る場合あるいは被処理物の厚さ調整等を行うために使用する場合がある。この場合、2個のロールシェルの間に被処理物を挿通するいわゆるカレンダー加工が多く、このカレンダー加工では、仕上がりの均一性はロールシェルの表面温度分布よりもロールシェルの直径斑の有無による加圧力の均一性の影響が大きくなる。
【0005】
図4(a)正面図(b)A−A´断面図は、外表面近傍の肉厚内部に長手方向に伸びる気液2相の熱媒体を封入した密閉室を設けたロールシェルを用い、この影響を少なくするために採用される熱処理用ローラ装置の構成を示すもので、この図において1はロールシェル、2は回転駆動軸、3は磁誘導発熱機構、4は気液2相の熱媒体を封入した密閉室である。磁誘導発熱機構3は複数の電磁誘導発熱機構3a、3b、3c、3d、3e、3f・・・を有し、これらの各電磁誘導発熱機構をロールシェル1の外面長手方向に沿って配置されている。そして、この電磁誘導発熱機構3を適宜選択(図示例は3cと3eを選択)励磁して、ロールシェルを部分的に加熱膨張1a,1bさせて直径差を付け、これにより加圧力を調整する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、外表面近傍の肉厚内部に長手方向に伸びる気液2相の熱媒体を封入した密閉室4を設けたロールシェル1では、電磁誘導機構3による外表面からの入熱も密閉室4内の気液2相の熱媒体で均一化され、ロールシェル1を部分的に加熱してもロールシェル1の直径の変化度合いが1a,1bと小さく、所望の直径差が得にくい問題があった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、ロールシェルの外面長手方向における温度分布の均一化を気液2相の熱媒体を封入した密閉室で図るとともに、効果的に外表面からの入熱によりロールシェルの直径を部分的に加熱膨張させることができるようにし、斯かる問題を解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、肉厚内部に長手方向に伸びる気液2相の熱媒体を封入する密閉室を複数形成してなる中空のロールシェルを有し、回転する前記ロールシェルの外面に被処理物を圧接し、前記ロールシェル内に設けた熱源により熱処理する熱処理用ローラにおいて、前記ロールシェルの密閉室を肉厚中心よりもロールシェルの内面側に形成してなることを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、気液2相の熱媒体を封入したロールシェルの長手方向に伸びる密閉室をロールシェルの肉厚中心よりも内面側、すなわち気液2相の熱媒体を封入した密閉室を熱源の近くであるロールシェルの内面側にできるだけ寄せて形成しているので、熱源に伴う温度斑を防ぐとともに、ロールシェルの外表面から部分的に加熱すれば、その加熱部分においてロールシェルの熱膨張による所望の直径変化を得ることができ、カレンダー加工などにおけるロールシェルの直径斑の影響を簡単に低減し、製品加工の均一性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ロールシェルの外面長手方向における温度分布の均一化を気液2相の熱媒体を封入した密閉室で図るとともに、効果的に外表面からの入熱によりロールシェルの直径を部分的に加熱膨張させることができるようにする目的を、ロールシェルの長手方向に伸びる気液2相の熱媒体を封入した密閉室をロールシェルの中空部に配置した熱源の近くにできるだけ寄せて形成に形成することにより実現した。
【実施例1】
【0011】
図1は一実施例に係る熱処理用ローラの構成を示す正面図(a)とB−B´断面図(b)、図2は一使用態様の熱処理用ローラ装置の構成を示す正面図(a)とC−C´断面図である。なお、図4に示す熱処理用ローラ装置と同一の部分には同一の符号を付している。図1および図2において、11は円筒状のロールシェル(ローラ本体)である。このロールシェル11には、肉厚の中心線Lよりもロールシェル11の内面11c側に寄せて気液2相の熱媒体を封入した長手方向に伸びる密閉室4が、内面11cの円周に沿って複数形成されている。
【0012】
このように構成した熱処理用ローラは、図示しないロールシェル11の中空内部に設けた主たる熱源、例えば電磁誘導発熱機構あるいは加熱流体により加熱される。その加熱によりロールシェル11の外表面11dの長手方向において発生する熱源に伴う温度斑は、密閉室4の熱媒体の潜熱の移動により解消し、ロールシェル11の外表面11dの温度分布を均一化することができる。
【0013】
一方、図2に示すようにロールシェル11の外表面11dの長手方向に沿って複数の電磁誘導発熱機構3a、3b、3c、3d、3e、3f・・・を配置し、これらの各電磁誘導発熱機構を適宜選択励磁して、ロールシェル11を部分的に加熱膨張させて直径差を付ける場合には、選択した電磁誘導発熱機構による入熱効果が高められ、選択した電磁誘導発熱機構(図示例は3cと3eを選択)と対応する部分のロールシェル11の直径を符号11a、11bに示すように大きくすることができる。
【0014】
なお、以上の実施例では、気液2相の熱媒体を封入した長手方向に伸びる密閉室4を、ロールシェル11の内面11cの円周に沿って一列に配置しているが図3に示すように二列交互に配置するようにしても良い。この場合、密閉室4間の隙間が減少されるので、ロールシェル11の外表面11dの温度分布をより一層均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例に係る熱処理用ローラの構成を示す正面図(a)とB−B´断面図(b)である。
【図2】図1に示す熱処理用ローラを用いた熱処理用ローラ装置の構成を示す正面図(a)とC−C´断面図(b)である。
【図3】本発明に係る熱処理用ローラの他の例を示す断面図である。
【図4】従来の熱処理用ローラを用いた熱処理用ローラ装置の構成を示す正面図(a)とA−A´断面図(b)である。
【符号の説明】
【0016】
2 回転駆動軸
3 磁誘導発熱機構
4 気液2相の熱媒体を封入した密閉室
11 ロールシェル
11a、11b 加熱膨張部
11c 内周面
11d 外周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉厚内部に長手方向に伸びる気液2相の熱媒体を封入する密閉室を複数形成してなる中空のロールシェルを有し、回転する前記ロールシェルの外面に被処理物を圧接し、前記ロールシェル内に設けた熱源により熱処理する熱処理用ローラにおいて、前記ロールシェルの密閉室を肉厚中心よりもロールシェルの内面側に形成してなることを特徴とする熱処理用ローラ装置。
【請求項2】
ロールシェルの外面長手方向に沿って複数の電磁誘導機構を配置してなることを特徴とする請求項1に記載の熱処理用ローラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−342897(P2006−342897A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−169574(P2005−169574)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(000110158)トクデン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】