説明

熱劣化防止ポリアミド布帛およびその製造方法

【課題】ポリアミド系繊維を主体とする淡色の布帛において、アミノ末端基の量を制限することにより熱劣化防止性を良好に付与した布帛とその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリアミド系繊維を主体とする布帛であって、明度V値が7以上、アミノ末端基が30meq/kg・ポリアミド以下で、その布帛が180℃の環境に1時間暴露後の引張り強力保持率が75%以上である熱劣化防止ポリアミド布帛であり、また、ポリアミド系繊維を主体とする布帛をフィックス剤固形分濃度0.5重量%(対繊維)以上の処理液で50〜100℃×10分以上の処理に供する上記の熱劣化防止ポリアミド布帛の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド系繊維を主体とする無色または淡色の布帛において、アミノ末端基の量を制限することにより熱劣化防止性を付与した布帛に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリアミド系繊維は、種々の優れた特性を有するので、広範囲の用途へ展開されている。
【0003】
特に、柔軟、吸水性を利用したインナー類、また染色発色性の良さから水着、スポーツ用アウトウェア等、諸物性から産業資材用途、パラシュート等へ利用されている。
【0004】
ポリアミド系布帛においては、染色加工前に布帛形態安定化のため、150〜200℃の温度で15秒〜2分間の乾熱処理を施すことが通常行われている。この熱処理によりアミノ末端基が減少し酸性染料が染着されにくくなるが、極濃色以外であれば特に色彩において問題ないレベルとなっている。
【0005】
ポリアミド系繊維の問題点として、長期間に及ぶ布帛使用によって熱酸化劣化を起こすことによりアミノ末端基が減少することや、ポリマー主鎖中のアミド結合が切断されアルデヒドおよびケトンカルボニル基が生成し、これがアミノ基と反応して黄変、強度低下をきたす原因となることが知られている。
【0006】
特に、染料を使用していない無着色品や極微量の染料の使用になる淡色品においては、アミノ末端基が染料とほとんど結合していない状態であるので、アミノ末端基が多く残る結果となっており、熱酸化劣化を受けやすい状態である。これについての解決方法は、いまだに見出されていない状況である。
【0007】
一般的に、熱酸化劣化によるポリアミド系繊維のアミノ末端基の減少や、黄変を防ぐ方法として、通常のヒンダードフェノール系もしくはヒンダードアミン系、セルカルバシド系化合物等の酸化防止剤を重合時もしくは染色加工時、添加する方法が知られているが、これらの方法であればアミノ末端基の減少を抑え、黄変を防ぎ、結果として染色性向上に有効である。
【0008】
しかし、前者の重合時添加方法では、原糸自身が着色したり、最終製品で残存する酸化防止剤に起因する各種黄変トラブル、例えば、NOXガス、各種燃焼ガス等のガス黄変や光、熱での酸化防止剤自身の黄変が問題となる場合がある。また、後者の染色加工段階での添加する方法では、後加工工程が増えて効率的生産には不向きである等の問題があった。
【0009】
また、ポリアミド系繊維構造物は、大気中の酸化窒素化合物(NOX)、ダンボール中に含まれるリグニンの分解物であるバニリン、包装フイルム材等に含まれるBHT等によって黄変するという欠点を有しており、これには繊維の分子構造末端のアミノ末端基が関与しているといわれている。
【0010】
従来、ポリアミド系繊維に黄変防止効果を付与する方法として、アミノ末端基をイオン結合的に封鎖する方法が提案されている(特許文献1)。
【0011】
しかしながら、イオン結合によるアミノ末端基を封鎖する方法では、染色前に行うと染色による黄変防止効果の低下、あるいは黄変防止効果が全くなくなるといった問題点がある。また、イオン結合による黄変防止は通常、染色同時、染色後に行われ、染料と同一機構で結合するため染色性に影響する可能性があり、染色に影響しない濃度での処理ではアミノ末端基の封鎖性が低いといった問題点がある。
【0012】
また、紡糸時に酸無水物を混ぜて、アミノ末端基量を減少させる方法も提案されているが(特許文献2)、紡糸性が悪くなったり、染色性が低下するといった問題点があった。
【0013】
その他にアミノ末端基の処理に関する特許が下記のとおり挙げられているが、染料使用していない無着色品や極微量の染料使用の淡色品において、熱劣化防止に関する特許は見受けられない状況である。
【0014】
すなわち、濃色品の染色堅牢度向上として染色した後、タンニン酸及び吐酒石にて固着処理を施す方法の提案(特許文献3)、あるいは、2−メルカプトベンゾイミダゾール化合物の非ハロゲン系銅錯塩を含有したポリアミド系繊維構造物は、染色時の発色性や鮮明性が良好でかつ高温に曝されたときの耐光性や耐黄変性に優れているとの提案(特許文献4)、また、ヒンダードアミン化合物を付与した後、乾熱処理し、次いで染色をすることでアミノ末端基の減少を押さえ染色性の向上をはかるとの提案(特許文献5)、また、酸無水分でポリアミド系繊維を処理することで、アミノ末端基が封鎖されバニリン黄変防止等の対策が得られるとの提案(特許文献6)、また、ベンゾオキサゾール系蛍光増白剤及びペリノン系油溶性赤色染料を含有したポリアミド系繊維構造物は、白度と耐黄変性に優れているとの提案(特許文献7)、また、アルデヒド類でポリアミド系繊維を処理することで、アミノ末端基が封鎖され黄変防止効果を付与するとの提案(特許文献8)、また、酸化防止剤をポリアミド系繊維に付与後、仮撚加工することにより耐熱性ポリアミド系繊維を製造する方法の提案(特許文献9)、また、耐熱性に優れ、染色品の品位が良好な酸化防止剤が含有されたポリアミド系繊維であり、付与方法として紡糸油剤に入れて行うという方法の提案(特許文献10)がされている。
【特許文献1】特公昭55−47150号公報
【特許文献2】特開平1−229810号公報
【特許文献3】特開平6−306780号公報
【特許文献4】特開平07−034323号公報
【特許文献5】特許第3364997号公報
【特許文献6】特開平8−060541号公報
【特許文献7】特許第3388943号公報
【特許文献8】特開平11−050379号公報
【特許文献9】特開平12−328453号公報
【特許文献10】特開平14−061075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、かかる従来技術の問題点を解決し、ポリアミド系繊維を主体とする無色または淡色の布帛においてアミノ末端基の量をある一定値以下に制限することにより、熱劣化防止性を付与した布帛を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明はかかる課題を解決するために、次の(1)〜(6)のような手段を採用するものである。
(1)ポリアミド系繊維を主体とする布帛であって、明度V値が7以上、アミノ末端基が30meq/kg・ポリアミド以下で、その布帛が180℃の環境に1時間暴露後の引張り強力保持率が75%以上であることを特徴とする熱劣化防止ポリアミド布帛。
(2)ポリアミド系繊維を主体とする布帛をフィックス剤固形分濃度0.5重量%(対繊維)以上の処理液で50〜100℃×10分以上の処理に供することを特徴とする上記(1)に記載の熱劣化防止ポリアミド布帛の製造方法。
(3)フィックス剤が合成タンニンまたは天然タンニンからなることを特徴とする上記(2)に記載の熱劣化防止ポリアミド布帛の製造方法。
(4)上記(1)の熱劣化防止ポリアミド布帛を用いたパラシュート。
(5)上記(1)の熱劣化防止ポリアミド布帛を用いたハングライダー。
(6)上記(1)の熱劣化防止ポリアミド布帛を用いたカイト。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ポリアミド系繊維を主体とする明度V値が7以上の無色または淡色の布帛において、アミノ末端基の量をある一定量以下に制限することにより、熱劣化防止効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0019】
本発明のポリアミド系繊維の熱劣化防止布帛およびその製造方法は、ポリアミド系繊維を主体とする布帛であって、明度V値が7以上、アミノ末端基が30meq/kg・ポリアミド以下で、その布帛が180℃の環境に1時間暴露後の引張り強力保持率が75%以上であることを特徴とする熱劣化防止ポリアミド布帛である。
【0020】
その製造方法は、ポリアミド系繊維を主体とする布帛をフィックス剤固形分濃度0.5重量%(対繊維)以上の処理液で50〜100℃×10分以上の処理することを特徴とするものである。
【0021】
この方法に至ったのは、ある一定量の染料で染色された有色物は熱劣化テストにおいて強度保持率が高いことがわかっていた。これはアミノ末端基が染料と結合して安定化しているためである。この点に着眼し、染色なしの無着色品や極淡色品はアミノ末端基量が40meq/kg・ポリアミド以上と多いため、染料以外の無色物でアミノ末端基を封鎖すれば良いことを考えた。濃色品で染色堅牢度向上の目的で用いるフィックス剤が最良と考え実験した結果、熱劣化が少なくなることをつきとめた。
【0022】
ここで、明度V値は0が完全な黒で、10が完全な白である、本発明の対象となるものは明度V値が7以上の無着色品および極淡色品である。アミノ末端基は、通常のナイロン6、ナイロン66で生機セット/染色前は40〜80meq/kg・ポリアミド程度あり、極淡色以上の有彩色(明度V値7以下)に染色した場合は、30meq/kg・ポリアミド以下に下がっていて熱劣化が少なくなっている。一方、染料なしで染色条件と同じ処理をした場合や、極淡色に染めた場合(明度V値7以上)はアミノ末端基がほとんど下がらず40meq/kg・ポリアミド以上の数値を示し、熱劣化をきたす。このような状況下で、特に、本発明のポリアミド布帛は、明度V値が7以上、アミノ末端基が30meq/kg・ポリアミド以下という特性を前述のとおりに満足するものである。
【0023】
本発明にかかる熱劣化防止ポリアミド布帛の製造方法は、特に限定されないが、好ましくは、ポリアミド系繊維を主体とする布帛をフィックス剤固形分濃度0.5重量%(対繊維)以上の処理液で50〜100℃×10分以上の処理に供することを特徴とするものである。
【0024】
フィックス剤固形分濃度0.5重量%(対繊維)以下や、処理液温度が50℃以下の場合や、処理時間が10分以下の場合は、アミノ末端基とフィックス剤の反応がほとんど起こらず30meq/kg・ポリアミド以下になることがないので、本発明の目的を達しない。
【0025】
また、フィックス剤の固形分濃度が5重量%(対繊維)以上や、処理液温度が100℃以上の場合や、処理時間が30分以上の場合は、アミノ末端基とフィックス剤の反応が完結していて30meq/kg・ポリアミド以下になっているが、コストの面等で生産技術としては適していない。
【0026】
本発明でいうポリアミド系繊維とは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のアミド結合を有する繊維である。また、アミド系を主体とするというのは、布帛の構成に占めるポリアミド系繊維の割合が重量比で80%以上をいう。該繊維と他繊維との混紡、混繊、交織、交編からなる構造物であり、織物、編物、不織布等のいかなる形態のものであってもよい。
【0027】
本発明にかかるポリアミド布帛の主な用途としては、熱劣化が少ないことが期待される用途であり、特に使用者の安全にかかわるナイロンフィラメント100%使いからなる、パラシュートやハンググライダー、カイト等におすいて好適なものである。それらは長期間使用、保管による温度、湿度、光による劣化が生じないものが要求される。経日劣化の強制テスト方法として、サンシャインメータやウエザオメータによる数日間の照射後の変退色や強度変化(劣化)で判断することができるが、それよりも早い評価方法として、ポリアミド系繊維に対しては、180℃環境下で1時間暴露後の引張り強度を測定し、強力保持率でチェックする方法がパラシュート用途として採用されている。
【0028】
フィックス剤としては、特に限定されないが、合成タンニンまたは天然タンニンを用いること、またそれらを組合わせて用いることが最良である。
【0029】
本発明で用いられる合成タンニンの例としては、たとえば、フェノール、クレゾール、安息香酸、ナフトール、ビスフェノール等のフェノール性水酸基を含むものを原料とするノボラック型あるいはレゾール型フェノール系合成タンニン、フェノール、o−クロールフェノール等のフェノール類と硫黄の加硫による縮合物を原料とするチオフェノール系合成タンニン、ジヒドロキシジフェニルスルホン系合成タンニン、ナフタリン系合成タンニン、スルホンアミド系合成タンニン、カルビシイミド系合成タンニン等があり、これらをそれぞれ単独または任意の割合の混合物などとして使用できる。
【0030】
また、本発明で用いられる天然タンニンとしては、縮合型タンニン、加水分解性タンニン、およびこれらの両者の性質を併せ持つ複合タンニンを総称するものである。樹木の幹、樹皮、木枝、根、種子、果実、葉等に広く存在するポリフェノールを基本構造とする複雑な構造を持つ有機化合物である。
【0031】
これらの天然タンニンは、前述のように単独または任意の割合の混合物として使用することができる。
【0032】
本発明者らの知見によれば、合成タンニンまたは天然タンニンと水溶性金属塩とを組み合わせると、さらに熱劣化防止効果が強化される。水溶性金属塩しては、チオシアン酸チタン等のような水溶性チタン塩、重クロム酸カリウム、重クロム酸ナトリウム等のような水溶性クロム塩、塩化コバルト等のような水溶性コバルト塩、酢酸カリウム等のような水溶性カリウム塩、硫酸アルミニウム等のような水溶性アルミニュウム塩、酒石酸ビスマスカリウム、テトラクロロビスマス酸ナトリウム等のような水溶性ビスマス塩、酒石酸アンチモニルナトリウム、酒石酸アンチモニルカリウム等のような水溶性アンチモン塩、硫酸第一マンガン等のような水溶性マンガン塩等を用いることができ、それぞれ単独または任意の割合の混合物として使用できる。合成タンニンまたは天然タンニンの固形分濃度使用量は、0.5〜5重量%、水溶性金属塩の固形分濃度使用量は0.5〜5重量%の範囲で用いるようにすればよい。この範囲以下であれば、一般に高い熱劣化防止効果を得ることは難しく、一方、該範囲を超える量の添加量であれば熱劣化防止の効果がほとんどは変わらず、黄変等の悪影響が出てくる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例中の評価・測定は、次の方法で行ったものである。
【0034】
<明度V値評価>
熱劣化試験前の生地を、JIS Z 8721明度表示に準じて評価する。明度V値の測定は、JIS Z 8722に準じる。測定計器の一例としてミノルタ(株)製CM−3610T スペクトロフォトメーターを使用することができる。測定サンプル数は1試料3点(n数=3)とし、その平均値を計算し代表値とする。
【0035】
<アミノ末端基>
(a)試料1gを秤量し、50mlのフェノール/エタノール=8/2混合溶液で1時間溶解 する。
(b)(a)項の溶液を、N/50塩酸水溶液で、チモールブルーを指示薬として中和滴 定し、塩酸消費量(A)を0.01ml単位まで正確に測定する。
(c)試料を溶解していない溶液を、同様に中和滴定し、塩酸消費量(B)を0.01ml単位まで正確に測定する。
(d)試料のアミノ末端基量を下式により算出する。測定温度は20℃とする。
【0036】
アミノ末端基量(meq/kg・ポリアミド)
=2×{A(ml)−B(ml)}/試料(g)×10-4
(e)測定サンプル数は1試料3点(n数=3)とし、その平均値を計算し代表値とする。
【0037】
<耐熱引張り強力保持率>
幅6cm×長さ25cmの試験布をタテ、ヨコ方向に各5枚採取する。試験片の片側をラックで止め、自由端の端に28gのクランプを取り付け下げる。ギヤ老化試験機を用い、180±3℃に余熱しておき、ラックに取り付けた試験片を炉にすばやく入れ、1時間暴露する。このときの空気循環は完全に止めた状態とする。暴露終了後の試験片と暴露なしの試験片を標準状態(20℃、60%RH)で1日放置する。引っ張り強さ試験はFED−STD−191 5104の方法で実施する。
【0038】
強力保持率は、下記計算式により求め、タテ、ヨコ方向の平均値を求めて本発明の強力保持率とする。
強力保持率(%)=(暴露あり試験布の強力/暴露なし布の強力)×100
【0039】
実施例1
酸化チタンを0.02重量%含むポリヘキサメチレンアジパミド(アミノ末端基45meq/kg・ポリアミド)チップを290℃で溶融し、丸型の吐出孔を有する紡糸口金から吐出し、冷却、給油したのち700m/minにて引取った。引き続き、3.5倍、600m/minで延伸し、110デシテックス、30フィラメント、撚数15t/mのポリアミドマルチフィラメント糸条を得て、次に撚糸機で追撚し撚数300t/mとした。ドビー織りで、タテ糸、ヨコ糸共同じ糸を用いて70本/インチの織密度で織り上げた。次に、通常の方法で精錬、乾燥を行い、180℃×1分の熱セットを行った。次にジッカー染色機に熱セット上がりのナイロン66の生地を入れ、その中に固形分30%のスルホンアミド系合成タンニンを固形分濃度1.2%owf(対繊維重量)投入し、常温から2℃/分で昇温し80℃になった時点で80℃で20分間キープし、その後3℃/分で降温し、40℃で排水、水洗をおこなった。次に、シリンダー乾燥機にて100℃で乾燥したあと、170℃×1分で仕上セットをおこない、本発明にかかるパラシュート用の生地を得た。
【0040】
この生地の目付けは78g/m2 であった。アミノ末端基量、明度V値を測定し、表1に示した。この生地を上述規定の方法で180℃×1時間の暴露を行い、暴露前の生地と暴露後の生地の引張強力を測定し、強力保持率を計算した結果を表1に示した。
【0041】
かかる表1からわかるようにアミノ末端基量は27.9meq/kg・ポリアミドと、30meq/kg・ポリアミド以下であり、また引張強力保持率が95.0%と、75%以上であり熱劣化防止が効いていることがわかる。
【0042】
実施例2
実施例1で作製した生機を実施例1と同じ条件で精練、乾燥、熱セットをおこない、液流染色機に熱セット上がりのナイロン66の生地を入れ、その中にミーリングタイプ、イエロー系酸性染料(品名:Kayanol Milling Yellow 3GW)を1%owf(対繊維重量)、固形分30%のスルホンアミド系合成タンニンを固形分濃度1.2%owf(対繊維重量)、pH調整剤を投入し、常温から2℃/分で昇温し95℃になった時点で95℃で30分間キープし、その後3℃/分で降温し、40℃で排水、水洗をおこなった。
【0043】
次にシリンダー乾燥機にて100℃で乾燥したあと、170℃×1分で仕上セットをおこない、本発明のかかるパラシュート用の生地を得た。
【0044】
この生地の目付けは78g/m2 であった。アミノ末端基量、明度V値を測定し表1に示した。この生地を上述規定の方法で180℃×1時間の暴露を行い、暴露前の生地と暴露後の生地の引張強力を測定し、強力保持率を計算により求め表1に示した。かかる表1からわかるようにアミノ末端基量は20.3meq/kg・ポリアミドと、30meq/kg・ポリアミド以下であり、また引張強力保持率が98.8%と、75%以上であり熱劣化防止が効いていることがわかる。
【0045】
実施例3
実施例1で作製した生機を実施例1と同じ条件で精練、乾燥、熱セットをおこない、液流染色機に熱セット上がりのナイロン66の生地を入れ、その中にミーリングタイプ、イエロー系酸性染料(品名:Kayanol Milling Yellow 3GW)を1%owf(対繊維重量)、pH調整剤を投入し常温から2℃/分で昇温し95℃になった時点で95℃で30分間キープし、その後3℃/分で降温し、40℃で排水、水洗をおこなった。
【0046】
次にシリンダー乾燥機にて100℃で乾燥したあと、次にジッカー染色機に染色上がりの生地を入れ、その中に固形分30%のスルホンアミド系合成タンニンを固形分濃度1.2%owf(対繊維重量)投入し、常温から2℃/分で昇温し80℃になった時点で80℃で20分間キープし、その後3℃/分で降温し、40℃で排水、水洗をおこなった。次にシリンダー乾燥機にて100℃で乾燥したあと、170℃×1分で仕上セットをおこない、本発明にかかるパラシュート用の生地を得た。
【0047】
この生地の目付けは76g/m2 であった。アミノ末端基量、明度V値を測定し表1に示した。この生地を上述規定の方法で180℃×1時間の暴露を行い、暴露前の生地と暴露後の生地の引張強力を測定し、強力保持率を計算した結果を表1に示した。表1からわかるようにアミノ末端基量は23.2meq/kg・ポリアミドと、30meq/kg・ポリアミド以下であり、また、引張強力保持率が97.4%と、75%以上であり熱劣化防止が効いていることがわかる。
【0048】
比較例1
実施例1で上がった生機を用い、通常の方法で精錬、乾燥を行い、180℃×1分の熱セットをおこない、パラシュート用の生地を得た。この生地の目付けは76g/m2 であった。
【0049】
アミノ末端基量、明度V値を測定し表1に示した。この生地を上述規定の方法で180℃×1時間の暴露を行い、暴露前の生地と暴露後の生地の引張強力を測定し、強力保持率を計算により求めて表1に示した。表1からわかるようにアミノ末端基量は43.2meq/kg・ポリアミドと、30meq/kg・ポリアミド以上であり、また引張強力保持率が65.2%と、75%以下であり熱劣化が大きいことがわかる。
【0050】
比較例2
実施例3の染色上がり生地をシリンダー乾燥機にて100℃で乾燥したあと、170℃×1分で仕上セットをおこない、パラシュート用の生地を得た。この生地の目付けは76g/m2 であった。アミノ末端基量、明度V値を測定し表1に示した。この生地を上述規定の方法で180℃×1時間の暴露を行い、暴露前の生地と暴露後の生地の引張強力を測定し、強力保持率を計算により求め、表1に示した。
【0051】
かかる表1からもわかるようにアミノ末端基量は32.0meq/kg・ポリアミドと、30meq/kg・ポリアミド以上であり、また引張強力保持率が70.5%と、75%以下であり熱劣化が大きいことがわかる。
【0052】
【表1】

表1から明らかなように、実施例1〜3のものは、比較例1、2のものに比較して強力保持率が明らかに高く、本発明の所期の効果が得られている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系繊維を主体とする布帛であって、明度V値が7以上、アミノ末端基が30meq/kg・ポリアミド以下で、その布帛が180℃の環境に1時間暴露後の引張り強力保持率が75%以上であることを特徴とする熱劣化防止ポリアミド布帛。
【請求項2】
ポリアミド系繊維を主体とする布帛をフィックス剤固形分濃度0.5重量%(対繊維)以上の処理液で50〜100℃×10分以上の処理に供することを特徴とする請求項1に記載の熱劣化防止ポリアミド布帛の製造方法。
【請求項3】
フィックス剤として、合成タンニンまたは天然タンニンからなるものを用いることを特徴とする請求項2記載の熱劣化防止ポリアミド布帛の製造方法。
【請求項4】
請求項1の熱劣化防止ポリアミド布帛を用いたことを特徴とするパラシュート。
【請求項5】
請求項1の熱劣化防止ポリアミド布帛を用いたことを特徴とするハングライダー。
【請求項6】
請求項1の熱劣化防止ポリアミド布帛を用いたことを特徴とするカイト。

【公開番号】特開2006−2273(P2006−2273A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178613(P2004−178613)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(000182247)サカイオーベックス株式会社 (35)
【Fターム(参考)】