説明

熱収縮包装用多層フィルム

【課題】 優れた耐久性、寸法安定性、機械強度、耐油性、耐溶剤性、インキ密着性を持ち、優れた収縮後外観を持つ熱収縮包装用多層フィルムを提供する。
【解決手段】 共押出製膜法で製造された2つの表層および芯層から構成される多層フィルムにおいて、多層フィルムのポリエステルはチタン化合物を触媒として重合され、多層フィルムは80℃の温水中で10秒間処理した際の温湯中収縮率が主収縮方向に35%以上かつ主収縮方向と直角方向に5%以下であり90℃温水中で50%収縮させた後のヘーズが収縮前のヘーズの1.5倍以下であることを特徴とする、熱収縮包装用多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱収縮包装用に用いるポリエステルの多層フィルムに関する。詳しくは、優れた耐久性、寸法安定性、機械強度、耐油性、耐溶剤性およびインキ密着性を備える、高収縮包装材料として有用な多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ボトルのラベルをはじめとする収縮包装用途にはポリエステル系収縮フィルムやポリスチレン、ポリ塩化ビニル等の非ポリエステル系収縮フィルムが使用されている。これらのうち、ポリエステル系収縮フィルムは、耐溶剤性、耐久性、寸法安定性、機械強度などが非ポリエステル系収縮フィルムよりも優れる。
【0003】
ポリエステル系収縮フィルムは非晶質の原料を用いると収縮性と溶剤による接着性が優れたものとなる。しかしこの場合には機械的強度が不足する。ポリエステル系収縮フィルムの機械的強度を向上させるための技術として、3層構造で表層にのみ非晶質のポリエステルを用い芯層に結晶性の高いポリエステルを用いる方法が提案されている(特開2000−190440号公報)。
【特許文献1】特開2000−190440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この技術では収縮後の多層フィルムのヘーズが収縮前に比べて大幅に高くなり、高い収縮率を必要とされる用途には適用し難い。
【0005】
本発明の目的は、上述のポリエステル系収縮フィルムの欠点を解決し、例えば50%という高い収縮後であっても収縮前の透明性が大きく損なわれることのない優れた収縮後外観をもたらすポリエステル系の熱収縮包装用多層フィルムを提供することにある。すなわち本発明は、優れた耐久性、寸法安定性、機械強度、耐油性、耐溶剤性、インキ密着性を持つとともに、優れた収縮後外観を持つ熱収縮包装用多層フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、共押出製膜法で製造された表層および芯層から構成される多層フィルムであって、表層は下記ポリエステルAからなり、芯層は下記ポリエステルBからなり、多層フィルムは80℃の温水中での10秒間処理による温湯中収縮率が主収縮方向に35%以上かつ主収縮方向と直角方向に5%以下であり、90℃温水中で50%収縮させた後のヘーズが収縮前のヘーズの1.5倍以下であることを特徴とする、熱収縮包装用多層フィルムである。
【0007】
ただし、ポリエステルAは、テレフタル酸95〜70モル%およびナフタレンジカルボン酸5〜30モル%のジカルボン酸成分ならびにジオール成分としてエチレングリコール95〜80モル%および1,4−ブタンジオール5〜20モル%からなりチタン化合物を重合触媒として重合されたポリエステルであり、ポリエステルBは、テレフタル酸95〜75モル%およびイソフタル酸5〜25モル%のジカルボン酸成分ならびにジオール成分としてエチレングリコールからなりチタン化合物を重合触媒として重合されたポリエステルである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた耐久性、寸法安定性、機械強度、耐油性、耐溶剤性を持つとともに、優れた収縮後外観を持つ収縮包装用多層フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
[表層]
本発明において表層を構成するポリエステルAは、テレフタル酸95〜70モル%およびナフタレンジカルボン酸5〜30モル%のジカルボン酸成分ならびにジオール成分としてエチレングリコール95〜80モル%および1,4−ブタンジオールからなりチタン化合物を重合触媒として重合されたポリエステルである。これは換言すれば、酸成分がテレフタル酸とナフタレンジカルボン酸のモル比が95/5〜70/30の割合で構成され、グリコール成分がエチレングリコールと1,4−ブタンジオールのモル比が95/5〜80/20の割合で構成されたポリエステルである。
【0010】
ポリエステルA中のナフタレンジカルボン酸成分の量は全ジカルボン酸成分の5〜30モル%、好ましくは7〜25モル%、さらに好ましくは10〜20モル%である。5モル%未満であるとフィルムにしたときの結晶性が高くなりすぎ、収縮包装用に必要な溶剤によるシール性が不足する。30モル%を超えると融点が低下し非晶性が高くなり、乾燥および製膜のときの取り扱いが難しく実用に適さない。
【0011】
ポリエステルA中の1,4−ブタンジオール成分の量は全グリコール成分の5〜20モル%、好ましくは7〜17モル%、さらに好ましくは10〜15モル%である。5モル%未満であるとフィルムにしたときの配向が高くなりすぎ、インキ密着性が悪化し易くなり好ましくない。20モル%を超えると耐熱性が低下し、フィルム同士のブロッキング性が悪化するため実用に適さない。
【0012】
表層は両面にあるため2つあるが、相互に同じ組成であってもよく異なってもよいが、多層フィルムを効率よく製造するために同一の組成であることが好ましい。
【0013】
[芯層]
芯層は二層以上の層から構成されてもよいが、芯層は一層であることが好ましい。芯層が二層以上の層から構成される場合、少なくとも一層はポリエステルBからなる層である。
【0014】
芯層を構成するポリエステルBはテレフタル酸95〜75モル%およびイソフタル酸5〜25モル%のジカルボン酸成分ならびにジオール成分としてエチレングリコールからなりチタン化合物を重合触媒として重合されたポリエステルである。
【0015】
ポリエステルB中のイソフタル酸の量は5〜25モル%、好ましくは7〜20%、さらに好ましくは10〜15%である。25モル%を超えると芯層の非晶性増加に伴い機械強度の低下を招く。5モル%未満では結晶化が起こりやすく、引裂き強度の低下の原因となる。
【0016】
[ポリエステルの共重合成分]
ポリエステルAおよび/またはbには、本発明の効果を損ねない範囲で他の成分を共重合してもよい。共重合成分としては、ジカルボン酸成分として、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、アンスラセンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸を例えば挙げることができる。ジオール成分として、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコールを例えば挙げることができる。共重合成分は、単独で用いてもよく2種以上を用いてもよい。ただし、1,4−ブタンジオールをジオール成分として共重合するとポリエステルの融点降下が起こり耐熱性が悪化するので好ましくない。そのためポリエステルAは、1,4−ブタンジオールをポリブチレンテレフタレートのブレンド成分として含有することが好ましい。
【0017】
[ポリエステルの製造方法]
ポリエステルAは、重合触媒としてチタン化合物を使用して重合する。例えば、テレフタル酸ジメチル及び2−6ナフタレンジカルボン酸ジメチルとエチレングリコールからチタン化合物を用いてエステル交換反応を行ないこれを重縮合するか、テレフタル酸および2−6ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールとをチタン化合物を重合触媒として直接エステル化によりオリゴマーを得た後、溶融重合することにより、製造することができる。
【0018】
ポリエステルBは、重合触媒としてチタン化合物を使用して重合する。例えば、テレフタル酸ジメチル及びイソフタル酸ジメチル及びエチレングリコールからチタン化合物を用いてエステル交換反応法を行いこれを重縮合するか、テレフタル酸、イソフタル酸およびエチレングリコールとをチタン化合物を重合触媒として直接エステル化によりオリゴマーを得た後、溶融重合することにより製造することができる。
【0019】
重合触媒のチタン化合物にはゲルマニウム化合物を併用してもよい。しかし、アンチモン化合物を使用すると結晶性が高くなり易く、その結果として収縮後のヘーズが高くなるため、本発明ではアンチモン化合物を併用してはいけない。したがって、本発明においては、重合触媒は実質的にアンチモン化合物を含有せず、本発明の多層フィルムは実質的にアンチモン元素を含有しない。実質的に含有しないとは、多層フィルムを構成するポリエステル中のアンチモン元素の濃度が、例えば1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下をいう。
【0020】
チタン化合物としては例えばテトラブトキシチタンを用いればよい。そのほかにテトライソプロポキシチタン、酢酸チタン等が挙げられる。チタン化合物の触媒としての添加量は、ポリエステル中のチタン元素濃度として、好ましくは1〜30ppm、さらに好ましくは2〜25ppmである。
ゲルマニウム化合物としては例えば二酸化ゲルマニウムを用いればよい。
【0021】
[収縮率]
本発明の多層フィルムは、80℃の温水中での10秒間処理による温湯中収縮率が主収縮方向に35%以上、好ましくは40〜55%であり、かつ主収縮方向と直角方向に5%以下である。そして、70℃の温水中での10秒間処理による温湯中収縮率が主収縮方向に好ましくは5〜30%である。収縮率がこの範囲であることにより、熱収縮包装用に用いた際の特性が良好なものとなる。収縮率は、JIS−Z1709に準じてフィルム平面方向の測定を行い、最も収縮の大きい方向を主収縮方向とする。
【0022】
多層フィルムの収縮は、長手方向、幅方向のどちらか一方のみで起こるのが理想的であるが、通常は主収縮方向に直角の方向にも若干の熱収縮が見られる。本発明の多層フィルムでは、この主収縮方向に直角な方向の熱収縮は80℃の温水中で10秒間処理した際の温湯中収縮率で5%以下である。
【0023】
[結晶融解熱量]
本発明の多層フィルムの示差走査熱量計により測定した結晶融解熱量ΔHmが、好ましくは20〜60J/g、さらに好ましくは25〜55J/g、特に好ましくは30〜50J/gである。ΔHmはフィルム中の結晶(製膜時の配向結晶及び、昇温中の冷結晶化)存在量の指標となり、ΔHmが大きいほど結晶の存在量は多いと考えられる。ΔHmが30J/g未満ではフィルムが非晶に近くフィルムの機械的強度の不足が生じることがあり好ましくない。他方、60J/gを超えると結晶化度が高くなりすぎ、引裂き強度のような包装材料に不可欠な物性が低下することがあり好ましくない。
【0024】
[滑剤]
本発明において、2つの表層のいずれか一方または両方には、平均粒径が2.5μm以下の滑剤が含有されていることが好ましい。平均粒径が2.5μmを越えると多層ポリエステルフィルムの透明性を損なうため、包装材料として好ましくない。
【0025】
この滑剤は無機粒子、有機粒子を用いることができ、好ましくは無機粒子を用いる。無機粒子としては、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウムが例示できる。有機粒子としては、シリコーン粒子を例示できる。滑剤の好ましい添加量は、その粒径により異なるが、フィルムの巻き取り性および透明性に悪影響を及ぼさない範囲で適宜選択するとよい。これらの滑剤は芯層にも配合することができる。
【0026】
[ヘーズ]
本発明の多層フィルムのヘーズ(くもり度)は、包装用材料として透明度を求められる場合、厚み45μmで収縮前で好ましくは10%以下、さらに好ましくは6%以下である。50%収縮後で好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。
【0027】
そして、本発明の多層フィルムは、90℃温水中で50%収縮させた後のヘーズが収縮前のヘーズの1.5倍以下である。1.5倍を超えると収縮後の製品の外観が著しく損なわれることから高収縮させる用途として不適なものである。
【0028】
[フィルムの製造方法]
本発明の多層フィルムを製造するためには、例えば次のようにするとよい。すなわち、表層用にポリエステルAを、芯層用にポリエステルBを、それぞれ乾燥後、押出機にて溶融し、ダイより吐出してポリエステルAを表層として、ポリエステルBを芯層とする多層シート状に成形し、これを延伸および熱固定することにより多層フィルムとする。
【0029】
フィルムの熱固定温度は、表層を構成するポリエステルのうち最も高いTg(ガラス転移温度)を基準にプラスマイナス20℃の範囲であることが好ましい。熱固定温度が高すぎると製品フィルムの熱収縮率が小さくなり、熱収縮包装用としての本来の機能を失うし、低すぎると切断し易いため生産性が低下するからである。
【0030】
本発明の多層フィルムにみられる一軸収縮性を持たせるには、主収縮方向への一軸延伸が最も適している。しかし、一軸延フィルムはポリマーの配向特性上、引裂き性が低下してしまうため、用途によっては僅かでも主収縮方向と直角方向にも延伸するのが好ましい場合もある。この場合主収縮方向と直角方向への延伸倍率は高々2倍程度が好ましいが、用途、要求特性により1.0〜2.0倍までの範囲で適宜選択するのがよい。
【0031】
[厚み]
本発明の多層フィルムの厚みは、好ましくは20〜70μm、さらに好ましくは30〜60μm、特に好ましくは35〜55μmである。20μm未満であるとフィルムの腰が弱くなって、ラベル装着時に折れ曲がったりして不良品を発する可能性があり好ましくない。70μmを超えるとフィルムの剛性(腰)が強すぎて、加工時の取り扱いが難しくなり好ましくない。
【0032】
[層構成]
本発明の多層ポリエステルフィルムの層構成は、ポリエステルA/ポリエステルB/ポリエステルAの順に積層された3層構成が最も好ましい。このような積層構造は2台の押出し機とマルチマニホールドダイもしくはフィードブロックを用いる共押出し法により形成することができる。層構成における各層の厚み比率は、(一方の表層の厚み+他方の表層の厚み)/芯層の厚みとして、好ましくは5/95〜30/70さらに好ましくは10/90〜20/80である。2つの表層の厚み比率は、好ましくは30/70〜70/30、さらに好ましくは40/60〜60/40、特に好ましくは50/50である。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例を掲げて本発明をさらに説明する。なお、各特性の測定は下記の方法に従った。
(1)フィルム厚み、層構成
打点式フィルム厚み計を用い、フィルム幅方向の任意の場所50箇所、フィルム幅の中心付近の長手方向で任意の場所50箇所について厚みを測定し、全100箇所の数平均値をフィルム厚みとする。ただし、測定するフィルムの幅方向、長手方向の厚み斑は平均厚みの+20〜−20%厚み内にあることを前提とする。層構成はフィルムをエポキシ樹脂に包埋し、ガラス刃を用いてスライスした後、偏光顕微鏡下で断面観察し求める。
【0034】
(2)結晶融解熱量(ΔHm)
DuPont Instruments910型DSCを用い、サンプル量20mgについて昇温速度20℃/分で290℃まで昇温させた時の結晶融解ピーク面積を読み取り結晶融解熱量を求める。測定は合計5回行い、その平均値を結晶融解熱量の測定値する。
【0035】
(3)ヘーズの上昇率
JIS−Z1709に従い、90℃の温水中で主収縮率が50%となったときのヘーズを測定し、収縮前後のヘーズの値より下記式により上昇率を算出する。なお、フィルム平面方向の測定を行い、最も収縮の大きい方向を主収縮方向とする。
上昇率=50%収縮後のヘーズの値/収縮前のヘーズの値
【0036】
(4)溶剤シール性
サンプルとして、10cm×20cmのフィルム片2枚を準備する。準備したフィルム片の一枚の表面上に、1、3−ジオキソラン(溶剤)を染み込ませた綿棒を走査させることによりジオキソランを塗布する。ジオキソラン塗布後のフィルムは直ちに、もう一枚のフィルムと貼り合わせ、ローラーを用いて圧着する。圧着後、2枚のフィルム片の接着程度を下記基準で評価する。
○:2枚のフィルム片がしっかり接着されている(溶剤シール性良好)。
△:2枚のフィルム片の接着が不十分で、時間がたつと剥がれる(溶剤シール性やや良好)。
×:2枚のフィルム片が全く接着していない(溶剤シール性不良)。
【0037】
(5)熱収縮率
JIS−Z1709に従い、80℃の温水中で10秒間または70℃の温水中で10秒間処理した際の主収縮方向及び主収縮方向と直角方向の温湯中熱収縮率を測定する。各々N=3の平均値を測定値とする。尚、フィルム平面方向の測定を行い、最も収縮の大きい方向を主収縮方向とする。
【0038】
(6)インキ密着性
サンプルフィルム上に印刷インキ(大日本インキ化学工業株式会社製ファインラップPPハイコンク白)を、室温にて風乾後に乾燥膜厚み2μmとなるようにバーコーターにて塗工した。これをインキ上よりセロテープ(登録商標)を貼りローラーを用いて圧着し、90度剥離を行なった際のインキの脱落状態を下記基準で評価する。
○:インキがほとんど剥がれない(インキ接着性良好)。
△:インキの一部が剥がれる(インキ密着性やや良好)。
×:インキの大部分が剥がれる(インキ密着性不良)。
【0039】
[ポリエステルAの調製]
ジメチルテレフタル酸、2−6ジメチルナフタレンジカルボン酸、エチレングリコールを原料として、テトラブトキシチタンを重合触媒として、また亜リン酸を安定剤として用い、滑剤として平均粒子系1.9μmの真球状シリカを0.5重量%添加し、常法により共重合ポリエチレンテレフタレートを製造した。重合触媒テトラブトキシチタンはポリエステル中のチタン元素濃度として20ppmとなる量を用いた。なお、このポリエステルはアンチモン元素を含有しない。
【0040】
他方、テレフタル酸および1,4−ブタンジオールを原料として、テトラブトキシチタンを重合触媒として、常法によりポリブチレンテレフタレートを製造した。重合触媒テトラブトキシチタンはポリエステル中のチタン元素濃度として100ppmとなる量を用いた。なおこのポリエステルはアンチモン元素を含有しない。
【0041】
上記共重合ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートの混合物をポリエステルAとした。なお、混合の仕方は製膜押出機直前にチップを軽量混合してもよいし、事前にポリマーを溶融混練練したものを用いてもよい。
【0042】
[ポリエステルBの調製]
ジメチルテレフタル酸、ジメチルイソフタル酸、エチレングリコールを原料とし、同じくテトラブトキシチタンを重合触媒として、また亜リン酸を安定剤として用い、常法により共重合ポリエチレンテレフタレートを製造した。重合触媒テトラブトキシチタンはポリエステル中のチタン元素濃度として16ppmとなる量を用いた。なお、このポリエステルはアンチモン元素を含有しない。
【0043】
[実施例1]
得られたポリエステルAを表層用ポリマーとし、ポリエステルBを芯層用ポリマーとして、各々140℃で5時間乾燥した後、表層用、芯層用の2台の押出機ホッパーに供給して溶融温度280〜300℃で溶融し、マルチマニホールドダイを用いて表面温度20℃の冷却ドラム上に押出して急冷し厚さ180〜240μmの未延伸多層フィルムを得た。このようにして得られた未延伸多層フィルムを表1に示す如くの余熱、延伸、熱固定を行い、多層フィルムを得た。フィルム厚みは押出機の回転数を変え、未延伸フィルムの厚みを変えることで調節した。評価結果を表1及び表2に示す。
【0044】
[実施例2〜8]
実施例2〜8では、各々のポリエステルの組成や重合触媒の種類を表1に示すように変更し、表2に示す上面で製膜する以外は実施例1と同様に多層フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0045】
[比較例1〜10]
表1に示すポリエステルを用い、表2に示す条件で製膜する以外は実施例1と同様に多層ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
表1及び表2に示した結果から明らかなように、実施例1〜8のフィルムは、何れも熱収縮性包装材料として有用なものであった。他方、比較例1、2のフィルムは、結晶性の高い原料を使用したため表層の溶剤シール接着性が劣り、また50%収縮後のヘーズ上昇率が高く実用性のないものであった。比較例3、5のフィルムは、ポリマーの非晶性が高すぎたため、乾燥時にブロッキングし製膜困難で評価できなかった。比較例4のフィルムは芯層の結晶性が高い為、収縮率が低く、また50%収縮後のヘーズ上昇率が高く実用性のないものであった。比較例6、7、8、9のフィルムは50%収縮後のヘーズ上昇率が高く実用性のないものであった。また比較例1〜8および比較例10はインキの密着性が悪く実用性がないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の熱収縮包装用多層フィルムは、例えば飲料用ボトルの包装用として好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共押出製膜法で製造された表層および芯層から構成される多層フィルムであって、表層は下記ポリエステルAからなり、芯層は下記ポリエステルBからなり、多層フィルムは80℃の温水中での10秒間処理による温湯中収縮率が主収縮方向に35%以上かつ主収縮方向と直角方向に5%以下であり、90℃温水中で50%収縮させた後のヘーズが収縮前のヘーズの1.5倍以下であることを特徴とする、熱収縮包装用多層フィルム。
ポリエステルA:テレフタル酸95〜70モル%およびナフタレンジカルボン酸5〜30モル%のジカルボン酸成分ならびにジオール成分としてエチレングリコール95〜80モル%および1,4−ブタンジオール5〜20モル%からなりチタン化合物を重合触媒として重合されたポリエステル
ポリエステルB:テレフタル酸95〜75モル%およびイソフタル酸5〜25モル%のジカルボン酸成分ならびにジオール成分としてエチレングリコールからなりチタン化合物を重合触媒として重合されたポリエステル
【請求項2】
多層フィルムの示差走査熱量計により測定した結晶融解熱量ΔHmが20〜60J/gである、請求項1記載の多層フィルム。
【請求項3】
多層フィルムが2つの表層および一つの芯層のみからなる、請求項1記載の多層フィルム。

【公開番号】特開2006−27044(P2006−27044A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208345(P2004−208345)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】