説明

熱収縮性ポリエステル系フィルム

【課題】酸素に対するガスバリア性に優れ、可撓性、耐熱水性を有し、かつ製造が容易なガスバリア熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供する。
【解決手段】メチロールメラミン、ポリビニルアルコール系重合体からなりメチロールメラミン/ポリビニルアルコール系重合体の重量比が20/80〜90/10である被覆層が積層され、95℃の温湯に10秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率が50%以上であるガスバリア熱収縮性ポリエステル系積層フィルムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱収縮性ポリエステル系フィルムに関するものであり、さらに詳しくは、酸素バリア性が良好なガスバリア熱収縮性ポリエステル系フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、包装品の、外観向上のための外装、内容物の直接衝撃を避けるための包装、ガラス瓶またはプラスチックボトルの保護と商品の表示を兼ねたラベル包装等を目的として、
加熱により収縮する性質をもつ熱収縮プラスチックフィルムが広範に使用されている。これらの目的で使用されるプラスチック素材としては、ポリ塩化ビニル系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリエステル系フィルムなどの延伸フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)容器、ポリエチレン容器、ガラス容器などの各種容器において、ラベルやキャップシールあるいは集積包装の目的で使用されている。
【0003】
しかしポリ塩化ビニル系フィルムは、耐熱性が低い上に、焼却時に塩化水素ガスを発生したり、ダイオキシンの原因となる等の問題を抱えている。また、熱収縮性塩化ビニル系樹脂フィルムをPET容器等の収縮ラベルとして用いると、容器をリサイクル利用する際に、ラベルと容器を分離しなければならないという問題がある。
【0004】
一方、ポリスチレン系フィルムは、収縮後の仕上がり外観性が良好な点は評価できるが、耐溶剤性に劣るため、印刷の際に特殊な組成のインキを使用しなければならない。また、最近ホット用飲料PETボトルラベルで熱収縮性フィルムが使用されているが、ホットウォーマー等加温設備で保管された場合、熱収縮性ポリスチレン系フィルムは、高温となった熱線等に接触すると瞬時に収縮ラベルが溶けてしまうという問題がある。さらに、ポリスチレン系樹脂は、高温で焼却する必要がある上に、焼却時に多量の黒煙と異臭が発生するという問題がある。
【0005】
これらの問題のない(耐溶剤性、耐熱性、環境適性に優れる)ポリエステル系フィルムは、ポリ塩化ビニル系フィルムや、ポリスチレン系フィルムに代わる収縮フィルムとして、用いられている。
【0006】
ラベル等を製造するには、通常、以下の方法が採用されている。すなわち、原料ポリマーを連続的に溶融押出し、未延伸フィルムを製造する。次いで、延伸を行ってフィルムロールを得る。このフィルムロールからフィルムを繰り出しながら、所望幅にスリットし、再びロール状に巻回する。続いて、各種製品名等の文字情報や図柄を印刷する。印刷終了後は、溶剤接着等の手段でフィルムの左右端部を重ね合わせて接合してチューブを製造する(チュービング工程)。なお、スリット工程と印刷工程は順序が逆の場合もある。得られたチューブを適宜長さに裁断すれば筒状ラベルとなり、この筒状ラベルの一方の開口端を接合すれば袋を製造できる。
【0007】
そして、上記ラベルや袋等を容器に被せ、スチームを吹きつけて熱収縮させるタイプの収縮トンネル(スチームトンネル)や、熱風を吹きつけて熱収縮させるタイプの収縮トンネル(熱風トンネル)の内部を、ベルトコンベアー等にのせて通過させ、ラベルや袋等を熱収縮させることにより、容器に密着させて、最終製品(ラベル化容器)を得ている。
【0008】
一方、食品、飲料等に用いられる包装材料は、内容物の酸化抑制による味、鮮度の保持のために、ガスを遮断する性質、すなわちガスバリア性を備えることが求められている。そのため、従来からポリビニルアルコール(以下、PVAとする)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、或いはポリ塩化ビニリデン樹脂(以下、PVDCとする)など一般にガスバリア性が比較的高いと言われる高分子樹脂組成物を積層したフィルムが包装材料として使用されてきた。また、適当な高分子樹脂組成物(単独では、高いガスバリア性を有していない樹脂であっても)のフィルムにAlなどの金属を蒸着したものやアルミナ、シリカなどの無機酸化物を蒸着したものも包装材料として一般的に使用され始めている。
【0009】
ところが、上述のPVA、EVOH系の高分子樹脂組成物を用いてなるガスバリア性積層フィルムは、親水性が高く、水、熱水処理によりバリア層が溶解しバリア性が著しく低下してしまう問題がある。熱収縮性フイルムを容器等へ収縮装着処理する際、スチームによる方法が取られる場合は多く、装着後のガスバリア効果が低下することになる。
【0010】
またPVDC系の高分子樹脂組成物を用いてなるガスバリア性積層フィルムは、耐水性はあるが、被膜中に塩素を多量に含むため、焼却時に塩化水素ガスを発生したり、ダイオキシンの原因となるなどの問題がある。
【0011】
さらに、上述の金属を蒸着したフィルムやアルミナ、シリカなどの無機酸化物を蒸着したフィルムは、蒸着物と樹脂フィルムの機械的性質、化学的性質、熱的性質などの物性が非常に異なっていることから、ガスバリア層に用いられる無機物の薄膜が可撓性に欠け、揉みや折り曲げに弱く、基材との密着性が悪い。そのため、熱収縮性フィルムにおいては収縮加工の際にクラックを発生しガスバリア性が著しく低下する問題がある。
【特許文献1】特開2001−121658号公報
【特許文献2】特開昭62−102428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、酸素に対するガスバリア性に優れ、可撓性、耐熱水性を有し、かつ製造が容易なガスバリア熱収縮性ポリエステル系積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明の積層フィルムは、メチロールメラミン、ポリビニルアルコール系重合体からなりメチロールメラミン/ポリビニルアルコール系重合体の重量比が20/80〜90/10である被覆層が積層され、95℃の温湯に10秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率が50%以上であるガスバリア熱収縮性ポリエステル系フィルムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、酸素バリア性、可撓性、耐熱水性に優れるガスバリア熱収縮性ポリエステル系積層フィルムを安価に提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のガスバリア熱収縮性ポリエステル系積層フィルム及びその製造方法の実施の形態を説明する。
【0016】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムとは、熱収縮性ポリエステル系フィルム表層にガスバリア層を有する。
【0017】
[基材層]
熱収縮性ポリエステル系フィルムとは、公知の多価カルボン酸成分と、多価アルコール成分から形成されるエステルユニットを主たる構成ユニットとする単一の共重合ポリエステル、あるいは、2以上のポリエステルの混合物を用いて得られるものであり、10cm×10cmの正方形状に切り取った熱収縮性ポリエステル系フィルムの95℃の温湯に10秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率が50%以上であるものをいう。
収縮率(%)=(加熱前寸法−加熱後寸法)/加熱前寸法 × 100
【0018】
フィルムの熱収縮率が50%未満であると、フィルムの熱収縮率が不足して、容器に被覆収縮させたときに、容器に密着せず、外観不良が発生する上、筒状のラベルとして用いた場合、被覆物とラベル間の密着が悪いために隙間から外気が侵入するため、バリアフィルムの効果を損なうことになり好ましくない。より好ましい熱収縮率は52%以上、さらに好ましくは55%以上である。
【0019】
このような熱収縮性ポリエステル系フィルムについて詳しく説明する。
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いられる原料組成物中のポリエステルを構成するジカルボン酸成分としては、エチレンテレフタレートユニットを構成するテレフタル酸のほか、芳香族ジカルボン酸および脂環式ジカルボン酸のいずれもが用いられ得る。
【0020】
芳香族ジカルボン酸としてはイソフタル酸、オルトフタル酸、5−tert−ブチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等のベンゼンカルボン酸類;2,6−ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸類;4,4’−ジカルボキシジフェニル、2,2,6,6−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジカルボン酸等のジカルボキシビフェニル類;1,1,3−トリメチル−3−フェニルインデン−4,5−ジカルボン酸およびその置換体;1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸およびその置換体等が挙げられる。
【0021】
脂肪酸カルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ピメリン酸、スベリン酸、ウンデカン酸、ドデカンジカルボン酸、ブラシル酸、テトラデカンジカルボン酸、タプシン酸、ノナデカンジカルボン酸、ドコサンジカルボン酸、およびこれらの置換体、4,4’−ジカルボキシシクロヘキサンおよびその置換体等が挙げられる。
【0022】
原料組成物に含まれるポリエステルのジオール成分としては、ポリエチレンテレフタレートユニットを構成するエチレングリコールを始めとして、この他に脂肪族ジオール、脂環式ジオール、および芳香族ジオールのいずれもが用いられ得る。
【0023】
脂肪族ジオールとしては、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ブチル−1,3−プロパンジオール等がある。脂環式ジオールとしては、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等がある。芳香族ジオールとしては、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルフォン等のビスゲノール系化合物のエチレンオキサイド付加物;キシリレングリコール等がある。また、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールもジオール成分として用いられ得る。
【0024】
上記原料組成物に含有されるポリエステルは、上記酸成分およびジオール成分とからなるものであるが、ポリエステルを調整するには、熱収縮性フィルムとしての特性を改良するために1種以上の酸成分またはジオール成分を組み合わせて用いることが好ましく、組み合わされるモノマー成分の種類および含有量は、所望のフィルム特性、経済性等に基づいて適宜決定すればよい。また原料組成物には、1種もしくはそれ以上のポリエステルが含有される。含有されるポリエステルが1種である場合には、エチレンテレフタレートユニットを含有する共重合ポリエステルとする。2種以上のポリエステルを混合する場合には、共重合ポリエステルおよびホモポリエステルの所望の組成の混合物とする。一般に共重合ポリエステルは融点が低いため、乾燥時の取扱いが難しい等の問題があるので、ホモポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキセンジエチレンテレフタレート)等)と共重合ポリエステルを混合して用いることが好ましい。ただし、熱収縮性ポリエステル系フィルムとした時に、ポリエステル全体の1〜2モル%が脂肪族ジカルボン酸ユニットであることが好ましい。この範囲にコントロールすることで熱収縮の開始温度を好ましい範囲に制御することができる。
【0025】
上記原料組成物中のポリエステルは、いずれも従来の方法により製造され得る。例えば、ジカルボン酸とジオールとを直接反応させる直接エステル化法;ジカルボン酸ジメチルエステルとジオールとを反応させるエステル交換法等を用いてポリエステルが調整される。調整は、回分式および連続式のいずれの方法で行なわれてもよい。
【0026】
原料組成物中には、上記ポリエステルの他に必要に応じて各種の公知の添加剤を加えてもよい。添加剤としては、例えば、二酸化チタン、微粒子状シリカ、カオリン、炭酸カルシウム等の滑剤;帯電防止剤;老化防止剤;紫外線吸収剤;着色剤(染料等)が挙げられる。
【0027】
上記原料組成物は、公知の方法(例えば、押し出し法、カレンダー法)によりフィルム状に成形される。フィルムの形状は、例えば平面状またはチューブ状であり、特に限定されない。延伸方法としては、例えば、ロール延伸法、長間隙延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法等の公知の方法が採用できる。これらの方法のいずれにおいても、逐次2軸延伸、同時2軸延伸、1軸延伸、およびこれらの組み合わせで延伸を行なえばよい。
上記2軸延伸では縦横方向の延伸は同時に行なわれてもよく、どちらか一方を先に行ってもよい。延伸倍率は1.0倍から7.0倍の範囲で任意に設定され、所定の一方向の倍率を3.5倍以上とすることが好ましい。
延伸工程においては、フィルムを構成する重合体が有するガラス転移温度(Tg)以上でかつ例えばTg+80℃以下の温度で予熱を行なうことが好ましい。延伸時のヒートセットでは、例えば、延伸を行なった後に、30〜150℃の加熱ゾーンを約1〜30秒通すことが推奨される。また、フィルムの延伸後、ヒートセットを行なう前もしくは行なった後に、所定の度合で延伸を行なってもよい。さらに上記延伸後、伸張あるいは緊張状態に保ってフィルムにストレスをかけながら冷却する工程、あるいは、該処理に引き続いて緊張状態を解除した後も冷却工程を付加してもよい。得られるフィルムの厚みは6〜250μmの範囲が好ましい。
【0028】
この様な基材層の少なくとも一方の面に、特定の被覆層が積層される。被覆層としては、メチロール基の一部または全てがアルキルエーテル化されているメチロールメラミン、ポリビニルアルコール系重合体を必須成分とする。
【0029】
本発明に使用するメチロール基の一部あるいは全てがアルキルエーテル化されているメチロールメラミンはトリアジン環に結合している3個のアミノ基の水素原子の少なくとも一部がメチロール基で置換されており、該メチロール基の数は3〜6個が好ましく、 該メチロール基の一部または全部がアルキルエーテル化されているものである。アルキルエーテル化メチロールメラミンのアルキル部分は炭素数1〜6個、好ましくは1〜3個有する直鎖状または分岐鎖である。例えばメチル、エチル、n−またはiso−プロピル、n−、iso−、またはtert−ブチル等である。
【0030】
具体的に本発明に用いられるメチロールメラミンを例示すれば、ヘキサキスメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテル、ヘキサメチロールメラミンテトラメチルエーテル、ペンタメチロールメラミンペンタメチルエーテル、ペンタメチロールメラミンテトラメチルエーテル、ペンタメチロールメラミントリメチルエーテル、テトラメチロールメラミンテトラメチルエーテル、テトラメチロールメラミントリメチルエーテル、トリメチロールメラミントリメチルエーテル、トリメチロールメラミンジメチルエーテル等が挙げられるが、ポリビニルアルコール系重合体との相溶性の点から、トリメチロールメラミントリメチルエーテル、トリメチロールメラミンジメチルエーテルが好ましく用いられる。なお該メチロールメラミンは2量体などの縮合体を一部含んでも良い。
【0031】
一方、本発明に使用するポリビニルアルコール系重合体は、ビニルアルコール単位を主要構成成分とするものであれば、特に限定されることはないが、ポリビニルアルコール系重合体の重合度、鹸化度は、目的とするガスバリア性及びコーティング水溶液の粘度などから定められる。
重合度については、水溶液粘度が高いことやゲル化しやすいことから、コーティングが困難となり、コーティングの作業性から2600以下が好ましい。鹸化度については、90%未満では高湿下での十分な酸素ガスバリア性が得られず、99.7%を超えると水溶液の調整が困難で、ゲル化しやすく、工業生産には向かない。従って、鹸化度は90〜99.7%が好ましく、さらに好ましくは93〜99%である。また、エチレンを共重合したポリビニルアルコール系重合体、シラノール変性したポリビニルアルコール系重合体など、各種共重合または変性したポリビニルアルコール系重合体も使用できる。
【0032】
本発明においては、メチロールメラミン/ポリビニルアルコールを架橋反応させることでガスバリア性、耐熱水性等の特性を得るが、これらの特性を効果的に発現させるためには、メチロールメラミン/ポリビニルアルコール系重合体の重量比は、20/80〜90/10の範囲であることが好ましい。メチロールメラミン/ポリビニルアルコール系重合体の重量比が20/80未満あるいは90/10を超えると、目的の酸素バリア性、耐熱水性が十分に発現しなくなってしまう。メチロールメラミン/ポリビニルアルコール系重合体の重量比が、30/70〜80/20であると特に好ましい。
【0033】
本発明に用いられるメチロール基の一部あるいは全てがアルキルエーテル化されているメチロールメラミン、ポリビニルアルコール系重合体を必須成分とした被覆層は、通常溶媒を用いてコーティングすることで形成される。コーティング液の溶媒としては、実質上、水100%または水/低級アルコール混合溶媒を用いることである。水/低級アルコールの重量比は通常98/2〜40/60である。
低級アルコールとは炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖の脂肪族基を有するアルコール性化合物であり、具体例で示せばメタノール、エタノール、エチレングリコール、n−またはiso−プロピルアルコールが挙げられる。特にiso−プロピルアルコールが好ましい。本発明のコーティング液の全固形分濃度は2〜35%、通常5〜30%が好ましい。さらに、コーティング液中には、生産性を高めるため、硬化反応を促進する触媒が含まれていても良い。
【0034】
触媒としては、ベンゼンスルホン酸、そのアミン塩及びそのアンモニウム塩、ナフタレンスルホン酸誘導体、そのアミン塩及びそのアンモニウム塩、りん酸、そのアミン塩及びそのアンモニウム塩などの酸性触媒が挙げられる。
具体的には、ドデシルベンゼンスルホン酸及びそのアミン塩、アンモニウム塩、ジノニルナフタレンスルホン酸及びそのアミン塩、アンモニウム塩、p−トルエンスルホン酸及びそのアミン塩、アンモニウム塩、りん酸、りん酸二水素アンモニウム、りん酸一水素アンモニウム、キャタリスト500(三井サイアナミド製)キャタリスト600(同)、キャタリスト4040(同)等の酸性触媒を挙げることができる。また、塩化マグネシウムなどの中性触媒も使用することができる。

【0035】
更に必要であれば、本被覆層中に、静電防止剤や滑り剤、アンチブロッキング剤などの公知の無機、有機の各種添加剤を加えることは本発明の目的を阻害しない限り任意である。
この様に、メチロール基の一部あるいは全てがアルキルエーテル化されているメチロールメラミン、ポリビニルアルコール系重合体を必須成分とした被覆層が基材上に形成される。被覆層を基材上に形成する方法としては、通常前述した様に水系溶液を基材にコーティングする方法が採られる。コーティングの方法は限定するものではないが、使用するコーティング液の塗布量と粘度により、最適な方法を選択すればよい。リバースロールコーティング法、ロールナイフコーティング法、ダイコーティング法などを採用すればよい。
【0036】
コーティング時の乾燥、熱処理の条件は塗布厚み、装置の条件にもよるが、乾燥工程を設けずに直ちに直角方向の延伸工程に送入し、延伸工程の予熱ゾーンあるいは延伸ゾーンで乾燥させることが好ましい。このような場合、通常50〜250℃程度で行う。なお、必要であれば、酸素ガスバリア層を形成させる前に基材フィルムにコロナ放電処理、その他の表面活性化処理や公知のアンカー処理剤を用いてアンカー処理を施してもよい。
本発明の被覆層の厚みは、基材層によって異なるが、ガスバリア性を発揮させる最小限の厚みがよく、通常は乾燥厚みで、0.1μm以上が好ましく、また、透明性、取り扱い性、経済性の観点から1μm以下であることが好ましい。
【0037】
本発明におけるガスバリア層が形成されたフィルムを製造するには、溶融押出された未延伸ポリエステルフィルムまたは一軸ポリエステル系フィルムの少なくとも片面に、ガスバリア層用塗布液を塗布した後、この塗布フィルムを二軸延伸または一軸延伸する工程を含むインラインコート法が好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、各実施例で得られたフィルム特性は以下の方法により測定、評価した。
【0039】
(1)最大収縮方向の熱収縮率
フィルムを長手方向およびその直交方向に沿うように10cm×10cmの正方形に裁断し、95℃±0.5℃の温水中に、無荷重状態で10秒間処理して熱収縮させた後、直ちに25℃±0.5℃の水中に10秒浸漬した後、試料の縦および横方向の長さを測定し、下記式に従って求めた。最も収縮率の大きい方向を最大収縮方向とした。
熱収縮率(%)=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷(収縮前の長さ)
【0040】
(2)ヘイズ
ヘイズはJIS K7136に準じて、ヘイズメーター(日本精密機械社製)を用いて測定した。ヘイズが8.0%以下の場合を○、8.0%を超える場合を×とした。
【0041】
(3)酸素透過度
酸素透過度は、23℃65%RHの条件で、酸素透過率測定装置(モダンコントロールズ社製OX−TRAN100)を用いて測定した。
【0042】
(4)熱水処理
耐熱水性評価としては、四角い金枠にフイルムサンプルの主収縮方向を固定し、85℃の熱水中に5秒間浸漬、取出したサンプルを23℃65%RH下で24Hr乾燥した後、各種物性を測定した。
(5)収縮仕上がり評価
フィルムサンプルを用いて高さ180mm、円周220mmの筒状ラベルを作成した。コート層側が外面となるようした。
上記ラベルをFuji Astec Inc製スチームトンネル(型式:SH−1500−L)を用い、通過時間15秒、第1ゾーン温度70℃、第2ゾーン温度75℃、第3ゾーン温度82℃で、500mlの表面が平滑なPETボトルに熱収縮、装着した。このとき、収縮不足によるラベルの浮きやシワのないものを密着○とし、浮きやシワのみられるものを密着×として目視評価した。
【0043】
(フィルム1)
1)ポリエステル系樹脂及び未延伸フィルム
ポリエチレンテレフタレート40重量%、テレフタル酸100モル%とネオペンチルグリコール30モル%とエチレングリコール70モル%とからなるポリエステル50重量%、およびポリブチレンテレフタレート10重量%を混合したポリエステル組成物をそれぞれ押出し機直上のホッパに定量スクリューフィーダーで連続的に別供給して、ホッパ内で混合し、280℃で単軸式押出し機で溶融押出しし、急冷して、厚さ180μmの未延伸フィルムを得た。
2)塗布液の調製
水920gを攪拌しながら、無変性、鹸化度98.5mol%のポリビニルアルコール樹脂80gを徐々に投入した。90℃まで加熱、完全にポリビニルアルコール樹脂を溶解し、ポリビニルアルコール樹脂の8%水溶液を調製した。次にこのポリビニルアルコール樹脂水溶液 1000g、メチル化メラミンM−3(60)(住友化学製140g)、水720g、イソプロピルアルコール140g、ドデシルベンゼンスルホン酸1.6g(ポリビニルアルコール系樹脂とメチル化メラミンの固形分に対して1%)を混合し、固形分濃度 8%の塗布液を調製した。
【0044】
3)フィルムへのコーティング
上記塗布液をファウンテンバーコート法により延伸前の樹脂固形分厚みが3.0μmとなる様にポリエステル系樹脂及び未延伸フィルムに塗布した。続いて、テンターでコーティングフィルムを100℃で10秒間予熱後、横方向に80℃で4.0倍延伸し、80℃にて10秒間熱処理を行い、連続的に厚さ45μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムを製膜し、フィルム1とした。このフィルムについて上記方法にて試験おこなった結果を表1に示す。
【0045】
(フイルム2〜6)
コーティング液組成を表1に示したように変更した以外は、フイルム1と同様の手順でサンプル作製、評価を行なった。結果を表1に示す。
【0046】
(フイルム7)
横方向に80℃で4.0倍延伸したのち、90℃にて10秒間熱処理を行った以外は、フイルム4と同様の手順でサンプル作製、評価を行なった。結果を表1に示す。
【0047】
(フイルム8)
横方向に80℃で4.0倍延伸したのち、95℃にて10秒間熱処理を行った以外は、フイルム4と同様の手順でサンプル作製、評価を行なった。結果を表1に示す。
【0048】
(フイルム9)
コーティングしない以外は、実施例1と同様の手順でサンプル作製、評価を行なった。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の熱収縮性フィルムロールは、酸素バリア性、可撓性、耐湿性、耐熱水性に優れ、加熱収縮処理により容器のラベル等、包装用として用いた場合に、スチームによる加熱収縮処理であっても酸素バリア性を良好に保ち、非包装物の酸化を防止することができる。また、焼却排ガス中にダイオキシン、塩化水素ガスを含まず、近年問題とされている環境保全、フィルムの製膜性、加工適性に優れ工業生産上においても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、メチロールメラミン、ポリビニルアルコール系重合体からなりメチロールメラミン/ポリビニルアルコール系重合体の重量比が20/80〜90/10である被覆層が積層され、95℃の温湯に10秒間浸漬したときの主収縮方向の収縮率が50%以上である熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項2】
前記メチロール基の一部あるいは全てがアルキルエーテル化されていることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項3】
前記被覆層がコート法によって設けられたものである請求項1又は2に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。

【公開番号】特開2008−188859(P2008−188859A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25290(P2007−25290)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】