説明

熱可塑性ウレタン樹脂の製造方法

【課題】本発明の課題は、成形品の外観や触感を損なうことがなく、外観の経日安定性に優れた成形体を得ることのできる樹脂粉末組成物を提供することである。
【解決手段】活性水素基を含有する化合物(a)と1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを含有するジイソシアネート(e)とが反応してなり、(a)の活性水素基のモル数をX、(e)のイソシアネート基のモル数をYとした時、下記式(1)を満足するイソシアネート基末端プレポリマー(UP)であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によって得られる該(UP)のメタノールブロック化物の全ピーク面積に対する1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのメタノールブロック化物相当のピーク面積の割合が0〜1.5%である(UP)を、水及び/又は低分子ジアミンと反応させて得られることを特徴とするポリウレタンウレア樹脂(A0)の製造方法。
1.0<Y/X≦1.5 (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形用材料として適する熱可塑性ウレタン樹脂、及び熱可塑性ウレタン樹脂粉末の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウレタン樹脂は成形用材料、エラストマー、フォーム、コーティング、繊維、接着剤、シーラントとして幅広く利用されており、一般的にジイソシアネートとグリコールから合成される。ウレタン樹脂はジイソシアネートからなるハードセグメントとグリコールからなるソフトセグメントからなっておリ、ジイソシアネートとグリコールの選択により様々な機能を持ったウレタン樹脂をデザインすることが可能である。
【0003】
従来、成形用材料、特にスラッシュ成形用材料としては例えば、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)からなり、前記(A)が、対称構造を有するジイソシアネートと、対称構造を有する低分子ジアミンと非対称構造を有する低分子ジアミンとの混合物である低分子ジアミン混合物とから構成されるハードセグメント5〜50重量%と、高分子ジオールからなるソフトセグメントとを有するポリウレタンウレア樹脂であるスラッシュ成形用樹脂粉末材料が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
ウレタン樹脂の成形品は低分子オリゴマーが成形品表面にブリードすることにより、成形品の外観または触感を損なうことがあり、例えば脂肪族ポリエステルまたは組成物の洗浄処理方法(特許文献2参照)やラクトン系ポリオールの製造方法及びそれを用いたポリウレタン樹脂の製造方法(特許文献3参照)が提案されている。
一方、高機能性を発現し、かつ無黄変ジイソシアネートとして1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと記載する。)が工業的に最も多く利用されている。
HDIを使用したウレタン樹脂成形品においても、低分子オリゴマーが成形品表面にブリードすることにより、成形品の外観または触感を損なうことがあり、低分子オリゴマーの含有量を制御するポリウレタン樹脂粉末の製造方法(特許文献4参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−113010号公報
【特許文献2】特開平7−316276号公報
【特許文献3】特開2001−261798号公報
【特許文献4】特開2009−221293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般的にウレタン樹脂の低分子オリゴマー含有量を制御する方法として水または溶剤等による洗浄、抽出等が提案されているが、いずれもその抜本的な解決策は未だ知られていない。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、ジイソシアネート成分としてHDIを使用したウレタン樹脂成形品であって、成形品の外観や触感を損なうことがなく、外観の経日安定性に優れる成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、活性水素基を含有する化合物(a)と1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを含有するジイソシアネート(e)とが反応してなり、(a)の活性水素基のモル数をX、(e)のイソシアネート基のモル数をYとした時、下記式(1)を満足するイソシアネート基末端プレポリマー(UP)であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によって得られる該イソシアネート基末端プレポリマー(UP)のメタノールブロック化物の全ピーク面積に対する1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのメタノールブロック化物相当のピーク面積の割合が0〜1.5%であるイソシアネート基末端プレポリマー(UP)を、水及び/又は低分子ジアミンと反応させて得られることを特徴とするポリウレタンウレア樹脂(A0)の製造方法;
1.0<Y/X≦1.5 (1)
該ポリウレタンウレア樹脂(A0)を含有するポリウレタンウレア樹脂粉末(A)の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法で得られる樹脂粉末組成物から成形された成形品は外観や触感を損なうことがなく、外観の経日安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の製造方法で製造されるポリウレタンウレア樹脂粉末(A)に含有されるポリウレタンウレア樹脂(A0)は、イソシアネート成分が1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを含有するジイソシアネート(e)からなるイソシアネート基末端プレポリマー(UP)であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと記す。)測定によって得られる該イソシアネート基末端プレポリマー(UP)のメタノールブロック化物の全ピーク面積中の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのメタノールブロック化物相当のピーク面積が0〜1.5%であるイソシアネート基末端プレポリマー(UP)を、水及び/又は低分子ジアミンと反応させて得られる。
【0010】
イソシアネート基末端プレポリマー(UP)は、活性水素基を含有する化合物(a)と1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを含有するジイソシアネート(e)とが反応してなり、(a)の活性水素基のモル数をX、(e)のイソシアネート基のモル数をYとした時、下記式(1)、好ましくは下記式(2)を満足するようにして製造される。
1.0<Y/X≦1.5 (1)
1.1<Y/X≦1.4 (2)
【0011】
「イソシアネート基末端プレポリマー(UP)のメタノールブロック化物の全ピーク面積(p)に対する1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのメタノールブロック化物相当のピーク面積(h)の割合(%)」(以下、h/pと記す。)は、0〜1.5%である。h/pは好ましくは0.1〜1.3%、さらに好ましくは0.1〜1.1%である。
Y/Xが1.5を超える場合は、h/pも1.5%を超えるようになる。
h/pが1.5%を超える場合は、成形品の表面にブリード物が現れ外観や触感を損ない、外観の経日安定性が悪くなる。
【0012】
h/pは以下のようにして測定する。
<測定試料の調製>
イソシアネート基末端プレポリマー(UP)0.5gにメチルエチルケトン1.5mlを加え、密閉下、80℃で1時間溶解させる。次いでメタノール1.5mlを加え、密閉下、80℃で1時間反応させた後、開放系で80℃2時間間程度脱溶剤を行う。
<GPC測定条件>
機種名:Alliance(日本ウォーターズ(株)製)、溶離液:テトラヒドロフラン、カラム:Guard Column Super H-L(TSKgel Super H4000、TSKgel Super H3000、TSKgel Super H2000)、検出器:RI、標準試料:CTB8405Be(ポリスチレン、三洋化成工業(株)製)
【0013】
上記の製造方法で製造されるポリウレタンウレア樹脂粉末(A)の成形物は、表面にブリードアウトし外観や触感を損なうことがない。
表面のブリードアウト物は、主にポリウレタンウレア樹脂(A0)製造時の副生成物である低分子ウレアオリゴマーである。(A0)を上記の製造方法で製造すると、(A0)中の低分子ウレアオリゴマーの含有量が少ない。低分子ウレアオリゴマーは液体クロマトグラフィーにより定量的に測定することができる。
【0014】
ジイソシアネート(e)中には、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート以外の他のジイソシアネート(f)を含有していてもよく、(f)の含有量は(e)の重量に基づいて好ましくは0〜50重量%であり、より好ましくは0〜20重量%である。
ジイソシアネート(f)としては、炭素数2〜18の脂肪族ジイソシアネート(例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,12−ドデカメチレンジイソシアネート等)、及び炭素数4〜15の脂環族ジイソシアネート(イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロへキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロへキセン等)炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネート(m−及び/またはp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等)、これらジイソシアネートの変性物(カーボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、ウレア基等を有するジイソシアネート変性物等)等が挙げられる。
これらの中で1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)以外の脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートが好ましい。
【0015】
本発明のポリウレタンウレア樹脂粉末(A)の製造方法としては、例えば以下の製造方法が挙げられる。
(1)まず、活性水素基を含有する化合物と過剰のジイソシアネート(e)から、上記の方法によりイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(UP)を製造する。水および分散安定剤存在下で、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(UP)とブロックされた鎖伸長剤(例えばケチミン化合物)とを反応させる方法で製造されるもの。
(2)ウレタンプレポリマー(UP)を、該ウレタンプレポリマー(UP)が溶解しない有機溶剤および分散安定剤存在下で、鎖伸長剤(例えばジアミンおよび/または水 )と反応させる方法で製造されるもの。
(3)活性水素基を含有する化合物とジイソシアネートと必要に応じて鎖伸長剤(低分子ジアミンおよび/または水)とを反応させることで熱可塑性ポリウレタン樹脂の塊状物を得る。ついで粉末化(例えば冷凍粉砕、溶融状態下に細孔を通し切断する方法)する方法で製造されるもの。
上記の製造方法の内、(1)が好ましい。
【0016】
(A0)のガラス転移温度(以下、Tgと記載する。)は−70〜−30℃であることが好ましい。このうち−70〜−40℃がさらに好ましい。Tgが−30℃以下であると寒冷地で使用される場合に該材料のソフト感が得られ、引張試験における伸びが良好である。Tgが−70℃未満のポリウレタンウレア樹脂は通常得ることが困難である。
ここでいうガラス転移温度とは、動的粘弾性測定装置(例えばRheogel−E4000;株式会社ユービーエム製)で測定した表皮のE”ピークトップ温度をいう。脂肪族ポリエステルジオールを高分子ジオールの主成分に使用した(A0)のガラス転移温度は通常だいたい−70〜−30℃となる。ジオール成分として芳香族ポリエステルジオールを使用してもよいが、脂肪族ポリエステルジオールと芳香族ポリエステルジオールの使用比率は100:0〜60:40重量%が好ましい。
【0017】
イソシアネート基末端プレポリマー(UP)は、活性水素基を含有する化合物(a)と1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを含有するジイソシアネート(e)とが反応してなる。活性水素基を含有する化合物(a)としては、高分子ジオール、高分子ジアミン、高分子ジメルカプタン等があるが、高分子ジオールが好ましい。(a)は下記の低分子ジオールを含有していてもよい。
高分子ジオールとしては、数平均分子量500〜10,000が好ましく、例えば、(1)縮合ポリエステルジオール、(2)ポリラクトンジオール、(3)ポリカーボネートジオール、及びこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0018】
上記(1)は例えばジオール(低分子ジオール及び/又はポリエーテルジオール等)の1種以上とジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体[低級アルキル(炭素数1〜4)エステル、酸無水物、ハライド(クロライド等)等]との縮合重合、又は、ジオールとジカルボン酸無水物及びアルキレンオキサイドとの反応により製造することができる。
上記(2)は上記ジオールの1種以上を開始剤としてラクトンを開環重合して得られる。
上記(3)は上記ジオールとアルキレンカーボネート(エチレンカーボネート)との反応により製造することができる。
【0019】
上記(1)、(2)及び(3)のための原料ジオールのうち低分子ジオールとしては、例えば、脂肪族低分子ジオール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール等);環状基を有する低分子ジオール類[例えば特公昭45−1474号公報に記載のもの:1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、及びこれらの2種以上の併用等を挙げることができ、ポリエーテルジオールとしては、例えば、2個の活性水素原子を有する化合物(2価アルコール、1級モノアミン等)にアルキレンオキサイドが付加した構造の化合物及びそれらの混合物等が挙げられる。また、上記2個の活性水素原子を有する化合物として好ましいものは2価アルコール、特に好ましいのは脂肪族低分子ジオール類(エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及び1,10−デカンジオール)である。
【0020】
上記(1)のための原料ジカルボン酸としては、例えば、炭素数2〜10の脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸等)、これらのエステル形成性誘導体(酸無水物、低級アルキルエステル(ジメチルエステル、ジエチルエステル等)、酸ハライド(酸クロライド等)等及びこれらの2種以上の併用等が挙げられる。
【0021】
上記(1)の好ましい例としては、例えば、ポリブチレンアジペートジオール及びポリヘキサメチレンアジペートジオールならびにこれらの併用等を挙げることができる。
上記(2)ポリラクトンジオールの好ましい例としては、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン及びこれらの2種以上の混合物のポリラクトンジオールが挙げられる。
上記(3)ポリカーボネートジオールの好ましい例としては、例えば、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等が挙げられる。
【0022】
鎖伸長剤として添加される低分子ジアミンとしては、例えば、炭素数2〜18の脂肪族ジアミン及び/又は水が挙げられる。上記脂肪族ジアミンとしては、例えば、炭素数2〜18の脂肪族ジアミン(1,2−エチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン(HDA)1,8−オクタメチレンジアミン、1,12−ドデカメチレンジアミン等)、炭素数4〜15の脂環族ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシル、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、シクロヘキサン−1,4−ジアミン、イソホロンジアミン(IPDA)等)、脂肪芳香族ジアミン(キシリレンジアミン、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジアミン等)、炭素数3〜17のカーボネート系ジアミン、例えばビス(2−アミノエチル)カーボネート、ポリオキシエチレンジアミン(分子量500以下)、ポリオキシテトラメチレンジアミン(分子量500以下)、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0023】
鎖伸長剤として低分子ジアミンの他に、必要に応じて、鎖伸長剤として添加される活性水素基を含有する化合物としては、例えば、脂肪族ジオール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−及び1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂肪族環状基含有ジオール(1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA等)等が挙げられる。
【0024】
必要に応じて熱可塑性ポリウレタン樹脂(A0)の分子量を調整するための末端封止剤を使用することができる。末端封止剤としては例えば、低分子モノオール、低分子モノアミン等を挙げることができる。
低分子モノオールとしては、例えば脂肪族アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、1−オクタノール等)脂肪芳香族アルコール(ベンジルアルコール等)が挙げられる。
低分子モノアミンとしては、例えば、炭素数2〜18の脂肪族モノアミン(モノアルキルアミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等)、ジアルキルアミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等)、モノ−及びジ−アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等))及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
これらのうち好ましいものは脂肪族アルコール、脂肪芳香族アルコール及び脂肪族モノアミンであり、さらに好ましいものは1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、ジプロピルアミン及びジブチルアミンである。
【0025】
ポリウレタンウレア樹脂粉末(A)の数平均分子量は、好ましくは5,000〜50,000、さらに好ましくは8,000〜40,000である。成形体の破断強度の観点から5,000以上が好ましく、熱溶融時の溶融粘度の観点から50,000以下が好ましい。ここでいう数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の分子量をいう。
【0026】
ポリウレタンウレア樹脂粉末(A)の体積平均粒径は、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは70〜300μmの範囲にある。体積平均粒径は、レーザー回折/散乱法で行い、例えばマイクロトラック粒度分析計(日機装(株)製MKIISRA 7997−10)で測定することができる。
【0027】
本発明のポリウレタンウレア樹脂粉末組成物(S)には、ポリウレタンウレア樹脂粉末(A)に、添加剤(C)を添加する。添加剤としては可塑剤、フィラー、安定剤、顔料、離型剤、ブロッキング防止剤、分散剤等が添加できる。
添加剤の添加量はポリウレタンウレア樹脂粉末組成物(S)の重量に対してそれぞれ好ましくは0.1〜50重量%である。
【0028】
可塑剤としては、特に制限はないが、例えば、エポキシ系可塑剤、エステル系可塑剤、燐酸エステル系可塑剤、エーテル系可塑剤等が挙げられる。
可塑剤の配合割合は、上記ポリウレタンウレア樹脂粉末(A)100重量部あたり2〜50重量部が好ましく、さらに好ましくは2〜30重量部である。2重量部以上であると、成形時の溶融粘度が低く成形性が良好であり、50重量部以下であると成形表皮表面へ経時でブリードアウトすることがない。可塑剤は単独使用が好ましいが、必要に応じて、上記可塑剤を併用することも出来る。
【0029】
フィラーとしては、例えばカオリン、タルク、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、ベントナイト、マイカ、セリサイト、ガラスフレーク、ガラス繊維、黒鉛、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、硫酸バリウム、ホウ酸亜鉛、アルミナ、マグネシア、ウォラストナイト、ゾノトライト、ウィスカー、金属粉末等の無機フィラーが挙げられる。これらのなかで、熱可塑性樹脂の結晶化促進の観点から、カオリン、タルク、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウムが好ましく、特にカオリン、タルクがさらに好ましい。
無機フィラーの体積平均粒径は、熱可塑性樹脂中への分散性の観点から好ましくは0.1〜30μm、さらに好ましくは1〜20μm、特に好ましくは5〜10μmである。
【0030】
安定剤としては、例えば公知の酸化防止剤及び/または光安定剤及び/または分子中に炭素原子間の二重結合(置換基を有していてもよいエチレン結合)(ただし芳香環中の二重結合は除く)、三重結合(置換基を有していてもよいアセチレン結合)を有する化合物である。
酸化防止剤としては、例えばフェノール系(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール等)、ビスフェノール系(2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等)、リン系(トリフェニルフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト等)等が挙げられる。
光安定剤としては、紫外線吸収剤[ベンゾフェノン系(2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等)、ベンゾトリアゾール系(2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等)等]、クエンチャー[ニッケルキレート系等]、サリチル酸系[フェニルサリシレート等]、ラジカル補足剤[ヒンダードアミン系((ビス2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等)等が挙げられる。
【0031】
分子中に炭素原子間の二重結合(置換基を有していてもよいエチレン結合)(ただし芳香環中の二重結合は除く)、三重結合(置換基を有していてもよいアセチレン結合)を有する化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸と多価アルコール類(2〜10価またはそれ以上の多価アルコール。以下同様)とのエステル[例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等];(メタ)アリルアルコールと2〜6価、またはそれ以上の多価カルボン酸類とのエステル[例えばジアリルフタレート、トリメリット酸トリアリルエステル等];多価アルコール類のポリ(メタ)アリルエーテル[例えばペンタエリスリトール(メタ)アリルエーテル等];多価アルコール類のポリビニルエーテル[例えばエチレングリコールジビニルエーテル等];多価アルコール類のポリプロペニルエーテル[例えばエチレングリコールジプロペニルエーテル等];ポリビニルベンゼン類[例えばジビニルベンゼン等]およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうち好ましいものは、ラジカル重合速度の点で、(メタ)アクリル酸と多価アルコール類とのエステルであり、特に好ましいものはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートである。
【0032】
顔料としては、例えば公知の有機顔料及び/または無機顔料を使用することができる。有機顔料としては不溶性アゾ顔料、可溶性アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、キナクリドン系顔料等が挙げられ、無機顔料としてはカーボンブラック、クロム酸塩、フェロシアン化合物、金属酸化物、硫化セレン化合物、金属塩類(硫酸塩、硅酸塩、炭酸塩、リン酸塩等)金属粉末等が挙げられる。
【0033】
離型剤としては、公知の離型剤が使用でき、例えば、フッ素系離型剤(リン酸フルオロアルキルエステル等)、シリコン系離型剤(ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、カルボキシル変性ジメチルポリシロキサン、エーテル変性ジメチルポリシロキサン等)、脂肪酸エステル系離型剤(アルカン(炭素数11〜24)酸アルケニル(炭素数6〜24)エステル等)、リン酸エステル系離型剤(リン酸トリブチルエステル等)等が挙げられる。
【0034】
ブロッキング防止剤としては、例えば公知の無機系ブロッキング防止剤及び/または有機系ブロッキング防止剤を使用することができる。
無機系ブロッキング防止剤としては、例えばシリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム等が挙げられ、有機系ブロッキング防止剤としては、例えば粒子径10ミクロン以下の熱可塑性樹脂(熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタンウレア、ポリ(メタ)アクリレート樹脂等)、マレイミド樹脂粉末等、及び粒子径10ミクロン以下の熱硬化性樹脂(熱硬化性ポリウレタン樹脂、グアナミン系樹脂、エポキシ系樹脂等)が挙げられる。
【0035】
上記添加剤(C)をポリウレタンウレア樹脂粉末(A)に添加、混合するときに使用する混合装置としては、公知の粉体混合装置を使用でき、容器回転型混合機、固定容器型混合機、流体運動型混合機のいずれも使用できる。例えば固定容器型混合機としては高速流動型混合機、複軸パドル型混合機、高速剪断混合装置(ヘンシエルミキサー(登録商標)等)、低速混合装置(プラネタリーミキサー等)や円錐型スクリュー混合機(ナウタミキサ(登録商標)等)を使ってドライブレンドする方法が良く知られている。これらの方法の中で、複軸パドル型混合機、低速混合装置(プラネタリーミキサー等)、および円錐型スクリュー混合機(ナウタミキサ(登録商標、以下省略)等)を使用するのが好ましい。
【0036】
本発明のポリウレタンウレア樹脂粉末組成物を成形する方法としては、スラッシュ成形法、射出成形法、押し出し成形法、カレンダー成形法、粉末成形法等が挙げられる。
例えば、スラッシュ成形法で成形するには、本発明のポリウレタンウレア樹脂粉末組成物が入ったボックスと200〜280℃に加熱した金型を共に振動回転させ、パウダーを金型内で流動溶融させた後に冷却し、シートを製造する方法で好適に実施することができる。
本発明のポリウレタンウレア樹脂粉末組成物で成形されたシート厚さは、0.5〜1.5mmが好ましい。これらの成形シートは金型形状により様々な形状に対応する事ができ、例えばインスツルメントパネルやドアトリム等の自動車内装部品、家電部品、玩具、雑貨品等として適する。
【0037】
実施例
以下、製造例、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
【0038】
製造例1
プレポリマー溶液1の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、数平均分子量(以下Mnと記す。)が1,000のポリブチレンアジペートジオール(549.3部)、Mn900のポリヘキサメチレンイソフタレートジオール(61.0部)酸化防止剤(1.2部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;IRGANOX1010]、体積平均径9μmのカオリン(91.6部)[ジョージアエンゲル社製;ASP400P]を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら60℃で均一攪拌した。続いて2−エチルヘキサノール(10.3部)、MEK(150.0部)を仕込み、均一攪拌した後、50℃まで冷却し、ヘキサメチレンジイソシアネート(134.8部)を仕込み、90℃で6時間反応させた。60℃まで冷却し、紫外線吸収剤(1.8部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;TINUVIN571] を仕込み、均一攪拌し、プレポリマー溶液(UP−1)を得た。Y/Xは1.3であった。
(UP−1)1000部に着色剤(25.5部)[大日精化工業(株)製;FTR SNY 72 ブラック]、ポリカルボジイミド(13.2部)[日清紡(株)製;Carbodilite V−09]を仕込み均一攪拌し、着色されたプレポリマー溶液(UP−1’)を得た。(UP−1’)のNCO含量は1.2%、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によって得られた(UP−1’)のメタノールブロック化物の全ピーク面積中の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのメタノールブロック化物相当のピーク面積h/pは0.3%であった。
【0039】
製造例2
プレポリマー溶液2の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、数平均分子量(以下Mnと記す。)が1,000のポリブチレンアジペートジオール(536.2部)、Mn900のポリヘキサメチレンイソフタレートジオール(59.6部)酸化防止剤(1.2部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;IRGANOX1010]、体積平均径9μmのカオリン(89.4部)[ジョージアエンゲル社製;ASP400P]を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら60℃で均一攪拌した。続いて2−エチルヘキサノール(10.1部)、MEK(150.0部)を仕込み、均一攪拌した後、50℃まで冷却し、ヘキサメチレンジイソシアネート(151.8部)を仕込み、90℃で6時間反応させた。60℃まで冷却し、紫外線吸収剤(1.8部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;TINUVIN571] を仕込み、均一攪拌し、プレポリマー溶液(UP−2)を得た。Y/Xは1.5であった。
(UP−2)1000部に着色剤(25.5部)[大日精化工業(株)製;FTR SNY 72 ブラック]、ポリカルボジイミド(13.2部)[日清紡(株)製;Carbodilite V−09]を仕込み均一攪拌し、着色されたプレポリマー溶液(UP−2’)を得た。得られた(UP−2’)のNCO含量は、2.2%、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によって得られた(UP−2’)のメタノールブロック化物の全ピーク面積中の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのメタノールブロック化物相当のピーク面積h/pは1.5%であった。
【0040】
製造例3
プレポリマー溶液3の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、数平均分子量(以下Mnと記す。)が1,000のポリブチレンアジペートジオール(556.1部)、Mn900のポリヘキサメチレンイソフタレートジオール(61.8部)酸化防止剤(1.2部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;IRGANOX1010]、体積平均径9μmのカオリン(92.7部)[ジョージアエンゲル社製;ASP400P]を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら60℃で均一攪拌した。続いて2−エチルヘキサノール(10.5部)、MEK(150.0部)を仕込み、均一攪拌した後、50℃まで冷却し、ヘキサメチレンジイソシアネート(125.9部)を仕込み、90℃で6時間反応させた。60℃まで冷却し、紫外線吸収剤(1.8部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;TINUVIN571] を仕込み、均一攪拌し、プレポリマー溶液(UP−3)を得た。Y/Xは1.2であった。
(UP−3)1000部に着色剤(25.5部)[大日精化工業(株)製;FTR SNY 72 ブラック]、ポリカルボジイミド(13.2部)[日清紡(株)製;Carbodilite V−09]を仕込み均一攪拌し、着色されたプレポリマー溶液(UP−3’)を得た。得られた(UP−3’)のNCO含量は、0.7%、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によって得られた(UP−3’)のメタノールブロック化物の全ピーク面積中の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのメタノールブロック化物相当のピーク面積h/pは0.1%であった。
【0041】
製造例4
プレポリマー溶液4の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、数平均分子量(以下Mnと記す。)が1,000のポリブチレンアジペートジオール(563.0部)、Mn900のポリヘキサメチレンイソフタレートジオール(62.6部)、酸化防止剤(1.3部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;IRGANOX1010]、体積平均径9μmのカオリン(93.8部)[ジョージアエンゲル社製;ASP400P]を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら60℃で均一攪拌した。続いて2−エチルヘキサノール(10.6部)、MEK(150.0部)を仕込み、均一攪拌した後、50℃まで冷却し、ヘキサメチレンジイソシアネート(116.9部)を仕込み、90℃で6時間反応させた。60℃まで冷却し、紫外線吸収剤(1.9部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;TINUVIN571] を仕込み、均一攪拌し、プレポリマー溶液(UP−4)を得た。Y/Xは1.1であった。
(UP−4)1000部に着色剤(25.5部)[大日精化工業(株)製;FTR SNY 72 ブラック]、ポリカルボジイミド(13.2部)[日清紡(株)製;Carbodilite V−09]を仕込み均一攪拌し、着色されたプレポリマー溶液(UP−4’)を得た。得られた(UP−4’)のNCO含量は、0.2%、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によって得られた(UP−4’)のメタノールブロック化物の全ピーク面積中の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのメタノールブロック化物相当のピーク面積h/pは0.0%であった。
【0042】
比較製造例1
プレポリマー溶液5の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、数平均分子量(以下Mnと記す。)が1,000のポリブチレンアジペートジオール(529.9部)、Mn900のポリヘキサメチレンイソフタレートジオール(58.9部)、酸化防止剤(1.2部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;IRGANOX1010]、体積平均径9μmのカオリン(88.3部)[ジョージアエンゲル社製;ASP400P]を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら60℃で均一攪拌した。続いて2−エチルヘキサノール(10.0部)、MEK(150.0部)を仕込み、均一攪拌した後、50℃まで冷却し、ヘキサメチレンジイソシアネート(160.0部)を仕込み、90℃で6時間反応させた。60℃まで冷却し、紫外線吸収剤(1.8部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;TINUVIN571] を仕込み、均一攪拌し、プレポリマー溶液(UP−4)を得た。Y/Xは1.6であった。
(UP−1比)1000部に着色剤(25.5部)[大日精化工業(株)製;FTR SNY 72 ブラック]、ポリカルボジイミド(13.2部)[日清紡(株)製;Carbodilite V−09]を仕込み均一攪拌し、着色されたプレポリマー溶液(UP−1比’)を得た。得られた(UP−1比’)のNCO含量は、2.7%、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によって得られた(UP−1比’)のメタノールブロック化物の全ピーク面積中の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのメタノールブロック化物相当のピーク面積h/pは1.8%であった。
【0043】
比較製造例2
プレポリマー溶液6の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、数平均分子量(以下Mnと記す。)が1,000のポリブチレンアジペートジオール(523.7部)、Mn900のポリヘキサメチレンイソフタレートジオール(58.2部)、酸化防止剤(1.2部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;IRGANOX1010]、体積平均径9μmのカオリン(87.3部)[ジョージアエンゲル社製;ASP400P]を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら60℃で均一攪拌した。続いて2−エチルヘキサノール(9.9部)、MEK(150.0部)を仕込み、均一攪拌した後、50℃まで冷却し、ヘキサメチレンジイソシアネート(168.0部)を仕込み、90℃で6時間反応させた。60℃まで冷却し、紫外線吸収剤(1.8部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;TINUVIN571] を仕込み、均一攪拌し、プレポリマー溶液(UP−2比)を得た。Y/Xは1.7であった。
(UP−2比)1000部に着色剤(25.5部)[大日精化工業(株)製;FTR SNY 72 ブラック]、ポリカルボジイミド(13.2部)[日清紡(株)製;Carbodilite V−09]を仕込み均一攪拌し、着色されたプレポリマー溶液(UP−2比’)を得た。得られた(UP−2比’)のNCO含量は、3.1%、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によって得られた(UP−2比’)のメタノールブロック化物の全ピーク面積中の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのメタノールブロック化物相当のピーク面積h/pは2.3%であった。
【0044】
製造例5
ジアミンのMEKケチミン化物の製造
ヘキサメチレンジアミン(116部)、過剰のメチルエチルケトン(以下、MEKと記す。288部、ジアミンに対して4倍モル量)、n−ヘキサン(29部)を80℃で24時間還流させながら生成水を系外に除去した。その後減圧にて未反応のMEK、n−ヘキサンを除去してMEKケチミン化物(K−1)を得た。
【0045】
実施例1
反応容器に、製造例1で得た着色されたプレポリマー溶液(UP−1’)(100.0部)と製造例5で得たMEKケチミン化物(K−1)(3.2部)を混合投入し、そこに分散剤(三洋化成工業(株)製;サンスパールPS−8)(24重量部)を溶解した水溶液300重量部を加え、JANKE&KUNKEL IKA−Labortechnik製;ULTRA−TURRAX T50を用いて回転数5000rpmで1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、撹拌しながら60℃減圧下で2時間脱MEKを行った。濾別及び乾燥を行い、ポリウレタンウレア樹脂(A0−1)からなるポリウレタンウレア樹脂粉末(A−1)を製造した。(A0−1)のガラス転移温度は−41℃、ウレアオリゴマー含有量は18ppmであった。
【0046】
実施例2
反応容器に、製造例2で得た着色されたプレポリマー溶液(UP−2’)(100.0部)と製造例5で得たMEKケチミン化物(K−1)(5.7部)を混合投入し、そこに分散剤(三洋化成工業(株)製;サンスパールPS−8)(24重量部)を溶解した水溶液300重量部を加え、JANKE&KUNKEL IKA−Labortechnik製;ULTRA−TURRAX T50を用いて回転数5000rpmで1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、撹拌しながら60℃減圧下で2時間脱MEKを行った。濾別及び乾燥を行い、ポリウレタンウレア樹脂(A0−2)からなるポリウレタンウレア樹脂粉末(A−2)を製造した。(A0−2)のガラス転移温度は−41℃、ウレアオリゴマー含有量は130ppmであった。
【0047】
実施例3
反応容器に、製造例3で得た着色されたプレポリマー溶液(UP−3’)(100.0部)と製造例5で得たMEKケチミン化物(K−1)(5.7部)を混合投入し、そこに分散剤(三洋化成工業(株)製;サンスパールPS−8)(24重量部)を溶解した水溶液300重量部を加え、JANKE&KUNKEL IKA−Labortechnik製;ULTRA−TURRAX T50を用いて回転数5000rpmで1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、撹拌しながら60℃減圧下で2時間脱MEKを行った。濾別及び乾燥を行い、ポリウレタンウレア樹脂(A0−3)からなるポリウレタンウレア樹脂粉末(A−3)を製造した。(A0−3)のガラス転移温度は−41℃、ウレアオリゴマー含有量は3ppmであった。
【0048】
実施例4
反応容器に、製造例4で得た着色されたプレポリマー溶液(UP−4’)(100.0部)と製造例5で得たMEKケチミン化物(K−1)(1.6部)を混合投入し、そこに分散剤(三洋化成工業(株)製;サンスパールPS−8)(24重量部)を溶解した水溶液300重量部を加え、JANKE&KUNKEL IKA−Labortechnik製;ULTRA−TURRAX T50を用いて回転数5000rpmで1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、撹拌しながら60℃減圧下で2時間脱MEKを行った。濾別及び乾燥を行い、ポリウレタンウレア樹脂(A0−4)からなるポリウレタンウレア樹脂粉末(A−4)を製造した。(A0−4)のガラス転移温度は−41℃、ウレアオリゴマー含有量は0ppmであった。
【0049】
比較例1
反応容器に、比較製造例1で得た着色されたプレポリマー溶液(UP−5’)(100.0部)と製造例5で得たMEKケチミン化物(K−1)(7.0部)を混合投入し、そこに分散剤(三洋化成工業(株)製;サンスパールPS−8)(24重量部)を溶解した水溶液300重量部を加え、JANKE&KUNKEL IKA−Labortechnik製;ULTRA−TURRAX T50を用いて回転数5000rpmで1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、撹拌しながら60℃減圧下で2時間脱MEKを行った。濾別及び乾燥を行い、ポリウレタンウレア樹脂(A0−1比)からなるポリウレタンウレア樹脂粉末(A−1比)を製造した。(A0−1比)のガラス転移温度は−41℃、ウレアオリゴマー含有量は167ppmであった。
【0050】
比較例2
反応容器に、比較製造例2で得た着色されたプレポリマー溶液(UP−6’)(100.0部)と製造例5で得たMEKケチミン化物(K−1)(8.0部)を混合投入し、そこに分散剤(三洋化成工業(株)製;サンスパールPS−8)(24重量部)を溶解した水溶液300重量部を加え、JANKE&KUNKEL IKA−Labortechnik製;ULTRA−TURRAX T50を用いて回転数5000rpmで1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、撹拌しながら60℃減圧下で2時間脱MEKを行った。濾別及び乾燥を行い、ポリウレタンウレア樹脂(A0−2比)からなるポリウレタンウレア樹脂粉末(A−2比)を製造した。(A0−2比)のガラス転移温度は−41℃、ウレアオリゴマー含有量は201ppmであった。
【0051】
実施例5〜8
実施例1〜4で得られたポリウレタンウレア樹脂粉末(A−1)〜(A−4)(103.0部)、可塑剤(ポリエチレングリコールジ安息香酸エステル[三洋化成工業(株)製;サンソフトEB300]11.5部、安定剤[三洋化成工業(株)製;ネオマーDA600]4.0部、光安定剤[チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)社製;サノールLS765]0.3部、ジメチルポリシロキサン[東レ・ダウコーニング(株)製;SH200(10000)]0.1部、変性ジメチルポリシロキサン[信越化学工業(株)製;X−22−3710ST]0.1部を投入し、70℃で4時間混合した。
次いで、室温まで冷却後、ポリメチルメタクリレート微粉末[ガンツ化成(株)製;ガンツパールPM−030S]0.3部、シリカ微粉末[グレースデヴィソン化学製;サイロブロックS200]0.3部を投入混合し、成形用樹脂粉末組成物(S−1)〜(S−4)を得た。(S−1)の体積平均粒径は148μm、(S−2)の体積平均粒径は151μm、(S−3)の体積平均粒径は150μm、(S−4)の体積平均粒径は155μmであった。
【0052】
比較例3,4
比較製造例3,4で得られたポリウレタンウレア樹脂粉末(A−1比)、(A−2比)(103.0部)、可塑剤(ポリエチレングリコールジ安息香酸エステル[三洋化成工業(株)製;サンソフトEB300]11.5部、安定剤[三洋化成工業(株)製;ネオマーDA600]4.0部、光安定剤[チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)社製;サノールLS765]0.3部、ジメチルポリシロキサン[東レ・ダウコーニング(株)製;SH200(10000)]0.1部、変性ジメチルポリシロキサン[信越化学工業(株)製;X−22−3710ST]0.1部を投入し、70℃で4時間混合した。
【0053】
次いで、室温まで冷却後、ポリメチルメタクリレート微粉末[ガンツ化成(株)製;ガンツパールPM−030S]0.3部、シリカ微粉末[グレースデヴィソン化学製;サイロブロックS200]0.3部を投入混合し、成形用樹脂粉末組成物(S−1比)、(S−2比)を得た。(S−1比)の体積平均粒径は150μm、(S−2比)の体積平均粒径は151μm、であった。
【0054】
ブリード物含有量の分析方法
ブリード物となる低分子オリゴマーの主成分は低分子ウレアオリゴマーであり、低分子ウレアオリゴマー(B)の含有量は、クロマトグラフィーにより定量的に測定することができる。
【0055】
<LC−UV測定>
(1)ウレタンウレア樹脂粉末中のウレアオリゴマー抽出
ポリウレタンウレア樹脂粉末(A−1)〜(A−6)約1.0gに100mlの超純水を使用し、60℃で温調攪拌することにより、ウレアオリゴマーを抽出する。
(2)ウレアオリゴマー量の測定
(1)で得た抽出溶液の上澄みをミクロフィルターでろ過し、LC−UV(島津製作所製プロミネンスUFLCなど)を用いて下記条件にて測定を行う。標準物質としてN,Nジメチルアセトアミドを使用し、検量線を作成する。
テトラエチレングリコールのピーク面積に対するウレアオリゴマーのピーク面積比からウレアオリゴマー量を算出する。
【0056】
<HPLC条件>
・移動相 A液 100mMNaHPO・2HO・1mM NaPO/12HO水溶液
B液 メタノール
・カラム 信和化工製 Shimpak ODS−II 長さ150mm 内径2mm 粒径5μm 温度40℃
・検出器 測定波長 200nm スリット幅 1.2nm セルセミミクロフローセル
・サンプル注入量 10μm
【0057】
実施例5〜8の成形用樹脂粉末組成物(S−1)、(S−2)、(S−3)、(S−4)及び比較例3、4の成形用樹脂粉末組成物(S−1比)、(S−2比)を使用して成形シートを作成し、成形シートの外観や触感の変化を経時で評価し、また、下記に示す方法で引張強度、ガラス転移温度を測定し、結果を表1に示した。
【0058】
<成形シートの作成方法>
予め270℃に加熱したシボ付きNi電鋳型にポリウレタンウレア樹脂粉末組成物(S−1)〜(S−6)を流し込み、10秒後余分な樹脂粉末を排出する。室温下で60秒間放置した後、水冷、脱型すると膜厚1mm程度の均一な成形シートが得られた。
【0059】
<ブリード性>
成形シートをポリエチレンなどの袋に入れて室温下にて保管し、経日変化を目視、触感により下記の級数にて判断する。
<判断基準>
0級:ブリード物は観測されない
1級:成形品裏面にのみわずかにブリード物が見られる。
2級:成形品シボ面・裏面ともわずかにブリード物が見られる。(0−2級に触感の変化はない。)
3級:一部分にはっきりブリード物が見られる。ブリード部にわずかなヌメリ・湿り気が感じられる。

4級:全面にはっきりブリード物が見られる。ブリード部にわずかなヌメリ・湿り気が感じられる。
5級:成形品の色やシボ模様が判断しにくい程度までブリード物が見られる。ブリード部にはっきりとヌメリ・湿り気が感じられる。
【0060】
上記の方法で作成した成形シートを下記の方法で引張強度及び引裂強度を測定した。
・引張強度はJIS K6251−2004に準拠して測定した。
・引裂強度はJIS K6252−2004に準拠して測定した。
【0061】
また、ガラス転移温度、フォギング試験は成形シートを作成後、23℃、50%RHの条件下、24時間保管したものを使用した。
・ガラス転移温度
幅約5mm、長さ約45mmの成形シートを切り取り、動的粘弾性測定装置(Rheogel−E4000、UBM製)に取り付け、周波数10Hzで−80℃から30℃まで引張温度依存性の測定を行った。得られたE’’ピークトップ温度を樹脂のガラス転移温度として見積もった。
・フォギング試験(ガラス霞み度)
内径50mm、長さ150mmの底付き円筒管に成形シート5.0gを入れ、厚さ4mmの透明ガラス板で蓋をした後、100℃のオイルバスに底から50mmの位置まで浸して24時間静置加熱した。試験後、ガラス板の透過率を測定した。ガラス板の透過率が高いものほどフォギング成分の発生が少ない。
【0062】
【表1】

【0063】
表1からわかるように、本発明の実施例1〜4のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物から得られる成形シートは経時の外観・触感の安定性に優れる。また、Tgが低く低温下でのソフト感に優れる。
本発明の樹脂粉末組成物から成形される表皮は、自動車部品や家電部品、玩具、雑貨品等のスラッシュ組成物として、例えばインストルメントパネル、ドアトリム等のスラッシュ組成物として好適に使用される。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の樹脂粉末組成物から成形される表皮は、自動車部品や家電部品、玩具、雑貨品等のスラッシュ組成物として、例えばインストルメントパネル、ドアトリム等のスラッシュ組成物として好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性水素基を含有する化合物(a)と1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを含有するジイソシアネート(e)とが反応してなり、(a)の活性水素基のモル数をX、(e)のイソシアネート基のモル数をYとした時、下記式(1)を満足するイソシアネート基末端プレポリマー(UP)であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によって得られる該イソシアネート基末端プレポリマー(UP)のメタノールブロック化物の全ピーク面積に対する1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのメタノールブロック化物相当のピーク面積の割合が0〜1.5%であるイソシアネート基末端プレポリマー(UP)を、水及び/又は低分子ジアミンと反応させて得られることを特徴とするポリウレタンウレア樹脂(A0)の製造方法。
1.0<Y/X≦1.5 (1)
【請求項2】
ジイソシアネート(e)が1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリウレタンウレア樹脂(A0)の製造方法で得られるポリウレタンウレア樹脂(A0)が粉末であるポリウレタンウレア樹脂粉末(A)の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の製造方法で得られたポリウレタンウレア樹脂粉末(A)に、添加剤(C)を添加することを特徴とするポリウレタンウレア樹脂粉末組成物(S)の製造方法。

【公開番号】特開2011−231199(P2011−231199A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101816(P2010−101816)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】