説明

熱可塑性エラストマー組成物、成形品および複層成形品

【課題】 良好な成形加工性を有し、気体に対する遮断性に優れる熱可塑性エラストマー組成物、該組成物からなる成形品、並びに該組成物からなる層を有する複層成形品を提供する。
【解決手段】 ビニル芳香族化合物単位からなる重合体ブロック(i)を1個以上、および水素添加されていてもよい共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロック(ii)を1個以上有し、かつ分子鎖の末端に酸無水物基を有するブロック共重合体(A)、並びに極性官能基を分子内に含有する有機カチオンにより有機化された層状無機化合物(B)からなる熱可塑性エラストマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な成形加工性を有し、気体に対する遮断性に優れる熱可塑性エラストマー組成物、該組成物からなる成形品および該組成物からなる層を有する複層成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム弾性を有する軟質材料であるブチルゴムは、気体に対する遮断性が求められる用途に用いられている。しかしながら、ブチルゴムを使用した成形品は、成形後に煩雑な加硫工程が必要である上、加硫を行うためリサイクル性に欠けるという問題があった。
【0003】
この問題を解決する手段として、近年、加硫工程を必要とせず、従来の熱可塑性樹脂と同様に成形加工およびリサイクルが可能な熱可塑性エラストマーが、自動車部品、家電部品、電線被覆、医療用部品、雑貨、履物等の分野で多用されている。このような熱可塑性エラストマーのうち、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物に代表される水素添加ブロック共重合体は、ゴム弾性、柔軟性および成形加工性に優れることからその使用量が増大している。
【0004】
しかしながら、上記の水素添加ブロック共重合体は、酸素、窒素、二酸化炭素等の気体などに対する遮断性が十分に得られないことがあり、気体への遮断性を必要とするシート、フィルム、飲食品用包装材、容器、容器用パッキング、チューブ、ホース等へ適用が難しいという問題があった。
【0005】
この問題を解決する手段として、熱可塑性エラストマー中に層状無機化合物を分散させる方法等が開示されている(例えば、特許文献1参照)が、該方法では層状無機化合物と熱可塑性エラストマーとの親和性が不十分であるために熱可塑性エラストマー中に層状無機化合物が均一に分散しておらず、酸素、窒素、二酸化炭素等の気体などに対する遮断性の改善効果が十分に得られていないのが現状である。
【特許文献1】特開2000−86822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、良好な成形加工性を有し、気体に対する遮断性に優れる熱可塑性エラストマー組成物、該組成物からなる成形品および該組成物からなる層を有する複層成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明らは、鋭意検討した結果、特定のブロック共重合体と特定の層状無機化合物とからなる熱可塑性エラストマー組成物により、成形加工性および気体に対する遮断性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
〔1〕 ブロック共重合体(A)並びに極性官能基を分子内に有する有機カチオンにより有機化された層状無機化合物(B)からなる熱可塑性エラストマー組成物であって、該ブロック共重合体(A)が、ビニル芳香族化合物単位からなる重合体ブロック(i)を1個以上、および水素添加されていてもよい共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロック(ii)を1個以上有し、かつ末端に酸無水物基を有するブロック共重合体であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物、
〔2〕 上記〔1〕に記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる成形品、
〔3〕 上記〔1〕に記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる層を有する複層成形品、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、成形加工性および気体に対する遮断性に優れた熱可塑性エラストマー組成物、該組成物からなる成形品、並びに該組成物からなる層を有する複層成形品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の熱可塑性エラストマー組成物に使用するブロック共重合体(A)は、ビニル芳香族化合物単位からなる重合体ブロック(i)〔以下、単に「(i)」又は「重合体ブロック(i)」と記載することがある〕を1個以上、および水素添加されていてもよい共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロック(ii)〔以下、単に「(ii)」又は「重合体ブロック(ii)」と記載することがある〕を1個以上を有し、かつ分子鎖の末端に酸無水物基を有しているものである。また、重合体ブロック(i)と重合体ブロック(ii)との結合様式については、直鎖状、分岐状、放射状、又はそれらの2つ以上が組み合わさったいずれの様式であってもよい。例えば、該結合形式が直鎖状の場合、「(i)−(ii)」で示されるジブロック共重合体構造、「(i)−(ii)−(i)」で示されるトリブロック共重合体構造、「(i)−(ii)−(i)−(ii)」で示されるテトラブロック共重合体構造、あるいは、重合体ブロック(i)と重合体ブロック(ii)とが5個以上直鎖状に結合しているマルチブロック共重合体構造をとることができる。それらの中でも、得られる熱可塑性エラストマー組成物のゴム弾性および気体に対する遮断性等の観点から、重合体ブロック(i)と重合体ブロック(ii)との結合様式は、「(i)−(ii)−(i)」で示されるトリブロック共重合体構造であることが好ましい。
【0011】
ブロック共重合体(A)を構成するビニル芳香族化合物単位からなる重合体ブロック(i)の形成に用いられるビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、インデン、アセトナフチレンなどが挙げられる。重合体ブロック(i)は、前記したビニル芳香族化合物の1種又は2種以上からなる構造単位を有していてもよく、成形加工性の点からスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンに由来する構造単位から主としてなっていることが好ましい。
【0012】
上記重合体ブロック(i)は、ビニル芳香族化合物からなる構造単位と共に必要に応じて他の共重合性単量体、例えば、1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、イソプレン、メチルビニルエーテル等の構造単位を少量有していてもよい。その場合の他の共重合性単量体からなる構造単位の割合は、重合体ブロック(i)の30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0013】
ブロック共重合体(A)を構成する水素添加されていてもよい共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロック(ii)の形成に用いられる共役ジエン化合物としては、イソプレン、ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等を挙げることができる。重合体ブロック(ii)が2種以上の共役ジエン化合物に由来する構造単位を有している場合は、それらの結合形態はランダム、テーパード、一部ブロック状、又はそれらの2種以上の組み合わせなどのいずれであってもよい。さらに重合体ブロック(ii)としては、(1)イソプレン単位を主体とするモノマー単位からなるポリイソプレンブロック又はその不飽和結合の一部又は全部が水素添加(以下「水添」ということがある)された水添ポリイソプレンブロック;(2)ブタジエン単位を主体とするモノマー単位からなるポリブタジエンブロック又はその不飽和結合の一部又は全部が水素添加された水添ポリブタジエンブロック;又は(3)イソプレン単位とブタジエン単位を主体とするモノマー単位からなるイソプレン/ブタジエン共重合体ブロック又はその不飽和結合の一部又は全部が水素添加された水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック;が挙げられる。また、気体に対する遮断性等の観点から、1,2−結合および3,4−結合の合計の割合が30mol%以上である水素添加されていてもよいイソプレンおよび/又はブタジエン単位からなる共役ジエン重合体ブロック又は共役ジエン共重合体ブロックであることが好ましく、1,2−結合および3,4−結合の合計の割合が40mol%以上である水素添加されていてもよいイソプレンおよび/又はブタジエン単位からなる共役ジエン重合体ブロック又は共役ジエン共重合体ブロックであることがより好ましい。
イソプレン/ブタジエン共重合体ブロックでは、イソプレン単位とブタジエン単位の配置は、ランダム状、ブロック状、テーパードブロック状のいずれの形態になっていてもよい。
【0014】
上記重合体ブロック(ii)における不飽和二重結合は、一部又は全部が水素添加されていることが好ましい。水素添加により、熱可塑性エラストマー組成物の気体に対する遮断性、耐熱性、および耐候性が良好なものとなるためである。上記重合体ブロック(ii)の水添率としては、気体に対する遮断性、耐熱性、耐候性の観点から50mol%以上であることが好ましく、60mol%以上であることがより好ましく、80mol%以上であることがさらに好ましい。また、水素添加の方法は特に限定されないが、例えば、Ni/Al系のZiegler系水素添加触媒の存在下でブロック共重合体(A)のシクロヘキサン溶液と水素とを反応させる方法等が挙げられる。なお、水添されたブロック共重合体(A)における共役ジエン単位由来の不飽和二重結合の水添率は、ヨウ素価滴定法、赤外分光スペクトル測定、核磁気共鳴スペクトル(H−NMRスペクトル)測定等の分析手段を用いて算出することができる。
【0015】
ブロック共重合体(A)は、その分子鎖の末端に酸無水物基を有することが必要であるが、その結合ブロックは特に限定されない。例えば、該酸無水物基は、重合体ブロック(i)および重合体ブロック(ii)からなる分子鎖の少なくとも片末端に結合していればよく、該分子鎖の末端にある限り重合体ブロック(i)又は重合体ブロック(ii)のどちらに結合していてもよく、気体に対する遮断性等の観点から、該分子鎖の末端にある重合体ブロック(i)に結合していることが好ましい。
【0016】
ブロック共重合体(A)は、分子鎖の末端に酸無水物基を有するものであるが、末端に酸無水物基を導入する反応の反応率が完全でない場合を考慮して、末端酸無水物基の平均含有量が、1分子当たり0.5個以上であるものをも包含する。末端酸無水物基の平均含有量は0.8個以上であるのがより好ましい。末端酸無水物基の平均含有量が1分子当たりで0.5個未満であると、得られる熱可塑性エラストマー組成物中の層状無機化合物(B)の分散性が低下し、気体に対する遮断性が低下するので好ましくない。
【0017】
ブロック共重合体(A)において、上記重合体ブロック(i)と上記重合体ブロック(ii)との質量比は、得られる成形品の成形加工性等の観点から、重合体ブロック(i):重合体ブロック(ii)=5:95〜40:60とするのが好ましく、重合体ブロック(i):重合体ブロック(ii)=10:90〜40:60とすることがより好ましい。
【0018】
ブロック共重合体(A)において、上記重合体ブロック(i)の分子量、上記重合体ブロック(ii)の分子量、およびブロック共重合体(A)全体の分子量は特に制限されないが、水素添加前の状態で、重合体ブロック(i)の数平均分子量(Mn)が1,000〜100,000の範囲内にあり、重合体ブロック(ii)の数平均分子量(Mn)が10,000〜500,000の範囲内にあり、ブロック共重合体(A)全体の数平均分子量(Mn)が11,000〜2,000,000の範囲内にあることが、熱可塑性エラストマー組成物の成形加工性等の点から好ましい。
なお、ここでいう数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン検量線から求めた値をいう。
【0019】
ブロック共重合体(A)は、例えば、アニオン重合やカチオン重合などのイオン重合法、配位重合法、リビングラジカル重合法などにより重合体ブロック(i)および(ii)からなる分子鎖を形成させた後、官能性キャッピング剤との反応により該分子鎖の末端にジエステル基を導入した後、加熱処理を行うことによって製造することができる。例えば、アニオン重合法による場合は、アルキルリチウム化合物等のアニオン重合開始剤の存在下、n−ヘキサンやシクロヘキサンなどの不活性有機溶媒中で、ビニル芳香族化合物、共役ジエン化合物を逐次重合させ、所望のブロック構造および数平均分子量を有する重合体ブロックからなるリビングポリマーを製造し、マレイン酸ジt−ブチル、シトラコン酸ジt−ブチル等のジエステル化合物に代表される官能性キャッピング剤を添加し重合を停止させることにより、コハク酸ジt−ブチル−2−イル基などのジエステル基を末端に有するブロック共重合体が得られる。該ブロック共重合体を加熱処理し、脱イソブチレン反応および脱水反応をさせることによって、分子鎖の末端にコハク酸無水物基、メチルコハク酸無水物基などの酸無水物基を有するブロック共重合体(A)が得られる。なお、重合開始剤として、例えば、二官能開始剤である有機ジリチウム化合物を用いた場合には、両末端に酸無水物基を有するブロック共重合体を製造することができる。
【0020】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に使用する、極性官能基を分子内に有する有機カチオンによって有機化された層状無機化合物(B)〔以下、単に無機化合物(B)と記載することがある〕における層状無機化合物としては、粘土鉱物を主とするものであれば特に制限はなく、例えば、スメクタイト族粘土、膨潤性雲母、およびマイカなどの膨潤性ケイ酸塩、並びに、燐酸ジルコニウムの中の一種又は二種以上を組み合わせて使用することができるが、汎用性、取扱性の観点から膨潤性ケイ酸塩を使用することが好ましい。
【0021】
スメクタイト族粘土としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト、ベントナイト、およびこれらの置換体、誘導体、混合物などが挙げられるが、汎用性および得られる熱可塑性エラストマー組成物の気体に対する遮断性の観点から、モンモリロナイト、ヘクトライト、ベントナイトを使用することが好ましい。
【0022】
膨潤性雲母としては、例えば、リチウム型テニオライト、ナトリウム型テニオライト、リチウム型四ケイ素雲母、ナトリウム型四ケイ素雲母、バーミキュライト類相当品、およびこれらの置換体、誘導体、混合物などが挙げられるが、汎用性および得られる熱可塑性エラストマー組成物の気体に対する遮断性の観点から、層間にナトリウムイオンを有する膨潤性雲母を使用することが好ましい。なお、バーミキュライト類相当品としては、トリオクトヘドラルバーミキュライト、ジオクトヘドラルバーミキュライトなどが挙げられる。
【0023】
マイカとしては、例えば、マスコバイト、フィロゴパイト、バイオタイト、レピドライト、パラゴナイト、テトラシリシックマイカなどが挙げられる。また、マイカにフッ素処理を行って膨潤性マイカとしたもの、あるいは水熱合成によって得られたマイカなども挙げられる。
【0024】
層状無機化合物としては、有機化前で、平均粒径(長径)10nm〜100μm、長径/厚さの比(アスペクト比)が2〜500のものを用いることができる。
【0025】
層状無機化合物を有機化する有機カチオンとしては、極性官能基を分子内に有するものであれば特に限定されず、例えば、極性官能基を分子内に有するアンモニウムイオン類、ホスホニウムイオン類、スルホニウムイオン類又はアミノ酸類の正電荷を有する有機化合物等の有機オニウムイオンが挙げられ、汎用性等の観点から下記の化学式(1)で示されるアンモニウムイオン類あるいはホスホニウムイオン類が好ましい。
【0026】
【化1】

【0027】
(式中、Mは窒素原子又はリン原子を表し、R、R、RおよびRは、それぞれ水素原子、ベンゼン環上に極性官能基を有していてもよいベンジル基、又は極性官能基で置換されていてもよい炭素数が1〜30のアルキル基を表す。ただし、R〜Rの少なくとも1つは極性官能基を有するベンジル基又は極性官能基で置換された炭素数が1〜30のアルキル基を表す。また、得られる熱可塑性エラストマー組成物の気体に対する遮断性の観点から、極性官能基を有していてもよいベンジル基の数は2個以下であることが好ましい。)
【0028】
上記において、炭素数1〜30のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。
【0029】
上記において、有機カチオンの分子内に含有する極性官能基としては、例えば、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、カルボキシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、酸無水物基、ニトロ基、ハロゲン原子、エポキシ基などが挙げられ、得られる熱可塑性エラストマー組成物の気体に対する遮断性の観点から、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、酸無水物基が好ましく、水酸基が特に好ましい。なお、カルボキシル基は、メチルエステル、エチルエステル、ベンジルエステル等で保護された形態であってもよい。極性官能基を分子内に有する有機カチオンとしては、例えば、ジ(2−ヒドロキシエチル)メチルドデシルアンモニウム等のジ(ヒドロキシアルキル)ジアルキルアンモニウムなどが挙げられる。
【0030】
上記において、有機カチオンの対アニオンとしては、Cl、Br、I、NO、OH、CHCOO、HSO、HCOなどが挙げられ、Cl、Br、I、NO、OHが好ましい。
【0031】
さらに、層状無機化合物を有機化する有機カチオンには、上記した極性官能基を分子内に含有する有機カチオンに加え、極性官能基を分子内に含有しないアンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン等の有機カチオンを併用してもよい。
【0032】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物に使用する無機化合物(B)は、例えば、予め膨潤化した層状無機化合物に上記有機カチオンを添加して該層状無機化合物を有機化した後、過剰量の有機カチオンを洗浄除去し、乾燥することによって得ることができる。
【0033】
層状無機化合物の膨潤化処理は、(イ)水、(ロ)水と任意の割合で混和する極性有機溶媒、又は(ハ)水と該極性有機溶媒との混合溶媒から選ばれる溶媒中に該層状無機化合物を浸漬することによって実施することができる。この際、系全体を十分に攪拌することが望ましい。
【0034】
層状無機化合物の膨潤化処理に使用する極性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール,1,4−ブタンジオール等のジオール類;アセトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン等の非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。
【0035】
有機カチオンの添加量は、例えば、カラム浸透法(「粘土ハンドブック」第576〜577頁、技法堂出版 参照)や、メチレンブルー吸着量測定法(日本ベントナイト工業会標準試験法、JBAS−107−91 参照)等の方法で層状無機化合物の陽イオン交換容量(CEC)を測定し、該測定値に基づいて決定することができる。有機カチオンの添加量は、CECに対して1当量以上であることが好ましく、1当量から10当量の範囲内であることがより好ましい。
【0036】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、上記ブロック共重合体(A)と上記無機化合物(B)との質量比は特に限定されないが、成形加工性、および気体に対する遮断性のバランスの観点から、ブロック共重合体(A):無機化合物(B)=99:1〜50:50であるのが好ましく、ブロック共重合体(A):無機化合物(B)=98:2〜50:50であるのがより好ましい。
【0037】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、柔軟性や熱可塑性を付与する目的でゴム用軟化剤(C)を含有することができる。このようなゴム用軟化剤(C)としては、ゴムに一般的に配合される軟化剤であれば特に制限はないが、得られる熱可塑性エラストマー組成物の気体に対する遮断性の観点からポリブテン、ポリイソブチレンを用いることが好ましく、これらを併用してもよい。
【0038】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物がゴム用軟化剤(C)を含有する場合、ゴム用軟化剤(C)の含有量は、得られる熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性や耐ブリードアウト性を向上させる観点から、ブロック共重合体(A)100質量部に対して1〜200質量部とすることが好ましく、1〜150質量部とすることがより好ましい。
【0039】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成形性を付与する目的でポリオレフィン(D)を含有することができる。このようなポリオレフィン(D)としては特に制限はなく、例えば、プロピレン単独重合体、エチレンプロピレンランダム共重合体、エチレンプロピレンブロック共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン・4−メチルペンテン−1共重合体、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンなどのエチレンの単独重合体、エチレン・ブテン−1共重合体、エチレンヘキセン共重合体、エチレンヘプテン共重合体、エチレンオクテン共重合体、エチレン・4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体などのエチレン共重合体を挙げることができ、これらは単独で又は二種以上を併用してもよい。
【0040】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物がポリオレフィン(D)を含有する場合、ポリオレフィン(D)の含有量は、得られる熱可塑性エラストマー組成物の成形性や柔軟性を向上させる観点から、ブロック共重合体(A)100質量部に対して1〜200質量部とすることが好ましく、1〜150質量部とすることがより好ましい。
【0041】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、上記の成分の他に、必要に応じて、本発明の効果を実質的に損なわない範囲で、他の重合体を含有してもよい。配合し得る他の重合体の例としては、ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド6・10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6・12、ポリヘキサメチレンジアミンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンジアミンイソフタルアミド、ポリノナメチレンジアミンテレフタルアミド、キシレン基含有ポリアミドなどのポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマーなどのポリオキシメチレン系樹脂;スチレン単独重合体、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂などのスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;天然ゴム;合成イソプレンゴム;クロロプレンゴム;アクリルゴム;ブチルゴム;アクリロニトリル・ブタジエンゴム;エピクロロヒドリンゴム;シリコーンゴム;フッ素ゴム;ウレタンゴム;ポリウレタン系エラストマー;ポリアミド系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;塩化ビニル樹脂、軟質塩化ビニル樹脂などを挙げることができる。
【0042】
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、補強、増量、着色などの目的で、必要に応じて無機充填剤や染顔料などを含有することができる。無機充填剤や染顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー、合成珪素、酸化チタン、カーボンブラック、硫酸バリウムなどを挙げることができる。無機充填剤や染顔料の配合量は、熱可塑性エラストマー組成物の気体に対する遮断性が損われない範囲であることが好ましく、一般にはブロック共重合体(A)100質量部に対して50質量部以下であるのが好ましい。
【0043】
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、上述した成分以外に、必要に応じて滑剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、シリコンオイル、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、発泡剤、香料等の1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0044】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、ブロック共重合体(A)、無機化合物(B)、並びに必要に応じ、ゴム用軟化剤(C)、ポリオレフィン(D)およびその他の成分を均一に混合させ得る方法であれば特に限定されない。例えば、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等の装置を用い、約160〜280℃で約30秒〜10分間これらの成分を溶融混練することによって本発明の熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。
【0045】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性を有するので、一般の熱可塑性重合体に対して用いられている通常の成形加工方法や成形加工装置を用いて成形加工することができる。成形加工法としては、例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形などの任意の方法を採用することができる。このような方法で製造される本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなる成形品にはパイプ、チューブ、シート、フィルム、円板、リング、袋状物、びん状物、紐状物、繊維状物などの、多種多様の形状のものが包含され、また、他の素材との積層構造体又は複合構造体も包含される。他の素材との積層構造を採用することによって、成形品に、機械的特性など他の素材の有する特性を導入することが可能である。
【0046】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなる成形品は、気体等に対する優れた遮断性を備えているので、これらの性質が要求される日用品、包装材、機械部品、薬栓などとして使用することができる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物の特徴が効果的に発揮される用途の例としては、飲食品用包装材、容器、容器用パッキングなどが挙げられる。これらの用途に供するための成形品においては、当該熱可塑性エラストマー組成物は少なくとも1つの層を形成していればよく、当該熱可塑性エラストマー組成物からなる単層構造のもの、および当該熱可塑性エラストマー組成物からなる少なくとも1つの層と他の素材からなる少なくとも1つの層との積層構造のものの中から適宜選ぶことができる。
他の素材がポリオレフィン系樹脂の場合、接着剤を使用しなくても両者は強固に接着する。上記の飲食品用包装材、容器、および容器用パッキングでは、大気中の酸素ガスの透過と内容物の揮発性成分の透過を阻止できることから、内容物の長期保存性に優れる。また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなる成形品は、廃棄の際に、溶融させて再使用できるという優れた効果もある。
【0047】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、当該熱可塑性エラストマー組成物からなる少なくとも1つの層と他の素材からなる少なくとも1つの層とからなる複層成形品、チューブ、容器用パッキング等に適用することができる。当該他の素材は、要求される特性、予定される用途などに応じて適切なものを選択すればよい。例えば、ポリオレフィン(例:高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリプロピレン等)、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂などの熱可塑性重合体などを挙げることができる。なお、該複層成形品における本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなる層は、1〜3000μmの厚さであることが好ましい。
複層成形品の中でも、本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物からなる層とポリオレフィン系樹脂からなる層とを有する複層成形品が好適な実施態様である。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ポリオレフィン系樹脂との接着性に優れているからである。ポリオレフィン系樹脂としては、プロピレン系樹脂、特にプロピレンの単独重合体が好適に使用される。
また、当該複層成形品においては、本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなる層とポリオレフィン系樹脂等からなる基材層との間に接着剤層を介在させることなく、加熱手段により接着させることが可能である。従って、本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなる層と、ポリオレフィン系樹脂からなる層とが、相互に直接接着されている構成とすることが好適な実施態様である。
【0048】
また、本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物からなる層と、他の素材からなる基材層との間に接着剤層を介在させてもよい。接着剤層を介在させることによって、本発明の熱可塑性エラストマー組成物からなる層と他の素材からなる基材層とを強固に接合一体化させることができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例などにより具体的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されない。また、実施例、比較例、および参考例から得られた成形品の物性、すなわち、酸素透過係数(OTR)、OTR低下倍率、接着性、およびモルフォロジーの測定、算出又は評価は下記のようにして行った。
【0050】
(1)酸素透過係数(OTR)の測定:
成形品を圧縮成形機により加熱下に圧縮成形し、厚さ100μmのフィルム状試験片を作製し、ガス透過率測定装置(柳本製作所製「GTR−10」)を用い、温度35℃、湿度0%RHの条件下で酸素透過係数[(ml・20μm)/(m・day・atm)]すなわち、〔×0.113[(fm・20μm)/(Pa・s)]〕の測定を行った。
【0051】
(2)OTR低下倍率の算出:
成形品の気体に対する遮断性の尺度として、下式で示される「OTR低下倍率」を採用した。「OTR低下倍率」の値が低いほど成形品の気体に対する遮断性が高いことを示す。
OTR低下倍率=成形品Xの酸素透過係数/成形品Yの酸素透過係数
ここで、成形品Xは無機化合物(B)を含む成形品、成形品Yは成形品Xの組成から無機化合物(B)を除いた組成の成形品を示す。
【0052】
(3)接着性の測定:
縦100mm×横50mm×厚み2mmの金型内に厚さ1mmのポリプロピレンシートを置き、その上に厚さ1mmのシート状試験片を載せ、圧縮成形機により加熱下で成形して厚み約2mmの複層成形品を作製した。該複層成形品からシート状試験片を剥がすことができず、接着性が良好な場合を「○」、剥がすことができ、接着性が不十分な場合を「×」で評価した。
【0053】
(4)モルフォロジーの観察:
上記酸素透過係数測定用に作製したフィルムを用い、厚み100nm以下の超薄切片を作製し、四酸化ルテニウム蒸気で染色したのち、透過型電子顕微鏡を用いてモルフォロジーを観察した。
【0054】
また、以下の実施例、比較例、および参考例で用いたブロック共重合体(A)、無機化合物(B)、ゴム用軟化剤(C)、ポリオレフィン(D)の内容は次のとおりである。
【0055】
まず、実施例の熱可塑性エラストマー組成物に適用可能なブロック共重合体(A−1)および(A−2)、比較例として適用するブロック共重合体(3)および(4)について説明する。
[ブロック共重合体(A−1)]
一般に用いられるリビングアニオン重合法により得られるポリスチレン−b−イソプレン/ブタジエン共重合体−ポリスチレンリビングポリマーに、トリイソブチルアルミニウムを添加したのちにマレイン酸ジ−t−ブチルと反応させ、末端にコハク酸ジ−t−ブチルエステル基を有するポリスチレン−b−イソプレン/ブタジエン共重合体−ポリスチレンブロック共重合体を得て、該ブロック共重合体に水素添加を施した後、熱処理を行い末端に酸無水物基を有するポリスチレン−水添(イソプレン/ブタジエン共重合体)−ポリスチレン型トリブロック共重合体を得た。該トリブロック共重合体の物性値等を以下に示す。
末端に酸無水物基の付いたポリスチレン−イソプレン/ブタジエン共重合体−ポリスチレン型トリブロック共重合体の水素添加物[Mn=57,000;各重合体ブロックの割合=15/70/15(質量比);3,4−結合および1,2−結合含有量10mol%;ジエンブロックの水素添加率=99mol%;酸無水物基含有量=0.9個/分子]。
【0056】
[ブロック共重合体(A−2)]
末端に酸無水物基の付いたポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン型トリブロック共重合体の水素添加物[Mn=60,000;各重合体ブロックの割合=15/70/15(質量比);3,4−結合および1,2−結合含有量53[mol%];ジエンブロックの水素添加率=91mol%;酸無水物基含有量=0.9個/分子]。
【0057】
[ブロック共重合体(3)]
ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン型トリブロック共重合体の水素添加物[Mn=60,000;各重合体ブロックの割合=15/70/15(質量比);3,4−結合および1,2−結合含有量8mol%;ジエンブロックの水素添加率=99mol%]。
【0058】
[ブロック共重合体(4)]
ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン型トリブロック共重合体の水素添加物[Mn=60,000;各重合体ブロックの割合=15/70/15(質量比);3,4−結合および1,2−結合含有量53[mol%];ジエンブロックの水素添加率=91mol%]。
【0059】
次に、実施例の熱可塑性エラストマー組成物に適用可能な無機化合物(B−1)、比較例として適用する無機化合物(2)について説明する。
[無機化合物(B−1)]
ソマシフMEE〔コープケミカル社製;ジ(2−ヒドロキシエチル)メチルドデシルアンモニウムイオンで有機化された合成雲母〕
【0060】
[無機化合物(2)]
ソマシフME100〔コープケミカル社製;有機カチオンで有機化されていない合成雲母〕
【0061】
さらに、実施例および参考例で使用するゴム用軟化剤(C)およびポリオレフィン(D)について説明する。
[ゴム用軟化剤(C)]
日石ポリブテンHV−100(新日本石油化学社製)
[ポリオレフィン(D)]
グランドポリプロF327(グランドポリマー社製)
【0062】
≪参考例1〜6≫
上記したブロック共重合体(A)、ゴム用軟化剤(C)およびポリオレフィン(D)を下記の表1に示す割合でラボプラストミル(東洋精機社製)に供給して、温度170℃で溶融混練し、得られた成形品の酸素透過係数を測定したところ、下記の表1に示す通りであった。
【0063】
【表1】

【0064】
≪実施例1〜4、および比較例1〜4≫
上記したブロック共重合体(A)、無機化合物(B)、ゴム用軟化剤(C)およびポリオレフィン(D)を下記の表2に示す割合でラボプラストミル(東洋精機社製)に供給して、温度170℃で溶融混練し、得られた成形品の酸素透過係数、OTR低下倍率、接着性を測定、算出、評価したところ、下記の表2に示す通りであった。
【0065】
【表2】

【0066】
表1および表2の結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に適用可能なブロック共重合体(A−1)および(A−2)のいずれか一種、並びに無機化合物(B−1)を含有する実施例1〜4の成形品は、該(A−1)および(A−2)のいずれか一種を含有するが、無機化合物(B−1)を含有していない参考例1、2、5および6の成形品に対し、気体に対する遮断性が改善されていることがわかる。
【0067】
表2、図1および図2の結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に適用可能なブロック共重合体(A−1)および(A−2)のいずれか一種、並びに無機化合物(B−1)を含有する実施例1および2の成形品は、該無機化合物(B−1)を含有するが、ブロック共重合体からなる分子の末端に酸無水物基を有さない点で本発明の構成要件を満たさないブロック共重合体(3)および(4)を用いた比較例1および2の成形品に対し、無機化合物(B−1)が均一に分散し、気体に対する遮断性が改善されていることがわかる。
【0068】
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に適用可能なブロック共重合体(A−1)または(A−2)のいずれか一種、並びに無機化合物(B−1)を含有する実施例1および2の成形品は、該ブロック共重合体(A−1)および(A−2)のいずれか一種を含有するが、層状無機化合物が極性官能基を分子内に含有する有機カチオンによって有機化されていない点で本発明の構成要件を満たさない無機化合物(2)を用いた比較例3および4の成形品に対し、気体に対する遮断性が改善されていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明により、良好な成形加工性を有し、気体に対する遮断性に優れる熱可塑性エラストマー組成物、該組成物からなる成形品、並びに該組成物からなる層を有する複層成形品が提供される。これらの成形品は、日用品、包装材、機械部品、薬栓、容器、容器用パッキングなどの用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施例1の成形品断面から作成した超薄切片の透過型電子顕微鏡写真である。図面下の実線(ミクロンバー)は、長さ500nmを示す。白矢印で示した黒い線がクレイ[層状無機化合物(B−1)]1枚に相当する。クレイは完全剥離している。なお、灰色はビニル芳香族化合物単位からなる重合体ブロック(i)、白色は共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロック(ii)である。
【図2】比較例1の成形品断面から作成した超薄切片の透過型電子顕微鏡写真である。図面下の実線(ミクロンバー)は、長さ500nmを示す。白矢印で示した黒い線で囲まれた内部は、クレイが積層した状態で存在している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック共重合体(A)並びに極性官能基を分子内に有する有機カチオンにより有機化された層状無機化合物(B)からなる熱可塑性エラストマー組成物であって、該ブロック共重合体(A)が、ビニル芳香族化合物単位からなる重合体ブロック(i)を1個以上、および水素添加されていてもよい共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロック(ii)を1個以上有し、かつ末端に酸無水物基を有するブロック共重合体であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
ブロック共重合体(A)が、重合体ブロック(i)−重合体ブロック(ii)−重合体ブロック(i)のトリブロック共重合体であり、かつ分子鎖の片末端に酸無水物基を有するブロック共重合体である請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
重合体ブロック(ii)が、1,2−結合および3,4−結合の合計の割合が30mol%以上である水素添加されていてもよいイソプレンおよび/又はブタジエン単位からなる共役ジエン重合体ブロック又は共役ジエン共重合体ブロックである請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
ゴム用軟化剤(C)をブロック共重合体(A)100質量部に対して1〜200質量部含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
ポリオレフィン(D)をブロック共重合体(A)100質量部に対して1〜200質量部含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる成形品。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる層を有する複層成形品。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる層を有するチューブ。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる層を有する容器用パッキング。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−91856(P2007−91856A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282074(P2005−282074)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】