説明

熱可塑性樹脂フィルム、ならびにそれを積層されたエラストマー積層体およびゴム栓

【課題】容器の開口部を密閉することができるゴム栓であって、容器の内容物(特に医薬品)を汚染することなく、安全性の高いゴム栓を提供する。
【解決手段】引張弾性率が1500Mpa以下であり、かつ融点が180℃以上の非フッ素系の熱可塑性樹脂フィルム(I)と、樹脂フィルム(I)が積層されたゴム栓とを提供する。好ましくは、熱可塑性樹脂フィルム(I)の160℃での貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下であり、より具体的には、4-メチル-1-ペンテン系重合体であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂フィルムと、それを積層されたエラストマー積層体、およびその積層体を含むゴム栓に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用容器などとして用いられるバイアルの開口部は、ゴム栓で栓をされることがある。また、バイアルの開口部の栓をするゴム栓の表面のうち、バイアルの内容物と接触する表面に、合成樹脂フィルムを積層することがある。ゴム栓に含まれる成分がバイアルの内容物に混入したり、内容物がゴム線に吸着したりすることを防止するためである。
【0003】
ゴム栓に積層される合成樹脂フィルムは、ポリエチレンフィルムであったり(特許文献1などを参照)、テトラフルオロエチレン樹脂フィルム(特許文献2などを参照)などのフッ素樹脂フィルムであったりすることが多い。ゴム栓に積層される合成樹脂フィルムには、容器の内容物に対する安定性、特に薬品安定性が求められ;かつ容器を密閉する必要があるため、一定以下の引張弾性率を有することが求められる。積層フィルムに柔軟性があれば、容器の開口部に密着することができ、ゴム栓の密封性が高まるからである。しかし、フッ素樹脂フィルムは、焼却処理が困難であり、環境負荷が大きいという問題を有する。
【0004】
また、合成樹脂フィルムが積層されたゴム栓の作製には、いくつかの方法が提案されているが(特許文献3および4などを参照)、基本的には、未加硫のゴムを所定の形状に金型成形しつつ、半加硫のゴム栓を得て;半加硫のゴム栓に合成樹脂フィルムを積層してラミネートして接着し、本加硫のフィルム付きゴム栓を得る。ゴム栓に密着させるには、ラミネート温度における合成樹脂フィルムの柔軟性(形状追従性)が高いこと、つまりラミネート温度における貯蔵弾性率が一定以下であることが求められる。もちろんラミネート温度以上の融点を有することも重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−22362号公報
【特許文献2】特開2002−209975号公報
【特許文献3】特開平4−251734号公報
【特許文献4】特開平5−124661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通り、ゴム栓に積層された合成樹脂フィルムには種々の物性が求められるが、これらを満足する合成樹脂フィルムは提供されてこなかった。そこで本発明は、合成樹脂フィルムが積層されたゴム栓であって、特に医療用容器の密栓に適したゴム栓を提供する。また、それに適した合成樹脂フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一は、以下に示す積層体に関する。
[1]23℃における引張弾性率が1500Mpa以下であり、かつ融点が180℃以上の、非フッ素系熱可塑性樹脂フィルム(I)と、エラストマーを主成分とするエラストマー層(II)と、を含む積層体(X)。
[2]前記熱可塑性樹脂フィルム(I)の160℃での貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下である、[1]に記載の積層体(X)。
[3]前記熱可塑性樹脂フィルム(I)が、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位と、炭素原子数2〜20の4-メチル-1-ペンテン以外のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる構成単位とを含む重合体(A)を含有する、[1]または[2]に記載の積層体(X)。
[4]前記熱可塑性樹脂フィルム(I)が、4-メチル-1-ペンテン単独重合体(B)をさらに含有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の積層体(X)。
[5]前記熱可塑性樹脂フィルム(I)の少なくとも片面に、コロナ処理もしくはプラズマ処理されている、[1]〜[4]のいずれかに記載の積層体(X)。
[6]前記熱可塑性樹脂フィルム(I)の少なくとも片面の水接触角が、100度以下である、[1]〜[5]のいずれかに記載の積層体(X)。
[7]前記熱可塑性樹脂フィルム(I)の平均膜厚が1〜300μmである、[1]〜[6]のいずれかに記載の積層体(X)。
[8]前記熱可塑性樹脂フィルム(I)と前記エラストマー層(II)が、接着層(III)を介して連続して積層されている、[1]〜[7]のいずれかに記載の積層体(X)。
[9]前記熱可塑性樹脂フィルム(I)と前記エラストマー層(II)が、接触して積層されている、[1]〜[7]のいずれかに記載の積層体(X)。
【0008】
本発明の第二は、以下に示すゴム栓に関する。
[10]前記[1]〜[9]のいずれかに記載の積層体(X)を加工してなるゴム栓(Y)。
【0009】
本発明の第三は、以下に示す容器に関する。
[11]少なくとも一つの開口部を有する容器本体と、前記開口部を密閉する[10]に記載のゴム栓(Y)と、を有する容器。
[12]少なくとも一つの開口部を有する容器本体と、前記開口部を密閉する[10]に記載のゴム栓(Y)と、を有する医療用容器。
[13]少なくとも一つの開口部を有する容器本体と、前記開口部を密閉する[10]に記載のゴム栓(Y)と、を有する輸液用容器。
[14]前記容器本体がガラス製である、[11]〜[13]のいずれかに記載の容器。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂フィルム(I)を積層されたゴム栓は、容器の開口部を密閉することができる。特に樹脂フィルム(I)が、耐薬品性の高い4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位を含む重合体であれば、容器の内容物の汚染が抑制される。従って本発明のゴム栓は、医薬品を収容する医療用容器の栓として、好ましく用いられうる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ゴム栓の例を示す図であり、図1Aは斜視図、図1Bは断面図、図1Cはチューブを設けられたゴム栓の断面図である。
【図2】ゴム栓の作製プロセスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.熱可塑性樹脂フィルム(I)
熱可塑性樹脂フィルム(I)は、主にエラストマー樹脂(ゴム材料)の表面にラミネートされる。後述するように樹脂フィルム(I)は、所定の形状に成形されたエラストマー樹脂にラミネートされることがあるので、ラミネート温度における柔軟性が高いことが求められる。ラミネート温度は、160℃以上であることが多い。そのため、樹脂フィルム(I)の160℃における貯蔵弾性率は、1.0×10Pa以下であることが好ましく、1.0×10以上1.0×10Pa以下であることがより好ましい。
【0013】
もちろん、樹脂フィルム(I)は、ラミネート温度で融解しないように、ラミネート温度以上の融点を有している必要があり、好ましくは180℃以上の融点を有しており、より好ましくは215℃以上245℃以下の融点を有している。
【0014】
一方、樹脂フィルム(I)は、ゴム栓に積層されうる。ゴム栓は、ゴムの弾性によって容器の開口部を密封するので、積層されたフィルムがゴムの弾性を低減させないことが好ましい。そのため、フィルム(I)には一定以上の「伸び」が求められる。一定以上の伸びがあるとは、23℃における引張弾性率が1500Mpa以下であることを意味し、好ましくは600MPa以上1300Mpa以下である。
【0015】
熱可塑性樹脂フィルム(I)は、上記の特性を満たせばよいが、フッ素系樹脂を含まないことが好ましい。フッ素系樹脂は、焼却処理が困難で環境負荷が大きい。よって特に、医療用容器のゴム栓などのように、使い捨て用途のゴム栓には、不適当であるからである。フッ素系樹脂の例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)などが含まれる。
【0016】
熱可塑性樹脂フィルム(I)は4-メチル-1-ペンテンと、他のα-オレフィンとの共重合体を含むことがより好ましい。他のα-オレフィンとは、炭素数2〜20のオレフィンであり、エチレンを含む。他のオレフィンの共重合比率が高まると、引張弾性率が低下して「伸び」が得られ、ラミネート温度での貯蔵弾性率も下がりやすい。さらに、本発明の熱可塑性樹脂フィルム(I)は、上記共重合体とともに、4-メチル-1-ペンテンの単独重合体を含んでいてもよい。単独重合体を含有させると、樹脂の融点が高まる。
【0017】
4-メチル-1-ペンテンと、他のα-オレフィンとの共重合体を含む樹脂フィルムは、樹脂組成物を押出し成形して得ることができる。また、必要に応じて、押出し成形フィルムを延伸したりしてもよい。
【0018】
4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位を含む重合体は、一般的に離型性が高く、摩擦抵抗が低い。そのため、当該重合体を含むフィルムを積層したゴム栓は、開口部から取り外しやすい。また、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位を含む重合体は、耐薬品性が高い。そのため、当該重合体を含むフィルムを積層したゴム栓は、薬品を収容する容器の栓としても好適に用いられる。つまり、薬品や輸液用の容器の栓として用いられる。
【0019】
本発明の熱可塑性樹脂フィルム(I)には、他の任意成分が含まれていてもよい。任意成分の例にはポリオレフィン、特にポリブテンなどが含まれる。
【0020】
熱可塑性樹脂フィルム(I)の平均膜厚は、1〜300μmであることが好ましい。熱可塑性樹脂フィルムの厚さが薄いほど、ラミネートするエラストマー樹脂の弾性を低減させにくく、ゴム栓としての密封性を高めることができる。一方、フィルムが薄すぎると、エラストマー樹脂にラミネートするときの取り扱いが困難になる。
【0021】
本発明の熱可塑性樹脂フィルム(I)の少なくとも一方の面、つまり「ゴム材料と接する表面」のぬれ性は、一定以上であること、つまり一定以下の表面自由エネルギーを有することが好ましい。ぬれ性が高いと、エラストマー樹脂にフィルムをラミネートしたときに、フィルムが強固に接着することができる。ぬれ性が一定以上であるとは、例えば、水接触角が100度以下であるこという。フィルム(I)の表面のぬれ性を高めるために、その表面をコロナ処理またはプラズマ処理してもよい。コロナ処理は、特開平4−22362号公報を参照して行うことができる。
【0022】
また、本発明の熱可塑性樹脂フィルムの一方の面には、接着層が積層されていてもよい。接着層を介してエラストマー樹脂にラミネートすれば、密着性が高まる。接着層を構成する接着剤の例には、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系粘着剤などが含まれる。
【0023】
2.ゴム栓
本発明のゴム栓は、その表面の一部または全部に、前述の熱可塑性樹脂フィルム(I)が積層されていることを特徴とする。ゴム栓の全面に熱可塑性樹脂フィルム(I)が積層されていてもよいが、少なくとも、容器に収容される物質と接触する可能性のある面にフィルム(I)が積層されていることが好ましい。さらに、栓をしたときに、容器と接触する表面にも、フィルム(I)が積層されていることが好ましい。
【0024】
図1には、本発明のゴム栓の一例が示されるが、もちろんゴム栓の形状はこれに限定されない。図1Aはゴム栓10の斜視図であり、図1Bはゴム栓10の断面図である。図1に示されるゴム栓10は、頭部20と脚部30とを有する。脚部30を、容器の開口部に差し込むことによって、ゴム栓10で容器を密閉することができる。また、図1Cに示されるように、頭部20を貫通し、脚部30が形成する中空部を通過するチューブ50を配置して、容器に収容した内容物を抜き出すこともできる。特に、輸液用容器のゴム栓の場合には、図1Cに示されるように、チューブ50を設けることが好ましい。
【0025】
図1Bに示されるように、ゴム栓10の表面のうち、脚部30が配置された側の表面には、熱可塑性樹脂フィルム40が積層されている。フィルム40によって、容器の内容物が、直接エラストマー樹脂に接触することを防止する。
【0026】
ゴム栓本体を構成するエラストマー樹脂の例には、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコンゴムなどが含まれ、合成ゴムであっても天然ゴムであってもよい。また、エラストマー樹脂には各種の配合剤が含まれていてもよい。配合剤の例には、有機過酸化物、加硫剤(有機硫黄供与形加硫剤、硫黄など)、加硫促進剤、加硫助剤、補強剤、加工助剤などが含まれる。
【0027】
ゴム栓の製造方法
本発明のゴム栓の製造プロセスは特に限定されないが、たとえば、未加硫のエラストマー樹脂シートを金型にセットするステップ(図2A)と、エラストマー樹脂シートを所定の形状に成形し、かつ半加硫させるステップ(図2B〜C)と、所定の形状に成形されたエラストマー樹脂シートに、熱可塑性樹脂フィルムを配置するステップ(図2D)と、所定の形状に成形されたエラストマー樹脂シートに、熱可塑性樹脂フィルムを加熱圧着して接着させるステップ(図2E)と、エラストマー樹脂シートからゴム栓を個片化するステップと、を含む。
【0028】
前述の通り、エラストマー樹脂シートを構成する樹脂には、合成ゴムまたは天然ゴムが含まれる。ゴムの例には、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコンゴムなどが含まれ、また、ゴム材料には各種の充填剤が含まれていてもよい。
【0029】
エラストマー樹脂シートを、金型で所望の形状に一次成形する。所望の形状とは、ゴム栓の形状に応じて設定されるが、例えば図1に示される形状とすればよい。金型にセットされるエラストマー樹脂シートは、未加硫のゴムシートであることが好ましい。未加硫ゴムを金型で成形することで、成形品に気泡が含有することを防止する。
【0030】
例えば、図2に示されるように、下型100と上型110とからなる金型を用意する。下型100のキャビティーは平坦であり、図1における頭部20側を成形し;上型110のキャビティーは、複数の脚部30側を成形する。下型100に未加硫のエラストマー樹脂シート120をセットし(図2A)、上型110を重ねて加圧加熱して半加硫させ(図2B)、上型110を外して金型を開く(図2C)。
【0031】
このように、未加硫のエラストマー樹脂シート120を所望の形状に成形するときに加硫をさせるが、このとき完全に加硫させることなく、半加硫状態に留めることが好ましい。次の工程で、エラストマー樹脂シート120と熱可塑性樹脂フィルム130とを十分に接着させるためである。半加硫させるときの条件は、エラストマー樹脂の組成や厚さなどによって適宜設定されるべきであり特に限定されないが、例えば、金型温度は130℃〜190℃であり、成形圧力は50〜300kg/cmでありうる。
【0032】
所望の形状に成形されたエラストマー樹脂シート120に、熱可塑性樹脂フィルム130をセットする(図2D)。熱可塑性樹脂フィルム130は、前述の樹脂フィルム(I)である。樹脂フィルム130は、上型110によって脚部が形成されたエラストマー樹脂シート120の面上にセットされる。樹脂フィルム130の表面にコロナ処理またはプラズマ処理が施されている場合には、当該処理面とエラストマー樹脂シート120とを接触させてセットし;または、樹脂フィルム130の表面に接着層が積層されている場合には、接着層とエラストマー樹脂シート120とを接触させてセットする。
【0033】
樹脂フィルム130をセットしたら、再び上型を重ねて加圧加熱する(図2E)。このとき、樹脂フィルム130がエラストマー樹脂シート120にラミネートされて接着する。また、この加圧加熱により、半加硫のエラストマー樹脂シート120が完全に加硫(本加硫)される。本加硫させるときの条件は、エラストマー樹脂シート120や樹脂フィルム130の条件に応じて適宜設定されるべきであり;金型温度は、エラストマー樹脂シート120の加硫が進行するような温度であり、かつ樹脂フィルム130の融点以下であることが必要であり、また、樹脂フィルム130の貯蔵弾性率が十分に低下するような温度であることが好ましい。樹脂フィルム130がエラストマー樹脂シートに密着するためである。通常の金型温度は、160℃以上であり樹脂フィルム130の融点以下である。
【0034】
樹脂フィルム130をラミネートしたのちに上型110を外して(図2F)、積層シート140を単離する。その後、積層シート140を個片化することで、ゴム栓を得る。得られるゴム栓は、例えば図1に示される。図1における頭部20と脚部30を、図2におけるエラストマーシート120が構成し;図1における樹脂フィルム40を、図2における樹脂フィルム130が構成する。
【0035】
3.容器
本発明の樹脂フィルム(I)を積層したゴム栓は、密閉性よく容器を密栓することができる。容器は、ガラス製容器であっても、樹脂製容器であってもよいが、一般的にガラス製容器の密栓に用いられる。また、本発明のゴム栓に積層された樹脂フィルム(I)が4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位を含む重合体である場合には、耐薬品性が高いので、医療用容器の密栓に好適に用いられる。内容物への影響が少なく、安全性が高いからである。
【0036】
医療用容器の内容物は各種医薬品であり、固体であっても液体であってもよく、注射液、錠剤、輸液などでありうる。輸液とは、皮下、血管内、腹腔内などに投与する水溶液であり、種々の医薬成分や栄養成分などが含まれている。本発明のゴム栓で輸液用容器を密栓する場合には、中空針などのチューブをゴム栓に貫通させて、チューブを通して輸液を取出すことができる。
【実施例】
【0037】
以下のA〜Cの3種類のポリ4-メチルペンテン-1を用意した。それぞれを、Tダイ付きキャストフィルム成形機(シリンダー温度280℃、チルロール温度60℃)を用いてフィルム成形して、厚さ50μmのキャストフィルムを得た。
A:TPX RT18 (三井化学株式会社製)
B:TPX MX004 (三井化学株式会社製)
C:TPX MX002O (三井化学株式会社製)
【0038】
また、PTFEフィルム(Dupont製)と、PETフィルム(Eastman製)とを用意した。
【0039】
それぞれのフィルムの表面を、コロナ処理機にて、常温、400W、引取速度5m/minの条件にてコロナ処理した。
【0040】
各フィルムについて、以下の項目の測定または評価を行った。これらの結果を表1に示す。
融点測定:各フィルムを、示差走査熱量測定(DSC)にて、10℃/minにて室温から昇温し、得られた融解ピークのピークトップの温度を融点とした。
室温(23℃)弾性率の測定:各フィルムから試験片を切り出し、JIS K 6301-2に準拠し、50mm/minにて引張試験を行い室温での弾性率を測定した。
貯蔵弾性率の測定:各フィルムから試験片を切り出し、固体粘弾性測定装置にて周波数1Hz、引張モードにて、−80℃〜260℃まで3℃/minにて昇温し、貯蔵弾性率を測定した。得られたチャートの160℃でのE’を読み取った。
水接触角の測定:室温にて、各フィルムのコロナ処理面に、蒸留水を一滴垂らした。個液界面解析システムを使用して、液滴の接触角度を測定した。
環境性:分子構造にハロゲン原子を有するものを×、焼却処理可能なC,H,O原子からなる樹脂を○とした。
【0041】
エラストマーとの積層体の作製
未加硫ブタジエンゴムを8個取りの2cmφ、高さ1cmの金型に入れた。160℃、1MPaの条件下にて30分加熱して、半架橋させた。その後、一旦、金型を開き、上記各フィルムを、コロナ処理面とゴム面とが接するように挿入し、さらに同条件にて30分架橋させた。成形品を取り出し、各フィルムとブタジエンゴムとの積層体を得た。
【0042】
追従性評価:積層体の凸部における、フィルムとゴムとの形状を目視にて確認し、一部追従していないものを△、完全に追従しているものを○と評価した。
接着強度評価:積層体の端部からフィルム剥離を行い、一部分でも剥離するものを△、剥離が全く起きないものを○と評価した。
【0043】
【表1】

【0044】
いずれのフィルムを用いた積層体も、接着強度は十分であった。しかしながら、室温における弾性率が1900MPaのポリ4-メチルペンテン-1系AのフィルムやPETフィルムは、積層時における追従性が劣っていた。また、フッ素系樹脂であるPTFEのフィルムは、環境性に劣る。一方で、1300MPaおよび880MPaのポリ4-メチルペンテン-1系BおよびCの樹脂フィルムは、いずれの評価もよかった。
【符号の説明】
【0045】
10 ゴム栓
20 頭部
30 脚部
40 熱可塑性樹脂フィルム
50 チューブ
100 下型
110 上型
120 エラストマー樹脂シート
130 熱可塑性樹脂フィルム
140 積層シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
23℃における引張弾性率が1500Mpa以下であり、かつ融点が180℃以上の、非フッ素系熱可塑性樹脂フィルム(I)と、エラストマーを主成分とするエラストマー層(II)と、を含む積層体(X)。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂フィルム(I)の160℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下である、請求項1に記載の積層体(X)。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂フィルム(I)が、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位と、炭素原子数2〜20の4-メチル-1-ペンテン以外のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンから導かれる構成単位とを含む重合体(A)を含有する、請求項1または2に記載の積層体(X)。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂フィルム(I)が、4-メチル-1-ペンテン単独重合体(B)をさらに含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層体(X)。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂フィルム(I)の少なくとも片面に、コロナ処理もしくはプラズマ処理されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層体(X)。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂フィルム(I)の少なくとも片面の水接触角が、100度以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層体(X)。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂フィルム(I)の平均膜厚が1〜300μmである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の積層体(X)。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂フィルム(I)と前記エラストマー層(II)が、接着層(III)を介して連続して積層されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の積層体(X)。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂フィルム(I)と前記エラストマー層(II)とが、接触して積層されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の積層体(X)。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の積層体(X)を加工してなるゴム栓(Y)。
【請求項11】
少なくとも一つの開口部を有する容器本体と、前記開口部を密閉する請求項10に記載のゴム栓(Y)と、を有する容器。
【請求項12】
少なくとも一つの開口部を有する容器本体と、前記開口部を密閉する請求項10に記載のゴム栓(Y)と、を有する医療用容器。
【請求項13】
少なくとも一つの開口部を有する容器本体と、前記開口部を密閉する請求項10に記載のゴム栓(Y)とを有し、前記ゴム栓(Y)にはチューブが貫通される、輸液用容器。
【請求項14】
前記容器本体がガラス製である、請求項11〜13のいずれか一項に記載の容器。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−31404(P2011−31404A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176982(P2009−176982)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】