説明

熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法

【課題】 熱可塑性樹脂と顔料と安定剤とを含む組成物において、各色カラーコンパウンドの高温紡糸時における粘度が揃った熱可塑性樹脂組成物の提供。
【解決手段】 上記樹脂と該樹脂100重量部当り、同一分子内にフォスファイト構造とヒンダードフェノール構造(1)とを有する化合物の0.001〜1重量部とフタロシアニン系、キナクリドン系及びジオキサジン系から選ばれる一種以上の顔料の0.001〜5重量部とを含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。


[式中、Aは炭素数2〜8のアルキレン基等、R及びRは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基等、Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基等、他方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂と酸化防止剤と顔料とを含有する熱可塑性樹脂組成物、及び該組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポリオレフィン樹脂と、充填剤と、同一分子内にフォスファイト構造及びヒンダードフェノール構造を有する酸化防止剤とを含む樹脂組成物が記載されている。そして、該組成物はさらに顔料を含んでもよいことが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−121331号公報(特許請求の範囲、及び段落番号0034を参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリオレフィン樹脂等のような熱可塑性樹脂は、繊維に加工されることが多い。例えば、多色の繊維を同時に紡糸し、カラフルなカーマットとして使用される。また、繊維の生産性を高めるために、比較的高温で紡糸されることが多く、高温紡糸時における良好な熱安定性が要求されている。そこで、上記の熱可塑性樹脂には各種顔料以外にフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤や、ヒンダードアミン系光安定剤等の各種安定剤が配合される。
しかしながら、顔料と上記安定剤の組合せによっては、上記熱可塑性樹脂に顔料と各種安定剤を配合して得た熱可塑性樹脂組成物の粘度(流れ性)が異なり、多色の繊維を高温紡糸してカラフルなカーマットを得ることが困難であった。
本発明の目的は、ポリオレフィン樹脂等のような熱可塑性樹脂と顔料と安定剤とを含む組成物において、各色カラーコンパウンド等の高温紡糸時における粘度(流れ性)が揃った熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
また、本発明は、上記の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明(i)は、次の(A)、(B)及び(C)を含有し、(A)の樹脂100重量部当り、(B)の化合物が0.001〜1重量部であり、(C)の有機顔料が0.001〜5重量部であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
(A)熱可塑性樹脂
(B)同一分子内にフォスファイト構造と下式(1)で示されるヒンダードフェノール構造とを有する化合物
(C)下記のC1)〜C9)群から選ばれる少なくとも一種の有機顔料
C1):フタロシアニン系顔料
C2):キナクリドン系顔料
C3):イソインドリノン系顔料
C4):ペリレン又はペリニン系顔料
C5):キノフタロン系顔料
C6):ジケトピロロ・ピロール系顔料
C7):複素環系アンスラキノン顔料
C8):ジオキサジン系顔料
C9):ジスアゾ縮合系顔料
【0006】

【0007】
[式中、Aは炭素数2〜8のアルキレン基又は**−COR−基を示し、Rは単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示し、**は式(1)で示されるフォスファイト構造における3個の酸素原子のいずれか一つに結合していることを示す。
及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表す。
Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を表し、他方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。
但し、Yがヒドロキシル基であるときは、R及びRの一方は炭素数3〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表す。]
【0008】
また、本発明(ii)は、熱可塑性樹脂(A)の100重量部と、同一分子内にフォスファイト構造と上記(i)記載の式(1)で示されるヒンダードフェノール構造とを有する化合物(B)の0.001〜1重量部と、上記の顔料群C1)〜C9)から選ばれる少なくとも一種の有機顔料(C)の0.001〜5重量部とを配合し、溶融混練することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の(i)によれば、熱可塑性樹脂の熱安定性が向上してより高温で紡糸が可能となり、また顔料含有の熱可塑性樹脂の流れ性が安定し、その結果として細糸の生産が可能となるとともに、多色の繊維を同時に紡糸することが可能となる。また、本発明の(ii)によれば、熱可塑性樹脂の熱安定性が向上して、紡糸時の生産性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の(i)及び(ii)で用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば次のようなものが挙げられる。
(1)ポリエチレン、例えば高密度ポリエチレン(HD−PE)、低密度ポリエチレン(LD−PE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、(2)ポリプロピレン、(3)メチルペンテンポリマー、(4)EEA(エチレン/アクリル酸エチル共重合)樹脂、(5)エチレン/酢酸ビニル共重合樹脂、(6)ポリスチレン類、例えばポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)やポリ(α−メチルスチレン)、(7)AS(アクリロニトリル/スチレン共重合)樹脂、(8)ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合)樹脂、(9)AAS(特殊アクリルゴム/アクリロニトリル/スチレン共重合)樹脂、(10)ACS(アクリロニトリル/塩素化ポリエチレン/スチレン共重合)樹脂、
【0011】
(11)塩素化ポリエチレン、ポリクロロプレンや塩素化ゴム、(12)ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン、(13)メタクリル樹脂、(14)エチレン/ビニルアルコール共重合樹脂、(15)フッ素樹脂、(16)ポリアセタール、(17)グラフト化ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリフェニレンサルファイド樹脂、(18)ポリウレタン、(19)ポリアミド、(20)ポリエステル樹脂、例えばポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等、(21)ポリカーボネート、(22)ポリアクリレート、(23)ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトンやポリエーテルスルホン、(24)芳香族ポリエステル樹脂、(25)ジアリルフタレートプリポリマー、(26)シリコーン樹脂、(27)1,2−ポリブタジエン、(28)ポリイソプレン、(29)スチレン/ブタジエン共重合体、(30)ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、(31)エチレン/プロピレン共重合体、(32)エチレン/MMA(メチルメタクリレート)共重合体。
【0012】
本発明の(i)及び(ii)における熱可塑性樹脂としては、上記例示の樹脂の単独又は混合物を用いることができる。
本発明(i)及び(ii)においては、ポリエチレン(例えばHD−PE、LD−PE、LLDPE)やポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレンと酢酸ビニル等の共重合体、エチレンとMMA等の共重合体;ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートやポリカーボネート等のエンジニアリング樹脂等が好ましく用いられる。
【0013】
上記のポリオレフィンの製造法は特に限定されず、例えば、ラジカル重合によって得られたものでもよく、周期律表第IVb族、第Vb族、第VIb族又は第VIII族の金属を含有する触媒を用いる重合により製造されたものでもよい。
かかる金属を含有する触媒としては、一つ以上の配位子、例えばπ結合又はσ結合によって配位する酸化物、ハロゲン化合物、アルコレート、エステル、アリール等を有する金属錯体であってもよく、これらの錯体はそのままであっても、塩化マグネシウム、塩化チタン、アルミナ、酸化ケイ素等の基材に担持されていてもよい。
ポリオレフィンとしては、例えばチーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒、フィリップス触媒等を用いて製造されたものが好ましく使用される。
【0014】
また、エンジニアリング樹脂も特に限定されない。
例えば、ポリアミド樹脂としては、ポリマー鎖にアミド結合を有するものであって、加熱溶融できるものであればよい。ポリアミド樹脂の製造法も限定されず、例えばジアミン類とジカルボン酸類の縮合反応、アミノカルボン酸類の縮合反応、ラクタム類の開環重合等の方法によって製造されたものでもよい。
ポリアミド樹脂の代表例としては、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612、ポリ−ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド、ナイロン46、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン66とナイロン6の共重合体であるナイロン66/6や、ナイロン6/12の如き共重合体等が挙げられる。
ポリエステル樹脂としては、ポリマー鎖にエステル結合を有するものであって、加熱溶融できるものであればよい。
ポリエステル樹脂の具体例としては、ジカルボン酸類とジヒドロキシ化合物の重縮合等によって得られる、ホモポリエステルやコポリエステルが挙げられる。
ポリカーボネート樹脂としては、ポリマー鎖にカーボネート結合を有するものであって、加熱溶融できるものであればよい。
このようなポリカーボネート樹脂としては、例えば、溶剤、酸受容体や分子量調整剤の存在下に、芳香族ヒドロキシ化合物を少量のポリヒドロキシ化合物の存在下又は不存在下に、ホスゲンやジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体を反応させることにより得られるポリカーボネートが挙げられる。
ポリカーボネート樹脂は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、また、共重合体であってもよい。
【0015】
これらの熱可塑性樹脂(A)の中でもポリオレフィン類が好ましく用いられる。ポリオレフィン類の中でもポリエチレン、ポリプロピレンが特に好ましく用いられる。
【0016】
本発明の(i)及び(ii)で用いられる同一分子内にフォスファイト構造と上記式(1)で示されるヒンダードフェノール構造とを有する化合物としては、例えば次のようなものが挙げられる。
上式(1)で示されるヒンダードフェノール構造において、Aは炭素数2〜8のアルキレン基又は**−COR−基を示し、Rは単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示す。上記の**は、式(1)中における酸素原子に結合している。
式(1)におけるR及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表す。
上記の炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜8の直鎖又は分枝状のアルキル基が挙げられる。
【0017】
同一分子内にフォスファイト構造と上式(1)で示されるヒンダードフェノール構造とを有する化合物(B)としては、下式(I)で示される化合物が好ましい。
【0018】

【0019】
[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは単結合、イオウ原子又は−CHR−基を表す。Rは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を表す。
Aは炭素数2〜8のアルキレン基又は*−COR−基を表す。Rは単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を表し、*印を付した−CO−の炭素原子は式(I)におけるフォスファイト構造の酸素原子と結合していることを表す。
Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を表し、他方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。
但し、Yがヒドロキシル基であるときは、R及びRの一方は炭素数3〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表す。
また、式(I)における2個のRは互いに同一でもよく、異なってもよい。さらに、式(I)における2個のRは互いに同一でもよく、異なってもよい。そして、式(I)における2個のRは互いに同一でもよく、異なってもよい。]
【0020】
式(I)におけるR、R、R及びRで表される炭素数1〜8のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜8の直鎖又は分枝状のアルキル基が挙げられる。
また、R、R、R及びRで表される炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基が挙げられる。
さらに、R、R、R及びRで表される炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基としては、例えば、上記の例示におけるシクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基やシクロオクチル基における水素原子が、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基やi−プロピル基等で置換された基が挙げられる。
【0021】
式(I)において、Y及びZのいずれか一方で表される炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えば、上記のR及びRにおける炭素数1〜8のアルキル基として例示したものを、アルキルオキシ基として読み替えた基が挙げられる。
上記のY及びZの一方におけるアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基等が挙げられる。Y及びZの他方における炭素数1〜8のアルキル基としては、R及びRで表される炭素数1〜8のアルキル基と同様の基が挙げられる。
そして、上記のY及びZにおける炭素数1〜8のアルコキシ基としては、上述した炭素数1〜8のアルキル基として例示したものを、アルキルオキシ基として読み替えた基が挙げられる。
【0022】
式(I)における2個のRは互いに同一でもよく、異なってもよい。式(I)における2個のRは互いに同一でもよく、異なってもよい。また、式(I)における2個のRは互いに同一でもよく、異なってもよい。
Yはヒドロキシル基であることが好ましく、Zは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましい。
式(I)で示される化合物のうち特に好ましい化合物は、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(以下、化合物B−1という)、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン等である。
本発明における同一分子内にフォスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する化合物の配合量は、熱可塑性樹脂(A)の100重量部あたり、0.001〜1重量部の範囲であれば、特に限定されないが、好ましい範囲としては、0.01〜0.5重量部、特に好ましい範囲としては、0.03〜0.2重量部である。
本発明の(i)及び(ii)で用いられる有機顔料しては、例えば次のようなものが挙げられる。
例えば、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ペリレン又はペリニン系顔料、キノフタロン系顔料、ジケトピロロ−ピロール系顔料、ジオキサジン系顔料、ジスアゾ縮合系顔料やベンズイミダゾロン系顔料等が挙げられる。
これらの中でも、ジスアゾ系イエロー顔料、縮合アゾ系イエロー顔料、ベンズイミダゾロン系イエロー顔料、縮合アゾ系レッド顔料、キナクリドン系レッド顔料、フタロシアニン系ブルー顔料、フタロシアニン系グリーン顔料等が好ましい。
【0023】
以下、本発明において用いられる有機顔料を具体的に例示する。
C.I.Pigment Red 144、
C.I.Pigment Red 101、
C.I.Pigment Red 102、
C.I.Pigment Red 53、
C.I.Pigment Red 48、
C.I.Pigment Yellow 180、
C.I.Pigment Yellow 181、
C.I.Pigment Yellow 154、
C.I.Pigment Yellow 156、
C.I.Pigment Yellow 94、
C.I.Pigment Yellow 95、
C.I.Pigment Blue 15
【0024】
フタロシアニン系顔料

【0025】

【0026】
キナクリドン系顔料

【0027】
ジスアゾ縮合系顔料

【0028】
本発明においては、必要により無機顔料をさらに配合することもできる。使用できる無機顔料は特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、酸化チタン(チタン白)、亜鉛華、弁柄、炭酸カルシウムや水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0029】
本発明(i)の熱可塑性樹脂組成物を製造するに際しては、熱可塑性樹脂100重量部当り、上述した有機顔料の0.001〜5重量部を含有させる。
有機顔料の含有量は、0.01〜1重量部がより好ましい。
熱可塑性樹脂の100重量部当り、有機顔料の含有量が0.001重量部未満である組成物は、目的とする色濃度の製品が得られないばかりでなく、製品の光に対する安定性も不満足なことがある。一方、熱可塑性樹脂の100重量部当り、顔料の5重量部を超えて配合しても、製品の色濃度及び光に対する安定性が向上せず、経済的に不利である。
また、本発明で用いる顔料は、ドライカラー(粉末)、マスターパウダー(顆粒状)、マスターバッチ(顆粒状)のいずれでも使用することができる。上記顔料は、操作上の観点からは、マスターパウダーやマスターバッチであることが好ましい。前記顔料は、顔料表面を表面処理した顔料でもよく、表面処理していない顔料でもよいが、表面処理した顔料の方が好ましく用いられる。
【0030】
本発明(i)における組成物は、さらに、上記(B)以外のリン系酸化防止剤(D)を含んでいてもよい。
リン系酸化防止剤(D)としては、例えば、下式(II)〜(IV)で示される少なくとも一種が挙げられる。
【0031】

[式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表す。]
式(II)で示されるリン系酸化防止剤において、R及びRで表される炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基としては、式(I)において例示した基と同様のものが挙げられる。
【0032】

【0033】
[式中、R11及びR12は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表し、nは0〜2の整数を表す。
但し、式(III)におけるnが1〜2の整数を表し、且つ、R11が炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表すときは、複数のR11は互いに同一でもよく、異なってもよい。また、式(III)におけるnが1〜2の整数を表し、且つ、R12が炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表すときは、複数のR12は互いに同一でもよく、異なってもよい。]
【0034】
式(III)で示されるリン系酸化防止剤において、R11及びR12で表される炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基としては、式(I)において例示した基と同様のものが挙げられる。
【0035】

【0036】
[式中、R10は水素原子又はメチル基を表す。但し、式(IV)における複数のR10は互いに同一でもよく、異なってもよい。]
【0037】
式(II)〜式(IV)で示される化合物のうち特に好ましい化合物は、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(以下、D−1という)、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール ジフォスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール ジフォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−クミルフェニル)ペンタエリスリトール ジフォスファイトやテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン ジフォスフォナイトである。
本発明におけるリン系酸化防止剤(D)の配合量は、熱可塑性樹脂(A)の100重量部当り1重量部以下が好ましく、0.3重量部以下が特に好ましい。
【0038】
本発明(ii)は、熱可塑性樹脂(A)の100重量部と、同一分子内にフォスファイト構造と上記ヒンダードフェノール構造(1)とを有する化合物(B)の0.001〜1重量部、及び、上記顔料群C1)〜C9)群から選ばれる少なくとも一種の有機顔料の0.001〜5重量部とを配合し、溶融混練することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法である。
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィンが好ましく、特にポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。
【0039】
同一分子内にフォスファイト構造とヒンダードフェノール構造(1)とを有する化合物(B)としては、下式(I)で示される化合物が好ましい。
【0040】

【0041】
[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは単結合、イオウ原子又は−CHR−基を表す。Rは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を表す。
Aは炭素数2〜8のアルキレン基又は*−COR−基を表す。Rは単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を表し、*印を付した−CO−は式(I)におけるフォスファイト構造の酸素原子と結合していることを表す。
Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を表し、他方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。但し、Yがヒドロキシル基であるときは、R及びRの一方は炭素数3〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表す。
また、式(I)における2個のRは互いに同一でもよく、異なってもよい。さらに、式(I)における2個のRは互いに同一でもよく、異なってもよい。そして、式(I)における2個のRは互いに同一でもよく、異なってもよい。]
【0042】
上記化合物(B)の配合量は、熱可塑性樹脂100重量部当り、通常は0.001〜1重量部の範囲であり、0.01〜0.5重量部の範囲がより好ましく、0.03〜0.2重量部の範囲が特に好ましい。
熱可塑性樹脂の100重量部当り、前記化合物(B)の含有量が0.001重量部未満である組成物は、溶融混練時に十分な酸化防止性能が得られない。一方、熱可塑性樹脂の100重量部当り、(B)の1重量部を超えて配合しても、酸化防止性能は変わらないため経済的には不利である。
本発明(ii)における顔料の混合方法は特に限定されない。好ましくは、顔料をそのまま熱可塑性樹脂に混合する方法や予め顔料を高濃度に配合したマスターバッチを熱可塑性樹脂に混合する方法等が挙げられる。
本発明(ii)の熱可塑性樹脂組成物を製造するに際しては、熱可塑性樹脂100重量部当り、通常は有機顔料の0.001〜5重量部、より好ましくは0.01〜1重量部を含有させる。
熱可塑性樹脂の100重量部当り、有機顔料の含有量が0.001重量部未満である組成物は、目的とする色濃度の製品が得られないばかりでなく、製品の光に対する安定性も不満足なことがある。一方、熱可塑性樹脂の100重量部当り、顔料の5重量部を超えて配合しても、製品の色濃度及び光に対する安定性が向上せず、経済的に不利である。
【0043】
本発明(ii)の樹脂組成物の製造方法においては、さらに、上記(B)以外のリン系酸化防止剤(D)を配合することもできる。リン系酸化防止剤(D)としては、上式(II)〜(IV)で示される少なくとも一種の化合物であることが好ましい。
リン系酸化防止剤(D)の配合量は、熱可塑性樹脂100重量部当り、通常は1重量部以下であり、0.3重量部以下が特に好ましい。
熱可塑性樹脂の100重量部当りリン系酸化防止剤(D)の1重量部を超えて配合しても、酸化防止性能は変わらないため、経済的には不利である。
【0044】
本発明の(ii)において、リン系酸化防止剤(B)を混合する方法は特に限定されず、例えば、リン系酸化防止剤と熱可塑性樹脂等を直接混合する方法、予めリン系酸化防止剤を高濃度に配合したマスターバッチを熱可塑性樹脂に混合する方法や、加熱溶融したリン系酸化防止剤を押出し機のサイドフィーダーを通して直接熱可塑性樹脂に混練混合する方法等が挙げられる。
【0045】
本発明の(i)及び(ii)においては、上記熱可塑性樹脂(A)、リン系酸化防止剤(B)及び上記顔料の他に、必要に応じて、光安定剤、帯電防止剤、滑剤や中和剤等を配合することもできる。
本発明の(i)及び(ii)においては、リン系酸化防止剤(B)以外にも、次のフェノール系酸化防止剤やイオウ系酸化防止剤酸化防止剤等の酸化防止剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、滑剤及び中和剤等を含んでいてもよい。
<フェノール系酸化防止剤やイオウ系酸化防止剤酸化防止剤>
2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル 3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、トリエチレングリコール ビス(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス (3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス (3,5−ジ−t−ブチル4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート[以下、AO−1という]、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H、3H、5H)−トリオン[以下、AO−2という]、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、2,2’−メチレンビス (6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス (6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス (6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、2−(1−(2−ヒドロキシ−3,5−t−アミルフェニル)エチル)−4,6−ジ−t−アミルフェニル アクリレート、ジアルキル(C12−18) 3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチル テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、等。
【0046】
<光安定剤>
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、琥珀酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物[以下、H−1という]、ポリ[{6−(1,1,3,3、−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}][以下、H−2という]、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジ−t−ブチルフェニル 3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等。
【0047】
<中和剤>
合成ハイドロタルサイト、天然ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム等。
<滑剤>
パラフィン、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ブチルステアレート、ステアリルアルコール、ステアリン酸カルシウムや硬化ひまし油等。
<帯電防止剤>
第1級アミン塩、第3級アミン塩、第4級アミン塩やピリジン誘導体等のカチオン系帯電防止剤;硫酸化油、石鹸、硫酸化エステル油、硫酸化アミド油、オレフィンの硫酸化エステル塩類、脂肪アルコール硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩、脂肪酸エチルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、琥珀酸エステルスルホン酸塩や燐酸エステル塩等のアニオン系の帯電防止剤;多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、脂肪アミノまたは脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分的脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物やポリエチレングリコール等の非イオン系の帯電防止剤;カルボン酸誘導体やイミダゾリン誘導体等の両性系の帯電防止剤。
【0048】
本発明(ii)の製造法において、熱可塑性樹脂組成物の製造に用いる装置等は特に限定されるものではない。上記の装置としては、例えば、タンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサー又はスーパーミキサーのような混合機、単軸又は多軸の押し出し機、ニーダーやバンバリーミキサー等が挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、リン系酸化防止剤(B)、顔料、上記(B)以外のリン系酸化防止剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤や中和等をタンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサー又はスーパーミキサー等のような混合機で予め均一に混合した後、単軸押出し機や多軸押出し機で溶融混練造粒する方法や;ニーダーやバンバリーミキサー等で溶融混練した後に押出し機を用いて造粒する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0050】
[各例で使用した顔料]
C−1:C.I.Pigment Violet 19
C−2:C.I.Pigment Red 144
C−3:C.I.Pigment Yellow 180
C−4:C.I.Pigment Yellow 93
C−5:C.I.Pigment Blue 15:3
C−6:C.I.Pigment Green 7
【0051】
実施例1
[樹脂組成物の調製]
ポリプロピレン100重量部当りB−1の0.1重量部を配合したペレットを製造した。このペレットにC−1〜C−6のそれぞれを0.2重量部ドライブレンドし、6種の混合物を得た。次いで、これらの混合物をそれぞれ30mmφ単軸押出し機により270℃で5回繰り返し押出してペレットを得、熱安定性を評価した。
別途、ポリプロピレン100重量部当りB−1のみを0.1重量部配合したポリプロピレンペレットを同様に30mmφ単軸押出し機により270℃で5回繰り返し押出して比較用のペレットを得、熱安定性を評価した。
【0052】
[熱安定性評価]
上記B−1のみを配合したポリプロピレンペレットを、さらに5回繰り返し押出したポリプロピレンペレットのMFR(以下、MFRn5という)と、B−1の0.1重量部を配合したポリプロピレンペレットに、さらに顔料をドライブレンドした後、5回繰り返し押出した顔料含有のポリプロピレンペレットのMFR(以下、MFRpという)を測定した。また、上記B−1の0.1重量部を配合したポリプロピレンペレットのMFR(以下、MFRという)を初期MFRとして測定した。なお、MFRは、JIS K 7210に準拠して、試験温度230℃、試験荷重2.16kgfの条件で測定した。
顔料含有の有無がポリプロピレンの熱安定性に及ぼす影響度(SSpig/SSnat)を次式により求めた。この数字が100%に近いほど、ポリプロピレンの熱安定性に対する顔料の影響度が少ないことを意味する。そして、下式で示される影響度(SSpig/SSnat)が90〜110%の範囲のときを◎印、80〜89%の範囲及び111〜120%の範囲のときを○印、70〜79%の範囲及び121〜130%の範囲のときを△印、前記以外の範囲のときを×印で評価した。
【0053】
SSpig/SSnat(%)=
[(MFRp−MFR)/(MFRn−MFR)×100]
【0054】
また、SSpig/SSnat(%)の最大値と最小値の差を計算した。この差が小さいほど、ポリプロピレンの熱安定性に対する顔料の種類による影響が少ないことを意味する。
【0055】
実施例2、比較例1〜4
実施例2、比較例1〜4は、実施例1における[樹脂組成物の調製]に準じて、ペレットを調製した。
【0056】
【表1】

【0057】
実施例3〜6、比較例5
実施例3〜6、比較例5は、実施例1における[樹脂組成物の調製]に準じて、ペレットを調製した。
【0058】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明により得られる熱可塑性樹脂は、例えば、カーマット用の繊維に加工される。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(A)、(B)及び(C)を含有し、(A)の樹脂100重量部当り、(B)の化合物が0.001〜1重量部であり、(C)の有機顔料が0.001〜5重量部であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
(A)熱可塑性樹脂
(B)同一分子内にフォスファイト構造と下式(1)で示されるヒンダードフェノール構造とを有する化合物
(C)下記のC1)〜C9)群から選ばれる少なくとも一種の有機顔料
C1):フタロシアニン系顔料
C2):キナクリドン系顔料
C3):イソインドリノン系顔料
C4):ペリレン又はペリニン系顔料
C5):キノフタロン系顔料
C6):ジケトピロロ・ピロール系顔料
C7):複素環系アンスラキノン系顔料
C8):ジオキサジン系顔料
C9):ジスアゾ縮合系顔料

[式中、Aは炭素数2〜8のアルキレン基又は**−COR−基を示し、Rは単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示し、**は上記フォスファイト構造における3個の酸素原子のいずれか一つに結合していることを示す。
及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表す。Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を表し、他方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。
但し、Yがヒドロキシル基であるときは、R及びRの一方は炭素数3〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表す。]
【請求項2】
熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンである請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
同一分子内にフォスファイト構造と式(1)で示されるヒンダードフェノール構造とを有する化合物が、下式(I)で示される化合物である請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは単結合、イオウ原子又は−CHR−基を表す。Rは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を表す。
Aは炭素数2〜8のアルキレン基又は*−COR−基を表す。Rは単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を表し、*印を付した−CO−は式(I)におけるフォスファイト構造の酸素原子と結合していることを表す。
Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を表し、他方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。
但し、Yがヒドロキシル基であるときは、R及びRの一方は炭素数3〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表す。
また、式(I)における2個のRは互いに同一でもよく、異なってもよい。さらに、式(I)における2個のRは互いに同一でもよく、異なってもよい。そして、式(I)における2個のRは互いに同一でもよく、異なってもよい。]
【請求項4】
さらに、上記(B)以外のリン系酸化防止剤(D)を含む請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
上記(B)以外のリン系酸化防止剤(D)が、下式(II)〜(IV)で示される化合物の少なくとも一種である請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物。

[式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表す。]

[式中、R11及びR12は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表し、nは0〜2の整数を表す。
但し、式(III)におけるnが1〜2の整数を表し、且つ、R11が炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表すときは、複数のR11は互いに同一でもよく、異なってもよい。また、式(III)におけるnが1〜2の整数を表し、且つ、R12が炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表すときは、複数のR12は互いに同一でもよく、異なってもよい。]

[式中、R10は水素原子又はメチル基を表す。但し、式(IV)における複数のR10は互いに同一でもよく、異なってもよい。]
【請求項6】
熱可塑性樹脂(A)の100重量部と、同一分子内にフォスファイト構造と請求項1記載の式(1)で示されるヒンダードフェノール構造とを有する化合物(B)の0.001〜1重量部と、下記のC1)〜C9)群から選ばれる少なくとも一種の有機顔料(C)の0.001〜5重量部とを配合し、溶融混練することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
C1):フタロシアニン系顔料
C2):キナクリドン系顔料
C3):イソインドリノン系顔料
C4):ペリレン又はペリニン系顔料
C5):キノフタロン系顔料
C6):ジケトピロロ・ピロール系顔料
C7):複素環系アンスラキノン顔料
C8):ジオキサジン系顔料
C9):ジスアゾ縮合系顔料
【請求項7】
熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンである請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
同一分子内にフォスファイト構造と式(1)で示されるヒンダードフェノール構造とを有する化合物が、下式(I)で示される化合物である請求項6又は7に記載の製造方法。

[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは単結合、イオウ原子又は−CHR−基を表す。Rは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を表す。
Aは炭素数2〜8のアルキレン基又は*−COR−基を表す。Rは単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を表し、*印を付した−CO−は式(I)におけるフォスファイト構造の酸素原子と結合していることを表す。
Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を表し、他方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。
但し、Yがヒドロキシル基であるときは、R及びRの一方は炭素数3〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表す。
また、式(I)における2個のRは互いに同一でもよく、異なってもよい。さらに、式(I)における2個のRは互いに同一でもよく、異なってもよい。そして、式(I)における2個のRは互いに同一でもよく、異なってもよい。]
【請求項9】
さらに、上記(B)以外のリン系酸化防止剤(D)を配合する請求項6〜8に記載の製造方法。
【請求項10】
上記(B)以外のリン系酸化防止剤(D)が、下式(II)〜(IV)で示される化合物の少なくとも一種である請求項9に記載の製造方法。

[式中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表す。]

[式中、R11及びR12は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表し、nは0〜2の整数を表す。
但し、式(III)におけるnが1〜2の整数を表し、且つ、R11が炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表すときは、複数のR11は互いに同一でもよく、異なってもよい。また、式(III)におけるnが1〜2の整数を表し、且つ、R12が炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表すときは、複数のR12は互いに同一でもよく、異なってもよい。]

[式中、R10は水素原子又はメチル基を表す。但し、式(IV)における複数のR10は互いに同一でも良く、異なってもよい。]

【公開番号】特開2006−160809(P2006−160809A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350937(P2004−350937)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】