説明

熱可塑性樹脂組成物

【課題】冷却後の固化が速く、かつ常温でのベタつき性を抑制した樹脂組成物を提供する。
【解決手段】高級α−オレフィン重合体(1)5〜90質量%と、極限粘度が0.01以上1.7以下のエラストマー(2)95〜10質量%とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、前記高級α−オレフィン重合体(1)が、(a)炭素数16以上36以下のα−オレフィンを50質量%以上含むα−オレフィン単量体からなり、かつ、(b)示差走査型熱量計を用いた融解挙動測定において、融点が20℃以上100℃以下であり、ピーク温度が一つだけ観測され、かつ該ピークの半値幅が15℃以内である熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種成形方法(例えば、射出成形、押出成形、中空成形、熱成形、圧縮成形等)に適し、各種工業材料(例えば、自動車部材、光学、電気および電子機器部品、家電部品、建築材料、工業用・食品用容器など)として広い分野で使用することができる熱可塑性樹脂組成物に関する。また、本発明は、該組成物から得られる粘接着材、感温材、バインダー材、蓄熱材、成形体、シート及びフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源及び省エネルギーの観点から、各種部品の軽量化が重要な課題となっており、金属材料から樹脂材料への代替が積極的に進められている。なかでも、熱可塑性樹脂は、安価で、成形性に優れ、軽量で、機械的強度や耐熱性に優れ、そして他の材料との接着性に優れることから様々な産業分野、例えば自動車分野、家電分野、電子機器分野、食品分野、建材分野において、それぞれの物性や経済的価値に応じて用途を拡大している。
【0003】
熱可塑性樹脂の具体的な用途としては、ロストワックス、セラミックス、金属、顔料のバインダー、光学部材、電気・電子部品、半導体部品の接着・固定、仮接着・固定剤、ヒューズ用樹脂、容器などのコート剤、感温性接着剤、蓄熱材、防水シート、フィルムやシートのブロッキング抑制剤などが挙げられる。このような用途において、熱可塑性樹脂であってさらに、常温においてベタつかず、低温で融解し、早く固化する材料が求められている。
【0004】
ところで、エラストマーは非晶性であり、柔軟で、他の材料との接着性に優れる材料である。そのため、例えば耐衝撃性の向上などを目的として、種々材料において改質剤として使われている。しかし、非晶性であるがゆえに、固化させるのに時間を要したり、固化するまで及び固化した後に材料がベタついたりする。
【0005】
エラストマーと高級α−オレフィン重合体とのポリマーアロイの検討において、安価で、機械的強度や耐熱性に優れる材料が得られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、固化性(速乾性)及び常温でのベタつき性について更なる改良が必要である。
【0006】
一方、エラストマーは感圧性接着剤やホットメルト接着剤としても幅広く使用されており、さらに、温度刺激により接着性をオン/オフ可能な感温性接着剤などが提案されている(例えば、特許文献2及び3を参照)。しかし、前者では、接着した後、固化するまでに時間を要したり、常温でのベタつきが問題になったりし、後者では、製造が難しく、入手性、高価などの問題がある。また、水添石油樹脂等の粘着付与剤と高級α−オレフィン重合体とのポリマーアロイの検討もなされているが(例えば、特許文献4参照)、依然として固化性及び常温でのベタつき性について更なる改良が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2003/087218号
【特許文献2】特許第3204455号公報
【特許文献3】特許第3333140号公報
【特許文献4】特開2005−206649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、冷却後の固化が速く、かつ常温でのベタつき性を抑制した樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、従来検討されていたポリマーアロイでは、エラストマーと高級α−オレフィン重合体とが十分に混和されておらずに分散不良が発生することを見出した。そして、本発明者らは、エラストマーと高級α−オレフィン重合体との混和性を改善するために、エラストマーの粘度を特定の粘度範囲内で収めることで混和性を改良することを見出した。さらに、特に高級α−オレフィン重合体の炭素数および融解挙動に注目することで、冷却後の固化が速く、かつ常温でのベタつき性を抑制した樹脂組成物を提供できることを見出した。本発明はこのような知見に基づきなされるに至ったものである。
本発明の課題は、下記の手段によって解決される。
【0010】
[1]高級α−オレフィン重合体(1)5〜90質量%と、極限粘度が0.01以上1.7以下のエラストマー(2)95〜10質量%とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、
前記高級α−オレフィン重合体(1)が、
(a)炭素数16以上36以下のα−オレフィンを50質量%以上含むα−オレフィン単量体からなり、かつ、
(b)示差走査型熱量計を用いた融解挙動測定において、融点が20℃以上100℃以下であり、ピーク温度が一つだけ観測され、かつ該ピークの半値幅が15℃以内である
ことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
[2]前記α−オレフィン重合体(1)の重量平均分子量が1,000以上50万以下である、[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3]前記エラストマー(2)の160℃における溶融粘度が0.05Pa・s以上250Pa・s以下である、[1]又は[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4][1]〜[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる感温性材料。
[5][1]〜[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる粘接着材料。
[6][1]〜[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなるバインダー材料。
[7][1]〜[3]のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体。
[8][1]〜[3]のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物からなるシート又はフィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂組成物は、非晶性であるエラストマーと結晶性である高級α−オレフィン重合体とのブレンドにおいて特定の条件を満たすことで両者を良分散させることができ、これによりエラストマーが有する柔軟性や高級α−オレフィン重合体が有する熱安定性など各成分が有する性質をバランスよく備え、かつ、固化時間の短縮および常温でのベタつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、示差走査型熱量計により測定される吸熱ピークを示す融解曲線において、吸熱ピーク時の半値幅の導出方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、高級α−オレフィン重合体(1)5〜90質量%と、極限粘度が0.01以上1.7以下のエラストマー(2)95〜10質量%とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、前記高級α−オレフィン重合体(1)が、(a)炭素数16以上36以下のα−オレフィンを50質量%以上含むα−オレフィン単量体からなり、かつ、(b)示差走査型熱量計を用いた融解挙動測定において、融点が20℃以上100℃以下であり、ピーク温度が一つだけ観測され、かつ該ピークの半値幅が15℃以内であることを特徴とする。
【0014】
まず、前記の高級α−オレフィン重合体(1)について説明する。
本発明に用いられる高級α−オレフィン重合体(1)は、下記の条件(a)及び(b)を満たすことが要求される。
(a)炭素数16以上36以下のα−オレフィンを50質量%以上含むα−オレフィン単量体からなること。
(b)示差走査型熱量計を用いた融解挙動測定において、融点が20℃以上100℃以下であり、ピーク温度が一つだけ観測され、かつ該ピークの半値幅が15℃以内であること。
このような関係を満たす高級α−オレフィン重合体(1)を用いることで、本発明の樹脂組成物は、常温でベタつきが発生しにくく、貯蔵性や二次加工性に優れたものとなるとともに、低温で均一に溶融するため加工性に優れたものとなる。
【0015】
本発明に用いられる高級α−オレフィン重合体(1)は、炭素数16以上36以下のα−オレフィンをモノマーユニットとして含む。その含有量は50質量%以上であり、50〜100質量%が好ましく、更に好ましくは65〜100質量%、特に好ましくは80〜100質量%、一層好ましくは90〜100質量%である。炭素数16以上36以下の高級α−オレフィンの含有量が50質量%未満では、常温でのべたつくという不具合や、他の樹脂との相溶性が低下するという問題が発生する。高級α−オレフィン重合体中に炭素数36を超えるα−オレフィンがモノマーユニットとして50質量%以上含まれている場合は、高融点化するため各種エラストマーとの混和性が低下し好ましくない。また、高級α−オレフィン重合体中に炭素数16未満のα−オレフィンがモノマーユニットとして50質量%以上含まれている場合は、α−オレフィン重合体の融点や結晶性が低くなり、常温でべたつくため好ましくない。
【0016】
炭素数16以上36以下のα−オレフィンとしては、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−イコセン、1−エイコセン、1−ヘンイコセン、1−ドコセン、1−トリコセン、1−テトラコセン、1−ペンタコセン、1−ヘキサコセン、1−ヘプタコセン、1−オコタコセン、1−ノナコセン、1−トリアコンテン、1−ヘントリアコンテン、1−ドトリアコンテン、1−トリトリアコンテン、1−テトラトリアコンテン、1−ペンタトリアコンテン、1−ヘキサトリアコンテン等が挙げられ、これらのうち一種又は二種以上を用いることができる。
なお、本発明の効果を害さない範囲で、炭素数16以上36以下のα−オレフィン以外のα−オレフィンを用いることもできる。そのようなα−オレフィンの具体例としては、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−テトラコンテン等が挙げられる。
【0017】
また、本発明に用いられる高級α−オレフィン重合体(1)は、所定の温度において粘性が急激に変化すること、すなわち、所定の温度でシャープに融解・結晶化が起こることが望まれる。そのためには融点が1つであり、さらに融解ピーク半値幅が狭いことが望ましい。したがって、本発明に用いられる高級α−オレフィン重合体(1)は、示差走査型熱量計(DSC)を用いた融解挙動測定において、融点が20℃以上100℃以下であり、ピーク温度が一つだけ観測され、かつ該ピークの半値幅が15℃以内であることを要する。ここで、ピークが1つ(単一)であるということは、原則として他のピークやショルダーと見られる吸収が無いことを意味する。融点が20℃未満の場合、常温での融解成分の割合が高くなりべた付くため好ましくなく、100℃を超える場合、エラストマーとの混和性が低くなるため好ましくない。融点は、常温でのべた付き性とエラストマーとの混和性の観点から、25〜100℃が好ましく、30〜90℃がより好ましい。また、ピークの半値幅は、15℃を超える場合にはブロードに溶解、結晶化するため好ましくなく、速乾性の観点から10℃以内であることが好ましい。
【0018】
本発明では、示差走査型熱量計(DSC)を用い、試料を室温から190℃まで、100℃/分で昇温し、190℃で5分保持した後、−30℃まで、10℃/分で降温させ、−30℃で5分保持した後、190℃まで10℃/分で昇温させることで、吸熱ピークを示す融解曲線を得る。示差走査型熱量計としては特に限定されないが、例えばパーキンエルマー社製DSC7(商品名)を用いることができる。本発明では、得られた融解曲線におけるピークトップの温度を融点(Tm)とする。
【0019】
以下に、本発明におけるピークの半値幅の導出方法について、図1を参照しながら説明する。図1は、示差走査型熱量計により測定される融解曲線において、吸熱ピーク時の半値幅の導出方法を示す図である。
図1に示される示差走査型熱量計により測定される融解曲線において、融点より高温域の融解曲線が安定した所(直線領域)に沿って低温域へ直線kを延ばし、融点位置でのその直線の位置(Tm,Pl)と融解曲線上での融点での位置(Tm,Ph)の中点の位置(Tm,Pm)を通りかつ、直線kに平行な直線lを引き、その直線lが融解曲線と交わる温度の高温側と低温側との温度差を半値幅(℃)とする。
【0020】
また、本発明に用いられる高級α−オレフィン重合体(1)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定したポリスチレン(PS)換算された重量平均分子量(Mw)が、エラストマーとの混和性の観点から、1,000以上50万以下であることが好ましく、1,000以上20万以下であることがより好ましく、1,000以上10万以下であることが特に好ましい。
【0021】
本発明に用いられる高級α−オレフィン重合体(1)は、国際公開第2003/070790号や国際公開第2003/087218号などの記載を参照して調製することができる。
【0022】
次に、前記エラストマー(2)について説明する。
本発明に用いられるエラストマー(2)は、極限粘度が0.01以上1.7以下であり、0.04以上1.6以下であることが好ましく、0.07以上1.4以下であることが特に好ましい。前記エラストマー(2)の極限粘度が低すぎる場合は粘着強度が発揮しないおそれがあり、高すぎる場合には高級α−オレフィン重合体(1)との混和性に劣る。本発明において、前記エラストマー(2)の極限粘度は、135℃にてJIS−K736に準拠して測定される。
【0023】
本発明に用いられるエラストマー(2)は、非晶性であることが好ましく、具体例としては、例えば、オレフィン系エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等を挙げることもできる。更に別の具体例として、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂等の天然物及びその誘導体や、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂等の合成樹脂等を挙げることもできる。
【0024】
オレフィン系エラストマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−オクテン等のα−オレフィンが共重合してなるエラストマーあるいはこれらと環状オレフィン、スチレン系モノマー、非共役ジエンとが共重合してなるエラストマーやプラストマーと呼ばれるもの等が挙げられる。一般的には、密度が0.91g/cm3以下のものがプラストマー又はエラストマーと呼ばれるが、ゴム弾性的な性質を持つものであれば密度によって制限されることはなく、化学的架橋されているものでも化学的架橋されていないものでもよい。非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等を挙げることができる。
【0025】
このようなオレフィン系エラストマーとしては、具体的には、エチレン・プロピレン共重合体エラストマー、エチレン・1−ブテン共重合体エラストマー、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体エラストマー、エチレン・1−ヘキセン共重合体エラストマー、エチレン・1−オクテン共重合体エラストマー、エチレン・スチレン共重合体エラストマー、エチレン・ノルボルネン共重合体エラストマー、プロピレン・1−ブテン共重合体エラストマー、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体エラストマー、エチレン・1−ブテン−非共役ジエン共重合体エラストマー、エチレン・プロピレン・1−ブテン−非共役ジエン共重合体エラストマー等のオレフィンを主成分とする無定型の弾性共重合体を挙げることができる。これらのなかでも、炭素原子数が2〜8のオレフィンを主な構成単位とする重合体であることが好ましく、さらにエチレン単位及び/又はプロピレン単位を主な構成単位とする共重合体であることが好ましい。
また、オレフィン系のエラストマーとして、立体規則性を制御したポリプロピレンやポリブテン等も挙げられる。これは、立体規則性を低下させることにより結晶性を低下させ、ゴム的な弾性を発現させたものであり、具体的には、特開2001−172325号公報、特開2002−322213号公報に示される重合体が例示される。
【0026】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系化合物と共役ジエン化合物のブロック共重合体及びその水素添加物が挙げられる。このスチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等のアルキルスチレン、p−メトキシスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらの中でもスチレンが好ましい。共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、メチルペンタジエン、フェニルブタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン等が挙げられる。これらの中でもブタジエン及びイソプレンが好ましい。
これらのスチレン系熱可塑性エラストマーの分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状又はこれらの組み合わせ等いずれであってもよい。このようなスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、スチレン・ブタジエンジブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック共重合体、スチレン・イソプレンジブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレントリブロック共重合体、スチレン・ブタジエンジブロック共重合体の水素添加物、スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック共重合体の水素添加物、スチレン・イソプレンジブロック共重合体の水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレントリブロック共重合体の水素添加物を挙げることができる。
【0027】
合成樹脂としては、脂肪族炭化水素、環状脂肪族炭化水素、水添石油樹脂等の飽和石油樹脂が好ましく、特に好ましくは水添石油樹脂である。上記の樹脂はいずれも市販されており、商業的に入手可能である。例えば、市販の水添石油樹脂としては、「アイマーブ」(商品名、出光興産社性)等が挙げられる。
【0028】
本発明に用いられるエラストマー(2)は、一種のみ用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
また、本発明に用いられるエラストマー(2)は、160℃における溶融粘度が、粘着性の観点からは0.05Pa・s以上であることが好ましく、高級α−オレフィン重合体(1)との混和性の観点からは250Pa・s以下であることが好ましく、また、1以上200以下であることが好ましく、1以上130以下であることが特に好ましい。溶融粘度は、例えば溶融粘弾性測定装置(商品名:Physica MCR301、Anton Paar社製)により測定することができる。
【0030】
本発明の樹脂組成物を構成する高級α−オレフィン重合体(1)とエラストマー(2)との含有比(質量%)は、(1):(2)が5〜90:95〜10であり、好ましくは10〜80:90〜20である。高級α−オレフィン重合体(1)の割合が低すぎる場合には材料のべた付き感や速乾性がなくなり、高すぎる場合には接着性や靭性が発現しない。
【0031】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法には特に制限はなく、当業界で通常用いられる方法、例えば、高級α−オレフィン重合体(1)とエラストマー(2)とを溶融混練する方法や、共通の溶媒に溶解しブレンドする方法等が挙げられる。溶融混練装置としては、ミキシングロール、インテンシブミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、一軸又は二軸押出機などを用いることができる。
【0032】
また、本発明の樹脂組成物には、剛性や衝撃強度などの力学物性や粘着力の調整や粘度調整のために、その他のポリマーや粘度調整剤を適宜含有させることができる。
【0033】
さらに、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、更に、任意の無機充填剤、有機充填剤等の充填剤を、本発明の目的を損なわない範囲で含有させることができる。用いられる無機充填剤や有機充填剤の形状については、特に制限はなく、粒状,板状,棒状,繊維状,ウイスカー状等、いずれの形状のものも使用することができる。
【0034】
無機充填剤としては、例えば、シリカ,ケイ藻土,バリウムフェライト,アルミナ,酸化チタン,酸化マグネシウム,酸化ベリリウム,軽石,軽石バルーン等の酸化物、水酸化アルミニウム,水酸化マグネシウム,塩基性炭酸マグネシウム等の水酸化物、炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム,ドロマイト,ドーソナイト等の炭酸塩、硫酸カルシウム,硫酸バリウム,硫酸アンモニウム,亜硫酸カルシウム等の硫酸塩又は亜硫酸塩、タルク,クレー,マイカ,アスベスト,ガラス繊維,ガラスフレーク,ガラスバルーン,ガラスビーズ,ケイ酸カルシウム,モンモリロナイト,ベントナイト,カオリナイト等の粘土鉱物・ケイ酸塩及びその有機化物(有機化クレー)、カーボンブラック,グラファイト,炭素繊維,炭素中空球等の炭素類や、硫化モリブデン,ボロン繊維,ホウ酸亜鉛,メタホウ酸バリウム,ホウ酸カルシウム,ホウ酸ナトリウム,マグネシウムオキシサルフェイト,各種金属繊維等を挙げることができる。
一方、有機充填剤としては、例えば、モミ殻等の殻繊維,木粉,木綿,ジュート,紙細片,セロハン片,芳香族ポリアミド繊維,セルロース繊維,ナイロン繊維,ポリエステル繊維,ポリプロピレン繊維,熱硬化性樹脂粉末等を挙げることができる。
これらの無機充填剤や有機充填剤は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
成形品においては、これらの中で、タルク,マイカ,炭酸カルシウム,ガラス繊維が好ましく、特にタルクが好ましい。このタルクの大きさとしては、得られる成形体の剛性,耐衝撃性,耐傷付き白化性,ウエルド外観,光沢ムラ等の物性の点から、平均粒径1〜8μmで、平均アスペクト比が4以上のものが好適である。特に、加工粉砕法により得られたものが、物性,剛性等の点でとりわけ好ましい。
【0036】
本発明の樹脂組成物における無機充填剤や有機充填剤の含有量は、成形体の外観,剛性,耐衝撃性,耐傷付き白化性等の観点から、樹脂成分100質量部に対して、0〜200質量部の範囲であることが好ましく、0〜170質量部の範囲であることがより好ましく、特に0〜60質量部の範囲が好適である。
【0037】
本発明の樹脂組成物には、更に必要に応じて、任意の結晶核剤,耐侯安定剤,紫外線吸収剤,光安定剤,耐熱安定剤,帯電防止剤,離型剤,難燃剤,合成油,ワックス,電気的性質改良剤,スリップ防止剤,アンチブロッキング剤,粘度調整剤,着色防止剤,防曇剤,滑剤,顔料,染料,可塑剤,軟化剤,老化防止剤,塩酸吸収剤,塩素捕捉剤,酸化防止剤等の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で含有させることができる。例えば、安定剤としては、フェノール系安定剤、有機フォスファイト系安定剤、チオエーテル系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤及び高級脂肪酸の金属塩などを用いることができる。
本発明の樹脂組成物における添加剤の含有量は、剛性やコストの観点から、樹脂成分と無機充填剤や有機充填剤との合計100質量部に対して、10質量部以下、好ましくは3質量部以下が好ましい。また、本発明の樹脂組成物における安定剤は、樹脂成分100質量部に対して0.001〜10質量部の量で含有させてもよい。
【0038】
熱可塑性樹脂組成物に、無機充填剤や有機充填剤及び/又は所望成分である各種添加剤を含有させる方法としては、例えば、一軸押出機,二軸押出機,バンバリーミキサー,ニーダー,ロール等を使用して溶融混練造粒する方法等を用いることができる。
【0039】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いて、各種成形体、シートやフィルム、繊維を得ることができる。成形方法としては特に制限はなく、当業界で通常用いられる方法、例えば、熱成形、押出成形、異形押出成形、射出成形、圧縮成形、発泡成形、中空成形、粉末成形、カレンダー成形、練加工及びインフレーション成形等が挙げられる。
【0040】
本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる各種成形体、シートやフィルムは、熱安定性を有するとともに柔軟性を有し、かつ常温でのベタつきが少ない。また、その製造の際においては冷却後の固化が速いため乾燥時間を短縮することができ、生産性に優れる。
【0041】
以下に、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【実施例】
【0042】
まず、高級α−オレフィン重合体およびエラストマーの物性評価方法について説明する。
1)示差走査型熱量計を用いた測定(融点、半値幅の測定)
測定はJIS−K7121に準拠して行った。示差走査型熱量計としては、DSC−7(商品名、パーキンエルマー社製)を用いた。具体的には、試料を室温から190℃まで、100℃/分で昇温し、190℃で5分保持した後、−30℃まで、10℃/分で降温させ、−30℃で5分保持した後、190℃まで10℃/分で昇温させることで、吸熱ピークを示す融解曲線を得た。得られた融解曲線におけるピークトップの温度を融点(Tm)とした。また、前述のようにして、得られた融解曲線から半値幅(℃)を求めた。半値幅の算出方法は以下の通りである。
図1に示したような示差走査型熱量計により測定される融解曲線において、融点より高温域の融解曲線が安定した所(直線領域)に沿って低温域へ直線kを延ばし、融点位置でのその直線の位置(Tm,Pl)と融解曲線上での融点での位置(Tm,Ph)の中点の位置(Tm,Pm)を通り、かつ、直線kに平行な直線lを引き、その直線lが融解曲線と交わる温度の高温側と低温側との温度差を半値幅(℃)とした。
【0043】
2)分子量測定方法
ゲルパーミッションクロマトグラフ(GPC)法により、下記の装置及び条件で測定した。重量平均分子量(Mw)は、標準ポリスチレンの検量線から求めた、ポリスチレン換算値を用いた。
(GPC測定装置)
カラム:TOSO GMHHR−H(S)HT(商品名、東ソー社製)
検出器:液体クロマトグラム用RI検出器 WATERS 150C(商品名、ウォーターズ社製)
(測定条件)
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン
測定温度:145℃
流速:1.0ミリリットル/分
試料濃度:2.2mg/ミリリットル
注入量:160マイクロリットル
検量線:Universal Calibration
解析プログラム:HT−GPC(Ver.1.0)
【0044】
3)溶融粘度測定方法
粘弾性測定装置を用い、下記の条件にて溶融粘度を測定した。
装置名:Physica MCR 301(商品名、Anton Paar社製)
測定法:プレート−プレート
プレート径:25mmφ
温度:160℃
せん断速度:1〜100(1/s)
このせん断速度領域で平坦部の粘度を溶融粘度とした。
【0045】
4)極限粘度測定方法
極限粘度[η]について、JIS−K736に準拠して測定した。溶媒はテトラリンを用い、測定温度135℃にて実施した。
【0046】
製造例1
(結晶性高級α−オレフィン重合体の調製)
<重合触媒の調製>
特開2005−075908号公報の触媒製造例1と同様にして、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを調製した。
<α−オレフィン重合体1の調製>
加熱乾燥させた内容積1Lの攪拌機付きオートクレーブに、窒素気流下、1−オクタデセン(出光興産株式会社製、商品名、リニアレン18)400mLを投入した後、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液0.5mL(2.0mmol/mL)を投入した。
その後、400rpmで攪拌しながら100℃まで昇温し、窒素気流下でジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートを8.0μmol(20μmol/mLトルエン溶液、0.4mL)、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドを2.0μmol(20μmol/mLトルエン溶液、0.1mL)を投入した。そして水素0.15MPaを導入し、2時間重合を行った。重合終了後、メタノール3mLを投入し、重合反応を停止させた。
脱圧後、反応混合物をアセトン400mLに投入し、重合体を沈殿させた後、デカンテーションにより上澄みを除去し、150℃で8時間減圧乾燥させることにより、高級α−オレフィン重合体89gを得た。得られた重合体の物性測定結果は、融点(Tm);41℃、融解ピーク半値幅(Wm);2℃、Mw;20,000であった。前記の測定方法により融点(Tm)を測定したときに観測されたピークは一つであった。
【0047】
製造例2
(α−オレフィン重合体2の調製)
加熱乾燥した1リットルオートクレーブに、リニアレン2024(商品名、出光興産(株)製、主として炭素数20、22及び24のα−オレフィンの51/34/15質量%混合体)400mlを入れ、重合温度130℃まで昇温した後、トリイソブチルアルミニウム0.5mmol、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを2μmol、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート8μmolを加え、水素0.15MPa導入し、120分間重合した。重合反応終了後、反応物をメチルエチルケトンにて沈殿させた後、加熱、減圧下、乾燥処理することにより、高級α−オレフィン共重合体280gを得た。
得られたポリマーのGPCによる重量平均分子量(Mw)は9,800、半分値幅は5℃、融点は52℃であった。また、前記の測定方法により融点(Tm)を測定したときに観測されたピークは一つであった。
【0048】
製造例3
(α−オレフィン重合体3の調製)
加熱乾燥した1Lオートクレーブに、炭素数20、22及び24のα−オレフィンの43/36/21質量%混合体400mLを入れ、重合温度110℃まで昇温した後、トリイソブチルアルミニウム0.5mmol、(1,2’−ジメチルシリレン)(2,1’−ジメチルシリレン)ビス(3−トリメチルシリルメチルインデニル)ジルコニウムジクロライドを2μmol、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートを8μmol加え、水素を0.15MPaで導入し、120分間重合した。重合反応終了後、反応物をアセトンにて沈殿させた後、加熱、減圧下、乾燥処理することにより、高級α−オレフィン重合体210gを得た。
得られた重合体のGPCによる重量平均分子量(Mw)は14,000、融点は58℃であり、半値幅は4℃であった。また、前記の測定方法により融点(Tm)を測定したときに観測されたピークは一つであった。
【0049】
製造例4−1
(α−オレフィン重合体4−1の調製)
製造例3における炭素数20、22及び24のα−オレフィンの43/36/21質量%混合体を、炭素数26及び28のα−オレフィンの57/43質量%混合体に変更したこと以外は製造例3と同様にして高級α−オレフィン重合体4−1を調製した。
得られた重合体の融点、半値幅および重量平均分子量について測定結果を表1に示す。なお、前記の測定方法により融点(Tm)を測定したときに観測されたピークは一つであった。
【0050】
製造例4−2
(α−オレフィン重合体4−2の調製)
製造例4−1における重合温度を160℃、水素を0.8MPaに変更したこと以外は製造例4−1と同様にして高級α−オレフィン重合体4−2を調製した。
得られた重合体の融点、半値幅および重量平均分子量について測定結果を表1に示す。なお、前記の測定方法により融点(Tm)を測定したときに観測されたピークはいずれも一つであった。
【0051】
製造例5
(α−オレフィン重合体5の調製)
製造例3における炭素数20、22及び24のα−オレフィンの43/36/21質量%混合体を、1−テトラデセンに変更したこと以外は製造例3と同様にして高級α−オレフィン重合体5を調製した。
得られた重合体の融点、半値幅および重量平均分子量について測定結果を表1に示す。なお、前記の測定方法により融点(Tm)を測定したときに観測されたピークは一つであった。
【0052】
製造例6
(α−オレフィン重合体6の調製)
製造例1における1−オクタデセン(C18)を、1−デセン140mL、及び炭素数20、22及び24のα−オレフィンの43/36/21質量%混合体280mLに変更したこと以外は製造例1と同様にして高級α−オレフィン重合体6を調製した。
得られた重合体の融点、半値幅および重量平均分子量について測定結果を表1に示す。なお、前記の測定方法により融点(Tm)を測定したときに観測されたピークは一つであった。
【0053】
【表1】

【0054】
実施例1〜14、比較例1〜12
下記の高級α−オレフィン重合体、エラストマー及びパラフィン系ワックスを用いて、表2及び3に示す組成で熱可塑性樹脂組成物を調製した。具体的には、ラボプラストミルMR(商品名、(株)東洋精機製作所製)を用いて、溶融温度100〜160℃、回転数150r.p.m、溶融時間5分の条件で、所定量の高級α−オレフィン重合体、エラストマー及びパラフィン系ワックスを溶融混練して熱可塑性樹脂組成物を調製した。
【0055】
高級α−オレフィン重合体
α−オレフィン重合体1:製造例1の重合体
α−オレフィン重合体2:製造例2の重合体
α−オレフィン重合体3:製造例3の重合体
α−オレフィン重合体4−1:製造例4−1の重合体
α−オレフィン重合体4−2:製造例4−2の重合体
α−オレフィン重合体5:製造例5の重合体
α−オレフィン重合体6:製造例6の重合体
【0056】
エラストマー
エラストマー1:リコセンPP1602(商品名、クラリアント社製、エチレン・プロピレン共重合体、[η]=0.39、溶融粘度:11.0Pa・s)
エラストマー2:リコセンPP1302(商品名、クラリアント社製、エチレン・プロピレン共重合体、[η]=0.16、溶融粘度:0.3Pa・s)
エラストマー3:リコセンPP2602(商品名、クラリアント社製、エチレン・プロピレン共重合体、[η]=0.39、溶融粘度:10.9Pa・s)
エラストマー4:ウルトラセン684(商品名、東ソー株式会社製、エチレン・酢酸ビニル共重合体、[η]=0.29、溶融粘度:9.0Pa・s)
エラストマー5:ウルトラセン735(商品名、東ソー株式会社製、エチレン・酢酸ビニル共重合体、[η]=0.33、溶融粘度:19.0Pa・s)
エラストマー6:アイマーブP−90(商品名、出光興産社性、石油樹脂、[η]=0.02、溶融粘度:0.6Pa・s)
エラストマー7:タフマーA−0550(商品名、三井化学株式会社製、エチレン・1−ブテンランダム共重合体、[η]=1.82、溶融粘度:345Pa・s)
【0057】
パラフィン系ワックス
ワックス1:PW130(商品名、日本精鑞社製、融点:37℃)
【0058】
[評価]
1)混和性
調製した熱可塑性樹脂組成物を用いて、プレス機にて円板(直径25mm、厚み1mm)をそれぞれ作製し、その円板の表面状態から高級α−オレフィン重合体とエラストマーとの混和性を目視にて評価した。目視にて円板が、混ざりムラのない一様な色(白色)として観察される場合は○とし、それ以外は×とした。結果を表2及び3に示す。
なお、高級α−オレフィン重合体を含有しない比較例1〜6については評価を行わなかった。
【0059】
2)速乾性
作製した円板をそれぞれ、厚み0.3mmのアルミニウム板に載せ、150℃のオーブンに5分間保管した後、25℃に制御された板上にそのアルミニウム板を貼り付けて、樹脂がベタつかなくなるまでに要した時間(秒)を測定した。この時間が短いもの程、速乾性が高いことを表す。結果を表2及び3に示す。
【0060】
3)ベタつき性評価
上述の高級α−オレフィン重合体の融点を求める際に得られた融解曲線に基づいて、−30〜100℃の融解潜熱量から0〜30℃の範囲における融解潜熱量の割合(%)を算出した。この成分割合が多い程、室温にて溶融している成分が多いことを意味し、ベタつき性が強いことを表す。結果を表2及び3に示す。
【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
表2及び3から明らかなように、エラストマーのみからなる比較例1、2及び4〜6の樹脂は常温でのベタつき性が強く、比較例3は速乾性に劣るものであった。また、極限粘度が1.82のエラストマー7と高級α−オレフィン重合体とからなる比較例7〜9の樹脂組成物は、混ざりムラが観察され混和性に劣るものであった。炭素数14のα−オレフィンからなるα−オレフィン重合体5とエラストマーとからなる比較例10の樹脂組成物は、常温でのベタつき性がかなり強く、測定中にベタつきがなくならず速乾性を評価することができなかった。半値幅がブロードなα−オレフィン重合体6とエラストマーとからなる比較例11の樹脂組成物は、常温でのベタつき性が強く、速乾性も劣るものであった。半値幅がブロードなパラフィン系ワックスとエラストマーとからなる比較例12の樹脂組成物は、エラストマーのみからなる比較例1〜7の樹脂組成物と比べると、速乾性及びべた付き性は若干改善されるもののその程度は低いものであった。
これに対し、所定の高級α−オレフィン重合体とエラストマーとからなる実施例1〜14の樹脂組成物はいずれも、混ざりムラがなく混和性に優れ、固化するまでの時間が短く速乾性に優れ、しかも常温でのベタつき性が低いものであった。
したがって、本発明の樹脂組成物は、冷却後の固化が速く、かつ常温でのベタつきが抑制されることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の樹脂組成物は、エラストマーと結晶性である高級α−オレフィンとをブレンドし良分散させることで、エラストマーが有する柔軟性を有しながら、固化時間の短縮および常温でのベタつきを抑制することができるため、ロストワックス、セラミックス、金属、顔料のバインダー、光学部材、電気・電子部品、半導体部品の接着・固定、仮接着・固定剤、ヒューズ用樹脂、容器等のコート剤、感温性接着剤、防水シート、フィルムやシートのブロッキング抑制剤などの用途や各種成形方法(例えば、射出成形、押出成形、中空成形、熱成形、圧縮成形等)に適し、該組成物並びにそれから得られる成形体、シート及びフィルムは、各種工業材料(例えば、自動車部材、電気および電子機器部品、家電部品、建築材料、工業用、食品用容器など)として広い分野で使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高級α−オレフィン重合体(1)5〜90質量%と、極限粘度が0.01以上1.7以下のエラストマー(2)95〜10質量%とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、
前記高級α−オレフィン重合体(1)が、
(a)炭素数16以上36以下のα−オレフィンを50質量%以上含むα−オレフィン単量体からなり、かつ、
(b)示差走査型熱量計を用いた融解挙動測定において、融点が20℃以上100℃以下であり、ピーク温度が一つだけ観測され、かつ該ピークの半値幅が15℃以内である
ことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記α−オレフィン重合体(1)の重量平均分子量が1,000以上50万以下である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記エラストマー(2)の160℃における溶融粘度が0.05Pa・s以上250Pa・s以下である、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる感温性材料。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる粘接着材料。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなるバインダー材料。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形体。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなるシート又はフィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2011−32327(P2011−32327A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178056(P2009−178056)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】