説明

熱可塑性樹脂組成物

【課題】ポリアミド樹脂と変性ゴムとを含む熱可塑性エラストマー組成物の低温耐久性を改善する。
【解決手段】ポリアミド樹脂と酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴムとを含む熱可塑性エラストマー組成物であって、酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴムが第二級アミンで変性されていることを特徴とする。第二級アミンは、好ましくは、構造式R−NH−R(式中、Rは炭素数1〜30の直鎖アルキル基であり、Rは炭素数1〜30の炭化水素基または水酸基、スルホニル基、カルボニル基もしくはエーテル結合を有する炭素数1〜30の炭化水素基である。)を有する化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂と変性ゴムとからなる熱可塑性エラストマー組成物に関する。特に、本発明は、ポリアミド樹脂の低温耐久性(繰り返し疲労性)を改善するために、ポリアミド樹脂マトリックス中に変性ゴムを分散させた熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の熱可塑性樹脂マトリックス中に特定のゴムエラストマー成分を不連続相として分散させてなる、耐空気透過性と柔軟性とのバランスに優れた熱可塑性エラストマー組成物は知られている(特許文献1)。
【0003】
また、熱可塑性エラストマー組成物における熱可塑性樹脂成分の溶融粘度(η)とエラストマー成分の溶融粘度(η)およびエラストマー成分と熱可塑性樹脂成分の溶解性パラメーターの差(ΔSP)を特定の関係式を満たすようにすることで高エラストマー成分比率を達成し、それによって一層柔軟性に富み、耐気体透過性に優れた熱可塑性エラストマー組成物が得られること、そしてそれを気体透過防止層に使用した空気入りタイヤも知られている(特許文献2)。
【0004】
さらに、熱可塑性樹脂を連続相としゴム組成物を分散相とする熱可塑性エラストマー中に、偏平状に分散してなる相構造を有するバリヤ樹脂組成物を存在させることで、耐ガス透過性が大巾に向上して、しかも柔軟性、耐油性、耐寒性および耐熱性を有するような熱可塑性エラストマー組成物も知られている(特許文献3)。
【0005】
さらに、層状珪酸塩で変性した脂肪族ポリアミド樹脂に酸無水物変性エチレン系改質ポリマーをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物も知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−259741号公報
【特許文献2】特開平10−25375号公報
【特許文献3】特開平10−114840号公報
【特許文献4】特開2000−160024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポリアミド樹脂と、酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴムとをブレンドした場合、ポリアミド樹脂と酸無水物基またはエポキシ基が反応するため、変性ゴムを高配合すると、溶融時の流動性が極端に低下し、フィルム製膜性が大幅に悪化する問題、および変性ゴムを高配合しても、なお低温耐久性が不足しているという問題があった。
本発明は、ポリアミド樹脂の低温耐久性(繰り返し疲労性)を改善するために、ポリアミド樹脂マトリックス中に低温耐久性に優れている変性ゴムを分散充填した熱可塑性エラストマー組成物において、変性ゴムを高充填しても流動性を維持し、フィルム製膜が可能であり、かつ低温耐久性に優れる熱可塑性エラストマー組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリアミド樹脂(A)と酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴム(B)とを含む熱可塑性エラストマー組成物であって、酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴム(B)が第二級アミン(C)で変性されていることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物である。
本発明において、第二級アミン(C)は、好ましくは、構造式
−NH−R
を有する化合物であり、RおよびRの少なくとも一方が炭素数1〜30の直鎖アルキル基である。
本発明において、第二級アミン(C)は、好ましくは、構造式
−NH−R
(式中、Rは炭素数1〜30の直鎖アルキル基であり、Rは炭素数1〜30の炭化水素基または水酸基、スルホニル基、カルボニル基もしくはエーテル結合を有する炭素数1〜30の炭化水素基である。)
を有する化合物である。
本発明において、酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴム(B)は、好ましくは、酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴム100質量部と第二級アミン(C)0.1〜5質量部とを溶融ブレンドさせて得られたものである。
本発明において、ポリアミド樹脂(A)は、好ましくは、ポリアミド樹脂100質量部に対してポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(D)0.05〜5質量部を、ポリアミド樹脂の融点以上で溶融ブレンドさせて得られる変性ポリアミド樹脂(A′)である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、好ましくは、さらにエチレン−ビニルアルコール共重合体(E)を含む。
本発明において、ポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(D)は、好ましくは、単官能エポキシ化合物である。
本発明において、ポリアミド樹脂(A)は、好ましくは、ナイロン6、ナイロン66またはナイロン6/66である。
本発明において、酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴム(B)を構成するゴムは、好ましくは、エチレン−α−オレフィン共重合体またはエチレン−不飽和カルボン酸共重合体もしくはその誘導体である。
本発明において、酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴム(B)は、好ましくは、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、90〜180質量部である。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物がエチレン−ビニルアルコール共重合体(E)を含む場合は、ポリアミド樹脂(A)とエチレン−ビニルアルコール共重合体(E)の質量比は、好ましくは、90/10〜10/90であり、酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴム(B)は、好ましくは、ポリアミド樹脂(A)とエチレン−ビニルアルコール共重合体(E)の合計量100質量部に対して90〜180質量部である。
本発明は、また、前記熱可塑性エラストマー組成物のフィルムを少なくとも1層、およびジエン成分を含むゴム組成物のシートを少なくとも1層含むことを特徴とする積層体である。
本発明の積層体は、好ましくは、さらに粘接着剤層を含む。
本発明の積層体は、好ましくは、ゴム組成物シート中のポリマー成分のうち、ハロゲン化ブチルゴムが30〜100質量%である。
本発明は、また、前記熱可塑性エラストマー組成物のフィルムまたは前記積層体を含むタイヤである。
本発明は、また、前記熱可塑性エラストマー組成物のフィルムまたは前記積層体を含むホースである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポリアミド樹脂(A)と酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴム(B)とを含む熱可塑性エラストマー組成物を、第二級アミン(C)で変性することにより、熱可塑性エラストマー組成物の低温耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)および酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴム(B)を含む。
【0011】
ポリアミド樹脂(A)は、限定するものではないが、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロンMXD6、およびナイロン6Tが単独でまたは混合物として使用できる。なかでも、ナイロン6、ナイロン66、およびナイロン6/66が耐疲労性とガスバリヤ性の両立という点で好ましい。
【0012】
本発明に用いる変性ゴム(B)は、酸無水物基またはエポキシ基を有する。ポリアミド樹脂との相溶性という観点から、特に好ましくは、変性ゴム(B)は酸無水物基を有する。
【0013】
変性ゴム(B)を構成するゴムとしては、エチレン−α−オレフィン共重合体、またはエチレン−不飽和カルボン酸共重合体もしくはその誘導体などが挙げられる。エチレン−α−オレフィン共重合体としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体などが挙げられる。エチレン−不飽和カルボン酸共重合体もしくはその誘導体としては、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。
【0014】
酸無水物基を有する変性ゴムは、たとえば、酸無水物とペルオキシドをゴムに反応させることにより製造することができる。酸無水物基を有する変性ゴム中の酸無水物基の含有量は、好ましくは0.01〜1モル/kg、より好ましくは0.05〜0.5モル/kgである。酸無水物基の含有量が少なすぎると変性ゴム分散の悪化を招き、逆に多すぎると加工性の悪化を招く。また、酸無水物基を有する変性ゴムは、市販されており、市販品を用いることができる。市販品としては、三井化学株式会社製無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体(タフマー(登録商標)MP−0620)、無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体(タフマー(登録商標)MP−7020)などがある。
【0015】
エポキシ基を有する変性ゴムは、たとえば、グリシジルメタクリレートをゴムに共重合させることにより製造することができる。共重合比率は、限定するものではないが、たとえば、ゴム100質量部に対し、グリシジルメタクリレート10〜50質量部である。エポキシ基を有する変性ゴム中のエポキシ基の含有量は、好ましくは0.01〜5モル/kg、より好ましくは0.1〜1.5モル/kgである。エポキシ基の含有量が少なすぎると変性ゴム分散の悪化を招き、逆に多すぎると加工性の悪化を招く。また、エポキシ基を有する変性ゴムは、市販されており、市販品を用いることができる。市販品としては、住友化学株式会社製エポキシ変性エチレンアクリル酸メチル共重合体(エスプレン(登録商標)EMA2752)などがある。
【0016】
特に好ましい変性ゴム(B)は、酸無水物基でグラフト変性されたエチレン−α−オレフィン共重合体であり、その例としては、前述の三井化学株式会社製無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体(タフマー(登録商標)MP−0620)、無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体(タフマー(登録商標)MH−7020)がある。
【0017】
熱可塑性樹脂組成物中のポリアミド樹脂(A)と変性ゴム(B)の比率は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは、変性ゴム(B)が90〜180質量部であり、より好ましくは95〜160質量部である。変性ゴム(B)の比率が少なすぎると、低温耐久性に劣り、逆に多すぎると、溶融時の流動性が極端に低下し、フィルム製膜性が大幅に悪化する。本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、好ましくは、ポリアミド樹脂(A)が連続相を形成し、変性ゴム(B)が分散相を形成している。
【0018】
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、変性ゴム(B)は第二級アミン(C)で変性されている。第二級アミン(C)で変性することにより、熱可塑性樹脂組成物の低温耐久性を向上させることができる。第二級アミン(C)による変性は、酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴムを第二級アミン(C)とともに溶融ブレンドすることによって行なうことができる。溶融ブレンドの温度は、ポリアミド樹脂(A)の融点以上の温度であるが、好ましくはポリアミド樹脂の融点より20℃高い温度、たとえば200〜250℃である。溶融ブレンドの時間は、通常、1〜10分、好ましくは2〜5分である。
【0019】
第二級アミン(C)は、次の構造式を有する。
−NH−R
好ましくは、RおよびRの少なくとも一方が炭素数1〜30の直鎖アルキル基である。
より好ましくは、Rは炭素数1〜30の直鎖アルキル基であり、Rは炭素数1〜30の炭化水素基または水酸基、スルホン基、カルボニル基もしくはエーテル結合を有する炭素数1〜30の炭化水素基である。
【0020】
は、炭素数1〜30の直鎖アルキル基であり、好ましくは炭素数6〜26の直鎖アルキル基、より好ましくは炭素数12〜20の直鎖アルキル基であり、さらに好ましくはドデシル基(ラウリル基)、テトラデシル基(ミリスチル基)、ヘキサデシル基(パルミチル基)、オクタデシル基(ステアリル基)またはイコシル基である。比較的長鎖の直鎖アルキル基を有する第二級アミンを用いると、熱可塑性樹脂組成物の低温耐久性の向上効果が大きい。
【0021】
は、炭素数1〜30の炭化水素基であり、水酸基(−OH)、スルホニル基(>SO)、カルボニル基(>C=O)もしくはエーテル結合(−O−)を有していてもよい。炭化水素基は、直鎖でも分枝でも環状でもよく、飽和でも不飽和でもよい。炭素数は好ましくは1〜26、より好ましくは2〜18である。RはRと同じであってもよいし、異なっていてもよい。Rは、好ましくは、炭素数1〜30のアルキル基または水酸基で置換された炭素数1〜30のアルキル基であり、より好ましくは、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、または、ヒドロキシヘキサデシル基である。水酸基、スルホニル基、カルボニル基、エーテル結合のようなアミド結合または水酸基と水素結合し得る官能基を有する第二級アミンを用いると、マトリックスを形成する樹脂と変性ゴム分散相の界面が水素結合により補強されるため、フィルム成形性を悪化させることなく、熱可塑性樹脂組成物の低温耐久性を向上させることができる。
【0022】
第二級アミン(C)の好ましい具体例としては、N−ヒドロキシエチル−ラウリルアミン、ジアルキルアミン(R−NH−R′、ただしRおよびR′はそれぞれ炭素数12〜20のアルキル基)などが挙げられる。
【0023】
第二級アミン(C)による変性は、酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴムを、第二級アミン(C)と溶融ブレンドすることにより、行うことができる。酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴムと第二級アミン(C)を溶融ブレンドする方法は、特に限定されないが、たとえば、酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴムと第二級アミン(C)を二軸混練機に投入し、酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴムの融点以上、好ましくは融点より20℃以上高い温度で、たとえば230℃で溶融ブレンドする。溶融ブレンドする時間は、たとえば、1〜10分、好ましくは2〜5分である。
【0024】
第二級アミン(C)の量は、酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴム100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜3質量部である。第二級アミン(C)の量が少なすぎると、耐久性の大幅な向上が望めない。逆に、第二級アミン(C)の量が多すぎると、未反応のアミンが残留する。
【0025】
本発明に使用するポリアミド樹脂(A)は、好ましくは、ポリアミド樹脂100質量部に対してポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(D)0.05〜5質量部を、ポリアミド樹脂の融点以上で溶融ブレンドさせて得られる変性ポリアミド樹脂(A′)である。
【0026】
ポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(D)としては、単官能エポキシ化合物、イソシアネート基含有化合物、酸無水物基含有化合物、ハロゲン化アルキル基含有化合物などが挙げられるが、ポリアミド樹脂の末端アミノ基との反応性という観点で、好ましくは、単官能エポキシ化合物である。
【0027】
単官能エポキシ化合物としては、エチレンオキシド、エポキシプロパン、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、3−メチル−1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、4−メチル−1,2−エポキシペンタン、2,3−エポキシペンタン、3−メチル−1,2−エポキシペンタン、4−メチル−1,2−エポキシペンタン、4−メチル−2,3−エポキシペンタン、3−エチル−1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、2,3−エポキシヘキサン、3,4−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、4−メチル−1,2−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、3−エチル−1,2−エポキシヘキサン、3−プロピル−1,2−エポキシヘキサン、4−エチル−1,2−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、4−メチル−2,3−エポキシヘキサン、4−エチル−2,3−エポキシヘキサン、2−メチル−3,4−エポキシヘキサン、2,5−ジメチル−3,4−エポキシヘキサン、3−メチル−1,2−エポキシへプタン、4−メチル−1,2−エポキシヘプタン、5−メチル−1,2−エポキシへプタン、6−メチル−1,2−エポキシヘプタン、3−エチル−1,2−エポキシヘプタン、3−プロピル−1,2−エポキシヘプタン、3−ブチル−1,2−エポキシヘプタン、4−プロピル−2,3−エポキシヘプタン、5−エチル−1,2−エポキシへプタン、4−メチル−2,3−エポキシヘプタン、4−エチル−2,3−エポキシへプタン、4−プロピル−2,3−エポキシヘプタン、2−メチル−3,4−エポキシヘプタン、5−メチル−3,4−エポキシヘプタン、6−エチル−3,4−エポキシヘプタン、2,5−ジメチル−3,4−エポキシヘプタン、2−メチル−5−エチル−3,4−エポキシへプタン、1,2−エポキシヘプタン、2,3−エポキシヘプタン、3,4−エポキシへプタン、1,2−エポキシオクタン、2,3−エポキシオクタン、3,4−エポキシオクタン、4,5−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、2,3−エポキシノナン、3,4−エポキシノナン、4,5−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、2,3−エポキシデカン、3,4−エポキシデカン、4,5−エポキシデカン、5,6−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、2,3−エポキシウンデカン、3,4−エポキシウンデカン、5,6−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、2,3−エポキシドデカン、3,4−エポキシドデカン、4,5−エポキシドデカン、5,6−エポキシドデカン、6,7−エポキシドデカン、エポキシエチルベンゼン、1−フェニル−1,2−エポキシプロパン、3−フェニル−1,2−エポキシプロパン、1−フェニル−1,2−エポキシブタン、3−フェニル−1,2−エポキシブタン、4−フェニル−1,2−エポキシブタン、3−フェニル−1,2−エポキシペンタン、4−フェニル−1,2−エポキシペンタン、5−フェニル−1,2−エポキシペンタン、1−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、3−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、4−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、5−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、6−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、グリシドール、3,4−エポキシ−1−ブタノール、4,5−エポキシ−1−ペンタノール、5,6−エポキシ−1−ヘキサノール、6,7−エポキシ−1−ヘプタノール、7,8−エポキシ−1−オクタノール、8,9−エポキシ−1−ノナノール、9,10−エポキシ−1−デカノール、10,11−エポキシ−1−ウンデカノール、3,4−エポキシ−2−ブタノール、2,3−エポキシ−1−ブタノール、3,4−エポキシ−2−ペンタノール、2,3−エポキシ−1−ペンタノール、1,2−エポキシ−3−ペンタノール、2,3−エポキシ−4−メチル−1−ペンタノール、2,3−エポキシ−4,4−ジメチル−1−ペンタノール、2,3−エポキシ−1−ヘキサノール、3,4−エポキシ−2−ヘキサノール、4,5−エポキシ−3−ヘキサノール、1,2−エポキシ−3−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−メチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−エチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4,4−ジメチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4,4−ジエチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−メチル−1−ヘキサノ−ル、3,4−エポキシ−5−メチル−2−ヘキサノール、3,4−エポキシ−5,5−ジメチル−2−ヘキサノール、3,4−エポキシ−3−ヘプタノール、2,3−エポキシ−1−へプタノール、4,5−エポキシ−3−ヘプタノール、2,3−エポキシ−4−ヘプタノール、1,2−エポキシ−3−ヘプタノール、2,3−エポキシ−1−オクタノール、3,4−エポキシ−3−オクタノール、4,5−エポキシ−3−オクタノール、5,6−エポキシ−4−オクタノール、2,3−エポキシ−4−オクタノール、1,2−エポキシ−3−オクタノール、2,3−エポキシ−1−ノナノール、3,4−エポキシ−2−ノナノール、4,5−エポキシ−3−ノナノール、5,6−エポキシ−5−ノナノ−ル、3,4−エポキシ−5−ノナノール、2,3−エポキシ−4−ノナノール、1,2−エポキシ−3−ノナノール、2,3−エポキシ−1−デカノール、3,4−エポキシ−2−デカノール、4,5−エポキシ−3−デカノール、5,6−エポキシ−4−デカノール、6,7−エポキシ−5−デカノール、3,4−エポキシ−5−デカノール、2,3−エポキシ−4−デカノール、1,2−エポキシ−3−デカノール、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロヘプタン、1,2−エポキシシクロオクタン、1,2−エポキシシクロノナン、1,2−エポキシシクロデカン、1,2−エポキシシクロウンデカン、1,2−エポキシシクロドデカン、3,4−エポキシシクロペンテン、3,4−エポキシシクロヘキセン、3,4−エポキシシクロヘプテン、3,4−エポキシシクロオクテン、3,4−エポキシシクロノネン、1,2−エポキシシクロデセン、1,2−エポキシシクロウンデセン、1,2−エポキシシクロドデセン、1−ブトキシ−2,3−エポキシプロパン、1−アリルオキシ−2,3−エポキシプロパン、ポリエチレングリコールブチルグリシジルエーテル、2−エチルへキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル等が挙げられ、ポリアミド樹脂の相溶性の観点から、炭素数が3〜20、好ましくは3〜13であり、エーテルおよび/または水酸基を有するエポキシ化合物が特に好ましい。
【0028】
ポリアミド樹脂とポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(D)を溶融ブレンドする方法は、特に限定されないが、たとえば、ポリアミド樹脂とポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(D)を二軸混練機に投入し、ポリアミド樹脂の融点以上、好ましくは融点より20℃以上高い温度で、たとえば240℃で溶融ブレンドする。溶融ブレンドする時間は、たとえば、1〜10分、好ましくは2〜5分である。
【0029】
ポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(D)として単官能エポキシ化合物を溶融ブレンドした場合は、ポリアミド樹脂の末端アミノ基に単官能エポキシ化合物
【0030】
【化1】

【0031】
が結合し、たとえば末端アミノ基は次のように変化する。
【0032】
【化2】

【0033】
この反応により、ポリアミド樹脂の末端アミノ基は消滅または減少するので、酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴム(B)を高充填しても流動性を維持し、フィルム製膜が可能になる。
【0034】
ポリアミド樹脂の変性に用いるポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(D)の量は、ポリアミド樹脂100質量部に対して0.05〜5質量部であり、好ましくは1〜3質量部である。ポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(D)の量が少なすぎると、変性ゴム(B)を高充填した際の流動性改善効果が小さいため好ましくない。逆に、多すぎると、ポリアミド樹脂の低温耐久性(繰り返し疲労性)を悪化させるので好ましくない。
【0035】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、さらに、エチレン−ビニルアルコール共重合体(E)を含むことが好ましい。エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下「EVOH」ともいう。)を配合することにより、熱可塑性樹脂組成物のガスバリヤ性を向上させることができる。使用するエチレン−ビニルアルコール共重合体は、特に限定されるものでなく、市販のものを使用することができ、たとえば株式会社クラレ製EVAL、日本合成化学工業株式会社製ソアノールを使用することができる。
【0036】
本発明の熱可塑性樹脂組成物がエチレン−ビニルアルコール共重合体(E)を含む場合は、ポリアミド樹脂(A)とエチレン−ビニルアルコール共重合体(E)の質量比は90/10〜10/90であることが好ましく、より好ましくは80/20〜20/80である。エチレン−ビニルアルコール共重合体(E)が少ないとガスバリヤ性の向上がほとんど見られず、逆に多いと低温耐久性が極端に悪化するため好ましくない。
【0037】
本発明の熱可塑性樹脂組成物がエチレン−ビニルアルコール共重合体(E)を含む場合は、変性ゴム(B)の配合量は、ポリアミド樹脂(A)とエチレン−ビニルアルコール共重合体(E)の合計量100質量部に対して90〜180質量部であることが好ましく、より好ましくは95〜160質量部である。変性ゴム(B)の比率が少なすぎると、低温耐久性に劣り、逆に多すぎると、溶融時の流動性が極端に低下し、フィルム製膜性が大幅に悪化する。
【0038】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)および変性ゴム(B)を溶融ブレンドすることによって製造することができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物がエチレン−ビニルアルコール共重合体(E)を含む場合は、ポリアミド樹脂(A)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(E)および変性ゴム(B)を溶融ブレンドすることによって本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。
【0039】
また、あらかじめ第二級アミン(C)で変性された変性ゴム(B)を用いずに、ポリアミド樹脂(A)、第二級アミン(C)で変性されていない酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴム(以下「変性ゴム(B)」ともいう。)、および第二級アミン(C)を溶融ブレンドすることによって本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造することもできる。本発明の熱可塑性樹脂組成物がエチレン−ビニルアルコール共重合体(E)を含む場合は、ポリアミド樹脂(A)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(E)、変性ゴム(B)、および第二級アミン(C)を溶融ブレンドすることによって本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造することもできる。
【0040】
第二級アミン(C)の添加の時期は、ポリアミド樹脂(A)と変性ゴム(B)の溶融ブレンドと同時でもよいし、ポリアミド樹脂(A)と変性ゴム(B)の溶融ブレンドの後でもよい。すなわち、ポリアミド樹脂(A)、変性ゴム(B)および第二級アミン(C)を同時に溶融ブレンドしてもよいし、ポリアミド樹脂(A)と変性ゴム(B)を溶融ブレンドし、変性ゴム(B)が十分に分散したところで、第二級アミン(C)を加え、さらに溶融ブレンドしてもよい。好ましくは、ポリアミド樹脂(A)と変性ゴム(B)を溶融ブレンドし、変性ゴム(B)が十分に分散したところで、第二級アミン(C)を加え、さらに溶融ブレンドする。
【0041】
溶融ブレンドの温度は、ポリアミド樹脂の融点以上の温度であるが、好ましくはポリアミド樹脂の融点より20℃高い温度、たとえば200〜250℃である。溶融ブレンドの時間は、通常、1〜10分、好ましくは2〜5分である。
【0042】
ポリアミド樹脂(A)として変性ポリアミド樹脂(A′)を用いる場合には、あらかじめポリアミド樹脂100質量部とポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(D)0.05〜5質量部を溶融ブレンドして変性ポリアミド樹脂(A′)を調製し、その変性ポリアミド樹脂(A′)を、あらかじめ第二級アミン(C)で変性した変性ゴム(B)とともに溶融ブレンドするか、あるいは変性ポリアミド樹脂(A′)を、変性ゴム(B)および第二級アミン(C)とともに溶融ブレンドすることによって本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造することができる。
【0043】
本発明の熱可塑性樹脂組成物がエチレン−ビニルアルコール共重合体(E)を含む場合は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(E)は、好ましくは、ポリアミド樹脂(A)または変性ポリアミド樹脂(A′)と同時に配合する。
【0044】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の典型的な製造方法は、たとえば、次のとおりである。
まず、ポリアミド樹脂およびポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(D)を、二軸混練機で設定温度200〜250℃で1〜10分間混練して変性ポリアミド樹脂(A′)を調製し、次に調製した変性ポリアミド樹脂(A′)と変性ゴム(B)を設定温度200〜250℃の二軸混練機に投入し、変性ゴム(B)が分散したところで、第二級アミン(C)を投入して変性ゴム(B)を変性し、最後にその他の配合剤を加える。
本発明の熱可塑性樹脂組成物がエチレン−ビニルアルコール共重合体(E)を含む場合は、たとえば、ポリアミド樹脂およびポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(D)を、二軸混練機で設定温度200〜250℃で1〜10分間混練して変性ポリアミド樹脂(A′)を調製し、次に調製した変性ポリアミド樹脂(A′)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(E)および変性ゴム(B)を設定温度200〜250℃の二軸混練機に投入し、変性ゴム(B)が分散したところで、第二級アミン(C)を投入して変性ゴム(B)を変性し、最後にその他の配合剤を加える。
【0045】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、前記した成分に加えて、カーボンブラックやシリカなどのその他の補強剤(フィラー)、加硫または架橋剤、加硫又は架橋促進剤、可塑剤、各種オイル、老化防止剤などの樹脂およびゴム組成物用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0046】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、T型ダイス付きの押出機や、インフレーション成形機などでフィルムとすることができる。そのフィルムは、ガスバリヤ性、耐熱性、耐屈曲疲労性に優れるため、空気入りタイヤのインナーライナーとして好適に使用することができる。また、そのフィルムは、ジエン成分を含むゴム組成物シートと積層して、積層体とすることができる。
【0047】
本発明の積層体は、前記熱可塑性樹脂組成物のフィルムを少なくとも1層、およびジエン成分を含むゴム組成物のシートを少なくとも1層含む。ジエン成分を含むゴム組成物を構成するゴムとしては、天然ゴム、乳化重合スチレンブタジエンゴム、溶液重合スチレンブタジエンゴム、高シス−ブタジエンゴム、低シス−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、水素化ニトリルゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴムが挙げられるが、なかでもハロゲン化ブチルゴムが、本発明で得られる熱可塑性樹脂組成物のフィルムと、熱をかけることにより直接接着するという点で、好ましい。好ましくは、ゴム組成物中のポリマー成分のうち、ハロゲン化ブチルゴムが30〜100質量%である。ハロゲン化ブチルゴムの含有量が少ないと、本発明で得られる熱可塑性樹脂組成物のフィルムと、熱により直接に接着できず、接着剤等を介して接着する必要があるため好ましくない。
【0048】
本発明の積層体は、さらに粘接着剤層を含むことが好ましい。粘接着剤層は、好ましくは、ゴム組成物シート側に設ける。粘接着剤層を設けることにより、積層工程でのゴム組成物シートとの密着性・接着性の改善という利点がある。粘接着剤層を構成する粘接着剤としては、ポリアミド樹脂(A)もしくは変性ポリアミド樹脂(A′)または変性ゴム(B)と反応する官能基を有するポリマーとタック付与樹脂のブレンド物が挙げられるが、なかでもエポキシ化スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合物とテルペン樹脂のブレンド物が好ましい。
【0049】
また、ジエン成分を含むゴム組成物には、前記した成分に加えて、カーボンブラックやシリ力などのその他の補強剤(フィラー)、加硫または架橋剤、加硫又は架橋促進剤、可塑剤、各種オイル、老化防止剤などの樹脂およびゴム組成物用に一般に配合されている各種添加剤を配合することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0050】
本発明のタイヤは、前記熱可塑性樹脂組成物のフィルムまたは前記積層体を含むタイヤであり、好ましくは空気入りタイヤである。タイヤを製造する方法としては、慣用の方法を用いることができる。たとえば、本発明の熱可塑性樹脂組成物のフィルムを空気入りタイヤのインナーライナーとして用いる場合は、予め本発明の熱可塑性樹脂組成物を所定の幅と厚さのフィルム状に押し出し、それをタイヤ成形用ドラム上に円筒に貼りつける。その上に未加硫ゴムからなるカーカス層、ベルト層、トレッド層等の通常のタイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、ドラムを抜き去ってグリーンタイヤとする。次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより、所望の空気入りタイヤを製造することができる。
【0051】
本発明のホースは、前記熱可塑性樹脂組成物のフィルムまたは前記積層体を含むホースである。本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いてホースを製造する方法としては、慣用の方法を用いることができる。たとえば、次のようにしてホースを製造することができる。まず、本発明の熱可塑性樹脂組成物のペレットを使用し、予め離型剤を塗布したマンドレル上に、樹脂押出機によりクロスヘッド押出方式で、熱可塑性樹脂組成物を押し出し、内管を形成する。さらに内管上に他の本発明の熱可塑性樹脂組成物または一般の熱可塑性ゴム組成物を押し出し内管外層を形成してもよい。次に、内管上に必要に応じ、接着剤を塗布、スプレー等により施す。さらに、内管上に、編組機を使用して、補強糸または補強鋼線を編組する。必要に応じ補強層上に、外管との接着のために接着剤を塗布した後、本発明の熱可塑性樹脂組成物または他の一般的な熱可塑性ゴム組成物と同様にクロスヘッドの樹脂用押出機により押し出し、外管を形成する。最後にマンドレルを引き抜くと、ホースが得られる。内管上、または補強層上に塗布する接着剤としては、イソシアネート系、ウレタン系、フェノール樹脂系、レゾルシン系、塩化ゴム系、HRH系等が挙げられるが、イソシアネート系、ウレタン系が特に好ましい。
【実施例】
【0052】
(1)原材料
原材料として、次のものを用いた。
ポリアミド樹脂: 宇部興産株式会社製UBEナイロン1033B
エチレン−ビニルアルコール共重合体: 日本合成化学工業株式会社製「ソアノール」(登録商標)H4412B
変性ゴム: 三井化学株式会社製「タフマー」(登録商標)MH−7020
N−ヒドロキシエチル−ラウリルアミン: 日油株式会社製「ナイミーン」(登録商標)L−201
ジアルキルアミン: ライオンアクゾ株式会社製「アーミン」2HT(アルキル基組成:C12=1%、C13=3%、C16=30%、C18=65%、C20=1%)
3,3′−ジアミノジフェニルスルホン: 小西化学工業株式会社製3,3′−DAS
【0053】
(2)熱可塑性エラストマー組成物の調製
ポリアミド樹脂および変性ゴムを、表1に示す質量比率で、二軸混練機に投入し、混練機温度220℃で溶融ブレンドし、変性ゴムが分散したところで、表1に示す量のN−ヒドロキシエチル−ラウリルアミン、ジアルキルアミンまたは3,3′−ジアミノジフェニルスルホンを投入し溶融ブレンドした後、押出機から連続してストランド状に排出し、水冷後、カッターで切断することによりペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を得た。
さらに、ポリアミド樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、および変性ゴムを、表2に示す質量比率で、二軸混練機に投入し、混練機温度220℃で溶融ブレンドし、変性ゴムが分散したところで、表2に示す量のN−ヒドロキシエチル−ラウリルアミン、ジアルキルアミンまたは3,3′−ジアミノジフェニルスルホンを投入し溶融ブレンドした後、押出機から連続してストランド状に排出し、水冷後、カッターで切断することによりペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0054】
(3)熱可塑性エラストマー組成物の評価方法
得られた熱可塑性エラストマー組成物について、−35℃定歪試験により低温耐久性を評価した。
[−35℃定歪試験]
ペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を、200mm幅T型ダイス付40mmφ単軸押出機(株式会社プラ技研製)を用いて、押出温度C1/C2/C3/C4/ダイ=200/210/230/235/235℃、冷却ロール温度50℃、引き取り速度0.7m/分の押出条件で、平均厚み1mmのシートに成形した。次いでJIS 3号ダンベルで切断し、−35℃下で40%の繰り返し変形を与えた。5回の測定を行い、破断した回数の平均値を算出し、平均破断回数とする。平均破断回数が大きいほど、低温耐久性に優れる。
【0055】
(4)熱可塑性エラストマー組成物の評価結果
評価結果を表1および表2に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
比較例1は、第二級アミンを配合しなかったもの、すなわち変性ゴムが第二級アミンで変性されていないものである。
実施例1〜8(本発明の熱可塑性エラストマー組成物)は、比較例1に比べ、−35℃定歪試験による平均破断回数が大きく、低温耐久性に優れる。
比較例2は、熱可塑性エラストマー組成物のマトリックスがポリアミド樹脂とエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる場合において、第二級アミンを配合しなかったもの、すなわち変性ゴムが第二級アミンで変性されていないものである。
実施例9〜16(本発明の熱可塑性エラストマー組成物)は、比較例2に比べ、−35℃定歪試験による平均破断回数が大きく、低温耐久性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、タイヤ、特に空気入りタイヤのほか、各種樹脂ホースとして、またその他各種の気体(ガス・空気等)の透過制御に係わるゴム製品、たとえば、防舷材、ゴム袋、燃料タンク等に使用する積層体材料としても用いることができる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、特に、空気入りタイヤのインナーライナーに好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂(A)と酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴム(B)とを含む熱可塑性エラストマー組成物であって、酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴム(B)が第二級アミン(C)で変性されていることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
第二級アミン(C)が、構造式
−NH−R
を有する化合物であり、RおよびRの少なくとも一方が炭素数1〜30の直鎖アルキル基であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
請求項1記載の2級のアミノ基を有する化合物第二級アミン(C)が、構造式
−NH−R
(式中、Rは炭素数1〜30の直鎖アルキル基であり、Rは炭素数1〜30の炭化水素基または水酸基、スルホニル基、カルボニル基もしくはエーテル結合を有する炭素数1〜30の炭化水素基である。)
を有する化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴム(B)が、酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴム100質量部と第二級アミン(C)0.1〜5質量部とを溶融ブレンドさせて得られたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
さらにエチレン−ビニルアルコール共重合体(E)を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項6】
ポリアミド樹脂(A)が、ポリアミド樹脂100質量部に対してポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(D)0.05〜5質量部を、ポリアミド樹脂の融点以上で溶融ブレンドさせて得られる変性ポリアミド樹脂(A′)であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項7】
ポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(D)が単官能エポキシ化合物であることを特徴とする請求項6に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項8】
ポリアミド樹脂(A)が、ナイロン6、ナイロン66またはナイロン6/66であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項9】
酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴム(B)を構成するゴムが、エチレン−α−オレフィン共重合体またはエチレン−不飽和カルボン酸共重合体もしくはその誘導体であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項10】
酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴム(B)が、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、90〜180質量部であることを特徴とする請求項1〜4および6〜9のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項11】
ポリアミド樹脂(A)とエチレン−ビニルアルコール共重合体(E)の質量比が90/10〜10/90であり、ポリアミド樹脂(A)とエチレン−ビニルアルコール共重合体(E)の合計量100質量部に対して酸無水物基またはエポキシ基を有する変性ゴム(B)が90〜180質量部であることを特徴とする請求項5〜9のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物のフィルムを少なくとも1層、およびジエン成分を含むゴム組成物のシートを少なくとも1層含むことを特徴とする積層体。
【請求項13】
さらに粘接着剤層を含む請求項12に記載の積層体。
【請求項14】
ゴム組成物中のポリマー成分のうち、ハロゲン化ブチルゴムが30〜100質量%であることを特徴とする請求項12または13に記載の積層体。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物のフィルムまたは請求項12〜14のいずれか1項に記載の積層体を含むタイヤ。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物のフィルムまたは請求項12〜14のいずれか1項に記載の積層体を含むホース。

【公開番号】特開2012−46652(P2012−46652A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190642(P2010−190642)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】