説明

熱可塑性樹脂組成物

【課題】透明異物の混入が少なく、透明性、成形品の外観、耐熱性、耐候性、破断伸度や衝撃強度等の機械強度に優れた熱可塑性樹脂組成物の提供。
【解決手段】芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステル化合物の溶融重合によって得られる芳香族ポリカーボネートにおいて、10μm以上の透明異物数(N:単位は個/g)と粘度平均分子量(Mv)とが、下記(1)又は(2):
Mv≦21000の場合は、N≦exp(6.824×10−4×Mv−8.626)(1)
Mv>21000の場合は、 N≦exp(8.514×10−5×Mv+3.916)(2)
で表される関係式を満足することを特徴とする芳香族ポリカーボネートと熱安定剤、必要に応じ紫外線吸収剤、離型剤からなる熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステル化合物の溶融重合によって得られた、透明性、成形品表面外観、機械強度、熱安定性、耐侯性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリカーボネートは、耐衝撃性等の機械的性質に優れ、しかも熱的性質、電気的性質、透明性、成形性等にも優れており、各種機械部品、自動車部品等の用途に広く用いられている。特に、光ファイバー、レンズ、光学情報記録媒体等の光学用途への期待は大きく、種々の研究が盛んになされている。このような光学用途においては、異物含有率の低い熱可塑性樹脂組成物の出現が特に望まれている。
【0003】
芳香族ポリカーボネートの製造方法としては、ビスフェノール等の芳香族ジオールとホスゲンとを界面重縮合法において反応させる、いわゆるホスゲン法が工業化されている。しかし、ホスゲン法は人体に有害なホスゲンを用いなければならないこと、環境に対する負荷の高いジクロロメタン等の溶剤を必要をすること、また多量に副生する塩化ナトリウムのポリマー中への混入により、これを電子部品に用いたときの腐食等の問題点が指摘されている。一方、芳香族ジオール化合物と炭酸ジエステル化合物とを溶融状態でエステル交換し、副生するフェノール等の低分子量物を系外に取り除きながら芳香族ポリカーボネートを得る方法も、いわゆる溶融重合法又はエステル交換法として古くから知られている。溶融重合法は、界面重縮合法による上記のような問題点もなく、芳香族ポリカーボネートが製造できるという利点がある一方、ホスゲン法に比べて高温で重合を行うため、製品の芳香族ポリカーボネート中にヤケ異物やゲル状異物等の異物が発生し易いという問題がある。
【0004】
このような問題点を解決するために、芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステル化合物の溶融重合によって得られる芳香族ポリカーボネートに、添加剤を添加し押出機等で溶融混練した後に、外部のダストや焼け異物を取る目的で、ポリマーフィルターを通過させる方法が提案されている(例えば、特開平5−239334号公報、特開平6−234845号公報、特開2000−178355号公報、特許第3103652号公報等参照)。ところが、本発明者等が検討したところ、ポリマーフィルターを通過させてもなお樹脂中に10μm以上の透明異物がしばしば生成していることが判明した。また、この透明異物については、本質的にポリマー中に内在し、フィルターで濾過しようとしても捕集できないことが判明した。
【0005】
さらにもし、この透明異物が多発すると、特にCD−RやDVD等の光学情報記録媒体においては、記録エラーの原因となるだけでなく、成形品に外部から力が加わった場合、透明異物が破壊の核となって破断伸びや衝撃強度等の機械的強度が低下し、さらに熱安定性や耐侯性も悪化する。また、フィルムやシート表面ではフィッシュアイ(魚の目)として表れ、商品価値を著しく損なうことが判った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物を、特定条件下で溶融重合反応を行って得た芳香族ポリカーボネート(A)に熱安定剤(B)を配合し、さらに必要に応じて紫外線吸収剤(C)や離型剤(D)を配合することにより透明異物やヤケ発生が非常に少なく、機械的強度、透明性、外観、熱安定性、耐候性に優れた熱可塑性樹脂組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、透明性や機械的強度を低下させ、成形不良を起こし、情報記録媒体では記録エラーの原因となり、フィルムやシート表面ではフィッシュアイの原因となって商品価値を著しく損なう透明異物やヤケの生成及び混入を防止するため鋭意検討した。検討の結果、透明異物とヤケの原因はアルカリ金属化合物等のエステル交換触媒存在下、高温で溶融重合する段階で起こる副反応(架橋化反応)にあることが判明した。この副反応を抑制しながら、触媒で活性化される主反応(重縮合反応)を進行させるべく、反応条件を特定触媒量、特定温度範囲等に制御することによって、芳香族ポリカーボネートへの透明異物及びヤケの生成・混入を抑制する事ができ、さらこのようにして得られた芳香族ポリカーボネートに熱安定剤や紫外線吸収剤、離型剤を配合した熱可塑性樹脂組成物は、ヤケの進行を防止でき、機械的強度、透明性、外観、熱安定性、耐候性に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の要旨は、芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステル化合物の溶融重合によって得られる芳香族ポリカーボネートにおいて、10μm以上の透明異物数(N:単位は個/g)と粘度平均分子量(Mv)とが、下記(1)又は(2):
【0009】
[数1]
Mv≦21000の場合は、N≦exp(6.824×10−4×Mv−8.626) (1)
Mv>21000の場合は、N≦exp(8.514×10−5×Mv+3.916) (2)
【0010】
で表される関係式を満足する芳香族ポリカーボネート(A)100重量部に対し、熱安定剤(B)を0.0001〜1.0重量部配合し、更に必要に応じ紫外線吸収剤(C)や離型剤(D)を配合した熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、製品中への透明異物の混入を防止するため、透明性、成形品の外観が改良でき、さらに熱安定性、耐候性、さらに破断伸度、衝撃強度等の機械強度に優れた、熱可塑性樹脂組成物が得られるというものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。
芳香族ポリカーボネート(A)本発明で使用する芳香族ポリカーボネート(A)を製造する際の溶融重合の原料として、炭酸ジエステル化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物とが用いられる。
[炭酸ジエステル化合物]
原料の炭酸ジエステル化合物は、下記式(1)で示される。
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、R及びR’は、炭素数1〜18の、置換されていてもよい、脂肪族基又は芳香族基であり、RとR’とは、同一でも異なってもよい。)
【0015】
式(1)で表される炭酸ジエステル化合物の具体例としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート及びジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート等があるが、好ましくはジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネート、特にジフェニルカーボネートが好ましい。これらの炭酸ジエステル化合物は、単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。また、製法によって炭酸ジエステル化合物中に不純物として含まれることがある、ハロゲンイオンは、副反応である架橋構造生成反応を抑制しないだけでなく、触媒を被毒して主反応である重縮合反応を阻害するため、炭酸ジエステル化合物中のハロゲンイオンは、重量基準で、好ましくは30ppb以下、さらに好ましくは20ppb以下、中でも10ppb以下が好適である。
【0016】
また、上記のような炭酸ジエステル化合物と共に、好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量で、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルを使用してもよい。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が用いられる。このようなカルボン酸又はカルボン酸エステルを炭酸ジエステル化合物と併用した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
【0017】
[芳香族ジヒドロキシ化合物]
もう一つの原料である芳香族ジヒドロキシ化合物は、下記式(2)で示される。
【0018】
【化2】

【0019】
(式中、Bは、1〜15の炭素数を有する2価の炭化水素基、ハロゲン置換の2価の炭化水素基、−S−基、−SO2−基、−SO−基、−O−基又は−CO−基を示し、Xは、ハロゲン原子、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数1〜8のオキシアルキル基又は炭素数6〜18のオキシアリール基を示す。mは、0又は1であり、yは、0〜4の整数である。)
【0020】
式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−2,5−ジエトキシジフェニルエーテル等が例示される。これらの中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。また、これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独又は2種以上を混合して、用いることができる。
【0021】
炭酸ジエステル化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物との混合比率は、所望する芳香族ポリカーボネートの分子量と末端ヒドロキシ基量により決められる。末端ヒドロキシ基量は、製品ポリカーボネートの熱安定性と加水分解安定性に大きな影響を及ぼし、実用的な物性を持たせるためには1000ppm以下にすることが必要となる。従って、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して炭酸ジエステル化合物を等モル量以上用いるのが一般的であり、1.01〜1.30モル、好ましくは1.01〜1.20モル、中でも1.02〜1.15モルの範囲で用いられるのが望ましい。
【0022】
[エステル交換触媒]
溶融重合法により芳香族ポリカーボネートを製造する際には、通常エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒としては、主として、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が使用され、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物又はアミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能である。これらの触媒は、1種類で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
アルカリ金属化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムの水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩、酢酸塩、リン酸水素塩、フェニルリン酸塩等の無機アルカリ金属化合物や、ステアリン酸、安息香酸等の有機酸類、メタノール、エタノール等のアルコール類,石炭酸、ビスフェノールA等のフェノール類との塩等の有機アルカリ金属化合物等が挙げられる。アルカリ土類金属化合物としては、ベリリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムの水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩、酢酸塩等の無機アルカリ土類金属化合物や、有機酸類、アルコール類、フェノール類との塩等の有機アルカリ土類金属化合物等が挙げられる。
【0024】
塩基性ホウ素化合物の具体例としては、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素、等の水素化物、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、或いはストロンチウム塩等が挙げられる。
【0025】
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、又は四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0026】
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0027】
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
【0028】
触媒量は、通常、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、0.01〜10μモル、好ましくは0.05〜1μモル、さらに好ましくは0.1〜0.5μモル、特に好ましくは0.2〜0.35μモルの範囲で用いられる。この量より少なければ、所定の分子量、所定の末端ヒドロキシ基量のポリカーボネートを製造するのに長時間必要な重合活性が得られず、この量より多い場合は、ポリマー色相が悪化し、架橋構造生成反応による透明異物量も増大する傾向となる。特に、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いる場合、それらの金属量として好ましくは0.01〜2μモル、さらに好ましくは0.05〜1μモル、中でも0.1〜0.9μモルの範囲が特に好ましい。触媒量の反応速度への寄与としては、アルカリ金属化合物触媒を使用した場合、主反応には一次であるが、副反応(架橋構造生成)には二次で効いてくるため、Mvが20000以上の高分子量ポリカーボネートを生産する場合には、後述するように温度を高めにし、触媒量は少なめにする手法を採ることが好ましい。
【0029】
[透明異物]
本発明に関わる芳香族ポリカーボネート(A)は、芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステル化合物の溶融重合によって得られる芳香族ポリカーボネートにおいて、10μm以上の透明異物数(N:単位は個/g)と粘度平均分子量(Mv)とが、下記(1)又は(2):
【0030】
[数2]
Mv≦21000の場合は、N≦exp(6.824×10−4×Mv−8.626) (1)
Mv>21000の場合は、N≦exp(8.514×10−5×Mv+3.916) (2)
【0031】
で表される関係式を満足するものである。好ましくは、下記(1’)又は(2’):
【0032】
[数3]
Mv≦21000の場合は、N≦exp(6.52×10−4×Mv−9.087) (1’)
Mv>21000の場合は、N≦exp(1.115×10−4×Mv+2.179) (2’)
【0033】
で表される関係式を満足するものであり、更に好ましくは、下記(1”)又は(2”):
【0034】
[数4]
Mv≦21000の場合は、N≦exp(6.52×10−4×Mv−9.78) (1”)
Mv>21000の場合は、N≦exp(9.796×10−5×Mv+1.855) (2”)
【0035】
で表される関係式を満足するものであることが好ましい。
【0036】
本発明において、「10μm以上の透明異物数」は、次のようにして求める。すなわち、芳香族ポリカーボネートから製膜されたフィルム(厚み70μm)につき、実体顕微鏡(倍率200倍)を用いて、大きさが10μm以上の透明異物の総数を数え、1g当たりの異物数を算出し、「10μm以上の透明異物数」とする。測定に際し、核のない透明異物の平面的境界は、周辺との屈折率が異なることによって定め、その大きさは、該平面的境界上の2点間の最大距離とする。また、本発明において、「粘度平均分子量」は、次のようにして求める。すなわち、芳香族ポリカーボネートの塩化メチレン中、温度20℃の極限粘度[η]から、下記の式により「粘度平均分子量(Mv)」を算出する。
【0037】
[数5]
[η]=1.23×10−4Mv0.83
【0038】
[架橋構造単位]
溶融重合によって得られる芳香族ポリカーボネートは、その分子鎖上に、熱転移、脱炭酸、脱水縮合等の副反応によって生成した種々の架橋構造単位を有する。代表的なものを挙げれば、(a)下式(3)で示されるサリチル酸フェニル構造単位(以下、PSA単位と略す)、(b)下式(4)で示されるフェノキシ安息香酸構造単位(以下、PBA単位と略す)及び(c)下式(5)で示されるジフェニルエーテルジカルボン酸構造単位(以下、DCA単位と略す)がある。
【0039】
【化3】

【0040】
本発明に関わる芳香族ポリカーボネート(A)では、これら3種の架橋構造単位の総含有量が、ポリマー重量に対し2500ppm以下であることが好ましく、さらには2000ppm以下、特には1500ppm以下が好適である。これら3種の構造単位の総含有量が2500ppmより多いと、芳香族ポリカーボネート中の透明異物数が増加するだけでなく色調も悪化する。これらの架橋構造単位の含有量は、芳香族ポリカーボネートを重クロロホルム等の重水素化溶媒に溶解させて直接NMRで測定したり、芳香族ポリカーボネートを一旦加水分解し、主鎖のカーボネート結合を切断しモノマー単位にした後、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー等を測定したりすることにより求めることができる。この様な架橋構造単位の総含有量(Tc:単位重量ppm)と前述の10μ以上の透明異物数(N:単位個/g)とは、下記式:
【0041】
[数6]
Mv≦21000の場合、N=exp(2.616×10−3×Tc+1.518)
Mv>21000の場合、N=exp(8.109×10−4×Tc+4.613)
【0042】
で表される一定の比例関係を示すことから、透明異物の発生由来は、架橋化ポリマーであることが明解に判った。従って、透明異物を低減しようとすると、架橋化反応を抑制することが第一に必要なことと言える。
【0043】
また、架橋構造単位の含有量は、樹脂の溶融特性(特に非ニュートン性)に直接影響を与えるため、本発明に関わる芳香族ポリカーボネート(A)は、JISK7210に準拠し、下記式:
【0044】
[数7]
FRR=MVR(260/21.6)/MVR(260/2.16)
【0045】
(式中、MVR(260/21.6)は、260℃、荷重21.6kgの条件で測定したメルトボリュームフローレイト(MeltVolume−FlowRate)を示し、MVR(260/2.16)は、260℃、荷重2.16kgで測定したメルトボリュームフローレイトを示す。)
で表されるフローレイト比(FRR)が17以下であることが好ましく、更に好ましくは15以下である。FRRが17より大きいと、精密成形品の射出成形が困難になるので好ましくない。
【0046】
[溶融重合]
本発明に関わる芳香族ポリカーボネート(A)は、上述のような芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステル化合物を原料とし、溶融重合により、オリゴマー化工程とポリマー化工程など、二段階以上の多段工程で製造される。一般的には反応温度140〜320℃、反応時間0.1〜5時間、常圧より減圧度を上げながら、副生するモノフェノール化合物をラインから連続的に除去しながら反応を行う。必要に応じて窒素等の不活性ガスを流通させることもできる。また、モノフェノール化合物に同伴する原料を反応槽に戻すために分留塔を反応器に付設することもできる。オリゴマー化工程の反応温度は通常100〜300℃、好ましくは180〜280℃の範囲で、反応圧力は大気圧〜133Paまでの範囲である。一方、ポリマー化工程の最終段階での反応温度は芳香族ポリカーボネートの分子量、色調、透明異物量等、要求性能により決定され、通常200〜320℃であるが、前述の架橋構造生成反応は高温になるほど旺盛となるので、可能な限り低温で反応終了することが好ましい。一方、Mv=20000以上の芳香族ポリカーボネートを得るには、反応温度を高くする必要があるため、最も反応温度が高い段階で、通常250〜320℃、好ましくは260℃〜300℃、さらに好ましくは260〜280℃、特に好ましくは260〜275℃、中でも260〜270℃が好適である。さらに、外部加熱温度も架橋構造生成に影響を及ぼすため、好ましくは320℃以下、特に好ましくは300℃以下、さらに好ましくは295℃以下、中でも290℃以下が好適である。
【0047】
また、ポリマー化工程の最終段階での反応圧力も芳香族ポリカーボネートの分子量、色調、透明異物量等、要求性能により決定されるが、本発明の芳香族ポリカーボネートを得るためには300Pa以下であることが好ましく、特にMvが20000以上の高分子量の芳香族ポリカーボネートを得るには、透明異物の生成を抑制するため、樹脂が高温にさらされる時間を短くする必要があるので、好ましくは100Pa以下、さらに好ましくは70Pa以下、特には50Pa以下が好適である。各段階の反応時間は、反応の進行の程度により適宜定められるが、好ましくはオリゴマー化工程、ポリマー化工程トータルで0.1〜10時間、中でも1〜6時間が最適であり、特に反応温度の最も高い段階での滞留時間は、透明異物生成に影響が大きいため、好ましくは0.1〜5時間、更に好ましくは0.2〜3時間、中でも0.3〜2時間が好適である。
【0048】
本発明で使用する芳香族ポリカーボネート(A)の分子量に特に制限はないが、実用上の物性を得るためには、通常、粘度平均分子量(Mv)が、14000〜60000、中でも15000〜50000が好ましく、特に耐衝撃性や機械的強度、成形性の観点からは、15000〜40000、中でも15000〜30000、特には16000〜30000、さらには20000〜30000が好適である。
【0049】
反応の方式は、バッチ式、連続式、又はバッチ式と連続式の組合せのいずれでもよい。使用する装置は、槽型、管型又は塔型のいずれの形式であってもよく、例えば、各種の撹拌翼を具備した竪型重合槽、横型1軸タイプの重合槽又は/及び横型2軸タイプの重合槽等を使用することができる。反応は、実質的に無酸素下で行われることが好ましく、例えば、運転開始前に原料調整槽、反応器及び配管内を窒素ガス等の不活性ガスで置換しておく。通常、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物との溶融混合物を、竪型反応器に供給する。触媒は、原料とは別のラインで第1反応槽に直接供給してもよいし、第1反応槽に入る手前の配管内で、スタティックミキサー等により原料と混合した状態で供給させてもよい。必要に応じて、触媒を溶解又は懸濁するための溶媒が用いられる。好ましい溶媒としては、水、アセトン、フェノール等が挙げられる。
【0050】
重合液供給口は、反応槽側壁液相部にあり、抜き出し口は、反応槽底部にあるのが好ましい。また、各槽から反応液を連続して抜き出す方法は、落差を利用する方法、圧力差を利用する方法、ギアポンプ等の送液ポンプを用いる方法等、反応液の物性に適応した方法で行うのが好ましい。特に滞留部のある構造は本発明で使用する芳香族ポリカーボネートの製造には適さないので、極力回避しなければならない。
【0051】
本発明に使用される芳香族ポリカーボネートにおいては、溶融重合による製造の際にアルカリ金属化合物等のエステル交換触媒を用いた場合には、芳香族ポリカーボネート中に残存する触媒を中和するために、酸性化合物、特にイオウ含有酸性化合物を、触媒金属1原子に対して0.5〜10当量、好ましくは1〜5当量を添加することができる。すなわち、芳香族ポリカーボネートの重量に対しては、通常0.01〜20ppm、好ましくは0.1〜10ppm、さらに好ましくは3〜7ppm添加する。
【0052】
イオウ含有酸性化合物の例としては、スルホン酸、スルフィン酸又はそれらのエステル誘導体であり、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びドデシルベンゼンスルホン酸、それらのメチル、エチル、ブチル、t−ブチル、オクチル、ドデシル、フェニル、ベンジル、フェネチル等のエステル類、ベンゼンスルフィン酸、トルエンスルフィン酸、ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。これらの化合物の内、p−トルエンスルホン酸のエステル又はベンゼンスルホン酸のエステルが好ましく、これらの化合物を2種以上使用してもよい。さらに、これらの化合物のアルカリ金属塩を、これらの化合物と併用すると、分散性が向上し失活効果が高まるので好ましい。併用する量としては、非アルカリ金属塩に対してアルカリ金属塩を、重量比で0.3〜3倍程度の量用いることが好ましい。
【0053】
イオウ含有酸性化合物の芳香族ポリカーボネートへの添加方法は、任意の方法により行うことができる。例えば、イオウ含有酸性化合物を、直接又は希釈剤で希釈して、溶融又は固体状態にある芳香族ポリカーボネートに添加し、分散させることができる。具体的には、重縮合反応器中、反応器からの移送ライン中、押出機中に供給して混合することができ、通常は押出機中に供給される。また、ミキサー等で、芳香族ポリカーボネートや、他種ポリマーのペレット、フレーク、粉末等と混合後、押出機に供給して混練することもできる。これらのうち芳香族ポリカーボネートのフレークに、イオウ含有酸性化合物の原液を添加し、ミキサー等で混合後、マスターバッチとして添加することが好ましい。さらに、添加の際には、重量フィーダー等を用いて、添加量を精度良く制御することが好ましい。
【0054】
熱安定剤(B)本発明で使用する熱安定剤(B)としては、例えば、ヒンダードフェノール化合物、リン化合物、イオウ化合物、エポキシ化合物、ヒンダードアミン化合物等が挙げられる。これらの中で、ヒンダードフェノール化合物及びリン化合物から選ばれた少なくとも1種の熱安定剤が好ましく用いられる。
【0055】
ヒンダードフェノール化合物としては、下記式(6)で示されるものであることが好ましい。
【0056】
【化4】

【0057】
(式(6)中、R1,R2は、炭素数1〜10の炭化水素基であり、それぞれ同一でも異なっていても良く、Yは、エステル基、エーテル基、アミド基から選ばれた官能基及び/又はリン原子を含有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、Zは、酸素原子及び/又は窒素原子を含有してもよい炭素数1〜6の炭化水素基、イオウ原子又は単結合であり、gは、1〜4の整数を示す。)
【0058】
具体的には、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)等が挙げられる。これらの中で、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3’,5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカンが好ましい。
【0059】
リン化合物は、3価のリン化合物であることが好ましく、特に亜リン酸エステル中の少なくとも1つのエステルがフェノール及び/又は炭素数1〜25のアルキル基を少なくとも1つ有するフェノールでエステル化された亜リン酸エステル、又はテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジホスホナイトから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。亜リン酸エステルの具体例としては、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジトリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、トリスノニルフェニルホスファイト、ジノニルフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フッ化ホスファイト、2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、モノノニルフェノール及びジノニルフェノールからなる亜リン酸エステル、さらに前記式(6)に示したヒンダードフェノールを有する亜リン酸エステル等を挙げることができる。本発明においては、リン化合物として、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジホスホナイト、又はトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイトが好ましい。
【0060】
熱安定剤(B)の配合量は、芳香族ポリカーボネート(A)100重量部に対して0.0001〜1.0重量部であり、好ましくは0.4重量部以下である。1.0重量部を超えると耐加水分解性が悪化する等の問題があり、また、熱安定剤(B)の配合量が0.0001重量部より少ないと効果が小さいので好ましくない。熱安定剤(B)を併用する場合の配合比率は任意に決定することができ、また、いずれを使用するか、又は併用するかは、芳香族ポリカーボネートの用途等によって適宜決定される。例えば、リン化合物は、一般に芳香族ポリカーボネートを成形する際の高温下における滞留安定性、及び成形品の使用時の耐熱安定性に効果が高く、フェノール化合物は、一般に耐熱老化性等の芳香族ポリカーボネートを成形品とした後の使用時の耐熱安定性に効果が高い。また、リン化合物とフェノール化合物を併用することによって、着色性の改良効果が高まる。
【0061】
本発明に関わる芳香族ポリカーボネート(A)に熱安定剤(B)を配合した熱可塑性樹脂組成物は、JISK7210に準拠し、下記式:
【0062】
[数8]
FRR=MVR(260/21.6)/MVR(260/2.16)
【0063】
(式中、MVR(260/21.6)は、260℃、荷重21.6kgの条件で測定したメルトボリュームフローレイト(MeltVolume−FlowRate)を示し、MVR(260/2.16)は、260℃、荷重2.16kgで測定したメルトボリュームフローレイトを示す。)
で表されるフローレイト比(FRR)が17以下であることが好ましく、更に好ましくは15以下である。FRRが17より大きいと、精密成形品の射出成形が困難になるので好ましくない。
【0064】
他の添加剤本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて紫外線吸収剤(C)、離型剤(D)から選ばれた少なくとも1種の添加剤を配合することができる。紫外線吸収剤(C)としては、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛等の無機紫外線吸収剤の他、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物等の有機紫外線吸収剤が挙げられる。本発明では、これらのうち有機紫外線吸収剤が好ましく、特にベンゾトリアゾール化合物、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,1−ベンゾキサジン−4−オン]、[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−プロパンジオイックアシッド−ジメチルエステルから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0065】
ベンゾトリアゾール化合物としては、下記式(7)で示されるもの及びメチル−3−〔3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネート−ポリエチレングリコールとの縮合物が好ましい。
【0066】
【化5】

【0067】
(式(7)中、R3〜R6は、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Q1及びQ2は、水素原子、炭素数1〜40の窒素原子及び/又は酸素原子を含有してもよい炭化水素基を示す。)
【0068】
該式(7)のベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、2−ビス(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−t−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、[メチル−3−〔3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネート−ポリエチレングリコール]縮合物、さらには下記式(8)に示す化合物、等を挙げることができる。
【0069】
【化6】

【0070】
これらの中で、特に好ましいものは、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、上記式(5)の化合物、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノールである。
【0071】
紫外線吸収剤(C)の配合量は、ポリカーボネート100重量部に対して5重量部以下であり、好ましくは1重量部以下である。5重量部を超えると射出成形時の金型汚染等の問題がある。該紫外線吸収剤は1種でも使用可能であるが、複数併用して使用することもできる。
【0072】
離型剤(D)としては、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルから選ばれた少なくとも1種の化合物である。これらの中で、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステルから選ばれた少なくとも1種が好ましく用いられる。
【0073】
脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸は、脂環式カルボン酸も包含する。このうち好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36のモノ又はジカルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がさらに好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
【0074】
脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸成分としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、脂肪族カルボン酸エステルを構成するアルコール成分としては、飽和又は不飽和の1価アルコール、飽和又は不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコール又は多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの脂肪族カルボン酸エステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸オクチルドデシル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートを挙げることができる。
【0075】
該離型剤(D)の配合量は、ポリカーボネート100重量部に対して5重量部以下であり、好ましくは1重量部以下である。5重量部を超えると耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染等の問題がある。該離型剤は1種でも使用可能であるが、複数併用して使用することもできる。
【0076】
この他、本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲で公知の技術である水添加、染料、顔料、帯電防止剤、防曇剤、有機・無機充填剤、難燃剤、他の熱可塑性樹脂等を添加することが出来る。これらの添加は、熱安定剤(B)や、紫外線吸収剤(C)、離形剤(D)等と同時、又は別々に添加することができるが、ベント付押出機で実施する場合は、前述のように触媒中和の目的で添加される酸性化合物と同時に添加しても良いが、酸性化合物を最初に添加、混練した後、他の添加剤を添加、混練することが好ましい。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本発明に関わる芳香族ポリカーボネート(A)及びその原料の分析は、下記の測定方法により行った。
【0078】
(1)ジフェニルカーボネート中の塩素イオン含有量
ジフェニルカーボネート(DPC)約5gを精秤してトルエン10mLに加え、60℃で溶解後、超純水(塩素イオンを含有しないイオン交換水)10mLを添加し、23℃の恒温室でマグネチックスターラーを用い1000rpmで10分間攪拌した後、水相を分離、水相中の塩素イオンをイオンクロマトグラフィーで定量した。分析結果はDPCの重量に対する塩素イオンの重量を、ppb単位で表した。
【0079】
(2)粘度平均分子量(Mv)
芳香族ポリカーボネートを濃度(C)0.6g/dl塩化メチレン溶液とし、ウベローデ粘度計を用いて、温度20℃で測定した比粘度(ηsp)から、下記の両式
【0080】
[数9]
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10−4Mv0.83
【0081】
を用いて算出した。
(3)架橋構造単位
(a)加水分解処理:芳香族ポリカーボネート1gを、塩化メチレン100mlに溶解した後、28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液18ml、メタノール80mlを加え、さらに純水25mlを添加した後、室温で1時間攪拌して完全に加水分解した。その後、1規定塩酸を加え、塩化メチレン層を分離して、加水分解物を得た。
【0082】
(b)液相クロマトグラフィー:(a)で得られた加水分解物1gをアセトニトリル10mlに溶解し、逆相液体クロマトグラフィーにより測定した。逆相液体クロマトグラフィーは、溶離液としてアセトニトリルと10mM酢酸アンモニウム水溶液とからなる混合溶媒を用い、アセトニトリル/10mM酢酸アンモニウム水溶液比率を20/80からスタートし80/20までグラジュエントする条件下、カラム温度40℃で測定を行い、検出は波長280nmのUV検出器((株)島津製作所製、商品名:SPD−6A)を用い、定量はBPAの検量線から各ピーク面積をBPA換算の重量に変換し加水分解前のポリマー重量に対する重量として求めた。なお、ピークの同定は、Agilent(株)製LC−MS(商品名:Agilent−1100)及び日本電子製NMR(商品名:AL−400)を用いて行った。
【0083】
(4)10μm以上の透明異物数(N:単位は個/g)
芳香族ポリカーボネートを窒素雰囲気下、120℃で6時間以上乾燥した後、(株)いすず化工社製、単軸30mm押出機を用いて、厚み70μmのフィルムを製膜し、9cm×50cm範囲(約4g)の試験片5枚を切り出し、実体顕微鏡を用いて、各試験片の核のない透明異物(=フィッシュアイ)をマーキングし、倍率200倍で大きさと数を測定した。測定に際し、核のない透明異物の平面的境界は、周辺との屈折率が異なることによって定め、その大きさは、該平面的境界線上の2点間の最大距離とした。大きさが10μm以上の透明異物の総数を数え、1g当たりの異物数を算出し、「10μm以上の透明異物数」とした。
(5)フィルム外観検査上記(4)で得られたフィルムを目視で観察、評価した。
【0084】
実施例1
窒素ガス雰囲気下、ビスフェノールAとジフェニルカーボネートとを、一定のモル比(DPC/BPA=1.050)で混合し、140℃に加熱して、溶融混合物を得た。これを、140℃に加熱した原料導入管を介して、常圧、窒素雰囲気下、220℃に制御した第1竪型撹拌重合槽内に連続供給した。平均滞留時間が60分になるように、槽底部のポリマー排出ラインに設けられたバルブ開度を制御しつつ、液面レベルを一定に保った。また、上記原料混合物の供給を開始すると同時に、触媒として炭酸セシウム水溶液を、ビスフェノールA1モルに対し、0.60μモルの割合で連続供給した。
【0085】
槽底より排出された重合液は、引き続き第2、第3及び第4の竪型撹拌重合槽並びに第5の横型撹拌重合槽に、逐次、連続供給された。反応の間、各槽の平均滞留時間が60分になるように、液面レベルを制御し、また同時に副生するフェノールの留去も行った。第2〜5重合槽の重合条件は、それぞれ、第2重合槽(220℃、13332Pa)、第3重合槽(240℃、2000Pa)、第4重合槽(270℃、67Pa)、第5重合槽(285℃、27Pa)で、反応の進行とともに高温、高真空、低撹拌速度に条件を設定した。芳香族ポリカーボネートの製造速度は、50kg/Hrである。こうして得られた芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量、10μm以上の透明異物数、及び架橋構造含有率を測定し、表1に示した。また、表1には、以上のビスフェノールAとジフェニルカーボネートの混合比、各重合槽の温度、圧力、滞留時間、触媒濃度等をまとめて示した。
【0086】
次に、第5重合槽から得られた芳香族ポリカーボネートを溶融状態のままで、ギヤポンプにて2軸押出機(L/D=42、バレル温度240℃)に導入し、第一供給口からp−トルエンスルホン酸ブチルを7ppm添加し、さらに第二供給口から表1に示した熱安定剤を添加した後、リーフディスク型ポリマーフィルターを通してペレット化した。このポリマーフィルターは、絶対濾過精度10μmの織金網製のリーフディスク135枚をセンターポストに装着したもので、ポリマー融液通液前に、流速5ml/min、36時間、窒素雰囲気下で280℃に昇温して、使用した。得られた熱可塑性樹脂組成物ペレットを以下の方法で評価した結果を表2に示した。
【0087】
(6)フローレイト比(FRR)
タカラ工業(株)製メルトインデクサーを用いて、熱可塑性樹脂組成物ペレットを260℃、荷重21.6kgの条件で測定した単位時間当たりの溶融流動体積MVR(260/21.6)と、260℃、荷重2.16kgで測定した単位時間当たりの溶融流動体積MVR(260/2.16)とを用い、下式によりフローレート比(FRR)を求めた。
【0088】
[数10]
FRR=MVR(260/21.6)/MVR(260/2.16)
【0089】
(7)初期色相熱可塑性樹脂組成物ペレットを120℃、4時間乾燥した後、(株)名機製作所製射出成形機(商品名:M150A−IISJ)を用いて3mm厚成形品を、320℃、成形サイクル1分間の条件で射出成形し、分光式色彩計(日本電色工業機株式会社製、商品名:SE2000)でYI値を測定した。このYI値が大きいほど着色していることを示す。
(8)320℃耐熱試験熱可塑性樹脂組成物ペレットを120℃、4時間乾燥した後、(株)名機製作所製射出成形機(商品名:M150AII−SJ)を用いて3mm厚成型品を、320℃、成形サイクル10分間の条件で射出成形し、この条件の5ショット目の成型品について、日本電色工業機株式会社製分光式色彩計(商品名:SE2000)により透過法でYIを測定し、さらに目視によりヤケゴミを観察し、次の3段階に評価した。
○ヤケゴミなし△ヤケゴミ少しあり×ヤケゴミ多い
【0090】
(9)破断伸び、衝撃強度熱可塑性樹脂組成物ペレットを120℃、4時間乾燥した後、(株)名機製作所製射出成形機(商品名:M150AII−SJ)を用いて320℃、成形サイクル1分間の条件でASTMD1822の規定による1.6mm厚Lタイプ引張り衝撃試験片及びASTMD638の規定による3.2mm厚、タイプ1引張り試験片を成形し、衝撃強度と破断伸びを測定した。
(10)シートのフィッシュアイ熱可塑性樹脂組成物ペレットを280℃の温度に設定したスクリュー径65mmのベント付押出機で溶融混練し、275℃に設定した幅600mmのTダイを通し、表面温度が130℃に設定された2本のポリッシングロールで挟圧しながら冷却し、厚さ0.5mmのシートを押出し、目視によりフィッシュアイを観察し、次の3段階に評価した。
○:フィッシュアイなし△:フィッシュアイ少しあり×:フィッシュアイ多い
(11)耐候性試験前記(7)で初期色相を測定した成形片を、キセノンウエザーメーターを用いて、ブラックパネル温度63℃の条件で600時間処理し、処理後のYIを測定した。
【0091】
実施例2〜3
ビスフェノールAとジフェニルカーボネートとを、表1のモル比で混合し、各重合槽の温度、圧力、滞留時間、触媒の種類と濃度、添加する熱安定剤の種類と添加量を表1の条件で行った以外は、実施例1と同様な操作を行った。得られた熱可塑性樹脂組成物ペレットの評価結果を表2に示した。但し、実施例3では、シートのフィッシュアイの評価において、溶融混練時の設定温度を295℃、Tダイの設定温度を285℃として実施した。
比較例1熱安定剤を添加しない以外は、実施例2と同様な操作をおこなった。得られた熱可塑性樹脂組成物ペレットの評価結果を表2に示した。
【0092】
比較例2〜3
ビスフェノールAとジフェニルカーボネートとを、表1のモル比で混合し、各重合槽の温度、圧力、滞留時間、触媒種類と濃度を表1の条件で行った以外は、実施例1と同様な操作を行った。得られた熱可塑性樹脂組成物ペレットの評価結果を表2に示した。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
なお、表1中の熱安定剤A及びBとして使用した熱安定剤1〜4は、それぞれ以下のものを表す。
[熱安定剤A(ヒンダードフェノール化合物)]
熱安定剤1:n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名:IRGANOX1076、チバスペシャリティケミカルズ社製)
熱安定剤2:ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX1010、チバスペシャリティケミカルズ社製)
[熱安定剤B(リン化合物)]
熱安定剤3:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名:アデカスタブ2112、旭電化(株)製)
熱安定剤4:2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(商品名:HP10、旭電化(株)製)
【0096】
実施例4〜6
実施例1〜3の組成物に、さらに紫外線吸収剤を、表3に従って、二軸押出機の第2供給口から添加した以外は、実施例1と同様な操作を行った。得られた熱可塑性樹脂組成物ペレットの評価結果を表3に示した。但し、実施例6では、シートのフィッシュアイの評価において、溶融混練時の設定温度を295℃、Tダイの設定温度を285℃とした。
比較例4〜6比較例1〜3の組成物に、さらに紫外線吸収剤を、表3に従って、二軸押出機の第2供給口から添加した以外は、比較例1〜3と同様な操作を行った。得られた熱可塑性樹脂組成物ペレットの評価結果を表3に示した。
【0097】
【表3】

【0098】
なお、表3中で紫外線吸収剤として使用したUV1〜UV3は、それぞれ以下のものを表す。
UV1:2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名:シーソーブ709、シプロ化成(株)製)
UV2:2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(商品名:TINUVIN234、チバスペシャリティケミカルズ社製)
UV3:[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−プロパンジオイックアシッド−ジメチルエステル(商品名:SanduvorPR25、クラリアント社製)
【0099】
実施例7〜9
実施例1〜3の組成物に、さらに離型剤を、表4に従って、二軸押出機の第2供給口から添加した以外は、実施例1と同様な操作を行った。得られた熱可塑性樹脂組成物ペレットの評価結果を表4に示した。但し、実施例9では、シートのフィッシュアイの評価において、溶融混練時の設定温度を295℃、Tダイの設定温度を285℃とした。
比較例7〜9比較例1〜3の組成物に、さらに離型剤を、表4に従って、二軸押出機の第2供給口から添加した以外は、比較例1〜3と同様な操作を行った。得られた熱可塑性樹脂組成物ペレットの評価結果を表4に示した。
【0100】
【表4】

【0101】
なお、表4において離型剤として使用した離型剤1〜離型剤5はそれぞれ以下のものを表す。
離型剤1:グリセリンモノステアレート(商品名:リケーマルS−100A、理研ビタミン(株)製)
離型剤2:ペンタエリスリトールテトラステアレート(商品名:ユニスターH−476、日本油脂(株)製)
離型剤3:蜜ロウ(商品名:ゴールデンブランド、三木化学工業(株)製)
離型剤4:ペンタエリスリトールジステアレート(商品名:ユニスターH−476D、日本油脂(株)製)離型剤5:ステアリン酸(商品名:ユニスターNAA180、日本油脂(株)製)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステル化合物の溶融重合によって得られる芳香族ポリカーボネートにおいて、10μm以上の透明異物数(N:単位は個/g)と粘度平均分子量(Mv)とが、下記(1)又は(2):
[数1]
Mv≦21000の場合は、N≦exp(6.824×10−4×Mv−8.626) (1)
Mv>21000の場合は、N≦exp(8.514×10−5×Mv+3.916) (2)
で表される関係式を満足する芳香族ポリカーボネート(A)100重量部に対し、熱安定剤(B)を0.0001〜1.0重量部配合した熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
JISK7210に準拠し、下記式で表されるフローレイト比(FRR)が17以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[数2]
FRR=MVR(260/21.6)/MVR(260/2.16)
【請求項3】
架橋構造単位の総含有量が、2500ppm以下である芳香族ポリカーボネート(A)を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
熱安定剤(B)がヒンダードフェノール化合物及びリン化合物から選ばれた少なくとも一種の化合物であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
紫外線吸収剤(C)及び離型剤(D)から選ばれた少なくとも1種の添加剤を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
紫外線吸収剤(C)が、ベンゾトリアゾール化合物、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,1−ベンゾキサジン−4−オン]、[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−プロパンジオイックアシッド−ジメチルエステルから選ばれた少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
離型剤(D)が、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステルから選ばれた少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物。


【公開番号】特開2013−10973(P2013−10973A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−231220(P2012−231220)
【出願日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【分割の表示】特願2001−291379(P2001−291379)の分割
【原出願日】平成13年9月25日(2001.9.25)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】