説明

熱可塑性発泡体の層を有する部品の回転成形方法

回転形成によって形成される発泡層は、発泡性重合体が加熱され、発泡温度に達する前に加熱が中断されることによって構成される。鋳型1と先に形成された層とから成るシステムの熱慣性によって加熱が完了するが、無秩序な発泡を起こす原因とはない。発泡層は、均一で接着している。発泡層を被覆している稠密層は異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性発泡から成る層を備えた部品を回転成形する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転成形技術(rotomoulding or rotational moulding technique)は、ドラム、カヤック、玩具、ポット、ごみビン、タンク又は道路設備のような空洞体の成形に用いられる。この方法は、外形に応じたキャビティを有する鋳型によって形成される成形体の材料を所定量注入することから成り、かつ、この鋳型は、2軸回転装置に取り付けられ、該2軸回転装置は、重力により成形材料が鋳型内面に分配されるように始動される。次いで、鋳型は、そのポリマーを溶融させるために加熱される。加熱装置のスイッチが切られると、その後の冷却により鋳型の形状通りにポリマーが凝固する。最終段階では、鋳型の回転を停止し、成形体を鋳型から取り出すために鋳型を開く。
【0003】
成形体が複数の層によって構成される場合、所望の多積層となるまで各層毎に上述したような工程が繰り返される。次層を形成する材料は、前の層が形成された後、鋳型に加えられるか、あるいは、中身を適切な時に取り出すため適宜開閉可能に設定された断熱鋳型内に予め存在していてもよい。
【0004】
熱可塑性ポリマー発泡体の層を含む構成体は、部品の断熱性、耐衝撃性、あるいは軽量化を向上するとされている。ポリマーは、分解発熱性の発泡剤を配合させることによって発泡形成を可能としたものである。しかし、回転成形する際、発泡の程度を制御することは難しく、特別な予防措置のないまま回転成形すると、発泡体の厚さは予測できないもの、かつ不均一なものとなり、そのため、隣接層への接着力及び品質は不確実なものとなる。
【0005】
そのような材料に適合した別の成形方法が特許文献1に開示されている。この方法では、部品の曲面に対応する凹所を有した特別な鋳型が用いられる。部品の外面だけでなく内面をも定める。成形体の内側表皮及び外側表皮を形成することになる層の材料が単独で注入され、通常と同様に回転される。それが鋳型の内面に再度分配され、二つの層が形成される。溶かされ、次いで固化されることによって表皮が再度構成され、その後、表皮に形成された小孔を介して鋳型内に発泡剤が加えられる。したがって、発泡剤は、表皮によって画定された中空部に流入し、かつ、前記小孔が閉鎖するため、発泡中に前記中空部全体を占めることになる。これは、発泡層の形状及び厚さの不均一さが生じないことを保証するものではあるが、この形成方法の主な欠点は、鋳型には、より複雑な形があって、表皮は、同じ厚さで同様の構成を成す必要があるということである。
【特許文献1】米国特許第36978211号明細書
【0006】
上記の場合の変形方法では、表皮形成材料と発泡剤とを同時に鋳型内に載置させる工程も含む。発泡剤は表皮が形成された際に開く箱又はバック内に入れられている。他の方法において、二種類の材料(表皮材料及び発泡剤)を鋳型内に同時に注ぎ、混合して粉体又はペレット状にする工程から成る。ポリマーは、サイズ等級付け、粘性あるいは溶融温度の違いによって2つのカテゴリーに分けられる。しかし、上述した方法では、発泡を制御することができないことから、形成すべき部品の凹部に適合する鋳型を使用する必要があり、そして、同じ厚さを有し且つ同様の性質を成す内側層と外側層とを形成しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような欠点を克服するためにされたもので、コンパクトポリマーから成る少なくとも一つの第一の層を有し、該第一の層が、発泡剤からなる第二の層あるいはその他の複数の層を囲んでなる部品を、該部品の外表面のみに適合する鋳型によって製造することに用いることができる。そして、完全に閉じているか、実質的に閉じた状態となるキャビティを有した部品。言い換えると、キャビティが逆傾斜(back draft)を持っており、キャビティの表面に適合した型を抜くことができないという従来方法を実施する上での制限となってた部品成形が可能となる。層同士、特に表皮同士は、互いに異なる性質及び厚みのものとすることが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主たる特徴は、実施例にあるように、発泡層形成段階にあり、発泡層の形成が制御可能である点にあることが判かる。より詳細に述べると、コンパクトポリマーから成る少なくとも一つの第1層と、発泡性ポリマーからなり、第1層の一面によって囲まれる第2層とを有して成る部品を回転成形するために、第1層を成形するための第一分量の材料を鋳型に入れ、第1層を形成するために鋳型を回転させるとともに第一分量の材料を溶融するために加熱し、次いで第2層を形成するために第二分量の材料を鋳型内に配置し、かつ該鋳型を再び回転させる方法において、加熱は、第2の分量の材料がその発泡温度に達する前に中断するが、第2分量の材料が発泡温度に達してその温度で留まるか発泡温度を上回るまで鋳型の回転を継続させることによって第2層を形成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1における1Aから1Dは、回転形成における主な工程を示すものである。ここで例として挙げた部品4は、テーパ部を二ヶ箇有したキャビティを有するものである。この部品は、2つのシェル2及びシェル3から構成される鋳型1内で形成される。シェル2及び3は、部品4の最大外周部に対応する接合面において組み立てられている。2つのうち1つのシェル2は、軸6の周りで回転可能な曲折アーム5の末端に設けられている。さらに、曲折アーム5に設けられるシェル2を支持する支持部7は、第一の軸6に対して垂直な第二の軸8の周りに回転可能となっている。
【0010】
成形体4を形成する成形材料9を、シェル2(A)内にまず注入し、次いで、第2のシェル3を第1のシェル2に組み付ける。この鋳型1を、軸6及び軸8により二重回転にかけ、かつ、図1(B)に示すように、炉10内において加熱する。成形材料9は、重力の影響のもと、鋳型1のすべての内壁を覆い、加熱によって溶融する。鋳型1は、そのまま冷却させるか、または図1(C)に示すように、空気あるいは液体ジェット11によって冷却し、成形体4が固化したところで、図1(D)に示すようにシェル3を離脱させて成形体4を抜き取る。
【0011】
このような工程を繰り返すことによって、複数の層から形成される部品を作ることができる。本発明の使用は、発泡層を含む成形体、しかも図2に示すように環状の拡径部と環状の狭小部が交互に現れる溝を有したタンク形状を成した複雑な形状を持った成形体にさえ応用する手段を提供するものである。その壁部は、外側層13、中間層14及び内側層15から構成されている。この外側層13と内側層15とは、単体或いは混合されたポリオレフィンのような結合した熱可塑性ポリマーであって、有色でも無色でもよく、増量剤を有していても有していなくてもよく、通常は粉体状で加えられる。中間層14は、初期状態では粉体状であり、発泡又はブロウ剤、あるいは場合によっては核形成剤を有している熱可塑性マトリックスから成る発泡性重合体である。この重合体もまた、上述した性質のうちの1つである。
【0012】
本発明の一実施例を図3を参照して説明する。図3は温度に関するグラフであって、曲線16は、炉10での鋳型1の周囲の温度を、かつ、曲線17は鋳型1内の温度を時間との関係で示したものである。ここでの成形体は、上述した外側層13、中間層14及び内側層15と同様に3層から構成される成形体4である。
【0013】
5キログラムの重合体(BOREALIS社製,市販グレードメタロセンポリエチレン,RM8403)を粉体状にして鋳型1に加え、4rpmの軸6及び1rpmの軸8の2軸回転にかける。炉10内の温度は250℃である。鋳型1の温度が145℃に達したら、鋳型1を、炉10から取り出し、3キログラムの発泡性ポリマー(MATRIX,POLYMERS社製,ポリエチレン,グレードM532)を粉体状にして鋳型1に加え、そして再び鋳型1を密閉して再度回転させ、炉10内へ戻す。炉の温度は240℃に固定する。材料の温度が150℃に達したら、鋳型1は、炉10から取り除くが、鋳型1は、熱慣性によって複合材料の温度が発泡性重合体の発泡温度(ここでは170℃)を上回るまで、炉10の外でそのまま回転させておく。発泡は、十分とされるまで続けられ、冷却手段によって中断される。発泡性重合体の温度が発泡温度より下回ったら鋳型1の回転を停止させ、次に鋳型を開けて、2キログラムの粉体状のポリマー(BOREALIS社製,市販グレードメタロセンポリエチレン,RM8343)を鋳型1内へ加える。この鋳型1を再び密閉して回転させ、温度を240℃に固定した炉10の中へ戻す。複合材料の温度が120℃になったなら、鋳型1を、炉10から取り出し、複合材料が熱慣性によって溶融温度より十分に高くなるまで鋳型1を自然冷却の下で回転させておく。これにより、最後に加えたポリマーが適切に成形される。このように、形成される温度に達すると、鋳型1は凝固するまで冷却される。そして、鋳型1の回転を停止し、鋳型1から成形体4を取り除くために開かれる。この場合、外側層13、中間層14及び内側層15のそれぞれの肉厚は、5mm、8mm、2mmであった。
【0014】
これら3つの重合体の溶融温度は、それぞれ132℃、130℃及び129℃である。加熱は、すべての溶融温度に達するに充分であり、このようにして複合層は形成される。発泡体からなる中間層14は、高品質で均一を成すとともに他の層に良好に接着していた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】AからDは、回転成形する工程の詳細な説明を示す図である。
【図2】発明の要部を説明する断面図である。
【図3】時間と温度との相関関係を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0016】
1 鋳型
2,3 シェル
4 成形体(発泡性熱可塑性樹脂体)
5 曲折アーム
6 軸
7 支持部
8 軸
9 成形材料
10 炉
11 ジェット
13 外側層(第1層)
14 中間層(第2層)
15 内側層(第3層)
16,17 曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンパクトポリマーから成る少なくとも一つの第1層(13)と、
発泡性ポリマーからなり、前記第1層(13)の一面によって囲まれる第2層(14)とを有して成る部品を回転成形するために、
前記第1層を成形するための第一分量の材料を鋳型(1)に入れ、前記第1層を形成するために前記鋳型を回転させるとともに前記第一分量の材料を溶融するために加熱し、次いで前記第2層を形成するために第二分量の材料を前記鋳型内に配置し、かつ該鋳型を再び回転させる方法において、
前記加熱は、前記第二分量の材料がその発泡温度に達する前に中断するが、前記第二分量の材料が発泡温度に達してその温度で留まるか発泡温度を上回るまで前記鋳型の回転を継続させることによって前記第2層を形成することを特徴とする熱可塑性発泡体の層を有する部品の回転成形方法。
【請求項2】
前記鋳型が、前記第二分量の材料の溶融温度と発泡温度との間における設定温度に達したならばすぐに、前記鋳型の加熱を中断することを特徴とする請求項1記載の熱可塑性発泡体の層を有する部品の回転成形方法。
【請求項3】
前記第2層の形成後、第3層(15)の形成のためコンパクトポリマーから成る第三分量の材料を前記鋳型に位置させ、鋳型を再び回転及び加熱させることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性発泡体の層を有する部品の回転形成方法。
【請求項4】
前記第三分量の材料の着装前の前記鋳型の加熱を、第三分量の材料がその溶融温度に達する前に中断することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の熱可塑性発泡体の層を有する部品の回転形成方法。
【請求項5】
凹所を有する部品を形成するための前記鋳型(1)が、凹所を形成するための形状部を有しないことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の熱可塑性発泡体の層を有する部品の回転形成方法。
【請求項6】
発泡層を被覆する複数の層の厚み又は化学的性質がそれぞれ異なる部品に適用されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の熱可塑性発泡体の層を有する部品の回転形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−500251(P2006−500251A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539131(P2004−539131)
【出願日】平成15年9月24日(2003.9.24)
【国際出願番号】PCT/FR2003/002803
【国際公開番号】WO2004/028773
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】