説明

熱型赤外線検出素子

【課題】配線抵抗による負帰還効果を抑制して高感度な熱型赤外線検出素子を提供する。
【解決手段】熱型赤外線検出素子において、赤外線検出用ダイオード(101)に直列に、ダイオード(101)の両端にかかる電圧を設定する電圧設定回路(1102)を設ける。さらに、画素アレイ(A1)とは別に、赤外線吸収構造及び/または断熱構造を有しないダミーダイオードからなるダミーダイオードアレイ(A2)を設ける。電圧設定回路(1102)は、ダイオード(101)の陰極電圧を、所定のバイアス電圧から、配線抵抗と、信号線及び駆動線の抵抗と、ダイオード電流Ifとにより生ずる電圧降下を減算した電圧に制御する。画素アレイ(A1)の配線抵抗に起因する、負帰還効果による感度低下をダミーダイオードアレイによりキャンセルする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は入射赤外線による温度変化を2次元配列された半導体センサで検出する熱型赤外線検出素子(または「熱型赤外線撮像素子」ともいう。)に関し、特に、ダイオードを温度センサに用いた熱型赤外線検出素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、入射赤外線による温度変化をアレイ状に配列された半導体センサで検出する熱型赤外線固体撮像素子に関して種々の技術が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、ダイオードに一定の順方向電圧を与え、ダイオードに流れる電流の温度依存性を利用した熱型赤外線検出素子を開示する。このようなダイオードに一定の順方向電圧を与えて駆動する定電圧駆動方式により、高感度な熱型赤外線検出素子を実現できる。すなわち、ダイオードの順方向電流は電圧に対して指数関数的に増加するので、一定の順方向電流を与えたときの順方向電圧変化を検出するよりも、一定の順方向電圧を与えたときの順方向電流を検出する方が、より大きな変化率が得られるため、高感度な熱型赤外線検出素子を実現できる。同様な考え方の熱型赤外線検出素子は特許文献2〜4にも開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003-110938号公報
【特許文献2】特開2000-019015号公報
【特許文献3】特開2001-044400号公報
【特許文献4】特開2001-264176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の熱型赤外線検出素子において、温度センサとして複数のダイオードがアレイ状に配置され、各ダイオードは行選択線と信号線とに接続され、行選択線と信号線により1つの画素から検出結果が読み出される。
【0006】
ダイオードを定電圧駆動する上で重要な点はいかにダイオードに所定のバイアスを与えるかである。
【0007】
通常、ダイオードを用いた熱型赤外線検出素子は、熱電変換部を細長い2本の断熱支持脚で支持する中空断熱構造を持つ。熱電変換部にダイオードが組み込まれ、断熱支持脚中にはダイオードへの配線が埋め込まれている。さらに熱電変換部の上面には赤外線吸収部が設けられている。この赤外線吸収部への入射赤外線が変化すると、赤外線吸収部により吸収される赤外線エネルギーが変化し、その変化が断熱構造により熱電変換部の温度変化に変換される。その温度変化を熱電変換部に組み込まれたダイオードを流れる電流の変化で読み出す。このような構成において検出感度を高くするためには、断熱支持脚の熱抵抗を高くする必要がある。さらには、断熱支持脚中に埋め込まれた配線を形成する金属も薄膜化し、細くかつ長くすることが好ましい。このようにすると、配線の電気抵抗が大きくなり、通常数Kから10数KΩにもなる。
【0008】
以上のような高い配線の電気抵抗の下でダイオードへ所定のバイアスを印加した場合以下の問題がある。
【0009】
支持脚内の配線と行選択線と信号線の接続点との間に、外部回路から所定のバイアス電圧を与えた場合、熱電変換部の温度が上昇し、ダイオードの電流が増加すると、支持脚内の配線での電圧降下が増加する。このため、ダイオードの順方向電圧が減少し、ダイオードを流れる電流を減少させるように作用する。逆に、熱電変換部の温度が下降し、ダイオードの電流が減少すると、支持脚内の配線での電圧降下が減少する。このため、ダイオードの順方向電圧が増加し、ダイオードの電流を増加させるように作用する。このように、配線抵抗による電圧降下の影響により、ダイオードの電流変化が抑制されるという現象が生じる。すなわち、ダイオードの温度が変化し、ダイオードを流れる電流が変動すると、ダイオードや配線の抵抗に起因する電圧降下の変動によりダイオードにかかる実効的なバイアス電圧が変動し、温度変化に伴うダイオード電流の変化が抑制され、温度検知感度が低下する。以下、このような配線抵抗によりダイオードの電流変化が抑制される効果を「負帰還効果」という。この負帰還効果は、電圧を一定に与えるところからダイオードまでの抵抗に起因するものであり、その抵抗の主因は支持脚内の配線抵抗であるが、行選択線と信号線の抵抗も少なからず寄与している。この負帰還効果により、定電圧駆動方式の特徴である高感度という特性を十分に発揮できないという問題がある。
【0010】
特許文献1は負帰還効果について、ダイオードの電流を読み出すために電圧に変換する手段、例えば負荷抵抗または容量を接続したときの、その抵抗または容量での電圧変動がダイオードのバイアスに影響を与えることを記載している(特許文献1の[0021]参照)。特許文献1ではその解決方法として、電圧変換手段を用いて、信号線と電圧変換手段であるカラムトランジスタ群の接続点の電圧を常に一定にする方法を開示している。しかし、この方法では、電圧変換手段であるカラムトランジスタ群までの信号線、選択線、画素内の配線の抵抗による負帰還効果についてはなんら解決できない。
【0011】
特許文献2は、ダイオードの順方向特性の温度依存性を利用した赤外線検出素子を開示し、具体的には、環境温度が変化したときの電流変化(ドリフト電流)を抑制するようにダイオードのバイアスを可変電圧源にて変化させることを開示する(特許文献2の[0012]、[0024]、[0026]参照)。特許文献2はダイオードのバイアスの変化方法について詳細を開示していないが、例えば環境温度が高くなり、ダイオード電流が増加すると、出力を一定にするためにダイオードバイアスを下げて電流を減少させるものと理解できる。しかし、このような方法では、赤外線光入射時に発生する配線抵抗による負帰還効果は解消されないのは明らかであり、そもそも、負帰還効果に関する課題を認識していない。
【0012】
特許文献3は、ダイオードの接合面積を広くする構造に関し、読み出し回路については特許文献2と同様の構成を開示する(特許文献3の[0030]参照)。よって、特許文献3は、特許文献2と同様、赤外線光入射時に発生する配線抵抗による負帰還効果の課題を解消しておらず、また、そもそも負帰還効果に関する課題を認識していない。
【0013】
特許文献4は、特許文献2と同様、ダイオードに直列にバイアス電圧回路を挿入して、その回路を経由して順方向電流を読み取る温度測定装置もしくは熱型の赤外線イメージセンサを開示する。特許文献4では抵抗による負帰還効果を説明しているが、特許文献4の発明者は電流読出し時に抵抗を接続して出力を上げる抵抗を増加させると、負帰還効果が問題になると指摘している(特許文献4の[0009]参照)。そして、特許文献1と同じ課題認識で電流読出し部の抵抗にかかわらず正確なバイアスをダイオードに与えるとしている(特許文献4の[0011])。特許文献4では、熱型赤外センサへ適用するため、ダイオードの断熱構造を適用すると、バイアス回路は通常、断熱構造がない基板上に形成される。よって断熱構造における支持脚内の配線からバイアス回路まで配線が必要となり、そのバイアス回路までの配線により負帰還効果が生じる。
【0014】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、配線抵抗による負帰還効果を抑制して高感度な熱型赤外線検出素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る熱型赤外線撮像素子は、断熱構造と赤外線吸収部を有する第1のダイオード群が2次元状に配置されてなる画素アレイと、各行内の第1のダイオードの陽極を第1の配線抵抗を介して共通接続する複数の第1の駆動線と、各列内の第1のダイオードの陰極を第2の配線抵抗を介して共通接続する複数の第1の信号線と、複数の第1の駆動線に対して順に第1の電圧を印加する第1の垂直走査回路と、各列毎に設けられ、各第1の信号線の端に接続された、断熱構造及び/または赤外線吸収部を有しない第2のダイオード群と、第1のダイオードの両端にかかる電圧を設定する電圧設定回路と、第1の信号線の端に電圧設定回路を介して接続された電流読み取り回路と、電圧設定回路及び電流読み取り回路に接続され、電流読み取り回路の出力を順に読み出す水平選択回路と、断熱構造及び/または赤外線吸収部を有しない第3のダイオードを2次元状に配置してなるダミーアレイと、各行内の第3のダイオードの陽極を共通接続する複数の第2の駆動線と、各列内の第3のダイオードの陰極を共通接続する第2の信号線と、複数の第2の駆動線に対して順に第2の電圧を印加する第2の垂直走査回路とを備える。第2の信号線は電圧設定回路に接続される。電圧設定回路は、信号線と電圧設定回路の接続点の電圧を、一定のバイアス電圧から、第1及び第2の配線抵抗と、信号線及び駆動線の抵抗と、ダイオードの電流とにより生ずる電圧降下を減算した電圧に制御する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ダイオードの温度が変化し、電流が変化してもダイオードにかかる電圧は常に、電源電圧から所定のバイアス電圧を引いた値となるため、配線抵抗による負帰還効果がなくなり、高精度に温度ドリフト抑制ができ、さらに、行位置に依存して感度が変動しない、高感度・高性能な熱型赤外線検出素子を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照し、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
以下に説明する本実施形態の熱型赤外線検出素子では、断熱構造と赤外線吸収部を有するダイオードに流れる電流によらず、ダイオード両端に印加するバイアス電圧を一定値に制御する。これにより、ダイオードの温度が変化し、ダイオード電流が変化してもダイオードにかかる電圧は常に一定値となるため、配線抵抗による負帰還効果を削減できる(本願の関連出願、特願2008−001118号参照)。
【0019】
(1.一画素に対する構成)
図1は、本実施形態における、赤外線検出用のダイオード両端に印加するバイアス電圧を一定値に制御するための構成を説明した図である。同図は、説明の便宜上、一つの画素(一つの赤外線検出用のダイオードを含む)に対する構成を示している。図1において、赤外線検出用のダイオード101の陽極は抵抗102を介して電源端子104に接続され、陰極は抵抗103及び端子105を経由して電圧設定回路106に接続される。ダイオード101を流れる電流Ifは、電圧設定回路106と端子107を経由して電流読み取り回路108に流れ、端子109を介して検出される。なお、端子105、107は説明の便宜上端子として表現しているが、電気的に接続されていれば端子の形態でなくてもよい。
【0020】
電圧設定回路106は、端子105の電位を制御し、ダイオード101の両端にかかる電圧を一定になるよう制御する回路である。電圧設定回路106は、ダイオード101の両端電圧を一定値に制御するため、端子105の電位をダイオード101に流れる電流Ifに応じて制御する。電圧設定回路106の詳細な動作については後述する。
【0021】
電流読み取り回路108は、入力される電流を電圧に変換するもので周知の技術で実現できる。一例として図2に示した構成が考えられる。図2(a)は、トランスインピーダンスアンプで実現した例を示し、オペアンプ201の出力から反転入力端子に負荷抵抗RLで帰還を施した構成であり、電流に抵抗RLを乗じた値の出力が得られる。または、図2(b)で示したようなオペアンプ301の出力から反転入力端子に容量Ciで帰還し、容量Ciの両端にリセットスイッチ302を設けた積分器でもよい。この構成では、リセットスイッチ302のリセット動作周期を積分時間Tiとし、電流に積分時間Tiを乗じた値を積分容量Ciで除算した値の出力が得られる。図2(b)の例では、積分動作が行われるので雑音の減少効果もある。
【0022】
ダイオード101は図3に示すように断熱構造と赤外線吸収構造を有する。このような構成は周知のものである。図3において、ダイオード101の主要部が含まれる赤外線吸収構造(熱電変換部)は、2つの細長い断熱支持脚401と402により、基板に設けられた中空部分403上で支持される。断熱支持脚401と402にはダイオード101への接続配線(図示せず)が埋め込まれている。断熱支持脚401と402は陽極側の電源配線404と陰極側の信号線405にそれぞれ接続されている。またダイオード101が存在する部分には赤外線吸収膜406が形成されている。なお、抵抗102と103は断熱支持脚401と402内の配線抵抗に相当する。
【0023】
電圧設定回路106の動作について説明する。電圧設定回路106は端子105の電圧Vrefを以下のように制御する。
Vref = Vc - If・Rc (1.1)
Rcは抵抗102と103の合成抵抗、Ifはダイオード101を流れる電流、Vcは所定のバイアス電圧である。
【0024】
一方、端子104に与えられる電源電圧をVddとすると、ダイオード101に印加されるダイオード101の順方向バイアス電圧Vfは次式で得られる。
Vf = Vdd - If・Rc - Vref (1.2)
式(1.1)、(1.2)より順方向バイアス電圧Vfは次式のようになる。
Vf = Vdd - Vc (2)
即ち、順方向バイアス電圧Vfは電流Ifに係わらず一定電圧となる。よって、従来技術で問題となった負帰還効果による感度低下がなくなり、高感度な熱型赤外線検出素子が実現できる。
【0025】
図4に、このような働きをする電圧設定回路106の構成例を示す。電圧設定回路106の入力端子105と出力端子107に流れる電流を2個の同一サイズのPMOSトランジスタ501と502に分流する。一方のPMOSトランジスタ501のドレインは出力端子107に接続され、他方のトランジスタ502のドレインはNチャネルトランジスタ503と504で構成されるカレントミラー回路に接続される。カレントミラー回路において、分流された電流If/2の2倍の電流Ifをトランジスタ504で形成する。すなわち、トランジスタ504のW/L比はトランジスタ503のW/L比の2倍に設定されている。トランジスタ504のドレインは抵抗Rcを介して所定のバイアス電圧Vcに接続されている。抵抗Rcの抵抗値は、赤外線検出部の抵抗102と103の抵抗値の合成値に一致するようになっている。具体的には、図3に示した構成でダイオード部を抵抗の小さい太い配線でショートするのが一例として考えられる。これによりトランジスタ504のドレインには(Vc - If・Rc)の電圧が印加される。この電圧をオペアンプ507の非反転端子に入力し、反転端子に端子105の電圧を入力する。オペアンプ507の出力はトランジスタ501と502のゲートに入力する。オペアンプ507の働きにより反転入力端子、即ち電圧設定回路106の入力端子105の電圧が常に非反転入力端子の電圧(Vc - If・Rc)になるように帰還動作が働く。
【0026】
電流Ifが増加し、抵抗102と103での電圧降下が上昇し、端子105の電圧が低下した場合の動作を検討する。この場合、オペアンプ507の反転入力端子の電圧が低下するので、オペアンプ507の出力が上昇し、PMOSトランジスタ501と502のゲート電圧を持ち上げPMOSトランジスタ501と502の電流が減少する。ダイオード101からの電流はPMOSトランジスタ501と502以外には流れないので、余剰なダイオード電流IfはPMOSトランジスタ501と502のソース電圧ノードを充電していく。これにより、PMOSトランジスタ501と502のソース電圧とオペアンプ507の反転入力端子の電圧は上昇し、PMOSトランジスタ501と502のゲート電圧を下げる。そうすると、PMOSトランジスタ501と502に流れる電流は増加し、ついにはダイオード101に流れる電流を超える。こうなると、上記と逆の現象がおき、PMOSトランジスタ501と502のソース電圧ノードを放電していき、PMOSトランジスタ501と502のソース電圧とオペアンプ507の反転入力端子の電圧も下がる。以後は、前述と同様の動作が繰り返され、最終的にPMOSトランジスタ501と502のソース電圧がオペアンプ507の非反転入力端子の電圧(Vc - If・Rc)に一致したところで安定する。
【0027】
上記のような電圧設定回路106の動作により端子105の電圧が電圧(Vc - If・Rc)に制御され、これにより、ダイオード101両端にかかる電圧を(Vdd - Vc)に制御でき、ダイオード101に対して電流Ifによらない一定のバイアスを印加できる。すなわち、ダイオード101の温度が変化し、電流Ifが変化してもダイオード101にかかる電圧は常に、電源電圧Vddから一定のバイアス電圧Vcを減算した値となるため、配線抵抗による負帰還効果がなくなり、高感度な熱型赤外線検出素子を実現できる。
【0028】
(電流読み取り回路のダイナミックレンジを拡大するための構成)
図5に、電流読み取り回路108のダイナミックレンジを拡大するための構成を示す。同図の構成では、図1に示した構成において端子107に電流源601を接続している。図5に示す回路の動作を図6に示す等価回路を用いて説明する。図6では、図5に示す抵抗102と抵抗103をまとめて抵抗701とし、ダイオード101と抵抗701が端子702を介して接続され、端子702の電圧をVxとしている。また、実施の形態1と同じく端子105の電圧をVref、抵抗701の値をRcとする。
【0029】
図7は、図6に示す回路の電圧電流特性を示した図である。図7では、横軸に電圧Vx、縦軸に電流Ifをとっている。ダイオード101の特性は、電圧Vxが電源電圧Vddに等しいときに0バイアスとなり、電圧Vxが電源電圧Vddより下がると周知の順方向特性となり、この場合、温度が上昇すると電流が増加する特性となる。一方、抵抗701に流れる電流はオームの法則より(Vx - Vref) /Rcとなる。ダイオード101に流れる電流と抵抗701に流れる電流は等しいからこの2つの特性曲線の交点が動作点となる。
【0030】
一般にダイオードの順方向電流は数μA以上であるが、ダイオードの電流の温度変化率は1度Cあたり6%程度である。また赤外線検出素子としてみた場合、光学系や断熱特性の設定にもよるが、画素サイズを40μm、断熱支持脚の熱コンダクタンスを100nW/K、赤外線吸収率を80%、光学系F値を1とすると、被写体の温度変化1度Cあたりダイオード101の温度は5ミリ度C程度変化する。仮に、被写体の撮像温度範囲を室温±30度C程度とした場合でも、ダイオード101の温度変化は高々0.3度Cp-pである。即ちダイオード101の電流変化は1.8%p-p(≒6%×0.3)程度の変化であり、数μAの電流を流していても、その一部しか信号電流にならないことがわかる。よって図1で示される例のようにダイオード電流Ifの全てを電流読み取り回路に送る必要はなく、ダイオード電流Ifの一部のみを電流読み取り回路108に送ればよい。このようにすることで、電流読み取り回路108のダイナミックレンジを有効に活用できる設計が可能となり、ダイナミックレンジの大きい高感度な熱型赤外線検出素子を実現できる。電流源601のバイアス電流Ibはそれを実現するためのものであり、図6に示すように電流Ifから電流Ibを除いた部分を信号電流Iiとして電流取り出し部108に流入させる。電流源601の電流Ibの値は上記のように撮像温度範囲や画素の特性に応じて設定すればよい。周囲温度変化でダイオード電流が大きく変化する場合は、周囲温度に応じて電流Ibを変化させてもよい。
【0031】
(参照ダイオードをさらに設けた構成)
図8に示す構成例は、赤外線吸収構造及び/または断熱構造を有しないダイオード(以下「参照ダイオード」という。)901を新たに設け、このダイオード901に対して直列に赤外線検出用のダイオード101に対するものと同じ回路要素を接続した例である。参照ダイオード901の陽極は抵抗902を介して電源端子904に接続される。電源端子904には通常は電源端子104と同じ電源電圧が与えられる。参照ダイオード901の陰極は抵抗903及び端子905を介して電圧設定回路906に接続される。抵抗902、903及び電圧設定回路906はそれぞれ抵抗102、103及び電圧設定回路106と同じものである。参照ダイオード901は赤外線吸収構造及び/または断熱構造を有しないため、赤外線には反応せず、周囲温度変化に応じた電流が流れる。参照ダイオード901の電流に対しても、NMOSトランジスタ907で決まる電流を減算した後、電流読み取り回路108と同様の電流読み取り回路1001で電圧に変換する。NMOSトランジスタ907、908のゲートには所定のバイアス電圧1300が印加される。このとき、電流読み取り回路108と1001の出力の極性は、入力される電流が増せば出力電圧が増加するような極性とする。オペアンプ1003の非反転入力に参照ダイオード901に対する電流読み取り回路1001の出力電圧を入力し、反転入力端子1002に基準電圧を入力する。オペアンプ1003の出力を、第2の電圧設定回路906の電圧VC入力端子(図4の電圧入力端子506に相当)及び電圧設定回路106の電圧VC入力端子に入力する。このようにして電流読み取り回路1001の出力を基準電圧(端子1002の入力電圧)に一致させるための帰還ループが形成される。こうすることで、参照ダイオード901に対する電流読み取り回路1001の出力電圧が基準電圧に一致するように、第2の電圧設定回路906のVC入力電圧と電圧設定回路106のVC入力電圧とが決まる。これにより、回路906、907、108、1001の温度ドリフトを含めて補正され、参照ダイオード901に相当する出力が常に一定の基準電圧に等しくなるだけでなく、参照ダイオード901に流れる電流量も常に一定の電流量に制御できるようになり高精度な温度ドリフト抑制が可能になる。
【0032】
(2.アレイ構成)
図8の考え方を、ダイオードを2次元アレイ状に配置した熱型赤外線検出素子の構成に適用した構成を図9に示す。
【0033】
図9に示す構成では、画素P内において赤外線検出用ダイオード101及び参照ダイオード901で構成される画素アレイA1とともに、画素アレイと同一個数のダミーダイオード201及び参照ダイオード1901で構成されるダミーダイオードアレイA2を形成している。ダミーダイオード201は前述の参照ダイオード901と同様、赤外線吸収構造及び/または断熱構造を有しないダイオードで形成する。
【0034】
図9において、ダイオード101がアレイ状に配置され、3×3画素の撮像素子を構成している。このようにアレイ状に配置された複数の画素は画素アレイA1を構成する。各行の右端には参照ダイオード901が配置されている。ダイオード101、901の陽極は駆動線1109を介して行単位で共通接続され、垂直走査回路1101により行単位で選択され順に電源端子104から電源電圧Vddが供給される。ダイオード101、901の陰極は列単位で信号線1110を介して共通接続されている。ダイオード101の陰極には、電圧降下補償ダイオード2005を介して、列毎に設けた電圧設定回路1102が接続され、参照ダイオード901の陰極には、電圧降下補償ダイオード2005を介して、電圧設定回路906が接続される。電圧降下補償ダイオード2005は、ダミーダイオード201と同一構造、すなわち、赤外線吸収構造及び/または断熱構造を有しないダイオードで形成される。電圧設定回路1102、906の出力は電流源1103、907及び電流読み取り回路1104、1001に接続される。
【0035】
さらに、ダミーダイオード201がアレイ上に配置され、4×3画素の撮像素子を構成している。ダミーダイオード201の陽極は行単位で駆動線2109を介して共通接続され、第2の垂直走査回路2101により行単位で順に制御される。ダミーダイオード201の陰極は列単位で列配線2110を介して共通接続されている。ダイオード201の陰極には、列毎に設けた電圧設定回路1102のVC端子に接続される。
【0036】
電流源1103と907のゲートには所定のバイアス電圧1300が入力され、一定電流が流れる。電流読み取り回路1104、1001の出力は水平選択スイッチ1105に接続される。水平選択スイッチ1005は、水平選択回路1106からの制御信号により順に導通状態となり、電流読み取り回路1104、1001の出力を出力端子1107に導く。
【0037】
サンプルホールド回路1108は、参照ダイオード901に対応する出力が水平選択スイッチ1105から出力されたときに、その出力をサンプルホールドし、オペアンプ1003の非反転入力端子に入力する。オペアンプ1003の反転入力端子には端子1002から基準電圧が入力される。参照ダイオード901は行単位で設けられているので、参照ダイオード901からの出力が基準電圧に一致するように、第2の垂直走査回路2101に対する入力電圧が制御される。なお、オペアンプの1003の出力にローパスフィルタを挿入してもよい。これにより、参照ダイオード901からの出力による帰還効果が平均化され、より安定な出力を得ることが出来る。
【0038】
以上のように本実施形態では、電圧設定回路によりダイオード両端に印加するバイアス電圧を一定値に制御する。これにより、配線抵抗による負帰還効果を削減できる。さらに、本実施形態では図9に示すようにダミーダイオードアレイを設けている。ここで、ダミーダイオードアレイA2を設けた理由について説明する。
【0039】
図10に、図9の構成においてダミーダイオードアレイを除外したときに想定される構成の一例を示す。図10において、ダイオード101はアレイ状に配置され、3×3画素の撮像素子(画素アレイ)を構成している。各行の右端には参照ダイオード901が配置されている。ダイオード101、901の陽極は行単位で共通接続され、垂直走査回路1101により行単位で順に電源端子104から電源電圧が供給される。ダイオード101、901の陰極は列単位で共通接続されている。ダイオード101の陰極には、列毎に設けた電圧設定回路1102が接続され、参照ダイオード901の陰極には電圧設定回路906が接続される。電圧設定回路1102、906の出力は、電流源1103、907及び電流読み取り回路1104、1001に接続される。
【0040】
電流源1103と907のゲートには所定のバイアス電圧1300が入力され、一定電流が流れる。電流読み取り回路1104、1001の出力は水平選択スイッチ1005に接続される。水平選択スイッチ1005は、水平選択回路1106からの制御信号により順に導通状態となり、電流読み取り回路1104、1001の出力を出力端子1107に導く。
【0041】
サンプルホールド回路1108は、参照ダイオード901に対応する出力が出たときに、その出力をサンプルホールドし、オペアンプ1003の非反転入力端子に入力する。オペアンプ1003の反転入力端子には端子1002から基準電圧が入力される。参照ダイオード901は行単位で設けられているので、参照ダイオード901からの出力が基準電圧に一致するように、電圧設定回路1102および電圧設定回路906のVCに対する入力電圧が制御される。
【0042】
図10において、例えば下から2行目の画素の読み出しを行っているときの電流の流れを示している。各列の信号線1110に流れる電流をi1、i2、i3、i4とすると、電源端子104(電源電圧Vdd)からは、電源配線2001を介して、各列の電流の総計i1+i2+i3+i4の電流が流れ、さらに垂直走査回路1101を介して選択されている2行目の駆動線にi1+i2+i3+i4の電流が流れ、各列においてi4、i3、i2、i1の各電流が分岐していく。各列の信号線1110には、i1、i2、i3、i4の各電流が流れ、電圧設定回路1102、906に入力される。電圧設定回路では各列の電流がコピーされ、各列と同一の電流量の電流、すなわち、各列i1、i2、i3、i4の電流が、電圧設定回路のVC端子に流入する。参照ダイオードの出力がある基準電圧1002と等しくなるようにオペアンプ1003から出力された電圧(この電圧をVcとする)は、VC配線2002と水平VC配線2003を介して、各列の電圧設定回路1102、906のVC端子に供給される。VC配線2002には、各列の電流の総計i1+i2+i3+i4の電流が流れ、水平VC配線2003には、VC配線2002との接続点においてはi1+i2+i3+i4の電流が流れ、各列においてi4、i3、i2、i1の各電流が、各列の電圧設定回路1102、906のVC端子に分岐していく。
【0043】
ここで、図11に示すように各配線の抵抗値を以下のように規定する。
Rh:駆動線1109の単位画素ピッチ当たりの配線抵抗
Rv:信号線1110の単位画素ピッチ当たりの配線抵抗
Rvdd:電源配線2001の単位画素ピッチ当たりの配線抵抗
Rhc:水平VC配線2003の単位画素ピッチ当たりの配線抵抗
Rvc:VC配線2002の総配線抵抗
【0044】
なお、抵抗値が規定されていない図11の回路図上の配線についてはその抵抗値は無視できるものとする。
【0045】
例えば、参照画素も含めた画素アレイの列数をm、行数をnとし(図10、11ではm=4、n=3)、左から3列目、下から2行目の画素について読み出しを行ったときの、ダイオードに印加される順方向バイアス電圧Vfは、配線抵抗が無視できるほど低い場合は式(2)で求められるが、配線抵抗が無視できない場合下記式(3)のようになる。
Vf = Vdd−{Rvdd*(n-2)*(i1+i2+i3+i4)−Rh*(i1+i2+i3+i4)−Rh*(i1+i2+i3)
−Rv*2*i3}−{Vc−Rvc*(i1+i2+i3+i4)−Rhc*(i1+i2+i3+i4)−Rhc*(i1+i2+i3)} (3)
【0046】
ここで、各配線の抵抗値についてRv=Rvdd*mおよびRvc=Rvdd*nおよびRhc=Rhの関係式が成り立つように各配線を形成すれば、3列目の電流i3=(i1+i2+i3+i4)/mが成り立つとき、すなわち、i3が全列の電流の平均値と等しいときは下記のようになる。
Vf = Vdd−Vc (4)
【0047】
ダイオードに印加される順方向バイアス電圧Vfが常に一定電圧に保たれることとなる。しかしながら、各列の電流i1、i2、i3、i4は、現在読み出しを行っている下から2行目の各列の画素のダイオードに流れる電流であるから、赤外線の照射量が画素アレイ全体で均一でない場合は、i3が全列の電流の平均値と等しくはならない。この場合、以下の式となる。
Vf = Vdd−Vc − Rvdd*(n-2)*(i1+i2+i3+i4)−Rv*2*i3+Rvc*(i1+i2+i3+i4) (5)
【0048】
さらに、Rv=Rvdd*mおよびRvc=Rvdd*nから下記式となる。
Vf = Vdd−Vc − Rvdd*(n-2)*(i1+i2+i3+i4)
− Rvdd*m*2*i3+Rvdd*n*(i1+i2+i3+i4) (6)
【0049】
i3が全列の電流の平均値と等しくはならない場合を考えているので、i3と全列の平均電流のずれ値をΔiとし、itot=i1+i2+i3+i4とすると、次式が得られる。
i3=itot/m+Δi (7)
【0050】
上記の関係を式(6)に代入すると、下記式となる。
Vf = Vdd−Vc − Rvdd*(n-2)*itot − Rvdd*m*2*(itot/m+Δi)+Rvdd*n*itot
= Vdd−Vc − Rvdd*m*2*Δi (8)
【0051】
さらにRv=Rvdd*mの関係を用いると式(8)は下記のようになる。
Vf = Vdd−Vc − Rv*2*Δi (9)
【0052】
すなわち、赤外線の照射量が画素アレイ全体で均一でなく、i3と全列の平均電流のずれ値Δiがゼロでないとき、ダイオードに印加される順方向バイアス電圧Vfは、Vdd−Vcで決まる一定電圧値から、Rv*(m-2)*Δiで計算される電圧値だけ減算されることを示す。ここで、本計算では、下から2行目の画素について読み出しを行っていることを想定しているが、下からk行目の画素について読み出しを行う場合に一般化すると、下記のようになる。
Vf = Vdd−Vc − Rv*k*Δi (10)
【0053】
順方向バイアス電圧Vfの定電圧値からのずれ値Rv*k*Δiは、読み出しを行う行位置が異なると変動することを示している。また、その変動値は、着目している列位置の電流値の全列の平均電流値とのずれ値Δiに比例することがわかる。従って、信号線1110の単位画素ピッチ当たりの配線抵抗Rvが十分低くない場合、ダイオードに印加される順方向バイアス電圧Vfがダイオード電流によらず一定値でなくなり、負帰還効果による感度低下が発生するとともに、行位置に依存して感度が変動するという問題が生じる。
【0054】
以上のように、図10に示すように熱型赤外線検出素子を構成した場合、配線抵抗により負帰還効果による感度低下が発生するとともに、行位置に依存して感度が変動するという課題が生じる。この問題を解決するため、本実施形態では、ダミーダイオードアレイA2を設けている。以下、ダミーダイオードアレイによる効果を具体的に説明する。
【0055】
図12は、図9に示す構成において、一例として、画素アレイの下から2行目の画素の読み出しを行っているときの電流の流れを示した図である。各列の信号線1110に流れる電流をそれぞれi1、i2、i3、i4とする。電源端子104からは、電源配線2001を介して、各列の電流の総計i1+i2+i3+i4の電流が流れる。垂直走査回路1101を介して選択されている2行目の駆動線には、i1+i2+i3+i4の電流が流れ、各列においてi4、i3、i2、i1の各電流が分岐していく。各列の信号線1110には、i1、i2、i3、i4の各電流が流れ、各電流は電圧設定回路1102、906に入力される。電圧設定回路1102、906では各列の電流がコピーされ、各列と同一の電流量の電流、すなわち、i1、i2、i3、i4の電流が、ダミーダイオード列の配線2110から電圧設定回路1102、906のVC端子に流入する。
【0056】
参照ダイオード901、1901の出力が基準電圧1002と等しくなるように、オペアンプ1003から出力された電圧(この電圧をVcとする)は、VC垂直線2004を介して、第2の垂直走査回路2101に接続される。第2の垂直走査回路2101は、垂直走査回路1101の動作と同期して動作する。そして、第2の垂直走査回路2101によりダミーダイオードマトリクスアレイが選択され、さらに、ダミーダイオード行配線2109、ダミーダイオード201、ダミーダイオード列配線2110、及び調整抵抗2000を介して、オペアンプ1003から電圧設定回路1102、906のVC端子に電圧が供給される。第2の垂直走査回路2101で選択されたダミーダイオード行配線2109における第2の垂直走査回路2101との接続端では、各列に流れる電流の総計である(i1+i2+i3+i4)の電流が流れる。各列においては、i4、i3、i2、i1の電流がそれぞれ、各列の選択された行のダミーダイオードに流れる。そして、各列に流れるi4、i3、i2、i1の電流が、ダミーダイオード列配線2110を通り、調整抵抗2000を介して電圧設定回路106のVC端子に流入する。
【0057】
ここで、説明の便宜上、図13に示すように各配線の抵抗値を以下のように規定する。
Rh:駆動線1109の単位画素ピッチ当たりの配線抵抗
Rv:信号線1110の単位画素ピッチ当たりの配線抵抗
Rvdd:電源配線2001の単位画素ピッチ当たりの配線抵抗
Rha:ダミーダイオード行配線2109の単位画素ピッチ当たりの配線抵抗
Rva:ダミーダイオード列配線2110の単位画素ピッチ当たりの配線抵抗
Rvb:VC垂直線2004の単位画素ピッチ当たりの配線抵抗
Rvv:各列の信号線1110における、ダミーダイオード形成箇所の通過部分の配線抵抗
Rvr:調整抵抗2000の配線抵抗
【0058】
なお、抵抗値が規定されていない図13の回路図上の配線については、その抵抗値は無視できるものとする。また、選択されたダミーダイオード201で発生する電圧降下は、同一電流が流れる電圧降下補償ダイオード2005で発生する電圧降下により相殺されるので、後述の式からはあらかじめ除外している。
【0059】
参照画素も含めた画素アレイの列数をm、行数をnとし(図9ではm=4、n=3)、左から3列目、下から2行目の画素について読み出しを行ったときの、ダイオードに印加される順方向バイアス電圧Vfは下記式で表される。
Vf = Vdd − {Rvdd*(n-2)*(i1+i2+i3+i4)−Rh*(i1+i2+i3+i4)−Rh*(i1+i2+i3)
−Rv*2*i3− Rvv*i3}−{Vc−Rvb*(n-2)*(i1+i2+i3+i4)−Rha*(i1+i2+i3+i4)
− Rha*(i1+i2+i3) − Rva*2*i3 − Rvr*i3} (11)
【0060】
ここで、各配線の抵抗値について下記の関係式(12)が成り立つよう、各配線を形成すれば、式(11)は式(13)となる。
Rv=Rva=Rvdd*m=Rvb*m かつ Rh=Rha かつ Rvv=Rvr (12)
Vf = Vdd−Vc (13)
【0061】
式(13)から、ダイオードに印加される順方向バイアス電圧Vfは、常にVdd−Vcで決まる一定電圧値となることが理解できる。よって、赤外線の照射量が画素アレイ全体で均一でなく、各列の電流値が全列の平均電流値と等しくない場合においても、配線抵抗に起因した負帰還効果による感度が低下するという問題と、行位置に依存し感度が変動するという問題を解決できる。これにより、高性能、かつ、高精度に温度ドリフト抑制された熱型赤外線検出素子が実現できる。
【0062】
ここで、上記の例では、画素アレイA1に含まれるダイオード101の数と同一個数のダミーダイオード201でダミーダイオードマトリクスアレイA2を構成した。しかし、ダミーダイオードの単位面積、単位ピッチは、画素アレイの単位面積、単位ピッチと必ずしも同一にする必要はなく、配線抵抗が前述の関係式(12)を満たせばよい。また、調整抵抗2000は必要に応じて省略することも可能である。また、回路図として図9の回路図が実現されていれば、実際のレイアウト(すなわち物理配置)においては、各画素アレイの単位画素内に各単位ダミーダイオードを形成する構成でも構わない。また、参照ダイオード901からの出力による帰還ループを形成し、電圧Vcを印加している回路を示しているが、帰還ループを形成せず、電圧Vcとして電源から一定電圧を印加する構成でも構わない。
【0063】
また、本実施の形態における電圧設定回路の構成としては、PMOSトランジスタ1601とPMOSトランジスタ1602のW/L比率を同じとせずに、図14のように、PMOSトランジスタ1601のW/L比率をPMOSトランジスタ1602のn倍(n>1)とし、電流を複製するカレントミラー回路のNMOSトランジスタ1604とNMOSトランジスタ1603のW/Lの比率を(n+1):1としても良い。
【0064】
なお、本実施形態では、画素P内において選択MOSスイッチを形成していないので、画素P内において選択MOSスイッチを形成した場合に生じる小さなサイズの選択MOSスイッチによる1/fノイズの影響の問題もない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態における熱型赤外線検出素子の回路図(1画素に対する構成)
【図2】本発明の実施の形態における熱型赤外線検出素子の電流読み取り回路の例を示す図
【図3】本発明の実施の形態における熱型赤外線検出素子のダイオードの構造を示す図
【図4】本発明の実施の形態における熱型赤外線検出素子の電圧設定回路の回路図
【図5】本発明の実施の形態における熱型赤外線検出素子の別の構成の回路図(1画素に対する構成)
【図6】図5に示す回路の等価回路図
【図7】図5に示す熱型赤外線検出素子の電圧電流特性を示す図
【図8】本発明の実施の形態における熱型赤外線検出素子の別の構成の回路図(1画素に対する構成)
【図9】本発明の実施の形態1における熱型赤外線検出素子(アレイ構成)の回路図
【図10】図9の熱型赤外線検出素子を用いて、ダミーダイオードアレイを形成しない構成の回路図(図10において、下から2行目の読み出しを行っているときに流れる電流を合わせて示している)
【図11】図10の回路構成において規定した配線抵抗の説明図
【図12】図9の回路構成において、下から2行目の読み出しを行っているときに流れる電流を示した図
【図13】図9の回路構成において規定した配線抵抗の説明図
【図14】本発明の実施の形態1における電圧設定回路の別の例の回路図
【符号の説明】
【0066】
101 ダイオード、102 第1の配線抵抗、103 第2の配線抵抗、106 電圧設定回路、108 電流読み取り回路、401 断熱支持脚、402 断熱支持脚、406 赤外線吸収膜、601 バイアス電流源、901 参照ダイオード、902 第3の配線抵抗、903 第4の配線抵抗、906 第2の電圧設定回路、1001 第2の電流読み取り回路、1101 垂直走査回路、1106 水平走査回路、1201 MOSスイッチ、1202 選択線、1203 電源線、1204 信号線、1205 共通電源線、201 ダミーダイオード、1901 、2000 調整抵抗、2001 電源配線、2002 VC配線、2003 水平VC配線、2004 VC垂直線、2005 電圧降下補償ダイオード、2101 第2の垂直走査回路、2109 ダミーダイオード行配線、2110 ダミーダイオード列配線、 A1 画素アレイ、 A2 ダミーダイオードアレイ、 P 画素。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱構造と赤外線吸収部を有する第1のダイオード群が2次元状に配置されてなる画素アレイと、
各行内の第1のダイオードの陽極を第1の配線抵抗を介して共通接続する複数の第1の駆動線と、
各列内の第1のダイオードの陰極を第2の配線抵抗を介して共通接続する複数の第1の信号線と、
前記複数の第1の駆動線に対して順に第1の電圧を印加する第1の垂直走査回路と、
各列毎に設けられ、各第1の信号線の端に接続された、断熱構造及び/または赤外線吸収部を有しない第2のダイオード群と、
前記第1のダイオードの両端にかかる電圧を設定する電圧設定回路と、
前記第1の信号線の端に前記電圧設定回路を介して接続された電流読み取り回路と、
前記電圧設定回路及び電流読み取り回路に接続され、電流読み取り回路の出力を順に読み出す水平選択回路と、
断熱構造及び/または赤外線吸収部を有しない第3のダイオードを2次元状に配置してなるダミーアレイと、
各行内の第3のダイオードの陽極を共通接続する複数の第2の駆動線と、
各列内の第3のダイオードの陰極を共通接続する第2の信号線と、
前記複数の第2の駆動線に対して順に第2の電圧を印加する第2の垂直走査回路とを備え、
前記第2の信号線は前記電圧設定回路に接続され、
前記電圧設定回路は、前記信号線と電圧設定回路の接続点の電圧を、一定のバイアス電圧から、前記第1及び第2の配線抵抗と、前記信号線及び前記駆動線の抵抗と、前記ダイオードの電流とにより生ずる電圧降下を減算した電圧に制御する
ことを特徴とする熱型赤外線撮像素子。
【請求項2】
前記第2のダイオード群に対する電流読み取り回路の出力と、所定の基準電圧とを比較し、その差に基づき前記第2の垂直走査回路による前記第2の電圧を決定するバイアス電圧決定手段をさらに備え、
前記バイアス電圧決定手段により、前記第2の垂直走査回路による第2の電圧を前記第1の基準電圧に一致させるようにするための帰還ループを形成した、ことを特徴とする請求項1記載の熱型赤外線検出素子。
【請求項3】
前記ダミーアレイに含まれる第3のダイオードの数は、前記第1のダイオードの数と同一である、ことを特徴とする請求項1記載の熱型赤外線検出素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−265000(P2009−265000A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116833(P2008−116833)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】