熱変位補正装置および熱変位補正方法
【課題】より高精度にワーク自身の熱変位補正を行うことができる熱変位補正装置および熱変位補正方法を提供する。
【解決手段】ワークWの温度を実際に変化させた時にワークWの基準点P1に対するワークWの所定点P2〜P7の熱変位方向θ2〜θ7を予め測定しておき、測定した熱変位方向θ2〜θ7をデータベース32に記憶しておく。データベース32に記憶されているワークWの所定点P2〜P7の熱変位方向θ2〜θ7、ワークWの温度Tw、および、ワークWの線膨張係数に基づいて、加工時におけるワークWの所定点P2〜P7の熱変位補正位置Ob2〜Ob7を算出する。そして、ワークWの所定点P2〜P7を工具5により加工する際に、熱変位補正位置Ob2〜Ob7に基づいてワークWの基準点P1に対する工具5の相対位置を補正する。
【解決手段】ワークWの温度を実際に変化させた時にワークWの基準点P1に対するワークWの所定点P2〜P7の熱変位方向θ2〜θ7を予め測定しておき、測定した熱変位方向θ2〜θ7をデータベース32に記憶しておく。データベース32に記憶されているワークWの所定点P2〜P7の熱変位方向θ2〜θ7、ワークWの温度Tw、および、ワークWの線膨張係数に基づいて、加工時におけるワークWの所定点P2〜P7の熱変位補正位置Ob2〜Ob7を算出する。そして、ワークWの所定点P2〜P7を工具5により加工する際に、熱変位補正位置Ob2〜Ob7に基づいてワークWの基準点P1に対する工具5の相対位置を補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械においてワークの熱変位を補正する熱変位補正装置および熱変位補正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2006−281335号公報(特許文献1)にワークの熱変位を補正する熱変位補正方法が記載されている。当該文献には、ワークの熱変位量を考慮して、工具の刃先位置を補正することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−281335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、本発明者らは、ワークの線膨張係数を理論値として、かつ、熱変位の方向を基準点と結ぶ直線方向に伸びるものと考え、ワークの熱変位量を理論値を用いて算出した。しかしながら、実際に実験を行った熱変位量の実測値と理論値としての熱変位量とを比較すると、両者にずれが生じていることを発見した。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、より高精度にワーク自身の熱変位補正を行うことができる熱変位補正装置および熱変位補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(熱変位補正装置)
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ワークの形状の影響によって、熱変位する方向や熱変位の大きさが、理論値とは異なることを見出した。具体的には、基準点から見た所定点の熱変位方向は、基準点と所定点とを結ぶ直線上からずれていることを発見した。
【0007】
(請求項1)そこで、本発明に係る熱変位補正装置は、ワークの熱変位に基づいて前記ワークの基準点に対する工具の相対位置を補正する熱変位補正装置であって、前記ワークの温度を実際に変化させた時に予め測定した前記ワークの基準点に対する前記ワークの所定点の熱変位方向を記憶するデータベースと、加工時における前記ワークの温度を直接または間接に計測する温度計測手段と、前記データベースに記憶されている前記ワークの所定点の熱変位方向、前記温度計測手段により計測された前記ワークの温度、および、前記ワークの線膨張係数に基づいて、加工時における前記ワークの所定点の熱変位補正位置を算出する熱変位補正位置算出手段と、前記ワークの所定点を前記工具により加工する際に、前記熱変位補正位置に基づいて前記ワークの基準点に対する前記工具の相対位置を補正する補正手段とを備える。
【0008】
(請求項2)また、前記データベースは、前記ワークの温度を実際に変化させた時に予め測定した前記ワークの基準点に対する前記ワークの所定点の熱変位量と前記ワークの温度とに基づいて算出した前記ワークの線膨張係数をさらに記憶し、前記熱変位補正位置算出手段は、前記データベースに記憶されている前記ワークの線膨張係数を用いて、前記ワークの所定点の熱変位補正位置を算出するようにしてもよい。
【0009】
(請求項3)また、前記ワークの所定点は、複数であり、前記データベースに記憶されている前記線膨張係数は、前記ワークの複数の所定点における線膨張係数の平均値であるとしてもよい。
【0010】
(請求項4)また、前記ワークの加工部位は、複数の穴であり、前記ワークの所定点は、それぞれの前記穴であり、前記データベースに記憶されている前記線膨張係数は、前記ワークのそれぞれの所定点の線膨張係数であり、前記熱変位補正位置算出手段は、前記データベースに記憶されている前記ワークのそれぞれの所定点の線膨張係数を用いて、前記ワークのそれぞれの所定点の熱変位補正位置を算出するようにしてもよい。
【0011】
(請求項5)また、前記ワークの加工部位は、曲面形状部位または平面形状部位であり、前記ワークの所定点は、前記ワークの加工部位に含まれる複数の点であり、前記データベースに記憶されている前記熱変位方向は、前記ワークのそれぞれの所定点の熱変位方向であり、前記熱変位補正位置算出手段は、前記ワークの加工点に応じた前記熱変位方向を、前記データベースに記憶されている前記ワークのそれぞれの所定点の熱変位方向を用いて補間することにより算出するようにしてもよい。
【0012】
(熱変位補正方法)
上記においては、本発明を熱変位補正装置として捉えたものとして記載した。この他に、本発明は、熱変位補正方法として捉えることもできる。
【0013】
(請求項6)本発明に係る熱変位補正方法は、ワークの熱変位に基づいて前記ワークの基準点に対する工具の相対位置を補正する熱変位補正方法であって、前記ワークの温度を実際に変化させた時に前記ワークの基準点に対する前記ワークの所定点の熱変位方向を予め測定する測定工程と、加工時における前記ワークの温度を直接または間接に計測する温度計測工程と、予め測定した前記ワークの所定点の熱変位方向、前記温度計測工程にて計測された前記ワークの温度、および、前記ワークの線膨張係数に基づいて、加工時における前記ワークの所定点の熱変位補正位置を算出する熱変位補正位置算出工程と、前記ワークの所定点を前記工具により加工する際に、前記熱変位補正位置に基づいて前記ワークの基準点に対する前記工具の相対位置を補正する補正工程とを備える。なお、上述した本発明に係る熱変位補正装置についての特徴部分は、当該熱変位補正方法についても同様に適用できる。
【発明の効果】
【0014】
(請求項1)本発明によれば、ワークの基準点に対するワークの所定点の熱変位方向を、実際に実験を行って測定することにより取得している。つまり、実測値としての熱変位方向がデータベースに記憶されている。そして、このデータベースに記憶されている実測値としての熱変位方向を用いて、加工時のワークの温度に応じた熱変位補正位置を算出している。ここで、熱変位位置とは、ワークの温度が基準温度の場合におけるワークの所定点を原点として、ワークの温度が基準温度から変化することに伴って、ワークの所定点が移動した座標を意味する。
【0015】
従って、本発明によれば、熱変位補正を行うための熱変位補正位置を、実際の熱変位位置に高精度に一致させることができる。その結果、加工精度を向上することができる。ここで、ワークの温度を直接に測定する手段として、ワークに対して接触式または非接触式の温度センサを用いることができる。また、ワークの温度を間接に測定する手段として、ワークの加工点に供給するクーラントの温度をワークの温度と推定する手段や、室温をワークの温度と推定する手段がある。
【0016】
(請求項2)本発明者らは、熱変位方向のみならず、線膨張係数についても、ワークの形状などの影響によりワークの部位毎に異なることを見出した。そこで、本発明においては、実際に実験を行って、各所定点における線膨張係数を測定することとした。そして、加工時のワークの温度と実験により測定された線膨張係数を用いて熱変位量を算出することとした。従って、各所定点における熱変位量を、実際の熱変位量に高精度に一致させることができる。つまり、各所定点における熱変位方向および熱変位量を、実際の熱変位方向および熱変位量に高精度に一致させることができる。その結果、各所定点における熱変位補正位置を、より高精度に実際の熱変位位置に一致させることができる。
【0017】
(請求項3)本発明のように、熱変位量の算出に用いる線膨張係数として、実験により測定された値の平均値を用いることで、当該線膨張係数を実際のワークの線膨張係数に近似した値にできる。その結果、各所定点における熱変位量を、実際の熱変位量に高精度に一致させることができる。さらに、線膨張係数として、複数の所定点に対して一定の値を用いることにより、熱変位量の演算処理速度を高速にできる。これにより、加工位置に対して高い追従性を確保することができるため、加工精度を向上することができる。
【0018】
(請求項4)本発明によれば、加工部位としての複数の穴に対して、それぞれの線膨張係数をデータベースに記憶している。従って、各所定点に応じた線膨張係数を用いて、各所定点の熱変位量を算出している。その結果、各所定点における熱変位量を、実際の熱変位量に確実に一致させることができる。
【0019】
(請求項5)曲面形状部位または平面形状部位を加工する場合において、散在する所定点における熱変位量を高精度に算出することができると共に、各所定点の間においても熱変位量を補間することにより高精度に算出することができる。従って、曲面形状部位または平面形状部位を加工する場合であっても、各部位の実際の熱変位量に応じた補正が可能となる。その結果、高精度な加工を実現できる。
【0020】
(請求項6)本発明の熱変位補正方法においては、上述した本発明の熱変位補正装置における効果と同様の効果を奏することができる。また、熱変位補正装置についての上述した特徴部分を熱変位補正方法に適用した場合には、それぞれの特徴による効果を同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一実施形態:工作機械の側面図である。
【図2】ワークの斜視図である。
【図3】ワークの平面図である。
【図4】熱変位補正の手順に関するフローチャートである。
【図5】事前測定する際に熱変位した穴P5の中心位置Oa5について示す拡大図である。
【図6】工作機械の制御ブロック構成である。
【図7】データベースに記憶する情報を示す表である。
【図8】穴P5の熱変位補正位置Ob5を示す拡大図である。
【図9】熱変位補正位置算出処理を示すフローチャートである。
【図10】第二実施形態:データベースに記憶する情報を示す表である。
【図11】第三実施形態:ワークの形状とデータベースに記憶する情報と加工位置との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(1.工作機械の機械構成)
本発明の熱変位補正装置および熱変位補正方法を適用した工作機械の一例として、横型マシニングセンタを例に挙げ、図1を参照して説明する。当該工作機械は駆動軸として、相互に直交する3つの直進軸(X,Y,Z軸)を有する工作機械である。
【0023】
図1に示すように、工作機械は、ベッド1と、ベッド1上にてX軸方向に移動可能なコラム2と、コラム2の前面(図1の左面)にてY軸方向に移動可能なサドル3と、サドル3に回転可能に支持され工具5を保持する回転主軸4と、ベッド1上にてZ軸方向に移動可能でありワークWを載置するテーブル6とを備える。
【0024】
(2.ワークの形状)
次に、ワークWの一例について図2および図3を参照して説明する。図2および図3に示すように、台形の開口部を有する有底箱形に形成された箱形本体11と、箱形本体11の開口縁全周にて外側へ延在したフランジ部12と、箱形本体11の内部にて側面と底面とに固定された複数のリブ13〜16とを備える。さらに、フランジ部12には、7個の穴P1〜P7が貫通形成されている。このワークWは、例えば、アルミニウムや鉄などの金属製からなる。つまり、ワークWは、X軸方向においても、Y軸方向においても、非対称形状である。特に、このような非対称形状からなるワークWは、理論値とは異なる熱変位をすることが分かった。
【0025】
ここで、当該ワークWにおいて、穴P1〜P7を加工部位とする。図2および図3には図示しないが、ワークWの温度が基準温度T0の場合において、穴P1の中心位置O1の座標は(X1,Y1)であり、穴P2の中心位置O2の座標は(X2,Y2)であり、穴P3の中心位置O3の座標は(X3,Y3)であり、穴P4の中心位置O4の座標は(X4,Y4)であり、穴P5の中心位置O5の座標は(X5,Y5)であり、穴P6の中心位置O6の座標は(X6,Y6)であり、穴P7の中心位置O7の座標は(X7,Y7)である。
【0026】
(3.熱変位補正の手順)
本実施形態における熱変位補正に関する手順について、図4のフローチャートを参照して説明する。図4に示すように、まず、測定室における事前測定により、穴P1の中心位置O1を基準点とした場合に、各穴P2〜P7の熱変位方向を表す角度θ2〜θ7、および、各穴P2〜P7の線膨張係数a2〜a7を算出して、後述するデータベースに記憶しておく(ステップS1)。その後に、データベースに記憶されている情報を用いた熱変位補正を行いながら、ワークWの穴P1〜P7を工具5により加工する(ステップS2)。以下に、それぞれのステップにおける詳細について説明する。
【0027】
(4.熱変位位置の事前測定)
図4のステップS1における事前測定について、図3および図5を参照して説明する。上述したワークWにおいて、穴P1〜P7を加工部位とした場合に、各穴P1〜P7の熱変位位置を実際に測定する。ここで、熱変位位置とは、ワークWの温度Twが基準温度T0の場合における各穴P2〜P7の中心位置O2〜O7のそれぞれを原点として、ワークWの温度Twが基準温度T0から変化することに伴って、穴P2〜P7の中心位置O2〜O7が移動した座標を意味する。
【0028】
まず、熱変位位置の実測に際して、ワークWを測定室に設置して、測定室の温度を基準温度T0にして、ワークWの温度が安定した状態となった後に、穴P1〜P7の中心位置O1〜O7を測定した。このときの穴P1〜P7の中心位置O1〜O7を、それぞれの穴P1〜P7の基準位置とする。
【0029】
続いて、測定室の温度を基準温度T0から変化させて所定の設定温度Tにし、ワークWの温度が安定した状態となった後に、穴P2〜P7の中心位置Oa2(Xa2,Ya2),・・・,Oa7(Xa7,Ya7)を測定した。ここで、穴P1を基準点とするため、穴P1の中心位置(X1,Y1)は、測定室の温度を基準温度T0から変化させた場合であっても移動しないものとする。
【0030】
そして、基準温度T0における中心位置O2〜O7と変化後の設定温度Tにおける中心位置Oa2〜Oa7とにより、ワークWの温度を基準温度T0から実際に変化させた時に穴P1の中心位置O1を基準点とした場合のワークWの所定点である穴P2〜P7の中心位置O2〜O7の熱変位方向および熱変位量を予め測定する。
【0031】
ここで、穴P5を例に挙げて、図5を参照して詳細に説明する。図5に示すように、ワークWの温度を基準温度T0から設定温度Tに変化させることで、穴P5の中心位置O5は、中心位置Oa5へ熱変位する。つまり、穴P5の熱変位量は、ΔP5であった。穴P2〜P7の熱変位量ΔP2〜ΔP7は、式(1)に従って算出される。
【0032】
【数1】
【0033】
また、穴P5の熱変位方向は、Y軸プラス方向から反時計回りにθ5の角度となる方向であった。この穴P5の熱変位方向は、基準穴P1と穴P5の中心位置O1,O5同士を結ぶ直線に対してずれた方向であった。穴P2〜P7の熱変位方向を表すY軸プラス方向からの角度θ2〜θ7は、式(2)に従って算出される。
【0034】
【数2】
【0035】
そして、図3に示すように、測定の結果、測定室の温度が所定の設定温度Tの場合において、穴P1の中心位置O1を基準点とした場合に、穴P2〜P7の中心位置O2〜O7の熱変位量ΔP2〜ΔP7は、図3の各穴P2〜P7の矢印の大きさに比例した量であった。なお、図3において、矢印の大きさは、実際の熱変位量に対して設定された倍率を乗じた長さとして拡大図示している。さらに、穴P2〜P7の中心位置O2〜O7の熱変位方向は、各穴P2〜P7の矢印にて示す方向であった。ここで、測定室の温度を上記設定温度Tから変更した場合にも、穴P2〜P7の中心位置O2〜O7の熱変位方向は、図3の各穴P2〜P7の矢印にて示す方向に一致した。
【0036】
続いて、これらの各穴P1〜P7の実測値に基づいて、穴P1の中心位置O1を基準点とした場合に、各穴P2〜P7の線膨張係数a2〜a7を算出した。ここで、再び、図5を参照して、穴P5を例に挙げて詳細に説明する。基準穴P1に対する穴P5の線膨張係数はa5であった。線膨張係数a5は、ワークWの温度変化ΔT(=T−T0)と熱変位量ΔP5との関係から算出される。また、穴P3〜P7の線膨張係数はa3〜a7であった。ここで、線膨張係数anは、式(3)に従って算出される。
【0037】
【数3】
【0038】
以上説明したように、測定室における事前測定により、穴P1の中心位置O1を基準点とした場合に、各穴P2〜P7の熱変位方向を表す角度θ2〜θ7、および、各穴P2〜P7の線膨張係数a2〜a7を算出して、後述するデータベースに記憶しておく。
【0039】
(5.工作機械の制御ブロック構成)
次に、上述した工作機械の制御ブロック構成について図6〜図9を参照して説明する。図6に示すように、工作機械は、NCプログラム41に基づいて、各軸モータ43を制御する制御装置30を備える。そして、ワークWに対して工具5が相対移動することによって、工具5によりワークWが加工される。また、ワークWの加工は、ワークWにクーラントをかけながら行う。ここで、ワークWの温度Twは、室温Trおよびクーラント温度Tcに影響を受ける。ただし、クーラント温度Tcは、室温Trに一致するように温度制御されている。そのため、ワークWの温度Twはクーラント温度Tcにほぼ一致する。
【0040】
クーラント温度Tcの温度制御を行うために、工作機械には、クーラント温度Tcを計測するクーラント温度センサ42が設けられている。本実施形態においては、このクーラント温度センサ42により計測されるクーラント温度Tcを用いて、制御装置30が熱変位補正を行う。なお、以下に説明する熱変位補正において、クーラント温度Tcを用いているが、このクーラント温度TcはワークWの温度Twの推定値として用いられている。つまり、クーラント温度センサ42により、ワークWの温度Twを間接に計測していることになる。
【0041】
この制御装置30は、基準制御値算出部31と、データベース32と、熱変位補正位置算出部33と、補正部34と、各軸ドライバ35とを備える。基準制御値算出部31は、NCプログラム41の指令値と各軸モータ43の現在位置に基づいて基準位置制御値を算出する。基準位置制御値とは、後述する熱変位補正を行う前における各軸モータ43に対する位置制御値である。
【0042】
データベース32は、上述において図3および図5を用いて説明したように、測定室にてワークWの温度Twを実際に変化させた時に予め測定した情報、具体的には、穴P1の中心位置O1を基準点とした場合において、穴P2〜P7における熱変位方向を表す角度θ2〜θ7および線膨張係数a2〜a7を記憶している。つまり、図7に示すように、データベース32には、各穴P2〜P7に関連づけて、線膨張係数a2〜a7と熱変位方向を表す角度θ2〜θ7とが記憶されている。
【0043】
熱変位補正位置算出部33は、基準制御値算出部31により算出された基準位置制御値に応じた熱変位補正位置Obnを算出する。熱変位補正位置算出部33による処理について、図9のフローチャートを参照しながら説明する。さらに、熱変位補正位置算出部33により算出される熱変位補正位置Obnについては、図6および図8を参照して説明する。なお、図8は、穴P5を例に挙げて図示している。
【0044】
熱変位補正位置算出部33は、基準制御値算出部31から出力される基準位置制御値、すなわち加工位置としての穴P1〜P7の何れであるかを取得する(ステップS11)。続いて、熱変位補正位置算出部33は、取得した加工位置である穴Pnに対応する線膨張係数anおよび角度θnを、データベース32から取得する(ステップS12)。続いて、クーラント温度センサ42からクーラント温度Tcを取得する(ステップS13)。
【0045】
そして、熱変位補正位置算出部33は、データベース32から取得した該当する穴Pnの線膨張係数anと、クーラント温度センサ42により計測されるクーラント温度Tcとに基づいて、式(4)に従って、穴P1の中心位置O1を基準点とした場合に該当する穴Pnの熱変位量ΔPbnを算出する(ステップS14)。
【0046】
【数4】
【0047】
続いて、熱変位補正位置算出部33は、算出した熱変位量ΔPbnと、データベース32から取得した該当する穴Pnの熱変位方向を表す角度θnとに基づいて、式(5)に従って、穴P1の中心位置O1を基準点とした場合に該当する穴Pnの熱変位補正位置Obnを算出する。ここで、上記にも記載したように、熱変位補正位置Ob2〜Ob7とは、基準温度T0における各穴P2〜P7の中心位置O2〜O7のそれぞれを原点として、ワークWの温度Twが基準温度T0から変化することに伴って、穴P2〜P7の中心位置O2〜O7が移動した座標である。式(5)に従って、各穴Pbnの熱変位補正位置ObnのX軸座標ΔPbxnおよびY軸座標ΔPbynを算出する。そして、処理を終了する。
【0048】
【数5】
【0049】
図6に戻り、制御装置30の機能ブロック構成についての説明を継続する。補正部34は、基準制御値算出部31により算出された基準位置制御値に対して、熱変位補正位置算出部33により算出された熱変位補正位置Ob2〜Ob7の分を補正して、補正位置制御値を算出する。補正部34は、補正位置制御値を各軸ドライバ35に出力して、各軸ドライバ35を駆動する。各軸ドライバ35は、各軸モータ43を駆動する。つまり、補正部34は、ワークWの各穴O2〜O7を工具5により加工する際に、熱変位補正位置Ob2〜Ob7に基づいてワークWの基準点である穴P1の中心位置O1に対する工具5の相対位置を補正する。
【0050】
以上説明したように、ワークWの基準点である穴P1の中心位置O1に対する他の穴P2〜P7の中心位置O2〜O7の熱変位方向および線膨張係数を、実際に実験を行って測定することにより取得している。つまり、実測値としての熱変位方向および線膨張係数がデータベース32に記憶されている。そして、このデータベース32に記憶されている実測値としての熱変位方向および線膨張係数を用いて、加工時のワークWの温度Twに応じた熱変位補正位置Ob2〜Ob7を算出している。従って、熱変位補正を行うための熱変位補正位置Ob2〜Ob7を、ワークWの実際の熱変位位置に高精度に一致させることができる。その結果、加工精度を向上することができる。
【0051】
さらに、基準点としての穴P1以外の穴P2〜P7それぞれに対して、それぞれの線膨張係数a2〜a7をデータベース32に記憶している。従って、各穴P2〜P7に応じた線膨張係数a2〜a7を用いて、各穴P2〜P7の中心位置O2〜O7の熱変位量ΔPb2〜ΔPb7を算出している。その結果、各穴P2〜P7の中心位置O2〜O7における熱変位量ΔPb2〜ΔPb7を、ワークWの実際の熱変位量に確実に一致させることができる。
【0052】
<第二実施形態>
データベース32に記憶する情報についての第二実施形態について、図10を参照して説明する。図10に示すように、データベース32において、穴P2〜P7における線膨張係数として、穴P2〜P7全てについて一定値aaveを記憶している。この線膨張係数aaveは、実測した各穴P2〜P7における線膨張係数a1〜a7の平均値である。この平均値である線膨張係数aaveは、当然ではあるが、理論値と一致するとは限らない。そして、熱変位補正位置算出部33による熱変位補正位置算出処理は、線膨張係数aaveが相違するのみで、上記と同様の処理となる。
【0053】
このように、熱変位補正位置算出部33における熱変位量ΔPbnの算出に用いる線膨張係数aaveとして、実験により測定された値の平均値を用いることで、当該線膨張係数aaveを実際のワークWの線膨張係数に近似した値にできる。その結果、各穴P2〜P7における熱変位量ΔPbnを、実際の熱変位量に高精度に一致させることができる。さらに、線膨張係数aaveとして、複数の穴P2〜P7に対して一定の値を用いることにより、熱変位補正位置算出部33における熱変位量ΔPbnの演算処理速度を高速にできる。これにより、加工位置に対して高い追従性を確保することができるため、加工精度を向上することができる。
【0054】
<第三実施形態>
上記においては、ワークWの穴P1〜P7を加工部位とした場合について説明した。この他に、図11に示すワークWの面を加工部位として、上記の熱変位補正を適用することもできる。ワークWの面などの加工部位としては、曲面形状部位であってもよいし、平面形状部位であってもよい。
【0055】
この場合、図11に示すように、ワークWの加工部位における複数の点P11,P12,P13,P14についての実際の熱変位位置の事前測定を行って、データベース32に記憶しておく。そして、加工時において、データベース32に記憶されている情報を用いて補間することにより、基準制御値算出部31にて算出された基準位置制御値に対応するワークWの加工位置Pにおける熱変位補正位置ΔPを算出する。具体的には、当該ワークWの加工位置Pにおける熱変位方向を表す角度θは、データベース32に記憶されている情報の中から、当該加工位置Pに隣接する複数の位置P11,P12,P13,P14における熱変位方向を表す角度θを補間することにより算出する。さらに、当該ワークWの加工位置Pにおける線膨張係数aは、データベース32に記憶されている情報の中から、当該加工位置Pに隣接する複数の位置P11,P12,P13,P14における線膨張係数を補間することにより算出する。なお、線膨張係数は、第二実施形態にて説明したように、平均値としての一定値を用いることもできる。そして、補正部34にて、当該熱変位補正位置を用いて熱変位補正を行いながら面加工を行う。
【0056】
<その他>
上記実施形態においては、ワークWの温度Twについてクーラント温度Tcを用いた。この他に、ワークWの温度Twが室温Trに一致するのであれば、室温Trを計測して、計測した室温TrをワークWの温度Twとして適用することもできる。また、非接触温度センサを用いることで、ワークW自身の温度Twを直接計測できる。
【符号の説明】
【0057】
5:工具、 30:制御装置、 31:基準制御値算出部
32:データベース、 33:熱変位補正位置算出部、 34:補正部
42:クーラント温度センサ
P1:基準穴、 P2〜P7:熱変位補正対象の穴、 W:ワーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械においてワークの熱変位を補正する熱変位補正装置および熱変位補正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2006−281335号公報(特許文献1)にワークの熱変位を補正する熱変位補正方法が記載されている。当該文献には、ワークの熱変位量を考慮して、工具の刃先位置を補正することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−281335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、本発明者らは、ワークの線膨張係数を理論値として、かつ、熱変位の方向を基準点と結ぶ直線方向に伸びるものと考え、ワークの熱変位量を理論値を用いて算出した。しかしながら、実際に実験を行った熱変位量の実測値と理論値としての熱変位量とを比較すると、両者にずれが生じていることを発見した。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、より高精度にワーク自身の熱変位補正を行うことができる熱変位補正装置および熱変位補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(熱変位補正装置)
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ワークの形状の影響によって、熱変位する方向や熱変位の大きさが、理論値とは異なることを見出した。具体的には、基準点から見た所定点の熱変位方向は、基準点と所定点とを結ぶ直線上からずれていることを発見した。
【0007】
(請求項1)そこで、本発明に係る熱変位補正装置は、ワークの熱変位に基づいて前記ワークの基準点に対する工具の相対位置を補正する熱変位補正装置であって、前記ワークの温度を実際に変化させた時に予め測定した前記ワークの基準点に対する前記ワークの所定点の熱変位方向を記憶するデータベースと、加工時における前記ワークの温度を直接または間接に計測する温度計測手段と、前記データベースに記憶されている前記ワークの所定点の熱変位方向、前記温度計測手段により計測された前記ワークの温度、および、前記ワークの線膨張係数に基づいて、加工時における前記ワークの所定点の熱変位補正位置を算出する熱変位補正位置算出手段と、前記ワークの所定点を前記工具により加工する際に、前記熱変位補正位置に基づいて前記ワークの基準点に対する前記工具の相対位置を補正する補正手段とを備える。
【0008】
(請求項2)また、前記データベースは、前記ワークの温度を実際に変化させた時に予め測定した前記ワークの基準点に対する前記ワークの所定点の熱変位量と前記ワークの温度とに基づいて算出した前記ワークの線膨張係数をさらに記憶し、前記熱変位補正位置算出手段は、前記データベースに記憶されている前記ワークの線膨張係数を用いて、前記ワークの所定点の熱変位補正位置を算出するようにしてもよい。
【0009】
(請求項3)また、前記ワークの所定点は、複数であり、前記データベースに記憶されている前記線膨張係数は、前記ワークの複数の所定点における線膨張係数の平均値であるとしてもよい。
【0010】
(請求項4)また、前記ワークの加工部位は、複数の穴であり、前記ワークの所定点は、それぞれの前記穴であり、前記データベースに記憶されている前記線膨張係数は、前記ワークのそれぞれの所定点の線膨張係数であり、前記熱変位補正位置算出手段は、前記データベースに記憶されている前記ワークのそれぞれの所定点の線膨張係数を用いて、前記ワークのそれぞれの所定点の熱変位補正位置を算出するようにしてもよい。
【0011】
(請求項5)また、前記ワークの加工部位は、曲面形状部位または平面形状部位であり、前記ワークの所定点は、前記ワークの加工部位に含まれる複数の点であり、前記データベースに記憶されている前記熱変位方向は、前記ワークのそれぞれの所定点の熱変位方向であり、前記熱変位補正位置算出手段は、前記ワークの加工点に応じた前記熱変位方向を、前記データベースに記憶されている前記ワークのそれぞれの所定点の熱変位方向を用いて補間することにより算出するようにしてもよい。
【0012】
(熱変位補正方法)
上記においては、本発明を熱変位補正装置として捉えたものとして記載した。この他に、本発明は、熱変位補正方法として捉えることもできる。
【0013】
(請求項6)本発明に係る熱変位補正方法は、ワークの熱変位に基づいて前記ワークの基準点に対する工具の相対位置を補正する熱変位補正方法であって、前記ワークの温度を実際に変化させた時に前記ワークの基準点に対する前記ワークの所定点の熱変位方向を予め測定する測定工程と、加工時における前記ワークの温度を直接または間接に計測する温度計測工程と、予め測定した前記ワークの所定点の熱変位方向、前記温度計測工程にて計測された前記ワークの温度、および、前記ワークの線膨張係数に基づいて、加工時における前記ワークの所定点の熱変位補正位置を算出する熱変位補正位置算出工程と、前記ワークの所定点を前記工具により加工する際に、前記熱変位補正位置に基づいて前記ワークの基準点に対する前記工具の相対位置を補正する補正工程とを備える。なお、上述した本発明に係る熱変位補正装置についての特徴部分は、当該熱変位補正方法についても同様に適用できる。
【発明の効果】
【0014】
(請求項1)本発明によれば、ワークの基準点に対するワークの所定点の熱変位方向を、実際に実験を行って測定することにより取得している。つまり、実測値としての熱変位方向がデータベースに記憶されている。そして、このデータベースに記憶されている実測値としての熱変位方向を用いて、加工時のワークの温度に応じた熱変位補正位置を算出している。ここで、熱変位位置とは、ワークの温度が基準温度の場合におけるワークの所定点を原点として、ワークの温度が基準温度から変化することに伴って、ワークの所定点が移動した座標を意味する。
【0015】
従って、本発明によれば、熱変位補正を行うための熱変位補正位置を、実際の熱変位位置に高精度に一致させることができる。その結果、加工精度を向上することができる。ここで、ワークの温度を直接に測定する手段として、ワークに対して接触式または非接触式の温度センサを用いることができる。また、ワークの温度を間接に測定する手段として、ワークの加工点に供給するクーラントの温度をワークの温度と推定する手段や、室温をワークの温度と推定する手段がある。
【0016】
(請求項2)本発明者らは、熱変位方向のみならず、線膨張係数についても、ワークの形状などの影響によりワークの部位毎に異なることを見出した。そこで、本発明においては、実際に実験を行って、各所定点における線膨張係数を測定することとした。そして、加工時のワークの温度と実験により測定された線膨張係数を用いて熱変位量を算出することとした。従って、各所定点における熱変位量を、実際の熱変位量に高精度に一致させることができる。つまり、各所定点における熱変位方向および熱変位量を、実際の熱変位方向および熱変位量に高精度に一致させることができる。その結果、各所定点における熱変位補正位置を、より高精度に実際の熱変位位置に一致させることができる。
【0017】
(請求項3)本発明のように、熱変位量の算出に用いる線膨張係数として、実験により測定された値の平均値を用いることで、当該線膨張係数を実際のワークの線膨張係数に近似した値にできる。その結果、各所定点における熱変位量を、実際の熱変位量に高精度に一致させることができる。さらに、線膨張係数として、複数の所定点に対して一定の値を用いることにより、熱変位量の演算処理速度を高速にできる。これにより、加工位置に対して高い追従性を確保することができるため、加工精度を向上することができる。
【0018】
(請求項4)本発明によれば、加工部位としての複数の穴に対して、それぞれの線膨張係数をデータベースに記憶している。従って、各所定点に応じた線膨張係数を用いて、各所定点の熱変位量を算出している。その結果、各所定点における熱変位量を、実際の熱変位量に確実に一致させることができる。
【0019】
(請求項5)曲面形状部位または平面形状部位を加工する場合において、散在する所定点における熱変位量を高精度に算出することができると共に、各所定点の間においても熱変位量を補間することにより高精度に算出することができる。従って、曲面形状部位または平面形状部位を加工する場合であっても、各部位の実際の熱変位量に応じた補正が可能となる。その結果、高精度な加工を実現できる。
【0020】
(請求項6)本発明の熱変位補正方法においては、上述した本発明の熱変位補正装置における効果と同様の効果を奏することができる。また、熱変位補正装置についての上述した特徴部分を熱変位補正方法に適用した場合には、それぞれの特徴による効果を同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一実施形態:工作機械の側面図である。
【図2】ワークの斜視図である。
【図3】ワークの平面図である。
【図4】熱変位補正の手順に関するフローチャートである。
【図5】事前測定する際に熱変位した穴P5の中心位置Oa5について示す拡大図である。
【図6】工作機械の制御ブロック構成である。
【図7】データベースに記憶する情報を示す表である。
【図8】穴P5の熱変位補正位置Ob5を示す拡大図である。
【図9】熱変位補正位置算出処理を示すフローチャートである。
【図10】第二実施形態:データベースに記憶する情報を示す表である。
【図11】第三実施形態:ワークの形状とデータベースに記憶する情報と加工位置との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(1.工作機械の機械構成)
本発明の熱変位補正装置および熱変位補正方法を適用した工作機械の一例として、横型マシニングセンタを例に挙げ、図1を参照して説明する。当該工作機械は駆動軸として、相互に直交する3つの直進軸(X,Y,Z軸)を有する工作機械である。
【0023】
図1に示すように、工作機械は、ベッド1と、ベッド1上にてX軸方向に移動可能なコラム2と、コラム2の前面(図1の左面)にてY軸方向に移動可能なサドル3と、サドル3に回転可能に支持され工具5を保持する回転主軸4と、ベッド1上にてZ軸方向に移動可能でありワークWを載置するテーブル6とを備える。
【0024】
(2.ワークの形状)
次に、ワークWの一例について図2および図3を参照して説明する。図2および図3に示すように、台形の開口部を有する有底箱形に形成された箱形本体11と、箱形本体11の開口縁全周にて外側へ延在したフランジ部12と、箱形本体11の内部にて側面と底面とに固定された複数のリブ13〜16とを備える。さらに、フランジ部12には、7個の穴P1〜P7が貫通形成されている。このワークWは、例えば、アルミニウムや鉄などの金属製からなる。つまり、ワークWは、X軸方向においても、Y軸方向においても、非対称形状である。特に、このような非対称形状からなるワークWは、理論値とは異なる熱変位をすることが分かった。
【0025】
ここで、当該ワークWにおいて、穴P1〜P7を加工部位とする。図2および図3には図示しないが、ワークWの温度が基準温度T0の場合において、穴P1の中心位置O1の座標は(X1,Y1)であり、穴P2の中心位置O2の座標は(X2,Y2)であり、穴P3の中心位置O3の座標は(X3,Y3)であり、穴P4の中心位置O4の座標は(X4,Y4)であり、穴P5の中心位置O5の座標は(X5,Y5)であり、穴P6の中心位置O6の座標は(X6,Y6)であり、穴P7の中心位置O7の座標は(X7,Y7)である。
【0026】
(3.熱変位補正の手順)
本実施形態における熱変位補正に関する手順について、図4のフローチャートを参照して説明する。図4に示すように、まず、測定室における事前測定により、穴P1の中心位置O1を基準点とした場合に、各穴P2〜P7の熱変位方向を表す角度θ2〜θ7、および、各穴P2〜P7の線膨張係数a2〜a7を算出して、後述するデータベースに記憶しておく(ステップS1)。その後に、データベースに記憶されている情報を用いた熱変位補正を行いながら、ワークWの穴P1〜P7を工具5により加工する(ステップS2)。以下に、それぞれのステップにおける詳細について説明する。
【0027】
(4.熱変位位置の事前測定)
図4のステップS1における事前測定について、図3および図5を参照して説明する。上述したワークWにおいて、穴P1〜P7を加工部位とした場合に、各穴P1〜P7の熱変位位置を実際に測定する。ここで、熱変位位置とは、ワークWの温度Twが基準温度T0の場合における各穴P2〜P7の中心位置O2〜O7のそれぞれを原点として、ワークWの温度Twが基準温度T0から変化することに伴って、穴P2〜P7の中心位置O2〜O7が移動した座標を意味する。
【0028】
まず、熱変位位置の実測に際して、ワークWを測定室に設置して、測定室の温度を基準温度T0にして、ワークWの温度が安定した状態となった後に、穴P1〜P7の中心位置O1〜O7を測定した。このときの穴P1〜P7の中心位置O1〜O7を、それぞれの穴P1〜P7の基準位置とする。
【0029】
続いて、測定室の温度を基準温度T0から変化させて所定の設定温度Tにし、ワークWの温度が安定した状態となった後に、穴P2〜P7の中心位置Oa2(Xa2,Ya2),・・・,Oa7(Xa7,Ya7)を測定した。ここで、穴P1を基準点とするため、穴P1の中心位置(X1,Y1)は、測定室の温度を基準温度T0から変化させた場合であっても移動しないものとする。
【0030】
そして、基準温度T0における中心位置O2〜O7と変化後の設定温度Tにおける中心位置Oa2〜Oa7とにより、ワークWの温度を基準温度T0から実際に変化させた時に穴P1の中心位置O1を基準点とした場合のワークWの所定点である穴P2〜P7の中心位置O2〜O7の熱変位方向および熱変位量を予め測定する。
【0031】
ここで、穴P5を例に挙げて、図5を参照して詳細に説明する。図5に示すように、ワークWの温度を基準温度T0から設定温度Tに変化させることで、穴P5の中心位置O5は、中心位置Oa5へ熱変位する。つまり、穴P5の熱変位量は、ΔP5であった。穴P2〜P7の熱変位量ΔP2〜ΔP7は、式(1)に従って算出される。
【0032】
【数1】
【0033】
また、穴P5の熱変位方向は、Y軸プラス方向から反時計回りにθ5の角度となる方向であった。この穴P5の熱変位方向は、基準穴P1と穴P5の中心位置O1,O5同士を結ぶ直線に対してずれた方向であった。穴P2〜P7の熱変位方向を表すY軸プラス方向からの角度θ2〜θ7は、式(2)に従って算出される。
【0034】
【数2】
【0035】
そして、図3に示すように、測定の結果、測定室の温度が所定の設定温度Tの場合において、穴P1の中心位置O1を基準点とした場合に、穴P2〜P7の中心位置O2〜O7の熱変位量ΔP2〜ΔP7は、図3の各穴P2〜P7の矢印の大きさに比例した量であった。なお、図3において、矢印の大きさは、実際の熱変位量に対して設定された倍率を乗じた長さとして拡大図示している。さらに、穴P2〜P7の中心位置O2〜O7の熱変位方向は、各穴P2〜P7の矢印にて示す方向であった。ここで、測定室の温度を上記設定温度Tから変更した場合にも、穴P2〜P7の中心位置O2〜O7の熱変位方向は、図3の各穴P2〜P7の矢印にて示す方向に一致した。
【0036】
続いて、これらの各穴P1〜P7の実測値に基づいて、穴P1の中心位置O1を基準点とした場合に、各穴P2〜P7の線膨張係数a2〜a7を算出した。ここで、再び、図5を参照して、穴P5を例に挙げて詳細に説明する。基準穴P1に対する穴P5の線膨張係数はa5であった。線膨張係数a5は、ワークWの温度変化ΔT(=T−T0)と熱変位量ΔP5との関係から算出される。また、穴P3〜P7の線膨張係数はa3〜a7であった。ここで、線膨張係数anは、式(3)に従って算出される。
【0037】
【数3】
【0038】
以上説明したように、測定室における事前測定により、穴P1の中心位置O1を基準点とした場合に、各穴P2〜P7の熱変位方向を表す角度θ2〜θ7、および、各穴P2〜P7の線膨張係数a2〜a7を算出して、後述するデータベースに記憶しておく。
【0039】
(5.工作機械の制御ブロック構成)
次に、上述した工作機械の制御ブロック構成について図6〜図9を参照して説明する。図6に示すように、工作機械は、NCプログラム41に基づいて、各軸モータ43を制御する制御装置30を備える。そして、ワークWに対して工具5が相対移動することによって、工具5によりワークWが加工される。また、ワークWの加工は、ワークWにクーラントをかけながら行う。ここで、ワークWの温度Twは、室温Trおよびクーラント温度Tcに影響を受ける。ただし、クーラント温度Tcは、室温Trに一致するように温度制御されている。そのため、ワークWの温度Twはクーラント温度Tcにほぼ一致する。
【0040】
クーラント温度Tcの温度制御を行うために、工作機械には、クーラント温度Tcを計測するクーラント温度センサ42が設けられている。本実施形態においては、このクーラント温度センサ42により計測されるクーラント温度Tcを用いて、制御装置30が熱変位補正を行う。なお、以下に説明する熱変位補正において、クーラント温度Tcを用いているが、このクーラント温度TcはワークWの温度Twの推定値として用いられている。つまり、クーラント温度センサ42により、ワークWの温度Twを間接に計測していることになる。
【0041】
この制御装置30は、基準制御値算出部31と、データベース32と、熱変位補正位置算出部33と、補正部34と、各軸ドライバ35とを備える。基準制御値算出部31は、NCプログラム41の指令値と各軸モータ43の現在位置に基づいて基準位置制御値を算出する。基準位置制御値とは、後述する熱変位補正を行う前における各軸モータ43に対する位置制御値である。
【0042】
データベース32は、上述において図3および図5を用いて説明したように、測定室にてワークWの温度Twを実際に変化させた時に予め測定した情報、具体的には、穴P1の中心位置O1を基準点とした場合において、穴P2〜P7における熱変位方向を表す角度θ2〜θ7および線膨張係数a2〜a7を記憶している。つまり、図7に示すように、データベース32には、各穴P2〜P7に関連づけて、線膨張係数a2〜a7と熱変位方向を表す角度θ2〜θ7とが記憶されている。
【0043】
熱変位補正位置算出部33は、基準制御値算出部31により算出された基準位置制御値に応じた熱変位補正位置Obnを算出する。熱変位補正位置算出部33による処理について、図9のフローチャートを参照しながら説明する。さらに、熱変位補正位置算出部33により算出される熱変位補正位置Obnについては、図6および図8を参照して説明する。なお、図8は、穴P5を例に挙げて図示している。
【0044】
熱変位補正位置算出部33は、基準制御値算出部31から出力される基準位置制御値、すなわち加工位置としての穴P1〜P7の何れであるかを取得する(ステップS11)。続いて、熱変位補正位置算出部33は、取得した加工位置である穴Pnに対応する線膨張係数anおよび角度θnを、データベース32から取得する(ステップS12)。続いて、クーラント温度センサ42からクーラント温度Tcを取得する(ステップS13)。
【0045】
そして、熱変位補正位置算出部33は、データベース32から取得した該当する穴Pnの線膨張係数anと、クーラント温度センサ42により計測されるクーラント温度Tcとに基づいて、式(4)に従って、穴P1の中心位置O1を基準点とした場合に該当する穴Pnの熱変位量ΔPbnを算出する(ステップS14)。
【0046】
【数4】
【0047】
続いて、熱変位補正位置算出部33は、算出した熱変位量ΔPbnと、データベース32から取得した該当する穴Pnの熱変位方向を表す角度θnとに基づいて、式(5)に従って、穴P1の中心位置O1を基準点とした場合に該当する穴Pnの熱変位補正位置Obnを算出する。ここで、上記にも記載したように、熱変位補正位置Ob2〜Ob7とは、基準温度T0における各穴P2〜P7の中心位置O2〜O7のそれぞれを原点として、ワークWの温度Twが基準温度T0から変化することに伴って、穴P2〜P7の中心位置O2〜O7が移動した座標である。式(5)に従って、各穴Pbnの熱変位補正位置ObnのX軸座標ΔPbxnおよびY軸座標ΔPbynを算出する。そして、処理を終了する。
【0048】
【数5】
【0049】
図6に戻り、制御装置30の機能ブロック構成についての説明を継続する。補正部34は、基準制御値算出部31により算出された基準位置制御値に対して、熱変位補正位置算出部33により算出された熱変位補正位置Ob2〜Ob7の分を補正して、補正位置制御値を算出する。補正部34は、補正位置制御値を各軸ドライバ35に出力して、各軸ドライバ35を駆動する。各軸ドライバ35は、各軸モータ43を駆動する。つまり、補正部34は、ワークWの各穴O2〜O7を工具5により加工する際に、熱変位補正位置Ob2〜Ob7に基づいてワークWの基準点である穴P1の中心位置O1に対する工具5の相対位置を補正する。
【0050】
以上説明したように、ワークWの基準点である穴P1の中心位置O1に対する他の穴P2〜P7の中心位置O2〜O7の熱変位方向および線膨張係数を、実際に実験を行って測定することにより取得している。つまり、実測値としての熱変位方向および線膨張係数がデータベース32に記憶されている。そして、このデータベース32に記憶されている実測値としての熱変位方向および線膨張係数を用いて、加工時のワークWの温度Twに応じた熱変位補正位置Ob2〜Ob7を算出している。従って、熱変位補正を行うための熱変位補正位置Ob2〜Ob7を、ワークWの実際の熱変位位置に高精度に一致させることができる。その結果、加工精度を向上することができる。
【0051】
さらに、基準点としての穴P1以外の穴P2〜P7それぞれに対して、それぞれの線膨張係数a2〜a7をデータベース32に記憶している。従って、各穴P2〜P7に応じた線膨張係数a2〜a7を用いて、各穴P2〜P7の中心位置O2〜O7の熱変位量ΔPb2〜ΔPb7を算出している。その結果、各穴P2〜P7の中心位置O2〜O7における熱変位量ΔPb2〜ΔPb7を、ワークWの実際の熱変位量に確実に一致させることができる。
【0052】
<第二実施形態>
データベース32に記憶する情報についての第二実施形態について、図10を参照して説明する。図10に示すように、データベース32において、穴P2〜P7における線膨張係数として、穴P2〜P7全てについて一定値aaveを記憶している。この線膨張係数aaveは、実測した各穴P2〜P7における線膨張係数a1〜a7の平均値である。この平均値である線膨張係数aaveは、当然ではあるが、理論値と一致するとは限らない。そして、熱変位補正位置算出部33による熱変位補正位置算出処理は、線膨張係数aaveが相違するのみで、上記と同様の処理となる。
【0053】
このように、熱変位補正位置算出部33における熱変位量ΔPbnの算出に用いる線膨張係数aaveとして、実験により測定された値の平均値を用いることで、当該線膨張係数aaveを実際のワークWの線膨張係数に近似した値にできる。その結果、各穴P2〜P7における熱変位量ΔPbnを、実際の熱変位量に高精度に一致させることができる。さらに、線膨張係数aaveとして、複数の穴P2〜P7に対して一定の値を用いることにより、熱変位補正位置算出部33における熱変位量ΔPbnの演算処理速度を高速にできる。これにより、加工位置に対して高い追従性を確保することができるため、加工精度を向上することができる。
【0054】
<第三実施形態>
上記においては、ワークWの穴P1〜P7を加工部位とした場合について説明した。この他に、図11に示すワークWの面を加工部位として、上記の熱変位補正を適用することもできる。ワークWの面などの加工部位としては、曲面形状部位であってもよいし、平面形状部位であってもよい。
【0055】
この場合、図11に示すように、ワークWの加工部位における複数の点P11,P12,P13,P14についての実際の熱変位位置の事前測定を行って、データベース32に記憶しておく。そして、加工時において、データベース32に記憶されている情報を用いて補間することにより、基準制御値算出部31にて算出された基準位置制御値に対応するワークWの加工位置Pにおける熱変位補正位置ΔPを算出する。具体的には、当該ワークWの加工位置Pにおける熱変位方向を表す角度θは、データベース32に記憶されている情報の中から、当該加工位置Pに隣接する複数の位置P11,P12,P13,P14における熱変位方向を表す角度θを補間することにより算出する。さらに、当該ワークWの加工位置Pにおける線膨張係数aは、データベース32に記憶されている情報の中から、当該加工位置Pに隣接する複数の位置P11,P12,P13,P14における線膨張係数を補間することにより算出する。なお、線膨張係数は、第二実施形態にて説明したように、平均値としての一定値を用いることもできる。そして、補正部34にて、当該熱変位補正位置を用いて熱変位補正を行いながら面加工を行う。
【0056】
<その他>
上記実施形態においては、ワークWの温度Twについてクーラント温度Tcを用いた。この他に、ワークWの温度Twが室温Trに一致するのであれば、室温Trを計測して、計測した室温TrをワークWの温度Twとして適用することもできる。また、非接触温度センサを用いることで、ワークW自身の温度Twを直接計測できる。
【符号の説明】
【0057】
5:工具、 30:制御装置、 31:基準制御値算出部
32:データベース、 33:熱変位補正位置算出部、 34:補正部
42:クーラント温度センサ
P1:基準穴、 P2〜P7:熱変位補正対象の穴、 W:ワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの熱変位に基づいて前記ワークの基準点に対する工具の相対位置を補正する熱変位補正装置であって、
前記ワークの温度を実際に変化させた時に予め測定した前記ワークの基準点に対する前記ワークの所定点の熱変位方向を記憶するデータベースと、
加工時における前記ワークの温度を直接または間接に計測する温度計測手段と、
前記データベースに記憶されている前記ワークの所定点の熱変位方向、前記温度計測手段により計測された前記ワークの温度、および、前記ワークの線膨張係数に基づいて、加工時における前記ワークの所定点の熱変位補正位置を算出する熱変位補正位置算出手段と、
前記ワークの所定点を前記工具により加工する際に、前記熱変位補正位置に基づいて前記ワークの基準点に対する前記工具の相対位置を補正する補正手段と、
を備える熱変位補正装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記データベースは、前記ワークの温度を実際に変化させた時に予め測定した前記ワークの基準点に対する前記ワークの所定点の熱変位量と前記ワークの温度とに基づいて算出した前記ワークの線膨張係数をさらに記憶し、
前記熱変位補正位置算出手段は、前記データベースに記憶されている前記ワークの線膨張係数を用いて、前記ワークの所定点の熱変位補正位置を算出する熱変位補正装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記ワークの所定点は、複数であり、
前記データベースに記憶されている前記線膨張係数は、前記ワークの複数の所定点における線膨張係数の平均値である熱変位補正装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記ワークの加工部位は、複数の穴であり、
前記ワークの所定点は、それぞれの前記穴であり、
前記データベースに記憶されている前記線膨張係数は、前記ワークのそれぞれの所定点の線膨張係数であり、
前記熱変位補正位置算出手段は、前記データベースに記憶されている前記ワークのそれぞれの所定点の線膨張係数を用いて、前記ワークのそれぞれの所定点の熱変位補正位置を算出する熱変位補正装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記ワークの加工部位は、曲面形状部位または平面形状部位であり、
前記ワークの所定点は、前記ワークの加工部位に含まれる複数の点であり、
前記データベースに記憶されている前記熱変位方向は、前記ワークのそれぞれの所定点の熱変位方向であり、
前記熱変位補正位置算出手段は、前記ワークの加工点に応じた前記熱変位方向を、前記データベースに記憶されている前記ワークのそれぞれの所定点の熱変位方向を用いて補間することにより算出する熱変位補正装置。
【請求項6】
ワークの熱変位に基づいて前記ワークの基準点に対する工具の相対位置を補正する熱変位補正方法であって、
前記ワークの温度を実際に変化させた時に前記ワークの基準点に対する前記ワークの所定点の熱変位方向を予め測定する測定工程と、
加工時における前記ワークの温度を直接または間接に計測する温度計測工程と、
予め測定した前記ワークの所定点の熱変位方向、前記温度計測工程にて計測された前記ワークの温度、および、前記ワークの線膨張係数に基づいて、加工時における前記ワークの所定点の熱変位補正位置を算出する熱変位補正位置算出工程と、
前記ワークの所定点を前記工具により加工する際に、前記熱変位補正位置に基づいて前記ワークの基準点に対する前記工具の相対位置を補正する補正工程と、
を備える熱変位補正方法。
【請求項1】
ワークの熱変位に基づいて前記ワークの基準点に対する工具の相対位置を補正する熱変位補正装置であって、
前記ワークの温度を実際に変化させた時に予め測定した前記ワークの基準点に対する前記ワークの所定点の熱変位方向を記憶するデータベースと、
加工時における前記ワークの温度を直接または間接に計測する温度計測手段と、
前記データベースに記憶されている前記ワークの所定点の熱変位方向、前記温度計測手段により計測された前記ワークの温度、および、前記ワークの線膨張係数に基づいて、加工時における前記ワークの所定点の熱変位補正位置を算出する熱変位補正位置算出手段と、
前記ワークの所定点を前記工具により加工する際に、前記熱変位補正位置に基づいて前記ワークの基準点に対する前記工具の相対位置を補正する補正手段と、
を備える熱変位補正装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記データベースは、前記ワークの温度を実際に変化させた時に予め測定した前記ワークの基準点に対する前記ワークの所定点の熱変位量と前記ワークの温度とに基づいて算出した前記ワークの線膨張係数をさらに記憶し、
前記熱変位補正位置算出手段は、前記データベースに記憶されている前記ワークの線膨張係数を用いて、前記ワークの所定点の熱変位補正位置を算出する熱変位補正装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記ワークの所定点は、複数であり、
前記データベースに記憶されている前記線膨張係数は、前記ワークの複数の所定点における線膨張係数の平均値である熱変位補正装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記ワークの加工部位は、複数の穴であり、
前記ワークの所定点は、それぞれの前記穴であり、
前記データベースに記憶されている前記線膨張係数は、前記ワークのそれぞれの所定点の線膨張係数であり、
前記熱変位補正位置算出手段は、前記データベースに記憶されている前記ワークのそれぞれの所定点の線膨張係数を用いて、前記ワークのそれぞれの所定点の熱変位補正位置を算出する熱変位補正装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記ワークの加工部位は、曲面形状部位または平面形状部位であり、
前記ワークの所定点は、前記ワークの加工部位に含まれる複数の点であり、
前記データベースに記憶されている前記熱変位方向は、前記ワークのそれぞれの所定点の熱変位方向であり、
前記熱変位補正位置算出手段は、前記ワークの加工点に応じた前記熱変位方向を、前記データベースに記憶されている前記ワークのそれぞれの所定点の熱変位方向を用いて補間することにより算出する熱変位補正装置。
【請求項6】
ワークの熱変位に基づいて前記ワークの基準点に対する工具の相対位置を補正する熱変位補正方法であって、
前記ワークの温度を実際に変化させた時に前記ワークの基準点に対する前記ワークの所定点の熱変位方向を予め測定する測定工程と、
加工時における前記ワークの温度を直接または間接に計測する温度計測工程と、
予め測定した前記ワークの所定点の熱変位方向、前記温度計測工程にて計測された前記ワークの温度、および、前記ワークの線膨張係数に基づいて、加工時における前記ワークの所定点の熱変位補正位置を算出する熱変位補正位置算出工程と、
前記ワークの所定点を前記工具により加工する際に、前記熱変位補正位置に基づいて前記ワークの基準点に対する前記工具の相対位置を補正する補正工程と、
を備える熱変位補正方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−187683(P2012−187683A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54482(P2011−54482)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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