説明

熱履歴表示ラベル、粘着ラベル及びラベル付き物品

【課題】熱を利用して剥離したラベルが不正に使用されるのを防止する。
【解決手段】本発明の熱履歴表示ラベル10は、基材111と、前記基材111に支持され、第1温度以上に加熱することにより不可逆的に変色する第1インキ114aと、前記基材111に支持され、第2温度以下に冷却することにより変色する第2インキ114bとを具備したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱履歴を表示するラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の偽造品の増加に伴い、偽造防止技術を施したラベルが利用される機会が増えている。例えば、多くの企業は、ブランドプロテクションラベルと呼ばれるラベルが貼り付けられた物品を真正品として市場に供給している。特許文献1には、偽造防止技術を施したラベルの一例が記載されている。
【0003】
このようなラベルは、偽造の防止に有効である。しかしながら、ラベルを物品から容易に剥離可能であり、剥離したラベルを不正に利用可能である場合、高い偽造防止効果を達成することはできない。
【0004】
ラベルの不正使用に関しては、ナイフ又は溶剤を利用してラベルを物品から剥離した事例が報告されている。これを受け、多くのブランドプロテクションラベルには、剥離後の不正使用を防止する技術が適用されている。
【0005】
例えば、ブランドプロテクションラベルとして、切欠き及び/又はミシン目を設けた脆性のラベルを使用することがある。このようなラベルを使用した場合、ナイフを用いてラベルを剥離しようとすると、ラベルが破断する。それゆえ、剥離後のラベルを不正に使用することはできない。しかしながら、ラベルを物品に貼り付けている粘着層が溶剤に可溶である場合、破断させることなしにラベルを物品から剥離することが可能である。それゆえ、多くの場合、ブランドプロテクションラベルとして脆性のラベルを使用すると共に、耐溶剤性の粘着層を使用してこれを物品に貼り付けている。
【0006】
ところで、最近、熱を利用してラベルを物品から剥離した事例が報告された。具体的には、熱風を吹き付けることによって加熱するか又は加熱と冷却とのサイクルに供すると、ラベルが物品から浮くことがある。この場合、上記の技術を適用していたとしても、破断を生じることなくラベルを物品から容易に剥離することができる。
【特許文献1】特開平11−224050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、熱を利用して剥離したラベルが不正に使用されるのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1側面によると、基材と、前記基材に支持され、第1温度以上に加熱することにより不可逆的に変色する第1インキと、前記基材に支持され、第2温度以下に冷却することにより変色する第2インキとを具備したことを特徴とする熱履歴表示ラベルが提供される。
【0009】
本発明の第2側面によると、第1側面に係る熱履歴表示ラベルと、前記第1及び第2インキを間に挟んで前記基材に支持された粘着層とを具備したことを特徴とする粘着ラベルが提供される。
【0010】
本発明の第3側面によると、物品と、これに支持された第1側面に係る熱履歴表示ラベルとを具備したことを特徴とするラベル付き物品が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、熱を利用して剥離したラベルが不正に使用されるのを防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、本発明の一態様に係る粘着ラベルを概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す粘着ラベルのII−II線に沿った断面図である。
【0014】
この粘着ラベル10は、熱履歴表示ラベル11と粘着層12とを含んでいる。通常、使用前の粘着ラベル10は、剥離紙に剥離可能に貼り付けられている。
【0015】
熱履歴表示ラベル11は、基材111とレリーフ構造形成層112と反射層113とインキ層114a及び114bとを含んでいる。
【0016】
基材111としては、例えば、透明プラスチックフィルム又はシートを使用することができる。基材111の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース又はポリ塩化ビニルを使用することができる。
【0017】
基材111は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。また、基材111は、光学的に等方性であってもよく、光学的に異方性であってもよい。即ち、基材111として、機能性フィルム又はシートを使用してもよい。機能性フィルム又はシートとしては、例えば、光学可変フィルム、コレステリック液晶フィルム、偏向フィルム、若しくはそれらのシート、又は堆積型ホログラムを使用することができる。
【0018】
基材111の厚さは、例えば、16μm乃至125μmの範囲内とする。この場合、強度及び取扱い性などに特に優れた熱履歴表示ラベル11が得られる。
【0019】
基材111には、切欠き及び/又はミシン目が設けられていてもよい。或いは、熱履歴表示ラベル11には、切欠き及び/又はミシン目が設けられていてもよい。このような構造を熱履歴表示ラベル11に採用すると、熱履歴表示ラベル11を脆性とすることができる。
【0020】
レリーフ構造形成層112は、基材111の一方の主面上に形成されている。レリーフ構造形成層112は、表面にレリーフ構造が設けられた透明層である。このレリーフ構造は、例えば、回折格子及び/又はホログラムを形成している。
【0021】
レリーフ構造形成層112の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は光硬化性樹脂を使用することができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン又はポリカーボネートを使用することができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ポリエステルメタクリレート、ウレタンメタクリレート重合体、エポキシメタクリレート重合体、ポリエーテルメタクリレート、メラミンメタクリレート重合体、トリアジン系アクリル樹脂又はポリオールメタアクリレート重合体を使用することができる。光硬化性樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂と光開始剤とを含んだ組成物を使用することができる。
【0022】
熱可塑性樹脂からなるレリーフ構造形成層112は、例えば、基材111上に熱可塑性樹脂層を形成し、この熱可塑性樹脂層を、レリーフ構造が設けられたスタンパ(金型)を用いたエンボスに供することより形成することができる。熱硬化性樹脂からなるレリーフ構造形成層112は、例えば、熱硬化性樹脂を含んだ層を間に挟んでスタンパを基材11に押し当て、この状態で先の層を加熱することにより得られる。光硬化性樹脂からなるレリーフ構造形成層112は、例えば、光硬化性樹脂を含んだ層を間に挟んでスタンパを基材11に押し当て、この状態で先の層に紫外線などの光を照射することにより得られる。
【0023】
反射層113は、レリーフ構造形成層112上に形成されている。反射層113は、先のレリーフ構造の少なくとも一部を被覆している。レリーフ構造形成層112の表面に設けられたレリーフ構造は、反射層113の基材111との対向面のうちレリーフ構造形成層112を被覆している領域に、レリーフ構造形成層112に設けられているのと同様のレリーフ構造を生じさせている。
【0024】
反射層113としては、例えば、真空蒸着及びスパッタリングなどの蒸着法によって得られる蒸着膜を使用することができる。この蒸着膜は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。反射層113の材料としては、例えば、アルミニウム、スズ、ニッケル、ビスマス及びインジウムなど金属、合金、硫化亜鉛などの金属元素と非金属元素とを含んだ化合物、シリコン酸化物などの非金属化合物、又はそれらの組み合わせを使用することができる。反射層113として、金属光沢を持つインキ又は塗料からなる層を使用してもよい。但し、レリーフ構造が形成する画像の視認性の観点では、反射層113として金属蒸着層を使用することが好ましい。
【0025】
反射層113が光透過性を有していない場合、反射層113は、基材111側から見てインキ層114aの少なくとも一部とインキ層114bの少なくとも一部とが反射層113の背後に隠れないように形成する。例えば、反射層113に開口を設ける。反射層113が光透過性を有している場合、反射層113は、パターニングされていてもよく、パターニングされていなくてもよい。ここでは、一例として、反射層113は、光透過性を有していない金属層であり、文字列「SECURITY」及び「NG」に対応した形状の開口が設けられているとする。
【0026】
反射層113は、省略してもよい。反射層113を省略した場合、レリーフ構造形成層112は、省略してもよく、省略しなくてもよい。但し、反射層113を含んでいる熱履歴表示ラベル11は、これを省略したラベルと比較して、より視認性に優れた回折像をレリーフ構造に表示させることができる。また、レリーフ構造が設けられたレリーフ構造形成層112を含んでいる熱履歴表示ラベル11は、これを省略したラベルと比較して偽造され難い。
【0027】
レリーフ構造形成層112上であって、反射層113に設けられた開口に対応した位置には、インキ層114a及び114bが形成されている。インキ層114a及び114bは、レリーフ構造形成層112の表面のうち反射層113から露出した領域の全体を被覆している。インキ層114a及び114bは、反射層113の表面のうち開口に隣接した領域を更に被覆している。このような構造を採用した場合、インキ層114a及び114bの反射層113に対する位置合わせに高い精度が要求されることはない。
【0028】
インキ層114a及び114bは、レリーフ構造形成層112の表面のうち反射層113から露出した領域の一部のみを被覆していてもよい。この場合、金属反射層113に設ける開口の形状は任意である。
【0029】
インキ層114a及び114bは、反射層113の表面を被覆していなくてもよく、その全体を被覆していてもよい。インキ層114a及び114bが反射層113の表面を被覆していない場合、インキ層114a及び114bの反射層113に対する位置合わせにより高い精度が要求されるが、より少量の材料でインキ層114a及び114bを形成することができる。インキ層114a及び114bが反射層113の表面全体を被覆している場合、インキ層114a及び114bの形成により多くの材料が必要であるが、インキ層114a及び114bの反射層113に対する位置合わせに要求される精度がより低くなる。
【0030】
インキ層114aは、第1温度T1以上に加熱することにより不可逆的に変色する第1インキからなる。ここで、用語「変色する」は、無色透明状態から無色不透明状態へと変化すること、無色透明状態から有色透明状態へと変化すること、無色透明状態から有色不透明状態へと変化すること、有色透明状態から有色不透明状態へと変化すること、有色透明状態から無色透明状態へと変化すること、有色透明状態から有色不透明状態へと変化すること、有色不透明状態から有色透明状態へと変化すること、有色不透明状態から有色不透明状態へと変化すること、有色不透明状態から無色透明状態へと変化すること、或る有色透明状態からそれとは異なる有色透明状態へと変化すること、及び或る有色不透明状態からそれとは異なる有色不透明状態へと変化することの全てを包含している。ここでは、一例として、第1インキは、温度T1以上に加熱することにより不透明状態から透明状態へと変化するインキであるとする。
【0031】
第1インキとしては、例えば、粉末状の化合物又は組成物を使用することができる。このような第1インキを使用した場合、インキ層114aは、初期状態においては、粉末に起因して光散乱性である。そして、インキ層114aを温度T1以上に加熱すると、粉末の融解を生じ、その結果、粉末の粒径がより大きくなるか又は融解物は層を形成する。従って、このインキ層114aは、温度T1以上に加熱することによって透明になる。
【0032】
粉末状の化合物としては、例えば、トリラウリン、ミリスチン酸、ベヘン酸又はステアリン酸アミドを使用することができる。トリラウリンを使用した場合には、温度T1を約45℃とすることができる。ミリスチン酸を使用した場合には、温度T1を約50℃とすることができる。ベヘン酸を使用した場合には、温度T1を約70℃とすることができる。ステアリン酸アミドを使用した場合には、温度T1を約95℃とすることができる。
【0033】
粉末状の組成物としては、例えば、直鎖状炭化水素を主成分として含んだワックスを使用することができる。ワックスを使用する場合、第1インキは、エチルセルロースなどの粘稠剤を更に含んでいてもよい。ワックスを使用する場合、温度T1は、ワックスの組成に応じて変更できる。
【0034】
第1インキは、熱安定性の染料及び/又は顔料を更に含んでいてもよい。即ち、第1インキは、温度変化に応じた変色を生じない染料及び/又は顔料を更に含んでいてもよい。こうすると、温度T1を殆ど変更することなしに、インキ層114aが呈する色を変更することができる。
【0035】
温度T1は、粘着ラベル10の使用環境においてインキ層114aが変色しないように設定する。温度T1は、例えば、40℃乃至120℃の範囲内とし、典型的には80℃乃至120℃の範囲内とする。なお、粘着ラベル10の使用環境によっては、温度T1は、より低い温度であってもよく、より高い温度であってもよい。また、温度T1は、約5℃刻みで設定可能であるが、±2℃の誤差を生じる可能性がある。
【0036】
インキ層114bは、第2温度T2以下に冷却することにより変色する第2インキからなる。第2インキは、温度T2以下に冷却することにより可逆的に変色するインキであってもよく、温度T2以下に冷却することにより不可逆的に変色するインキであってもよい。典型的には、第2インキは、温度T2以下に冷却することにより第1色から第2色へと変色し、温度T2と比較してより高い第3温度T3以上に加熱することにより第2色から第1色へと変色するインキ、即ちヒステリシスを示すインキである。ここでは、一例として、第2インキは、このヒステリシスを示すインキであるとする。
【0037】
第2インキとしては、例えば、電子供与性呈色性有機化合物と、電子受容性化合物と、それら化合物の呈色反応を制御する物質とを含有した組成物、この組成物を内包したマイクロカプセル、又はこのマイクロカプセルとバインダ樹脂とを含有した混合物を使用することができる。電子供与性呈色性有機化合物としては、例えば、ジフェニルメタンフタリド類又はフェニルインダリルフタリド類を使用することができる。電子受容性化合物としては、例えば、フェノール性水酸基を有している化合物を使用することができる。呈色反応を制御する物質としては、例えば、エステル化合物を使用することができる。
【0038】
第2インキは、熱安定性の染料及び/又は顔料を更に含んでいてもよい。即ち、第2インキは、温度変化に応じた変色を生じない染料及び/又は顔料を更に含んでいてもよい。こうすると、温度T2及びT3を殆ど変更することなしに、インキ層114bが呈する色を変更することができる。
【0039】
温度T2は、典型的には、温度T1と比較してより低い。温度T3は、温度T1と比較してより高くてもよく、温度T1と比較してより低くてもよく、温度T1と同じであってもよい。
【0040】
温度T2は、粘着ラベル10の使用環境においてインキ層114bが変色しないように設定する。温度T2は、例えば−20℃乃至−10℃の範囲内に設定する。温度T3は、例えば40℃乃至60℃の範囲内に設定する。なお、粘着ラベル10の使用環境によっては、温度T2及びT3は、より低い温度であってもよく、より高い温度であってもよい。
【0041】
インキ層114a及び114bは、例えば、印刷又は塗布によって形成することができる。
【0042】
インキ層114a及び114bは、基材111とレリーフ構造形成層112との間に介在させてもよく、レリーフ構造形成層112と反射層113との間に介在させてもよく、基材111のレリーフ構造形成層112が形成された面の裏面に設けてもよい。但し、耐摩耗性及び耐候性などの観点から、インキ層114a及び114bは、基材111と粘着層12との間に配置することが好ましい。
【0043】
この熱履歴表示ラベル11は、インキ層114a及び114bの少なくとも一方を被覆した熱安定性の着色層を更に含んでいてもよい。即ち、熱履歴表示ラベル11は、インキ層114a及び114bの少なくとも一方を被覆し、温度変化に応じた変色を生じない着色層を更に含んでいてもよい。例えば、インキ層114a及び114bが熱安定性の着色層で被覆されており、常態で光透過性を有しているか又は加熱若しくは冷却によって光透過性を発現する場合、この着色層の色を表示に利用できる。
【0044】
また、熱履歴表示ラベル11は、インキ層114a及び114bの少なくとも一方を被覆した反射層を更に含んでいてもよい。例えば、インキ層114a及び114bが熱安定性の着色層で被覆されており、常態で光透過性を有しているか又は加熱若しくは冷却によって光透過性を発現する場合、この反射層による反射光を表示に利用できる。
【0045】
粘着層12は、熱履歴表示ラベル11のインキ層114a及び114b側の面を被覆している。粘着層12の材料には、典型的には、強力な粘着力を有しており、有機溶剤に溶解しない又は溶解し難い耐溶剤性粘着剤を使用する。
【0046】
粘着層12は、粘着剤以外の成分を更に含んでいてもよい。例えば、粘着層12は、粘着剤に加え、有機溶剤を接触させることにより変色する溶剤発色材料を更に含んでいてもよい。
【0047】
次に、この粘着ラベル10が表示する像について説明する。なお、ここでは、レリーフ構造に起因した回折像についての説明は省略する。
【0048】
図3は、図1及び図2に示す粘着ラベル10が表示し得る像の一例を概略的に示す平面図である。図4は、図1及び図2に示す粘着ラベル10が表示し得る像の他の例を概略的に示す平面図である。図5は、図1及び図2に示す粘着ラベル10が表示し得る像の更に他の例を概略的に示す平面図である。
【0049】
この粘着ラベル10は、その初期状態において、図1に示す像I1及びI2を表示する。ここで、像I1は文字列「SECURITY」であり、像I2は文字列「NG」である。像I1及びI2は、文字列でなくてもよい。例えば、像I1及びI2は、記号及び図形などの文字列以外の像であってもよい。
【0050】
初期状態において、インキ層114aは白色不透明であり、インキ層114bが無色透明であるとする。この場合、像I1は白色又はそれとほぼ等しい色に見え、像I2はインキ層114bの背景色又はそれとほぼ等しい色に見える。
【0051】
インキ層114a及び114bは、それらの温度が温度T2より高く且つ温度T1未満である限り変色しない。それゆえ、温度が上記範囲内にあり且つ先の背景色が一定である限り、像I1及びI2は変色しない。
【0052】
粘着ラベル10を温度T1以上に加熱すると、図3に示すように、インキ層114bは変色せずに、インキ層114aが変色する。例えば、インキ層114aは白色不透明から無色透明へと変色する。それゆえ、像I1は、インキ層114aの背景色又はそれとほぼ等しい色に見える。なお、像I2の色は、初期状態と同様である。
【0053】
上記の通り、インキ層114aの変色は不可逆的である。従って、インキ層114a及び114bは、それらの温度が温度T2より高い限り変色しない。それゆえ、この色変化を生じた後では、温度が温度T2より高く且つ先の背景色が一定である限り、像I1及びI2は変色しない。
【0054】
初期状態の粘着ラベル10を温度T2以下に冷却すると、図4に示すように、インキ層114aは変色せずに、インキ層114bが変色する。例えば、インキ層114bは無色透明から着色透明へと変色する。それゆえ、像I2は、インキ層114bの色とその背景色との減法混色によって得られる色とほぼ等しい色に見える。なお、像I1の色は、初期状態と同様である。
【0055】
上記の通り、インキ層114bの変色は可逆的である。しかしながら、変色したインキ層114bは、第3温度T3以上に加熱しない限り、元の色に戻ることはない。従って、温度T3が温度T1と等しいか又はそれよりも低い場合には、インキ層114a及び114bは、それらの温度が温度T3未満である限り変色しない。それゆえ、この色変化を生じた後では、温度が上記範囲内にあり且つ先の背景色が一定である限り、像I1及びI2は変色しない。
【0056】
また、温度T3が温度T1と比較してより高い場合には、インキ層114a及び114bは、それらの温度が温度T1未満である限り変色しない。それゆえ、この色変化を生じた後では、温度が上記範囲内にあり且つ先の背景色が一定である限り、像I1及びI2は変色しない。
【0057】
粘着ラベル10を温度T1以上に加熱し、その後、温度T2以下に冷却すると、図5に示すように、インキ層114a及び114bの双方が変色する。同様に、粘着ラベル10を温度T2以下に冷却し、その後、温度T1以上に加熱すると、インキ層114a及び114bの双方が変色する。例えば、インキ層114aは白色不透明から無色透明へと変色し、インキ層114bは無色透明から着色透明へと変色する。それゆえ、像I1は、インキ層114aの背景色又はそれとほぼ等しい色に見え、像I2は、インキ層114bの色とその背景色との減法混色によって得られる色とほぼ等しい色に見える。
【0058】
インキ層114aの変色は不可逆的である。従って、インキ層114a及び114bは、それらの温度が温度T3未満である限り変色しない。それゆえ、この色変化を生じた後では、温度が温度T3未満であり且つ先の背景色が一定である限り、像I1及びI2は変色しない。
【0059】
このように、この粘着ラベル10は、その使用環境で晒されることがない高温又は低温に晒されると、像I1又はI2の変色を生じる。変色した像I1の色が元の色に戻ることはない。そして、変色した像I2の色を元の色に戻すためには、粘着ラベル10を温度T3以上に加熱する必要がある。
【0060】
温度T3が温度T1以上である場合、変色した像I2の色を元の色に戻すべく、像I1が変色していない粘着ラベル10を温度T3以上に加熱すると、像I1の変色を生じる。それゆえ、温度T3が温度T1以上である場合、像I1又はI2の変色を生じると、像I1及びI2の双方を初期の色に戻すことは不可能である。
【0061】
また、温度T3が温度T1未満である場合、粘着ラベル10を温度T3以上であり且つ温度T1未満に加熱すれば、像I1を変色させることなしに、変色した像I2の色を元の色に戻すことができる。しかしながら、不正行為を行う者にとって、そのような温度範囲を調べることは困難である。そして、この温度範囲が分かったとしても、温度T3が温度T1に近ければ、粘着ラベル10の全ての部分で温度を先の温度範囲内に制御することは困難である。即ち、温度T3が温度T1未満である場合であっても、像I1又はI2の変色を生じると、像I1及びI2の双方を初期の色に戻すことはほぼ不可能である。
【0062】
従って、像I1及びI2の少なくとも一方が変色している粘着ラベル10は、その使用環境で晒されることがない高温又は低温に晒されたと判定することができる。即ち、この粘着ラベル10が含んでいる熱履歴表示ラベル11が熱を利用して物品から剥がされて不正に使用された場合には、不正行為が行われたことを直ちに判定することができる。
【0063】
それゆえ、この熱履歴表示ラベル11は、熱を利用して物品から剥離されたとしても、不正に使用され難い。
【0064】
この粘着ラベル10には、様々な変形が可能である。
図6は、図1及び図2に示す粘着ラベルの一変形例を示す平面図である。
図6に示す粘着ラベル10は、以下の構成を採用したこと以外は図1及び図2を参照しながら説明した粘着ラベル10と同様である。即ち、この粘着ラベル10では、インキ層114a及び114bは、部分的に重なり合っている。インキ層114aは、図1及び図2を参照しながら説明した粘着ラベル10のインキ層114aと同様である。インキ層114bは、反射層113とインキ層114bとを更に被覆していること以外は図1及び図2を参照しながら説明した粘着ラベル10のインキ層114bと同様である。
【0065】
このような構造を採用した場合、インキ層114bの色が像I1の色に影響を及ぼす場合があるが、図1及び図5を参照しながら説明したのとほぼ同様の色変化を生じる。従って、上述したのとほぼ同様の効果を得ることができる。
【0066】
この粘着ラベル10は、様々な物品に貼り付けることができる。
図7は、ラベル付き物品の一例を概略的に示す斜視図である。
【0067】
図7に示すラベル付き物品は、物品20と、これに貼り付けられた粘着ラベル10とを含んでいる。
【0068】
物品20は、例えば、偽造等が防止されるべき物品、それを包装している包装材料、又は偽造等が防止されるべき物品とそれを包装している包装材料とを含んだ包装体である。
【0069】
粘着ラベル10が貼り付けられる物品20の表面は、どのような材料で構成されていてもよい。例えば、粘着ラベル10が貼り付けられる物品20の表面を構成している材料は、上質紙、コート紙、コートボール紙及びボール紙などの紙であってもよく、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン及びポリエチレンなどの軟質樹脂であってもよく、塩化ビニル、ポリカーボネート及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂などの硬質樹脂であってもよく、アルミニウム、鉄及びステンレスなどの金属材料であってもよい。
【0070】
上記の通り、この粘着ラベル10が含んでいる熱履歴表示ラベル11は、熱を利用して物品から剥離されたとしても、不正に使用され難い。従って、この熱履歴表示ラベル11が先の方法で物品20から剥がされ、非真正品に貼り付けられたとしても、像I1及びI2の色を確認することにより、不正行為が行われたか否かを判別できる。
【0071】
以上、粘着ラベル10及び熱履歴表示ラベル11を偽造防止技術に適用した例を説明したが、粘着ラベル10及び熱履歴表示ラベル11は他の目的で使用することも可能である。例えば、輸送及び/又は保管を管理された温度のもとで行う必要がある物品に先の粘着ラベル10を貼り付けた場合、像I1及びI2の色を確認することにより、このラベル付き物品が適正な温度管理のもとで輸送及び/又は保管されたか否かを判別できる。なお、この場合、熱履歴表示ラベル11を物品に支持させることができれば、粘着層12は不要である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一態様に係る粘着ラベルを概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す粘着ラベルのII−II線に沿った断面図。
【図3】図1及び図2に示す粘着ラベル10が表示し得る像の一例を概略的に示す平面図。
【図4】図1及び図2に示す粘着ラベル10が表示し得る像の他の例を概略的に示す平面図。
【図5】図1及び図2に示す粘着ラベル10が表示し得る像の更に他の例を概略的に示す平面図。
【図6】図1及び図2に示す粘着ラベルの一変形例を示す平面図。
【図7】ラベル付き物品の一例を概略的に示す斜視図。
【符号の説明】
【0073】
10…粘着ラベル、11…熱履歴表示ラベル、12…粘着層、20…物品、111…基材、112…レリーフ構造形成層、113…反射層、114a…インキ層、114b…インキ層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材に支持され、第1温度以上に加熱することにより不可逆的に変色する第1インキと、
前記基材に支持され、第2温度以下に冷却することにより変色する第2インキと
を具備したことを特徴とする熱履歴表示ラベル。
【請求項2】
前記第2温度は前記第1温度と比較してより低いことを特徴とする請求項1に記載の熱履歴表示ラベル。
【請求項3】
前記第2インキは、前記第2温度以下に冷却することにより第1色から第2色へと変色し、前記第2色へと変色した前記第2インキは、前記第2温度と比較してより高い第3温度以上に加熱することにより前記第2色から前記第1色へと変色することを特徴とする請求項2に記載の熱履歴表示ラベル。
【請求項4】
前記第3温度は前記第1温度と比較してより高いことを特徴とする請求項3に記載の熱履歴表示ラベル。
【請求項5】
前記第1及び第2インキは第1及び第2インキ層をそれぞれ形成し、前記基材の主面に平行な方向に隣り合っていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の熱履歴表示ラベル。
【請求項6】
前記第1及び第2インキは第1及び第2インキ層をそれぞれ形成し、前記第1及び第2インキ層は部分的に重なり合っていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の熱履歴表示ラベル。
【請求項7】
前記第1及び第2インキは第1及び第2インキ層をそれぞれ形成し、前記熱履歴表示ラベルは、
前記基材と前記第1及び第2インキ層との間に介在し、前記第1及び第2インキ層側の主面にレリーフ構造が設けられたレリーフ構造形成層と、
前記レリーフ構造の少なくとも一部を被覆した反射層と
を更に具備したことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の熱履歴表示ラベル。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の熱履歴表示ラベルと、前記第1及び第2インキを間に挟んで前記基材に支持された粘着層とを具備したことを特徴とする粘着ラベル。
【請求項9】
物品と、これに支持された請求項1乃至7の何れか1項に記載の熱履歴表示ラベルとを具備したことを特徴とするラベル付き物品。
【請求項10】
前記熱履歴表示ラベルと前記物品との間に介在した粘着層を更に具備し、前記基材は前記第1及び第2インキを間に挟んで前記物品と向き合っていることを特徴とする請求項9に記載のラベル付き物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−229574(P2009−229574A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72091(P2008−72091)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】