説明

熱応動スイッチ、定着装置及び画像形成装置

【課題】変位部材が外部に凸状に変位する構成において、変位部材が外力によって凹状に復帰されても、電極の接点の非接触状態が維持できるようにする。
【解決手段】第2電極側から変位部材側に向かう第1方向へ移動可能に前記第2電極と前記変位部材との間に設けられ、凹状態の前記変位部材に一端が押されることにより他端で前記第2電極を押して第2接点と第1接点とを接触させ、前記変位部材の凸状の変位により前記第2電極に作用する付勢力で前記第1方向へ移動する移動部材と、前記変位部材からの押し力を前記第2電極へ伝達可能な伝達可能位置から前記第1方向と直交する第2方向への前記移動部材の移動を規制し、前記付勢力により前記第1方向へ移動した移動部材が前記伝達可能位置から外れるように前記規制を解除する規制部材と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱応動スイッチ、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、公開公報の図3に示すように、以下の構成が開示されている。すなわち、回路遮断器90は、回路遮断器本体92の下部に導電性の2つの電極94a,94bが設けられている。電極94bは、電極94aに向けて延びる耐熱性を有する導電性のバネ部材96が設けられており、バネ部材96が後述するピン108に押されて電極94aに接触する開放部98を電極94aとともに構成し、電路が形成されるようになっている。つまり、ピン108は、バイメタル110が反転することによって生じる力をバネ部材96に伝達し、バイメタル110の変位に応じて開放部98を開放させる。なお、バネ部材96は、外部から力を受けていない状態では、自身の弾性力によって電極94aから離れるようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】2009−231074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、変位部材が外部に凸状に変位する構成において、変位部材が外力によって凹状に復帰されても、電極の接点の非接触状態が維持できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、筐体と、前記筐体の外部に対して凹状に前記筐体へ保持され、温度変化に応じて前記筐体の外部に対して凸状に変位する変位部材と、前記筐体の内部に設けられた第1接点を有する第1電極と、前記変位部材と前記第1接点との間に設けられた第2接点を有し、該第2接点が前記第1接点から前記変位部材側へ離れるように付勢された第2電極と、前記第2電極側から前記変位部材側に向かう第1方向へ移動可能に前記第2電極と前記変位部材との間に設けられ、凹状態の前記変位部材に一端が押されることにより他端で前記第2電極を押して前記第2接点と前記第1接点とを接触させ、前記変位部材の凸状の変位により前記第2電極に作用する付勢力で前記第1方向へ移動する移動部材と、前記変位部材からの押し力を前記第2電極へ伝達可能な伝達可能位置から前記第1方向と直交する第2方向への前記移動部材の移動を規制し、前記付勢力により前記第1方向へ移動した移動部材が前記伝達可能位置から外れるように前記規制を解除する規制部材と、を備える熱応動スイッチである。
【0006】
請求項2の発明は、前記移動部材は、前記第2電極に固定された第1部材と、前記第1部材と前記変位部材との間に設けられ、凹状態の前記変位部材に一端が押されることにより他端で前記第1部材を介して前記第2電極を押して前記第2接点と前記第1接点とを接触させ、前記変位部材の凸状への変位により前記第2電極の付勢力で前記第1部材に押されて前記第1方向へ移動し、前記伝達可能位置から外れるように前記規制部材からの規制が解除される第2部材と、を有する請求項1に記載の熱応動スイッチである。
【0007】
請求項3の発明は、記録媒体上の画像を加熱する加熱部材と、前記加熱部材へ給電するための回路と、前記第1電極及び第2電極が前記回路内に設けられ、前記変位部材が前記加熱部材から受ける放射熱による温度変化に応じて変位して前記第1接点と前記第2接点とが離れることで前記回路を遮断する請求項1又は2に記載の熱応動スイッチと、を備える、前記画像を前記記録媒体に定着させる定着装置である。
【0008】
請求項4の発明は、画像を記録媒体に形成する画像形成部と、前記画像形成部で形成された画像を記録媒体へ定着させる請求項3に記載の定着装置と、を備える画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1の構成によれば、変位部材が外部に凸状に変位する構成において、変位部材が外力によって凹状に復帰されても、電極の接点の非接触状態が維持できる。
【0010】
本発明の請求項2の構成によれば、本構成を備えない構成に比べ、変位部材が外部に凸状に変位する構成において、変位部材が外力によって凹状に復帰されても、より効果的に電極の接点の非接触状態が維持できる。
【0011】
本発明の請求項3の構成によれば、変位部材が外部に凸状に変位する構成において、変位部材が外力によって凹状に復帰されても、加熱部材による加熱が禁止される状態が維持できる。
【0012】
本発明の請求項4の構成によれば、変位部材が外部に凸状に変位する構成において、変位部材が外力によって凹状に復帰されても、定着装置による定着が禁止される状態が維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。
【図2】本実施形態に係る定着装置の構成を示す断面図である。
【図3】本実施形態に係るサーモスタットの外観を示す外観図である。
【図4】図4は、図3における4−4線断面図であり、(A)は、加熱ロール(筐体62内部)の温度が、予め定められた温度(通常動作温度)の範囲内である場合のサーモスタットを示し、(B)は加熱ロール(筐体62内部)の温度が予め定められた温度(通常動作温度)を超えた場合のサーモスタットを示す。
【図5】図4における5−5線断面図である。
【図6】本実施形態に係るサーモスタットにおいて、キャップが筐体72から離脱した状態を示す概略図である。
【図7】変形例に係るサーモスタットの構成を示す概略図である。
【図8】図7における8−8線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
(本実施形態に係る画像形成装置の構成)
まず、本実施形態に係る画像形成装置の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。なお、図中に示す矢印UPは、鉛直方向上方を示している。
【0015】
画像形成装置10は、図1に示すように、各構成部品が内部に収容される画像形成装置本体11を備えている。画像形成装置本体11の内部には、用紙等の記録媒体Pが収容される収容部12と、記録媒体Pに画像を形成する画像形成部14と、収容部12から画像形成部14へ記録媒体Pを搬送する搬送部16と、画像形成装置10の各部の動作を制御する制御部20と、画像形成装置10の各部に給電する給電部21と、が設けられている。また、画像形成装置本体11の上部には、画像形成部14によって画像が形成された記録媒体Pが排出される排出部18が設けられている。
【0016】
画像形成部14は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像を形成する画像形成ユニット22Y、22M、22C、22K(以下、22Y〜22Kと示す)と、画像形成ユニット22Y〜22Kで形成されたトナー画像が転写される中間転写ベルト24と、画像形成ユニット22Y〜22Kで形成されたトナー画像を中間転写ベルト24に転写する第1転写ロール26と、第1転写ロール26によって中間転写ベルト24に転写されたトナー画像を中間転写ベルト24から記録媒体Pへ転写する第2転写ロール28と、を備えている。なお、画像形成部14は、上記の構成に限られず、他の構成であっても良く、記録媒体Pに画像を形成するものであればよい。
【0017】
画像形成ユニット22Y〜22Kは、水平方向に対して傾斜した状態で、画像形成装置10の上下方向中央部に並んで配置されている。また、画像形成ユニット22Y〜22Kは、一方向(例えば、図1における時計回り方向)へ回転する感光体32をそれぞれ有している。なお、画像形成ユニット22Y〜22Kは、同様に構成されているので、図1において、画像形成ユニット22M、22C、22Kの各部の符号を省略している。
【0018】
各感光体32の周囲には、感光体32の回転方向上流側から順に、感光体32を帯電させる帯電装置の一例としての帯電ロール23と、帯電ロール23によって帯電した感光体32を露光して感光体32に静電潜像を形成する露光装置36と、露光装置36によって感光体32に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像装置38と、感光体32に接触して感光体32に残留しているトナーを除去する除去部材40と、が設けられている。
【0019】
露光装置36は、制御部20から送られた画像信号に基づき静電潜像を形成するようになっている。制御部20から送られる画像信号としては、例えば、制御部20が外部装置から取得した画像信号がある。
【0020】
現像装置38は、感光体32へ現像剤を供給する現像剤供給体38Aと、現像剤供給体38Aへ付与される現像剤を攪拌しながら搬送する複数の搬送部材38Bと、を備えている。
【0021】
中間転写ベルト24は、環状に形成されると共に、画像形成ユニット22Y〜22Kの上側に配置されている。中間転写ベルト24の内周側には、中間転写ベルト24が巻き掛けられる巻掛ロール42・44が設けられている。中間転写ベルト24は、巻掛ロール42・44のいずれかが回転駆動することによって、感光体32と接触しながら一方向(例えば、図1における反時計回り方向)へ循環移動(回転)するようになっている。なお、巻掛ロール42は、第2転写ロール28に対向する対向ロールとされている。
【0022】
第1転写ロール26は、中間転写ベルト24を挟んで感光体32に対向している。第1転写ロール26と感光体32との間が、感光体32に形成されたトナー画像が中間転写ベルト24に転写される第1転写位置とされている。
【0023】
第2転写ロール28は、中間転写ベルト24を挟んで巻掛ロール42に対向している。第2転写ロール28と巻掛ロール42との間が、中間転写ベルト24に転写されたトナー画像が記録媒体Pに転写される第2転写位置とされている。
【0024】
搬送部16は、収容部12に収容された記録媒体Pを送り出す送出ロール46と、送出ロール46に送り出された記録媒体Pが搬送される搬送路48と、搬送路48に沿って配置され送出ロール46によって送り出された記録媒体Pを第2転写位置へ搬送する複数の搬送ロール50と、が設けられている。
【0025】
第2転写位置より搬送方向下流側には、画像形成部14によって記録媒体Pに形成されたトナー画像を記録媒体Pに定着させる定着装置60が設けられている。この定着装置60より搬送方向下流側には、トナー画像が定着された記録媒体Pを排出部18へ排出する排出ロール52が設けられている。なお、定着装置60の具体的な構成については後述する。
【0026】
次に、本実施形態に係る画像形成装置10における、記録媒体Pへ画像を形成する画像形成動作について説明する。
【0027】
本実施形態に係る画像形成装置10では、収容部12から送出ロール46によって送り出された記録媒体Pが、複数の搬送ロール50によって第2転写位置へ送り込まれる。
【0028】
一方、画像形成ユニット22Y〜22Kでは、帯電ロール23によって帯電した感光体32が、露光装置36によって露光されて感光体32に静電潜像が形成される。その静電潜像が現像装置38によって現像されて感光体32にトナー画像が形成される。画像形成ユニット22Y〜22Kで形成された各色のトナー画像は、第1転写位置にて中間転写ベルト24に重ねられて、カラー画像が形成される。そして、中間転写ベルト24に形成されたカラー画像が、第2転写位置にて記録媒体Pへ転写される。
【0029】
トナー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置60へ搬送され、転写されたトナー画像が定着装置60により定着される。トナー画像が定着された記録媒体Pは、排出ロール52によって排出部18に排出される。以上のように、一連の画像形成動作が行われる。
【0030】
(本実施形態に係る定着装置60の構成)
次に、本実施形態に係る定着装置60の構成を説明する。図2は、本実施形態に係る定着装置60の構成を示す概略図である。なお、図中に示す矢印UPは、鉛直方向上方を示している。
【0031】
本実施形態に係る定着装置60は、図2に示すように、画像形成装置本体11(図1参照)に対して着脱可能に設けられ、各構成部品が内部に設けられる筐体62を備えている。筐体62の内部には、記録媒体上の画像を加熱する加熱部材の一例としての加熱ロール64と、加圧部材の一例としての加圧ベルト66と、が設けられている。
【0032】
加熱ロール64は、円筒状の円筒部材64Aと、円筒部材64Aの内部空間に設けられたハロゲンランプ等の加熱源64Bと、を備えて構成されている。円筒部材64Aは、アルミニウム・ステンレス等の金属材料により形成されている。
【0033】
加熱源64Bは、加熱ロール64(加熱源64B)へ給電するための回路の一例としての電気回路25によって、給電部21と電気的に接続されている。これにより、加熱源64Bは、給電部21から電気回路25を通じて給電されるように構成されている。
【0034】
加圧ベルト66は、加熱ロール64との間に記録媒体Pを挟んで回転し、該記録媒体Pを加圧しながら搬送する環状の搬送ベルトとして構成されている。
【0035】
加熱ロール64及び加圧ベルト66によって挟まれて搬送される記録媒体Pは、加熱ロール64によってトナーが加熱されると共に加圧ベルト66によってトナーが加圧されて、加熱ロール64と加圧ベルト66との接触領域において画像が定着されるようになっている。なお、図2においては、加熱ロール64・加圧ベルト66によって、記録媒体Pが搬送される搬送経路が二点鎖線で示されている。
【0036】
定着装置60の筐体62には、熱応動スイッチの一例としてのサーモスタット70が設けられている。具体的には、サーモスタット70は、後述のバイメタル76(図3参照)を加熱ロール64側に向けて、加熱ロール64に対して予め定められた隙間をあけて、定着装置60の筐体62に設けられている。サーモスタット70は、図1に示すように、電気回路25内に設けられており、加熱ロール64(筐体62内部)の温度が予め定められた温度になった場合に電気回路25を遮断し、給電部21から加熱源64Bへの給電を停止するように構成されている。
【0037】
(本実施形態に係るサーモスタット70の具体的な構成)
次に、本実施形態に係るサーモスタット70の具体的な構成を説明する。図3〜5は、サーモスタット70の構成を示す概略図である。
【0038】
本実施形態に係るサーモスタット70は、図2及び図3に示すように、定着装置60の筐体62に形成された挿入孔62Aに挿入される装置本体71を備えている。装置本体71は、挿入孔62Aに挿入されることにより、定着装置60の筐体62に取り付けられる。
【0039】
サーモスタット70の装置本体71は、図3及び図4に示すように、一端部(図4における上端部)が開放された開放部72A(図4参照)を有する円筒状の筐体72と、筐体72の開放部72Aに設けられた保持部材の一例としてのキャップ74と、筐体72に設けられた第1電極81及び第2電極82と、を備えている。
【0040】
筐体72は、絶縁性を有する材料で構成されている。絶縁性を有する材料としては、例えば、セラミック、フェノール樹脂、ポリフェニレンスルフィルド等が用いられる。なお、筐体72の形状、材料は、上記に限られるものではない。
【0041】
筐体72の開放部72Aには、温度変化に応じて変位する変位部材の一例としてのバイメタル76が設けられている。バイメタル76は、皿バネ状に形成(絞り形成)されており、キャップ74によって、筐体72の外部に対して凹状(図4(A)に示す状態)に筐体72へ保持されている。また、バイメタル76は、線膨張率の異なる2種類の金属を接合することによって構成されており、予め定められた温度になると、筐体72の外部に対して凸状(図4(B)に示す状態)に変位(反転)するようにされている。
【0042】
キャップ74の平面視における中央部には、図3に示すように、バイメタル76の表面を外部に露出される円形状の開口部74Aが形成されている。キャップ74は、筐体72に対してカシメられることにより、筐体72に対して固定されている。
【0043】
第1電極81は、図4に示すように、筐体72の径方向(図4における矢印X方向)へ長さを有すると共に、耐熱性及び導電性を有する板状電極で構成されている。第1電極81の一端部81Aは、筐体72内部に配置され、筐体72の平面視における中央部よりも径方向外側であって、筐体72の側壁72B近傍において筐体72の底壁72Cに固定されている。第1電極81は、長手方向中間部で屈曲すると共に他端部81Bが筐体72の外部へ引き出されている。
【0044】
第1電極81は、筐体72の内部に配置された一端部81Aに第1接点91を有している。第1接点91は、バイメタル76側(図4における矢印Y方向)に向けられている。
【0045】
第2電極82は、筐体72の径方向(図4における矢印Y方向)へ長さを有すると共に、耐熱性及び導電性を有する板状電極で構成されている。第2電極82は、一端部82Aが筐体72内部の第1接点91とバイメタル76との間に配置され、長手方向中間部で屈曲すると共に他端部82Bが筐体72の外部へ引き出されている。
【0046】
第2電極82は、バイメタル76と第1接点91との間に配置された一端部82Aに第2接点92を有している。第2電極82は、第2接点92が第1接点91からバイメタル76側(図4における矢印Y方向)へ離れるように付勢されている。具体的には、第2電極82は、板バネで構成されており、自らの弾性力により、第1電極81に対してバイメタル76側へ離れるように付勢されている。従って、第2電極82は、付勢力に対抗して第1接点91へ押される対抗力が作用することで、第2接点92が第1接点91と接触し、その対抗力が作用しなくなることで、第1接点91からバイメタル76側へ離れるようになっている。
【0047】
なお、耐熱性、導電性及び弾性(ばね性)を有する部材(電極)としては、例えば、ステンレス、銅、リン青銅等からなる部材、又はこれらの部材をスズ、ニッケル、銀若しくは金等でめっきした部材が用いられる。
【0048】
第2電極82とバイメタル76との間には、第2電極82側からバイメタル76側に向かう第1方向(図4における矢印Y方向)へ移動可能に設けられた移動部材の一例としての移動ピン78が設けられている。なお、この第1方向は、筐体72の軸方向でもある。
【0049】
移動ピン78は、第2電極82に固定された第1部材の一例としての第1ピン78Aと、第1ピン78Aとバイメタル76との間に設けられた第2部材の一例としての第2ピン78Bと、を備えて構成されている。
【0050】
第1ピン78Aは、筐体72の軸方向(図4における矢印Y方向)へ長さを有しており、例えば、円柱状に形成されている。第1ピン78Aは、図5に示すように、筐体72の平面視における中央部(中心部)に配置されており、第2電極82のバイメタル76側の面(図4における上面)に固定されている。これにより、第1ピン78Aは、第2電極82と一体に移動するようになっている。
【0051】
第2ピン78Bは、筐体72の軸方向(図4における矢印Y方向)へ長さを有しており、例えば、円柱状に形成されている。第2ピン78Bは、図5に示すように、筐体72の平面視における中央部(中心部)に配置されている。第2ピン78Bは、第1ピン78Aと異なり、いずれの部材へも固定されていない。第2ピン78Bの径は、第1ピン78Aの径よりも大きくされている。
【0052】
この筐体72の中央部には、第1方向(図4における矢印Y方向)と直交する第2方向(図4における矢印X方向)への第2ピン78Bの移動を規制する規制部材の一例としての第1ピンガイド80が設けられている。なお、この第2方向は、筐体72の径方向でもある。
【0053】
第1ピンガイド80は、図4に示すように、第1方向(図4における矢印Y方向)へ貫通し第2ピン78Bが挿入される挿入孔80Aを内部に有する円筒状に形成されている。
第2ピン78Bが第1ピンガイド86に挿入された状態において、第1ピンガイド80の挿入孔80Aに沿って第1方向(図4における矢印Y方向)への移動が許容されると共に、第1ピンガイド80の内壁に当ることで第2方向(図4における矢印X方向)への移動が規制され、バイメタル76からの押し力を第2電極82へ伝達可能な伝達可能位置に位置するようになっている。
【0054】
第1ピンガイド80には、第1ピンガイド80を支持する支持部84が設けられている。具体的には、支持部84は、図5に示すように、第1ピンガイド80を挟んで第1ピンガイド80の径方向外側に一対で設けられている。
【0055】
一対の支持部84は、それぞれ、第2電極82の長さ方向と直交する方向であってかつ筐体72の径方向へ、第1ピンガイド80の外周面から筐体72の側壁72Bの内周面へ延びて設けられている。一対の支持部84の一端部が、それぞれ、第1ピンガイド80の外周面に固定され、一対の支持部84の他端部が、筐体72の側壁72Bの内周面に固定されている。これにより、第1ピンガイド80が支持部84に支持されている。
【0056】
筐体72の内部であって、かつ第1ピンガイド80とバイメタル76との間には、筐体72の軸方向(図4における矢印Y方向)へ第2ピン78Bを案内する第2ピンガイド86が設けられている。第2ピンガイド86は、筐体72の軸方向(図4における矢印Y方向)へ貫通し第2ピン78Bが挿入される挿入孔86Aを内部に有する円筒状に形成されている。挿入孔86Aの径は、第1ピンガイド80の挿入孔80Aの径よりも大きくされており、第2ピン78Bが挿入孔86A内で傾くことが可能な大きさの径とされている。
【0057】
ここで、本実施形態では、第2ピン78Bは、筐体72の外部に対して凹状とされている凹状態(図4(A)に示す状態)のバイメタル76に一端(図4における上端)が押されることにより他端(図4における下端)で第1ピン78Aを介して第2電極82を押して第2接点92と第1接点91とを接触させるようになっている。
【0058】
また、バイメタル76が凹状態である場合において、第2ピン78Bは、第1ピン78A側の端部(図4における下端部)が第1ピンガイド80の挿入孔80Aに挿入され、第1ピンガイド80によって、第2方向(図4における矢印X方向)への移動が規制される構成となっている。
【0059】
そして、第2ピン78Bは、バイメタル76の凸状への変位(図4(B)に示す状態)により、第2電極82の付勢力に対する対抗力が作用しなくなることで、第2電極82の付勢力でバイメタル76側へ移動する第1ピン78Aに押されて第1ピンガイド80からの規制が解除される構成とされている。具体的には、第2電極82の付勢力でバイメタル76側へ移動する第1ピン78Aが、第1ピンガイド80の挿入孔80Aに挿入されて、第1ピンガイド80の挿入孔80Aから第2ピン78Bを押し出す構成となっている。
【0060】
なお、第1ピン78Aは、第2電極82の復元により第1ピンガイド80の挿入孔80Aに挿入された際に、第1ピンガイド80のバイメタル76側の表面(図4における上面)と同一面上に位置するか、当該表面よりもバイメタル76側に突出する長さとされている。
【0061】
また、第2ピンガイド86は、第2ピン78Bを筐体72の内部に設置する際に案内する案内部材としても用いられる。本実施形態のサーモスタット70としては、第2ピンガイド86が設けられていない構成であってもよい。
【0062】
(本実施形態に係る作用)
次に、本実施形態に係る作用を説明する。
【0063】
本実施形態の構成によれば、加熱ロール64(筐体62内部)の温度が、予め定められた温度(通常動作温度)の範囲内である場合には、図4(A)に示すように、バイメタル76は、筐体72の外部に対して凹状とされている凹状態となっている。
【0064】
この場合では、第2ピン78Bは、第1ピンガイド80の挿入孔80Aに挿入されて、バイメタル76からの押し力を第2電極82へ伝達可能な伝達可能位置に位置しており、第2ピン78Bの一端(図4における上端)がバイメタル76に押されることにより第2ピン78Bの他端(図4における下端)で第1ピン78Aを介して第2電極82を押して第2接点92と第1接点91とを接触させる。これにより、電気回路25が遮断されず、給電部21から電気回路25を通じて加熱源64Bへ給電がなされる。
【0065】
ここで、定着装置60において、加熱ロール64(筐体62内部)の温度が、予め定められた温度(通常動作温度)を超えて高温になると、図4(B)に示すように、バイメタル76が筐体72の外部に対して凸状に変位(反転)する。
【0066】
バイメタル76が筐体72の外部に対して凸状に変位(反転)すると、第2電極82の付勢力に対する対抗力が作用しなくなり、第2電極82は、その付勢力により第2接点92がバイメタル76側へ移動し、第2接点92と第1接点91とが離れる。これにより、電気回路25が遮断され、給電部21から加熱源64Bへの給電が停止される。
【0067】
このとき、第1ピン78Aは、第1ピンガイド80の挿入孔80Aに挿入され、第1ピンガイド80から第2ピン78Bを押し出す。これにより、第2ピン78Bが第1ピンガイド80から飛び出し、第1ピンガイド80の移動規制が解除されて、第1ピンガイド80から外れる。すなわち、第2ピン78Bが第1ピンガイド80から抜け出すことにより、バイメタル76からの押し力を第2電極82へ伝達可能な伝達可能位置から外れる。これにより、第1ピン78Aは、第1方向(図4における矢印Y方向)に対して傾いたり、自重により下方へ落ちたりする。
【0068】
この状態において、反転したバイメタル76が、外部から押されて復帰された場合でも、第2ピン78Bは、バイメタル76によって押されないか、押されても第1ピンガイド80に挿入されない。このため、第2ピン78Bによって、第1ピン78Aが押されず、第2電極82の第2接点92と、第1電極81の第1接点91とが接触しない。すなわち、バイメタル76が外力によって凹状に復帰されても、電気回路25の遮断状態が維持される。
【0069】
なお、本実施形態では、加熱ロール64(筐体62内部)の温度が、予め定められた温度(通常動作温度)を超えて高温にならなくても、図6に示すように、バイメタル76を保持するキャップ74が、破損等により筐体72から離脱した場合においては、第2電極82の付勢力に対する対抗力が作用しなくなるため、第2電極82は、その付勢力により第2接点92がバイメタル76側へ移動し、第2接点92と第1接点91とが離れる。これにより、電気回路25が遮断され、給電部21から加熱源64Bへの給電が停止される。
【0070】
(変形例)
次に、変形例について説明する。
本実施形態では、移動ピン78が第1ピン78A及び第2ピン78Bで構成されていたが、変形例に係るサーモスタット170は、図7に示すように、1本のピンで構成された移動ピン178を備えている。なお、上記のサーモスタット70と機能が同一である部分には、同一符号を付して適宜説明を省略する。
【0071】
移動ピン178は、筐体72の軸方向(図7における矢印Y方向)へ長さを有しており、例えば、円柱状に形成されている。移動ピン178は、図8に示すように、筐体72の平面視における中央部(中心部)に配置されている。移動ピン178は、いずれの部材へも固定されていない。
【0072】
また、移動ピン178が第1ピンガイド86に挿入された状態において、第1ピンガイド80の挿入孔80Aに沿って第1方向(図7における矢印Y方向)への移動が許容されると共に、第1ピンガイド80の内壁に当ることで第2方向(図7における矢印X方向)への移動が規制され、バイメタル76からの押し力を第2電極82へ伝達可能な伝達可能位置に位置するようになっている。
【0073】
ここで、移動ピン178は、筐体72の外部に対して凹状とされている凹状態(図7(A)に示す状態)のバイメタル76に一端(図7における上端)が押されることにより他端(図7における下端)で第2電極82を押して第2接点92と第1接点91とを接触させるようになっている。
【0074】
また、バイメタル76が凹状態である場合において、移動ピン178は、第1ピンガイド80の挿入孔80Aに挿入され、第1ピンガイド80によって、第2方向(図7における矢印X方向)への移動が規制される構成となっている。
【0075】
そして、第2ピン78Bは、バイメタル76の凸状への変位(図7(B)に示す状態)により、第2電極82の付勢力に対する対抗力が作用しなくなることで、第2電極82の付勢力でバイメタル76側へ移動し、第1ピンガイド80の挿入孔80Aから飛び出す構成となっている。
【0076】
変形例の構成によれば、バイメタル76が筐体72の外部に対して凸状に変位(反転)すると、第2電極82の付勢力に対する対抗力が作用しなくなり、第2電極82は、その付勢力により第2接点92がバイメタル76側へ移動し、第2接点92と第1接点91とが離れる。これにより、電気回路25が遮断され、給電部21から加熱源64Bへの給電が停止される。
【0077】
このとき、移動ピン178は、第2電極82の付勢力により、第1ピンガイド80から飛び出し、第1ピンガイド80の移動規制が解除されて、第1ピンガイド80から外れる。すなわち、移動ピン178が第1ピンガイド80から抜け出すことにより、バイメタル76からの押し力を第2電極82へ伝達可能な伝達可能位置から外れる。これにより、移動ピン178は、第1方向(図7における矢印Y方向)に対して傾いたり、自重により下方へ落ちたりする。
【0078】
この状態において、反転したバイメタル76が、外部から押されて復帰された場合でも、移動ピン178は、バイメタル76によって押されないか、押されても第1ピンガイド80に挿入されない。このため、移動ピン178によって、第2電極82が押されず、第2電極82の第2接点92と、第1電極81の第1接点91とが接触しない。すなわち、バイメタル76が外力によって凹状に復帰されても、電気回路25の遮断状態が維持される。
【0079】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成しても良い。
【符号の説明】
【0080】
10 画像形成装置
14 画像形成部
25 電気回路(回路の一例)
60 定着装置
64 加熱ロール(加熱部材の一例)
70 サーモスタット(熱応動スイッチの一例)
72 筐体
76 バイメタル(変位部材の一例)
78A 第1ピン(第1部材の一例)
78B 第2ピン(第2部材の一例)
78 移動ピン(移動部材の一例)
80 第1ピンガイド(規制部材の一例)
81 第1電極
82 第2電極
91 第1接点
92 第2接点
170 サーモスタット(熱応動スイッチの一例)
178 移動ピン(移動部材の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の外部に対して凹状に前記筐体へ保持され、温度変化に応じて前記筐体の外部に対して凸状に変位する変位部材と、
前記筐体の内部に設けられた第1接点を有する第1電極と、
前記変位部材と前記第1接点との間に設けられた第2接点を有し、該第2接点が前記第1接点から前記変位部材側へ離れるように付勢された第2電極と、
前記第2電極側から前記変位部材側に向かう第1方向へ移動可能に前記第2電極と前記変位部材との間に設けられ、凹状態の前記変位部材に一端が押されることにより他端で前記第2電極を押して前記第2接点と前記第1接点とを接触させ、前記変位部材の凸状の変位により前記第2電極に作用する付勢力で前記第1方向へ移動する移動部材と、
前記変位部材からの押し力を前記第2電極へ伝達可能な伝達可能位置から前記第1方向と直交する第2方向への前記移動部材の移動を規制し、前記付勢力により前記第1方向へ移動した移動部材が前記伝達可能位置から外れるように前記規制を解除する規制部材と、
を備える熱応動スイッチ。
【請求項2】
前記移動部材は、
前記第2電極に固定された第1部材と、
前記第1部材と前記変位部材との間に設けられ、凹状態の前記変位部材に一端が押されることにより他端で前記第1部材を介して前記第2電極を押して前記第2接点と前記第1接点とを接触させ、前記変位部材の凸状への変位により前記第2電極の付勢力で前記第1部材に押されて前記第1方向へ移動し、前記伝達可能位置から外れるように前記規制部材からの規制が解除される第2部材と、を有する請求項1に記載の熱応動スイッチ。
【請求項3】
記録媒体上の画像を加熱する加熱部材と、
前記加熱部材へ給電するための回路と、
前記第1電極及び第2電極が前記回路内に設けられ、前記変位部材が前記加熱部材から受ける放射熱による温度変化に応じて変位して前記第1接点と前記第2接点とが離れることで前記回路を遮断する請求項1又は2に記載の熱応動スイッチと、
を備える、前記画像を前記記録媒体に定着させる定着装置。
【請求項4】
画像を記録媒体に形成する画像形成部と、
前記画像形成部で形成された画像を記録媒体へ定着させる請求項3に記載の定着装置と、
を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−204321(P2012−204321A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70893(P2011−70893)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】