説明

熱成形用シートおよび気泡緩衝材

【課題】 熱成形性および強度に優れる熱成形用ポリエチレン系樹脂シートを提供すること。
【解決手段】 下記成分(A)をシート成形してなる熱成形用シート。
成分(A):流動の活性化エネルギー(Ea)が40kJ/mol以上であり、JIS K7210に規定された温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10分であり、分子量分布(Mw/Mn)が4〜25であるエチレン−α−オレフィン共重合体

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱成形用シートおよび該シートを熱成形してなる気泡緩衝材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂シートを熱成形してなる成形体は、食品包装用トレーやカップなどの容器、気泡緩衝材として用いられている。該熱可塑性樹脂シートには、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂などが用いられており、特に、低温強度を重視する成形体用のシートでは、主にポリエチレン系樹脂が用いられている。ポリエチレン系樹脂の中では、エチレン−α−オレフィン共重合体が強度に優れているとされるが、エチレン−α−オレフィン共重合体は、これまで、熱成形性において充分ではなく、熱成形用シートの材料には不適とされており、高圧法低密度ポリエチレンを用いるのが一般的であった。ところが昨今では、特定のメタロセン触媒を用いて重合されたエチレン−α−オレフィン共重合体と高密度ポリエチレンとの組成物が、熱成形性に優れるポリエチレン系樹脂として提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−226496公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のポリエチレン系樹脂からなるシートを熱成形、例えば真空成形してなる成形体には、厚みムラや破れなどが生じることがあり、熱成形性において充分満足のいくものではなかった。
かかる状況のもと、本発明が解決しようとする課題は、熱成形性および強度に優れる熱成形用ポリエチレン系樹脂シートを提供することにある。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、熱成形性および強度に優れる熱成形用ポリエチレン系樹脂シートを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の第一は、下記成分(A)をシート成形してなる熱成形用シートにかかるものである。
成分(A):流動の活性化エネルギー(Ea)が40kJ/mol以上であり、JIS K7210に規定された温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10分であり、分子量分布(Mw/Mn)が4〜25であるエチレン−α−オレフィン共重合体
また、本発明の第二は、上記シートを熱成形してなる気泡緩衝材にかかるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体である。炭素原子数3〜20のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等があげられ、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。また、上記の炭素原子数3〜20のα−オレフィンは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0008】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体等があげられ、好ましくはエチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−オクテン共重合体である。
【0009】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体中のエチレンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体の全重量(100重量%)に対して、通常50重量%以上である。炭素原子数3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体の全重量(100重量%)に対して、通常50重量%以下である。
【0010】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体は長鎖分岐を有し、このようなエチレン−α−オレフィン共重合体は、熱成形用に知られた従来のエチレン−α−オレフィン共重合体に比して、流動の活性化エネルギー(Ea)が高く、通常40kJ/mol以上である。従来から知られている中空成形用のエチレン−α−オレフィン共重合体のEaは、通常40kJ/molよりも低い値であり、熱成形性に劣ることがある。
【0011】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体の流動の活性化エネルギー(Ea)として、熱成形性を高める観点から、好ましくは45kJ/mol以上であり、より好ましくは50kJ/mol以上であり、さらに好ましくは60kJ/mol以上である。また、熱成形体の強度を高める観点から、Eaは、好ましくは100kJ/mol以下であり、より好ましくは90kJ/mol以下である。
【0012】
エチレン−α−オレフィン共重合体(A)の流動の活性化エネルギー(Ea)は、温度−時間重ね合わせ原理に基づいて、190℃での溶融複素粘度(単位:Pa・sec)の角周波数(単位:rad/sec)依存性を示すマスターカーブを作成する際のシフトファクター(aT)からアレニウス型方程式により算出される数値であって、以下に示す方法で求められる値である。すなわち、130℃、150℃、170℃、190℃、210℃の温度の中から、190℃を含む4つの温度について、夫々の温度(T、単位:℃)におけるエチレン−α−オレフィン共重合体の溶融複素粘度−角周波数曲線(溶融複素粘度の単位はPa・sec、角周波数の単位はrad/secである。)を、温度−時間重ね合わせ原理に基づいて、各温度(T)での溶融複素粘度−角周波数曲線毎に、190℃でのエチレン系共重合体の溶融複素粘度−角周波数曲線に重ね合わせた際に得られる各温度(T)でのシフトファクター(aT)を求め、夫々の温度(T)と、各温度(T)でのシフトファクター(aT)とから、最小自乗法により[ln(aT)]と[1/(T+273.16)]との一次近似式(下記(I)式)を算出する。次に、該一次式の傾きmと下記式(II)とからEaを求める。
ln(aT) = m(1/(T+273.16))+n (I)
Ea = |0.008314×m| (II)
T :シフトファクター
Ea:流動の活性化エネルギー(単位:kJ/mol)
T :温度(単位:℃)
上記計算は、市販の計算ソフトウェアを用いてもよく、該計算ソフトウェアとしては、Rheometrics社製 Rhios V.4.4.4などがあげられる。
なお、シフトファクター(aT)は、夫々の温度(T)における溶融複素粘度−角周波数の両対数曲線を、log(Y)=−log(X)軸方向に移動させて(但し、Y軸を溶融複素粘度、X軸を角周波数とする。)、190℃での溶融複素粘度−角周波数曲線に重ね合わせた際の移動量であり、該重ね合わせでは、夫々の温度(T)における溶融複素粘度−角周波数の両対数曲線は、角周波数をaT倍に、溶融複素粘度を1/aT倍に移動させる。
また、130℃、150℃、170℃、190℃、210℃の中から190℃を含む4つの温度でのシフトファクターと温度から得られる一次近似式(I)式を最小自乗法で求めるときの相関係数は、通常、0.99以上である。
【0013】
上記の溶融複素粘度−角周波数曲線の測定は、粘弾性測定装置(例えば、Rheometrics社製Rheometrics Mechanical Spectrometer RMS−800など。)を用い、通常、ジオメトリー:パラレルプレート、プレート直径:25mm、プレート間隔:1.5〜2mm、ストレイン:5%、角周波数:0.1〜100rad/秒の条件で行われる。なお、測定は窒素雰囲気下で行われ、また、測定試料には予め酸化防止剤を適量(例えば1000ppm)を配合することが好ましい。
【0014】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体のJIS K7210−1995に規定された、温度190℃および荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレート(MFR)は、0.01〜100g/10分である。該MFRが低すぎると熱成形性が低下することがあり、好ましくは0.1g/10分以上であり、より好ましくは0.2g/10分以上であり、更に好ましくは0.3g/10分以上である。また、該MFRが高すぎると熱成形性および熱成形体の強度が低下することがあり、好ましくは10g/10分以下であり、より好ましくは2g/10分以下であり、特に好ましくは1g/10分以下である。
【0015】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート比(MFRR)は、通常40〜300である。該MFRRは、熱成形性をより高める観点から、好ましくは50以上であり、より好ましくは55以上である。また、該MFRRは、熱成形体の強度をより高める観点から、好ましくは250以下であり、より好ましくは200以下である。なお、該MFRRは、JIS K7210−1995に規定された温度190℃および荷重211.8Nの条件で測定されるメルトフローレートを、JIS K7210−1995に規定された温度190℃および荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートで除した値である。
【0016】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、通常、880〜960kg/m3である。該密度は、熱成形体の強度をより高める観点から、好ましくは940kg/m3以下であり、より好ましくは935kg/m3以下であり、さらに好ましくは930kg/m3以下である。また、該密度は、熱成形体の剛性を高める観点から、好ましくは890kg/m3以上であり、より好ましくは900kg/m3以上であり、さらに好ましくは910kg/m3以上である。なお、該密度は、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行い、JIS K7112−1980に規定された方法に従って測定される。
【0017】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、4〜25である。該分子量分布が小さすぎると熱成形性が低下することがあり、好ましくは6以上であり、より好ましくは7以上である。また、該分子量分布が大きすぎると熱成形体の強度が低下することがあり、好ましくは20以下であり、より好ましくは17以下である。なお、該分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ測定によってポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)とを求め、MwをMnで除した値(Mw/Mn)である。
【0018】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体は、熱成形性、熱成形体の強度、透明性を高める観点から、JIS K7210−1995に規定された、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートをMFR(単位:g/10分)とし、極限粘度を[η](単位:dl/g)として、下記式(1)を充足することが好ましい。
0.80×MFR-0.094 < [η] < 1.50×MFR-0.156 (1)
熱成形体の強度を高める観点から、エチレン−α−オレフィン共重合体(A)は、下記式(1−2)を充足することがより好ましく、
0.90×MFR-0.094 < [η] (1−2)
下記式(1−3)を充足することが更に好ましい。
1.00×MFR-0.094 < [η] (1−3)
また、熱成形性、熱成形体の透明性を高める観点から、エチレン−α−オレフィン共重合体は、下記式(1−4)を充足することがより好ましく、
[η] < 1.40×MFR-0.156 (1−4)
下記式(1−5)を充足することが更に好ましい。
[η] < 1.35×MFR-0.156 (1−5)
なお、JIS K7210−1995に規定された、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートが同じ値である従来のエチレン−α−オレフィン共重合体と本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体とを比較した場合、従来のエチレン−α−オレフィン共重合体の極限粘度は、本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体の極限粘度よりも、通常高い値である。
【0019】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体は、熱成形性、熱成形体の強度、透明性を高める観点から、JIS K7210−1995に規定された、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートをMFR(単位:g/10分)とし、190℃における溶融張力をMT(単位:cN)として、下記式(2)を充足することが好ましい。
2×MFR-0.59 < MT < 20×MFR-0.59 (2)
熱成形性、熱成形体の透明性を高める観点から、エチレン−α−オレフィン共重合体は、下記式(2−2)を充足することがより好ましく、
2.2×MFR-0.59 < MT (2−2)
下記式(2−3)を充足することが更に好ましい。
2.5×MFR-0.59 < MT (2−3)
また、熱成形体の強度を高める観点から、エチレン−α−オレフィン共重合体は、下記式(2−4)を充足することがより好ましく、
MT < 10×MFR-0.59 (2−4)
下記式(2−5)を充足することが更に好ましい。
MT < 5×MFR-0.59 (2−5)
【0020】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体は、熱成形性、熱成形体の透明性を高める観点から、温度190℃、角周波数100rad/secでの溶融複素粘度をη*(単位:Pa・sec)とし、JIS K7210に規定された、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートをMFR(単位:g/10分)として、下記式(3)を充足するものが好ましく、
η* < 1550×MFR-0.25−420 (3)
下記式(3−2)を充足することがより好ましく、
η* < 1500×MFR-0.25−420 (3−2)
下記式(3−3)を充足することが更に好ましく、
η* < 1450×MFR-0.25−420 (3−3)
下記式(3−4)を充足することが特に好ましい。
η* < 1350×MFR-0.25−420 (3−4)
【0021】
溶融複素粘度η*は、エチレン−α−オレフィン共重合体の流動の活性化エネルギー(Ea)を求めるために行われる測定のうち、190℃の溶融複素粘度−角周波数の測定において得られた、角周波数100rad/secにおける溶融複素粘度である。
【0022】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法としては、例えば、有機アルミニウム化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物、有機亜鉛化合物などの助触媒成分を粒子状担体に担持させてなる固体粒子状の助触媒成分(以下、成分(イ)と称する。)と、アルキレン基やシリレン基等の架橋基で2つのシクロペンタジエニル型アニオン骨格が結合した構造を持つ配位子を有するメタロセン錯体(以下、成分(ロ)と称する。)とを触媒成分として用いてなる重合触媒の存在下、エチレンとα−オレフィンとを共重合する方法があげられる。
【0023】
上記固体粒子状の助触媒成分としては、メチルアルモキサンを多孔質シリカと混合させた成分、ジエチル亜鉛と水とフッ化フェノールを多孔質シリカと混合させた成分等をあげることができる。
【0024】
上記固体粒子状の助触媒成分のより具体例として、成分(a)ジエチル亜鉛、成分(b)フッ素化フェノール、成分(c)水、成分(d)多孔質シリカおよび成分(e)トリメチルジシラザン(((CH33Si)2NH)を接触させてなる助触媒担体成分(イ)をあげることができる。
【0025】
成分(b)のフッ素化フェノールとしては、ペンタフルオロフェノール、3,5−ジフルオロフェノール、3,4,5−トリフルオロフェノール、2,4,6−トリフルオロフェノール等をあげることができる。成分(A)の流動活性化エネルギー(Ea)、分子量分布(Mw/Mn)を高める観点から、フッ素数の異なる2種類のフッ素化フェノールを用いることが好ましく、この場合、フッ素数が多いフェノールとフッ素数が少ないフェノールとのモル比としては、通常、20/80〜80/20であり、該モル比は高い方が好ましい。
【0026】
上記成分(a)、成分(b)および成分(c)の使用量としては、各成分の使用量のモル比率を成分(a):成分(b):成分(c)=1:y:zとすると、yおよびzが下記の式を満足することが好ましい。
|2−y−2z|≦1
上記の式におけるyとして、好ましくは0.01〜1.99の数であり、より好ましくは0.10〜1.80の数であり、さらに好ましくは0.20〜1.50の数であり、最も好ましくは0.30〜1.00の数である。
【0027】
成分(a)に対して使用する成分(d)の量としては、成分(a)と成分(d)との接触により得られる粒子に含まれる亜鉛原子のモル数が、該粒子1gあたり0.1mmol以上となる量であることが好ましく、0.5〜20mmolとなる量であることがより好ましい。成分(d)に対して使用する成分(e)の量としては、成分(d)1gあたり成分(e)0.1mmol以上となる量であることが好ましく、0.5〜20mmolとなる量であることがより好ましい。
【0028】
上記メタロセン錯体としては、2つのインデニル基が、エチレン基、ジメチルメチレン基またはジメチルシリレン基で結合したジルコノセン錯体、2つのメチルインデニル基が、エチレン基、ジメチルメチレン基またはジメチルシリレン基で結合したジルコノセン錯体、2つのメチルシクロペンタジエニル基が、エチレン基、ジメチルメチレン基またはジメチルシリレン基で結合したジルコノセン錯体、2つのジメチルシクロペンタジエニル基が、エチレン基、ジメチルメチレン基またはジメチルシリレン基で結合したジルコノセン錯体等をあげることができる。また、成分(ロ)の金属原子としては、ジルコニウムとハフニウムが好ましく、さらに金属原子が有する残りの置換基としては、ジフェノキシ基やジアルコキシ基が好ましい。成分(ロ)として、好ましくは、エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシドがあげられる。
【0029】
上記の固体粒子状の助触媒成分とメタロセン錯体とを用いてなる重合触媒においては、適宜、有機アルミニウム化合物を触媒成分として併用してもよく、該有機アルミニウム化合物としては、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム等をあげることができる。
【0030】
上記メタロセン錯体の使用量は、上記固体粒子状の助触媒成分1gあたり、好ましくは5×10-6〜5×10-4molである。また有機アルミニウム化合物の使用量として、好ましくは、上記メタロセン錯体の金属原子1モルあたり、有機アルミニウム化合物のアルミニウム原子が1〜2000モルとなる量である。
【0031】
また、上記の固体粒子状の助触媒成分とメタロセン錯体とを用いてなる重合触媒においては、適宜、電子供与性化合物を触媒成分として併用してもよく、該電子供与性化合物としては、トリエチルアミン、トリノルマルオクチルアミン等をあげることができる。
【0032】
上記成分(b)のフッ素化フェノールとしてフッ素数の異なる2種類のフッ素化フェノールを用いる場合は、電子供与性化合物を用いることが好ましい。
【0033】
電子供与性化合物の使用量としては、上記の触媒成分として用いられる有機アルミニウム化合物のアルミニウム原子のモル数に対して、通常0.1〜10mol%であり、成分(A)の分子量分布(Mw/Mn)を高める観点から、該使用量は高い方が好ましい。
【0034】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法としては、より具体的には、上記助触媒担体(イ)、架橋型ビスインデニルジルコニウム錯体および有機アルミニウム化合物を接触させてなる触媒の存在下、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとを共重合する方法があげられる。
【0035】
重合方法として、好ましくは、エチレン−α−オレフィン共重合体の粒子の成形を伴う連続重合方法であり、例えば、連続気相重合、連続スラリー重合、連続バルク重合であり、好ましくは、連続気相重合である。気相重合反応装置としては、通常、流動層型反応槽を有する装置であり、好ましくは、拡大部を有する流動層型反応槽を有する装置である。反応槽内に攪拌翼が設置されていてもよい。
【0036】
成分(A)のエチレン−α−オレフィン共重合体の製造に用いられる重合触媒の各成分を反応槽に供給する方法としては、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス、水素、エチレン等を用いて、水分のない状態で供給する方法、各成分を溶媒に溶解または稀釈して、溶液またはスラリー状態で供給する方法が用いられる。重合触媒の各成分は個別に供給してもよく、任意の成分を任意の順序にあらかじめ接触させて供給してもよい。
【0037】
また、本重合を実施する前に、予備重合を実施し、予備重合された予備重合触媒成分を本重合の触媒成分または触媒として使用することが好ましい。本重合と予備重合では異なるα−オレフィンを用いてもよく、炭素原子数が4〜12のα−オレフィンとエチレンとを予備重合することが好ましく、炭素原子数が6〜8のα−オレフィンとエチレンとを予備重合することがより好ましい。
【0038】
重合温度としては、通常、エチレン−α−オレフィン共重合体が溶融する温度よりも低く、好ましくは0〜150℃であり、より好ましくは30〜100℃であり、さらに好ましくは50〜90℃である。また、エチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)を広げる観点からは、重合温度は高い方が好ましい。
【0039】
重合時間としては(連続重合反応である場合は平均滞留時間として)、通常1〜20時間である。エチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)を広げる観点からは、重合時間(平均滞留時間)は長い方が好ましい。
【0040】
また、共重合体の溶融流動性を調節する目的で、重合反応ガスに水素を分子量調節剤として添加してもよく、重合反応ガス中に不活性ガスを共存させてもよい。重合反応ガス中のエチレンのモル濃度に対する重合反応ガス中の水素のモル濃度は、重合反応ガス中のエチレンのモル濃度100モル%として、通常、0.1〜3mol%である。また、また、エチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)を広げる観点からは、該重合反応ガス中の水素のモル濃度は、高い方が好ましい。
【0041】
本発明の熱成形用シートには、成分(A)に、必要に応じて、酸化防止剤、抗ブロッキング剤、滑剤、帯電防止剤、耐候安定剤、顔料、加工性改良剤等の添加剤;成分(A)以外の重合体成分等を添加してもよく、該添加剤および該重合体成分は2種以上を併用されてもよい。
【0042】
成分(A)以外の重合体成分(以下、成分(B)と称する。)としては、エチレンに基づく単量体単位の含有量が50重量%以上であるエチレン系重合体(ただし、該重合体の全重量を100重量%とする。)が好適であり、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、流動の活性化エネルギー(Ea)が40kJ/mol未満であるエチレン−α−オレフィン共重合体などがあげられる。これらは、1種でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらは、1種でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
成分(B)のエチレン系重合体としては、高圧法低密度ポリエチレンおよび流動の活性化エネルギー(Ea)が40kJ/mol未満であるエチレン−α−オレフィン共重合体からなるエチレン系重合体群から選ばれた少なくとも1種のエチレン系重合体であることが好ましい。
【0044】
成分(B)に用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンを共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体である。炭素原子数3〜20のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等があげられ、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。また、上記の炭素原子数3〜20のα−オレフィンは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
成分(B)に用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体は、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体等があげられ、好ましくはエチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−オクテン共重合体である。
【0046】
成分(B)に用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法としては、チーグラー・ナッタ系触媒、クロム系触媒、メタロセン系触媒等の公知の重合触媒を用いて、液相重合法、スラリー重合法、気相重合法、高圧イオン重合法等の公知の重合方法によって製造する方法があげられる。また、該重合法は、回分重合法、連続重合法のいずれでもよく、2段階以上の多段重合法でもよい。
【0047】
上記のチーグラー・ナッタ系触媒としては、例えば、次の(1)または(2)の触媒があげられる。
(1)三塩化チタン、三塩化バナジウム、四塩化チタンおよびチタンのハロアルコラートからなる群から選ばれる少なくとも1種をマグネシウム化合物系担体に担持した成分と、共触媒である有機金属化合物からなる触媒
(2)マグネシウム化合物とチタン化合物の共沈物または共晶体と共触媒である有機金属化合物からなる触媒
【0048】
上記のクロム系触媒としては、例えば、シリカまたはシリカ−アルミナにクロム化合物を担持した成分と、共触媒である有機金属化合物からなる触媒があげられる。
【0049】
メタロセン系触媒としては、例えば、次の(1)〜(4)の触媒があげられる。
(1)シクロペンタジエニル型アニオン骨格を1つ持つ配位子を1つ有する遷移金属化合物あるいはシクロペンタジエニル型アニオン骨格を1つ持つ配位子を2つ有する(2つの該配位子は架橋基等で結合していない)遷移金属化合物を含む成分と、アルモキサン化合物を含む成分からなる触媒
(2)前記遷移金属化合物を含む成分と、トリチルボレート、アニリニウムボレート等のイオン性化合物を含む成分からなる触媒
(3)前記遷移金属化合物を含む成分と、前記イオン性化合物を含む成分と、有機アルミニウム化合物を含む成分からなる触媒
(4)前記の各成分をSiO2、Al23等の無機粒子状担体や、エチレン、スチレン等のオレフィン重合体等の粒子状ポリマー担体に担持または含浸させて得られる触媒
【0050】
成分(B)に用いられる高圧法低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体の製造方法としては、公知の重合方法があげられ、例えば、エチレン単独あるいはエチレンと共重合単量体とを、高温高圧下でラジカル重合する方法があげられる。
【0051】
成分(B)のエチレン系重合体のJIS K7210−1995に規定された温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレート(MFR)は、熱成形性を高める観点から、好ましくは0.1g/10分以上であり、より好ましくは0.3g/10分以上であり、更に好ましくは0.5g/10分以上である。また、熱成形性、熱成形体の強度を高める観点から、該MFRは、好ましくは100g/10分以下であり、より好ましくは10g/10分以下であり、更に好ましくは4g/10分以下である。
【0052】
成分(B)に用いられるエチレン系重合体の密度は、通常、880〜960kg/m3である。該密度は、熱成形体の強度を高める観点から、好ましくは940kg/m3以下であり、より好ましくは930kg/m3以下であり、さらに好ましくは925kg/m3以下である。また、熱成形体の剛性を高める観点から、890kg/m3以上であり、より好ましくは900kg/m3以上であり、さらに好ましくは910kg/m3以上である。なお、該密度は、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行い、JIS K7112−1980に規定された方法に従って測定される。
【0053】
成分(A)と成分(B)とを含有する熱成形用シートとする場合、成分(A)と成分(B)の含有量としては、成分(A)と成分(B)の合計を100重量%として、熱成形体の強度を高める観点から、成分(A)の含有量が50重量%以上(成分(B)の含有量が50重量%以下)であり、成分(A)の含有量が60重量%以上(成分(B)の含有量が40重量%以下)であることが好ましく、成分(A)の含有量が70重量%以上(成分(B)の含有量が30重量%以下)であることがより好ましい。また、熱成形性、熱成形体の強度を高める観点からは、成分(A)の含有量が95重量%以下(成分(B)の含有量が5重量%以上)であり、成分(A)の含有量が90重量%以下(成分(B)の含有量が10重量%以上)であることが好ましく、成分(A)の含有量が85重量%以下(成分(B)の含有量が15重量%以上)であることがより好ましい。
【0054】
本発明の熱成形用シートの製造方法としては、公知のシート成形方法が用いられ、インフレーション法やTダイキャスト法などの押出成形法、射出成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法などをあげることができる。
【0055】
本発明の熱成形用シートは、シート成形方法として、共押出法、押出コーティング法などを採用することにより、多層シートにしてもよい。また、酸素などの気体や水蒸気のバリア層;吸音層;遮光層;酸素吸収層;接着層;粘着層;着色層;導電性層;再生樹脂含有層;発泡層などを設けてもよい。
【0056】
本発明の熱成形用シートの厚みは、目的、用途等により異なるが、通常50μm〜5mmである。
【0057】
本発明のシートを熱成形する方法としては、周知の方法が用いられ、例えば真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法などをあげることができる。具体的には、フリードローイング法、プラグアンドリング成形法、リッジ成形法、マッチドモールド成形法、ストレート成形法、ドレープ成形法、リバースドロー成形法、エアスリップ成形法、プラグアシスト成形法、プラグアシストリバースドロー成形法、接触加熱圧空成形法などがあげられる。
【0058】
本発明のシートを熱成形してなる熱成形体としては、各種容器(ボトル、トレー、カップ、丼、蓋等)、気泡緩衝材などがあげられ、該シートは気泡緩衝材の熱成形に好適に用いられる。また、これら熱成形体は、食品(バター、納豆、弁当、惣菜など)、飲料、工業用の部品、雑貨、玩具、日用品、事務用品、医療用品など包装材として用いられる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例および比較例により本発明を説明する。
実施例および比較例での物性は、次の方法に従って測定した。
【0060】
[重合体物性]
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210−1995に規定された方法に従い、荷重21.18N、温度190℃の条件で測定した。
【0061】
(2)メルトフローレート比(MFRR)
JIS K7210−1995に従って測定した。試験荷重211.83N、測定温度190℃の条件で測定した値を、試験荷重21.18N、測定温度190℃の条件で測定した値で、除した値をMFRRとした。
【0062】
(3)密度(単位:kg/m3)
JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定した。なお、測定試料片は、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行い測定に用いた。
【0063】
(4)分子量分布(Mw/Mn)
ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法を用いて、下記の条件(1)〜(7)により測定を行った。予め分子量分布が単分散とみなせる分子量分布の狭い標準ポリスチレン(東ソー製TSK STANDARD POLYSTYRNE)を用いて作成しておいた検量線を用いて、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)とポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)をもとめ、それらより分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
(1)装置:Water製Waters150C
(2)分離カラム:TOSOH TSKgelGMH−HT
(3)測定温度:145℃
(4)キャリア:オルトジクロロベンゼン
(5)流量:1.0mL/分
(6)注入量:500μL
(7)検出器:示差屈折
【0064】
(5)流動の活性化エネルギー(Ea、単位:kJ/mol)
粘弾性測定装置(Rheometrics社製Rheometrics Mechanical Spectrometer RMS−800)を用いて、下記測定条件で130℃、150℃、170℃および190℃での溶融複素粘度−角周波数曲線を測定し、次に、得られた溶融複素粘度−角周波数曲線から、Rheometrics社製計算ソフトウェア Rhios V.4.4.4を用いて、活性化エネルギー(Ea)を求めた。
<測定条件>
ジオメトリー:パラレルプレート
プレート直径:25mm
プレート間隔:1.2〜2mm
ストレイン :5%
角周波数 :0.1〜100rad/秒
測定雰囲気 :窒素下
【0065】
(6)溶融複素粘度(η*、単位:Pa・sec)
上記の(5)流動の活性化エネルギーを測定した際に得られた190℃での溶融複素粘度−角周波数の測定結果から、角速度が100rad/secにおける190℃の溶融複素粘度を求めた。
【0066】
(7)溶融張力(MT、単位:cN)
東洋精機製作所製 メルトテンションテスターを用いて、温度が190℃の条件で、9.5mmφのバレルに充填した溶融樹脂を、ピストン降下速度5.5mm/分で、径が2.09mmφ、長さ8mmのオリフィスから押出し、該押し出された溶融樹脂を、径が150mmφの巻き取りロールを用い、40rpm/分の巻き取り上昇速度で巻き取り、溶融樹脂が破断する直前における張力値を測定した。この値が大きいほど溶融張力が大きいことを示す。
【0067】
(8)極限粘度([η]、単位:dl/g)
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)を5重量%溶解したテトラリン溶液(以下、ブランク溶液と称する。)と、極限粘度を測定する試料の3種類の濃度c(単位:g/dl)が異なる135℃のテトラリン希薄溶液(以下、サンプル溶液と称する)を調整した。ウベローデ型粘度計を用い、ブランク溶液とサンプル溶液の135℃での降下時間を測定した。各濃度での降下時間(t、単位:秒)とブランク溶液の降下時間(t0、単位:秒)の比(t/t0)から135℃での相対粘度(ηrel(=t/t0))を求めた後、下記式より算出した比粘度(ηsp)を濃度cで除した(ηsp)/cを濃度cに対してプロットし、cを0に外挿したときの(ηsp)/cを求め、この値を極限粘度[η]とした。
(ηsp)=(ηrel)−1
【0068】
[シート物性]
(9)真空成形性
シートからTD方向が長辺になるように、長さ130mm、幅10mmの試料片を切り出した。コの字型のホルダー(コの字の開度5cm)を、コの字の開いている部分を上にしてオーブン内に設置し、該ホルダーの上に、コの字に開いて部分にシートを渡すようにして水平に試験片をのせ、次に、該試験片を140℃で3分間熱処理した。熱処理後、コの字に開いて部分において、試験片が垂れ下がった長さ(単位:mm)を、加熱変形量として求めた。この値が小さいほど真空成形性に優れる。
【0069】
(10)強度(US、単位:MPa)
シートから、JIS K6251−1993に記載の3号ダンベル型に打ち抜いたものをとして試料として用いて、標線間距離20mm、チャック間60mm、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、破断応力を求めた。この値が大きいほど強度に優れる。
【0070】
(11)透明性(Haze、単位:%)
シートのHazeをASTM D1003に従って測定した。この値が小さいほど透明性に優れる。
【0071】
実施例1
(1)助触媒担体の調製
窒素置換した撹拌機を備えた反応器に、窒素流通下で300℃において加熱処理したシリカ(デビソン社製 Sylopol948;平均粒子径=55μm;細孔容量=1.67ml/g;比表面積=325m2/g)2.8kgとトルエン24kgとを入れて、撹拌した。5℃に冷却した後、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン0.91kgとトルエン1.43kgと混合溶液を反応器内の温度を5℃に保ちながら33分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間、95℃で3時間攪拌し、ろ過した。得られた固体成分をトルエン21kgで6回、洗浄を行った。その後、トルエンを6.9kg加えてスラリーとし、一晩静置した。
【0072】
上記で得られたスラリーに、ジエチル亜鉛のヘキサン溶液(ジエチル亜鉛濃度:50wt%)2.05kgとヘキサン1.3kgとを投入し、攪拌した。その後、5℃に冷却した後、ペンタフルオロフェノール0.77kgとトルエン1.17kgとの混合溶液を、反応器内の温度を5℃に保ちながら61分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間、40℃で1時間攪拌した。その後、H2O0.11kgを反応器内の温度を5℃に保ちながら1.5時間で滴下した。滴下終了後、5℃で1.5時間、55℃で2時間攪拌した。その後、室温にてジエチル亜鉛のヘキサン溶液(ジエチル亜鉛濃度:50wt%)1.4kgとヘキサン0.8kgとを投入した。5℃に冷却した後、3,4,5−トリフルオロフェノール0.42kgとトルエン0.77kgとの混合溶液を、反応器内の温度を5℃に保ちながら60分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間、40℃で1時間攪拌した。その後、H2O0.077kgを反応器内の温度を5℃に保ちながら1.5時間で滴下した。滴下終了後、5℃で1.5時間、40℃で2時間、更に、80℃で2時間攪拌した。攪拌を停止し残量16Lまで上澄み液を抜き出し、トルエン11.6kgを投入し、攪拌した。95℃に昇温し、4時間攪拌した。静置し、固体成分を沈降させ、沈降した固体成分の層と上層のスラリー部分との界面が見えた時点で上層のスラリー部分を取り除き、次いで残りの液成分をフィルターにてろ過した。得られた固体成分をトルエン20.8kgで4回、ヘキサン24リットルで3回、洗浄を行った。その後、乾燥することにより、固体成分(以下、助触媒担体(a−1)と称する。)を得た。
【0073】
(2)予備重合
予め窒素置換した内容積210リットルの撹拌機付きオートクレーブに、上記助触媒担体(a−1)0.71kgと、ブタン80リットル、1−ブテン0.02kg、常温常圧の水素として3リットルを仕込んだ後、オートクレーブを30℃まで上昇した。さらにエチレンをオーツクレーブ内のガス相圧力で0.03MPa分だけ仕込み、系内が安定した後、トリイソブチルアルミニウム216mmol、ラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシド72.5mmolを投入して重合を開始した。31℃へ昇温するとともに、エチレンと水素を連続で供給しながら、50℃で合計4時間の予備重合を実施した。重合終了後、エチレン、ブタン、水素ガスなどをパージして残った固体を室温にて真空乾燥し、上記助触媒単体(a−1)1g当り14.2gのエチレン−1−ブテン共重合体が予備重合された予備重合触媒成分を得た。
【0074】
(3)連続気相重合
上記の予備重合触媒成分を用い、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1−ヘキセンの共重合を実施した。重合条件は、温度75.4℃、全圧2MPa、ガス線速度0.28m/s、エチレンに対する水素モル比は0.835%、エチレンに対する1−ヘキセンモル比は1.96%で、重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1−ヘキセン、水素を連続的に供給した。さらに、流動床の総パウダー重量を80kgに維持し、平均重合時間3.4hrとなるように、上記予備重合触媒成分と、トリイソブチルアルミニウムとを一定の割合で連続的に供給した。重合により、23.4kg/hrの生産効率でエチレン−1−ヘキセン共重合体(以下、PE−1と称する。)のパウダーを得た。
【0075】
(4)エチレン−1−ヘキセン共重合体パウダーの造粒
上記で得たPE−1のパウダーを、神戸製鋼所社製LCM50押出機を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度4.2mm、サクション圧力0.2MPa、樹脂温度200〜230℃条件で造粒することにより、PE−1のペレットを得た。PE−1のペレットの物性を表1に示す。
【0076】
(5)シート成形
Tダイシート成形機(ユニオンプラスチックス社製、Tダイ幅250mm、ダイリップ開度1mm)を用いて、ダイ温度190℃、押出量6kg/hr、引取速度1.6m/分、冷却ロールの冷却水温度50℃の加工条件で、PE−1のペレットを400μmのシートに成形した。得られたシートの物性を表2に示す。
【0077】
実施例2
【0078】
(1)予備重合
予め窒素置換した内容積210リットルの撹拌機付きオートクレーブに、実施例1(1)で調整した助触媒担体(a−1)0.70kgと、ブタン80リットル、1−ブテン0.01kg、常温常圧の水素として6リットルを仕込んだ後、オートクレーブを40℃まで上昇した。さらにエチレンをオーツクレーブ内のガス相圧力で0.03MPa分だけ仕込み、系内が安定した後、トリイソブチルアルミニウム208mmol、ラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシド70mmolを投入して重合を開始した。43℃へ昇温するとともに、エチレンと水素を連続で供給しながら、48℃で合計4時間の予備重合を実施した。重合終了後、エチレン、ブタン、水素ガスなどをパージして残った固体を室温にて真空乾燥し、助触媒担体(a−1)1g当り14.3gのエチレン−1−ブテン共重合体が予備重合された予備重合触媒成分を得た。
【0079】
(2)連続気相重合
上記の予備重合触媒成分を用い、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1−ヘキセンの共重合を実施した。重合条件は、温度75℃、全圧2MPa、ガス線速度0.25m/s、エチレンに対する水素モル比は0.916%、エチレンに対する1−ヘキセンモル比は0.93%で、重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1−ヘキセン、水素を連続的に供給した。さらに、流動床の総パウダー重量を80kgに維持し、平均重合時間4.1hrとなるように、上記予備重合触媒成分と、トリイソブチルアルミニウムとを一定の割合で連続的に供給した。重合により、19.6kg/hrの生産効率でエチレン−1−ヘキセン共重合体(以下、PE−2と称する。)のパウダーを得た。
【0080】
(3)エチレン−1−ヘキセン共重合体パウダーの造粒
上記で得たPE−2のパウダーを、神戸製鋼所社製LCM50押出機を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度4.2mm、サクション圧力0.2MPa、樹脂温度200〜230℃条件で造粒することにより、PE−2のペレットを得た。PE−2のペレットの物性を表1に示す。
【0081】
(4)シート成形
PE−1のペレットに代えてPE−2のペレットを用いる以外は、実施例1(5)と同様にしてシート成形を行った。得られたシートの物性を表2に示す。
【0082】
比較例1
PE−1のペレットに代えて市販の直鎖状低密度ポリエチレン(住友化学社製 スミカセン−E FV405(メタロセン触媒で製造);以下、PE−3と称する。)を用いる以外は、実施例1(5)と同様にしてシート成形を行った。PE−3のペレットの物性を表1に、得られたシートの物性を表2に示す。
【0083】
比較例2
PE−1のペレットに代えて市販の直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリケム社製 ノバテックLL UE320;以下、PE−4と称する。)を用いる以外は、実施例1(5)と同様にしてシート成形を行った。PE−4のペレットの物性を表1に、得られたシートの物性を表2に示す。
【0084】
比較例3
PE−1のペレットに代えて市販の高密度ポリエチレン(Dow Chemical社製 アフィニティ PF1140;以下、PE−5と称する。)を用いる以外は、実施例1(5)と同様にしてシート成形を行った。PE−5のペレットの物性を表1に、得られたシートの物性を表2に示す。
【0085】
比較例4
PE−1のペレットに代えて市販の高圧法低密度ポリエチレン(住友化学社製 スミカセン F102−0;以下、PE−6と称する。)を用いる以外は、実施例1(5)と同様にしてシート成形を行った。PE−6のペレットの物性を表1に、得られたシートの物性を表2に示す。
【0086】
実施例3
PE−1のパウダー80重量%と市販の直鎖状低密度ポリエチレン(住友化学社製 スミカセン−E FV203(メタロセン触媒を用いて製造;エチレン−1−ヘキセン共重合体);以下、PE−7と称する。)20重量%とを、神戸製鋼所社製LCM50押出機を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度4.2mm、サクション圧力0.2MPa、樹脂温度200〜230℃条件で、溶融混合して造粒することによりペレットを得た。次に、該ペレットを用いて実施例1(5)と同様にしてシート成形を行った。得られたシートの物性を表2に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)をシート成形してなる熱成形用シート。
成分(A):流動の活性化エネルギー(Ea)が40kJ/mol以上であり、JIS K7210に規定された温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10分であり、分子量分布(Mw/Mn)が4〜25であるエチレン−α−オレフィン共重合体
【請求項2】
下記成分(A)と成分(B)とを含有し、成分(A)と成分(B)との合計を100重量%として、成分(A)の含有量が95〜50重量%であり、成分(B)の含有量が5〜50重量%であるエチレン系樹脂組成物をシート成形してなる熱成形用シート。
成分(A):流動の活性化エネルギー(Ea)が40kJ/mol以上であり、JIS K7210に規定された温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10分であり、分子量分布(Mw/Mn)が4〜25であるエチレン−α−オレフィン共重合体
成分(B): 高圧法低密度ポリエチレンおよび流動の活性化エネルギー(Ea)が40kJ/mol未満であるエチレン−α−オレフィン共重合体からなるエチレン系重合体群から選ばれた少なくとも1種のエチレン系重合体
【請求項3】
請求項1または2に記載のシートを熱成形してなる気泡緩衝材。

【公開番号】特開2006−274163(P2006−274163A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−98195(P2005−98195)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】