説明

熱撮像部材および方法

本発明の一局面によれば、結晶形態の時に第一色を示し、非結晶形態の時に、第一色とは異なる第二色を示す所定のローダミン発色化合物を使用した、新規の熱撮像部材及び方法を提供する。非対称性ローダミン化合物を使用した熱撮像部材及び熱撮像方法が記載される。ローダミン色形成化合物は、結晶形態の時に第一色を示し、非結晶形態の時に、第一色とは異なる第二色を示す。本発明の熱撮像部材及び熱撮像法による結晶形態から非結晶形態への転換は、化合物に熱を適用して実施される。本発明の熱撮像法において、熱エネルギーは、熱撮像の分野で既知の任意の技法により、例えば熱印字ヘッド、レーザー、加熱針等から熱撮像部材に適用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、いずれも2005年5月12日に出願された、仮特許出願第60/680,088号および60/680,212号の優先権の利益を主張する。仮特許出願第60/680,088号および60/680,212号の内容は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【0002】
本願は、以下の、共有に係る米国特許出願および特許に関連する。これらの内容は、その全体が本明細書中に参考として援用される:
米国特許第6,801,233 B2号;
米国特許第6,906,735 B2号;
米国特許第6,951,952 B2号;
米国特許第7,008,759 B2号;
米国特許第6,801,233 B2号の分割出願である、2004年3月23日に出願された、米国特許出願第10/806,749号;
米国特許出願公開第2004/0176248 A1号(代理人整理番号A−8544AFP);
米国特許出願公開第2004/0204317 A1号(代理人整理番号A−8586AFP);
米国特許出願公開第2004/0171817 A1号(代理人整理番号A−8589AFP);
2006年4月6日に出願された、米国特許出願第11/400,735号(代理人整理番号A−8598);
2006年4月6日に出願された、米国特許出願第11/400,734号(代理人整理番号A−8606);および
本願と同日付で出願された、米国特許出願第XX/XXX,XXX号(Express Mail番号:669114318 US)(代理人整理番号A−8614)。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、熱撮像部材及び熱撮像法に関し、より詳細には、結晶形態で一色を示し、液体形又は非結晶形態で第二の異なる色を示す発色剤を使用した撮像部材及び熱撮像法に関する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
熱印字ヘッド(個別に対処可能なヘッド要素の直線配列)の開発は、非常に種々の感熱画像材料の開発を誘導してきた。「熱転写」システムとして周知のこれらの数個において、有色材料を供与シートから受容シートへ移動する時に熱が使用される。或いは、「感熱」撮像として周知の工程では、一枚のシート上の無色コーティングを有色画像に変換する時に、熱を使用し得る。感熱撮像は、単一シートでの熱転写の簡易性の利点を有する。他方、固定手順を組み込まない限り、感熱システムは、熱印字後でも熱に敏感である。固定していない感熱システムから安定した画像が必要な場合、着色温度は、通常の使用中に遭遇し得る像の任意の温度より高い必要がある。着色温度がより高いと、熱印字ヘッドにより印字する時の撮像部材の感度がより低くなる問題を生じる。高い感度は、最大の印字速度、印字ヘッドの寿命を最大に延ばすこと、また、可動式の電池式プリンターの電力保存において重要である。以下により詳細に説明するように、安定性を維持すると共に感度を最大にすることは、感熱紙媒体の着色温度が加熱時間に実質的に依存しない場合に、より容易に達成される。
【0005】
熱印字ヘッドは、一時に一ラインの画像に対処する。理想的な印字時間のために、画像の各ラインは、約10ミリ秒又はそれ未満加熱される。しかしながら、媒体の保管(印字の前、又は最終的な画像の形態で)は数年間必要であり得る。従って、高い撮像の感度のためには、短い加熱時間内での高い程度の着色が必要である一方、良好な安定性のためには、長い加熱時間での低い程度の着色が必要である。
【0006】
殆どの化学反応は、温度の上昇により加速される。従って、熱印字ヘッドから得られる短い加熱時間での着色に必要な温度は、通常、長い保管時間中に着色させるのに必要な温度よりも高くなる。この温度要求を反転させることは非常に困難な課題であるが、長い及び短い時間間隔の両方における着色に必要な温度を実質的に同一にするように、実質的に時間間隔に非依存的な着色温度を維持することは、本発明により達成される目標である。
【0007】
時間間隔に非依存的な着色温度が望ましいと思われることには、他の理由が存在し得る。例えば、印字後に、比較的長い加熱時間が必要とされる第二の熱手順の実施が必要であり得る。そのような手順の例は、画像の熱ラミネーションである。熱ラミネーションに必要な時間中の画像材料の着色の温度は、ラミネーション温度よりも高い必要がある(さもなくば、材料はラミネーション中に着色される)。撮像の温度は、可能な限り小さい差で、ラミネーション温度よりも高いことが好ましいと思われる。このことは、時間間隔に非依存的な着色温度の場合に当て嵌まる。
【0008】
最後に、撮像システムは、上述の米国特許第6,801,233B2号に記載の通り、複数の発色層を含み、単一の熱印字ヘッドにより印字されるように設計され得る。撮像システムの一実施形態において、最上部の色形成層は、色を比較的高温で比較的短時間にて形成する一方、より低い層は、色を比較的低温で比較的長時間にて形成する。このタイプの感熱撮像システムに理想的な最上部の層は、時間間隔に非依存的な着色温度を有するであろう。
【0009】
先行技術による感熱撮像システムは、色の変化を生成するために、数個の異なる化学的機構を使用してきた。幾つかは、本質的に不安定であり、加熱されると分解して可視色を形成する化合物を使用している。このような色変化は、単分子化学反応に関与し得る。この反応は、無色前駆体から形成するべき色を生じ、有色材料の色を変化させ、又は有色材料を漂白し得る。反応速度は、加熱により加速される。例えば、米国特許第3,488,705号には、加熱により分解し漂白される、熱的に不安定したトリアリールメタン染料の有機酸塩が開示されている。米国再発行特許第29,168号として再発行された米国特許第3,745,009号、及び米国特許第3,832,212号には、サーモグラフィーのための、−OR基、例えば炭酸基で置換された複素環窒素原子を含む感熱化合物が開示され、この化合物は、加熱により窒素−酸素結合の均一又は不均一切断を受けて、その一部が更に分裂されるRO+イオン又はRO’ラジカル、及び染料ベース又は染料ラジカルを生成することにより脱色される。米国特許第4,380,629号には、エネルギー活性化に応答して、開環及び閉環を介して可逆的又は不可逆的に着色又は漂白を受ける、スチリル様化合物が開示されている。米国特許第4,720,449号には、無色分子を着色形態に転換する分子内アシル化反応が記載されている。米国特許第4,243,052号には、染料の形成に使用し得る、キノフタロン前駆体の混合炭酸塩の熱分解が記載されている。米国特許第4,602,263号には、染料の出現、又は染料色の変化に使用し得る、熱除去可能な保護基が記載されている。米国特許第5,350,870号には、色変化の誘導に使用し得る分子内アシル化反応が記載されている。単分子発色反応の更なる例は、“Newrmo−Response Dyes: Coloration by the Claisen Rearrangement and Intramolecular Acid−Base Reaction”, Masahiko Inouye, Kikuo Tsuchiya, and Teijiro Kitao, Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 31, pp.204−5(1992)に記載されている。
【0010】
上述の全ての例において、化学反応は、温度変化により生じる速度の変化を介して制御される。相変化の不在下での化学反応速度の熱誘導による変化は、多くの場合、速度定数が絶対温度の逆数の低下(即ち、温度の上昇)と共に指数関数的に増大するArrhenius方程式により概算し得る。絶対温度の逆数に対する速度定数の対数に関連した直線の勾配は、通称「活性化エネルギー」に比例する。上記の先行技術による化合物は、撮像前に非晶質状態にてコーティングされ、従って室温及び撮像温度の間で相変化が予期され、又は生じることが記載されている。従って、先行技術で使用されているように、これらの化合物は、時間間隔に強力に依存する着色温度を示す。これら先行技術の化合物の数個は、結晶形態で単離されていることが記載されている。にもかかわらず、これらの先行技術は何れも、化合物の結晶が融解した時に生じ得る色形成反応の活性化エネルギーの変化を全く記載していない。
【0011】
他の先行技術による熱画像媒体は、画像形成の誘引を融解に依存している。一般的に、互いに反応して色変化を生じる二種又はそれ以上の化合物が、例えば小結晶の拡散物として互いに隔離されるように基材上にコーティングされている。化合物自体の、又は更なる可融性担体の融解により、化合物が互いに接触して、可視画像が形成される。例えば、無色染料前駆体は、熱誘導による試薬との接触により、色を形成し得る。この試薬は、“Imaging Processes and Materials”, Neblette’s Eighth Edition, J. Sturge, V. Walworth, A. Shepp, Eds., Van Nostrand Reinhold, 1989, pp. 274−275に記載されているBronsted酸、又は、例えば米国特許第4,636,819号に記載のLewis酸であり得る。酸性試薬と共に使用するに適した染料前駆体は、例えば米国特許第2,417,897号、南アフリカ特許第68−00170号、南アフリカ特許第68−00323号、及びGer. Offenlegungschrift 2,259,409に記載されている。このような染料の更なる例は、Ina Fletcher及びRudolf Zinkによる“Synthesis and Properties of Phthalide−type Color Formers”、“Chemistry and Applications of Leuco Dyes”,Muthyala Ed., Plenum Press, New York, 1997に見出すことができる。酸性材料は、例えばフェノール誘導体又は芳香族カルボン酸誘導体であり得る。これらの熱画像材料及びそれらの種々の組み合わせは周知であり、これら材料を使用した感熱記録要素の調製方法も周知であり、例えば米国特許第3,539,375号、米国特許第4,401,717号及び米国特許第4,415,633号に記載の。
【0012】
少なくとも2つの別個の成分が混合された後に融解遷移する先行技術によるシステムは、熱印字ヘッドによる非常に短い時間間隔中の画像形成に必要な温度が、より長時間の加熱中に媒体を着色するに必要な温度よりも実質的に高くなり得る不都合を有する。この差異は、融解成分を共に混合するのに必要な拡散速度の変化を原因とし、該拡散速度は、熱が非常に短時間で適用される場合に制限され得る。この遅い拡散速度を克服するために、温度を個々の成分の融点よりもはるかに高く上昇させる必要があり得る。拡散速度は、長い加熱時間中には制限されないと思わるが、これらの場合に、着色が起こる温度は、実際には個々の成分の何れの融点よりも低く、結晶材料混合物の共融温度にて起こると思われる。
【0013】
本出願と同一の出願人に譲渡された、2004年2月27日出願の米国特許出願第10/789,648号(特許文献1)は、染料が一色を有する一形態から、該染料が第二色を有する他の一形態に、例えば無色から有色に転換される熱撮像法に関する。
【0014】
特許文献2には、所定の非対称性ローダミン染料を含有するインクジェット記録インクが開示されている。特許文献3には、所定のローダミン染料を使用した熱撮像部材及び方法が開示されている。
【0015】
新たな性能要求に応じ得る新たな撮像システムを提供するために、最先端の画像技術が進歩し、また努力が為されるにつれ、尚別のクラスの染料を使用した熱撮像システムを有することは有利であろう。
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0176248号明細書
【特許文献2】特開平9−241553号公報
【特許文献3】米国特許第4,390,616号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
従って、本発明の目的は、新規の熱撮像部材及び方法を提供することにある。本発明の別の目的は、結晶形態の時に非結晶形態とは異なる色を示す発色剤を使用した、熱撮像部材及び方法を提供することにある。
【0017】
本発明の更なる別の目的は、所定のローダミン発色剤を使用した撮像部材及び方法を提供することにある。
【0018】
本発明の一局面によれば、結晶形態の時に第一色を示し、非結晶形態の時に、第一色とは異なる第二色を示す所定のローダミン発色化合物を使用した、新規の熱撮像部材及び方法を提供する。
【0019】
一実施形態において、化学式I
【0020】
【化2】

(式中:R、R、R、R、R、R、R及びR14はそれぞれ独立して、水素、好ましくは1〜18個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキル、好ましくは1〜18個の炭素原子を有するアルケニル若しくは置換アルケニル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、置換カルボニル、アシルアミノ、ハロゲン、アリール、置換アリール、ヘテロアリール及び置換ヘテロアリールからなる群から選択され;
は、水素、好ましくは1〜18個の炭素原子を有するアルキル若しくは置換アルキル、好ましくは1〜18個の炭素原子を有するアルケニル若しくは置換アルケニル、ヘテロシクロアルキル及び置換ヘテロシクロアルキルからなる群から選択されるか;又は
及びRは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、置換若しくは非置換飽和複素環系、例えば置換及び非置換モルホリン、ピロリジン、及びピペリジンを形成してもよく;
は、欠如しているか、又は水素、好ましくは1〜18個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキル、好ましくは1〜18個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルケニル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、置換カルボニル、ハロゲン、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アミノ、置換アミノ、アルキルアミノ、置換アルキルアミノ、アリールアミノ及び置換アリールアミノからなる群から選択され;
10、R11及びR12はそれぞれ独立して、水素、好ましくは1〜18個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル、好ましくは1〜18個の炭素原子を有する置換又は非置換アルケニル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、置換カルボニル、ハロゲン、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アミノ、置換アミノ、アルキルアミノ、置換アルキルアミノ、アリールアミノ及び置換アリールアミノからなる群から選択され;
13は、水素、好ましくは1〜18個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル、好ましくは1〜18個の炭素原子を有する置換又は非置換アルケニル、ヘテロシクロアルキル及び置換ヘテロシクロアルキルからなる群から選択され;
14は、水素、好ましくは1〜18個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルキル、好ましくは1〜18個の炭素原子を有する置換若しくは非置換アルケニル、ヘテロシクロアルキル及び置換ヘテロシクロアルキルからなる群から選択されるか;又は
13及びR14は、それらが結合する原子と一緒になって、5員若しくは6員の複素環、例えばインドリン若しくはテトラヒドロキノリンを形成してもよく;
15、R16、R17及びR18はそれぞれ独立して、水素、好ましくは1〜18個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル、好ましくは1〜18個の炭素原子を有する置換又は非置換アルケニル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、置換カルボニル、ハロゲン、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アミノ、置換アミノ、アルキルアミノ、置換アルキルアミノ、アリールアミノ及び置換アリールアミノからなる群から選択され;
は、炭素又は窒素であり;そしてR及びR13の少なくとも一方が水素である)により表される化合物を使用した新規の熱撮像部材及び方法を提供する。
【0021】
置換基は、化合物の水溶性を最小にし、且つ非極性、非プロトン性溶媒中での無色形態の形成を促進するように選択することが好ましい。それにより、化合物の無色ラクトン形態は、融解して有色形態を形成できる筈である。
【0022】
本発明に基づく使用に好ましい化合物群は、化学式Iにより表されるものであり、式中、R及びRは一緒になってピロリジン環を形成し、R10、R11及びR13はそれぞれ水素であり、Xは炭素であり、R、R、R、R、R、R、R、R12、R14、R15、R16、R17及びR18は、化学式Iに関して先に記載した通りである。
【0023】
本発明に基づく使用に好ましい第二の化合物群は、化学式Iにより表されるものであり、式中、Rは水素であり、Rはアルキルであり、R10及びR11はそれぞれハロゲンであり、R13はアルキルであり、Xは炭素であり、R、R、R、R、R、R、R、R12、R14、R15、R16、R17及びR18は、化学式Iに関して先に記載した通りである。
【0024】
本発明に基づく使用に好ましい第三の化合物群は、化学式Iにより表されるものであり、式中、Rは水素であり、Rはアリール又は置換アリールであり、R13及びR14はアルキルであり、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R15、R16、R17、R18及びXは、化学式Iに関して先に記載した通りである。
【0025】
本発明に基づく使用に特に好ましいローダミン化合物は、化学式Iにより表される化合物であり、式中、R、R、R、R、R、R、R及びR12はそれぞれ水素であり;Rは水素又は1〜18個の炭素原子を有するアルキルであり、Rは1〜18個の炭素原子を有するアルキル、アリール若しくは置換アリールであるか、又はR及びRは、それらが結合する窒素原子と一緒になってピロリジン環を形成し;R10及びR11はそれぞれ独立して、水素又はハロゲンであり、R13は、水素、又は好ましくは1〜18個の炭素原子を有するアルキルであり、R14は水素、又は好ましくは1〜18個の炭素原子を有するアルキルであり、Xは炭素であり、R15、R16、R17及びR18はそれぞれ独立して、水素、1〜18個の炭素原子を有するアルキル、又はハロゲンである。
【0026】
本発明の熱撮像部材及び熱撮像法による結晶形態から非結晶形態への転換は、化合物に熱を適用して実施される。本発明の熱撮像法において、熱エネルギーは、熱撮像の分野で既知の任意の技法により、例えば熱印字ヘッド、レーザー、加熱針等から熱撮像部材に適用され得る。
【0027】
別の実施形態において、熱撮像部材に、結晶材料である一種又はそれ以上の熱溶媒を組み込み得る。結晶熱溶媒は、加熱により融解及び溶解し、即ち液化して、結晶発色材料を少なくとも部分的に非結晶形態に転換して画像を形成する。
【0028】
有色形態に転換された時、化学式Iの化合物は、(化学式IのRが水素の場合)以下の化学式II:
【0029】
【化3】

又は(化学式IのR13が水素の場合)以下の化学式III:
【0030】
【化4】

(式中、R、R〜R18、及びXは、化学式Iに関して上記に定義した通りである)で示される開環形態を有する。
【0031】
本発明によれば、化学式Iの化合物は、熱転写撮像部材及び方法、並びに感熱撮像部材及び方法を含む、任意の熱撮像部材に組み込むことができ、また任意の熱撮像方法に使用することができる。本発明の熱撮像部材は、例えば米国特許第6,537,410B2号に開示されている熱転写画像法に使用することができる。例えば熱ワックス転写印刷及び染料拡散熱転写等の色の熱撮像のための従来の方法は、一般的に別個の供与材料及び受像材料の使用を含む。供与材料は、一般的に基材表面上にコーティングされた有色の画像形成材料、又は発色画像材料を有し、画像形成材料又は発色画像材料は、受像材料に熱転写される。多色画像を形成するために、異なる色の連続パッチ又は異なる発色剤を有する供与材料を使用し得る。交換式カセット、又は複数の熱ヘッドの何れかを有するプリンターの場合、異なる単色の供与リボンを使用し、多数の色が分離され、且つ互いに連続して堆積される。
【0032】
本発明による熱撮像部材は、感熱紙印刷方法に使用されてもよく、そのような熱撮像部材は、該部材中に画像を形成する時に必要な全ての発色試薬を含む。本発明によるこれらの感熱撮像部材は、例えば米国特許第6,801,233B2号に開示されているような任意の感熱紙画像方法に使用し得る。
【0033】
本発明による熱撮像部材は、一般的に、結晶形態とは本質的に異なる色を有する非結晶形態に少なくとも部分的に転換し得る、結晶形態の化学式Iによる化合物を含有する少なくとも1つの画像形成層を担持する基材を含む。撮像部材は、画像形成層が少なくとも一種の化学式Iの化合物を含有する単色性であり、又は多色性であり得る。多色性感熱撮像部材は、少なくとも2つの、好ましくは3つの画像形成層を含み、少なくとも1つの画像形成層にて画像が形成される温度は、時間間隔に非依存的であることが好ましい。本発明による好ましい撮像部材は、多色感熱撮像部材である。
【0034】
本発明の熱撮像部材には、任意の適切な熱溶媒を組み込み得る。適切な熱溶媒は、例えば、少なくとも約12個の炭素原子を含むアルカノール、少なくとも約12個の炭素原子を含むアルカンジオール、少なくとも約12個の炭素原子を含むモノカルボン酸、それらの酸のエステル及びアミド、アリールスルホンアミド並びにヒドロキシアルキル置換アレーンを含む。
【0035】
特定の好ましい熱溶媒は:テトラデカン−1−オール、ヘキサデカン−1−オール、オクタデカン−1−オール、ドデカン−l,2−ジオール、ヘキサデカン−1,16−ジオール、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ドコサン酸メチル、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、及びp−トルエンスルホンアミドを含む。
【0036】
特に好ましい熱溶媒は、例えばジフェニルスルホン、4,4’−ジメチルジフェニルスルホン、フェニルp−トリルスルホン及び4,4’−ジクロロジフェニルスルホン等のジアリールスルホンである。
【0037】
熱溶媒による化学式Iの化合物の溶解が、非結晶形態を誘導でき(化合物が、非晶質熱溶媒中に溶解している)、ここで開環有色形態の割合は、化学式Iの化合物単独の融解により得られる非結晶形態(即ち、熱溶媒との相互作用なしで)の割合とは異なる。詳細には、非晶質材料中の化合物の開環有色形態の割合は、水素結合又は酸性熱溶媒の使用により増大し得る。開環有色形態である発色材料の割合を増大させる材料を、以後「デベロッパー」と称する。同一の化合物が、熱溶媒及びデベロッパーの機能を果たし得ることが可能である。好ましいデベロッパーは、フェノール、例えば2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−エチル−フェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、ビス[2−ヒドロキシ−5−メチル−3−(1−メチルシクロヘキシル)フェニル]−メタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート、2,6−ビス[[3−(1,1−ジメチルエチル)−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル]メチル]−4−メチル−フェノール、2,2’−ブチリデンビス[6−(1,1−ジメチルエチル)−4−メチル−フェノール、2,2’−(3,5,5−トリメチルヘキシリデン)ビス[4,6−ジメチル−フェノール]、2,2’−メチレンビス[4,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−フェノール、2,2’−(2−メチルプロピリデン)ビス[4,6−ジメチル−フェノール]、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノール)、及び3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルスルフィドを含む。
【0038】
非晶質発色剤により形成される画像が、結晶形態に戻る再結晶化に対して安定であるために、好ましくは発色剤と任意の熱溶媒との非晶質混合物のガラス遷移温度(T)は、最終画像が乗り切る任意の温度を越える必要がある。一般的に、非晶質の有色材料のTは、少なくとも約50℃、理想的には約60℃を越えることが好ましい。Tが安定した画像を形成するに十分高いことを確実にするために、高いTを有する材料を発色組成物に加えてもよい。本明細書で以後「安定剤」と称するそのような材料は、発色剤、場合による熱溶媒、場合によるデベロッパーの非晶質混合物に溶解されると、画像の熱安定性を増大させる役割を果たす。
【0039】
好ましい安定剤は、少なくとも約60℃、好ましくは約80℃を越えるTを有する。そのような安定剤の例は、前述した1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート(T 123℃)及び1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(T 101℃)である。安定剤分子は、熱溶媒又はデベロッパーの役割も果たし得ることが明らかであろう。
【0040】
例えば、発色材料は、撮像のための所望の温度を超える融点、及び約60℃のT(非結晶形態で)を有し得る。所望の温度で融解する発色組成物を作製するために、発色材料を、撮像のための所望の温度所望の温度で融解する熱溶媒(例えば、ジアリールスルホン)と組み合わせ得る。しかしながら、熱溶媒と発色材料との組み合わせは、実質的に60℃未満のTを有して、(非晶質)画像を不安定化し得る。この場合、例えば1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート等の安定剤を加えて、非晶質材料のTを上昇させ得る。加えて、デベロッパー、例えば2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)等のフェノール性化合物を提供して、非晶質相の有色形態の発色材料の割合を増大させ得る。
【0041】
本発明の発色化合物、(場合による)熱溶媒、(場合による)デベロッパー及び(場合による)安定剤は、撮像の前に、各々優位にそれらの結晶形態で存在することが好ましい。「優位に」とは、少なくとも約50%を意味する。撮像中、これらの材料の少なくとも1つが融解して、材料の非晶質混合物が形成される。非晶質混合物は有色である一方、結晶出発材料は有色ではない。
【0042】
非晶質の有色混合物中の成分の1つが、画像が形成された後、再結晶することが可能である。このような再結晶化は、画像の色を変化させないことが望ましい。発色剤、熱溶媒、デベロッパー及び安定剤が使用される場合、熱溶媒は一般的に、画像の色に大きな影響を与えずに再結晶し得る。
【0043】
本発明による好ましい熱撮像部材は、特に同一出願人による米国特許第6,801,233B2号に記載の構造を有する感熱撮像部材である。
【0044】
他の好ましい熱撮像部材は、特に同一出願人による米国特許第6,537,410号に記載の構造を有する熱転写画像方法に使用される部材である。
【0045】
更なる好ましい熱撮像部材は、同一出願人による米国特許第6,054,246号に記載の構造を有する熱転写撮像部材である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
(発明の詳細な説明)
結晶状態の化合物は、通常、同一の非結晶形態の化合物とは非常に異なる性質を有し、それには色が含まれる。結晶において、分子は一般的に、格子の充填力によって1つの立体配座(又はより希には、少数の立体配座)に保たれる。同様に、分子が複数の相互転換する異性体形態で存在できる場合、そのような異性体形態の1つのみが通常、結晶状態で存在する。他方、非結晶形態又は溶液において、化合物は、その全立体配座及び異性体空間を探索し、化合物の個々の分子の集団の小さい割合のみが、任意の時間において、結晶形態を採る特定の立体配座又は異性体形態を示し得る。本発明の化合物は、少なくとも1つの互変異性型が無色であり、少なくとも他の1つの互変異性型が有色である互変異性を示す。本発明の化合物の結晶形態は、優位に無色互変異性体を含む。
【0047】
本発明の第一の実施形態において、その無色互変異性体が、上述の化学式Iにより表される化合物を使用した熱撮像部材及び方法を提供する。
【0048】
本発明に基づき使用される特定の代表的な化合物は、以下の表Iに示す化学式Iの化合物であり、ここで置換基R、R、R、R、R、R、R、R11、R15、R17、R18は全て水素であり、Xは炭素であり、R、R、R10、R11、R13、R14及びR16は以下に示す通りである。
【0049】
【表1−1】

【0050】
【表1−2】

化合物I及びVII〜XIVは、本出願と同一日に出願された同時係属の米国特許出願第XX/XXX、XXX号(代理人整理番号A−8614)、エクスプレスメール番号EV669114318US、に開示及び請求されている新規の化合物である。
【0051】
(定義)
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、飽和の直鎖、分岐鎖又は環状炭化水素基を指す。アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−オクチル、n−デシル、n−ドデシル及びn−ヘキサデシル基を含むが、これらに限定されない。
【0052】
本明細書で使用される「アルケニル」という用語は、不飽和の直鎖、分岐鎖又は環状炭化水素基を指す。アルケニル基の例は、アリール、ブテニル、ヘキセニル及びシクロヘキセニル基を含むが、これらに限定されない。
【0053】
本明細書で使用される「アルキニル」という用語は、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を有する不飽和炭化水素基を指す。代表的なアルキニル基は、エチニル、1−プロピニル、1−ブチニル、イソペンチニル、1,3−ヘキサジイニル、n−ヘキシニル、3−ペンチニル、1−ヘキセン−3−イニル等を含むが、これらに限定されない。
【0054】
本明細書で使用される「ハロ」及び「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選択される原子を指す。
【0055】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、フェニル、ナフチル、アントリル、アズリル、テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニル等を含むが、これらに限定されない、1個、2個又は3個の芳香環を有する単環、二環又は三環の炭素環系を指す。
【0056】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」という用語は、その環原子の1個がS、O及びNから選択され;その環原子の0個、1個又は2個がS、O及びNから独立して選択される更なるヘテロ原子であり;残りの環原子が炭素である5〜10個の環原子を有し、且つ任意の環原子を介して残りの分子と連結される環状芳香族基、例えば、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、チオフェニル、フラニル、キノリニル、イソキノリニル等を指す。
【0057】
本明細書で使用される「ヘテロシクロアルキル」という用語は、酸素、硫黄及び窒素から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する、非芳香族3、4、5、6又は7員環、又は縮合6員環を含む2環若しくは3環基を指し、ここで(i)各5員環は、0〜1個の二重結合を有し、各6員環は、0〜2個の二重結合を有し、(ii)窒素及び硫黄ヘテロ原子は、場合により酸化されてもよく、(iii)窒素ヘテロ原子は、場合により第四級化されてもよく、また(iv)上記の複素環の何れかは、ベンゼン環に縮合されてもよい。代表的な複素環は、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、及びテトラヒドロフリルを含むが、これらに限定されない。
【0058】
本明細書で使用される「カルボニル」という用語は、炭素原子を介して親分子部分に結合したカルボニル基を指し、この炭素原子は水素原子も支持し、又は「置換カルボニル」の場合、置換基は、以下の「置換」の定義に記載された通りである。
【0059】
本明細書で使用される「アシル」という用語は、カルボニル部分を含む基を指す。アシル基の例は、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ベンゾイル及びナフトイルを含むが、これらに限定されない。
【0060】
本明細書で使用される「アルコキシ」という用語は、酸素原子を介して親分子部分に結合した、以前に定義された置換又は非置換アルキル、アルケニル又はヘテロシクロアルキル基を指す。アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、t−ブトキシ、ネオペンチルオキシ及びn−ヘキシルオキシを含むが、これらに限定されない。
【0061】
本明細書で使用される「アリールオキシ」という用語は、酸素原子を介して親分子部分に結合した、以前に定義された置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基を指す。アリールオキシの例は、フェノキシ、p−メチルフェノキシ、ナフトキシ等を含むが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書で使用される「アルキルアミノ」という用語は、窒素原子を介して親分子部分に結合した、以前に定義された置換又は非置換アルキル、アルケニル又はヘテロシクロアルキル基を指す。アルキルアミノ基の例は、メチルアミノ、エチルアミノ、ヘキシルアミノ及びドデシルアミノを含むが、これらに限定されない。
【0063】
本明細書で使用される「アリールアミノ」という用語は、窒素原子を介して親分子部分に結合した、以前に定義された置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基を指す。
【0064】
例えば「置換アルキル」、「置換アルケニル」、「置換アリール」、「置換ヘテロアリール」、「置換ヘテロシクロアルキル」、「置換カルボニル」、「置換アルコキシ」、「置換アシル」、「置換アミノ」、「置換アリールオキシ」等の語句で本明細書において使用される「置換」という用語は、置換された部分上の1つ又はそれ以上の水素原子が、アルキル、アルケニル、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、シアノ、ハロ、メルカプト、ニトロ、カルボニル、アシル、アリール及びヘテロアリール基を含むがこれらに限定されない置換基により独立して置換されることを指す。例えば「置換窒素」、「置換酸素」及び「置換硫黄」の語句で本明細書において使用される「置換」という用語は、アルキル、アリール、又はヘテロアリール基で置換された窒素、酸素又は硫黄を指す。その例は、例えばメトキシ、エトキシ又はフェノキシ等のアルキル及びアリールエーテル;例えばチオメトキシ、チオエトキシ及びチオフェニル等のアルキル又はアリールチオエーテル;例えばジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジフェニルアミノ、フェニルアミノ、及びN−メチル−N−フェニルアミノ等のアルキル又はアリールアミンを含むが、これらに限定されない。
【0065】
本発明によれば、少なくとも1つの互変異性型が無色であり、少なくとも他の1つの互変異性型が有色である互変異性を示す分子が使用される。2つの互変異性型の平衡混合物を結晶化させて、無色結晶を作製し得る。結晶化を実施するために選択される溶媒は、一般的に、溶液中で無色形態と有色形態間で平衡状態にあり、又は溶媒に無色形態が有色形態よりも低い溶解度を有する場合の両方において、純粋な無色結晶形態に有利に働く極性(及び、例えば水素結合能等の他の化学的性質)を有するものである。溶媒の選択は、通常、特定の互変異性体の混合物に関して経験的に決定し得る。
【0066】
純粋な結晶無色形態の非結晶形態への転換により、2つの互変異性体間の平衡が再建される。有色である非晶質材料の割合(即ち、有色互変異性型にある割合)は変動し得るが、好ましくは少なくとも約10%である。
【0067】
本発明に基づき使用される分子の有色及び無色互変異性型は、画像品質及び性能に関して所定の基準を満たす必要がある。好ましくは結晶形態である無色形態は、最小限の可視吸光を有する必要がある。無色形態は、光、融点未満の熱、湿度、及び例えばオゾン、酸素、窒素酸化物、指紋油等の他の環境的要因に対して安定である必要がある。これらの環境的要因は、画像技術の当業者に周知である。有色の非結晶形態も、上記の条件に対して安定である必要があり、加えて、通常の取扱条件下で無色形態に再結晶化してはならない。有色形態は、デジタル色変化に適切なスペクトル吸収を有する必要がある。一般的に、有色形態は、意図しないスペクトル領域内で不適当な吸収を有することなく、イエロー(青色吸収)、マゼンタ(緑色吸収)、シアン(赤色吸収)、又はブラックでなければならない。しかしながら、非撮影用途のためには、有色形態は、減法混色の原色の1つではなく、特定のスポット色(例えば、橙色、青色等)であることが要求され得る。
【0068】
本発明に基づき使用される化合物は、当業者に周知の合成方法により、特に最新の有機合成方法、並びに本明細書の開示及び本明細書に提供する特定の調製実施例を考慮して調製することができる。
【0069】
一般的に、対称性ローダミン染料は、米国特許第4,602,263号、GB2311075及びDE81056に記載の通り、3’,6’−ジクロロフルオランから、二等量の芳香族又は脂肪族アミンと反応させることにより一手順で調製し得る。次に、米国特許第4,602,263号及び米国特許第4,826,976号に記載の通り、対称性ローダミンを、ジメチルスルホキシド中で水酸化ナトリウムを使用して選択的モノアルキル化することより、非対称性ローダミン染料を調製する。
【0070】
代替的に、非対称性ローダミンは、代替的な合成経路を使用して調製することができ、ここでは一等量のN−アルキルアニリンを、触媒として塩化アルミニウムを使用して選択的に3’,6’−ジクロロフルオランと反応させて、3’−クロロ−6’−N−アルキル−N−アリールフルオランを生成する。これらの生成物は、第二の等量の芳香族又は脂肪族アミンと反応させる前に、単離及び精製される。第二の付加には、触媒として塩化亜鉛を使用する。DE139727には、160℃で塩化亜鉛と酸化亜鉛の混合物を使用した、3’−クロロ−6’−アリールアミノフルオランを生成するための、アニリンの3’,6’−ジクロロフルオランに対する選択的付加が記載されている。
【0071】
非対称性ローダミンは、Chemistry and Applications of Leuco Dyes, pp. 180−191R. Muthyala, Ed., Plenum Press, New York and London, 1997、並びに米国特許第4,390,616号及び米国特許第4,436,920号にも記載されているように、2−ベンゾイル安息香酸誘導体から、3−アリールアミノフェノール又は3−アルキルアミノフェノールとの縮合によっても形成し得る。
【0072】
この用途の染料の発色団、融点、着色の程度、光安定性及び溶解度を最適化するために、種々のアニリン、N−アルキルアニリン、脂肪族アミン及びジクロロフルオランが使用される。
【0073】
3’,6’−ジクロロフルオランは、Journal of the Amer. Chemical Soc. 59, 112(1937)に記載されているHurdの方法を変更して、対応するフルオレセインから、塩化チオニル及びジメチルホルムアミドを使用して合成される。
【0074】
例えばヘキサン/アセトン又はヘキサン/酢酸エチル等の溶媒混合物から慎重に再結晶させて、熱撮像部材に使用するに好ましい無色結晶材料を生成する。
【0075】
上述の通り、本発明の熱撮像部材は、画像が熱撮像部材自体から形成される感熱撮像部材であるか、又は画像が、それによって画像形成材料が受像部材に転写される熱転写撮像部材であり得る。本発明の感熱撮像部材に使用される分子の融点は、約60℃〜約300℃の範囲内であることが好ましい。融点が約60℃より低いと、撮像の前又は後の部材の取り扱い中に時折遭遇する温度に対して不安定した感熱撮像部材を誘導し、一方、融点が約300℃より高いと、従来の熱印字ヘッドを使用して化合物が完全密度に着色されることが困難になる。しかしながら、熱印字ヘッドの使用を必要としない所定の化合物の用途が存在する(例えば、レーザー撮像)ことに注目するべきである。
【0076】
好ましい感熱撮像システムを形成するために、当該技術分野にて周知の任意の拡散物の形成方法を使用して、結晶無色形態の化合物を、該化合物が不溶又は僅かにのみ可溶な溶媒中の拡散物に形成する。このような方法は、粉砕、摩砕等を含む。選択される特定の溶媒は、特定の結晶材料に依存するであろう。使用し得る溶媒は、水、例えば炭素水素等の有機溶媒、エステル、アルコール、ケトン、ニトリル、並びに例えば塩素化及びフッ素化炭素水素等の有機ハロゲン化物溶媒を含む。拡散した結晶材料は、ポリマーであり得るバインダーと組み合わせてもよい。適切なバインダーは、例えばポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリジノン)及びセルロース誘導体等の水溶性ポリマー、例えばスチレン/ブタジエン若しくはポリ(ウレタン)誘導体等の水拡散ラテックス、又は代替的に、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとノルボルネンのコポリマー、及びポリスチレン等の炭化水素可溶性ポリマーを含む。この一覧は網羅的なものではなく、単にポリマーバインダーに利用可能な選択の範囲を示すことを意図する。バインダーは、溶媒中に溶解又は拡散され得る。
【0077】
本発明の化合物の拡散物の調製、及び場合によるポリマーバインダーの添加の後、得られた流体を、コーティングの技術分野で周知の任意の技術を使用して、基材上にコーティングする。これらには、スロット、グラビア、マイヤーロッド、ロール、カスケード、スプレー、及びカーテンコーティング技術が含まれる。このように形成した画像形成層に、場合により保護層(1つ又は複数)を上塗りする。
【0078】
本発明の材料が、米国特許第6,801,233B2号に記載のタイプの撮像部材の調製に使用される場合、各画像層について、上述の方法に従う。連続層は、連続的に、タンデムにてコーティングされ、又は連続及びタンデムコーティングの組み合わせにてコーティングされ得る。
【0079】
本発明による特に好ましい熱撮像部材は、以下のように構成される。
【0080】
基材は、Dupont Teijin Films(米国バージニア州ホープウェル)から入手可能な、厚さ約75ミクロンのMelinex 339の充填白色ポリ(エチレンテレフタレート)ベースである。
【0081】
基材上に堆積した第一の層は、完全に加水分解されたポリ(ビニルアルコール)、例えばCelanese(米国テキサス州ダラス)(96.7重量%)から入手可能なCelvol 325、グリオキサル(架橋剤、3重量%)及びZonyl FSN(Dupont[米国デラウェア州ウィルミントン]から入手可能なコーティング助剤、0.3重量%)を含む、場合による酸素バリア層である。この層は、存在する場合、約1.0g/mの範囲(coverage)を有する。
【0082】
基材上に直接、又は任意の酸素バリア層上に、前述した米国特許第7,008,759号(1重量部)に開示されているタイプの、融点210℃のシアン発色剤、ジフェニルスルホン(1ミクロン未満の平均粒径を有する結晶の水性拡散物としてコーティングされた、融点125℃の熱溶媒、3.4重量部)、Lowinox WSP(1ミクロン未満の平均粒径を有する結晶の水性拡散物としてコーティングされた、Great Lakes Chemical Co.[米国インディアナ州ウエスト・ラファイエット]から入手可能なフェノール性抗酸化剤、0.75重量部)、Chinox 1790(1ミクロン未満の平均粒径を有する結晶の水性拡散物としてコーティングされた、Chitec Chemical(台湾)から入手可能な第二のフェノール性抗酸化剤、1重量部)、ポリ(ビニルアルコール)(Celanese[米国テキサス州ダラス]から入手可能なバインダー、Celvol 205、2.7重量部)、グリオキサル(0.084重量部)及びZonyl FSN(0.048重量部)から構成されるシアン画像形成層を堆積する。この層は、約2.5g/mの範囲を有する。
【0083】
シアン発色層上に、蛍光増白剤を含有するバリア層を堆積する。この層は、完全に加水分解したポリ(ビニルアルコール)、例えば上述のCelanese(米国テキサス州ダラス)から入手可能なCelvol 325(3.75重量部)、グリオキサル(0.08重量部)、Leucophor BCF P115(Clariant Corp.[米国ノースキャロライナ州シャーロット]から入手可能な蛍光増白剤、0.5重量部)、ホウ酸(0.38重量部)及びZonyl FSN(0.05重量部)から構成されている。この層は、約1.5g/mの範囲を有する。
【0084】
バリア層上に、Glascol C−44(Ciba Specialty Chemicals Corporation(米国ニューヨーク州テリータウン)から入手可能なラテックス、18重量部)、Joncryl 1601(Johnson Polymer[米国ウィスコンシン州スターテバント]から入手可能なラテックス、12重量部)及びZonyl FSN(0.02重量部)から構成される断熱中間層を堆積する。この層は、約13g/mの範囲を有する。
【0085】
断熱中間層上に、完全に加水分解したポリ(ビニルアルコール)、例えば上述のCelanese(米国テキサス州ダラス)(2.47重量部)から入手可能なCelvol 325、グリオキサル(0.07重量部)、ホウ酸(0.25重量部)及びZonyl FSN(0.06重量部)から構成されるバリア層を堆積する。この層は、約1.0g/mの範囲を有する。
【0086】
バリア層上に、融点152℃の本発明のマゼンタ発色剤、好ましくは染料IVから構成されるマゼンタ形成層、フェノール性抗酸化剤(1ミクロン未満の平均粒径を有する結晶の水性拡散物としてコーティングされた、Great Lakes Chemical Co. , West Lafayette, INから入手可能な、融点161〜164℃のAnox 29、3.58重量部)、Lowinox CA22 (1ミクロン未満の平均粒径を有する結晶の水性拡散物としてコーティングされた、Great Lakes Chemical Co.(米国インディアナ州ウエスト・ラファイエット)から入手可能な第二のフェノール性抗酸化剤、0.72重量部)、ポリ(ビニルアルコール)(Celanese[米国テキサス州ダラス]から入手可能なバインダー、Celvol 205、2重量部)、Carboset 325(Noveon[米国オハイオ州クリーブランド]から入手可能なアクリルコポリマー、1重量部)のカリウム塩、グリオキサル(0.06重量部)及びZonyl FSN(0.06重量部)を堆積する。この層は、約2.7g/mの範囲を有する。
【0087】
マゼンタ発色層上に、完全に加水分解したポリ(ビニルアルコール)、例えば上述のCelanese(米国テキサス州ダラス)から入手可能なCelvol 325、(2.47重量部)、グリオキサル(0.07重量部)、ホウ酸(0.25重量部)及びZonyl FSN(0.06重量部)から構成されるバリア層を堆積する。この層は、約1.0g/mの範囲を有する。
【0088】
バリア層上に、Glascol C−44 (1重量部)、Joncryl 1601(Johnson Polymerから入手可能なラテックス、0.67重量部)及びZonyl FSN(0.004重量部)から構成される第二の断熱中間層を堆積する。この層は、約2.5g/mの範囲を有する。
【0089】
第二の中間層上に、完全に加水分解したポリ(ビニルアルコール)、例えば上述のCelanese(米国テキサス州ダラス)から入手可能なCelvol 325(1重量部)、グリオキサル(0.03重量部)、ホウ酸(0.1重量部)及びZonyl FSN(0.037重量部)から構成されるバリア層を堆積する。この層は、約0.5g/mの範囲を有する。
【0090】
バリア層上に、2004年2月27日出願の米国特許出願第10/789,566号、米国特許出願公開第US2004/0204317A1号に記載の染料XI(融点202〜203℃)、(4.57重量部)、ポリ(ビニルアルコール)(Celanese[米国テキサス州ダラス]から入手可能なバインダー、Celvol 540、1.98重量部)、コドイドシリカ(日産化学工業株式会社[日本東京]から入手可能なSnowtex 0〜40、0.1重量部)、グリオキサル(0.06重量部)及びZonyl FSN(0.017重量部)から構成されるイエロー形成層を堆積する。この層は、約1.6g/mの範囲を有する。
【0091】
イエロー発色層上に、完全に加水分解したポリ(ビニルアルコール)、例えば上述の、Celanese(米国テキサス州ダラス)から入手可能なCelvol 325(1重量部)、グリオキサル(0.03重量部)、ホウ酸(0.1重量部)及びZonyl FSN(0.037重量部)から構成されるバリア層を堆積する。この層は、約0.5g/mの範囲を有する。
【0092】
バリア層上に、ナノ粒子級の二酸化チタン(Kobo Products Inc.(米国ニュージャージー州サウスプレインフィールド)から入手可能なMS−7、1重量部)、ポリ(ビニルアルコール)(Elvanol 40−16、DuPont(米国デラウェア州ウィルミントン)から入手可能なバインダー、0.4重量部)、Curesan 199(BASF Corp.[米国ウィスコンシン州スアップルトン]から入手可能な架橋剤、0.16重量部)及びZonyl FSN(0.027重量部)から構成される紫外線遮断層を堆積する。この層は、約1.56g/mの範囲を有する。
【0093】
紫外線遮断層上に、ラテックス(NeoResins, Inc.[米国マサチューセッツ州ウィルミントン]から入手可能なXK−101、1重量部)、スチレン/マレイン酸コポリマー(Sartomer Company[米国ペンシルバニア州エクストン]から入手可能なSMA 17352H、0.17重量部)、架橋剤(BayerMaterialScience[米国ペンシルバニア州ピッツバーグ]から入手可能なBayhydur VPLS 2336、1重量部)、ステアリン酸亜鉛(Cytech Products Inc.[米国ケンタッキー州エリザベスタウン]から入手可能なHidorin F−115P、0.66重量部)及びZonyl FSN(0.04重量部)から構成されるオーバーコートを堆積する。この層は、約0.75g/mの範囲を有する。
【0094】
上述の好ましい熱撮像部材を使用したイエロー画像の印刷のための最適条件は、以下のようなものである。
熱印字ヘッドのパラメータ:
ピクセル/インチ:300
抵抗器寸法: 2X(31.5X120)ミクロン(分割抵抗器)
電気抵抗: 3000 Ohm
グレーズ厚さ: 110ミクロン
圧力: 3lb/リニアインチ
ドットパターン: 傾斜グリッド(Slanted grid)。
【0095】
イエロー発色層を、下の表に示すように印刷する。ラインのサイクル時間を、75%負荷サイクルの個々のパルスに分割する。熱撮像部材を、約0.3mmの距離にわたり放熱板温度の熱印字ヘッドグレーズと接触させて予熱する。
【0096】
【表2】

上述の好ましい熱撮像部材を使用したマゼンタ画像の印字のための最適条件は、以下のようなものである。熱印字ヘッドのパラメータ:
ピクセル/インチ: 300
抵抗器寸法(分割抵抗器):2X(31.5X120)ミクロン
電気抵抗: 3000 Ohm
グレーズ厚さ: 200ミクロン
圧力: 3lb/リニアインチ
ドットパターン: 傾斜グリッド。
【0097】
マゼンタ発色層を、下の表に示すように印刷する。ラインのサイクル時間を、7.14%負荷サイクルの個々のパルスに分割する。熱撮像部材を、約0.3mmの距離にわたり放熱板温度の熱印字ヘッドグレーズと接触させて予熱する。
【0098】
【表3】

上述の好ましい熱撮像部材を使用したシアン画像の印字のための最適条件は、以下のようなものである。熱印字ヘッドのパラメータ:
ピクセル/インチ: 300
抵抗器寸法(分割抵抗器):2X(31.5X180)ミクロン
電気抵抗: 3000 Ohm
グレーズ厚さ: 200ミクロン
圧力: 3lb/リニアインチ
ドットパターン: 傾斜グリッド。
【0099】
シアン発色層を、下の表に示すように印刷する。ラインのサイクル時間を約4.5%負荷サイクルの個々のパルスに分割する。熱撮像部材を、約0.3mmの距離にわたり放熱板温度の熱印字ヘッドグレーズと接触させて予熱する。
【0100】
【表4】

(実施例)
本発明を、例を目的とした特定の実施形態に関して更に詳細に説明する。これらは例示のみを意図し、本発明は、そこに引用する材料、量、手順及び工程パラメータ等に限定されないことを理解するであろう。引用する全ての部及び百分率は、別に特定しない限り重量による。
【0101】
(実施例I)
N−アセチル−N−オクチルアニリンの合成
水酸化カリウムペレット(18.87g、300mmol、1.5eq)を含む、アセトアニリド(27g、200mmol、1eq)のジメチルスルホキシド(130mL)中の混合物に、1−オクチルブロミド(39mL、224mmol、1.12eq)を室温にて滴加した。全オクチルブロミドを反応混合物に加えた後、混合物を1.5時間で50〜55℃に加熱した。反応混合物を冷却し、水(1L)中に注ぎ、45分間撹拌し、ヘキサンで抽出した(3x400mL)。ヘキサン抽出物を一緒にして、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発させて48.4g(196mmol、98%)の無色油状物を得た。生成物を、NMR分光法及び質量分析法により同定し、更に精製することなく使用した。N−オクチルアニリンの合成。N−アセチル−N−オクチルアニリン(48.4g、196mmol)に、4N塩酸(100mL)を加え、混合物を100〜110℃に加熱し、この温度で4日間撹拌した。反応混合物を周囲温度に冷却し、水(100mL)及びヘキサン(200mL)で希釈した。氷浴で冷却しながら45%水酸化カリウムを加えて、反応混合物のpHをpH14とした。層を分離し、水層をヘキサン(100mL)で洗浄した。一緒にした有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、及び回転蒸発により濃縮して、所望の生成物を薄茶色油状物(40g、195mmol、99%)として得た。生成物を、NMR分光法及び質量分析法により同定し、一般的に、更に精製することなく使用した。分析的に純粋な生成物を、減圧蒸留により獲得した:bp145〜150℃(0.5mm)。
【0102】

5,6−ジクロロフルオレセインの合成
攪拌機及び温度計を装着した5Lの3口フラスコに、4,5−ジクロロフタル酸(502g、2.13mol)及びメタンスルホン酸(2L)を加えた。混合物を90℃で1時間撹拌した。該混合物を80℃に冷却し、レソルシノール(470g、4.27mol)を一度に加えた。暗色混合物を105℃で1時間加熱した。暖かい混合物を、撹拌している氷(6kg)及び水(5L)の混合物中に注いだ。混合物を30分間撹拌し、ろ過した。フィルターケーキを水(3x500mL)で洗浄した(3x500mL)。湿潤フィルターケーキを酢酸プロピル(2L)と共に撹拌し、再度ろ過した。湿潤ケーキを一定重量まで乾燥させ、元の反応容器内に配置した。酢酸プロピル(2L)を加え、撹拌している混合物を90℃に加熱し、室温に冷却させ、ろ過した。フィルターケーキをアセトン(0.4L)及びヘキサン(0.4L)で洗浄した。からし色固体を真空オーブン内で一定重量まで乾燥させて、930g(109%収率)を得た。生成物をNMR分光法及び質量分析法により同定した。
【0103】
3’,6’,5,6−テトラクロロフルオランの合成
攪拌機、温度計、及び滴下漏斗を装着した5Lの3口に、ジクロロフルオレセイン(930g、約2.13mol)、スルホラン(2.4L)、及びジメチルホルムアミド(152mL、1.9モル)を加えた。撹拌している混合物を90℃に暖め、温度を90〜95℃間に保持しながら、オキシ塩化リン(0.72L)を1時間かけて滴加した。添加が完了した後、混合物を同一温度で1時間保持し、アセトン:水(2:1、11L)中に注いだ。混合物を1時間撹拌し、ろ過した。フィルターケーキをアセトン:水(2L)で洗浄し、真空オーブン内で一定重量まで乾燥させた。ベージュ色の固体を獲得した。(805g、1.84mol、二手順での総収率86%)。生成物を、NMR分光法及び質量分析法により同定した。
【0104】
3’−クロロ−6’−テトラヒドロキノリノフルオランの合成:
ジクロロフルオラン(3.7g、0.01mol)、塩化アルミニウム(9g、0.07mol)及びテトラヒドロキノリン(2.6g、0.02モル)のスルホラン(25ml)中の混合物を、150℃で18時間保持した。反応混合物を100mlの水中でクエンチした。固体を濾去し、水で洗浄し、乾燥させた。生成物を、塩化メチレン中2%メタノールを使用してシリカゲル上で精製して、3’−クロロ−6’−テトラヒドロキノリノフルオラン(250mg、0.54mmol、5.4%)を得た。生成物を、NMR分光法及び質量分析法により同定した。
【0105】
3’−クロロ−6’−(N−エチルアニリン)−5,6−ジクロロフルオランの合成
攪拌機及び温度計を装備した3口フラスコに、3’,6’,5,6−テトラクロロフルオラン(8.8g、20mmol)及び40mLのスルホランを入れた。混合物に塩化アルミニウム(11.0g、80mmol)を、撹拌しながら一部ずつ加えた。60℃にて、N−エチルアニリン(6.05g、50mmol、2.5eq)を15分間かけて滴加した。反応をHPLCで監視した。出発材料が消費された後、反応混合物を冷却し、2N HCl(500mL)中に注いだ。沈殿した固体をろ過し、洗浄し、風乾した。塩をDMFに溶解した後、水酸化アンモニウム溶液に溶解して、遊離塩基を獲得した。生成物を水で洗浄し、乾燥させた。(収率:9.36g、17mmol、85%)生成物を、NMR分光法及び質量分析法により同定した。
【0106】
3’−N−ブチルアニリノ−6’−クロロフルオランの合成
3’,6’−ジクロロフルオラン(15.0g、40.6mmol)をスルホラン(80mL)中に取り上げ、60℃に加熱し、塩化アルミニウム(21.0g、157.9mmol、3.9等量)を一部ずつ加えた。次に、N−ブチルニリン(15mL、98.3mmol、2.4等量)を5分間かけて滴加し、反応物を80℃で1時間加熱した。反応混合物を3N塩酸及び氷中に注いだ。得られた沈殿をろ過し、水で洗浄し、一晩乾燥させて、粗3’−N−ブチルアニリノ−6’−クロロフルオラン(18.9g、39.2mmol、96%)を獲得し、これをそのまま使用した。生成物を、NMR分光法及び質量分析法により同定した。
【0107】
3’−クロロ−6’−(N−オクチルアニリン)−5,6−ジクロロフルオランの合成
3’,6’,5,6−テトラクロロフルオレセイン(8.8g、0.02mol)のスルホラン(40mL)溶液に、撹拌しながら塩化アルミニウム(11.0g、0.08mol)を一部ずつ加えた。次に、N−オクチルアニリン(4.4g、0.022mol)を50℃で5分間かけて加えた。30分後、トリエチルアミン(6.0g、0.06mol)を10分間かけて滴加した。出発材料が消費された後(HPLC)、反応混合物を冷却し、2N HCl(500mL)中に注いだ。沈殿した固体をろ過し、洗浄し、風乾した。塩をDMFに溶解した後、水酸化アンモニウム溶液中に注いで、遊離塩基生成物を獲得した。この生成物を、NMR分光法及び質量分析法により同定した。
【0108】
3’−クロロ−6’−(2−メチルアニリノ)−フルオランの合成
3’,6’−ジクロロフルオラン(30g、81mmol)のスルホラン(120mL)中の懸濁液にAlCl(3.0eg.、244mmol、32.4g)を加え、混合物を60℃に加熱した。トルイジン(1.1等量、89.4mmo19.6g)を加え、橙色溶液の温度を60℃で10分間維持した。純粋なトリエチルアミン(1.05等量、85.4mmol、8.64g)を、10分間撹拌しながら滴加した。70℃で撹拌した後、大気中に4時間開放し、溶液を、激しく撹拌しているビーカー内の水(1L)中に注いだ。得られた縣濁液をろ過し、収集した固体を酢酸エチル(500mL)に溶解した。有機抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、シリカ(約100g)上に吸収させた。生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1:1ヘキサン/EtOAc)で精製して、橙色固体を得た。生成物を、NMR分光法及び質量分析法により同定した。
【0109】
(実施例II)
染料Iの合成
3’−クロロ−6’−テトラヒドロキノリノフルオラン(100mg、0.2mmol)、デシルアミン(100mg、0.6mmol)、及び塩化亜鉛(100mg、0.7mmol)のスルホラン(3mL)中の混合物を、150℃で3時間保持した。反応混合物を10mlの水中でクエンチした。固体を濾去し、水で洗浄し、乾燥させた。生成物を塩化メチレン中2%メタノールを用いたシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、3’N−デシルアミノ−6−テトラヒドロキノリンフルオランを灰白色固体(42mg、0.07mmol、35%)として得た。生成物を、NMR分光法及び質量分析法により同定した。
【0110】
(実施例III)
染料VIIの合成
3’−N−エチルアニリノ−6’−クロロフルオラン(1.82g、4mmol)の12mlのスルホラン溶液に、塩化亜鉛(1.63g、12mmol)、酸化亜鉛(0.32、4mmol)及びシクロヘキシルアミン(1.6g、16mmol)を加えた。反応混合物を一晩、撹拌下で140℃に加熱した(18時間)。室温に冷却した後、反応混合物を水(100mL)中に注ぎ、沈殿した粗生成物をろ過により獲得し、風乾し、塩化メチレン(50mL)に溶解した。ろ過して不溶固体を除去した後、得られたろ液をクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液としてヘキサン/酢酸エチル)にかけた。単離した油状生成物を、ヘキサンと酢酸エチルの混合溶液から再結晶させて、0.7gの薄桃色結晶を得た(融点212〜214℃)。生成物を、NMR分光法及び質量分析法により同定した。
【0111】
(実施例IV)
染料VIIIの合成
3’−N−エチルアニリノ−6’−クロロフルオラン(1.82g、4mmol)の12mlのスルホラン溶液に、塩化亜鉛(1.63g、12mmol)、酸化亜鉛(0.32、4mmol)及びアダマンチルアミン(2.4g、16mmol)を加えた。反応混合物を一晩、撹拌下で150℃に加熱した。室温に冷却した後、反応混合物を100ml水中に注ぎ、沈殿した粗生成物をろ過により獲得し、真空乾燥させた後、塩化メチレンに溶解した。不溶固体を除去した後、得られたろ液を適切な容積に濃縮して、クロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液としてヘキサン/酢酸エチル)に負荷した。単離した油状生成物を、撹拌下でのヘキサンと酢酸エチルの混合溶液からの再結晶により、薄桃色結晶に変換した(0.55g、融点240〜242℃)。生成物を、NMR分光法及び質量分析法により同定した。
【0112】
(実施例V)
染料IXの合成
3’−クロロ−6’−(N−ブチルアニリン)−5,6−ジクロロフルオラン(2.2g、4mmol)の12mlのスルホラン溶液に、塩化亜鉛(1.63g、12mmol)、酸化亜鉛(0.32、4mmol)及びシクロヘキシルアミン(1.6g、16mmol)を加えた。反応混合物を一晩、撹拌下で140℃に加熱した。室温に冷却した後、反応混合物を水(100mL)中に注ぎ、沈殿した粗生成物をろ過により獲得し、負荷のため溶媒として塩化メチレンを使用して、クロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液としてヘキサン/酢酸エチル)にかけた。単離した油状生成物を、30%の酢酸エチルと混合したヘキサン中で再結晶させて、0.56gの薄桃色結晶を得た(融点193〜195℃)。生成物を、NMR分光法及び質量分析法により同定した。
【0113】
(実施例VI)
染料Xの合成
3’−クロロ−6’−(N−ブチルアニリン)−5,6−ジクロロフルオラン(2.2g、4mmol)の12mlのスルホラン溶液に、塩化亜鉛(1.63g、12mmol)、酸化亜鉛(0.32、4mmol)及びアダマンチルアミン(2.4g、16mmol)を加えた。反応混合物を一晩、撹拌下で150℃に加熱した。室温に冷却した後、反応混合物を水(100mL)中に注ぎ、沈殿した粗生成物をろ過により獲得し、真空乾燥させ、不溶固体を区別せずに、負荷溶媒として塩化メチレンを使用して直接クロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液としてヘキサン/酢酸エチル)にかけた。単離した油状生成物を、ヘキサンと酢酸エチルの混合溶液からの再結晶により、薄桃色結晶に変換した(0.45g、融点252〜254℃)。生成物を、NMR分光法及び質量分析法により同定した。
【0114】
(実施例VII)
染料XIの合成
3’−クロロ−6’−(N−オクチルアニリン)−5,6−ジクロロフルオラン(1.82g、3mmol)の12mlのスルホラン溶液に、塩化亜鉛(1.30g、9mmol)、酸化亜鉛(0.25g、3mmol)及びシクロヘキシルアミン(1.2g、12mmol)を加えた。反応混合物を一晩、撹拌下で140℃に加熱した。室温に冷却した後、反応混合物を2N HCl(100mL)中に注ぎ、沈殿した粗生成物をろ過により獲得し、真空乾燥させ、DMF(20mL)に溶解した。混合したDMF溶液を10%水酸化アンモニウム(100mL)中に注いだ。得られた赤色粗生成物をクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液としてヘキサン/酢酸エチル)にかけて更に精製した。単離した油状生成物を、ヘキサンと酢酸エチルの混合溶液からの再結晶により、薄桃色結晶に変換した(0.77g、融点162〜164℃)。生成物を、NMR分光法及び質量分析法により同定した。
【0115】
(実施例VIII)
染料XIIの合成
3’−クロロ−6’−(2−メチルアニリノ)−フルオラン(3g、7mmol)のスルホラン(10mL)溶液に、ルチジン(1.1等量、7.7mmol、0.83g)を加えた後、ZnO(0.8等量、5.6mmol、456mg)及びZnCl(3.0等量、21mmol、2.86g)を加えた。溶液を100℃に暖め、ピロリジン(1.5等量、10.5mmol、747mg)を加えた。1時間後、赤色溶液を水(500mL)中に注ぎ、ろ過し、収集した固体を酢酸エチル(500mL)に溶解した。有機抽出物を0.5N KOH(100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧除去し、生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1:1ヘキサン/EtOAc→EtOAc勾配)で精製して、ID747(2.49g、5.25mmol、75%)を得た。精製生成物をアセトン/ヘキサンから結晶させて、1.5gの桃色粉末を得た。生成物を、NMR分光法及び質量分析法により同定した。
【0116】
(実施例IX)
染料XIIIの合成
3’,6’−ジクロロフルオラン(184.5gm;0.5mol)のスルホラン(800mL)中の懸濁液にAlCl(3.0等量、200g;1.5mol)を加え、混合物を60℃に加熱した後、4−フルオロ−2−メチルアニリン(68.8gm;0.55mol)を加えた。橙色溶液の温度を80℃で10分間維持した。純粋なトリエチルアミン(1.21等量、82.5mL;0.605mol)を、10分間撹拌しながら滴加した。80℃で4時間撹拌した後、反応の完了後、アリコートのTLCを行った(酢酸エチル:ヘキサン=1:4)。
【0117】
ルチジン(2.2等量、127.9ml;1.1mol)及びピロリジン(39.10g;0.55mol)を加えて、反応溶液を加熱した。反応混合物を80℃で一晩撹拌した。反応は、余分なルチジン及びピロリジンを加えても、TLCに基づき完了しなかった。反応混合物を冷却した後、氷/水(1.0L)中に注ぎ、30分間撹拌し、ろ過した。ろ液を水(1.0L)で洗浄した。
【0118】
得られたペーストをジクロロメタン(2.0L)に溶解し、水で洗浄した。有機層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発させた。粗染料を、ショートプラグを通して、シリカゲルクロマトグラフィーで精製した。酢酸エチル/ヘキサンの勾配を溶離液として使用した。純粋な生成物を含む画分を一緒にして、蒸発させ、アセトンから再結晶させて、染料XIII(83g;33.7%)の無色結晶を得た(DSC=283C)。生成物を、NMR分光法及び質量分析法により同定した。
【0119】
(実施例X)
染料XIVの合成
3’,6’−ジクロロフルオラン(9.225g、25mmol)のスルホラン(50mL)中の懸濁液にAlCl(3.0等量、10g;75mmol)を加え、混合物を60℃に加熱した後、4−フルオロ−トルイジン(3.44g;27.25mmol)を加えた。橙色溶液の温度を80℃で10分間維持した。純粋なトリエチルアミン(1.1等量、3.75ml;27.25mmol)を、10分間撹拌しながら滴加した。反応物を80℃で4時間撹拌した。反応の完了後、アリコートのTLCを行った(酢酸エチル:ヘキサン::1:4)。
【0120】
暖かい反応溶液に、ルチジン(2.0等量、7.85ml;50mmol)及び2−メチル−ピロリジン(2.32g;27.25mmol)を加えた。反応混合物を80℃で一晩撹拌した。反応は、余分なルチジン及びピロリジンを加えても、TLCに基づき完了しなかった。反応混合物を冷却した後、氷/水(500ml)中に注ぎ、30分間撹拌し、ろ過し、水(100mL)で洗浄した。
【0121】
得られたペーストを400mlのジクロロメタンに溶解し、水で洗浄した。有機層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発させた。粗染料をシリカゲルクロマトグラフィーで精製した。酢酸エチル/ヘキサンの勾配を溶離液として使用した。純粋な生成物を含む画分を一緒に蒸発させ、アセトン/ヘキサンの混合物から再結晶させて、染料XIV(4.12g;32.54%)の無色結晶を得た。生成物を、NMR分光法及び質量分析法により同定した。
【0122】
(実施例XI)
この実施例は、本発明に従った熱撮像方法を説明する。この実施例では、以下の材料を使用した:
Celanese Corporation(米国テキサス州ダラス)から入手可能なポリ(ビニルアルコール)類のCelvol 205;
Celanese Corporation(米国テキサス州ダラス)から入手可能なポリ(ビニルアルコール)類のCelvol 325;
Celanese Corporation(米国テキサス州ダラス)から入手可能なポリ(ビニルアルコール)類のCelvol 540;
DuPont Company Americas(米国デラウェア州ウィルミントン)から入手可能なポリ(ビニルアルコール)類のElvanol 40−16;
DSM NeoResins(米国マサチューセッツ州ウィルミントン)から入手可能なNeocryl XK−101;
DSM NeoResins(米国マサチューセッツ州ウィルミントン)から入手可能なNeoCryl A−639;
Dow Chemical(米国ノースキャロライナ州ケリー)から入手可能なスチレン−アクリルラテックス、Ucar 451;
Bayer Material Science LLC(米国ペンシルバニア州ピッツバーグ)から入手可能なBayhydur VP LS2336;
Ciba Specialty Chemicals(米国ニューヨーク州テリータウン)から入手可能なポリアクリルアミド、Glascol C44;
Johnson Polymer(米国ウィスコンシン州スターテバント)から入手可能なスチレン−アクリルエマルジョン、Joncryl J1601:
Leucophor BCF P115(Clariant Corp.[米国ノースキャロライナ州シャーロット]から入手可能な蛍光増白剤);
Kobo Products Inc.(米国ニュージャージー州サウスプレインフィールド)から入手可能な二酸化チタン、MS−7;
DuPont(米国デラウェア州ウィルミントン)から入手可能な二酸化チタン白色顔料、Ti−Pure. RTM. R900;
DuPont Corporation(米国デラウェア州ウィルミントン)から入手可能な界面活性剤、Zonyl FSN;
Seal Sands Chemical(英国シールサンズ)から入手可能なジフェニルスルホン;
Great Lakes Chemical, West Lafayette, INから入手可能な2,2’−Mエチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール);
Great Lakes Chemical(米国インディアナ州ウエスト・ラファイエット)から入手可能な2,2’−Mエチレンビス(6−t−ブチル−4−エチル−フェノール);
Great Lakes Chemical(米国インディアナ州ウエスト・ラファイエット)から入手可能な2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール);
Great Lakes Chemical(米国インディアナ州ウエスト・ラファイエット)から入手可能なビス[2−ヒドロキシ−5−メチル−3−(1−メチルシクロヘキシル)フェニル]−メタン;
Great Lakes Chemical(米国インディアナ州ウエスト・ラファイエット)から入手可能な1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート;
BASF(米国ニュージャージー州フォーラムパーク)から入手可能な界面活性剤、Pluronic 25R4;
Air Products and Chemicals, Inc.(米国ペンシルバニア州アレンタウン)から入手可能な界面活性剤、Surfynol CT−111、Surfynol CT−131及びSurfynol GA;
Rohm and Haas Co.(米国ペンシルバニア州フィラデルフィア)から入手可能な界面活性剤、Tamol 731;
Dow Chemical Company(米国マイアミ州ミッドランド)から入手可能な界面活性剤、Triton X−100;
Cytech Products Inc.(米国ケンタッキー州エリザベスタウン)から入手可能なステアリン酸亜鉛類のHidorin F−115P;
ONDEO Nalco Company(米国イリノイ州シカゴ)から入手可能なシリカ拡散物、Nalco 30V−25;
Nissan Chemical−America Corporation(米国テキサス州ヒューストン)から入手可能なコドイドシリカ、Snowtex;
DuPont Teijin Films(米国バージニア州ホープウェル)から入手可能な、厚さ約5milの透明ポリ(エチレンテレフタレート)フィルムベース、Melinex X967;
イエロー発色剤:2004年2月27日出願の米国特許出願第10/789,566号、米国特許出願公開第US2004/0204317A1号に記載の染料VI;
マゼンタ発色剤:本出願の染料IV;
シアン発色剤:米国特許出願公開第US2004/0191668号に記載の手順により形成した染料、3’−(2,3−ジヒドロ−1H−インドール−1−イル)−4,5,6,7−テトラフルオロ−6’−[(4−メトキシ−2−メチルフェニル)アミノ]−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−[9H]キサンテン]−3−オン。
【0123】
以下のように、基材Melinex X967に適用した連続的なコーティングにより、撮像部材を調製した。シアン画像形成層は、以下のように適用した。シアン発色剤(77.68g、融点205C)をPluronic 25R4(2.06g)、Surfynol CT−131(1.59gの52%水溶液)、Triton X100(2.06g)、酢酸メチル(48.16g)及び水(143.4g)の混合物中に拡散させ、ガラス玉を備えた摩砕機を使用して、室温にて18時間撹拌した。次に、得られた拡散物の総固体含有率が15%となるように、拡散物を水(275g)で希釈した。熱溶媒拡散物A:ジフェニルスルホン(212.72g)を、Tamol 731(198gの6.30%水溶液、硫酸でpH5に調整)、Celvol 205(125.5gの20%水溶液)及び水(213.8g)を含む混合物中に拡散させ、ガラス玉を備えた摩砕機を使用して、室温にて18時間撹拌した。次に、得られた拡散物を、総固体含有率が20%となるように水(500g)で希釈した。
【0124】
熱溶媒拡散物B:ビス[2−ヒドロキシ−5−メチル−3−(1−メチルシクロヘキシル)フェニル]−メタン(360g)を、Surfynol CT−151(22.5gの40%水溶液)、Surfynol GA(25.7gの70%水溶液)及び水(1392g)を含む混合物中に拡散させ、ガラス玉を備えた摩砕機を使用して、室温にて18時間撹拌した。得られた拡散物の総固体含有率は、20%であった。
【0125】
熱溶媒拡散物C:1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート(518.6g)を、ラウリル硫酸ナトリウム(16.2g)、Surfynol CT−111(5.1g)及び水(1260g)を含む混合物中に拡散させ、ガラス玉を備えた摩砕機を使用して、室温にて18時間撹拌した。得られた拡散物の総固体含有率は、30%であった。上記の拡散物を、水及び下の表に列挙した材料と一緒にして、記載した割合で、シアン染料−形成層用のコーティング流体を作製した。このように調製したコーティング組成物を、Melinex X967上にコーティングし、乾燥厚さ2ミクロンの層を得た。
【0126】
【表5】

次に、バリア層を以下のように適用した。
【0127】
下の表に列挙した材料から、水中で混合して流体を調製し、シアン染料−形成層上に乾燥厚さ2ミクロンにてコーティングした。
【0128】
【表6】

次に、中間層を以下のように適用した。
【0129】
水を下の表に列挙した材料と一緒にして、コーティング流体を提供し、これをバリア層上に乾燥厚さ13.5ミクロンにてコーティングした。
【0130】
【表7】

イエロー画像形成層を以下のように適用した。
【0131】
イエロー発色剤(114g)をTamol 681(173.4gの3.46%水溶液)、酢酸メチル(56g)及び水(56.6g)を含む混合物中に拡散させ、ガラス玉を備えた摩砕機を使用し、室温にて18時間撹拌した。得られた拡散物の総固体含有率は、30%であった。
上記の拡散物を、水及び下の表に列挙した材料と一緒にして、記載した割合でイエロー染料−形成層用のコーティング流体を作製した。このように調製したコーティング組成物を、上記で調製した中間層上に乾燥厚さ2ミクロンにてコーティングした。
【0132】
【表8】

第二のバリア層を以下のように適用した。
【0133】
水を下の表に列挙した材料と一緒にして、コーティング流体を提供し、これをイエロー発色層上に、乾燥厚さ1.5ミクロンにコーティングした。
【0134】
【表9】

次に、UV吸収層を以下のように適用した。
【0135】
二酸化チタン(MS−7、600g)を、スチレン無水マレイン酸(264.7gの34%水溶液)、Zonyl FSN(1.20g)及び水(634.1g)の混合物中に、Meyers Millを使用して18時間拡散させた後、Dyno−Millにより12サイクル継続した。次に、得られた拡散物を水(200g)で希釈して、総固体含有率40.7%の拡散物を得た。
【0136】
水を下の表に列挙した材料と一緒にし、コーティング流体を提供し、これを上記のバリア層上に、乾燥厚さ1.8ミクロンにコーティングした。
【0137】
【表10】

オーバーコートを以下のように適用した。
【0138】
水を下の表に列挙した材料と一緒にしてコーティング流体を提供し、これをBayhydur VP LS 2336(酢酸メチル中50%溶液)と管内混合して、UV吸収層上に乾燥厚さ1.5ミクロンにてコーティングした。
【0139】
【表11】

Melinexベースの反対側に、マゼンタ発色層を適用した。
【0140】
マゼンタ発色剤IV(79.9g)を、Surfynol CT−111(2.76gの52%水溶液)、Surfynol CT−131(3.64g)、酢酸メチル(68g)及び水(270.7g)を含む混合物中に拡散させ、ガラス玉を備えた摩砕機を使用し、室温にて18時間撹拌した。得られた拡散物の総固体含有率は、20%であった。
【0141】
上記の拡散物を、水及び下の表に列挙した材料と一緒にし、マゼンタ染料−形成層用のコーティング流体を、記載した割合で作製した。このように調製したコーティング組成物を、Melinex X967上に、乾燥厚さ2ミクロンにてコーティングした。
【0142】
【表12】

次に、バリア層を適用した。
【0143】
下の表に列挙した材料から、水中で混合して流体を調製し、シアン染料−形成層上に、乾燥厚さ2ミクロンにてコーティングした。
【0144】
【表13】

次に、白色反射層を適用した。
二酸化チタン(TiPure.RTM.R−900、272.3kg)を、スチレン無水マレイン酸1440 H(42.1kgの34%水溶液)、BYK−012(0.268kg)及び水(68.3kg)の混合物中に、Meyers Millを使用して18時間拡散させた後、Dyno−Millにより4サイクル継続した。この工程は、総固体74.9%の拡散物を提供した。
【0145】
上記の拡散物を、水及び下の表に示す成分と一緒にし、総固体39.4%のコーティング流体を得た。このコーティング流体をBayhydur VP LS 2336(酢酸メチル中50%溶液)でインライン混合し、バリア層上に乾燥厚さ20ミクロンにてコーティングした。
【0146】
【表14】

最終コーティングのために、バックコート(backcoat)を適用した。
【0147】
水を下の表に列挙した材料と一緒にしてコーティング流体を提供し、これをBayhydur VP LS 2336(酢酸メチル中50%溶液)でインライン混合し、UV吸収層上に乾燥厚さ1.5ミクロンにてコーティングした。
【0148】
【表15】

得られた撮像部材を、2つの熱ヘッドを搭載した研究所試験−ベッドプリンター、モデルKPT−163−12PAN20(Kyocera Corporation, 6 Takedatobadono−cho, Fushimi−ku, Kyoto, Japan)を使用して印刷した。以下の印刷パラメータを使用した。
印字ヘッド幅:6.0インチ
ピクセル/インチ:300
抵抗器寸法:70x120ミクロン
電気抵抗:2800〜3200 Ohm
圧力:1.5〜2lb/リニアインチ
ドットパターン:矩形グリッド。
【0149】
高出力/短時間の条件で、イエロー層を前面から印刷した。同様に前面から対処したシアン層の印刷に、低出力/長時間の条件を使用した。1つの印字ヘッドが二色を同期的に印刷するように、イエロー着色を生成する印字ヘッドパルシングと、シアン着色を生成する印字ヘッドパルシングとを交互に行い、またシングルパスにて1つの印字ヘッドにより供給した。
【0150】
マゼンタ層を低出力、長時間の条件で後面から印刷した(フィルムベースの側部は、不透明TiO層を有する)。3つの各染料層の色グラデーションの印刷に加えて、組み合わせた色の対、及び全三色の組み合わせのグラデーションを印刷した。表IIに、この撮像例に関する印刷結果を概説する。
【0151】
【表16】

以上において本発明を種々の好ましい実施形態に関して詳述してきたが、本発明は実施形態に限定されることを意図せず、当業者は、本発明の趣旨及び添付の特許請求の範囲の範囲内での可能な変更及び修正を認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学式(I)により表される化合物を含む画像形成層を担持する基材を含む熱撮像部材であって:
【化1】

式中:
、R、R、R、R、R、R及びR14がそれぞれ独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキルアルコキシ、置換アルコキシ、置換カルボニル、アシルアミノ、ハロゲン、アリール、置換アリール、ヘテロアリール及び置換ヘテロアリールからなる群から選択され;
が、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、ヘテロシクロアルキル及び置換ヘテロシクロアルキルからなる群から選択されるか;或いは
及びRが、それらが結合する窒素原子と一緒になって、置換又は非置換飽和複素環部分を形成してもよく;
が、欠如しているか、又は水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、置換カルボニル、ハロゲン、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アミノ、置換アミノ、アルキルアミノ、置換アルキルアミノ、アリールアミノ及び置換アリールアミノからなる群から選択され;
10、R11及びR12がそれぞれ独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、置換カルボニル、ハロゲン、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アミノ、置換アミノ、アルキルアミノ、置換アルキルアミノ、アリールアミノ及び置換アリールアミノからなる群から選択され;
13が、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、ヘテロシクロアルキル及び置換ヘテロシクロアルキルからなる群から選択され;
14が、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、ヘテロシクロアルキル及び置換ヘテロシクロアルキルからなる群から選択されるか;或いは
13及びR14が、それらが結合する原子と一緒になって、5員又は6員の複素環を形成してもよく;
15、R16、R17及びR18がそれぞれ独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、ヘテロシクロアルキル、置換ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、置換カルボニル、ハロゲン、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アミノ、置換アミノ、アルキルアミノ、置換アルキルアミノ、アリールアミノ及び置換アリールアミノからなる群から選択され;
が炭素又は窒素であるが;
但し、R及びR13の一方のみが水素であることを条件とし;
該化合物が結晶形態である、熱撮像部材。
【請求項2】
化学式Iにより表される前記化合物が、少なくとも50℃のガラス遷移温度を有する、請求項1に記載の熱撮像部材。
【請求項3】
前記画像形成層が、更に少なくとも一種の熱溶媒を含む、請求項1に記載の熱撮像部材。
【請求項4】
前記熱溶媒が、ジフェニルスルホン、4,4’−ジメチルジフェニルスルホン、フェニルp−トリルスルホン、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の熱撮像部材。
【請求項5】
前記画像形成層が更に、フェノール基を含む少なくとも一種の化合物を含む、請求項1に記載の熱撮像部材。
【請求項6】
フェノール基を含む前記化合物が、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−エチル−フェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、ビス[2−ヒドロキシ−5−メチル−3−(1−メチルシクロヘキシル)フェニル]−メタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート、2,6−ビス[[3−(1,1−ジメチルエチル)−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル]メチル]−4−メチル−フェノール、2,2’−ブチリデンビス[6−(1,1−ジメチルエチル)−4−メチル−フェノール、2,2’−(3,5,5−トリメチルヘキシリデン)ビス[4,6−ジメチル−フェノール]、2,2’−メチレンビス[4,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−フェノール、2,2’−(2−メチルプロピリデン)ビス[4,6−ジメチル−フェノール]、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノール)、及び3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルスルフィドからなる群から選択される、請求項5に記載の熱撮像部材。
【請求項7】
(a)請求項1に記載の撮像部材を提供する手順;及び
(b)前記化合物の少なくとも一部を画像パターン内で非結晶形態に変換し、それにより画像が形成される手順
を含む、熱撮像法。
【請求項8】
手順(b)が、前記撮像部材に画像パターンの熱エネルギーを印加することを含み、前記熱エネルギーが、前記化合物の少なくとも幾つかを非結晶形態に変換するのに十分である、請求項7に記載の熱撮像法。

【公表番号】特表2008−544877(P2008−544877A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511390(P2008−511390)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/018386
【国際公開番号】WO2006/124560
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(507188957)ズィンク イメージング エルエルシー (17)
【Fターム(参考)】