説明

熱的に分離された軸受装置

本発明は、シャフト(3)を支持する軸受装置であって、シャフト(3)とは異なる熱膨張係数を有する材料で作られ、前記シャフト(3)を受け入れ、前記シャフト(3)との間に周状の環状すき間(4)を存在させるブッシュ(2)と、前記ブッシュ(2)の外周(2b)において前記シャフト(3)に対する前記ブッシュ(2)の心出しの支持を提供するために、前記シャフト(3)に接続された保持部材(8;32、33、34)と、回転軸受リング(7)とを備えている接続機構(21)と、前記ブッシュ(2)の半径方向外側に配置され、前記回転軸受リング(7、7’)とともにアキシャル滑り軸受(14)を形成する固定軸受リング(6、6’)とを備え、前記接続機構(21)が、周状の環状バンド部材(9、9’)を備えており、該環状バンド部材(9、9’)が、複合部材(23)を形成すべく収縮接続によって前記回転軸受リング(7、7’)へと接続されており、該複合部材(23)が、心出しの止まり嵌めにて前記保持部材(8;32)の凹所(8a;32a)に挿入され、前記環状バンド部材(9、9’)が、前記シャフト(3)の軸方向(X−X)において前記保持部材(8;32)へと接続されることを特徴とする軸受装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトを支持するための軸受装置であって、異なる熱膨張係数を有する構成部品で作られており、熱的な分離を備えている軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな種類の軸受装置が、従来技術から知られている。特に滑り軸受の場合に、滑り軸受の軸受インサートを、摩耗を少なくするために耐摩耗性の材料(例えば、セラミック材料)で製造することが、望まれることが多い。そのような軸受インサートが、例えば鋼鉄材料で作られたシャフトと協働する場合、セラミック材料の熱膨張係数と比べてはるかに高い鋼の熱膨張係数に起因して、問題が生じる可能性がある。これが、軸受装置における損傷につながる可能性がある。
【0003】
EP 0 563 437 A2から、セラミック製のブッシュが、対向軸受装置によって、ブッシュの外周においてシャフトに対して心出しされるように支持されている軸受装置が知られている。この軸受装置は、基本的には、有用であることが証明されており、例えば回転ポンプに使用されている。しかしながら、現在では、耐荷重に関する要求が増えており、より大型の設備の需要の増大に起因して、特にシャフトの直径が拡大されている。さらには、速度制御装置がますます使用されるようになり、速度制御に起因して、熱の発生が相違するさまざまな動作点が生じる。したがって、軸受装置をただ1つの動作点に適合することが、不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0 563 437号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の根底にある目的は、シャフトの頻繁な速度変化においても安全な動作を保証する一方で、単純な構造を有しており、容易かつ低コストで製造される軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1の特徴を有する軸受装置によって達成される。従属請求項が、本発明の有利なさらなる発展を含んでいる。
【0007】
請求項1の特徴を有する本発明の軸受装置は、軸受装置の個々の構成部品を異なる熱膨張係数を有する材料で作れるよう、軸受における熱的な分離を可能にするという利点を有している。これにより、個々の構成部品の材料を、それぞれの要求に最適に合わせることができる。本発明によれば、軸受装置の構造を、きわめて単純かつ費用対効果に優れたものにすることができる。本発明によれば、これが、バンド部材と回転軸受リングとの間に収縮接続がもたらされるように、バンド部材を回転軸受リングの外周へと焼き嵌め(shrink−fitting)することによって達成される。これにより、回転軸受リングが焼き嵌めによるバンド部材とともに、心出しの止まり嵌め(snug−fit)にて保持リングの凹所へと挿入される複合部材を形成する。本発明によれば、心出しの止まり嵌めは、公差をまったく有さず、あるいはμm程度のわずかな公差しか有さない嵌め合いである。これにより、圧入は存在しなくてよい。したがって、複合部材を、手作業により、保持リングの凹所への挿入、取り出しができる。バンド部材が、軸方向の接続によって保持リングへと接続される。ここで、複合部材が、半径方向において保持部材によって少なくとも部分的に囲まれ、複合部材と保持部材との間の熱的な分離が、複合部材が心出しの止まり嵌めにて保持部材へと挿入されることによって可能にされる。固定軸受リングおよび回転軸受リングが、アキシャル滑り軸受を形成する。これにより、本発明によれば、熱的な変化に起因するアキシャル滑り軸受における作動面の位置の望ましくない変化を、補償することができる。これにより、いわゆる端部荷重による作動面の損傷を、防止することができる。
【0008】
特に好ましくは、固定軸受リングが、シャフトを囲むブッシュと協働してラジアル滑り軸受を形成するために、半径方向内側を向いた摺動面をさらに有している。これにより、ラジアル滑り軸受およびアキシャル滑り軸受を、固定軸受リングにおいて同時にもたらすことができる。この固定軸受リングにおける複数面での支持ゆえに、特に構成部品の数を減らすことができ、コンパクトな軸受装置を提供することができる。
【0009】
特に好ましくは、バンド部材が、シャフトの中心軸に対して垂直に配置される軸に関して対称に形成される。これにより、バンド部材における温度変化の際に、寸法の一定の変化の発生が保証される。この文脈において、バンド部材は、好ましくは、半径方向外側を向いた2つのエッジ部分が大きく面取りされている。
【0010】
特に好ましくは、軸受装置が、二連軸受装置として形成され、2つの回転軸受リングおよび2つの固定軸受リングを備えている。これにより、シャフトを、互いに離れた2つの領域において支持することができる。好ましくは、この目的のために、回転軸受リングが、固定軸受リングの軸方向において互いに面する面側に配置される。換言すると、軸方向において、回転軸受リングが、固定軸受リングの間に配置される。代案としては、回転軸受リングが、固定軸受リングの軸方向において互いから離れる方を向いた面側に配置される。換言すると、軸方向において、固定軸受リングが、回転軸受リングの間に配置される。
【0011】
さらに、本発明は、本発明の軸受装置を備える磁気継手に関する。磁気継手は、好ましくは、速度制御装置において使用され、特にポンプにおいて使用される。
【0012】
以下で、本発明を、添付の図面に関連して、好ましい実施形態にもとづいて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態による軸受装置の概略の断面図を示している。
【図2】図1の接続機構の概略の断面図を示している。
【図3】図1による軸受装置を使用する回転ポンプの概略の断面図を示している。
【図4】本発明の第2の実施形態による軸受装置の概略の断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下で、本発明の第1の実施形態による軸受装置1を、図1〜3を参照して詳しく説明する。図1から認識できるとおり、軸受装置1は、シャフト3が配置される円筒形のブッシュ2を備えている。環状のすき間4が、ブッシュ2とシャフト3との間に半径方向の間隔が存在するよう、ブッシュ2とシャフト3との間に設けられている。環状のすき間4の寸法は、シャフト3およびブッシュ2が異なる材料で作られているため、シャフト3の熱膨張挙動が考慮されるように選択される。この実施形態においては、シャフトが鋼鉄材料で作られ、ブッシュがセラミック材料(SiC)で作られている。
【0015】
図示の実施形態の軸受装置1は、シャフト3を同時に軸方向および半径方向について支持するように機能する。この場合、軸受装置1は、互いに離れた2つの領域においてシャフト3を支持するための二連軸受として設けられている。この目的のため、軸受装置は、1対のアキシャル滑り軸受14、14’と、1対のラジアル滑り軸受15、15’とを備えている。アキシャル滑り軸受14、14’はそれぞれ、回転軸受リング7、7’および固定軸受リング6、6’を備えている。ラジアル滑り軸受15、15’は、固定軸受リング6、6’とブッシュ2の外側境界2bとの間で、シャフトの半径方向に形成されている。図1から認識できるとおり、2つの固定軸受リング6、6’は、ピン13、13’によってハウジング部分5へと取り付けられている。
【0016】
シャフト3は、接続または心出し機構21、21’によって、ブッシュ2の両端部において、ブッシュ2へと接続されている。接続機構21、21’は、ブッシュ2をシャフト3に対して同心に位置させるように機能する。接続機構21、21’の各々が、ピン12によってシャフト3へと接続された環状の保持部材8、8’を備えている。さらに、回転軸受リング7、7’も、接続機構21、21’の一部である。特に図2から認識できるとおり、接続機構21、21’は、さらなる環状のバンド部材9、9’をさらに備えている。環状のバンド部材9、9’は、軸Aに関して対称に形成されており、ここで軸Aは、シャフト3の中心軸または回転軸X−Xに垂直である。環状のバンド部材9、9’は、金属材料で作られ、セラミック材料で作られた回転軸受リング7、7’へと、収縮接続22、22’によってそれぞれ焼き嵌めされている。これにより、回転軸受リング7、7’および環状のバンド部材9、9’が、複合部材23(図2)をそれぞれ形成している。環状のバンド部材9、9’が、固定ピン10、10’によって軸方向に環状の保持部材8、8’へと接続されている。図2に示されるとおり、環状の保持部材8は、半径方向の外方向において環状のリム部8bによって境界付けられる凹所8aを有している。ここで、回転軸受リング7と環状のバンド部材9とを含む複合部材23が、心出しの止まり嵌めによって凹所8aへと挿入され、固定ピン10によってのみ軸方向に環状の保持部材8へと接続される。これにより、シャフト3の回転は、環状の保持部材8、固定ピン10、および環状のバンド部材9を介して、回転軸受リング7へと伝えられる。回転軸受リング7は、その内周において、接続27(特に、心出しの止まり嵌め)によって依然としてブッシュ2へと接続されており、ブッシュ2は、好ましくは、軸方向において保持部材8、8’の間に挟まれている。これにより、ブッシュ2が、シャフト3およびブッシュ2を異なる熱膨張係数を有する材料で問題なく作られるよう、接続機構21によってシャフト3に中心合わせされる。
【0017】
環状のバンド部材9は、半径方向外側を向いたエッジ部分に大きな面取り9a、9bをさらに備えており、これらの面取りも、軸Aに関して対称に形成されている。複合部材23を取り付けるために、スナップリング11が、環状のバンド部材9の面取り9bに設けられ、リム部8bの凹所に保持されている。
【0018】
これにより、本発明によれば、異なる熱膨張係数を有する構成部品の間の熱的な分離を達成することができる。シャフト3の他に、環状の保持部材8および環状のバンド部材9も、金属材料で作られる。対照的に、回転軸受リング7およびブッシュ2は、セラミック材料で作られる。結果として、回転軸受7が、従来技術においてアキシャル滑り軸受14、14’の軸方向の摺動面7a、6aにおける摩耗の発生につながりかねない傾き(tipping)を、温度の変化に反応して生じることがない。環状のバンド部材9と回転軸受リング7との間の収縮接続22における張力のプロファイル(profile)の変化を、複合部材23が心出しの止まり嵌めによって挿入されることによって補償することができる。特に、軸Aに関して対称である環状のバンド部材9の設計ゆえに、個々の構成部品の熱膨張が異なっても、回転軸受リング7の傾きが生じることがない。
【0019】
図3が、本発明の軸受装置1のポンプにおける使用を示している。ポンプが、駆動磁石17および被駆動磁石18を含む磁気継手16を備えている。分割カップ19が、駆動磁石17と被駆動磁石18との間に設けられている。被駆動磁石18が、ここではシャフト3へと接続されている。ポンプホイールが、参照番号20で指し示されている。本発明の軸受装置1が、シャフト3の軸方向および半径方向の支持を担い、2つの軸受面、すなわち軸方向の1つの軸受面および半径方向の1つの軸受面が、固定軸受リング6、6’に設けられている。
【0020】
図4が、本発明の第2の実施形態による軸受装置1を示しており、第1の実施形態と同一または機能的に同一の構成部品は、同じ参照番号を有している。第2の実施形態の軸受装置1は、第1の実施形態の軸受装置1に実質的に相当するが、回転軸受リング7、7’に対する固定軸受リング6、6’の配置が、第1の実施形態と比べて逆にされている。第2の実施形態においては、回転軸受リング7、7’が、固定軸受リング6、6’の軸方向において互いから離れる方を向いた面側に配置されている。さらに、第2の実施形態においては、連続的なブッシュが設けられるのではなく、2つの別々のブッシュ30、31が設けられている。2つのブッシュ30、31が、中間部材32を介して互いに接続されている。さらに、第1のブッシュ30が、保持部材33を介してシャフト3へと接続され、第2のブッシュ31が、保持部材34を介してシャフト3へと接続されている。環状のバンド部材9、9’が、やはり回転軸受リング7、7’へと焼き嵌めされ、固定ピン10、10’によって軸方向において中間部材32へと固定に接続されている。回転軸受リング7、7’および2つのブッシュ30、31が、やはりセラミック材料で作られ、中間部材32および2つの保持部材33、34ならびにシャフト3が、金属材料で作られ、したがってこれらの構成部品が、やはり異なる熱膨張係数を有している。この実施形態においても、回転軸受リング7、7’および環状のバンド部材9、9’が、やはり収縮接続によって複合部材23を形成し、この複合部材が、心出しの止まり嵌めにて中間部材32へと挿入されている。トルクを伝達するための軸方向の複合部材23の固定は、固定ピン10、10’によってのみ行われる。これ以外では、この実施形態は、先の実施形態に一致し、したがって先の実施形態において提示した説明を参照することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト(3)を支持するための軸受装置であって、
前記シャフト(3)とは異なる熱膨張係数を有する材料で作られ、前記シャフト(3)を受け入れ、前記シャフト(3)との間に周状の環状すき間(4)を存在させるブッシュ(2)と、
前記ブッシュ(2)の外周(2b)において前記シャフト(3)に対する前記ブッシュ(2)の心出しの支持を提供するために、前記シャフト(3)に接続された保持部材(8;32、33、34)と、回転軸受リング(7)とを備えている接続機構(21)と、
前記ブッシュ(2)の半径方向外側に配置され、前記回転軸受リング(7、7’)とともにアキシャル滑り軸受(14)を形成する固定軸受リング(6、6’)とを備え、
前記接続機構(21)が、周状の環状バンド部材(9、9’)を備えており、該環状バンド部材(9、9’)が、複合部材(23)を形成すべく収縮接続(22)によって前記回転軸受リング(7、7’)へと接続されており、該複合部材(23)が、心出しの止まり嵌めにて前記保持部材(8;32)の凹所(8a;32a)に挿入され、前記環状バンド部材(9、9’)が、前記シャフト(3)の軸方向(X−X)において前記保持部材(8;32)へと接続されることを特徴とする軸受装置。
【請求項2】
前記環状バンド部材(9、9’)が、前記シャフト(3)の軸方向(X−X)に対して垂直に配置される軸(A)に関して対称であることを特徴とする、請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記ブッシュ(2)、前記回転軸受リング(7、7’)、および前記固定軸受リング(6、6’)が、同じまたは類似の熱膨張係数を有する材料で作られ、特にSiCで作られることを特徴とする、請求項1または2に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記保持部材(9;32)、前記シャフト(3)、および前記環状バンド部材(9、9’)が、同じまたは類似の熱膨張係数を有する材料で作られ、特に鋼で作られることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の軸受装置。
【請求項5】
前記固定軸受リング(6、6’)が、半径方向の摺動面(6b)を有し、前記ブッシュ(2)の半径方向の摺動面(2b)とともにラジアル滑り軸受(15)を形成することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の軸受装置。
【請求項6】
二連軸受装置を形成するための2つの固定軸受リング(6、6’)および2つの回転軸受リング(7、7’)を特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の軸受装置。
【請求項7】
前記回転軸受リング(7、7’)が、固定軸受リング(6、6’)の軸方向(X−X)において互いに面する面側に配置され、あるいは前記回転軸受リング(7、7’)が、固定軸受リング(6、6’)の軸方向(X−X)において互いから離れる方を向いた面側に配置されることを特徴とする、請求項6に記載の軸受装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の軸受装置を備えている磁気継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−520431(P2012−520431A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500117(P2012−500117)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001541
【国際公開番号】WO2010/108603
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(510151348)イーグルブルクマン ジャーマニー ゲセルシャフト ミト ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (6)
【Fターム(参考)】