説明

熱的に調節される電界放出カソード及びビーム電流測定技術

本発明のX線源は光ファイバーケーブルに沿って伝播するレーザー光とともに加熱されるカーボンナノチューブ電界放出カソードを含む。結果として作製される本発明の2端子X線管は菅の電圧及び菅の電流の独立した制御を可能にする。菅の電圧の制御は通常、制御電極を使用して達成され、菅の電流は熱的な調節によって制御される。本発明はX線源のビーム電流を正確に測定するための技術を提供する。この技術はカソードを活性化すること、出力X線放射の所望の線量が達成されるまでレーザーの強度を調節すること、及びX線管の全電流を測定することを含む。次に、カソードは電子ビームをオフにするためにオフにされる。そして、X線管の電流が再度測定される。カソードはその後すぐに、再びオンにされる。上述のX線管の電流の2つの値の間の差は正確なX線管のビーム電流を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2003年1月16日に出願された米国特許出願No.60/440,454「X-ray Source Having A Thermally Modulated Field Emission Cathode」の優先権を主張する。本願はさらに、2003年1月16日に出願された米国特許出願No.60,440,483「Beam Current Measurement Technique」の優先権を主張する。
【0002】
本発明はX線近接照射療法システムに関し、詳細に述べると、熱的に調節される電界放出カソードを備えたX線源、及び、X線近接照射療法システムで使用するX線源のビーム電流を測定するための技術に関する。
【背景技術】
【0003】
X線近接照射療法は、X線源が治療を受ける領域に近接して、または治療を受ける領域内に配置されるX線放射療法のことを意味する。X線近接照射療法システムは通常、患者の身体内に挿入され、そこで起動または活性化される小型で低電力の放射源を使用する。小型の挿入可能なプローブは目的とする組織の近辺でX線放射を発生することが可能であり、それゆえ、放射線は目的とする組織に到達する前に患者の皮膚、骨、または他の組織を通過する必要がない。挿入可能なプローブは処置されるべき所望の領域内、またはそこに隣接した規準としての「点」から低電力のX線を発する。それゆえ、X線近接照射療法において、X線は処置される部分に隣接した組織に実質的に影響を与えることなく、予め決められた組織部分を処置するために適用されることができる。また、X線は予め決められた場所の付近に配置された予め決められた線量の幾何的配置で生成されてもよい。さらに、X線近接照射療法は、オペレーターが伝達されるX線放射の線量の時間に対する制御を行うことを可能にする。
【0004】
X線近接照射療法システムは通常、電子を放出するための電子源を収容する管状のプローブ、及びX線放射ターゲットを含む。システムはまた、電子源から放出された電子をターゲットに向かって加速させるために作用する、加速用電場を確立するための手段を含む。そして、ターゲットは電子源から入射される電子への応答でX線を放出する。通常、X線管の寸法は約1mm〜5mmの範囲である。この分野において、電子源として抵抗的に加熱される熱電子カソード、レーザーで加熱される熱電子カソード、及び光電カソード(または、光電陰極)が知られている。抵抗的に加熱される熱電子カソードにおいては、抵抗的に摂氏1000度以上に加熱されたときに電子を放出する金属フィラメントが使用される。しかしながら、高温に対する要求は金属フィラメントの故障を生ずることが多い。レーザー加熱式の熱電子カソードを有する、より効率的なX線源は、例えば、特許文献1に記載されている(この特許文献1は本出願人によって所有されており、その内容は本願に参照として取り込まれる)。
【0005】
電界放出カソードは小型のX線管の電子源に対する魅力的な代替電子源である。電界放出カソードにおいて、電子は強力な電場の影響の下で、室温で放出される。電界放出は量子力学効果であり、そこにおいて、電子はポテンシャル障壁をトンネルする。電界放出カソードは単純で、小型の装置であり、使用のために外部からの電力を必要としない。
【0006】
電界放出カソードからの出力電流は電圧によって制御可能である。電界放出カソードの動作の通常のモードは電界エミッター付近の電場を制御し、それによって放出される電流を制御するために電界エミッターの付近に配置された制御電極を使用することである。制御電極の間隔に依存して、電流を適当に制御するために200V〜1000Vの範囲の電圧が必要とされる。
【0007】
【特許文献1】米国特許第6480568号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
超小型X線管のデザインは、デザインに対する厳しい物理的及び組立て上の制限を伴うので、可能な限り単純な構造の使用を必要とする。電界放出カソードは非常に魅力的な動作特性を有するが、通常、少なくとも1つの3端子X線管の使用を必要とする。1〜3mmの範囲の直径のX線管を設計しようとする場合、制御構造を物理的に組立てることは非常に困難なものとなる。また、カテーテルまたはケーブルの終端で動作するために設計されたX線管の場合、ケーブルは3軸であるか、またはケーブル内に高電圧で絶縁を維持できる2つの分離された導線を備える必要がある。
【0009】
放射線療法のために設計された小型X線管は処置及び治療上の目的に対して上手くX線を適用するために、非常に安定したX線出力を有する必要がある。小型X線管のX線出力の体内での測定は非現実的であるので、安定したX線出力を確実にするための便利な方法は安定性のためにX線管の電圧及び電流を監視することである。ここで仮定されることは、電圧及び電流が安定しており、そして全ての電子がターゲットまで伝播されるとすれば、X線出力は安定であるだろうということである。残念なことに、可能な限り正確なビーム電流の測定を行うことができる分離用部材を備えたX線管は必要とされる寸法で製造するためには複雑すぎる。
【0010】
ダイオードで構成されたX線管のビーム電流測定は電界放出電流及び漏れ電流を含む、複数の電流誤差源の存在のために複雑なものとなる。例えば、X線管の表面からの望まれない電界放出はターゲットに到達しない、すなわち、X線出力に寄与しない電子流を発生する。また、電場及び漂遊電流を制御するための、絶縁体表面上の弱導電性フィルムの使用は時間及び温度ともに変化するDC電流を発生する。これらの電流誤差源は両方ともダイオードで構成されたX線管においてビーム電流から区別することが実質的に不可能である。
【0011】
これらの理由により、小型X線管で使用される電界放出カソードのための単純な制御機構を提供することが望まれている。さらに、小型X線管のビーム電流の測定のための、より正確で信頼性の高い方法に対する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は小型X線管で使用される電界放出カソードのための、代替的な制御システムを1つの特徴とする。制御システムは小型X線源の製造のための構造を大幅に単純化する。本発明はまた、X線発生ビーム電流を固体表面からの電界放出電流、及び絶縁体表面上の弱伝導フィルムの存在によって生ずる漂遊電流等の誤差電流から区別するための方法体系を1つの特徴とする。
【0013】
1つの実施例において、本発明は光ファイバーケーブルに沿って伝播するレーザー光とともに加熱されるカーボンナノチューブ電界放出カソードを1つの特徴とする。そのようなカーボンナノチューブ電界放出カソードがX線管で使用することにより、管の電圧及び管の電流を独立に制御することが可能な2端子X線管が得られる。管の電圧の制御は通常、制御電極を使用することによって達成され、電界放出カソードによって放出される管の電流は熱的調節によって制御することができる。
【0014】
もう1つの実施例において、本発明はレーザーによる活性化によって電子ビームを発生するためのカソード、及び前記カソードからの、加速された電子の衝突への応答でX線を放射するためのX線ターゲットを含むタイプのX線管において、X線発生ビーム電流を正確に測定するための方法を1つの特徴とする。カソードはレーザーによって十分な温度まで加熱されたときに熱電子的に電子を放出する熱電子カソードであってもよい。あるいは、カソードは電界放出を介して電子を放出し、また、電界放出が熱的に制御されるようにレーザーによって加熱される、(好まれるものとして、カーボンナノチューブ電界放出カソードである)電界放出カソードであってもよい。この方法は出力X線放射の所望の線量が得られるまでカソードを活性化し、レーザーの強度を調節すること、及びその後にX線管の全電流を測定することを含む。カソードはその後、オフにされ、それによって電子ビームがオフにされる。そしてX線管の全電流が再度測定される。その後すぐに、カソードが再度オンにされる。最後に、所望のビーム電流を得るために、X線管の全電流の2つの値の差が求められる。
【0015】
本発明は光源による活性化によって電子ビームを発生するための、光学的に活性化されるカソード、及び前記カソードからの、加速された電子の衝突への応答でX線を放射するためのX線ターゲットを含むタイプのX線源において、X線発生ビーム電流を正確に測定するためのビーム電流測定システムを1つの特徴とする。システムはカソードを活性化及び不活性化(または、起動及び停止)するためのオン−オフスイッチ、X線管の全電流の測定のための電流測定装置、及びプロセッサーを含む。オン−オフスイッチは最初にカソードを活性化(または、起動)する。システムはまた、X線源からの出力X線放射の線量を測定するためのX線検出器、及び測定された出力X線放射への応答で、光源からの光の強度を調節するための光強度制御器を含む。カソードの初期の活性化(または、起動)の後、光強度制御器は出力X線放射の所望の線量が達成されるまで光の強度を調節する。そして、電流測定装置はX線管の全電流の第1の値を確立するために、X線管からの全電流を測定する。次に、スイッチはカソードを不活性化(または、停止)し、それによって電子ビームをオフにする。そして、電流測定装置は、再度、X線管からの全電流を測定することによってX線管の全電流の第2の値を確立する。次に、スイッチはカソードを再び活性化(または、起動)する。そして、プロセッサーが管の全電流の第1値と管の全電流の第2値との間の差を計算することによって所望のビーム電流を計算する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は光ファイバーケーブルに沿って伝播するレーザー光によって熱的に調節することができる、カーボンナノチューブ電界放出カソードを含む小型X線源を1つの特徴とする。本発明のこの様式により、X線管の電流及びX線管の電圧を独立に制御することができる。本発明はまた、小型X線管のX線発生ビーム電流を正確に測定するため、及びこれらのビーム電流を誤差電流から区別するための方法を1つの特徴とする。
【0017】
図1は電界放出カソードと制御電極との間の間隔、及び電界放出カソードと制御電極の間の電圧の関数として表された、電界放出カソードの放出特性を図示している。図1に示されているように、電界放出カソードの放出は電界放出カソードと制御電極との間の間隔、及び電界放出カソードと制御電極との間の電圧に依存する。
【0018】
また、電界放出の方程式は温度に関係する項を含むので、それらは温度パラメーターにも依存する。したがって、制御機能として電圧の代わりに温度を使用することにより、図1と同様な曲線族を生成することができる。すなわち、電界放出カソードの放出を制御するためにそれを加熱することによって、すなわち、電界放出カソードを熱的に調節(または、熱的に変調)することによって、管の電圧及び管の電流を独立に制御することが可能な2端子X線管を作製することができる。
【0019】
通常、電界放出カソードの放出を制御するための電界放出カソードの加熱は複雑なシステムの結果となってしまう。しかしながら、カーボンナノチューブ電界放出カソードの特性は熱的制御の簡単な方法を可能にする。カーボンナノチューブは炭素原子から作製される極度に薄い中空の円筒である。カーボンナノチューブは直径約1ナノメートル、長さ約数十マイクロメートルの円筒形を形成するために丸められた炭素原子の六方晶系の網状構造(または、六方晶系のネットワーク)であるとみなすことができる。カーボンナノチューブは非常に高い温度耐性を有し、光の吸収性が非常に良い。それゆえ、カーボンナノチューブはX線管の真空中で非常に効果的に加熱することができる。(炭素原子から構成された)基本的な円筒形構造は「単一壁カーボンナノチューブ」と呼ばれる。カーボンナノチューブ電界放出カソードは、1つの例として、電気泳動塗装によるカーボンナノチューブ束の平らな金属またはシリコンディスクへのコーティングによって製造することができる。もちろん他の製造方法が本発明の実施例で使用されてもよく、それらも本発明の範囲に入る。
【0020】
本発明において、カーボンナノチューブ電界放出カソードは光学的伝達構造の終端部に配置され、カソードを加熱するために光学的伝達構造に沿って伝播する光が使用される。図2は光学的加熱式カーボンナノチューブ電界放出カソードを含む、本発明に従って構成されたX線源100の1つの実施例を図示している。全体的にみると、X線源100は可撓性の(または、フレキシブルな)光学的伝達構造110、光源120、及びX線発生組立品130を含む。光学的伝達構造は近位端及び遠位端を有し、近位端に入射された光学放射を遠位端に伝達するように構成されている。好まれるものとして、光学的伝達構造は光ファイバーケーブル110である。しかしながら、他の実施例においては、例えばレンズ等の、他の種類の光学的伝達構造が使用されてもよい。X線発生組立品130は光ファイバー110の遠位端に接続される。光源120は好まれるものとして、レーザー120であるが、本発明の他の実施例においては、例えばLED(発行ダイオード)等の他の種類の光源が使用されてもよい。
【0021】
X線発生組立品130はカーボンナノチューブ電界放出カソード160及びアノード170、並びに電界放出カソード160とアノード170との間に電場を生成するための手段(図示せず)を含む。1つの例として、電場を生成するための手段は高電圧発生器または電源、並びに高電圧発生器、カソード、及びアノードを接続するための導電性ケーブルを含んでもよい。電場発生手段は構造110の外面上に複数の伝導領域を含んでもよいし、または、構造110に沿って軸方向に拡張する単一の導体(または、導線)及び構造110の外面上に拡張する単一の導体(または、導線)を含んでもよい。カーボンナノチューブ電界放出カソード160は適用された電場への応答で電子を放出する。アノード170は好まれるものとして、カソード160から間隔を開けて、カソードの反対側に配置され、カソード160から放出され、加速された入射電子への応答でX線を放出するように構成された、少なくとも1つのX線放出性材料を含む。電源はカソードとアノードとの間の電圧、すなわち、X線管の電圧を制御するための手段を含む。通常、X線管の電圧を制御するために制御電極が使用される。
【0022】
1つの実施例において、アノード170は入射電子ビームに面する側がタングステン(W)、ウラニウム(U)または金(Au)等の高ZのX線放射性部材の薄いフィルムまたは層でコーティングされた、小さなベリリウム(Be)基板であってもよい。しかしながら、本発明の他の実施例においては、他の種類のX線放射性アノードが使用されてもよい。
【0023】
図2から判るように、カーボンナノチューブ電界放出カソード160は、好まれるものとして石英ガラス光ファイバーケーブルである光ファイバーケーブル110の遠位端に配置される。石英ガラス光ファイバーケーブル110はレーザー120によって生成され、光ファイバーの近位端に入射される光のビームを光ファイバーの遠位端に伝達するように構成される。光ファイバーケーブル110はさらに、それを通じて伝達される光のビームを電界放出カソード160に衝突させるように方向付け、それによってカソードを所望の温度まで加熱する。石英ガラスは熱伝導性が非常に悪いので、カソード160はX線管の真空環境中で非常に効率的に加熱されることができる。ビーム電流は付加的なナノチューブ、またはタングステン等の耐火金属の非常に薄いフィルムによって、光ファイバーの側面に沿ってカソードに供給することができる。好まれる実施例において、カソードの全体の構造は光ファイバーケーブルの終端と同等の寸法を有し、通常、150マイクロメートルである。
【0024】
X線源100はさらに、レーザー120によって生成される光の出力レベルを制御するための手段(図示せず)を含む。換言すると、レーザー源120は可変出力レーザー源であり、レーザー光の出力レベルを所望のレベルに制御するための制御器を含む。X線源100のデザインは、電界放出カソード160の室温での電流放出の閾値より僅かに小さい電場が電界放出カソード160で生成されるように設計される。X線生成のためにビーム電流が必要になったとき、電界放出カソードを所望のビーム電流のために必要な温度まで加熱するためにレーザー光が使用される。レーザー120からの光の出力レベルは、電界放出カソードを電界放出電流の所望のレベルを達成するのに十分な温度まで加熱できるように制御可能にされる。この様式により、本発明のX線源100は、ユーザーが管の電圧、及び管の電流の両方を独立して制御することを可能にする。上述の段落(21)で説明したように、制御電極はX線管の電圧を制御するために使用され、X線管の電流は電界放出カソードを加熱するレーザー光の出力レベルを調節することによって制御される。レーザーを制御するために閉ループシステムを使用することができ、それによって正確で、安定したビーム電流を生成することができる。
【0025】
本発明はX線ビーム電流を測定するためにビーム電流測定技術を使用する。この技術はX線ビーム電流を誤差電流から正確に区別する。概略的に述べると、X線管の全電流は以下の項目を足し合わせることによって得られる。1)所望のX線ビーム電流;及び、2)全ての誤差源からの全ての誤差電流の合計。X線管の全電流には所望のビーム電流から区別することが困難な多数の誤差電流源が存在する。このうち、2つの大きな誤差電流源は以下のものを含む。1)電界放出電流;及び、2)表面漏れまたはシート電流。
【0026】
電界放出電流は、(例えば、X線管の内面等の)固体の表面の局所的な電場が十分に高いときに、電子が固体の表面から放出されることによって生ずる。電子は量子トンネリングによって表面ポテンシャル障壁を通して引き出される。放出される電流は放出面の局所的な電場E、及び固体表面の仕事関数に直接的に依存する。通常、放出される電流の局所的な電場及び仕事関数への依存は指数関数的になる。シート電流または表面漏れ電流は活性化されたX線管の導電性の壁上の電流である。上述したように、電場及び漂遊電流を制御するための絶縁体表面上の半伝導性または弱伝導性フィルムの存在は時間及び温度とともに変化するDC電流を生ずる可能性がある。
【0027】
一般に、誤差電流は時間に対して比較的安定であり、約1秒の時間に対してDC電流とみなすことができる。この事実は、電界放出またはレーザー加熱式熱電子カソードをミリ秒単位でオン−オフすることがきる能力と結合することによって、誤差電流をビーム電流から分離する測定技術を可能にする。
【0028】
段落(20)〜(24)で上述したように、本発明のこのビーム電流測定方法はカーボンナノチューブ電界放出カソードを有する低電力で、小型のX線源とともに使用することができる。本発明の方法はまた、例えば、特許文献1で説明されているようなレーザー加熱式熱電子カソード等の、電界放出カソード以外のカソードを有するX線源とともに使用することもできる。特許文献1はX線源のために低電力で、向上した効率を有する電子源を与えるレーザー加熱式熱電子カソードを使用する、小型の治療用放射線源を開示している。特許文献1で説明されているように、この特許で開示されている種類のX線源は光源(例えば、レーザー)、光学的伝達構造(例えば、光ファイバーケーブル)、X線ターゲット部材、及び熱電子カソードを含む。光ファイバーはレーザー放射のビームをカソードに方向付け、そして、そのビームは電子の熱電子放出を生じさせるためにカソードを加熱する。そして、ターゲットに衝突する、加速された入射電子への応答でX線が発生する。
【0029】
図3はX線ビーム電流が誤差電流から正確に分離されることを可能にする、本発明の1つの実施例に従った方法を使用してビーム電流を測定するためのステップを表しているフローチャートを図示している。本発明の技術はアナログ信号処理で使用されている「自動ゼロ」処理として知られる技術に類似している。図3に示されているように、X線ビーム電流の値が最初に確立され、その後に管が平衡させられる(または、平衡状態に達せられる)。X線ビーム電流の初期の値を確立するために、最初に電源がオンにされ、レーザーが活性化(または、起動)される。レーザーからの光がカソードを加熱すると、カソードが熱電子カソードである場合、熱電子放出が発生し、また、カソードが電界放出カソードである場合、電界放出が発生する。
【0030】
カソードの電流は、所望のX線出力レベルが達成されるまでレーザーの強度を調節することによって所望のX線ビーム電流に調節される。所望のX線出力レベルは実施される放射線療法処理の必要性によって決定されてもよい。次に、X線管は平衡させられる(または、平衡状態に達せられる)。
【0031】
そして、X線管の全電流が測定され、その後、カソードがオフにされる。次に、X線管の全電流が再度測定される。第2の電流測定がなされた後すぐにカソードは再びオンにされる。第1の電流測定と第2の電流測定との間の差は実際のX線管ビーム電流となる。
【0032】
この測定処理に必要な時間は非常に短く、10秒程度の間隔で繰り返された場合、それはX線線量の伝達にとって取るに足らないものとすることができる。これにより、X線管のビーム電流を正確に測定及び制御する手段を作成することができる。
【0033】
本発明は段落(20)〜(24)で上述したような種類のX線源、または特許文献1で説明されているような種類のX線源でX線発生ビーム電流を正確に測定するためのビーム電流測定システム(図示せず)を1つの特徴とする。ビーム電流測定システムはカソードを活性化及び不活性化(または、起動及び停止)するためのオン−オフスイッチ、X線管の全電流を測定するための電流測定装置、及びプロセッサーを含む。システムはまた、X線源からの出力X線放射の線量を測定するためのX線検出器、及び測定された出力X線放射への応答で光源からの光の強度を調節するための光強度制御器を含む。
【0034】
オン−オフスイッチは最初に、電子を放出するためにカソードを活性化(または、起動)する。この初期の活性化(または、起動)の後、光強度制御器は、出力X線放射の所望の線量が達成されるまで光の強度を調節する。そして、電流測定装置はX線管の全電流の第1の値を確立するために、X線管からの全電流を測定する。次に、スイッチはカソードを不活性化(または、停止)し、それによって電子ビームをオフにする。そして、電流測定装置は、再度X線管からの全電流を測定することによってX線管の全電流の第2の値を確立する。次に、スイッチはカソードを再び活性化(または、起動)する。そして、プロセッサーが管の全電流の第1値と管の全電流の第2値との間の差を計算することによって所望のビーム電流を計算する。
【0035】
ここまで、本発明は特定の好まれる実施例への参照とともに説明されてきたが、付随する請求の範囲によって規定される本発明の範囲及び意図から外れることなく、本発明の形式及び詳細に対して多用な変更を加えることができることは当業者にとって明白であるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】電界放出カソードと制御電極との間の間隔、及び電界放出カソードと制御電極の間の電圧の関数として表された、電界放出カソードの放出特性を図示している。
【図2】レーザー加熱式カーボンナノチューブ電界放出カソードを含む、本発明に従って構成されたX線源の1つの実施例の概略図である。
【図3】本発明の実施例に従った方法を使用した、ビーム電流の測定のためのステップを表すフローチャートを図示している。
【符号の説明】
【0037】
100 X線源
110 光学的伝達構造(光ファイバー)
120 光源(レーザー源)
130 X線発生組立品
160 電界放出カソード
170 アノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱的に調節される電界放出カソードを備えたX線源であって:
A.近位端及び遠位端を有し、前記近位端に入射した光学放射を前記遠位端に伝達するように構成された可撓性の光学的伝達構造;
B.前記光学的伝達構造の前記近位端に向けられる光のビームを生成するための光源;
C.前記光学的伝達構造の前記遠位端に接続したX線発生組立品であって:
a.適用された電場への応答で電子を放出するための電界放出カソード;及び、
b.前記カソードからの加速された入射電子への応答でX線を放射するように構成されたX線放射性材料を含むアノードを備え;
前記光学的伝達構造がそれを通して伝達される光のビームを前記電界放出カソードに衝突させるように方向付けること特徴とするX線発生組立品;
D.前記カソードから電子の電界放出を生じさせるために前記電界放出カソードと前記アノードとの間に電場を生成するための手段であって、前記電場が、前記カソードから放出された電子が前記アノードに向かって加速されるように、前記カソードと前記アノードとの間に加速電圧を与える、電場を生成するための手段;及び、
E.前記カソードと前記アノードとの間の前記加速電圧を制御するための手段を備え、
前記電界放出カソードを電界放出電流の所望のレベルを生成するために十分な温度まで加熱するために、前記光のビームの出力レベルが制御可能であるX線源。
【請求項2】
前記光学的伝達構造が光ファイバーである、請求項1に記載のX線源。
【請求項3】
前記光源がレーザーである、請求項1に記載のX線源。
【請求項4】
前記加速用電圧を制御するための前記手段が制御電極である、請求項1に記載のX線源。
【請求項5】
前記電界放出カソードがカーボンナノチューブ電界放出カソードである、請求項1に記載のX線源。
【請求項6】
前記X線源のX線発生ビーム電流を正確に測定するための、ビーム電流測定システムをさらに備える、請求項1に記載のX線源。
【請求項7】
前記ビーム電流測定システムが:
a.前記カソードを活性化及び不活性化するためのオン−オフスイッチ;
b.前記X線源からの出力X線放射の線量を測定するためのX線検出器;
c.前記出力X線放射の測定された線量への応答で、前記光源からの光の強度を調節するための光強度制御器;
d.X線管の全電流を測定するための電流測定装置;及び、
e.前記電流測定装置からの出力への応答で、ビーム電流を計算するためのプロセッサーを備え;
前記電流測定装置が、前記オン−オフスイッチが前記カソードを最初に活性化し、かつ、前記光強度制御器が出力X線放射の所望の線量が達成されるまで前記光源からの光の強度を調節した後、前記X線管からの全電流を測定することによって前記X線管の全電流の第1の値を確立するために機能可能であり;
前記電流測定装置がさらに、前記オン−オフスイッチが前記X線管の全電流の第1の値の測定後に前記カソードを不活性化した後、前記X線管からの全電流を測定することによって前記X線管の全電流の第2の値を確立するために機能可能であり;さらに、
前記プロセッサーが、前記スイッチが前記電流測定装置による前記第2値の測定後に前記カソードを再び活性化した後、前記第1値と前記第2値との間の差を計算することによって前記ビーム電流を決定するために機能可能である、請求項6に記載のX線源。
【請求項8】
光源の活性化とともに電子ビームを生成するための光学的に活性化されるカソード、及び前記カソードから衝突する、加速された電子への応答でX線を放出するためのX線ターゲットを含む種類のX線管でX線発生ビーム電流を正確に測定するための方法であって:
a.前記カソードを活性化すること、及び出力X線放射の所望の線量が達成されるまで光源の強度を調節すること;
b.前記X線管の全電流を測定すること;
c.前記電子ビームをオフにするために前記カソードをオフにすること;
d.前記X線管の電流を再度、測定すること;
e.ステップcの後すぐに前記カソードをオンにすること;及び、
f.ステップbで測定された前記X線管の電流の値とステップdの値との間の差を求めることを含む方法。
【請求項9】
前記光源がレーザーである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記光学的に活性化されるカソードが光源によって十分な温度まで加熱されたときに熱電子的に電子を放出する熱電子カソードである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記光学的に活性化されるカソードが光源によって所望のレベルの電界放出電流を生成するのに十分な温度まで加熱されたときに電界放出によって電子を生成するためのカーボンナノチューブ電界放出カソードである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
光源の活性化とともに電子ビームを生成するための光学的に活性化されるカソード、及び前記カソードから衝突する、加速された電子への応答でX線を放出するためのX線ターゲットを含む種類のX線源でX線発生ビーム電流を正確に測定するためのビーム電流測定システムであって:
a.前記カソードを活性化及び不活性化するためのオン−オフスイッチ;
b.前記X線源からの出力X線放射の線量を測定するためのX線検出器;
c.前記出力X線放射の測定された線量への応答で、前記光源からの光の強度を調節するための光強度制御器;
d.X線管の全電流を測定するための電流測定装置;及び、
e.前記電流測定装置からの出力への応答で、ビーム電流を計算するためのプロセッサーを備え;
前記電流測定装置が、前記オン−オフスイッチが前記カソードを最初に活性化し、かつ、前記光強度制御器が出力X線放射の所望の線量が達成されるまで前記光源からの光の強度を調節した後、前記X線管からの全電流を測定することによって前記X線管の全電流の第1の値を確立するために機能可能であり;
前記電流測定装置がさらに、前記オン−オフスイッチが前記X線管の全電流の第1の値の測定後に前記カソードを不活性化した後、前記X線管からの全電流を測定することによって前記X線管の全電流の第2の値を確立するために機能可能であり;さらに、
前記プロセッサーが、前記スイッチが前記第2値の測定後に前記カソードを再び活性化した後、前記第1値と前記第2値との間の差を計算することによって前記ビーム電流を決定するために機能可能であるシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−524881(P2006−524881A)
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500962(P2006−500962)
【出願日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/000974
【国際公開番号】WO2004/066335
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(505269733)
【Fターム(参考)】