説明

熱硬化型粘接着テープ又はシート、及びその製造方法

【課題】熱硬化型粘接着剤層の経時安定性が良好であり、且つシリコーン系材料が実質的に用いられていない熱硬化型粘接着テープ又はシートを提供する。
【解決手段】熱硬化型粘接着テープ又はシートは、モノマー成分として、アルキル基の炭素数が2〜14である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)およびシアノ基含有モノマー(b)を少なくとも含有するアクリル系ポリマー(X)と、フェノール樹脂(Y)とを含有している熱硬化型粘接着剤組成物による熱硬化型粘接着剤層の両面が、シリコーン成分が実質的に含まれてない剥離ライナーであって、比重が0.910〜0.940であるポリエチレンによる剥離層を有する剥離ライナーにより保護された構造を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化型粘接着テープ又はシート、及びその製造方法に関し、さらに詳細には、フレキシブル印刷回路基板等で好適に用いることができる熱硬化型粘接着テープ又はシート、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器では、フレキシブル印刷回路基板(「FPC」と称する場合がある)が広く利用されている。このようなFPCでは、(1)ポリイミド製基材やポリアミド製基材等の耐熱基材に、銅箔やアルミニウム箔等の導電性金属箔を接着積層して、FPCを作製する過程や、(2)FPCをアルミニウム板、ステンレス板、ポリイミド板等の補強板に接着する過程などで、接着剤が使用される。このようなFPCの接着の際に用いられる接着剤としては、従来、ニトリルゴム(NBR)/エポキシ樹脂系接着剤、アクリルゴム/エポキシ樹脂系接着剤、アクリルゴム/フェノール樹脂系接着剤(特許文献1〜特許文献2参照)が広く利用されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3822175号明細書
【特許文献2】米国特許第3900662号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ニトリルゴム(NBR)/エポキシ樹脂系接着剤や、アクリルゴム/エポキシ樹脂系接着剤などのエポキシ樹脂を含む接着剤では、接着力は、十分満足できるものであるが、エポキシ樹脂の化学反応により接着性を発現しているため、接着剤としての保存性が低いという問題がある。
【0005】
また、近年、FPCは、精密電子部品(機器)にも使用されるようになり、FPCの用途によっては、接点不良等を予防するため、FPCに関する接着の際に用いられる接着テープ又はシートとしても、シリコーン系材料を排除することが求められている。
【0006】
従って、本発明の目的は、熱硬化型粘接着剤層の経時安定性が良好であり、且つシリコーン系材料が実質的に用いられていない熱硬化型粘接着テープ又はシート、及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、フレキシブル印刷回路基板に関する接着の際に用いられる熱硬化型粘接着テープ又はシートとして有用な熱硬化型粘接着テープ又はシート、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記目的を達成するために鋭意検討した結果、熱硬化型粘接着テープ又はシートにおける熱硬化型粘接着剤層を形成する熱硬化型粘接着剤組成物として、特定のアクリル系ポリマーがフェノール樹脂と組み合わせられた熱硬化型粘接着剤組成物を用い、且つ、前記熱硬化型粘接着剤層を、特定の剥離ライナーにより保護すると、熱硬化型粘接着剤層の経時安定性が良好であり、且つシリコーン系材料が実質的に用いられていない熱硬化型粘接着テープ又はシートが得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、モノマー成分として、アルキル基の炭素数が2〜14である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)およびシアノ基含有モノマー(b)を少なくとも含有するアクリル系ポリマー(X)と、フェノール樹脂(Y)とを含有している熱硬化型粘接着剤組成物による熱硬化型粘接着剤層の両面が、シリコーン成分が実質的に含まれてない剥離ライナーであって、比重が0.910〜0.940であるポリエチレンによる剥離層を有する剥離ライナーにより保護された構造を有している熱硬化型粘接着テープ又はシートを提供する。
【0009】
前記アクリル系ポリマー(X)は、モノマー成分として、さらに、カルボキシル基含有モノマー(c)を含有していることが好ましい。
【0010】
また、ポリエチレンによる剥離層の厚みは、20〜30μmであることが好ましい。
【0011】
さらに、アクリル系ポリマー(X)において、アルキル基の炭素数が2〜14である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)と、シアノ基含有モノマー(b)と、カルボキシル基含有モノマー(c)との割合としては、(a)成分/(b)成分/(c)成分=60〜75/20〜35/0.5〜10(重量比)であることが好ましい。
【0012】
このような熱硬化型粘接着テープ又はシートは、フレキシブル印刷回路基板に関する接着の際に好適に用いることができる。
【0013】
本発明は、また、前記熱硬化型粘接着テープ又はシートを製造する方法であって、モノマー成分として、アルキル基の炭素数が2〜14である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)およびシアノ基含有モノマー(b)を少なくとも含有するアクリル系ポリマー(X)と、フェノール樹脂(Y)とが混合された熱硬化型粘接着剤組成物を、シリコーン成分が実質的に含まれてない剥離ライナーであって、比重が0.910〜0.940であるポリエチレンによる剥離層を有する剥離ライナーの剥離面に塗布し乾燥して、熱硬化型粘接着剤層を形成することを特徴とする熱硬化型粘接着テープ又はシートの製造方法を提供する。尚、本明細書には上記発明の他に、
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱硬化型粘接着テープ又はシートによれば、前記構成を有しているので、熱硬化型粘接着剤層の経時安定性が良好であり、且つシリコーン系材料が実質的に用いられていない。そのため、フレキシブル印刷回路基板に関する接着の際に用いられる熱硬化型粘接着テープ又はシートとして有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[剥離ライナー]
本発明では、熱硬化型粘接着テープ又はシートにおける熱硬化型粘接着剤層を保護するための剥離ライナーとして、シリコーン成分が実質的に含まれてない剥離ライナーを用いていることが重要である。このように、剥離ライナーとして、シリコーン成分が実質的に含まれてない剥離ライナーを用いることにより、剥離ライナーにより保護している熱硬化型粘接着剤層に、剥離ライナーに由来するシリコーン成分を移行させることがない。そのため、熱硬化型粘接着テープ又はシートにより接着されている被着体が、フレキシブル印刷回路基板(FPC)等の精密電子機器であっても、シリコーン成分に基づく接点障害等の不具合を防止することができる。
【0016】
前記シリコーン成分が実質的に含まれてない剥離ライナーとしては、剥離処理剤としてシリコーン系剥離処理剤が使用されていない剥離ライナーを好適に用いることができる。このようなシリコーン系剥離処理剤が使用されていない剥離ライナーとしては、(1)それ自体が剥離性の高いプラスチックフィルム(「高剥離性プラスチックフィルム」と称する場合がある)のみから形成された構成の剥離ライナー、(2)高剥離性プラスチックフィルムの素材による剥離層(「プラスチック剥離層」と称する場合がある)が、各種支持体の少なくとも一方の面に形成された構成の剥離ライナー、(3)シリコーン系剥離処理剤以外の剥離処理剤による剥離処理剤層(離型処理剤層)が、各種支持体の少なくとも一方の面に形成された構成の剥離ライナーなどが挙げられる。
【0017】
前記構成(1)の剥離ライナーは、高剥離性プラスチックフィルム単体で構成されている。高剥離性プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリオレフィン系樹脂によるポリオレフィン系フィルムや、フッ素系樹脂によるフッ素系フィルム[例えば、テフロン(登録商標)製フィルム等]などのプラスチックフィルムが挙げられる。ポリオレフィン系フィルムにおけるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等)、ポロプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体(ブロック共重合体またはランダム共重合体)の他、これらの混合物などを用いることができる。
【0018】
また、前記構成(2)の剥離ライナーは、各種支持体(基材)と、前記支持体の少なくとも一方の面(両面又は片面)に形成されたプラスチック剥離層(高剥離性プラスチックフィルムの素材による剥離層)とにより構成されている。前記プラスチック剥離層を形成するためのプラスチック材としては、前記構成(1)における剥離ライナーの高剥離性プラスチックフィルムとして例示のプラスチックフィルムにおける素材から適宜選択して用いることができる。具体的には、プラスチック剥離層を形成するためのプラスチック材としては、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等)、ポロプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体(ブロック共重合体またはランダム共重合体)の他、これらの混合物などのポリオレフィン系樹脂や、フッ素系樹脂などが挙げられる。
【0019】
前記各種支持体としては、特に制限されず、例えば、紙製基材、プラスチック製基材、金属製基材、繊維質材料製基材などの各種基材が挙げられる。前記紙製基材としては、一般的な紙製基材として用いられているものであれば特に制限されないが、例えば、上質紙、クラフト紙、クルパック紙、グラシン紙、和紙、洋紙などの紙類が挙げられる。プラスチック製基材としては、特に制限されず、例えば、ポリエステル系フィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート系フィルム等)、ポリイミド系フィルム、ポリオレフィン系フィルム(例えば、ポリプロピレン系フィルム、ポリエチレン系フィルム等)、ポリカーボネート系フィルムなどのプラスチックフィルムや、これらのフィルム積層物の他、金属蒸着プラスチックフィルムなどが挙げられる。金属製基材としては、特に制限されず、例えば、銅箔、アルミニウム箔などの金属箔が挙げられる。繊維質材料製基材としては、特に制限されず、例えば、不織布や布などが挙げられる。
【0020】
構成(2)の剥離ライナーは、高剥離性プラスチックフィルムのラミネートや、高剥離性プラスチックフィルムの素材のコーティングにより、支持体の少なくとも一方の面にプラスチック剥離層を形成することにより作製することができる。なお、前記ラミネートやコーティングは、公知のラミネート方法やコーティング方法(例えば、熱ラミネート方法や、熱溶融押出しによるコーティング方法など)を採用することができる。
【0021】
さらにまた、前記構成(3)の剥離ライナーは、各種支持体(基材)と、前記支持体の少なくとも一方の面(両面又は片面)に形成された剥離処理剤層とにより構成されている。前記剥離処理剤層を形成するための剥離処理剤としては、シリコーン系剥離処理剤以外の剥離処理剤であれば特に制限されないが、例えば、フッ素系剥離処理剤や長鎖アルキル系剥離処理剤などが挙げられる。また、前記支持体としては、前記構成(2)における支持体として例示の支持体(紙製基材、プラスチック製基材、金属製基材、繊維質材料製基材など)から適宜選択して用いることができる。構成(3)の剥離ライナーは、支持体の少なくとも一方の面に、剥離処理剤を塗布することにより作製することができる。
【0022】
本発明では、剥離ライナーとしては、前記構成(1)の剥離ライナー(すなわち、高剥離性プラスチックフィルム単体による剥離ライナー)や、構成(2)の剥離ライナー(すなわち、プラスチック剥離層を有する剥離ライナー)を好適に用いることができ、特に構成(2)の剥離ライナーを好適に用いることができる。
【0023】
このような高剥離性プラスチックフィルム単体による剥離ライナーや、プラスチック剥離層を有する剥離ライナーにおいて、高剥離性プラスチックフィルム又はその素材としては、ポリオレフィン系樹脂によるポリオレフィン系フィルム又はポリオレフィン系樹脂が好適である。このようなポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレンを好適に用いることができる。従って、剥離ライナーとしては、ポリエチレン単体による剥離ライナー、ポリエチレンによる剥離層を有する剥離ライナーを好適に用いることができる。
【0024】
ポリエチレン単体による剥離ライナー、ポリエチレンによる剥離層を有する剥離ライナーにおいて、ポリエチレンとしては、特に比重(又は密度)が0.910〜0.940であるポリエチレンが好ましい。ポリエチレンの比重(又は密度)が0.910未満であると耐熱性が低下するため好ましくなく、一方、0.940を超えると支持体(特に紙製基材)に対する接着性が低下するため好ましくない。
【0025】
また、プラスチック剥離層を有する剥離ライナーの場合、ポリエチレンによる剥離層の厚みとしては、20〜30μmであることが好ましい。ポリエチレンによる剥離層の厚みが20μm未満であると耐熱性が低下し、熱硬化型粘接着テープ又はシートを接着させる際の仮貼り時、熱ラミネートによる加熱時に剥離ライナーに膨れが生じる場合があるため好ましくなく、一方、30μmを超えていると高価となるため経済的に好ましくない。
【0026】
[熱硬化型粘接着剤層]
本発明の熱硬化型粘接着テープ又はシートは、前述のように、熱硬化型粘接着剤層が、シリコーン成分が実質的に含まれてない剥離ライナーにより保護された構造を有しており、且つ前記熱硬化型粘接着剤層は、モノマー成分として、アルキル基の炭素数が2〜14である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)[「(メタ)アクリル酸C2-14アルキルエステル(a)」と称する場合がある]およびシアノ基含有モノマー(b)を少なくとも含有するアクリル系ポリマー(X)と、フェノール樹脂(Y)とを含有している熱硬化型粘接着剤組成物により形成されている。
【0027】
[アクリル系ポリマー(X)]
アクリル系ポリマー(X)は、モノマー成分(単量体成分)として、(メタ)アクリル酸C2-14アルキルエステル(a)と、シアノ基含有モノマー(b)とを少なくとも含有し、必要に応じて、カルボキシル基含有モノマー(c)や他のモノマー成分が用いられたアクリル系ポリマーである。
【0028】
[(メタ)アクリル酸C2-14アルキルエステル(a)]
(メタ)アクリル酸C2-14アルキルエステル(a)としては、アルキル基の炭素数が2〜14である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル)であれば特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸C2-14アルキルエステル(a)としては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシルなどが挙げられる。
【0029】
(メタ)アクリル酸C2-14アルキルエステル(a)としては、炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適であり、特に、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルを好適に用いることができる。
【0030】
なお、(メタ)アクリル酸C2-14アルキルエステル(a)は、1種のみにより構成されていてもよく、2種以上組み合わせられた混合物により構成されていてもよい。すなわち、(メタ)アクリル酸C2-14アルキルエステル(a)は、アルキル基の炭素数が2〜14である(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選択された少なくとも1種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることができる。
【0031】
本発明では、(メタ)アクリル酸C2-14アルキルエステル(a)は、アクリル系ポリマー(X)を構成するためのモノマー主成分として用いられている。(メタ)アクリル酸C2-14アルキルエステル(a)の割合は、モノマー成分全量に対して60〜75重量%であることが好ましい。
【0032】
[シアノ基含有モノマー(b)]
シアノ基含有モノマー(b)としては、シアノ基を有するモノマーであれば特に制限されないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。シアノ基含有モノマー(b)としては、アクリロニトリルを好適に用いることができる。
【0033】
なお、シアノ基含有モノマー(b)は、1種のみにより構成されていてもよく、2種以上組み合わせられた混合物により構成されていてもよい。
【0034】
本発明では、シアノ基含有モノマー(b)は、耐熱性や接着性を改善させるために用いられている。そのため、シアノ基含有モノマー(b)の割合は、モノマー成分全量に対して20〜35重量%であることが好ましい。シアノ基含有モノマー(b)の割合が、モノマー成分全量に対して20重量%より少ないと耐熱性に劣り、一方、35重量%より多いと柔軟性に欠けるため、好ましくない。
【0035】
[カルボキシル基含有モノマー(c)]
カルボキシル基含有モノマー(c)としては、カルボキシル基を有するモノマーであれば特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸)、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などが挙げられる。また、これらのカルボキシル基含有モノマーの酸無水物(例えば、無水マレイン酸、無水イコタン酸などの酸無水物基含有モノマー)も、カルボキシル基含有モノマーとして用いることが可能である。カルボキシル基含有モノマー(c)としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸を好適に用いることができる。
【0036】
なお、カルボキシル基含有モノマー(c)は、1種のみにより構成されていてもよく、2種以上組み合わせられた混合物により構成されていてもよい。
【0037】
本発明では、カルボキシル基含有モノマー(c)は、接着性を改善するために、必要に応じて用いられている。そのため、カルボキシル基含有モノマー(c)の割合は、モノマー成分全量に対して10重量%以下(例えば、0.5〜10重量%)であることが好ましい。カルボキシル基含有モノマー(c)の割合が、モノマー成分全量に対して10重量%より多いと柔軟性に欠けるため、好ましくない。
【0038】
[他のモノマー成分]
アクリル系ポリマー(X)を構成するモノマー成分としては、必要に応じて、(メタ)アクリル酸C2-14アルキルエステル(a)およびシアノ基含有モノマー(b)や、必要に応じて用いられるカルボキシル基含有モノマー(c)に対して共重合が可能なモノマー成分(共重合性モノマー)が用いられていてもよい。このような共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル;(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の(メタ)アクリル酸C15-20アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル[(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなど]や、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の非芳香族性環含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸アリールエステル[(メタ)アクリル酸フェニルなど]、(メタ)アクリル酸アリールオキシアルキルエステル[(メタ)アクリル酸フェノキシエチルなど]や、(メタ)アクリル酸アリールアルキルエステル[(メタ)アクリル酸ベンジルエステル]等の芳香族性環含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル等のエポキシ基含有アクリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等のヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド等の(N−置換)アミド系モノマー;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン等のオレフィン系モノマー;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマーなどが挙げられる。
【0039】
また、アクリル系ポリマー(X)において、共重合性モノマーとして、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレートなどの多官能モノマーを用いることもできる。
【0040】
アクリル系ポリマー(X)は、公知乃至慣用の重合方法(例えば、溶液重合方法、エマルション重合方法、懸濁重合方法、塊状重合方法や紫外線照射による重合方法など)により調製することができる。
【0041】
なお、アクリル系ポリマー(X)の重合に際して用いられる重合開始剤、連鎖移動剤などは、特に限定されず、公知乃至慣用のものの中から適宜選択して使用することができる。より具体的には、重合開始剤としては、例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1´−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2´−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン、ジメチル−2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオネート等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン等の過酸化物系重合開始剤などが挙げられる。重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、通常の使用量の範囲から適宜選択することができる。
【0042】
また、連鎖移動剤としては、例えば、2−メルカプトエタノール、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノール、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
【0043】
なお、溶液重合では、各種の一般的な溶剤を用いることができる。このような溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。溶剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0044】
アクリル系ポリマー(X)の重量平均分子量としては、特に制限されないが、例えば、10万〜100万(好ましくは20万〜80万)の範囲から適宜選択することができる。アクリル系ポリマー(X)の重量平均分子量は、重合開始剤や連鎖移動剤の種類やその使用量、重合の際の温度や時間の他、モノマー濃度、モノマー滴下速度などによりコントロールすることができる。なお、アクリル系ポリマー(X)の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定することができ、その際の測定条件は特に制限されず、公知の測定条件から適宜選択することができる。
【0045】
[フェノール樹脂(Y)]
フェノール樹脂(Y)としては、フェノール樹脂であれば特に制限されず、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂や、各種の変性フェノール樹脂(例えば、アルキル変性フェノール樹脂など)などから適宜選択して用いることができる。なお、フェノール樹脂(Y)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0046】
フェノール樹脂(Y)としては、レゾール型フェノール樹脂が好ましく、特に、下記式(1)で表される石炭酸系レゾール型フェノール樹脂を好適に用いることができる。
【化1】

(ただし、式(1)において、R1は「−CH2−」または「−CH2−O−CH2−」を示す。また、nは正の整数であり、mは1〜4の整数である)
【0047】
前記式(1)において、nは正の整数であれば特に制限されないが、例えば、1〜20の範囲の整数から選択することができる。また、mは1〜4の整数である。
【0048】
なお、石炭酸系レゾール型フェノール樹脂としては、50℃において、液体状又はバルサム状を有していることが好ましい。
【0049】
フェノール樹脂(Y)は、熱硬化性、耐熱性を付与するために用いられている。フェノール樹脂(Y)の重量平均分子量としては、特に制限されない。
【0050】
フェノール樹脂(Y)の配合割合としては、前記アクリル系ポリマー(X):100重量部に対して、1〜20重量部(好ましくは5〜15)であることが望ましい。フェノール樹脂(Y)の割合が、アクリル系ポリマー(X):100重量部に対して1重量部より少ないと熱硬化性が不足し、一方、20重量部より多いと接着力が低下するため好ましくない。
【0051】
[熱硬化型粘接着剤組成物]
本発明の熱硬化型粘接着テープ又はシートの熱硬化型粘接着剤層を形成するための熱硬化型粘接着剤組成物は、前記アクリル系ポリマー(X)と、前記フェノール樹脂(Y)とを含有している。熱硬化型粘接着剤組成物において、アクリル系ポリマー(X)と、フェノール樹脂(Y)との割合としては、前述のように、アクリル系ポリマー(X):100重量部に対して、フェノール樹脂(Y)の割合が1〜20重量部(好ましくは5〜15)である。
【0052】
熱硬化型粘接着剤組成物中には、アクリル系ポリマー(X)やフェノール樹脂(Y)以外に、必要に応じて、老化防止剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤などの公知の添加剤が、本発明の特性を損なわない範囲で含まれていてもよい。
【0053】
熱硬化型粘接着剤組成物は、アクリル系ポリマー(X)と、フェノール樹脂(Y)と、必要に応じて各種添加剤(老化防止剤、充填剤、顔料など)等とを混合することにより調製することができる。
【0054】
なお、アクリル系ポリマー(X)や、フェノール樹脂(Y)は、溶液又は分散液の状態で用いることができる。アクリル系ポリマー(X)を溶液状態で用いる場合、溶媒としては、特に制限されないが、例えば、アクリル系ポリマー(X)を溶液重合により調製する際に用いられる溶剤として例示の溶剤の中から適宜選択することができる。また、フェノール樹脂(Y)を溶液状態で用いる場合、溶媒としては、特に制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の1価アルコール類;エチレングリコール等の多価アルコール類;ケトン類;酢酸エステル類;エーテル類などを用いることができる。
【0055】
[熱硬化型粘接着テープ又はシート]
本発明の熱硬化型粘接着テープ又はシートは、前記熱硬化型粘接着剤組成物により形成された熱硬化型粘接着剤層を有する熱硬化型粘接着テープ又はシートである。熱硬化型粘接着テープ又はシートは、前記熱硬化型粘接着剤組成物による熱硬化型粘接着剤層を有していれば、基材を有していてもよく、基材を有していなくてもよい。従って、熱硬化型粘接着テープ又はシートとしては、(1)熱硬化型粘接着剤層のみから形成された構成の熱硬化型粘接着テープ又はシート(基材レス熱硬化型粘接着テープ又はシート)、(2)基材の少なくとも一方の面(両面又は片面)に熱硬化型粘接着剤層が形成された構成の熱硬化型粘接着テープ又はシート(基材付き熱硬化型粘接着テープ又はシート)などが挙げられる。熱硬化型粘接着テープ又はシートとしては、前記(1)の構成の熱硬化型粘接着テープ又はシート(すなわち、熱硬化型粘接着剤層のみから形成された構成の基材レス熱硬化型粘接着テープ又はシート)が好適である。
【0056】
本発明では、熱硬化型粘接着テープ又はシートは、熱硬化型粘接着剤層が、シリコーン成分が実質的に含まれてない剥離ライナーにより保護された構造を有していることが重要である。なお、熱硬化型粘接着テープ又はシートが、両面が接着面となっている熱硬化型粘接着テープ又はシートである場合、1枚又は2枚の剥離ライナー(具体的には、両面が剥離面となっている1枚の剥離ライナー、又は少なくとも一方の面が剥離面となっている2枚の剥離ライナー)により、各接着面(熱硬化型粘接着剤層表面)を保護することができる。
【0057】
なお、熱硬化型粘接着テープ又はシートが基材付き熱硬化型粘接着テープ又はシートである場合、基材の少なくとも一方の面に、前記熱硬化型粘接着剤組成物による熱硬化型粘接着剤層が形成されていればよく、基材の他方の面には、公知の粘着剤層や接着剤層などが形成されていてもよい。
【0058】
また、熱硬化型粘接着テープ又はシートは、ロール状に巻回された形態で形成されていてもよく、シートが積層された形態で形成されていてもよい。すなわち、本発明の熱硬化型粘接着テープ又はシートは、シート状、テープ状などの形態を有することができる。
【0059】
本発明の熱硬化型粘接着テープ又はシートにおいて、熱硬化型粘接着剤層は、前記熱硬化型粘接着剤組成物により形成されているので、常温では、被着体に粘着させることが可能な微粘着性を有しており、加熱することにより、硬化反応が生じて、接着強度が増して、強固に且つ優れた耐熱性で接着させることが可能な接着性を有している熱硬化性粘接着剤層である。熱硬化型粘接着剤層の厚みとしては、例えば、5〜100μm(好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは20〜30μm)の範囲から選択することができる。なお、熱硬化型粘接着剤層は、単層、積層体のいずれの形態を有していてもよい。
【0060】
また、熱硬化型粘接着テープ又はシートが基材を有している場合、該基材としては、特に制限されず、例えば、紙などの紙系基材;布、不織布、ネットなどの繊維系基材;金属箔、金属板などの金属系基材;各種樹脂(オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)など)によるフィルムやシートなどのプラスチック系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;発泡シートなどの発泡体や、これらの積層体(特に、プラスチック系基材と他の基材との積層体や、プラスチックフィルム(又はシート)同士の積層体など)等の適宜な薄葉体を用いることができる。基材の厚みとしては、特に制限されず、例えば、10〜500μm(好ましくは12〜200μm、さらに好ましくは15〜100μm)程度である。なお、基材は単層の形態を有していてもよく、また、複層の形態を有していてもよい。また、基材には、必要に応じて、背面処理、帯電防止処理、下塗り処理などの各種処理が施されていてもよい。
【0061】
なお、熱硬化型粘接着テープ又はシートは、本発明の効果を損なわない範囲で、他の層(例えば、中間層、下塗り層など)を有していてもよい。
【0062】
本発明の熱硬化型粘接着テープ又はシートは、通常の接着テープ又はシートの製造方法に従って製造することができる。例えば、熱硬化型粘接着テープ又はシートが基材レス熱硬化型粘接着テープ又はシートである場合、シリコーン成分が実質的に含まれてない剥離ライナーの剥離面に、前記熱硬化型粘接着剤組成物を、乾燥後の厚さが所定の厚さとなるように塗布し、乾燥して熱硬化型粘接着剤層を形成した後、該熱硬化型粘接着剤層の表面に、他のシリコーン成分が実質的に含まれてない剥離ライナーの剥離面を重ね合わせる方法により、作製することができる。
【0063】
なお、熱硬化型粘接着剤組成物の塗布に際しては、慣用のコーター(例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなど)を用いることができる。
【0064】
本発明の熱硬化型粘接着テープ又はシートでは、熱硬化型粘接着剤層が前記熱硬化型粘接着剤組成物により形成されているので、経時安定性に優れているとともに、微粘着性(微タック性)を有している。そのため、貼り付け時の位置決め等の作業性に優れている。具体的には、熱硬化型粘接着テープ又はシートは、常温で仮貼りを行うことができ、しかもこの際、容易に貼り直すことも可能であるので、貼り合わせ作業が非常に簡便となり、貼り合わせの作業性に優れている。また、仮貼りにより位置決めを行って、粘着により貼り合わせた後には、加熱によって硬化反応を生じさせることにより、粘着により貼り合わせたものを、優れた接着性で接着させることができる。従って、本発明の熱硬化型粘接着テープ又はシートを、加熱により硬化させる前に、被着体に仮貼りにより貼り合わせる際には、その微粘着性を利用して被着体に仮貼りにより粘着させて貼り合わせることができ、また、粘着により貼り合わせた後には、加熱により硬化させて、強固に被着体に接着させることができる。しかも、熱硬化後には、優れた耐熱性を発揮することができる。
【0065】
特に、熱硬化型粘接着剤層の保護するための剥離ライナーとして、シリコーン成分が実質的に含まれてない剥離ライナーを用いているので、熱硬化型粘接着テープ又はシートにより接着されている被着体が、フレキシブル印刷回路基板(FPC)等の精密電子機器であっても、シリコーン成分に基づく接点障害等の不具合を防止することができ、シリコーン成分によるコンタミネーションがない。
【0066】
また、シリコーン成分が実質的に含まれてない剥離ライナーとして、剥離層に比重が0.910〜0.940のポリエチレンを使用した剥離ライナーを用いた場合、熱硬化型粘接着テープ又はシートを被着体に貼付した状態で加熱させた際に、剥離ライナーの膨れが生じず、耐熱性も優れている。
【0067】
従って、本発明の熱硬化型粘接着テープ又はシートは、フレキシブル印刷回路基板(FPC)等の精密電子機器における接着の際に好適に用いることができる。なお、FPC等の精密電子機器における接着とは、前述のように、FPC等の精密電子機器を作製する際の接着や、FPC等の精密電子機器を補強板に貼り合わせる際の接着を意味している。
【実施例】
【0068】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
アクリル系ポリマー[東レコーテックス社製;ブチルアクリレート(BA)/アクリロニトリル(AN)/アクリル酸(AA)=75:23:2(重量比)の共重合体;重量平均分子量:60万;「アクリル系ポリマーA」と称する場合がある]:100重量部を酢酸エチルに溶解させて、アクリル系ポリマーAの酢酸エチル溶液(濃度:40重量%)を作製する。
【0070】
このアクリル系ポリマーAの酢酸エチル溶液:100重量部(固形分)に、レゾール型フェノール樹脂として商品名「スミライトレジンPR−51283」(住友ベークライト社製;重量平均分子量:55万):10重量部(固形分)を加えて、混合して撹拌させて、熱硬化型粘接着剤組成物溶液を調製した。
【0071】
前記熱硬化型粘接着剤組成物溶液を、乾燥後の厚みが25μmとなるように、剥離ライナーとしての商品名「LL80」(リンテック社製;紙製基材の一方の面にポリエチレンがラミネートされた形態の剥離紙)のポリエチレンによる剥離層上に、塗布し、100℃で3分間乾燥して熱硬化型粘接着剤層を形成した後、さらに、前記熱硬化型粘接着剤層の表面に、商品名「LL80」(リンテック社製)のポリエチレンによる剥離層を重ね合わせて、熱硬化型粘接着シートを得た。
【0072】
(実施例2)
アクリル系ポリマー[東レコーテックス社製;ブチルアクリレート(BA)/アクリロニトリル(AN)/アクリル酸(AA)=65:30:5(重量比)の共重合体;重量平均分子量:70万;「アクリル系ポリマーB」と称する場合がある]:100重量部を酢酸エチルに溶解させて、アクリル系ポリマーBの酢酸エチル溶液(濃度:40重量%)を作製する。
【0073】
このアクリル系ポリマーBの酢酸エチル溶液:100重量部(固形分)に、レゾール型フェノール樹脂として商品名「スミライトレジンPR−51283」(住友ベークライト社製;重量平均分子量:55万):10重量部(固形分)を加えて、混合して撹拌させて、熱硬化型粘接着剤組成物溶液を調製した。
【0074】
前記熱硬化型粘接着剤組成物溶液を、乾燥後の厚みが25μmとなるように、剥離ライナーとしての商品名「LL80」(リンテック社製;紙製基材の一方の面にポリエチレンがラミネートされた形態の剥離紙)のポリエチレンによる剥離層上に、塗布し、100℃で3分間乾燥して熱硬化型粘接着剤層を形成した後、さらに、前記熱硬化型粘接着剤層の表面に、商品名「LL80」(リンテック社製)のポリエチレンによる剥離層を重ね合わせて、熱硬化型粘接着シートを得た。
【0075】
(実施例3)
実施例1と同様にしてアクリル系ポリマーAの酢酸エチル溶液(濃度:40重量%)を作製する。このアクリル系ポリマーAの酢酸エチル溶液:100重量部(固形分)に、レゾール型フェノール樹脂として商品名「スミライトレジンPR−51283」(住友ベークライト社製;重量平均分子量:55万):5重量部(固形分)を加えて、混合して撹拌させて、熱硬化型粘接着剤組成物溶液を調製した。
【0076】
前記熱硬化型粘接着剤組成物溶液を、乾燥後の厚みが25μmとなるように、剥離ライナーとしての商品名「LL80」(リンテック社製;紙製基材の一方の面にポリエチレンがラミネートされた形態の剥離紙)のポリエチレンによる剥離層上に、塗布し、100℃で3分間乾燥して熱硬化型粘接着剤層を形成した後、さらに、前記熱硬化型粘接着剤層の表面に、商品名「LL80」(リンテック社製)のポリエチレンによる剥離層を重ね合わせて、熱硬化型粘接着シートを得た。
【0077】
(比較例1)
剥離ライナーとして、商品名「75EPS(M)クリーム改」(王子製紙社製;紙製基材の一方の面にシリコーン系剥離処理剤による剥離処理層が形成された形態の剥離紙)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、熱硬化型粘接着シートを得た。
【0078】
(評価)
実施例および比較例で得られた各熱硬化型粘接着シートについて、ヘイズ値、熱硬化型粘接着剤層の経時安定性、硬化前における常温での粘着力を、それぞれ、下記のヘイズ値の測定方法、熱硬化型粘接着剤層の経時安定性の評価方法、粘着力の測定方法により測定又は評価した。
【0079】
(ヘイズ値の測定方法)
実施例および比較例により作製された各熱硬化型粘接着シートを、スライドガラス(商品名「S−1111」MATSUNAMI社製)に貼り合わせて、熱硬化型粘接着剤層/スライドガラスの層構成を有する試験片を作製し、該試験片のヘイズ値(%)を、ヘイズメータ(装置の商品名「HM−150」村上色彩技術研究所製)を用いて測定した。なお、ヘイズ値(%)は、「[拡散透過率(%)/全光線透過率(%)]×100」の式を利用して求めた。また、スライドガラスのみのヘイズ値(%)は、0.4(%)であった。なお、測定又は評価結果は、表1の「ヘイズ値(%)」の欄に示した。
【0080】
ヘイズ値は、熱硬化型粘接着剤層を形成する熱硬化型粘接着剤組成物の相溶性の指標とすることができる。
【0081】
(熱硬化型粘接着剤層の経時安定性の評価方法)
実施例および比較例により作製された各熱硬化型粘接着シートを、50℃で保存した際に、保存前の接着力の80%までに低下するのに要する日数を求めて、熱硬化型粘接着剤層の経時安定性を評価した。具体的には、フレキシブル印刷回路基板(FPC;面積:5cm×8cm、厚み:0.2mm)と、熱硬化型粘接着シートとを130℃でラミネートした後、1cm幅に切断し、アルミニウム板(面積:5cm×5cm、厚み:0.5mm)に貼り付け、さらに130℃でラミネートした後、160℃、1MPaで90秒間加熱圧着し、さらに、150℃で3時間キュアーして試験体を作製した。この試験体について、90°ピール接着力(引き剥がし速度:50mm/min、23℃;N/cm)を、FPC側から引っ張る方法により、装置商品名「TCM−1KNB」(株式会社ミネベア製)を用いて測定した。
【0082】
次に、40℃で所定日数保存した各熱硬化型粘接着シートについて、前記と同様にして、試験体を作製した後、90°ピール接着力(引き剥がし速度:50mm/min、23℃、FPC側から引っ張る;N/cm)を、前記と同様にして、装置商品名「TCM−1KNB」(株式会社ミネベア製)を用いて測定した。
【0083】
そして、これらの測定結果より、40℃で保存した際に、保存前の接着力の80%の大きさまでに低下するのに要する日数を求め、熱硬化型粘接着剤層の経時安定性を評価した。もちろん、この日数が多いほど、熱硬化型粘接着剤層の経時安定性が優れている。なお、評価結果は、表1の「接着力保持率80%日数(40℃保存)」の欄に示した。
【0084】
(粘着力の測定方法)
実施例および比較例により作製された各熱硬化型粘接着シートにおける硬化前の熱硬化型粘接着剤層について、剥離ライナーに塗布されているシリコーン成分による特性への影響について、硬化前における常温(23℃)での粘着力(N/20mm)を、JIS Z 0237に準じて測定した。具体的には、20mm幅に切断した熱硬化型粘接着シートを、2kgのローラーで1往復によりポリイミドフィルム(商品名「カプトン500V」デュポン社製)に圧着し、180°ピール粘着力(引き剥がし速度:100mm/min、23℃、熱硬化型粘接着シートを引っ張る;N/20mm)を、装置商品名「TCM−1KNB」(株式会社ミネベア製)を用いて測定した。なお、測定又は評価結果は、表1の「粘着力(N/20mm)」の欄に示した。
【0085】
【表1】

【0086】
表1から明らかなように、実施例に係る熱硬化型粘接着シートは、熱硬化型粘接着剤層の経時安定性が優れている。また、剥離ライナーとして、シリコーン成分が実質的に含まれてない剥離ライナーが用いられているので、熱硬化型粘接着剤層にシリコーン成分が移行することがなく、常温(23℃)で貼り合わせた際の粘着力も良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー成分として、アルキル基の炭素数が2〜14である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)およびシアノ基含有モノマー(b)を少なくとも含有するアクリル系ポリマー(X)と、フェノール樹脂(Y)とを含有している熱硬化型粘接着剤組成物による熱硬化型粘接着剤層の両面が、シリコーン成分が実質的に含まれてない剥離ライナーであって、比重が0.910〜0.940であるポリエチレンによる剥離層を有する剥離ライナーにより保護された構造を有している熱硬化型粘接着テープ又はシート。
【請求項2】
アクリル系ポリマー(X)が、モノマー成分として、さらに、カルボキシル基含有モノマー(c)を含有している請求項1記載の熱硬化型粘接着テープ又はシート。
【請求項3】
ポリエチレンによる剥離層の厚みが、20〜30μmである請求項1又は2記載の熱硬化型粘接着テープ又はシート。
【請求項4】
アクリル系ポリマー(X)において、アルキル基の炭素数が2〜14である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)と、シアノ基含有モノマー(b)と、カルボキシル基含有モノマー(c)との割合が、(a)成分/(b)成分/(c)成分=60〜75/20〜35/0.5〜10(重量比)である請求項1〜3の何れか1項に記載の熱硬化型粘接着テープ又はシート。
【請求項5】
フレキシブル印刷回路基板に関する接着の際に用いられる請求項1〜4の何れか1項に記載の熱硬化型粘接着テープ又はシート。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の熱硬化型粘接着テープ又はシートを製造する方法であって、モノマー成分として、アルキル基の炭素数が2〜14である(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)およびシアノ基含有モノマー(b)を少なくとも含有するアクリル系ポリマー(X)と、フェノール樹脂(Y)とが混合された熱硬化型粘接着剤組成物を、シリコーン成分が実質的に含まれてない剥離ライナーであって、比重が0.910〜0.940であるポリエチレンによる剥離層を有する剥離ライナーの剥離面に塗布し乾燥して、熱硬化型粘接着剤層を形成することを特徴とする熱硬化型粘接着テープ又はシートの製造方法。

【公開番号】特開2011−202185(P2011−202185A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156824(P2011−156824)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【分割の表示】特願2004−57101(P2004−57101)の分割
【原出願日】平成16年3月2日(2004.3.2)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】