説明

熱硬化性ポリマー

ホルムアルデヒドを含まないバインダー系及びかかる系を利用するポリマー熱硬化性システムには、1又はそれ以上のヒドロキシルポリマー及び1又はそれ以上のヒドロキシルポリマー架橋剤から形成されるホルムアルデヒドを含まないバインダーが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシポリマー及びヒドロキシポリマー架橋剤を含有する、熱硬化性ポリマー、または、ホルムアルデヒドを含まないバインダー系に関する。本発明はまた、かかるホルムアルデヒドを含まないバインダー系を用いて製造された複合材料、並びにこれらの複合材料を製造するためのプロセスに関する。
【0002】
本願は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる、2007年12月21日出願の米国特許仮出願第61/016,374号に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
合成ポリマーは、幅広い種類の用途で使用されている。多くの用途において、これらの合成ポリマーは、必要とされる性能特性を達成するために架橋されている。60年間以上も、多くの種類の商業的に重要な熱硬化性ポリマーにおいてホルムアルデヒド系架橋剤が利用されてきた。かかるホルムアルデヒドに基づく架橋剤は、昔から多様な複合材料を製造するための効率的で費用効率の高いバインダーを提供してきた。ホルムアルデヒド系架橋剤の例としては、メラミン−ホルムアルデヒド、尿素−ホルムアルデヒド、フェノール−ホルムアルデヒド及びアクリルアミド−ホルムアルデヒド付加物が挙げられる。毒性及び環境に対する関心の高まりと共に、ホルムアルデヒドに基づく架橋系に取って代わるものが探求され続けている。しかし、これらの代替系は、高いコスト、低い若しくは遅い硬化、最終使用者がその市販されている高速適用装置を変える必要性、ホルムアルデヒド以外の有毒成分又は揮発性有機化合物の排出、耐湿性の欠如、バインダーと基材との間の適切な結合の欠如、及び、製造設備の腐食という問題を引き起こす、バインダーを硬化させるために必要なpHが低いことをはじめとする重大な欠陥に悩まされてきた。
【0004】
従来のホルムアルデヒドを含まないバインダー系は、一般に、ホルムアルデヒドに基づく熱硬化性樹脂と同様に機能しない。さらに、従来のホルムアルデヒドを含まないバインダー系、例えば、低いpH(例えば、3未満)でのポリアクリル酸の硬化に基づくものなどは、製造設備の腐食という問題を引き起こす可能性がある。そのために、3より大きいpHで、さらには中性のpH範囲で硬化することのできる、ホルムアルデヒドを含まないバインダー系が必要とされている。
【0005】
一部のホルムアルデヒドを含まないバインダー系は、小分子カルボン酸のアンモニウム塩を架橋剤として使用する。これらの系に、排出という問題、例えば、アンモニアの排出などがある。それ故に、排出問題、例えばアンモニアの排出を制限するか又は最小限に抑えるホルムアルデヒドを含まないバインダー系が必要とされている。その他のホルムアルデヒドを含まないバインダー系は、バインダー系中のアルデヒド、例えばグリオキサールなどをホルムアルデヒドに置き換えている。残念ながら、グリオキサールを含む大部分のアルデヒドが毒物及び環境問題を有する。それ故に、アルデヒド架橋剤を使用しないホルムアルデヒドを含まないバインダー系が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、本発明は、ホルムアルデヒドを含まないバインダー系及び、ミネラルウール又はリグノセルロース基材を使用して製造される複合材料を提供する。これらのホルムアルデヒドを含まないバインダーは、ヒドロキシポリマー及びヒドロキシポリマー架橋剤の混合物である。もう一つの実施形態では、本発明は、ヒドロキシポリマーとヒドロキシポリマー架橋剤の混合物をミネラルウール又はリグノセルロース基材に付着させること、及び処理した基材を硬化させることによる、これらの複合材料を製造するためのプロセスを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の目的において、複合材料は、ホルムアルデヒドを含まないバインダーで基材を処理することにより形成される製造品又は生成物である。本発明において有用な基材としては、材料、例えばミネラルウール及びリグノセルロース基材などが挙げられる。ホルムアルデヒドを含まないバインダーは、基材に、例えば水溶液の形態で適用し、硬化させて複合材料を形成することができる。
【0008】
本発明の目的において、ミネラルウールとは、合成であっても天然であってもよい、無機物又は金属酸化物から製造された繊維を意味し、それには、ガラス繊維、セラミック繊維、ミネラルウール及びロックウール(ストーンウールとしても公知)が含まれる。ミネラルウールは、絶縁及び濾過に使用される無機物質である。ガラス繊維及びセラミック繊維などの物質は、それらが無機物若しくは金属酸化物で構成されることからミネラルウールである。
【0009】
基材がガラス繊維である場合、製造したガラス繊維複合材料は、ロール又はバットの形状の断熱材又は遮音材あるいはルースフィル断熱材として;屋根材及びフローリング製品のための補強材、例えば天井タイル、床タイルなどとして、プリント基板及び電池隔離板のためのマイクロガラスベースの基材として;フィルターストック及びテープストックのために、かつ、非セメント性及びセメント性の両方における石造コーティングのための補強材のために、有用でありうる。
【0010】
本発明の目的において、「リグノセルロース基材」は、リグノセルロース複合材料、例えば木材、亜麻、麻、及び藁など、を製造するためのリグノセルロース原料と定義され、それには、小麦、米及び大麦藁が含まれるが、製紙に使用されるものなどのセルロース系繊維ではない。一態様では、リグノセルロース基材は、木材である。リグノセルロース基材は、あらゆる適した形及び大きさに加工することができ、それには、様々な粒子又は断片、例えば、チップ、フレーク、ファイバー、ストランド、ウエハー、トリミング屑、削り屑、おが屑、及びそれらの組合せなどが含まれる。バインダーは、リグノセルロース基材の上に付着し、硬化して、リグノセルロース複合材料を形成し得る。本発明のホルムアルデヒドを含まない結合材を用いて製造されるリグノセルロース複合材料としては、パーティクルボード、合板、オリエンテッドストランドボード(OSB)、ウエハーボード、ファイバーボード(中密度及び高密度ファイバーボードを含む)、パラレルストランドランバー(PSL)、ラミネーテッドストランドランバー(LSL)、ラミネーテッドベニアランバー(LVL)、及び類似する製品が含まれる。
【0011】
本発明に従う「ホルムアルデヒドを含まないバインダー」は、少なくとも1つ又はそれ以上のヒドロキシポリマー及び1又はそれ以上のヒドロキシポリマー架橋剤を有する。「ホルムアルデヒドを含まないバインダー」とは、そのバインダーが、総ホルムアルデヒド含量が約100ppm以下である配合剤を含むという点で、そのバインダーは実質的にホルムアルデヒドを含まないことを意味する。本発明の実施形態では、ホルムアルデヒドを含まないバインダーは、ホルムアルデヒドを有する配合剤を全く含まず、その場合、このホルムアルデヒドを含まないバインダーは、「全くホルムアルデヒドを含まないバインダー」と呼ばれる。本発明の目的において、「ヒドロキシポリマー」は、ヒドロキシル基を含有するあらゆる合成ポリマーである。かかるヒドロキシポリマーとしては、例えば、ビニルアルコール官能基を含有するホモポリマー及び共重合体、並びにヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート部分を含有するポリマー、例えば、ヒドロキシアクリル酸エチル又はヒドロキシプロピルメタクリレートなどが挙げられる。しかし、このヒドロキシポリマーは、小分子ポリオール、例えば、ソルビトール、グリセロール、プロピレングリコールなどは含まない。ヒドロキシポリマーの混合物も使用してもよく、系によっては、有益な効果をもたらす可能性がある。
【0012】
本発明において有用な架橋剤は、ヒドロキシポリマー架橋剤と称される。用語「ヒドロキシポリマー架橋剤」及び「架橋剤」は、本開示において同義的に使用されてもよい。本発明の目的において、「ヒドロキシポリマー架橋剤」には、ヒドロキシポリマー又はその誘導体と反応して2又はそれ以上の結合を形成することのできるあらゆる物質が含まれる。これらの結合としては、限定されるものではないが、共有結合、イオン結合、水素結合又はそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0013】
ヒドロキシポリマーは、ヒドロキシポリマー架橋剤上の官能基と反応することのできる多数のヒドロキシル基を有する。有用なヒドロキシポリマー架橋剤の例としては、アジピン酸/酢酸混合無水物、エピクロロヒドリン、トリメタリン酸ナトリウム、トリメタリン酸ナトリウム/トリポリリン酸ナトリウム、アクロレイン、オキシ塩化リン、ポリアミド−エピクロロヒドリン架橋剤(例えば、Hercules,Inc.,Wilmington,Delawareより入手可能なPOLYCUP(登録商標)1884架橋樹脂など)、無水物含有ポリマー(例えば、Herculesより入手可能なSCRIPSET(登録商標)740など)、環状アミド凝縮物(例えば、Omnovaより入手可能なSUNREZ(登録商標)700Cなど)、ジルコニウム錯体とチタン錯体、例えば、アンモニウムジルコニウムカルボネート、カリウムジルコニウムカルボネート、チタンジエタノールアミン錯体、チタントリエタノールアミン錯体、チタンラクテート、チタンエチレングリコラート、アジピン酸ジヒドラジド、ジエポキシド、例えば、グリセロールジグリシジルエーテル及び1,4ブタンジオールジグリシジルエーテル、及びポリエポキシド化合物、例えば、ポリアミン/ポリエポキシド樹脂(1,2−ジクロロエタンとエピクロロヒドリンの反応生成物)、二官能性モノマー、例えば、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート及びエチレングリコールジアクリレート、二無水物、アセタール、多官能性シラン、ホウ素化合物、例えば、ホウ酸ナトリウム又はホウ砂、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0014】
ヒドロキシポリマー架橋剤がヒドロキシポリマー誘導体と反応することは、本発明の範囲内である。例えば、ヒドロキシポリマーがカルボン酸基で官能化される場合、これらのカルボン酸基は、ポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂と反応して架橋系を形成することができる。これらのヒドロキシポリマー架橋剤には、3又はそれ以下のpHでヒドロキシポリマーと反応する必要のあるカルボン酸基を含有するポリマーは除外される。この種類の架橋剤に必要とされる低いpHは、装置において腐食の問題を引き起こすので好ましくない。
【0015】
本発明に従うヒドロキシポリマー架橋剤には排出の問題がない。本明細書に定義されるように、「排出問題」とは、硬化プロセス中の「相当な量」の揮発性成分排出をさす。本発明に関して、相当な量は、揮発性成分が架橋剤の25モル%より多い場合として定義される。排出問題の例としては、アンモニウムにより中和されたカルボキシレート官能基が架橋系に使用されている場合のアンモニアの排出(例えば、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2005/0202224号を参照のこと)が挙げられ、この場合、カルボキシレート官能基は、アンモニアで25モル%超まで中和される。
【0016】
その上、アルデヒドを含有する物質は毒性の問題を有する傾向があるため、ヒドロキシポリマーとヒドロキシポリマー架橋剤の両方が、グリオキサールなどのアルデヒド官能基を含まない(例えば、その各々の全文が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2007/0083004号及び同第2007/0167561号を参照のこと)。
【0017】
一実施形態では、本発明に従う架橋剤は、中性前後のpHのヒドロキシポリマーと反応する。さらなる実施形態では、これらの架橋剤は周囲温度でヒドロキシポリマーと反応せず、高温下、例えば100℃超で活性化され得る。架橋剤とヒドロキシポリマーとの間の反応が周囲温度で起こらないことにより、この水性結合材系に長いポットライフがもたらされるが、これは、複合材料製造中の利点である。有用な架橋剤は、バインダーに長期安定性をもたらす不可逆的結合を形成することができる。有用な架橋剤としては、アジピン酸/酢酸混合無水物、トリメタリン酸ナトリウム、トリメタリン酸ナトリウム/トリポリリン酸ナトリウム、ポリアミド−エピクロロヒドリン架橋剤、ポリアミン/ポリエポキシド樹脂、環状アミド凝縮物、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、アンモニウムジルコニウムカルボネート、カリウムジルコニウムカルボネート、チタンジエタノールアミン錯体、チタントリエタノールアミン錯体、チタンラクテート、チタンエチレングリコラート、ホウ酸ナトリウム、二無水物及び/又は多官能性シランが挙げられる。
【0018】
本発明のホルムアルデヒドを含まないバインダーは、多数の方法で基材に適用することができる。基材がガラス繊維であるならば、バインダーは一般に、形成されたガラス繊維マットの全体にわたって均一にバインダーを分布させるために適したスプレーアプリケーターを用いて、水溶液の形態で適用される。水溶液の典型的な固形物は、約1〜約50%であってもよい。一態様では、固形分は、約2〜約40%であってもよい。もう一つの態様では、固形分は、バインダー水溶液の約5〜約25重量%であってもよい。バインダー溶液をスプレーする場合、バインダー溶液の粘度が、バインダー溶液中の固形物の最大レベルを決定しうる。また、バインダーは、当分野で公知のその他の手段、例えば、エアレススプレー、エアスプレー、パジング、含浸及びロール塗布などにより適用されてもよい。
【0019】
複合材料は、バインダーが基材に適用されて硬化されると形成される。本開示の目的において、「硬化」とは、ヒドロキシポリマーと架橋剤との間の架橋反応を促進することのできるあらゆるプロセスをさす。硬化は一般に、温度と圧力の組合せによって達成される。硬化を達成する簡単な方法は、バインダーと基材を高温のオーブンの中に入れることである。一般に、硬化オーブンは、110℃〜325℃の温度で動作する。本発明のホルムアルデヒドを含まないバインダー系の一つの利点は、それが比較的低い温度、例えば200℃未満の温度で硬化することである。もう一つの態様では、このバインダー系は、150℃未満で硬化する。この複合材料は、約5秒〜約15分で硬化することができる。もう一つの態様では、この複合材料は、約30秒〜約3分で硬化することができる。
【0020】
バインダーは、水溶液の形態で適用することができる。バインダー水溶液のpHは約3より大きい。一態様では、バインダー溶液のpHは、約3〜約12である。もう一つの態様では、バインダー溶液のpHは、約4〜約10である。なお一層さらなる態様では、バインダー溶液のpHは、約6〜約9である。硬化温度及び圧力は、架橋剤の種類及び量、用いる触媒の種類及びレベル並びに基材の性質に依存する。例えば、断熱材と比較して、より大きい圧力が、MDFボードの製造に利用されている。
【0021】
ホルムアルデヒドを含まないバインダー溶液中の架橋剤の量は、架橋剤の種類、及びそのバインダーが中で使用されている用途によって決まる。ホルムアルデヒドを含まないバインダー中の架橋剤の重量%は、約0.1〜約70%であってもよい。もう一つの態様では、それは約1〜約50%であってもよい。さらに別の態様では、架橋剤の重量%は、約2〜約40%であってもよい。
【0022】
任意選択の触媒をこのバインダー配合物に添加して、バインダーをより速い速度又はより低い温度又は中性に近いpH範囲で硬化させることができる。当業者であれば、選択される触媒が、使用する架橋剤並びにヒドロキシポリマーによって決まることを理解するであろう。同様に、必要な触媒の量は、使用する架橋剤並びにヒドロキシポリマーによって決まる。
【0023】
添加剤をホルムアルデヒドバインダーに添加してもよい。本発明の目的において、添加剤は、バインダーの性能を改良するためにバインダーに添加されてもよいあらゆる配合剤として定義される。これらの添加剤には、耐湿性、耐水性又は耐薬品性、並びにその他の環境上の影響に対する抵抗性を付与する配合剤;及び、耐蝕性を付与する添加剤並びに基材にバインダーを付着させることを可能にする添加剤が含まれてもよい。例えば、複合材料が、床仕上げ材の製造で使用されるガラス繊維マットである場合、そのガラス繊維マットは床仕上げ材に付着することが必要でありうる。適した疎水性添加剤はこの表面付着に役立ちうる。これらの添加剤の例としては、限定されるものではないが、バインダーに添加して官能性例えば腐食阻害などをもたらすことのできる材料、湿気及び水の撥水性(moisture and water repellency)を与えるための疎水性添加剤、ガラスの浸出を減少させるための添加剤、剥離剤、pHを低下させるための酸、抗酸化剤/還元剤、乳化剤、染料、色素、オイル、充填剤、着色剤、硬化剤、移行防止助剤(anti-migration aids)、殺生物剤、抗真菌剤、可塑剤、ワックス、消泡剤、カップリング剤、熱安定剤、難燃剤、酵素、湿潤剤、及び滑沢剤が挙げられる。これらの添加剤は、バインダーの総重量の約20重量%以下であってもよい。
【0024】
基材がガラス繊維である場合、ヒドロキシポリマーは、シラン若しくはシラノール官能性をヒドロキシポリマーに導入する試薬で誘導体化されてもよい。逆に、添加剤、例えば、小分子シランなどを硬化前にバインダー配合物に導入してもよい。この小分子シランは、該シランの有機部分が硬化条件下でヒドロキシポリマーと反応し、一方、シラン若しくはシラノール部分がガラス繊維基材と反応するように選択される。これによりバインダーと基材との間に化学結合が導入され、その結果、より大きな強度及びより良好な長期性能がもたらされる。
【0025】
好ましい添加剤には、防湿性、耐湿性及び耐水性をもたらす「疎水性添加剤」が含まれる。本発明の目的において、疎水性添加剤には、あらゆる撥水材料が含まれ得る。それは、疎水性エマルジョンポリマー、例えば、スチレン−アクリレート、エチレン−酢酸ビニル、ポリシロキサン、フッ素化ポリマー、例えば、ポリテトラフルオロエチレンエマルジョン、ポリエチレンエマルジョン及びポリエステルであってもよい。その上、それは、シリコーン又はシリコーンエマルジョン、ワックス若しくは乳化ワックス又は界面活性剤であってもよい。界面活性剤はそれ自身が疎水性をもたらしてもよいし、界面活性剤を用いて疎水性不水溶性材料を供給してもよい。界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性又は両性であってもよい。一態様では、界面活性剤は、非イオン性及び/又はアニオン性である。非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルコールエトキシレート、エトキシル化ポリアミン及びエトキシル化ポリシロキサンが挙げられる。陰イオン性界面活性剤としては、アルキルカルボキシレート及びアルキルアリールスルホネート、α−オレフィンスルホネート及びアルキルエーテルスルホネートが挙げられる。
【実施例】
【0026】
本発明を以下の実施例によってこれからさらに詳細に説明する。
【0027】
実施例1
ポリビニルアルコール(CELVOL(登録商標)103、Celanese,Dallas,Texasより入手可能)及びポリアミド−エピクロロヒドリン(Hercules,Inc.,Wilmington,Delawareより入手可能なPOLYCUP 1884)のバインダー溶液を、ガラス繊維マット用のバインダーとしてpH8で試験した。20gのCELVOL(登録商標)103を、80gの水中でスラリー状にした後、90℃で2時間加熱してポリビニルアルコールを溶解させた。ポリビニルアルコールを、ポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂と下表に示す比率で混合した。次に、このバインダー溶液を希釈して固形分5%とした。ガラスマイクロファイバーフィルターペーパーシート(20.3×25.4cm、カタログ番号66227、Pall Corporation.,Ann Arbor,Michigan)を、バインダー溶液に浸漬し、ロールパダー(roll padder)に通した。次に、コーティングされたシートを175℃にて10分間オーブンで硬化させた。適用したバインダーの量は、一般にフィルターペーパーの重量の16%であった。硬化したシートを、中心の幅が1cmの犬の骨の形をしたクーポンに切断し、水に60分間浸した。次に、自己識別型テンションロードセル(self identifying tension load cell)を装備したInstronを用いて引張り強度を測定した。
【表1】

【0028】
上の表中のデータは、本発明に従うヒドロキシポリマー架橋剤によって架橋したポリビニルアルコール系が、優れた引張り強度を有することを示す。これは、pH8で達成され、腐食問題を起こしやすい低いpH例えば3などでは達成されない。さらに、実施例1のバインダーに関連する排出の問題もない。
【0029】
実施例2
ヒドロキシポリマーバインダー系の有効性は、下の試験手順を用いて測定される。
1.バインダー(Ultimate)を有する市販のグラスウールを得、小片に切断した。およそ15〜20gのグラスウールを、アルミウム製鍋の中で秤量し、450℃のオーブンに少なくとも3時間、又はその重量が一定になるまで入れ、バインダーを除去した(重量減少は5〜7%前後のはずである)。グラスウールの色は黄色から灰色に変わった。
2.グラスウール繊維を、500gのアルミナボールの入っている1000mLのジャーの中に入れた。このジャーをボールミルの中に約2分間入れることにより、グラスウールから粉末を製造した。この繊維は、100倍の倍率を用いる顕微鏡で目に見えた。
3.次に、粉末を篩い分けした。
4.バインダー溶液を、100mLビーカー中で実施例1で加熱処理した4gのポリビニルアルコールと10gの上記で調製した粉末とを混合することにより調製し、十分に混合し、結果として加工可能であるが流れないペーストがもたらされた。
5.ごく一部のペーストから、コルクドリル(cork drill)の後部を用いて5mmのペレットを製造した。これらのペレットを、500Wの電子レンジに入れ、20分間乾燥させることにより硬化させた。あるいは、これらのペレットを150℃のオーブン中2時間で硬化させてもよい。
6.硬化したペレットを、100mlの水の入ったプラスチック製ボトルの中に入れた。次に、このボトルを70℃に設定した水浴中に入れた。ペレットをボトルから取り出し、最初にペーパータオルで乾かし、次に、再度100℃のオーブン中で2時間乾燥させることにより、サンプルを24時間おきに試験した。ペレットが強固で、指の間で押しつぶすことができない場合は、そのバインダー系はさらに効果的であるとみなされる。この試験でペレットがより長く存続するほど、そのバインダー系の性能はより優れている。
【0030】
標準的なホルムアルデヒドに基づくバインダー(フェノール樹脂)は、この試験において1〜4日存続する。優れたバインダー系は11日まで存続しうる。結合性能が標準未満であるならば、サンプルは直ちに分解する。
【0031】
架橋剤によって架橋した多数のヒドロキシポリマーを、上に詳述されるプロトコールに従って試験した。これらのサンプルに関するデータを下の表に列挙する。
【表2】

【0032】
表中のデータは、ホルムアルデヒドに基づくバインダー系から製造したペレットがこの試験において1〜4日間存続することから、本発明のヒドロキシポリマーがホルムアルデヒドに基づくバインダー系と同様に機能することを示す。その上、本発明に従うヒドロキシポリマー系は、中性のpH範囲で硬化し、排出の問題が全くなく、アルデヒドに基づく架橋剤を利用しない。
【0033】
本発明を詳細に説明及び例証してきたが、これは単なる説明及び例であって、制限ととられるべきでないことは当然理解される。本発明の精神及び範囲は、以降に示される請求項の用語によってのみ制限される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又はそれ以上のヒドロキシポリマー及び1又はそれ以上のヒドロキシポリマー架橋剤を含む、ホルムアルデヒドを含まないバインダーと
前記バインダーで処理した基材とを含む、複合材料。
【請求項2】
前記基材が、ミネラルウール又はリグノセルロース基材である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記基材が、ミネラルウールであり、前記ミネラルウールが、繊維ガラス、セラミック繊維、ストーンウール又はロックウールである、請求項2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記基材が、リグノセルロースであり、前記リグノセルロース基材が木材である、請求項2に記載の複合材料。
【請求項5】
前記ヒドロキシルポリマーが、ビニルアルコール官能基を含有するホモポリマー及び共重合体、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート部分を含有するポリマー、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の複合材料。
【請求項6】
前記ヒドロキシポリマーがポリビニルアルコールである、請求項1に記載の複合材料。
【請求項7】
前記ヒドロキシポリマー架橋剤が、アジピン酸/酢酸混合無水物、エピクロロヒドリン、トリメタリン酸ナトリウム、トリメタリン酸ナトリウム/トリポリリン酸ナトリウム、及びオキシ塩化リン、ポリアミド−エピクロロヒドリン架橋剤、無水物含有ポリマー、環状アミド凝縮物、ジルコニウム錯体とチタン錯体、アジピン酸ジヒドラジド、ジエポキシド化合物とポリエポキシド化合物、二官能性モノマー、二無水物、アセタール、多官能性シラン、ホウ素化合物及びそれらの組合せから選択される、請求項1に記載の複合材料。
【請求項8】
前記ホルムアルデヒドを含まないバインダー中の前記ヒドロキシポリマー架橋剤の重量%が、前記バインダーの重量に基づいて約0.1〜約70%である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項9】
前記ホルムアルデヒドを含まないバインダーが、添加剤をさらに含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項10】
前記添加剤が、疎水性添加剤である、請求項9に記載の複合材料。
【請求項11】
前記バインダーの重量%が、前記複合材料の総重量に基づいて50重量%未満である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項12】
前記ヒドロキシ架橋剤及び前記ホルムアルデヒドを含まないバインダーの前記ヒドロキシポリマーが、アルデヒドを含まない、請求項1に記載の複合材料。
【請求項13】
硬化した場合、排出される揮発性成分の量が、前記架橋剤の約25モル%以下である、請求項12に記載の複合材料。
【請求項14】
ホルムアルデヒドを含まないバインダーを1又はそれ以上のヒドロキシポリマー及び1又はそれ以上のヒドロキシポリマー架橋剤から調製する段階と、
前記ホルムアルデヒドを含まないバインダーを基材の上に付着させる段階と
前記基材を硬化させる段階とを含む、複合材料を形成する方法。
【請求項15】
前記基材が、ミネラルウール又はリグノセルロース基材である、請求項14に記載の複合材料を形成する方法。
【請求項16】
前記ホルムアルデヒドを含まないバインダー中の前記ヒドロキシポリマー架橋剤の重量%が、約0.1〜70%である、請求項14に記載の複合材料を形成する方法。
【請求項17】
前記バインダーを基材に水溶液としてさらに適用する段階を含み、前記水溶液のpHが3より大きい、請求項14に記載の複合材料を形成する方法。

【公表番号】特表2011−506732(P2011−506732A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538725(P2010−538725)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067871
【国際公開番号】WO2009/080697
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(390009612)アクゾ ノーベル ナムローゼ フェンノートシャップ (132)
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel N.V.
【Fターム(参考)】