熱硬化性樹脂の分解処理装置および該樹脂の分解処理方法
【課題】熱硬化性樹脂中に無機固形物や高粘度樹脂などの不純物が混在している場合であっても、分解処理を連続的・安定的に行うことが可能な分解処理装置および分解処理方法を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂を粉砕しながら供給する供給機と、供給された前記熱硬化性樹脂を加熱しながら加圧する押出機と、押出機内で熱硬化性樹脂が加熱・加圧される領域よりも下流側の領域に接続され温度調整した薬剤を注入する薬剤注入機構と、熱硬化性樹脂を分解処理する分解反応管12と、分解反応管内の圧力を調整する圧力調整機構13と、分解処理された分解生成物を回収する分解生成物回収機構15とを具備し、圧力調整機構は、分解生成物の流入方向に摺動可能なピストン50を具備し、分解生成物の平均流入方向のベクトルと頭頂面の法線ベクトルとのなす角が100°〜160°であることを特徴とする。
【解決手段】熱硬化性樹脂を粉砕しながら供給する供給機と、供給された前記熱硬化性樹脂を加熱しながら加圧する押出機と、押出機内で熱硬化性樹脂が加熱・加圧される領域よりも下流側の領域に接続され温度調整した薬剤を注入する薬剤注入機構と、熱硬化性樹脂を分解処理する分解反応管12と、分解反応管内の圧力を調整する圧力調整機構13と、分解処理された分解生成物を回収する分解生成物回収機構15とを具備し、圧力調整機構は、分解生成物の流入方向に摺動可能なピストン50を具備し、分解生成物の平均流入方向のベクトルと頭頂面の法線ベクトルとのなす角が100°〜160°であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂を分解する技術に関し、特に発泡ポリウレタンなどの熱硬化性樹脂の廃棄物を分解処理する装置および熱硬化性樹脂廃棄物の分解処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から廃棄物処理に掛かる手間と費用が高くなってきており、廃棄するだけでなく資源をリサイクル利用しようという気運が高まっている。熱可塑性樹脂は加熱すれば流動性を増して再度成形可能であることから、マテリアルリサイクルが進みつつある。一方、熱硬化性樹脂は、分子の三次元的なネットワークにより単純に加熱しても流動化が生じず再成形が困難であることから、マテリアルリサイクルするための分解処理が必要である。
【0003】
例えば、熱硬化性樹脂の一種である発泡ポリウレタンは、しばしば断熱材として利用され、嵩密度が0.1 g/cm3程度以下と質量に対して容積が大きい。また、各気泡が独立していることから機械強度が高い。そのため、マテリアルリサイクルの前段としての分解処理において、まず減容の方法が重要な課題である。
【0004】
特許文献1には、圧力調整機構を備えているかまたは備えていない押出機、特に2軸スクリュー型押出機に対して発泡ポリウレタン付樹脂の破砕品を供給し、該押出機中で高温・高圧の処理液および/または処理液蒸気と一定の温度・圧力条件下で接触させるとともに溶融・混練して、発泡ポリウレタンを分解・微細化して溶融樹脂中へ均一微細分散し、吐出ノズルから押出すことによる発泡ポリウレタン付樹脂の連続再生処理法が開示されている。特許文献1によると、発泡ポリウレタンが貼り合わされた樹脂の従来の再生処理方法に比べて、処理条件や処理工程が簡単な方法で、連続的かつ安定的に発泡ポリウレタン付樹脂を再生することができるとされている。また、そのようにして得られた再生品を用いてインスツルメントパネルを製造した場合、新品製品と比べて外観(表面平滑性)や物性などの低下が極めて少ないものが得られるとされている。
【0005】
また、特許文献2には、熱硬化性樹脂を液状分解剤と混合して連続的に分解する方法であって、粉末状の熱硬化性樹脂と液状分解剤とのスラリー状混合物をスクリュー式の押出機から配管を介して熱分解器に連続的に供給する熱硬化性樹脂の熱分解方法が記載されている。特許文献2によると、粉末状の熱硬化性樹脂と液状分解剤との混合を押出機(特に2軸スクリュー式の押出機)内で行うので、それらを予め混合するミキサー等の混合手段を設ける必要がなく、熱分解システムを簡略化できると共に、効率よく且つスムーズにスラリー状混合物を配管に押し出すことができるとされている。また、スラリー状混合物の液成分の作用によりシール性を確保できるため、熱分解器において熱硬化性樹脂を酸素不存在下で連続的に熱分解してオリゴマー等を生成することができるとされている。
【0006】
また、特許文献3には、材料供給用押出機を用いて高分子化合物を押出しながら薬剤を該材料供給用押出機のシリンダーに注入し、該高分子化合物と該薬剤を該材料供給用押出機のシリンダーの中で混練しながら、高温高圧の反応容器の中へ該高分子化合物と該薬剤の混合物を吐出して反応させ、高分子化合物の処理物を生成する方法において、材料供給用押出機としてL/D=25以上の押出機を用い、さらに該薬剤の注入口が材料供給用押出機シリンダーの減速機側の終端からL/D=20よりも先端側にあることを特徴とする高分子化合物の処理方法が記載されている。特許文献3によると、材料供給用押出機の上流側のホッパーヘガスが逆流することを防ぎつつ、高分子化合物と薬剤を材料供給用押出機のシリンダーの中で混練しながら、高温高圧の反応容器の中へ高分子化合物と該薬剤の混合物を押出して反応させ、高分子化合物の処理物を生成する方法とその装置を提供することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−20023号公報
【特許文献2】特開2007−204516号公報
【特許文献3】特開2005−330365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の処理方法は、処理のための反応時間を十分に確保できないという懸念がある。言い換えると、十分な反応時間を確保しようとすると押出機のスクリュー長さを十分に長くする必要が生じ、処理装置が過剰に大型化してしまう問題が生じる。一方、特許文献2に記載の処理方法では、押出機に取り付けられた熱分解槽で処理することにより反応時間を確保している。ただし、この処理方法は、実質的に熱分解槽におけるバッチ処理であり、スクリュー式の押出機を利用したことによる連続供給の利点は活かされていない。
【0009】
また、特許文献3に記載の処理方法は、押出機に流通式反応容器を取り付けることで反応時間をコントロールし、安定した連続処理を可能にしている。しかしながら、処理しようとする熱硬化性樹脂中に、無機固形物(例えば、金属粉や酸化物粉)や非常に高い粘度を有する熱可塑性樹脂などの不純物が混在している場合、それらの不純物が押出機の吐出口に詰まって安定した連続処理が困難になる可能性が考えられる。
【0010】
従って、本発明の目的は、熱硬化性樹脂に対して高温高圧場を利用して分解処理する装置および方法において、処理しようとする熱硬化性樹脂中に無機固形物や高粘度樹脂などの不純物が混在している場合であっても、該熱硬化性樹脂の分解反応時の圧力を調整しながら分解処理を連続的に行い、安定した生成物を得ることが可能な分解処理装置および該樹脂の分解処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(I)本発明の1つの態様は、上記目的を達成するため、高温高圧場を利用して熱硬化性樹脂を連続的に分解処理する装置であって、処理しようとする前記熱硬化性樹脂を粉砕しながら供給する供給機と、供給された前記熱硬化性樹脂を加熱しながら加圧する押出機と、前記押出機内で前記熱硬化性樹脂が加熱・加圧される領域よりも下流側の領域に接続され温度調整した薬剤を注入する薬剤注入機構と、前記押出機の下流に配設され前記熱硬化性樹脂を分解処理する分解反応管と、前記分解反応管の吐出口に配設され該分解反応管内の圧力を調整する圧力調整機構と、前記圧力調整機構の下流に配設され分解処理された分解生成物を回収する分解生成物回収機構とを具備し、
前記圧力調整機構は、前記分解生成物の流入方向に摺動可能なピストンを具備し、前記圧力調整機構に流入してきた前記分解生成物が前記ピストンの頭頂面に直線的に流れ当たるようになっており、前記分解生成物の平均流入方向のベクトルと前記頭頂面の法線ベクトルとのなす角が100°以上160°以下であることを特徴とする熱硬化性樹脂の分解処理装置を提供する。
【0012】
なお、本発明において、熱硬化性樹脂の分解処理とは、該熱硬化性樹脂の原料に戻すことを言う。熱硬化性樹脂の原料としては、ワックスやオリゴマーが用いられる場合も有り、モノマーに限定されるものではない。また、本発明において、高温高圧場とは、100℃以上の温度でかつ熱硬化性樹脂に注入する薬剤(例えば、有機溶剤、無機水溶液、水)のその温度における蒸気圧以上に加圧した状態、または、薬剤の臨界温度以上でかつ1 MPa以上の圧力の状態をいう。さらに、ピストンの頭頂面は、単一の平面に限定されるものではなく、曲面または階段状面であってもよいし、それら(平面、曲面、階段状面)の組み合わせであってもよい(詳細は後述する)。
【0013】
本発明は、上記の本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置に対して以下のような改良や変更を加えることができる。
(i)前記圧力調整機構は、前記ピストンの摺動方向における前記ピストンの前記頭頂面と反対側に、前記ピストンを前記摺動方向の前記分解反応管の側に押し出すための弾性部材と、前記弾性部材の押圧力を調整するための押圧力調整機構とを具備している。
(ii)前記ピストンは、該ピストンの摺動可能範囲を規定するためのストッパ構造を有している。
(iii)前記圧力調整機構は、前記ピストンの摺動方向が水平方向となるように設置され、前記圧力調整機構と前記分解生成物回収機構とをつなぐ回収配管は、該回収配管内を通る前記分解生成物が前記圧力調整機構から自然落下するように配設されている。
(iv)前記ピストンの前記頭頂面に、前記分解生成物を整流したい方向の溝が形成されている。
(v)前記熱硬化性樹脂は、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、またはこれらの樹脂と無機固形物との混合物である。
【0014】
(II)本発明の他の1つの態様は、上記目的を達成するため、高温高圧場を利用して熱硬化性樹脂を連続的に分解処理する方法であって、処理しようとする前記熱硬化性樹脂を供給機内で粉砕しながら供給する工程と、前記供給機から供給された前記熱硬化性樹脂を押出機内で加熱しながら加圧する工程と、前記押出機内における前記熱硬化性樹脂が加熱・加圧される領域よりも下流側の領域で温度調整した薬剤を注入・混合する工程と、前記押出機の下流に水平に配設された分解反応管内において、前記分解反応管の吐出口に配設された圧力調整機構によって該分解反応管内の圧力を調整しながら前記熱硬化性樹脂を分解反応処理する工程と、分解反応処理された分解生成物を回収する工程とを有し、
前記圧力調整機構は、前記分解生成物の流入方向に摺動可能なピストンを具備し、前記圧力調整機構に流入してきた前記分解生成物が前記ピストンの頭頂面に直線的に流れ当たるようになっており、前記分解生成物の平均流入方向のベクトルと前記頭頂面の法線ベクトルとのなす角が100°以上160°以下であり、前記分解反応管内の圧力に応じて前記ピストンが摺動することにより該分解反応管内の圧力を調整することを特徴とする熱硬化性樹脂の分解処理方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、上記の本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理方法に対して以下のような改良や変更を加えることができる。
(vi)前記圧力調整機構は、前記ピストンの摺動方向における前記ピストンの前記頭頂面と反対側に、前記ピストンを前記摺動方向の前記分解反応管の側に押圧するための弾性部材と、前記弾性部材の押圧力を調整するための押圧力調整機構とを具備しており、前記分解反応管内の圧力を0.5 MPa以上3 MPa以下の範囲で調整している。
(vii)前記熱硬化性樹脂は、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、またはこれらの樹脂と無機固形物との混合物である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、処理しようとする熱硬化性樹脂中に無機固形物や高粘度樹脂などの不純物が混在している場合であっても、該熱硬化性樹脂の分解反応時の圧力を調整しながら連続的に分解処理することを可能とし、安定した分解生成物を得ることを可能とする分解処理装置および該樹脂の分解処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置の1例を示す断面模式図である。
【図2A】本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置における圧力調整機構の構造の一例を示す断面模式図である。
【図2B】図2Aに示した圧力調整機構のピストン頭部の変形例を示す断面模式図である。
【図3A】本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置における圧力調整機構の動作の1例(ピストンが全閉している状態)を示す断面模式図である。
【図3B】本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置における圧力調整機構の動作の他の1例(ピストンが半開している状態)を示す断面模式図である。
【図3C】本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置における圧力調整機構の動作の他の1例(ピストンが全開している状態)を示す断面模式図である。
【図4】本発明に係る分解生成物回収機構の構成の1例を示す断面模式図である。
【図5】本発明の実施例1における分解反応管内の圧力プロファイルを示すチャートである。
【図6】本発明の圧力調整機構と異なる構造を有する圧力調整機構の1例(比較例1)を示す断面模式図である。
【図7】比較例1における分解反応管内の圧力プロファイルを示すチャートである。
【図8】本発明の圧力調整機構と異なる構造を有する圧力調整機構の他の1例(比較例2)を示す断面模式図である。
【図9】比較例2における分解反応管内の圧力プロファイルを示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る分解処理装置および分解処理方法について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はここで取り上げた実施形態に限定されることはなく、要旨を変更しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。また、同等の機構を有する部材・部位においては、同じ符号を用いて重複する説明を省略することがある。
【0019】
[分解処理装置]
図1は、本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置の1例を示す断面模式図である。図1に示したように、本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置は、大別すると、処理しようとする熱硬化性樹脂Pを粉砕しながら供給する供給機10と、供給された熱硬化性樹脂を加熱しながら加圧する押出機11と、押出機11の末部領域に接続され温度調整した薬剤を注入する薬剤注入機構16と、押出機11の下流に配設され熱硬化性樹脂を分解処理する分解反応管12と、分解反応管12の吐出口に配設され該分解反応管12内の圧力を調整する圧力調整機構13と、圧力調整機構13の下流に配設され分解処理された分解生成物を回収する分解生成物回収機構15とから構成される。以下では、より詳細に説明する。
【0020】
(供給機および供給工程)
供給機10には、処理しようとする熱硬化性樹脂Pを投入するためのホッパ10hが設けられている。ホッパ10hに熱硬化性樹脂Pを投入すると、熱硬化性樹脂Pは供給機10内で粉砕されて押出機11に供給される(供給工程)。供給機10内には攪拌器(図示せず)が設けられていることが好ましく、それにより粉砕された熱硬化性樹脂Pの大きさを均等化することができる。
【0021】
押出機を用いて一般的なポリマー原料(例えば、ペレット状の中実原料)の押し出しを行おうとする場合、必ずしも供給機を用いる必要はない。しかしながら、発泡ポリマーのように嵩密度が小さくブリッジしやすい材料を扱う場合には、供給機10を用いて粉砕物の大きさを整えると共にブリッジしないように制御しながら押出機11に供給することが好ましい。供給機10としては、例えば、スクリューフィーダ、テーブルフィーダ、サークルフィーダなどを好適に用いることができる。また、供給量を測定して供給速度を自動調整するロスインウェイト方式が好ましい。
【0022】
(押出機および加熱加圧工程)
押出機11の形式に特段の限定はなく、単軸押出機の他、二軸押出機や多軸押出機であってもよい。押出機11は、粉砕された熱硬化性樹脂Pが供給され加熱される供給ゾーンZaと、熱硬化性樹脂Pが加熱されながら加圧される加圧ゾーンZbと、加熱加圧されて溶融した熱硬化性樹脂Pを充満させてシールのようにするシールゾーンZcとに分けられる。供給ゾーンZaには、供給機10からの熱硬化性樹脂Pを受けるホッパ11hが設けられている。なお、ホッパ11hにおける熱硬化性樹脂Pによるブリッジを防ぐためには、押出機11のシリンダ11cに設けられた開口部11a(ホッパ11hの底部の開口部)の50%超を熱硬化性樹脂Pが塞がないように熱硬化性樹脂Pの供給を制御することが望ましい。
【0023】
供給された熱硬化性樹脂Pは、押出機11のモータ21によって駆動されるスクリュー11sの回転により押出機11内に取り込まれ、供給ゾーンZaで加熱溶融されながら加圧ゾーンZbに送り出される。送り出された熱硬化性樹脂Pは、加圧ゾーンZbで加熱・加圧されながら更に送り出され、溶融した熱硬化性樹脂PでシールゾーンZcを形成する。1例として熱硬化性樹脂Pがポリウレタンである場合、供給ゾーンZaの温度は100〜170℃が好ましく、加圧ゾーンZbの温度は130〜200℃が好ましく、シールゾーンZcの温度は150〜210℃が好ましく、供給ゾーンZaからシールゾーンZcに掛けて温度が高くなっていくようにする。また、圧力としては0.5〜10 MPaが好ましく、Zbでの滞留時間としては5〜30分間が好ましい。なお、シールゾーンZcの末部にシールリング(図示せず)を設けてもよい。以上が加熱加圧工程である。
【0024】
(薬剤注入機構および薬剤注入混合工程)
押出機11のシールゾーンZcの下流側(押出機11の吐出口11dの近く)には、薬剤注入口11iが設けられており、温度調整した薬剤を注入する薬剤注入機構16が接続されている。薬剤注入機構16は、薬剤タンク17と、薬剤タンク17と薬剤注入口11iとを結ぶ薬剤配管18と、薬剤配管18に接続され薬剤を加圧して供給する薬剤ポンプ19と、薬剤配管18内の薬剤を加熱するヒータ20とからなる。薬剤配管18には、溶融した熱硬化性樹脂Pが逆流してこないように、逆止弁(図示せず)を設けることが望ましい。
【0025】
薬剤注入機構16により、温度調整した薬剤が注入され押出機11内で熱硬化性樹脂Pと混合される。薬剤を温度調整してから注入することにより、熱硬化性樹脂Pの温度変動を最小限に抑えることができ、分解反応をスムーズに進行させることができる。また、薬剤注入口11iの上流側にはシールゾーンZcが形成されていることから、注入された薬剤や薬剤と熱硬化性樹脂Pとの混合物が押出機11の上流側へ逆流することを防ぐことができる。以上が薬剤注入混合工程である。
【0026】
薬剤とは、熱硬化性樹脂Pの分解反応に利用される物質であり、常温常圧で液体のものを言う。例えば、有機溶媒としては、一価のアルコール(メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、i-ペンチルアルコールなど)、二価のアルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールなど)、三価のアルコール(グリセリンなど)、その他の多価アルコール、アミン類(エタノールアミン、プロピルアミンなど)、植物油、ケトン類(アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル類(アセト酢酸エチルなど)、アルデヒド類(アセトアルデヒドなど)、エーテル類(ジエチルエーテルなど)が挙げられる。水溶液としては、酸性水溶液(硝酸、塩酸、酢酸など)、アルカリ性水溶液(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)が挙げられる。また、反応系によっては水も薬剤として利用される。
【0027】
(分解反応管、圧力調整機構および分解反応工程)
押出機11の下流(吐出口11dの下流)には、薬剤と混合された熱硬化性樹脂Pを分解処理する分解反応管12が接続され、分解反応管12の吐出口12dには、分解反応管12内の圧力を調整する圧力調整機構13が設けられている。上述の薬剤注入口11iから分解反応管12の吐出口12dまでの領域が反応ゾーンZdとなる。本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置は、反応ゾーンZdを有することにより十分な分解反応時間を確保できることから、分解生成物を安定して生成することができる。
【0028】
分解反応管12は、円筒状の構造を有し、その内径が押出機11のスクリュー11sの外径の1〜3倍であることが好ましい。細過ぎると反応ゾーンZd内の滞留時間が長くなり過ぎて分解反応時間の制御が困難になる。一方、太過ぎると反応ゾーンZd内の滞留時間に分布が生じ、分解反応の均一性が低下する。1例として熱硬化性樹脂Pがポリウレタンである場合、反応ゾーンZdの温度は200〜300℃が好ましく、シールゾーンZcよりも温度が高くなるようにする。また、分解反応時間(反応ゾーンZd内の滞留時間)としては5〜30分間が好ましい。
【0029】
また、前述したように、処理しようとする熱硬化性樹脂P中に無機固形物(例えば、金属粉や酸化物粉)や非常に高い粘度を有する熱可塑性樹脂などの不純物が混在している場合、それらの不純物が分解反応管12の吐出口12dに詰まって安定した連続処理が困難になる可能性がある。そこで、本発明においては、圧力調整機構としてピストンバルブを用い、熱硬化性樹脂Pの圧力に応じて流路の開閉度を迅速に調整する。これにより、分解反応管12内の圧力を一定の範囲内に保つことができ、所望する分解生成物を安定して得ることができる。以下に、本発明に係る圧力調整機構について詳述する。
【0030】
図2Aは、本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置における圧力調整機構の構造の一例を示す断面模式図である。図2Aに示したように、本発明における圧力調整機構13は、分解生成物の流入方向に摺動可能なピストン50を具備し、ピストン50はピストン頭部51aとピストン尾部52と連結棒53とから構成されている。圧力調整機構13に流入してきた分解生成物がピストン頭部51aの頭頂面51tに直線的に流れ当たるように、ピストン50は配設されている。分解生成物の平均流入方向のベクトルと頭頂面51tの法線ベクトルとのなす角αは、100°〜160°に設定されている。端的に言うと、本発明の圧力調整機構13は、分解生成物の流入圧力に応じてピストン50が摺動し、バルブ開度が変化する構造となっている。
【0031】
前述したように、本発明におけるピストンの頭頂面は、単一の平面に限定されるものではなく、曲面または階段状面であってもよいし、それら(平面、曲面、階段状面)の組み合わせであってもよい。図2Bは、図2Aに示した圧力調整機構のピストン頭部の変形例を示す断面模式図である。図2Bに示したように、本発明において、ピストンの頭頂面の法線ベクトルとは、分解生成物の平均流入方向と対面するピストン頭部51a〜51fの頭頂点A(最突出部の点A)とピストン頭部51a〜51fの傾斜領域の末部の点Bとを結ぶ線Cに対する法線ベクトルと定義する。言い換えると、線Cは、該傾斜領域の平均斜面と考えることができる。なお、ピストン頭部51e,51fのように、分解生成物の平均流入方向に対して垂直な面が頭頂部に存在し、頭頂点として2点以上を考えられる場合は、頭頂面のうち点Bに最も近い点を頭頂点Aと定義する。
【0032】
また、本発明において、分解生成物の平均流入方向のベクトルと頭頂面51tの法線ベクトルとのなす角αを100°〜160°に設定することには、重要な意義がある。なす角αを100〜160°とすることにより、頭頂面51t近傍での分解生成物の流れをスムーズにし、分解生成物が局所的に滞留することによる焼き付きの発生を防ぐことができる。頭頂面51t近傍での分解生成物の流れをよりスムーズにするために、分解生成物を整流したい方向の溝が頭頂面51tに形成されていることは好ましい。該溝による他の作用効果は後述する。
【0033】
図2Aを参照すると、ピストン50は、連結棒53が軸受け58のシール部材59によって保持され、ピストン尾部52が後方シリンダ14r内に収容されている。シール部材59が連結棒53(すなわちピストン50)をシールしていることから、分解生成物が後方シリンダ14r内に流入することを防止することができる。また、ピストン頭部51aとピストン尾部52とは、軸受け58の開口部(すなわち連結棒53の外径)よりも大きな外径を有することが好ましい。これにより、ピストン頭部51aとピストン尾部52とがストッパとして機能し、ピストン50の摺動可能範囲を規定する。言い換えると、ピストン50は、その摺動可能範囲を規定するためのストッパ構造を有している。なお、ピストンおよびストッパの構造としては、上記の構造に限定されることはなく、例えば、ピストン頭部とピストン尾部と連結棒とが全て同じ外径を有し、ピストン頭部領域とピストン尾部領域との外周にストッパとして機能する突起などを設けた構造でもよい。
【0034】
圧力調整機構13は、ピストン50の摺動方向における頭頂面51tと反対側(ピストン尾部52側)に、ピストン50を摺動方向の分解反応管12の側に押し出すための弾性部材54と、弾性部材54の押圧力を調整するための押圧力調整機構55とを具備している。弾性部材54としては、ばねの他、適当な弾性定数と弾性変形量とを有する部材を利用できる。押圧力調整機構55は、弾性部材押圧治具56と、押圧治具ねじ部56sと、押圧力調整用ハンドル57とから構成されている。押圧力調整用ハンドル57を回して弾性部材押圧治具56を押し込んだり引き出したりすることで、弾性部材54への押圧力を調整することができる。図2に示したように、弾性部材54と弾性部材押圧治具56と押圧治具ねじ部56sとは、後方シリンダ14r内に収容されている。なお、押圧力調整機構55の構成としては、上記に限定されることはなく、例えば、油圧制御によって弾性部材押圧治具56を押し込んだり引き出したりしてもよい。
【0035】
分解反応管12から吐出した分解生成物の分解反応が過剰に進行しないように、圧力調整機構13は、冷却機構(図示せず)を用いて、注入する薬剤の沸点以下の温度に調節されることが好ましい。これにより、圧力調整機構13内で分解生成物の物性(例えば、粘度など)が変化することを防ぐことができる。
【0036】
一般的な圧力調整装置、流量調整装置(例えば、ニードル弁や背圧弁など)は、バルブ内で流路が複雑に折れ曲がっている。しかしながら、流路が複雑に折れ曲がっていると、折れ曲がった箇所に不純物が堆積しやすい上に、不純物をスムーズに排出できない問題が生じる。言い換えると、流路は、全体として流体が自然に流れることができるような単純な構成であることが好ましい。この観点から、バルブ内流路の構成が単純な本発明のピストンバルブ構造は好ましいと言える。
【0037】
また、圧力調整の精度や容易性の観点から、圧力調整機構13は、ピストン50の摺動方向が水平方向となるように設置されることが好ましい。ピストンの摺動方向が上り勾配や下り勾配を有すると、圧力調整に対してピストンの自重や分解生成物の自重を考慮する必要が生じる。さらに、圧力調整機構13を通過した分解生成物がスムーズに排出されるように、圧力調整機構13と回収機構15をつなぐ回収配管33は、分解生成物が圧力調整機構13から自然落下するように(例えば、鉛直方向に)配設されていることが好ましい。なお、同様の理由により、回収配管33の流路断面積は、分解反応管12のそれよりも十分大きいこと(例えば、3倍以上)が好ましい。
【0038】
次に、圧力調整機構13の動作についてより具体的に説明する。図3Aは、本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置における圧力調整機構の動作の1例(ピストンが全閉している状態)を示す断面模式図である。図3Bは、本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置における圧力調整機構の動作の他の1例(ピストンが半開している状態)を示す断面模式図である。図3Cは、本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置における圧力調整機構の動作の他の1例(ピストンが全開している状態)を示す断面模式図である。
【0039】
分解反応管12から吐出される分解生成物の圧力が圧力調整機構13の弾性部材54の押圧力よりも小さい場合、図3Aに示したように、ピストン頭部51aが前方シリンダ14f内に挿入されて分解生成物の流路を塞ぎ、分解反応管12内の圧力上昇に寄与する。このとき、ピストン尾部52が軸受け58に当接することでストッパとして機能し、ピストン50の脱落(抜け)を防いでいる。
【0040】
分解反応管12内の圧力が上昇し圧力調整機構13の弾性部材54の押圧力よりも大きくなると、図3Bに示したように、ピストン50が後方に(図中の右方に)摺動してピストン頭部51aが前方シリンダ14fから抜け、分解生成物が回収配管33に放出される。このとき、分解反応管12から吐出される分解生成物の量と頭頂面51tに掛かる圧力とは比例するため、吐出樹脂量に応じた分だけピストン50が開く。また、分解生成物が圧力調整機構13から自然落下するように回収配管33が配設されていると、圧力調整機構13を通過した分解生成物の排出がスムーズに行われるため、分解反応管12内の圧力調整もスムーズとなる。
【0041】
分解反応管12内の圧力が更に上昇し大量の分解生成物が圧力調整機構13に流入してきた場合、図3Cに示したように、ピストン50が最大限後退してバルブ全開の状態となる。このとき、ピストン頭部51aが軸受け58に当接することでストッパとして機能し、ピストン50が後方シリンダ14r内に陥没するのを防いでいる。
【0042】
次に、分解生成物が放出されて分解反応管12内の圧力が低下すると、弾性部材54の押圧力(復元力)によりピストン50が前方に(図中の左方に)摺動して、図3Aの状態に戻る。以上が分解反応工程となる。
【0043】
ここで、分解生成物を整流したい方向の溝が頭頂面51tに形成されている場合のもう1つの効果について説明する。図3Aから図3Bに移行する過程を考える。分解反応管12内の圧力が上昇しピストン頭部51aが後方に摺動していくと、初めに溝の底部領域が前方シリンダ14fから抜けて小さな開口部が生じ、その小さな開口部から分解生成物の放出が始まる。これは、頭頂面51tに溝がない場合に比して、分解反応管12内の圧力下降の初期段階が緩やかになることにつながる。また、逆の過程(図3Bから図3Aへの移行)においても同様に、溝の底部領域による開口部が最後まで残ることで、分解反応管12内の圧力上昇の初期段階が緩やかになる。すなわち、ピストン頭部51aの前方シリンダ14fへの挿抜に伴う圧力変動の初期段階を緩やかにすることができる。言い換えると、圧力変動の転換点(上昇→下降、下降→上昇)を緩やかにすることができる。これは、圧力変動幅をより小さくすることにつながる。
【0044】
(回収配管)
圧力調整機構13の下流には、分解処理された分解生成物を回収する分解生成物回収機構15が回収配管33を介して接続されている。回収配管33は、分解生成物が滞留しないで自然落下するように下り勾配状態で(例えば、鉛直方向に)配設されていることが好ましい(図1参照)。また、前述したように、回収配管33の流路断面積は、分解反応管12のそれよりも十分大きいこと(例えば、3倍以上)が好ましい。それにより、圧力調整機構13を通過した分解生成物の圧力を十分解放し、分解反応が過剰に進行しないようにすることができる。
【0045】
(分解生成物回収機構および分解生成物回収工程)
分解生成物は、圧力調整機構13と回収配管33とを通過して、分解生成物回収機構15で回収される。本発明において、分解生成物回収機構15に特段の限定はないが、好適な例について以下説明する。
【0046】
図4は、本発明に係る分解生成物回収機構の構成の1例を示す断面模式図である。図4に示したように、分解生成物回収機構15は、分解生成物を冷却するために冷媒を内蔵する冷却ジャケット24を外周に備え、不純物Sを捕捉し分解生成物を濾過するフィルタ25が内部に設けられ、回収した分解生成物の排出弁26が下部に設けられている。また、分解生成物回収機構15には、分解生成物回収機構15の内部圧力が過剰に上昇したときにガスを排出する安全弁32が接続されている。
【0047】
分解処理装置の起動時や停止時には分解反応の条件(環境)が安定せず、完全に分解していない生成物(不完全分解生成物)が吐出されることがある。そこで、分解生成物回収機構15の密閉性を犠牲にせずに該不完全分解生成物を除くため、分解生成物回収機構15には、可動式の不完全分解生成物回収容器40を設けることが好ましい。可動式の不完全分解生成物回収容器40は、L字に曲がったアーム41にて分解生成物回収機構15の頂板に取り付けられており、アーム41は、頂板にO(オウ)リング等のシール装置42により密閉性を損なうことなく回転自在に取り付けられている。
【0048】
分解処理装置の起動時には、熱可塑性樹脂Pの分解反応が不十分であるため、分解反応管12内の圧力が一時的に上昇する。その後、熱可塑性樹脂Pの分解反応が十分に進行するようになると、分解反応管12内の圧力が低下して一定値に達する。具体的な手順としては、まず、アーム41を駆動して不完全分解生成物回収容器40を回収配管33の直下に配置し、分解反応管12内の圧力が安定するまで不完全分解生成物を回収する。分解反応管12内の圧力が安定した後、不完全分解生成物回収容器40を移動して、目的とする分解生成物を分解生成物回収機構15内に回収する。これにより、目的とする分解生成物に不完全分解生成物が混入することを防止することができる。分解処理装置の停止時には、上記と逆の手順を行えばよい。以上が分解生成物回収工程となる。なお、不完全分解生成物回収容器40の操作は、分解反応管12の内部圧力を測定する圧力測定装置(図示せず)の測定値を基に自動制御されることが好ましい。
【0049】
一方、処理しようとする熱硬化性樹脂Pが廃棄物である場合、分解処理装置に投入される材料の性状にバラツキがあるので、装置運転中にときどき分解生成物の状態をチェックすることが望ましい。そこで、分解生成物回収機構15の密閉性を犠牲にせずに分解生成物をサンプリングするため、分解処理装置には、サンプリング器具34を設けることが好ましい。なお、図1、図4においては、サンプリング器具34を回収配管33に設けたが、分解生成物回収機構15に設けてもよい。
【0050】
図4に示したように、サンプリング器具34は、主に、回収配管33に接続されたホルダー35と、ホルダー35の一端に設けられたボール弁36と、ホルダー35内に移動自在に設けられ先端部が半割になっているサンプリング管37と、ホルダー35とサンプリング管37との間をシールするシール継手38とから構成される。ホルダー35は、サンプリングした生成物を取り出すためのホルダー後端部35aと、回収配管33に接続されるホルダー基部35bとからなり、シール継手38は、ホルダー後端部35aとホルダー基部35bとの固定を兼ねている。シール継手38としては、締め付けて固定するネジ式タイプなどが好適である。
【0051】
具体的な手順としては、ボール弁36を開いてサンプリング管37の先端を回収配管33の流路に差し込み、回収配管33内を流下する生成物をサンプリング管37で直接採取する。次に、サンプリング管37をボール弁36より後方に移動したのち、ボール弁36を閉じる。次に、シール継手38を緩めてホルダー後端部35aを取り外し、サンプリング管37で採取した生成物を取り出す。これにより、任意のタイミングで生成物の状態をチェックすることができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいてより詳細に説明する。ただし、本発明は、ここで取り上げた実施例に限定されることはなく、そのバリエーションを含む。
【0053】
[実施例1]
図1に示した構成を有する分解処理装置を用いて、熱硬化性樹脂を分解処理する実験を行った。分解処理を行う熱硬化性樹脂材料Pとしては、断熱用に用いられている発泡ポリウレタンを粉砕し、目開き5 mmでメッシュ分級した発泡ポリウレタン粉末を用いた。また、熱硬化性樹脂材料Pには、実験用不純物S(ポリプロピレンフィルム(約5 mm角)、アルミ箔(約5 mm角)、ガラス繊維(数十μm長))を添加混合した。なお、発泡ポリウレタン粉末の大きさは、本実験で用いた押出機11の大きさに合わせたものであり、言うまでもなく上記に限定されるものではない。
【0054】
供給機10としては、攪拌器付きのフィーダを用い、押出機11のシリンダ11cに設けられた開口部11a(ホッパ11hの底部の開口部)の50%超を熱硬化性樹脂Pが塞がないように、2 g/minの歩合で熱硬化性樹脂材料Pをホッパ11hへ供給した。これは、発泡ポリウレタン粉末が非常にブリッジしやすいため、開口部11aの50%超を覆った場合に熱硬化性樹脂Pの押出機11への供給が安定せず、分解処理のプロセスが不安定になるからである。
【0055】
押出機11としては、スクリュー径Dが20 mm、スクリュー長さLが500 mm(L/D=25)、シリンダ内径が20 mmの単軸押出機を用いた。スクリュー11sの回転速度は20〜150 rpmとして実験を行った。この回転速度は、スクリュー11sで熱硬化性樹脂材料Pに加える剪断速度として40〜300 /sに相当する。押出機11の供給ゾーンZaの温度は160℃とし、加圧ゾーンZbの温度は170℃とし、シールゾーンZcの温度は170℃とした。また、押出圧力が5 MPaとなるようにスクリュー11sの回転速度を制御した。
【0056】
薬剤注入口11iは、スクリュー11sの先端からホッパ11h側に1.5D(30 mm)戻った位置のシリンダ11cに設けた。薬剤注入機構16を利用して薬剤注入口11iから温度調整した薬剤(ジエチレングリコール、温度:300℃、歩合:2 g/min)を注入した。薬剤配管18におけるできるだけ薬剤注入口11iの近くに、ボール逆止弁(ボールストローク:1 mm)を設けた。これは、加熱溶融した樹脂が薬剤配管18に流入することを防ぐためである。
【0057】
分解反応管12としては、熱硬化性樹脂材料Pの分解反応時間(反応ゾーンZd内の滞留時間)が25〜30分間程度となるように、容積100 mLの円管を用いた。反応ゾーンZdの温度は260℃とした。また、圧力調整機構13の温度は240℃に設定した。なお、圧力調整機構13の設定温度は、反応ゾーンZd内に存在する物質中で最も沸点が低いと考えられる薬剤(ジエチレングリコール)の沸点以下とすることにより、圧力調整機構13内での物質の相転移を防止して材料流れの制御を容易にすることを意図したものである。
【0058】
分解生成物回収機構15としては、薬剤の蒸気を漏らさないように、密閉された回収容器を用いた。分解生成物回収機構15の回収容器は、冷却ジャケット24を具備しており、冷却ジャケット24内に冷媒(0℃)を流すことにより容器内を冷却して薬剤蒸気の発生を抑えた。また、安全弁32を取り付けて回収容器内が1 MPa以上にならないようにした。なお、不完全分解生成物や不純物を分別回収しやすくするために、回収配管33は鉛直方向に設置した。
【0059】
図5は、本発明の実施例1における分解反応管内の圧力プロファイルを示すチャートである。実施例1によると、図5に示したように、分解反応管内の圧力変動を1MPa以内に収めることが可能であった。実験の結果、本発明の分解処理装置は、分解処理する出発材料として不純物Sが混在する発泡ポリウレタン粉末を用いても、連続的・安定的な分解処理が可能となり、分解生成物と不純物Sとを分別回収できることが確認された。
【0060】
なお、得られた分解生成物(ポリオール)を、バッチ処理による従来の方法で分解処理(ポリウレタン:ジエチレンリコールを1:1の割合で混合し、ジエチレングリコール溶液中、260℃で10分間のオートクレーブ処理)して得たポリオールと比較調査したところ、同等の性状(例えば、ポリオールの分子量分布)を有していることを確認し、マテリアルリサイクルが可能であることを別途確認した。
【0061】
[比較例1]
本発明の圧力調整機構と異なる構造を有する圧力調整機構を用いて、実施例1と同様の実験を行った。図6は、本発明の圧力調整機構と異なる構造を有する圧力調整機構の1例(比較例1)を示す断面模式図である。図6に示したように、比較例1の圧力調整機構は、シリンダ14内にピストン60と弾性部材54と押圧力調整機構55の一部とが収容され、ピストン60に取り付けられた弁61がピストン60と一体で移動することにより、弁61が弁座62から離れて分解生成物が排出される構造になっている。
【0062】
図7は、比較例1における分解反応管内の圧力プロファイルを示すチャートである。図7に示したように、分解反応管内の圧力が不安定であり、変動のサイクルが乱れていると共に、変動幅が約2 MPaと非常に大きかった。また、分解反応管内の圧力が、分解反応に必要な最小圧力(0.5 MPa)を下回ることがあった。
【0063】
実験後、比較例1の圧力調整機構を分解して内部を調査したところ、弁61の周辺に焼けが発生していた。これは、ピストン60と弁61との間の空間に分解生成物が滞留したことに起因して、弁61の周辺に焼けが発生したものと考えられた。また、回収した分解生成物を調査したところ、焼けた樹脂成分が混入していたことに加えて、分解未完了の樹脂成分も混入していた。分解未完了の樹脂成分の混入は、分解反応管内の圧力が0.5 MPaを下回ったことに起因すると考えられた。
【0064】
[比較例2]
本発明の圧力調整機構と異なる構造を有する別の圧力調整機構を用いて、実施例1と同様の実験を行った。図8は、本発明の圧力調整機構と異なる構造を有する圧力調整機構の他の1例(比較例2)を示す断面模式図である。図8に示したように、比較例2の圧力調整機構は、実施例1と同様に、シリンダ14内にピストン70と弾性部材54と押圧力調整機構55の一部とが収容されているが、ピストン70の摺動方向が分解生成物の流入方向に対して直交した構造になっている。
【0065】
図9は、比較例2における分解反応管内の圧力プロファイルを示すチャートである。図9に示したように、比較例1の場合と同様に、分解反応管内の圧力が不安定であり、変動のサイクルが乱れていると共に、変動幅が約1.5 MPaと大きかった。また、分解反応管内の圧力が、分解反応に必要な最小圧力(0.5 MPa)を下回ることがあった。
【0066】
実験後、比較例2の圧力調整機構を分解して内部を調査したところ、ピストン70の周辺の一部に焼けが発生していた。これは、ピストン70が摺動してシリンダ14内に引っ込んだ際に、ピストン70とシリンダ14との間の空間に分解生成物が滞留したことに起因して、ピストン70の周辺の一部に焼けが発生したものと考えられた。また、回収した分解生成物を調査したところ、焼けた樹脂成分が混入していたことに加えて、分解未完了の樹脂成分も混入していた。分解未完了の樹脂成分の混入は、分解反応管内の圧力が0.5 MPaを下回ったことに起因すると考えられた。
【0067】
以上の実験の結果から、本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置および該樹脂の分解処理方法は、連続的・安定的な分解処理が可能となることが実証された。なお、熱硬化性樹脂Pとして、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステルおよびこれらの樹脂と無機固形物との混合物を用いて処理した場合についても、それぞれ別途実施し、前記実施例1と同様の効果が得られることを確認した。
【符号の説明】
【0068】
10…供給機、10h…ホッパ、
11…押出機、11h…ホッパ、11a…開口部、11c…シリンダ、11s…スクリュー、
11d…吐出口、11i…薬剤注入口、
12…分解反応管、12d…吐出口、
13…圧力調整機構、14…シリンダ、14f…前方シリンダ、14r…後方シリンダ、
15…分解生成物回収機構、
16…薬剤注入機構、17…薬剤タンク、18…薬剤配管、19…薬剤ポンプ、20…ヒータ、
21…モータ、
24…冷却ジャケット、25…フィルタ、26…排出弁、
32…安全弁、33…回収配管、
34…サンプリング器具、35…ホルダー、35a…ホルダー後端部、35b…ホルダー基部、
36…ボール弁、37…サンプリング管、38…シール継手、
40…不完全分解生成物回収容器、41…アーム、42…シール装置、
50…ピストン、51a〜51f…ピストン頭部、51t…頭頂面、52…ピストン尾部、
53…連結棒、54…弾性部材、55…押圧力調整機構、
56…弾性部材押圧治具、56s…押圧治具ねじ部、57…押圧力調整用ハンドル、
58…軸受け、59…シール部材
60…ピストン、61…弁、62…弁座、70…ピストン、
P…熱硬化性樹脂、S…不純物、
Za…供給ゾーン、Zb…加圧ゾーン、Zc…シールゾーン、Zd…反応ゾーン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂を分解する技術に関し、特に発泡ポリウレタンなどの熱硬化性樹脂の廃棄物を分解処理する装置および熱硬化性樹脂廃棄物の分解処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から廃棄物処理に掛かる手間と費用が高くなってきており、廃棄するだけでなく資源をリサイクル利用しようという気運が高まっている。熱可塑性樹脂は加熱すれば流動性を増して再度成形可能であることから、マテリアルリサイクルが進みつつある。一方、熱硬化性樹脂は、分子の三次元的なネットワークにより単純に加熱しても流動化が生じず再成形が困難であることから、マテリアルリサイクルするための分解処理が必要である。
【0003】
例えば、熱硬化性樹脂の一種である発泡ポリウレタンは、しばしば断熱材として利用され、嵩密度が0.1 g/cm3程度以下と質量に対して容積が大きい。また、各気泡が独立していることから機械強度が高い。そのため、マテリアルリサイクルの前段としての分解処理において、まず減容の方法が重要な課題である。
【0004】
特許文献1には、圧力調整機構を備えているかまたは備えていない押出機、特に2軸スクリュー型押出機に対して発泡ポリウレタン付樹脂の破砕品を供給し、該押出機中で高温・高圧の処理液および/または処理液蒸気と一定の温度・圧力条件下で接触させるとともに溶融・混練して、発泡ポリウレタンを分解・微細化して溶融樹脂中へ均一微細分散し、吐出ノズルから押出すことによる発泡ポリウレタン付樹脂の連続再生処理法が開示されている。特許文献1によると、発泡ポリウレタンが貼り合わされた樹脂の従来の再生処理方法に比べて、処理条件や処理工程が簡単な方法で、連続的かつ安定的に発泡ポリウレタン付樹脂を再生することができるとされている。また、そのようにして得られた再生品を用いてインスツルメントパネルを製造した場合、新品製品と比べて外観(表面平滑性)や物性などの低下が極めて少ないものが得られるとされている。
【0005】
また、特許文献2には、熱硬化性樹脂を液状分解剤と混合して連続的に分解する方法であって、粉末状の熱硬化性樹脂と液状分解剤とのスラリー状混合物をスクリュー式の押出機から配管を介して熱分解器に連続的に供給する熱硬化性樹脂の熱分解方法が記載されている。特許文献2によると、粉末状の熱硬化性樹脂と液状分解剤との混合を押出機(特に2軸スクリュー式の押出機)内で行うので、それらを予め混合するミキサー等の混合手段を設ける必要がなく、熱分解システムを簡略化できると共に、効率よく且つスムーズにスラリー状混合物を配管に押し出すことができるとされている。また、スラリー状混合物の液成分の作用によりシール性を確保できるため、熱分解器において熱硬化性樹脂を酸素不存在下で連続的に熱分解してオリゴマー等を生成することができるとされている。
【0006】
また、特許文献3には、材料供給用押出機を用いて高分子化合物を押出しながら薬剤を該材料供給用押出機のシリンダーに注入し、該高分子化合物と該薬剤を該材料供給用押出機のシリンダーの中で混練しながら、高温高圧の反応容器の中へ該高分子化合物と該薬剤の混合物を吐出して反応させ、高分子化合物の処理物を生成する方法において、材料供給用押出機としてL/D=25以上の押出機を用い、さらに該薬剤の注入口が材料供給用押出機シリンダーの減速機側の終端からL/D=20よりも先端側にあることを特徴とする高分子化合物の処理方法が記載されている。特許文献3によると、材料供給用押出機の上流側のホッパーヘガスが逆流することを防ぎつつ、高分子化合物と薬剤を材料供給用押出機のシリンダーの中で混練しながら、高温高圧の反応容器の中へ高分子化合物と該薬剤の混合物を押出して反応させ、高分子化合物の処理物を生成する方法とその装置を提供することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−20023号公報
【特許文献2】特開2007−204516号公報
【特許文献3】特開2005−330365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の処理方法は、処理のための反応時間を十分に確保できないという懸念がある。言い換えると、十分な反応時間を確保しようとすると押出機のスクリュー長さを十分に長くする必要が生じ、処理装置が過剰に大型化してしまう問題が生じる。一方、特許文献2に記載の処理方法では、押出機に取り付けられた熱分解槽で処理することにより反応時間を確保している。ただし、この処理方法は、実質的に熱分解槽におけるバッチ処理であり、スクリュー式の押出機を利用したことによる連続供給の利点は活かされていない。
【0009】
また、特許文献3に記載の処理方法は、押出機に流通式反応容器を取り付けることで反応時間をコントロールし、安定した連続処理を可能にしている。しかしながら、処理しようとする熱硬化性樹脂中に、無機固形物(例えば、金属粉や酸化物粉)や非常に高い粘度を有する熱可塑性樹脂などの不純物が混在している場合、それらの不純物が押出機の吐出口に詰まって安定した連続処理が困難になる可能性が考えられる。
【0010】
従って、本発明の目的は、熱硬化性樹脂に対して高温高圧場を利用して分解処理する装置および方法において、処理しようとする熱硬化性樹脂中に無機固形物や高粘度樹脂などの不純物が混在している場合であっても、該熱硬化性樹脂の分解反応時の圧力を調整しながら分解処理を連続的に行い、安定した生成物を得ることが可能な分解処理装置および該樹脂の分解処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(I)本発明の1つの態様は、上記目的を達成するため、高温高圧場を利用して熱硬化性樹脂を連続的に分解処理する装置であって、処理しようとする前記熱硬化性樹脂を粉砕しながら供給する供給機と、供給された前記熱硬化性樹脂を加熱しながら加圧する押出機と、前記押出機内で前記熱硬化性樹脂が加熱・加圧される領域よりも下流側の領域に接続され温度調整した薬剤を注入する薬剤注入機構と、前記押出機の下流に配設され前記熱硬化性樹脂を分解処理する分解反応管と、前記分解反応管の吐出口に配設され該分解反応管内の圧力を調整する圧力調整機構と、前記圧力調整機構の下流に配設され分解処理された分解生成物を回収する分解生成物回収機構とを具備し、
前記圧力調整機構は、前記分解生成物の流入方向に摺動可能なピストンを具備し、前記圧力調整機構に流入してきた前記分解生成物が前記ピストンの頭頂面に直線的に流れ当たるようになっており、前記分解生成物の平均流入方向のベクトルと前記頭頂面の法線ベクトルとのなす角が100°以上160°以下であることを特徴とする熱硬化性樹脂の分解処理装置を提供する。
【0012】
なお、本発明において、熱硬化性樹脂の分解処理とは、該熱硬化性樹脂の原料に戻すことを言う。熱硬化性樹脂の原料としては、ワックスやオリゴマーが用いられる場合も有り、モノマーに限定されるものではない。また、本発明において、高温高圧場とは、100℃以上の温度でかつ熱硬化性樹脂に注入する薬剤(例えば、有機溶剤、無機水溶液、水)のその温度における蒸気圧以上に加圧した状態、または、薬剤の臨界温度以上でかつ1 MPa以上の圧力の状態をいう。さらに、ピストンの頭頂面は、単一の平面に限定されるものではなく、曲面または階段状面であってもよいし、それら(平面、曲面、階段状面)の組み合わせであってもよい(詳細は後述する)。
【0013】
本発明は、上記の本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置に対して以下のような改良や変更を加えることができる。
(i)前記圧力調整機構は、前記ピストンの摺動方向における前記ピストンの前記頭頂面と反対側に、前記ピストンを前記摺動方向の前記分解反応管の側に押し出すための弾性部材と、前記弾性部材の押圧力を調整するための押圧力調整機構とを具備している。
(ii)前記ピストンは、該ピストンの摺動可能範囲を規定するためのストッパ構造を有している。
(iii)前記圧力調整機構は、前記ピストンの摺動方向が水平方向となるように設置され、前記圧力調整機構と前記分解生成物回収機構とをつなぐ回収配管は、該回収配管内を通る前記分解生成物が前記圧力調整機構から自然落下するように配設されている。
(iv)前記ピストンの前記頭頂面に、前記分解生成物を整流したい方向の溝が形成されている。
(v)前記熱硬化性樹脂は、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、またはこれらの樹脂と無機固形物との混合物である。
【0014】
(II)本発明の他の1つの態様は、上記目的を達成するため、高温高圧場を利用して熱硬化性樹脂を連続的に分解処理する方法であって、処理しようとする前記熱硬化性樹脂を供給機内で粉砕しながら供給する工程と、前記供給機から供給された前記熱硬化性樹脂を押出機内で加熱しながら加圧する工程と、前記押出機内における前記熱硬化性樹脂が加熱・加圧される領域よりも下流側の領域で温度調整した薬剤を注入・混合する工程と、前記押出機の下流に水平に配設された分解反応管内において、前記分解反応管の吐出口に配設された圧力調整機構によって該分解反応管内の圧力を調整しながら前記熱硬化性樹脂を分解反応処理する工程と、分解反応処理された分解生成物を回収する工程とを有し、
前記圧力調整機構は、前記分解生成物の流入方向に摺動可能なピストンを具備し、前記圧力調整機構に流入してきた前記分解生成物が前記ピストンの頭頂面に直線的に流れ当たるようになっており、前記分解生成物の平均流入方向のベクトルと前記頭頂面の法線ベクトルとのなす角が100°以上160°以下であり、前記分解反応管内の圧力に応じて前記ピストンが摺動することにより該分解反応管内の圧力を調整することを特徴とする熱硬化性樹脂の分解処理方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、上記の本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理方法に対して以下のような改良や変更を加えることができる。
(vi)前記圧力調整機構は、前記ピストンの摺動方向における前記ピストンの前記頭頂面と反対側に、前記ピストンを前記摺動方向の前記分解反応管の側に押圧するための弾性部材と、前記弾性部材の押圧力を調整するための押圧力調整機構とを具備しており、前記分解反応管内の圧力を0.5 MPa以上3 MPa以下の範囲で調整している。
(vii)前記熱硬化性樹脂は、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、またはこれらの樹脂と無機固形物との混合物である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、処理しようとする熱硬化性樹脂中に無機固形物や高粘度樹脂などの不純物が混在している場合であっても、該熱硬化性樹脂の分解反応時の圧力を調整しながら連続的に分解処理することを可能とし、安定した分解生成物を得ることを可能とする分解処理装置および該樹脂の分解処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置の1例を示す断面模式図である。
【図2A】本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置における圧力調整機構の構造の一例を示す断面模式図である。
【図2B】図2Aに示した圧力調整機構のピストン頭部の変形例を示す断面模式図である。
【図3A】本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置における圧力調整機構の動作の1例(ピストンが全閉している状態)を示す断面模式図である。
【図3B】本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置における圧力調整機構の動作の他の1例(ピストンが半開している状態)を示す断面模式図である。
【図3C】本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置における圧力調整機構の動作の他の1例(ピストンが全開している状態)を示す断面模式図である。
【図4】本発明に係る分解生成物回収機構の構成の1例を示す断面模式図である。
【図5】本発明の実施例1における分解反応管内の圧力プロファイルを示すチャートである。
【図6】本発明の圧力調整機構と異なる構造を有する圧力調整機構の1例(比較例1)を示す断面模式図である。
【図7】比較例1における分解反応管内の圧力プロファイルを示すチャートである。
【図8】本発明の圧力調整機構と異なる構造を有する圧力調整機構の他の1例(比較例2)を示す断面模式図である。
【図9】比較例2における分解反応管内の圧力プロファイルを示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る分解処理装置および分解処理方法について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はここで取り上げた実施形態に限定されることはなく、要旨を変更しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。また、同等の機構を有する部材・部位においては、同じ符号を用いて重複する説明を省略することがある。
【0019】
[分解処理装置]
図1は、本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置の1例を示す断面模式図である。図1に示したように、本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置は、大別すると、処理しようとする熱硬化性樹脂Pを粉砕しながら供給する供給機10と、供給された熱硬化性樹脂を加熱しながら加圧する押出機11と、押出機11の末部領域に接続され温度調整した薬剤を注入する薬剤注入機構16と、押出機11の下流に配設され熱硬化性樹脂を分解処理する分解反応管12と、分解反応管12の吐出口に配設され該分解反応管12内の圧力を調整する圧力調整機構13と、圧力調整機構13の下流に配設され分解処理された分解生成物を回収する分解生成物回収機構15とから構成される。以下では、より詳細に説明する。
【0020】
(供給機および供給工程)
供給機10には、処理しようとする熱硬化性樹脂Pを投入するためのホッパ10hが設けられている。ホッパ10hに熱硬化性樹脂Pを投入すると、熱硬化性樹脂Pは供給機10内で粉砕されて押出機11に供給される(供給工程)。供給機10内には攪拌器(図示せず)が設けられていることが好ましく、それにより粉砕された熱硬化性樹脂Pの大きさを均等化することができる。
【0021】
押出機を用いて一般的なポリマー原料(例えば、ペレット状の中実原料)の押し出しを行おうとする場合、必ずしも供給機を用いる必要はない。しかしながら、発泡ポリマーのように嵩密度が小さくブリッジしやすい材料を扱う場合には、供給機10を用いて粉砕物の大きさを整えると共にブリッジしないように制御しながら押出機11に供給することが好ましい。供給機10としては、例えば、スクリューフィーダ、テーブルフィーダ、サークルフィーダなどを好適に用いることができる。また、供給量を測定して供給速度を自動調整するロスインウェイト方式が好ましい。
【0022】
(押出機および加熱加圧工程)
押出機11の形式に特段の限定はなく、単軸押出機の他、二軸押出機や多軸押出機であってもよい。押出機11は、粉砕された熱硬化性樹脂Pが供給され加熱される供給ゾーンZaと、熱硬化性樹脂Pが加熱されながら加圧される加圧ゾーンZbと、加熱加圧されて溶融した熱硬化性樹脂Pを充満させてシールのようにするシールゾーンZcとに分けられる。供給ゾーンZaには、供給機10からの熱硬化性樹脂Pを受けるホッパ11hが設けられている。なお、ホッパ11hにおける熱硬化性樹脂Pによるブリッジを防ぐためには、押出機11のシリンダ11cに設けられた開口部11a(ホッパ11hの底部の開口部)の50%超を熱硬化性樹脂Pが塞がないように熱硬化性樹脂Pの供給を制御することが望ましい。
【0023】
供給された熱硬化性樹脂Pは、押出機11のモータ21によって駆動されるスクリュー11sの回転により押出機11内に取り込まれ、供給ゾーンZaで加熱溶融されながら加圧ゾーンZbに送り出される。送り出された熱硬化性樹脂Pは、加圧ゾーンZbで加熱・加圧されながら更に送り出され、溶融した熱硬化性樹脂PでシールゾーンZcを形成する。1例として熱硬化性樹脂Pがポリウレタンである場合、供給ゾーンZaの温度は100〜170℃が好ましく、加圧ゾーンZbの温度は130〜200℃が好ましく、シールゾーンZcの温度は150〜210℃が好ましく、供給ゾーンZaからシールゾーンZcに掛けて温度が高くなっていくようにする。また、圧力としては0.5〜10 MPaが好ましく、Zbでの滞留時間としては5〜30分間が好ましい。なお、シールゾーンZcの末部にシールリング(図示せず)を設けてもよい。以上が加熱加圧工程である。
【0024】
(薬剤注入機構および薬剤注入混合工程)
押出機11のシールゾーンZcの下流側(押出機11の吐出口11dの近く)には、薬剤注入口11iが設けられており、温度調整した薬剤を注入する薬剤注入機構16が接続されている。薬剤注入機構16は、薬剤タンク17と、薬剤タンク17と薬剤注入口11iとを結ぶ薬剤配管18と、薬剤配管18に接続され薬剤を加圧して供給する薬剤ポンプ19と、薬剤配管18内の薬剤を加熱するヒータ20とからなる。薬剤配管18には、溶融した熱硬化性樹脂Pが逆流してこないように、逆止弁(図示せず)を設けることが望ましい。
【0025】
薬剤注入機構16により、温度調整した薬剤が注入され押出機11内で熱硬化性樹脂Pと混合される。薬剤を温度調整してから注入することにより、熱硬化性樹脂Pの温度変動を最小限に抑えることができ、分解反応をスムーズに進行させることができる。また、薬剤注入口11iの上流側にはシールゾーンZcが形成されていることから、注入された薬剤や薬剤と熱硬化性樹脂Pとの混合物が押出機11の上流側へ逆流することを防ぐことができる。以上が薬剤注入混合工程である。
【0026】
薬剤とは、熱硬化性樹脂Pの分解反応に利用される物質であり、常温常圧で液体のものを言う。例えば、有機溶媒としては、一価のアルコール(メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、i-ペンチルアルコールなど)、二価のアルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールなど)、三価のアルコール(グリセリンなど)、その他の多価アルコール、アミン類(エタノールアミン、プロピルアミンなど)、植物油、ケトン類(アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル類(アセト酢酸エチルなど)、アルデヒド類(アセトアルデヒドなど)、エーテル類(ジエチルエーテルなど)が挙げられる。水溶液としては、酸性水溶液(硝酸、塩酸、酢酸など)、アルカリ性水溶液(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)が挙げられる。また、反応系によっては水も薬剤として利用される。
【0027】
(分解反応管、圧力調整機構および分解反応工程)
押出機11の下流(吐出口11dの下流)には、薬剤と混合された熱硬化性樹脂Pを分解処理する分解反応管12が接続され、分解反応管12の吐出口12dには、分解反応管12内の圧力を調整する圧力調整機構13が設けられている。上述の薬剤注入口11iから分解反応管12の吐出口12dまでの領域が反応ゾーンZdとなる。本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置は、反応ゾーンZdを有することにより十分な分解反応時間を確保できることから、分解生成物を安定して生成することができる。
【0028】
分解反応管12は、円筒状の構造を有し、その内径が押出機11のスクリュー11sの外径の1〜3倍であることが好ましい。細過ぎると反応ゾーンZd内の滞留時間が長くなり過ぎて分解反応時間の制御が困難になる。一方、太過ぎると反応ゾーンZd内の滞留時間に分布が生じ、分解反応の均一性が低下する。1例として熱硬化性樹脂Pがポリウレタンである場合、反応ゾーンZdの温度は200〜300℃が好ましく、シールゾーンZcよりも温度が高くなるようにする。また、分解反応時間(反応ゾーンZd内の滞留時間)としては5〜30分間が好ましい。
【0029】
また、前述したように、処理しようとする熱硬化性樹脂P中に無機固形物(例えば、金属粉や酸化物粉)や非常に高い粘度を有する熱可塑性樹脂などの不純物が混在している場合、それらの不純物が分解反応管12の吐出口12dに詰まって安定した連続処理が困難になる可能性がある。そこで、本発明においては、圧力調整機構としてピストンバルブを用い、熱硬化性樹脂Pの圧力に応じて流路の開閉度を迅速に調整する。これにより、分解反応管12内の圧力を一定の範囲内に保つことができ、所望する分解生成物を安定して得ることができる。以下に、本発明に係る圧力調整機構について詳述する。
【0030】
図2Aは、本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置における圧力調整機構の構造の一例を示す断面模式図である。図2Aに示したように、本発明における圧力調整機構13は、分解生成物の流入方向に摺動可能なピストン50を具備し、ピストン50はピストン頭部51aとピストン尾部52と連結棒53とから構成されている。圧力調整機構13に流入してきた分解生成物がピストン頭部51aの頭頂面51tに直線的に流れ当たるように、ピストン50は配設されている。分解生成物の平均流入方向のベクトルと頭頂面51tの法線ベクトルとのなす角αは、100°〜160°に設定されている。端的に言うと、本発明の圧力調整機構13は、分解生成物の流入圧力に応じてピストン50が摺動し、バルブ開度が変化する構造となっている。
【0031】
前述したように、本発明におけるピストンの頭頂面は、単一の平面に限定されるものではなく、曲面または階段状面であってもよいし、それら(平面、曲面、階段状面)の組み合わせであってもよい。図2Bは、図2Aに示した圧力調整機構のピストン頭部の変形例を示す断面模式図である。図2Bに示したように、本発明において、ピストンの頭頂面の法線ベクトルとは、分解生成物の平均流入方向と対面するピストン頭部51a〜51fの頭頂点A(最突出部の点A)とピストン頭部51a〜51fの傾斜領域の末部の点Bとを結ぶ線Cに対する法線ベクトルと定義する。言い換えると、線Cは、該傾斜領域の平均斜面と考えることができる。なお、ピストン頭部51e,51fのように、分解生成物の平均流入方向に対して垂直な面が頭頂部に存在し、頭頂点として2点以上を考えられる場合は、頭頂面のうち点Bに最も近い点を頭頂点Aと定義する。
【0032】
また、本発明において、分解生成物の平均流入方向のベクトルと頭頂面51tの法線ベクトルとのなす角αを100°〜160°に設定することには、重要な意義がある。なす角αを100〜160°とすることにより、頭頂面51t近傍での分解生成物の流れをスムーズにし、分解生成物が局所的に滞留することによる焼き付きの発生を防ぐことができる。頭頂面51t近傍での分解生成物の流れをよりスムーズにするために、分解生成物を整流したい方向の溝が頭頂面51tに形成されていることは好ましい。該溝による他の作用効果は後述する。
【0033】
図2Aを参照すると、ピストン50は、連結棒53が軸受け58のシール部材59によって保持され、ピストン尾部52が後方シリンダ14r内に収容されている。シール部材59が連結棒53(すなわちピストン50)をシールしていることから、分解生成物が後方シリンダ14r内に流入することを防止することができる。また、ピストン頭部51aとピストン尾部52とは、軸受け58の開口部(すなわち連結棒53の外径)よりも大きな外径を有することが好ましい。これにより、ピストン頭部51aとピストン尾部52とがストッパとして機能し、ピストン50の摺動可能範囲を規定する。言い換えると、ピストン50は、その摺動可能範囲を規定するためのストッパ構造を有している。なお、ピストンおよびストッパの構造としては、上記の構造に限定されることはなく、例えば、ピストン頭部とピストン尾部と連結棒とが全て同じ外径を有し、ピストン頭部領域とピストン尾部領域との外周にストッパとして機能する突起などを設けた構造でもよい。
【0034】
圧力調整機構13は、ピストン50の摺動方向における頭頂面51tと反対側(ピストン尾部52側)に、ピストン50を摺動方向の分解反応管12の側に押し出すための弾性部材54と、弾性部材54の押圧力を調整するための押圧力調整機構55とを具備している。弾性部材54としては、ばねの他、適当な弾性定数と弾性変形量とを有する部材を利用できる。押圧力調整機構55は、弾性部材押圧治具56と、押圧治具ねじ部56sと、押圧力調整用ハンドル57とから構成されている。押圧力調整用ハンドル57を回して弾性部材押圧治具56を押し込んだり引き出したりすることで、弾性部材54への押圧力を調整することができる。図2に示したように、弾性部材54と弾性部材押圧治具56と押圧治具ねじ部56sとは、後方シリンダ14r内に収容されている。なお、押圧力調整機構55の構成としては、上記に限定されることはなく、例えば、油圧制御によって弾性部材押圧治具56を押し込んだり引き出したりしてもよい。
【0035】
分解反応管12から吐出した分解生成物の分解反応が過剰に進行しないように、圧力調整機構13は、冷却機構(図示せず)を用いて、注入する薬剤の沸点以下の温度に調節されることが好ましい。これにより、圧力調整機構13内で分解生成物の物性(例えば、粘度など)が変化することを防ぐことができる。
【0036】
一般的な圧力調整装置、流量調整装置(例えば、ニードル弁や背圧弁など)は、バルブ内で流路が複雑に折れ曲がっている。しかしながら、流路が複雑に折れ曲がっていると、折れ曲がった箇所に不純物が堆積しやすい上に、不純物をスムーズに排出できない問題が生じる。言い換えると、流路は、全体として流体が自然に流れることができるような単純な構成であることが好ましい。この観点から、バルブ内流路の構成が単純な本発明のピストンバルブ構造は好ましいと言える。
【0037】
また、圧力調整の精度や容易性の観点から、圧力調整機構13は、ピストン50の摺動方向が水平方向となるように設置されることが好ましい。ピストンの摺動方向が上り勾配や下り勾配を有すると、圧力調整に対してピストンの自重や分解生成物の自重を考慮する必要が生じる。さらに、圧力調整機構13を通過した分解生成物がスムーズに排出されるように、圧力調整機構13と回収機構15をつなぐ回収配管33は、分解生成物が圧力調整機構13から自然落下するように(例えば、鉛直方向に)配設されていることが好ましい。なお、同様の理由により、回収配管33の流路断面積は、分解反応管12のそれよりも十分大きいこと(例えば、3倍以上)が好ましい。
【0038】
次に、圧力調整機構13の動作についてより具体的に説明する。図3Aは、本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置における圧力調整機構の動作の1例(ピストンが全閉している状態)を示す断面模式図である。図3Bは、本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置における圧力調整機構の動作の他の1例(ピストンが半開している状態)を示す断面模式図である。図3Cは、本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置における圧力調整機構の動作の他の1例(ピストンが全開している状態)を示す断面模式図である。
【0039】
分解反応管12から吐出される分解生成物の圧力が圧力調整機構13の弾性部材54の押圧力よりも小さい場合、図3Aに示したように、ピストン頭部51aが前方シリンダ14f内に挿入されて分解生成物の流路を塞ぎ、分解反応管12内の圧力上昇に寄与する。このとき、ピストン尾部52が軸受け58に当接することでストッパとして機能し、ピストン50の脱落(抜け)を防いでいる。
【0040】
分解反応管12内の圧力が上昇し圧力調整機構13の弾性部材54の押圧力よりも大きくなると、図3Bに示したように、ピストン50が後方に(図中の右方に)摺動してピストン頭部51aが前方シリンダ14fから抜け、分解生成物が回収配管33に放出される。このとき、分解反応管12から吐出される分解生成物の量と頭頂面51tに掛かる圧力とは比例するため、吐出樹脂量に応じた分だけピストン50が開く。また、分解生成物が圧力調整機構13から自然落下するように回収配管33が配設されていると、圧力調整機構13を通過した分解生成物の排出がスムーズに行われるため、分解反応管12内の圧力調整もスムーズとなる。
【0041】
分解反応管12内の圧力が更に上昇し大量の分解生成物が圧力調整機構13に流入してきた場合、図3Cに示したように、ピストン50が最大限後退してバルブ全開の状態となる。このとき、ピストン頭部51aが軸受け58に当接することでストッパとして機能し、ピストン50が後方シリンダ14r内に陥没するのを防いでいる。
【0042】
次に、分解生成物が放出されて分解反応管12内の圧力が低下すると、弾性部材54の押圧力(復元力)によりピストン50が前方に(図中の左方に)摺動して、図3Aの状態に戻る。以上が分解反応工程となる。
【0043】
ここで、分解生成物を整流したい方向の溝が頭頂面51tに形成されている場合のもう1つの効果について説明する。図3Aから図3Bに移行する過程を考える。分解反応管12内の圧力が上昇しピストン頭部51aが後方に摺動していくと、初めに溝の底部領域が前方シリンダ14fから抜けて小さな開口部が生じ、その小さな開口部から分解生成物の放出が始まる。これは、頭頂面51tに溝がない場合に比して、分解反応管12内の圧力下降の初期段階が緩やかになることにつながる。また、逆の過程(図3Bから図3Aへの移行)においても同様に、溝の底部領域による開口部が最後まで残ることで、分解反応管12内の圧力上昇の初期段階が緩やかになる。すなわち、ピストン頭部51aの前方シリンダ14fへの挿抜に伴う圧力変動の初期段階を緩やかにすることができる。言い換えると、圧力変動の転換点(上昇→下降、下降→上昇)を緩やかにすることができる。これは、圧力変動幅をより小さくすることにつながる。
【0044】
(回収配管)
圧力調整機構13の下流には、分解処理された分解生成物を回収する分解生成物回収機構15が回収配管33を介して接続されている。回収配管33は、分解生成物が滞留しないで自然落下するように下り勾配状態で(例えば、鉛直方向に)配設されていることが好ましい(図1参照)。また、前述したように、回収配管33の流路断面積は、分解反応管12のそれよりも十分大きいこと(例えば、3倍以上)が好ましい。それにより、圧力調整機構13を通過した分解生成物の圧力を十分解放し、分解反応が過剰に進行しないようにすることができる。
【0045】
(分解生成物回収機構および分解生成物回収工程)
分解生成物は、圧力調整機構13と回収配管33とを通過して、分解生成物回収機構15で回収される。本発明において、分解生成物回収機構15に特段の限定はないが、好適な例について以下説明する。
【0046】
図4は、本発明に係る分解生成物回収機構の構成の1例を示す断面模式図である。図4に示したように、分解生成物回収機構15は、分解生成物を冷却するために冷媒を内蔵する冷却ジャケット24を外周に備え、不純物Sを捕捉し分解生成物を濾過するフィルタ25が内部に設けられ、回収した分解生成物の排出弁26が下部に設けられている。また、分解生成物回収機構15には、分解生成物回収機構15の内部圧力が過剰に上昇したときにガスを排出する安全弁32が接続されている。
【0047】
分解処理装置の起動時や停止時には分解反応の条件(環境)が安定せず、完全に分解していない生成物(不完全分解生成物)が吐出されることがある。そこで、分解生成物回収機構15の密閉性を犠牲にせずに該不完全分解生成物を除くため、分解生成物回収機構15には、可動式の不完全分解生成物回収容器40を設けることが好ましい。可動式の不完全分解生成物回収容器40は、L字に曲がったアーム41にて分解生成物回収機構15の頂板に取り付けられており、アーム41は、頂板にO(オウ)リング等のシール装置42により密閉性を損なうことなく回転自在に取り付けられている。
【0048】
分解処理装置の起動時には、熱可塑性樹脂Pの分解反応が不十分であるため、分解反応管12内の圧力が一時的に上昇する。その後、熱可塑性樹脂Pの分解反応が十分に進行するようになると、分解反応管12内の圧力が低下して一定値に達する。具体的な手順としては、まず、アーム41を駆動して不完全分解生成物回収容器40を回収配管33の直下に配置し、分解反応管12内の圧力が安定するまで不完全分解生成物を回収する。分解反応管12内の圧力が安定した後、不完全分解生成物回収容器40を移動して、目的とする分解生成物を分解生成物回収機構15内に回収する。これにより、目的とする分解生成物に不完全分解生成物が混入することを防止することができる。分解処理装置の停止時には、上記と逆の手順を行えばよい。以上が分解生成物回収工程となる。なお、不完全分解生成物回収容器40の操作は、分解反応管12の内部圧力を測定する圧力測定装置(図示せず)の測定値を基に自動制御されることが好ましい。
【0049】
一方、処理しようとする熱硬化性樹脂Pが廃棄物である場合、分解処理装置に投入される材料の性状にバラツキがあるので、装置運転中にときどき分解生成物の状態をチェックすることが望ましい。そこで、分解生成物回収機構15の密閉性を犠牲にせずに分解生成物をサンプリングするため、分解処理装置には、サンプリング器具34を設けることが好ましい。なお、図1、図4においては、サンプリング器具34を回収配管33に設けたが、分解生成物回収機構15に設けてもよい。
【0050】
図4に示したように、サンプリング器具34は、主に、回収配管33に接続されたホルダー35と、ホルダー35の一端に設けられたボール弁36と、ホルダー35内に移動自在に設けられ先端部が半割になっているサンプリング管37と、ホルダー35とサンプリング管37との間をシールするシール継手38とから構成される。ホルダー35は、サンプリングした生成物を取り出すためのホルダー後端部35aと、回収配管33に接続されるホルダー基部35bとからなり、シール継手38は、ホルダー後端部35aとホルダー基部35bとの固定を兼ねている。シール継手38としては、締め付けて固定するネジ式タイプなどが好適である。
【0051】
具体的な手順としては、ボール弁36を開いてサンプリング管37の先端を回収配管33の流路に差し込み、回収配管33内を流下する生成物をサンプリング管37で直接採取する。次に、サンプリング管37をボール弁36より後方に移動したのち、ボール弁36を閉じる。次に、シール継手38を緩めてホルダー後端部35aを取り外し、サンプリング管37で採取した生成物を取り出す。これにより、任意のタイミングで生成物の状態をチェックすることができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいてより詳細に説明する。ただし、本発明は、ここで取り上げた実施例に限定されることはなく、そのバリエーションを含む。
【0053】
[実施例1]
図1に示した構成を有する分解処理装置を用いて、熱硬化性樹脂を分解処理する実験を行った。分解処理を行う熱硬化性樹脂材料Pとしては、断熱用に用いられている発泡ポリウレタンを粉砕し、目開き5 mmでメッシュ分級した発泡ポリウレタン粉末を用いた。また、熱硬化性樹脂材料Pには、実験用不純物S(ポリプロピレンフィルム(約5 mm角)、アルミ箔(約5 mm角)、ガラス繊維(数十μm長))を添加混合した。なお、発泡ポリウレタン粉末の大きさは、本実験で用いた押出機11の大きさに合わせたものであり、言うまでもなく上記に限定されるものではない。
【0054】
供給機10としては、攪拌器付きのフィーダを用い、押出機11のシリンダ11cに設けられた開口部11a(ホッパ11hの底部の開口部)の50%超を熱硬化性樹脂Pが塞がないように、2 g/minの歩合で熱硬化性樹脂材料Pをホッパ11hへ供給した。これは、発泡ポリウレタン粉末が非常にブリッジしやすいため、開口部11aの50%超を覆った場合に熱硬化性樹脂Pの押出機11への供給が安定せず、分解処理のプロセスが不安定になるからである。
【0055】
押出機11としては、スクリュー径Dが20 mm、スクリュー長さLが500 mm(L/D=25)、シリンダ内径が20 mmの単軸押出機を用いた。スクリュー11sの回転速度は20〜150 rpmとして実験を行った。この回転速度は、スクリュー11sで熱硬化性樹脂材料Pに加える剪断速度として40〜300 /sに相当する。押出機11の供給ゾーンZaの温度は160℃とし、加圧ゾーンZbの温度は170℃とし、シールゾーンZcの温度は170℃とした。また、押出圧力が5 MPaとなるようにスクリュー11sの回転速度を制御した。
【0056】
薬剤注入口11iは、スクリュー11sの先端からホッパ11h側に1.5D(30 mm)戻った位置のシリンダ11cに設けた。薬剤注入機構16を利用して薬剤注入口11iから温度調整した薬剤(ジエチレングリコール、温度:300℃、歩合:2 g/min)を注入した。薬剤配管18におけるできるだけ薬剤注入口11iの近くに、ボール逆止弁(ボールストローク:1 mm)を設けた。これは、加熱溶融した樹脂が薬剤配管18に流入することを防ぐためである。
【0057】
分解反応管12としては、熱硬化性樹脂材料Pの分解反応時間(反応ゾーンZd内の滞留時間)が25〜30分間程度となるように、容積100 mLの円管を用いた。反応ゾーンZdの温度は260℃とした。また、圧力調整機構13の温度は240℃に設定した。なお、圧力調整機構13の設定温度は、反応ゾーンZd内に存在する物質中で最も沸点が低いと考えられる薬剤(ジエチレングリコール)の沸点以下とすることにより、圧力調整機構13内での物質の相転移を防止して材料流れの制御を容易にすることを意図したものである。
【0058】
分解生成物回収機構15としては、薬剤の蒸気を漏らさないように、密閉された回収容器を用いた。分解生成物回収機構15の回収容器は、冷却ジャケット24を具備しており、冷却ジャケット24内に冷媒(0℃)を流すことにより容器内を冷却して薬剤蒸気の発生を抑えた。また、安全弁32を取り付けて回収容器内が1 MPa以上にならないようにした。なお、不完全分解生成物や不純物を分別回収しやすくするために、回収配管33は鉛直方向に設置した。
【0059】
図5は、本発明の実施例1における分解反応管内の圧力プロファイルを示すチャートである。実施例1によると、図5に示したように、分解反応管内の圧力変動を1MPa以内に収めることが可能であった。実験の結果、本発明の分解処理装置は、分解処理する出発材料として不純物Sが混在する発泡ポリウレタン粉末を用いても、連続的・安定的な分解処理が可能となり、分解生成物と不純物Sとを分別回収できることが確認された。
【0060】
なお、得られた分解生成物(ポリオール)を、バッチ処理による従来の方法で分解処理(ポリウレタン:ジエチレンリコールを1:1の割合で混合し、ジエチレングリコール溶液中、260℃で10分間のオートクレーブ処理)して得たポリオールと比較調査したところ、同等の性状(例えば、ポリオールの分子量分布)を有していることを確認し、マテリアルリサイクルが可能であることを別途確認した。
【0061】
[比較例1]
本発明の圧力調整機構と異なる構造を有する圧力調整機構を用いて、実施例1と同様の実験を行った。図6は、本発明の圧力調整機構と異なる構造を有する圧力調整機構の1例(比較例1)を示す断面模式図である。図6に示したように、比較例1の圧力調整機構は、シリンダ14内にピストン60と弾性部材54と押圧力調整機構55の一部とが収容され、ピストン60に取り付けられた弁61がピストン60と一体で移動することにより、弁61が弁座62から離れて分解生成物が排出される構造になっている。
【0062】
図7は、比較例1における分解反応管内の圧力プロファイルを示すチャートである。図7に示したように、分解反応管内の圧力が不安定であり、変動のサイクルが乱れていると共に、変動幅が約2 MPaと非常に大きかった。また、分解反応管内の圧力が、分解反応に必要な最小圧力(0.5 MPa)を下回ることがあった。
【0063】
実験後、比較例1の圧力調整機構を分解して内部を調査したところ、弁61の周辺に焼けが発生していた。これは、ピストン60と弁61との間の空間に分解生成物が滞留したことに起因して、弁61の周辺に焼けが発生したものと考えられた。また、回収した分解生成物を調査したところ、焼けた樹脂成分が混入していたことに加えて、分解未完了の樹脂成分も混入していた。分解未完了の樹脂成分の混入は、分解反応管内の圧力が0.5 MPaを下回ったことに起因すると考えられた。
【0064】
[比較例2]
本発明の圧力調整機構と異なる構造を有する別の圧力調整機構を用いて、実施例1と同様の実験を行った。図8は、本発明の圧力調整機構と異なる構造を有する圧力調整機構の他の1例(比較例2)を示す断面模式図である。図8に示したように、比較例2の圧力調整機構は、実施例1と同様に、シリンダ14内にピストン70と弾性部材54と押圧力調整機構55の一部とが収容されているが、ピストン70の摺動方向が分解生成物の流入方向に対して直交した構造になっている。
【0065】
図9は、比較例2における分解反応管内の圧力プロファイルを示すチャートである。図9に示したように、比較例1の場合と同様に、分解反応管内の圧力が不安定であり、変動のサイクルが乱れていると共に、変動幅が約1.5 MPaと大きかった。また、分解反応管内の圧力が、分解反応に必要な最小圧力(0.5 MPa)を下回ることがあった。
【0066】
実験後、比較例2の圧力調整機構を分解して内部を調査したところ、ピストン70の周辺の一部に焼けが発生していた。これは、ピストン70が摺動してシリンダ14内に引っ込んだ際に、ピストン70とシリンダ14との間の空間に分解生成物が滞留したことに起因して、ピストン70の周辺の一部に焼けが発生したものと考えられた。また、回収した分解生成物を調査したところ、焼けた樹脂成分が混入していたことに加えて、分解未完了の樹脂成分も混入していた。分解未完了の樹脂成分の混入は、分解反応管内の圧力が0.5 MPaを下回ったことに起因すると考えられた。
【0067】
以上の実験の結果から、本発明に係る熱硬化性樹脂の分解処理装置および該樹脂の分解処理方法は、連続的・安定的な分解処理が可能となることが実証された。なお、熱硬化性樹脂Pとして、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステルおよびこれらの樹脂と無機固形物との混合物を用いて処理した場合についても、それぞれ別途実施し、前記実施例1と同様の効果が得られることを確認した。
【符号の説明】
【0068】
10…供給機、10h…ホッパ、
11…押出機、11h…ホッパ、11a…開口部、11c…シリンダ、11s…スクリュー、
11d…吐出口、11i…薬剤注入口、
12…分解反応管、12d…吐出口、
13…圧力調整機構、14…シリンダ、14f…前方シリンダ、14r…後方シリンダ、
15…分解生成物回収機構、
16…薬剤注入機構、17…薬剤タンク、18…薬剤配管、19…薬剤ポンプ、20…ヒータ、
21…モータ、
24…冷却ジャケット、25…フィルタ、26…排出弁、
32…安全弁、33…回収配管、
34…サンプリング器具、35…ホルダー、35a…ホルダー後端部、35b…ホルダー基部、
36…ボール弁、37…サンプリング管、38…シール継手、
40…不完全分解生成物回収容器、41…アーム、42…シール装置、
50…ピストン、51a〜51f…ピストン頭部、51t…頭頂面、52…ピストン尾部、
53…連結棒、54…弾性部材、55…押圧力調整機構、
56…弾性部材押圧治具、56s…押圧治具ねじ部、57…押圧力調整用ハンドル、
58…軸受け、59…シール部材
60…ピストン、61…弁、62…弁座、70…ピストン、
P…熱硬化性樹脂、S…不純物、
Za…供給ゾーン、Zb…加圧ゾーン、Zc…シールゾーン、Zd…反応ゾーン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温高圧場を利用して熱硬化性樹脂を連続的に分解処理する装置であって、
処理しようとする前記熱硬化性樹脂を粉砕しながら供給する供給機と、
供給された前記熱硬化性樹脂を加熱しながら加圧する押出機と、
前記押出機内で前記熱硬化性樹脂が加熱・加圧される領域よりも下流側の領域に接続され温度調整した薬剤を注入する薬剤注入機構と、
前記押出機の下流に配設され前記熱硬化性樹脂を分解処理する分解反応管と、
前記分解反応管の吐出口に配設され該分解反応管内の圧力を調整する圧力調整機構と、
前記圧力調整機構の下流に配設され分解処理された分解生成物を回収する分解生成物回収機構とを具備し、
前記圧力調整機構は、前記分解生成物の流入方向に摺動可能なピストンを具備し、前記圧力調整機構に流入してきた前記分解生成物が前記ピストンの頭頂面に直線的に流れ当たるようになっており、前記分解生成物の平均流入方向のベクトルと前記頭頂面の法線ベクトルとのなす角が100°以上160°以下であることを特徴とする熱硬化性樹脂の分解処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂の分解処理装置において、
前記圧力調整機構は、前記ピストンの摺動方向における前記ピストンの前記頭頂面と反対側に、前記ピストンを前記摺動方向の前記分解反応管の側に押し出すための弾性部材と、前記弾性部材の押圧力を調整するための押圧力調整機構とを具備していることを特徴とする熱硬化性樹脂の分解処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の熱硬化性樹脂の分解処理装置において、
前記ピストンは、該ピストンの摺動可能範囲を規定するためのストッパ構造を有していることを特徴とする熱硬化性樹脂の分解処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂の分解処理装置において、
前記圧力調整機構は、前記ピストンの摺動方向が水平方向となるように設置され、
前記圧力調整機構と前記分解生成物回収機構とをつなぐ回収配管は、該回収配管内を通る前記分解生成物が前記圧力調整機構から自然落下するように配設されていることを特徴とする熱硬化性樹脂の分解処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂の分解処理装置において、
前記ピストンの前記頭頂面に、前記分解生成物を整流したい方向の溝が形成されていることを特徴とする熱硬化性樹脂の分解処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂の分解処理装置において、
前記熱硬化性樹脂は、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、またはこれらの樹脂と無機固形物との混合物であることを特徴とする熱硬化性樹脂の分解処理装置。
【請求項7】
高温高圧場を利用して熱硬化性樹脂を連続的に分解処理する方法であって、
処理しようとする前記熱硬化性樹脂を供給機内で粉砕しながら供給する工程と、
前記供給機から供給された前記熱硬化性樹脂を押出機内で加熱しながら加圧する工程と、
前記押出機内における前記熱硬化性樹脂が加熱・加圧される領域よりも下流側の領域で温度調整した薬剤を注入・混合する工程と、
前記押出機の下流に配設された分解反応管内において、前記分解反応管の吐出口に配設された圧力調整機構によって該分解反応管内の圧力を調整しながら前記熱硬化性樹脂を分解反応処理する工程と、
分解反応処理された分解生成物を回収する工程とを有し、
前記圧力調整機構は、前記分解生成物の流入方向に摺動可能なピストンを具備し、前記圧力調整機構に流入してきた前記分解生成物が前記ピストンの頭頂面に直線的に流れ当たるようになっており、前記分解生成物の平均流入方向のベクトルと前記頭頂面の法線ベクトルとのなす角が100°以上160°以下であり、
前記分解反応管内の圧力に応じて前記ピストンが摺動することにより該分解反応管内の圧力を調整することを特徴とする熱硬化性樹脂の分解処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の熱硬化性樹脂の分解処理方法において、
前記圧力調整機構は、前記ピストンの摺動方向における前記ピストンの前記頭頂面と反対側に、前記ピストンを前記摺動方向の前記分解反応管の側に押圧するための弾性部材と、前記弾性部材の押圧力を調整するための押圧力調整機構とを具備しており、
前記分解反応管内の圧力を0.5 MPa以上3 MPa以下の範囲で調整していることを特徴とする熱硬化性樹脂の分解処理方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の熱硬化性樹脂の分解処理方法において、
前記熱硬化性樹脂は、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、またはこれらの樹脂と無機固形物との混合物であることを特徴とする熱硬化性樹脂の分解処理方法。
【請求項1】
高温高圧場を利用して熱硬化性樹脂を連続的に分解処理する装置であって、
処理しようとする前記熱硬化性樹脂を粉砕しながら供給する供給機と、
供給された前記熱硬化性樹脂を加熱しながら加圧する押出機と、
前記押出機内で前記熱硬化性樹脂が加熱・加圧される領域よりも下流側の領域に接続され温度調整した薬剤を注入する薬剤注入機構と、
前記押出機の下流に配設され前記熱硬化性樹脂を分解処理する分解反応管と、
前記分解反応管の吐出口に配設され該分解反応管内の圧力を調整する圧力調整機構と、
前記圧力調整機構の下流に配設され分解処理された分解生成物を回収する分解生成物回収機構とを具備し、
前記圧力調整機構は、前記分解生成物の流入方向に摺動可能なピストンを具備し、前記圧力調整機構に流入してきた前記分解生成物が前記ピストンの頭頂面に直線的に流れ当たるようになっており、前記分解生成物の平均流入方向のベクトルと前記頭頂面の法線ベクトルとのなす角が100°以上160°以下であることを特徴とする熱硬化性樹脂の分解処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂の分解処理装置において、
前記圧力調整機構は、前記ピストンの摺動方向における前記ピストンの前記頭頂面と反対側に、前記ピストンを前記摺動方向の前記分解反応管の側に押し出すための弾性部材と、前記弾性部材の押圧力を調整するための押圧力調整機構とを具備していることを特徴とする熱硬化性樹脂の分解処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の熱硬化性樹脂の分解処理装置において、
前記ピストンは、該ピストンの摺動可能範囲を規定するためのストッパ構造を有していることを特徴とする熱硬化性樹脂の分解処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の熱硬化性樹脂の分解処理装置において、
前記圧力調整機構は、前記ピストンの摺動方向が水平方向となるように設置され、
前記圧力調整機構と前記分解生成物回収機構とをつなぐ回収配管は、該回収配管内を通る前記分解生成物が前記圧力調整機構から自然落下するように配設されていることを特徴とする熱硬化性樹脂の分解処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の熱硬化性樹脂の分解処理装置において、
前記ピストンの前記頭頂面に、前記分解生成物を整流したい方向の溝が形成されていることを特徴とする熱硬化性樹脂の分解処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂の分解処理装置において、
前記熱硬化性樹脂は、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、またはこれらの樹脂と無機固形物との混合物であることを特徴とする熱硬化性樹脂の分解処理装置。
【請求項7】
高温高圧場を利用して熱硬化性樹脂を連続的に分解処理する方法であって、
処理しようとする前記熱硬化性樹脂を供給機内で粉砕しながら供給する工程と、
前記供給機から供給された前記熱硬化性樹脂を押出機内で加熱しながら加圧する工程と、
前記押出機内における前記熱硬化性樹脂が加熱・加圧される領域よりも下流側の領域で温度調整した薬剤を注入・混合する工程と、
前記押出機の下流に配設された分解反応管内において、前記分解反応管の吐出口に配設された圧力調整機構によって該分解反応管内の圧力を調整しながら前記熱硬化性樹脂を分解反応処理する工程と、
分解反応処理された分解生成物を回収する工程とを有し、
前記圧力調整機構は、前記分解生成物の流入方向に摺動可能なピストンを具備し、前記圧力調整機構に流入してきた前記分解生成物が前記ピストンの頭頂面に直線的に流れ当たるようになっており、前記分解生成物の平均流入方向のベクトルと前記頭頂面の法線ベクトルとのなす角が100°以上160°以下であり、
前記分解反応管内の圧力に応じて前記ピストンが摺動することにより該分解反応管内の圧力を調整することを特徴とする熱硬化性樹脂の分解処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の熱硬化性樹脂の分解処理方法において、
前記圧力調整機構は、前記ピストンの摺動方向における前記ピストンの前記頭頂面と反対側に、前記ピストンを前記摺動方向の前記分解反応管の側に押圧するための弾性部材と、前記弾性部材の押圧力を調整するための押圧力調整機構とを具備しており、
前記分解反応管内の圧力を0.5 MPa以上3 MPa以下の範囲で調整していることを特徴とする熱硬化性樹脂の分解処理方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の熱硬化性樹脂の分解処理方法において、
前記熱硬化性樹脂は、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、またはこれらの樹脂と無機固形物との混合物であることを特徴とする熱硬化性樹脂の分解処理方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−60503(P2013−60503A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198714(P2011−198714)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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