説明

熱硬化性樹脂組成物

【課題】プリント配線板等の電子材料に好適な、高ガラス転移温度、低誘電率特性、低誘電正接特性、優れた耐熱性を持ち併せた熱硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】一般式(1)、(2)のベンゾオキサジン樹脂、あるいは一般式(3)、(4)の化合物をホルムアルデヒド存在下、一般式(5)の一級アミンと反応させることで得られることを特徴とするベンゾオキサジン樹脂を含む熱硬化樹脂組成物。さらに、これらの熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は優れた耐熱性と低誘電率を有する熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物に関するものであり、さらに詳しくはコイル、コンデンサ、半導体、高周波帯域の使用に適した電子部品用基盤に好適に用いられるもの熱硬化性樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体封止材、プリント配線版材料としてエポキシ樹脂とフェノールノボラック樹脂
を硬化剤に用いた成形体が広く用いられている。
【0003】
近年電子機器の高速大容量化に伴い、構成材料のさらなる高耐熱性、低誘電率、低誘電正接が求められている。現在までに広く用いられてきたエポキシ樹脂とフェノールノボラック樹脂の組み合わせではこの要望に応えることが困難となってきている。
【0004】
近年、高耐熱性、低誘電率、低吸水率等優れた性能を有する開環重合性のベンゾオキサジン樹脂が報告されている(非特許文献1、非特許文献2)。例えば特許文献1、特許文献2では、熱硬化性樹脂組成物にベンゾオキサジン樹脂を用いることで、成形体の低吸収率化が行われているが、ガラス転移温度は比較例よりやや上昇するのみで十分な耐熱性は得られていない。
【特許文献1】特開2001−323047号公報
【特許文献2】特開平11−158352号公報
【非特許文献1】J.Appl.Poly.Sci.,68,1903(1998)
【非特許文献2】J.Appl.Poly.Sci.,74,2266(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年電子機器類の高速大容量化が進んでおり、それらを構成する材料としてますます高耐熱、低誘電特性が求められている。本発明は、高ガラス転移温度、低誘電率特性、優れた耐熱性、低誘電正接を兼ね備えた材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一般式(1)、(2)で表される構造を含有することを特徴とするベンゾオキサジン化合物に関する。
【化5】

〔ここで、R〜R、R〜Rが水素原子又はメチル基であり、R、Rは各々独立して、芳香族を含む炭素数10以下の炭化水素基である。〕
【化6】

〔ここで、R〜R12が水素原子又はメチル基であり、R13、R14各々独立して芳香族を含む炭素数10以下の炭化水素基である。〕
【0007】
さらに、本発明は、一般式(3)あるいは(4)で示される構造の化合物と、一般式(5)で表される一級アミン化合物をホルムアルデヒド存在下で反応させることにより得られることを特徴とするベンゾオキサジン樹脂に関する。
【化7】

〔ここで、R〜Rが水素原子又はメチル基である。〕
【化8】

〔ここで、R〜R10が水素原子又はメチル基である。〕
15NH(5)
【0008】
好ましくは、上記ベンゾオキサジン樹脂は、一般式(3)中のR〜Rが水素原子、一般式(5)中のR15がフェニル基の化合物、ホルムアルデヒドを反応させることによって得られる。
【0009】
好ましくは、上記ベンゾオキサジン樹脂は、一般式(3)中のR、Rがメチル基、R、R、R、Rが水素原子であり、一般式(5)中のR15がフェニル基の化合物、ホルムアルデヒドを反応させることによって得られる。
【0010】
さらに、本発明は、上記のベンゾオキサジン樹脂を含有してなる熱硬化性樹脂組成物に関する。
【0011】
さらに、本発明は、上記の熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる成形体に関する。
【0012】
本発明は昨今の電子材料の高速大容量化と高周波化の要求に鑑み鋭意検討した結果、一般式(1)、(2)で示される構造式の化合物及び、一般式(3)、(4)をホルムアルデヒド存在下で一般式(5)の一級アミンを反応させて得られるベンゾオキサジン樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物が優れた耐熱性、低誘電特性、高ガラス転移温度を持つことを見出し、さらに検討を進めて本発明を完成させるに至ったものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いることで、高耐熱性、低誘電率、低誘電正接、高ガラス転移温度を持ち併せた、優れた硬化物を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の熱硬化性樹脂組成物に含まれるベンゾオキサジン樹脂は、一般式(3)あるいは(4)で表される化合物を、ホルムアルデヒド存在下で一般式(5)の一級アミンと反応させることによって得ることが出来る。反応生成物は多量体を含む混合物であっても、熱硬化樹脂として使用する分には特に問題ない。
【0015】
一般式(5)において、R15を構成する基は、脂肪族基、フェニル基、またはメチル基がオルト位もしくはパラ位に置換されたフェニル基であり、炭素数10個以下とするのが好ましい。炭素数が11個以上になると、得られた樹脂のガラス転移点や熱分解温度が低下するので、本発明の目的には適さない。このような一級アミンの例としては、アニリン、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、シクロヘキシルアミン、2−t−ブチルアニリン、4−t−ブチルアニリンなどが挙げられる。
【0016】
また、ホルムアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド水溶液であるホルマリン、あるいはその重合物であるパラホルムアルデヒドのいずれも使用することができる。
【0017】
反応溶媒としては、トルエン、1,4−ジオキサン、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、キシレンなどの単独もしくは混合溶媒を使用することができる。
【0018】
フェノール性水酸基のすべてを反応せるため、フェノール性水酸基1モルに対して、一級アミン1モル、およびホルムアルデヒド2モル以上を用いるのが望ましい。反応温度は、100℃以上130℃以下で行なうのが望ましい。反応温度が100℃未満の場合は反応が十分に進行せず、130℃を越える場合は、一旦生成したベンゾオキサジン環が開環し、副反応が促進されるので好ましくない。
【0019】
反応終了後、溶媒を留去した後、必要に応じてアルカリ洗浄操作を行ない、未反応のフェノール性水酸基を有する化合物、アミン類、およびホルムアルデヒドを除去することにより、ジヒドロキシベンゾオキサジン樹脂が得られる。
【0020】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記ベンゾオキサジン樹脂(1)を含有する。このベンゾオキサジン樹脂(1)は1種のみを単独で使用できる他、2種以上の混合物としても使用することができる。
【0021】
この熱硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、(a)反応性希釈剤、(b)ベンゾオキサジンと反応可能な樹脂、(c)硬化促進剤、(d)添加剤、(e)溶剤などが含有され得る。
【0022】
上記(a)の反応性希釈剤は、粘度調整を行うために添加する低粘度なエポキシ化合物であり、特に二官能以上の低粘度エポキシ化合物が好ましい。反応性希釈剤としては、例えば、次の化合物が挙げられる:ジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ネオペンチルグリコールグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、アルキレンジグリシジルエーテル、ポリグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、4−ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、メチル化ビニルシクロヘキセンジオキサイドなど。これら反応性希釈剤は1種のみを単独で使用できる他、2種以上を混合しても使用することができる。
【0023】
上記(b)のベンゾオキサジンと反応可能な樹脂としては、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、脂環式エポキシ樹脂等の反応性環状エーテル基を含む樹脂を使用することが出来る。エポキシ樹脂の具体例としては、ビフェニル型エポキシ、ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシ、クレゾールノボラック型エポキシ、環状脂肪族エポキシ、フルオレン含有エポキシ、ナフタレン含有等のエポキシ等が挙げられる。オキセタン樹脂としては、カーボネートビスオキセタン、アジペートビスオキセタン、キシリレンビスオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、ベンジルオキセタン等が挙げられる。脂環式エポキシ樹脂としては、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ−(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキサンジオキシド、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ−エキソビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エンド−エキソビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、2,2−ビス(4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキシル)プロパン、2,6−ビス(2,3−エポキシプロポキシシクロヘキシル−p−ジオキサン)、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、ジシクロペンタジエンジオキシド、1,2−エポキシ−6−(2,3−エポキシプロポキシ)ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダン、p−(2,3−エポキシ)シクロペンチルフェニル−2,3−エポキシプロピルエーテル、1−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル−5,6−エポキシヘキサヒドロ−4,7−メタノインダン、o−(2,3−エポキシ)シクロペンチルフェニル−2,3−エポキシプロピルエーテル)、1,2−ビス〔5−(1,2−エポキシ)−4,7−ヘキサヒドロメタノインダノキシル〕エタン、シクロペンテニルフェニルグリシジルエーテル等が挙げられる。(これらは特に制限なく、単独又は2種以上加える等使用目的にあわせて選択可能であるが、例えばTg、その他の得られる樹脂特性のバランス面から、ビスフェノールA型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシ又はこれらの組み合わせが好ましい。
【0024】
硬化剤の配合量は、水酸基1モルに対してエポキシ0.5〜2.0モルが好ましく、より好ましくは0.8〜1.3モルである。
【0025】
上記(c)の硬化促進剤としては、公知の物を用いることが出来る。たとえば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,8−ジアザシクロ(5.4.0)ウンデセン−7およびそのフェノール塩、フェノールノボラック塩、炭酸塩、ギ酸塩などのアミン類(第三アミンを含む)およびその誘導体、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−エチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシイミダゾール等のイミダゾール類、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0026】
本発明に使用する添加剤(d)としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、難燃剤、カーボンブラック等の着色剤、シリコーン可撓剤などを用いることができる。
【0027】
このような硬化触媒の配合量は、組成物中、0.05〜1.0重量部が好ましく、より好ましくは0.08〜0.5重量部である。
【0028】
上記(e)の溶剤としては、例えば、次の溶剤が用いられる:メタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチル−1−アセテートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類;ならびに2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
本発明による熱硬化性樹脂は、そのままでも加熱により硬化するが、実用的には、エポキシ樹脂、硬化促進剤を併用するのが好ましい。また、半導体封止材料や回路基板等に用いるには、必要に応じて、当業者に公知の各種充填剤や添加剤を使用してもかまわない。
【0030】
上記添加剤としては、補強材または充填材、着色剤、顔料、離型剤、難燃剤、シランカップリング剤などが挙げられる。上記充填剤としては、粉末状あるいは繊維状の補強剤や充填剤が用いられる。粉末状の補強剤または充填剤としては、例えば次の素材でなる材料が挙げられる。酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩;ケイソウ土粉、塩基性ケイ酸マグネシウム、焼成クレイ、微粉末シリカ、溶融シリカ、結晶シリカなどのケイ素化合物;水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物;その他、カオリン、マイカ、石英粉末、グラファイト、二硫化モリブデンなど。繊維状の補強剤または充填剤としては、次の材料が挙げられる:ガラス繊維、セラミック繊維、カーボンファイバー、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維など。上記着色剤、顔料、または難燃剤としては、例えば二酸化チタン、鉄黒、モリブデン赤、紺青、群青、カドミウム黄、カドミウム赤、三酸化アンチモン、赤燐、ブロム化合物、トリフェニルホスフェートなどが挙げられる。離型剤としては、モンタン酸エステルワックスやカルナバワックス等が挙げられる。シランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤などを用いることができる。これら添加剤はいずれも1種で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
本発明の熱硬化性樹脂は、例えば電子部品のプリント配線版材料として有用である他、半導体チップ、トランジスタ、コンデンサ、コイル等の封止剤としても使用出来る。
【実施例】
【0032】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0033】
特性評価のため、合成した各試料について、熱分解温度、ガラス転移温度、および誘電率を測定したが、各特性の測定方法は下記の通りとし、測定結果はまとめて表1に示した。
【0034】
熱分解温度大気存在下、10℃/分の速度で昇温し、重量が5%減少した時の温度を、熱分解温度とした。
【0035】
ガラス転移温度:幅15mm、厚さ2mmに加工した樹脂硬化物を、3℃/分の割合で昇温しながら、周波数1Hzの歪みを与えて動的粘弾性の測定を行ない、tanδのピーク値からガラス転移温度(Tg)を判定した。
【0036】
誘電率:幅15mm厚さ2mm、角に切断した樹脂硬化物の板を電極に挟み、JIS−K−6911に準じて測定を行なった。
【0037】
[実施例1]フラスコに、ジオキサン180重量部とトルエン180重量部、パラホルムアルデヒド66重量部を入れ、アニリン98部重量加えた。さらに、ビスフェノールフルオレン175重量部加えた。これを還流温度まで徐々に昇温して、そのまま40時間反応を続けた。その後5%アルカリ溶液で水洗後、メタノールで晶析させることで目的の熱硬化性樹脂(1)を得た。得られた熱硬化性樹脂を所定量のノボラック樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製;商品名「DICフェノライトTD−2131」)、2−エチル−4−エチルイミダゾールを攪拌機にて混合した。これを間隔2mmに設定した2枚の鉄板に挟み、170℃、100Kg/cm2、30分間加熱プレスした。さらに180℃12時間で加熱硬化させた。この樹脂硬化物から、所定寸法の試験片を切り出し、熱分解温度、ガラス転移温度(動的粘弾性)、および誘電率を測定した。
【0038】
[実施例2]フラスコに、ジオキサン380重量部とトルエン380重量部、パラホルムアルデヒド114重量部を入れ、アニリン149重量部を加えた。さらに、ビスクレゾールフルオレン288重量部を加えた。これを還流温度まで徐々に昇温し、そのまま40時間反応を続けた。その後5%アルカリ溶液で水洗後、メタノールで晶析させることで目的の熱硬化性樹脂(2)を得た。この樹脂を、所定量のノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製;商品名「DICフェノライトTD−2131」)、1,8−ジアザシクロ(5.4.0)ウンデセン−7と合わせて加熱硬化させ、評価用の試験片を作成した。
【0039】
[実施例3]フラスコに、ジオキサン250重量部とトルエン250重量部、パラホルムアルデヒド66重量部を入れ、p−アニシジン129重量部を加えた。さらに、ビスフェノールフルオレン175重量部を加えた。これを還流温度まで徐々に昇温し、そのまま40時間反応を続けた。その後5%アルカリ溶液で水洗後、メタノールで晶析させることで目的の熱硬化性樹脂(3)を得た。この樹脂を、所定量のノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製;商品名「DICフェノライトTD−2131」)、2−フェニル−4−メチルイミダゾールと同様にして加熱硬化させ、評価用の試験片を作成した。
【0040】
[実施例4]フラスコに、ジオキサン250重量部とトルエン250重量部、パラホルムアルデヒド66重量部を入れ、p−トルイジン112重量部を加えた。さらに、ビスフェノールフルオレン175重量部を加えた。これを還流温度まで徐々に昇温し、そのまま40時間反応を続けた。その後5%アルカリ溶液で水洗後、メタノールで晶析させることで目的の熱硬化性樹脂(4)を得た。この樹脂を、所定量のビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成株式会社製;商品名「AER260」)、1,8−ジアザシクロ(5.4.0)ウンデセン−7と合わせて加熱硬化させ、評価用の試験片を作成した。
【0041】
[実施例5]フラスコに、ジオキサン380重量部とトルエン380重量部、パラホルムアルデヒド114重量部を入れ、t−ブチルアニリン149重量部を加えた。さらに、ビスクレゾールフルオレン288重量部を加えた。これを還流温度まで徐々に昇温し、そのまま40時間反応を続けた。その後5%アルカリ溶液で水洗後、メタノールで晶析させることで目的の熱硬化性樹脂(5)を得た。この樹脂を所定量のビフェニル型エポキシ樹脂(油化シェル株式会社製商品名「エピコートYX−4000H」)、1,8−ジアザシクロ(5.4.0)ウンデセン−7と合わせて加熱硬化させ、評価用の試験片を作成した。
【0042】
[比較例1]フラスコに、ジオキサン200重量部とトルエン200重量部、パラホルムアルデヒド75重量部を入れ、アニリン98重量部を加えた。さらに、ビスフェノールA114重量部を加えた。これを還流温度まで徐々に昇温して、そのまま40時間反応を続けた。その後5%アルカリ溶液で水洗後、メタノールで晶析させることで目的の熱硬化性樹脂(6)を得た。この樹脂を、所定量のノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製;商品名「DICフェノライトTD−2131」)、1,8−ジアザシクロ(5.4.0)ウンデセン−7と合わせて加熱硬化させ、評価用の試験片を作成した。
得られた樹脂硬化物から、所定寸法の試験片を切り出し、熱分解温度、ガラス転移温度(動的粘弾性)、および誘電率の測定を行った。
【0043】
[比較例2]フラスコに、ジオキサン200重量部とトルエン200重量部、パラホルムアルデヒド75重量部を入れ、アニリン98重量部を加えた。さらに、ビスフェノールS114重量部を加え、還流温度まで徐々に昇温して、そのまま40時間反応を続けた。その後5%アルカリ溶液で水洗後、メタノールで晶析させることで目的の熱硬化性樹脂(7)を得た。この樹脂を、所定量のビフェニル型エポキシ樹脂(油化シェル株式会社製;商品名「エピコートYX−4000H」)、1,8−ジアザシクロ(5.4.0)ウンデセン−7を合わせて加熱硬化させ、評価用の試験片を作成した。
得られた樹脂硬化物から、所定寸法の試験片を切り出し、熱分解温度、ガラス転移温度(動的粘弾性)、および誘電率の測定を行った。
【表1】

【0044】
表1に示した結果から明らかなように、一般式(1)、(2)のベンゾオキサジン樹脂あるいは一般式(3)、(4)の化合物をホルムアルデヒド存在下、一般式(5)の一級アミンと反応させることによって得られるベンゾオキサジン樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物によって、優れた耐熱性と低誘電率特性とを損なうこと無く両立させ、さらにビスフェノールA、ビスフェノールSから得られるベンゾオキサジン樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物と比較して、ガラス転移温度を著しく高くすることが出来た。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の熱硬化性樹脂組成物はプリプレグ、プリント配線に好適である。さらに、各種電子部品(コイル、コンデンサ、半導体、液晶表示装置(LCD)、固体撮像素子(CCD)、エレクトロルミネッセンス(EL))の保護膜形成材料などとして好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)、(2)で表される構造を含有することを特徴とするベンゾオキサジン化合物。
【化1】

〔ここで、R〜R、R〜Rが水素原子又はメチル基であり、R、Rは各々独立して、炭素数10以下の脂肪族基または炭素数4以下の置換基を含んでも良い芳香族基である。〕
【化2】

〔ここで、R〜R12が水素原子又はメチル基であり、R13、R14各々独立して炭素数10以下の脂肪族基または炭素数4以下の置換基を含んでも良い芳香族基である。〕
【請求項2】
一般式(3)あるいは(4)で示される構造の化合物と、一般式(5)で表される一級アミン化合物をホルムアルデヒド存在下で反応させることにより得られることを特徴とするベンゾオキサジン樹脂。
【化3】

〔ここで、R〜Rが水素原子又はメチル基である。〕
【化4】

〔ここで、R〜R10が水素原子又はメチル基である。〕
15NH(5)
〔ここで、R15は炭素数10以下の脂肪族基または炭素数4以下の置換基を含んでも良い芳香族基である。〕
【請求項3】
一般式(3)中のR〜Rが水素原子、一般式(5)中のR15がフェニル基の化合物、ホルムアルデヒドを反応させることによって得られることを特徴とする、請求項2記載のベンゾオキサジン樹脂。
【請求項4】
一般式(3)中のR、Rがメチル基、R、R、R、Rが水素原子であり、一般式(5)中のR15がフェニル基の化合物、ホルムアルデヒドを反応させることによって得られることを特徴とする、請求項2記載のベンゾオキサジン樹脂。
【請求項5】
さらに、請求項1〜4のいずれか記載のベンゾオキサジン樹脂を含有してなる熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる成形体。

【公開番号】特開2007−8842(P2007−8842A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189782(P2005−189782)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】