説明

熱統合型化学的石炭処理法

【課題】石炭の化学的処理を行うシステム及び方法を提供する。
【解決手段】本システム及び方法は、2段石炭処理プロセス(28)を持つ熱統合型石炭処理システムを含む。前記2段処理プロセス(28)は、弗化水素酸反応器(30)及び硝酸反応器(32)を含み、且つ前記弗化水素酸反応器(30)と前記硝酸反応器(32)との間で熱を交換する流体を持つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本書に開示する内容は、石炭処理技術に関し、具体的には、酸浸出処理を用いた石炭のクリーニング(清浄処理)のような化学的処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
明らかなように、石炭のような天然資源は現在の経済及び社会に計り知れない効果を有している。実際、直接又は間接的なエネルギ源として石炭に依存している機器及びシステムは膨大である。石炭は多種多様なプロセスにおける燃料として使用することができる。更に、石炭は、しばしば、冬期の暖房、発電、及び大量の日常製品の製造などに使用されている。
【0003】
化石燃料資源が減少し及び環境についての関心が増大するにつれて、石炭及び他の天然資源の処理及び使用並びにそれらの環境についての影響についての要求もまた増大している。詳しく述べると、石炭について「汚い」と云うイメージが契機となって、燃料としての石炭の効率的な使用を増大させ且つその使用による環境への影響を最小にするための新しい開発及び処理が行われている。多くのこのような技術は、「精炭(clean coal)」技術と呼ばれている。1つのこのような石炭処理プロセスでは、異なる酸浸出技術を用いて、石炭から鉱物質を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4695290号
【発明の概要】
【0005】
以下に、「特許請求の範囲」に記載された発明の範囲に相応する特定の実施形態について概要を記載する。これらの実施形態は「特許請求の範囲」に記載された発明の範囲を限定しようとするものではなく、むしろ本発明の取り得る形態についての概要を提供しようとするに過ぎない。実際には、本発明は、以下に述べる実施形態と同様であるか又はそれらとは異なることのある様々な形態を包含することができる。
【0006】
第1の実施形態におけるシステムは、弗化水素酸反応器(hydrofluoric acid reactor)及び該弗化水素酸反応器に結合された硝酸反応器(nitric acid reactor)を持つ石炭処理システムを含み、該システムでは、硝酸反応器によって加熱された流体が、弗化水素酸反応器を加熱するために供給される。
【0007】
第2の実施形態におけるシステムは、多段石炭処理システムを制御するように構成された制御システムを含む。多段石炭クリーニング(清浄処理)システムが、第1の酸を用いて第1の酸浸出プロセスを遂行するように構成された第1の浸出装置を有する第1段と、第2の酸を用いて第2の酸浸出プロセスを遂行するように構成された第2の浸出装置を有する第2段と、前記第1段と前記第2段との間を流れる熱伝達流体とを含む。更に、前記制御システムは、前記第1段及び第2段の一方又は両方の加熱速度と、前記熱伝達流体の流量を制御する。
【0008】
第3の実施形態における方法は、硝酸石炭浸出装置から熱を抽出する段階と、該抽出された熱を弗化水素酸石炭浸出装置へ供給する段階とを含む。
【0009】
本発明のこれらの及び他の特徴、側面及び利点は、添付図面を参照した以下の詳しい説明を読むことによってより良く理解されよう。図面では、全図を通じて同様な部品を同様な参照符号で表している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に従った熱統合型(heat integrated) 石炭処理システムのブロック図である。
【図2】図2は、本発明の別の実施形態に従った熱統合型石炭処理システムのブロック図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に従った熱統合型化学的処理プロセスの流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の1つ以上の特定の実施形態を記述する。これらの実施形態の説明を簡潔にするために、実際の具現化手段の全ての特徴を本明細書で記述することはできない。ここで、任意の工業又は設計計画におけるように、任意のこのような実際の具現化手段の開発において、開発者の特定の目標を達成するために、具現化手段によって変わり得るシステム関連及び事業関連の制約の順守のような多数の具現化手段特有の決定を行わなければならないことを理解されたい。また更に、このような開発努力は複雑で時間がかかることがあるが、それにも拘わらず、この開示内容を利用する通常の技術者にとって設計、製作及び製造についての日常的な仕事であることを理解されたい。
【0012】
本発明の様々な実施形態の要素を導入するとき、数を明記しないで記載した要素及び「前記」と付した要素は、1つ以上の要素があることを意味するものとする。また用語「有する」、「含む」及び「持つ」は、排他的なものではなく、列挙した要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味するものとする。
【0013】
本発明の実施形態は、2段石炭処理プロセスを持つ熱統合型石炭処理システムを含む。この処理プロセスはまた、「石炭クリーニング(清浄処理)」プロセスとも呼ぶことができる。一実施形態では、2段処理プロセス(以後、「クリーニング・プロセス」とも呼ぶ)は弗化水素酸(HF)反応器及び硝酸(HNO3 )反応器を含むことができる。流体及びジャケットを使用すること等により、熱をHNO3 反応器から抽出してHF反応器へ供給し、これによりHF反応器内における反応速度を高めることができる。言い換えると、流体が、2つの反応器の間を流れるとき熱伝達媒体として作用する。他の実施形態では、熱交換器を使用することにより、加熱された流体をHF反応器へ供給する前に、加熱された流体に一層多くの熱を加えることができる。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態による熱統合型石炭処理システム10を示す。システム10は、その中に様々な不純物及び不所望な物質が混入している供給石炭材料12を受け取ることができる。例えば、このような不純物及び不所望な物質としては、シリカ、アルミナ、硫黄、黄鉄鉱、ハロゲンなどが挙げられる。実施形態に応じて、本書に記載のシステム10は、供給石炭材料12から幾分かの又は全ての不純物及び不所望な物質を除去することができる。すなわち、以下に説明する石炭処理システム10の熱統合システムを持つ任意の機器及びプロセスの組合せを、任意の特定の実施形態で具現化することができる。
【0015】
供給石炭材料12は、前処理装置14においてクリーニング(清浄処理)の前に前処理することができる。前処理装置14は1つ以上の装置を並列又は直列に含むことができる。このような前処理(preparation) には、分離装置、乾燥器、物理的前処理装置、又はそれらの任意の組合せを含むことができる。分離装置は、任意の適当な物理的分離装置を使用して石炭から鉱物質(例えば、脈石)又は他の物質を除去することを含むことができる。乾燥器は、供給石炭材料中の固有の水分の幾分か又は全てを除去することができる。物理的前処理装置は、供給石炭材料12中の石炭を研削し、細断し、磨砕し、破砕し、微粉砕し、ブリケット作成し、又はパレタイジング(palletizing) することによって、供給石炭材料12を物理的に処理することができる。物理的前処理装置は、石炭を所望のサイズ及び/又は形状に物理的に処理するように構成することができる。
【0016】
前処理の後、前処理済み供給石炭材料12は予備浸出装置20へ送ることができる。予備浸出装置20は石炭に対して塩化水素酸(HCl)のような弱酸浸出液により浸出処理を行うことができる。予備浸出装置20は供給石炭材料12からカルシウム及び/又はマグネシウムを部分的に又は完全に除去することができる。このような除去操作は、これらの金属の低減が、カルシウム及びマグネシウム・イオンと酸浸出液中の弗化物との反応を防止するために望ましいときに用いることができる。予備浸出の後、供給石炭材料12は第2の分離装置22へ通すことができ、そこで廃酸及び他の物質を供給石炭材料12から分離することができる。予備浸出からの廃酸は酸再生及び/又はリサイクル・システム24へ送ることができる。供給石炭材料12はまた、供給石炭材料12から任意の他の酸又は他の物質を更に除去するために、洗浄(washing) 装置26へ供給することができる。
【0017】
次いで、石炭は2段化学的クリーニング・プロセス28へ供給することができ、この2段化学的クリーニング・プロセス28は、1つの段から別の段へ熱が伝達されるように、熱統合(heat integration)を有する。2段化学的クリーニング・プロセス28は、HF反応器30内で弗化水素酸(HF)を用いて浸出処理を行う第1段と、HNO3 反応器32内で硝酸(HNO3 )を用いて浸出処理を行う第2段とを含むことができる。HF反応器30は弗化水素酸と洗浄装置26からの供給石炭材料12とを組み合わせて、供給石炭材料12からシリカ及びアルミナのような灰化合物の幾分か又は全てを浸出させることができる。HF反応器30は、浸出反応速度を増大させるために加熱することができる。一実施形態では、HF反応器30内での反応は約150°Fで遂行することができる。
【0018】
第1段のHF反応器30の後、供給石炭材料12から廃酸を除去するために供給石炭材料12は分離装置34へ供給することができる。廃酸は酸リサイクル及び/又は再生装置36へ供給することができる。次いで、供給石炭材料12は第2段、すなわち、HNO3 反応器32へ供給される。HNO3 反応器は硝酸と第1段からの供給石炭材料12とを組み合わせて、石炭から硫黄を除去することができる。
【0019】
HNO3 反応器32内での反応は、HF反応器30内での反応よりも発熱性が高く、従って利用可能な熱を発生することができる。回路38で示されているように、HNO3 反応器32から発生された熱はHF反応器30へ供給して、HF反応器30で使用される熱の幾分か又は全てを供給することができる。実施形態によっては、HNO3 反応器32からの熱は、回路38を通って反応器30のジャケット39(例えば、反応器室を取り囲む又は裏張りする中空の流体空洞)又は他の外被へ流れる流体(例えば、水、蒸気など)によってHF反応器30へ伝達することができる。他の実施形態では、HNO3 反応器32からの熱は、HF反応器30に結合された加熱装置を作動するために間接的に使用することができる。実施形態によっては、流体はHF反応器30とHNO3 反応器32との間で循環させることができる。他の実施形態では、流体が循環するにつれて、熱をHF反応器30からHNO3 反応器32へ、またHNO3 反応器32からHF反応器30へ伝達することができる。このようにして、各反応器で生じる反応に応じて、熱は反応器30及び32のいずれかに加え又はいずれかから除去することができる。更に、更に他の実施形態では、第3の、第4の、又は追加の酸浸出反応器を含むことができ、且つそれらの反応器は上記の態様で流体へ又は流体から熱を伝達することができる。
【0020】
回路38は、反応器30及び32の間の流体流(例えば、流量)並びに各反応器30及び32の加熱速度(及び冷却速度)を制御し調整するための制御装置37を持つ制御システムを含むことができる。例えば、制御装置37は、流れを循環させ調整するために、ポンプ、弁、センサ、制御器及びコンピュータを含むことができる。実施形態によっては、制御装置37は、反応器30、反応器32及び/又は流体の温度帰還、圧力帰還、流量又は任意の他のパラメータに基づいて、流れを制御し調整することができる。
【0021】
他の実施形態では、2段化学的クリーニング・プロセス28は、第1段内にHNO3 反応器32を含み且つ第2段内にHF反応器30を含むことができる。このような実施形態では、石炭は第1段内でHNO3 により浸出処理を受けることができ、次いでHF反応器30へ供給することができる。ところで、このような実施形態では、熱は、前に述べたようにHNO3 反応器32からHF反応器30へ供給することができる。
【0022】
2段化学的クリーニング・プロセス28を出た後、供給石炭材料12は分離装置40へ通すことができる。分離装置40は供給石炭材料12から廃酸を除去することができ、分離装置40によって除去された酸は酸リサイクル及び/又は再生システム42へ供給することができる。明らかなように、酸リサイクル及び/又は再生システム24、36及び42は除去された酸の処理のための単一のシステムとすることができ、或いは各プロセスからの酸の個別の処理のための相異なるシステムとすることができる。
【0023】
供給石炭材料12は、洗浄装置44及び/又は熱処理装置46のような任意の1つの装置又は装置の組合せに供給することができる。例えば、洗浄装置44は石炭を水又は他の流体によって洗浄して、石炭から残留した酸又は他の物質を除去することができる。熱処理装置46は、石炭からハロゲンを除去するが揮発性炭化水素の除去を防止するのに適した温度に石炭を加熱することができる。熱処理装置46はまた、供給石炭材料12からのハロゲンの除去を容易にするために、不活性ガスの様な掃除ガスで供給石炭材料12を処理することを含むことができる。供給石炭材料12の取り出し後、石炭は更なるプロセスへ、例えば、石炭を原材料の幾分か又は全てとして使用する発電システムなどへ送ることができる。例えば、クリーニング済み石炭は、燃焼システム、ガス化システム、統合ガス化複合サイクル(IGCC)システム、液化、コークス化又は任意の適当プロセスへ供給することができる。
【0024】
図2は、本発明の別の実施形態に従った熱統合型石炭処理システム50を示す。システム50には、その中に様々な不純物及び不所望な物質が混入している供給石炭材料52を供給することができる。前に述べたように、このような不純物及び不所望な物質としては、シリカ、アルミナ、硫黄、黄鉄鉱、ハロゲンなどが挙げられる。実施形態に応じて、以下に記載のシステム50は、供給石炭材料52から幾分かの又は全ての不純物及び不所望な物質を除去することができる。すなわち、以下に説明する石炭処理システム50の熱統合システムを持つ任意の機器及びプロセスの組合せを、任意の特定の実施形態で具現化することができる。
【0025】
前に述べたように、供給石炭材料52は、前処理装置54においてクリーニング(清浄処理)の前に前処理することができる。前処理装置54は1つ以上の装置を並列又は直列に含むことができる。このような前処理(preparation) には、分離装置、乾燥器、物理的前処理装置、又はそれらの任意の組合せを含むことができる。分離装置は、任意の適当な物理的分離装置を使用して石炭から鉱物質(例えば、脈石)又は他の物質を除去することを含むことができる。乾燥器は、供給石炭材料52中の固有の水分の幾分か又は全てを除去することができる。また前に述べたように、物理的前処理装置は、供給材料52中の石炭を研削し、細断し、磨砕し、破砕し、微粉砕し、ブリケット作成し、又はパレタイジングすることによって、供給石炭材料52を物理的に処理することができる。物理的前処理装置は、石炭を所望のサイズ及び/又は形状に物理的に処理するように構成することができる。
【0026】
前に述べたように、前処理の後、供給石炭材料52は予備浸出装置60へ送ることができる。予備浸出装置60は石炭に対して塩化水素酸(HCl)のような弱酸浸出液により浸出処理を行うことができる。予備浸出装置60は供給石炭材料52からカルシウム及び/又はマグネシウムを部分的に又は完全に除去することができる。予備浸出の後、供給石炭材料52は第2の分離装置62へ通すことができ、そこで廃酸及び他の物質を供給石炭材料52から分離することができる。予備浸出からの廃酸は酸再生及び/又はリサイクル・システム64へ送ることができる。また、供給石炭材料52は洗浄装置66へ供給して、供給石炭材料52から任意の他の酸又は他の物質を更に除去することができる。
【0027】
システム50は、供給石炭材料52を清浄処理するために熱統合を備えた2段化学的クリーニング・プロセス68を含むことができる。2段化学的クリーニング・プロセス68は、HF反応器70内で弗化水素酸(HF)を用いて浸出処理を行う第1段と、HNO3 反応器72内で硝酸(HNO3 )を用いて浸出処理を行う第2段とを含むことができる。HF反応器70は弗化水素酸と洗浄装置66からの供給石炭材料52とを組み合わせて、供給石炭材料52からシリカ及びアルミナのような灰化合物の幾分か又は全てを浸出させることができる。HF反応器70は、浸出反応速度を増大させるために加熱することができる。一実施形態では、HF反応器70内での反応は約150°Fで遂行することができる。
【0028】
第1段のHF反応器70の後、供給石炭材料52から廃酸を除去するために供給石炭材料12は分離装置74へ供給することができる。廃酸は酸リサイクル及び/又は再生装置76へ供給することができる。次いで、供給石炭材料72は第2段、すなわち、HNO3 反応器72へ供給される。HNO3 反応器は硝酸と第1段からの供給石炭材料52とを組み合わせて、石炭から硫黄を除去することができる。
【0029】
HNO3 反応器72内の反応は、HF反応器70内の反応よりも発熱性が高く、従って利用可能な熱を発生することができる。回路78で示されているように、HNO3 反応器72から発生された熱は流体を介して熱交換器80へ、次いでHF反応器70へ供給して、HF反応器70で使用される熱の幾分か又は全てを供給することができる。熱交換器80はHNO3 反応器72からHF反応器70へ供給される熱の制御を行うことができる。例えば、熱交換器80は、過剰な熱がHF反応器70のために利用されない場合にHNO3 反応器からの加熱された流体から該過剰な熱を除去することができる。別の例では、熱交換器80は、加熱された流体がHF反応器70のために充分な熱を供給しない場合、HNO3 反応器からの該加熱された流体に熱を加えることができる。実施形態によっては、HNO3 反応器72からの熱は、回路78を通って反応器70のジャケット81(例えば、反応器室を取り囲む又は裏張りする中空の流体空洞)又は他の外被へ供給される流体(例えば、水、蒸気など)によってHF反応器70へ伝達することができる。実施形態によっては、流体はHF反応器70とHNO3 反応器72との間で循環させることができる。他の実施形態では、流体が循環するにつれて、熱をHF反応器70からHNO3 反応器72へ、またHNO3 反応器72からHF反応器70へ伝達することができる。このようにして、各反応器で生じる反応に応じて、熱は反応器70及び72のいずれかに加え又はいずれかから除去することができる。更に、また他の実施形態では、第3の、第4の、又は追加の酸浸出反応器を含むことができ、且つそれらの反応器は上述した態様で流体へ又は流体から熱を伝達することができる。
【0030】
回路78は、反応器70及び72の間の流体流(例えば、流量)並びに各反応器70及び72の加熱速度(及び冷却速度)を制御し調整するための制御装置79を持つ制御システムを含むことができ又は該制御システムに結合することができる。例えば、制御装置79は、流れを循環させ調整するために、ポンプ、弁、センサ、制御器及びコンピュータを含むことができる。実施形態によっては、制御装置79は、反応器70、反応器72及び/又は流体の温度帰還、圧力帰還、流量又は任意の他のパラメータに基づいて、流れを制御し調整することができる。
【0031】
前に述べたように、他の実施形態では、2段化学的クリーニング・プロセス68は、第1段内にHNO3 反応器72を含み且つ第2段内にHF反応器70を含むことができる。このような実施形態では、石炭は第1段内でHNO3 により浸出処理を受けることができ、次いで第2段内でHFによる浸出処理のためにHF反応器70へ供給することができる。ところで、このような実施形態では、熱は、例えば熱交換器80を介すること等により、前に述べたようにHNO3 反応器72からHF反応器70へ供給することができる。
【0032】
前に述べたように、2段化学的クリーニング・プロセス68を出た後、供給石炭材料52は分離装置82へ通すことができる。分離装置82は供給石炭材料52から廃酸を除去することができ、また分離装置40によって除去された酸は酸リサイクル及び/又は再生システム84へ供給することができる。明らかなように、酸リサイクル及び/又は再生システム64、76及び84は、除去された酸の処理のための単一のシステムとすることができ、或いは各プロセスからの酸の個別の処理のための相異なるシステムとすることができる。
【0033】
前に述べたように、供給石炭材料52は、洗浄装置86及び/又は熱処理装置88のような任意の1つの装置又は装置の組合せに供給することができる。例えば、洗浄装置86は石炭を水又は他の流体によって洗浄して、石炭から残留した酸又は他の物質を除去することができる。熱処理装置88は、石炭からハロゲンを除去するが揮発性炭化水素の除去を防止するのに適した温度に石炭を加熱することができる。熱処理装置88はまた、供給石炭材料52からのハロゲンの除去を容易にするために、不活性ガスの様な掃除ガスによる供給石炭材料52の処理を含むことができる。供給石炭材料52の取り出し後、石炭は更なるプロセスへ、例えば、石炭を原材料の幾分か又は全てとして使用する発電システムなどへ送ることができる。例えば、クリーニング済み石炭は、燃焼システム、ガス化システム、統合ガス化複合サイクル(IGCC)システム、液化、コークス化又は任意の適当プロセスへ供給することができる。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態に従った上述した熱統合型化学的処理のためのプロセス100を示す。図3に記載されたプロセスは、弁、配管、センサ、プロセス制御器などのような任意の適当な多様な制御装置及びシステムのより具現化することができる。本プロセスは、前に述べたような前処理及び予備浸出を行った後の供給石炭材料102から開始することができる。最初に、第1段の化学的クリーニング(例えば、浸出処理)をHF反応器(例えば、HF反応器30又は70)内で遂行することができる(ブロック104)。第1段の後、石炭は廃酸から分離して、第2段へ供給することができる。第2段のクリーニング(例えば、浸出処理)をHNO3 反応器(例えば、HNO3 反応器32又は72)内で遂行することができる(ブロック106)。
【0035】
前に述べたように、流体(例えば、水、蒸気など)を用いること等によって、HNO3 反応器から熱を取り出すことができる(ブロック108)。実施形態によっては、熱交換器(例えば、熱交換器80)を介すること等によって、加熱された流体に対して熱を加え又は除くことができる(ブロック110)。他の実施形態では、HNO3 反応器から取り出された熱を運ぶ加熱された流体は処理しないでそのままに留めることができる。次いで、該加熱された流体を(例えば、HF反応器のジャケットを介して)HF反応器へ直接供給することによって、HNO3 反応器からの熱をHF反応器へ供給することができる(ブロック112)。他の実施形態では、前に述べたように、HF反応器に結合された加熱装置(例えば、ボイラー)を作動すること等によって、熱を間接的に用いることができる。例示されているように、HNO3 反応器からのクリーニング済み石炭は更なるプロセスへ出力することができる(ブロック114)。
【0036】
本明細書は、最良の実施形態を含めて、本発明を開示するために、また当業者が任意の装置又はシステムを作成し使用し且つ任意の採用した方法を遂行すること含めて本発明を実施することができるようにするために、幾つかの例を使用した。本発明の特許可能な範囲は「特許請求の範囲」の記載に定めており、また当業者に考えられる他の例を含み得る。このような他の例は、それらが「特許請求の範囲」の文字通りの記載から差異のない構造的要素を持つ場合、或いはそれらが「特許請求の範囲」の文字通りの記載から実質的に差異のない等価な構造的要素を含む場合、特許請求の範囲内に入るものとする。
【符号の説明】
【0037】
10 熱統合型石炭処理システム
12 供給石炭材料
14 前処理装置
20 予備浸出装置
22 第2の分離装置
24 酸再生及び/又はリサイクル・システム
26 洗浄装置
28 2段化学的クリーニング・プロセス
30 弗化水素酸反応器
32 硝酸反応器
34 分離装置
36 酸リサイクル及び/又は再生装置
37 制御装置
38 回路
39 ジャケット
40 分離装置
42 酸リサイクル及び/又は再生システム
44 洗浄装置
46 熱処理装置
50 熱統合型石炭処理システム
52 供給石炭材料
54 前処理装置
60 予備浸出装置
62 第2の分離装置
64 酸再生及び/又はリサイクル・システム
66 洗浄装置
68 2段化学的クリーニング・プロセス
70 弗化水素酸反応器
72 硝酸反応器
74 分離装置
76 酸リサイクル及び/又は再生装置
78 回路
79 制御装置
80 熱交換器
81 ジャケット
82 分離装置
84 酸再生及び/又はリサイクル・システム
86 洗浄装置
88 熱処理装置
100 熱統合型化学的処理プロセス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弗化水素酸反応器(70)と、
前記弗化水素酸反応器(70)に結合された硝酸反応器(72)と、
前記弗化水素酸反応器(70)及び前記硝酸反応器(72)の間で熱を交換する流体と、
を有する石炭処理システム。
【請求項2】
前記弗化水素酸反応器と前記硝酸反応器との間に配置された熱交換器(80)を有している、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
熱交換器(80)が前記流体から熱を除去するように構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
熱交換器(80)が前記流体に熱を加えるように構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記弗化水素酸反応器(70)はジャケット(81)を有し、前記流体は前記ジャケット(81)に供給される、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記石炭処理システムは、前記弗化水素酸反応器(70)の出力から廃酸を除去するように構成された第1の分離器(74)を有している、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記弗化水素酸反応器(70)は、石炭(52)から、珪酸塩、アルミナ又はバナジウムの内の少なくとも1つを除去するように構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記硝酸反応器(72)は石炭(52)から硫黄を除去するように構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
多段石炭処理システム(28)を制御するように構成された制御システム(37)を有する石炭処理システムであって、
前記多段石炭処理システム(28)が、第1の酸を用いて第1の酸浸出プロセスを遂行するように構成された第1の浸出装置(30)を有する第1段(30)と、第2の酸を用いて第2の酸浸出プロセスを遂行するように構成された第2の浸出装置(32)を有する第2段(32)と、前記第1段(30)と前記第2段(32)との間を流れる熱伝達流体とを含んでおり、
前記制御システムが、前記第1段(30)及び第2段(32)の一方又は両方の加熱速度と、前記熱伝達流体の流量を制御すること、
を特徴とする石炭処理システム。
【請求項10】
前記第1の浸出装置(30)は、石炭(12)からシリカ、アルミナ又はバナジウムの内の少なくとも1つを除去するように構成されている、請求項9記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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