説明

熱線センサの光学ユニット

【課題】発光素子の位置設定が容易に行え、構成が単純で安価な熱線センサの光学ユニットを提供する。
【解決手段】光学系を有するハウジングと、該ハウジングの端部から略並行状態で延設された一対の側壁と、該側壁の先端に取り付けられ検知素子と発光素子が実装された基板と、を備え、基板は、その一方の面に検知素子が実装され他方の面の検知素子裏面に発光素子が実装されて一対の側壁に回動可能に支持され、少なくとも検知素子がハウジング方向に指向した位置と発光素子がハンジング方向に指向した位置に設定可能であることを特徴とする。前記基板は、基板本体と該基板本体を支持する支持板を有すると共に、支持板が軸を中心に回動した際に基板本体を所定位置で固定する機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知素子により赤外線を受光して侵入者等の移動物体を検知する熱線センサに係わり、特に、検知素子を適正な検知エリアが得られる位置に設定可能な光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、熱線センサの光学ユニットとしては、例えば図8及び図9に示すものが知られている。この光学ユニット1は、複数の反射鏡により略容器状に形成されたハウジング2と、このハウジング2の端部から略並行状態で延設された一対の側壁3と、両側壁3の先端に取り付けられ検知素子及び発光素子(図示せず)が実装された基板等を備え、ケース5に設けられた一対の光学ユニット取付板5aに支持されている。そして、このような光学ユニットを備えた熱線センサの場合、前記検知素子が各反射鏡の略焦点位置となるように光学ユニットを所定位置に設置する照準作業が必要である。
【0003】
従来、この照準作業は、例えば特許文献1に示す光学ユニットのように、発光素子が実装された基板を検知素子が実装された基板にバネで傾動可能に設けて、発光素子の位置を所定位置に設定した行ったり、あるいは、特許文献2の光学ユニットのように、発光素子と検知素子が実装された1枚の基板をバネによりスライド移動可能に設けて、発光素子の位置をバネとストッパ等により所定位置に設定して行うようにしたものが知られている。
【特許文献1】特開平11−203566号公報
【特許文献2】実開平5−27634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような光学ユニットにあっては、発光素子の位置調整のためにバネ等の構造部品を使用しているため、所定のバネ力のバネやストッパあるいは発光素子用の基板が必要になる等、その構成が複雑化して光学ユニット自体がコスト高になり易い。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、発光素子の位置設定が容易に行え、構成が単純で安価な熱線センサの光学ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、光学系を有するハウジングと、該ハウジングの端部から略並行状態で延設された一対の側壁と、該側壁の先端に取り付けられ検知素子と発光素子が実装された基板と、を備え、前記基板は、その一方の面に検知素子が実装され他方の面に発光素子が実装されて前記一対の側壁に回動可能に支持され、少なくとも検知素子がハウジング方向に指向した位置と発光素子がハンジング方向に指向した位置とに設定可能であることを特徴とする。
【0007】
そして、前記基板は、請求項2に記載の発明のように、検知素子及び発光素子が実装された基板本体と、該基板本体を支持しその両側に軸と突起がそれぞれ形成された支持板を有すると共に、前記支持板が軸を中心に回動した際に前記基板本体を所定位置で固定する機能を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、ハウジングから延設された一対の側壁の先端に取り付けられた検知素子と発光素子が実装された基板が、側壁に回動可能に支持されて検知素子がハウジング方向に指向した位置と発光素子がハンジング方向に指向した位置とにそれぞれ設定可能であるため、照準作業時に基板を回動させて発光素子をハウジング方向に指向させることで、発光素子を例えば検知素子の位置に簡単に設定できて、バネ、シャフト等の構成部品を用いず構成簡易にして安価に形成でき、それによって、コスト安価で小型な熱線センサを実現することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、基板が基板本体と軸及び突起を有する支持板とを有すると共に、基板本体を所定位置に固定する機能を有するため、発光素子を所定位置に簡単かつ確実に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図7は、本発明に係わる光学ユニットを備えた熱線センサの一実施形態を示し、図1がその光学ユニットを備えた熱線センサの設置状態の斜視図、図2がその平面図、図3がその側面図、図4〜図7が光学ユニットの動作状態及び照準作業状態を示す平面図及び側面図である。なお、以下の説明において、図8及び図9に示す光学ユニットと同一部位には、同一符号を付して説明する。
【0011】
図1及び図2に示すように、熱線センサ10は、警戒エリアの天井(取付面)に取り付けられるベース12と、このベース12に着脱可能に取り付けられると共に内部に光学ユニット11が取り付けられたケース5(図8参照)と、このケース5を覆うように着脱可能に取り付けられたカバー13と、前記ベース12、ケース5及びカバー13を互いに着脱可能に係止させるリング状係止部材14等を備えている。
【0012】
前記ベース12は、略円盤状に形成されて、長孔からなる複数の取付孔(図示せず)から図示しない取付ネジを天井にねじ込むことにより、天井に略密着状態で取り付けられるようになっている。また、前記リング状部材14は、所定幅の円環形状で例えば円周方向の十字位置に係止手段(図示せず)が形成され、この係止手段をケース5、カバー13及びベース12に設けた図示しない係止部に係止させることにより、ケースに取り付けられたリング状係止部材14の回動動作によって、ケース5に対してベース12及びカバー13が互いに着脱されるようになっている。
【0013】
前記光学ユニット11は、図2及び図3に示すように、複数の反射鏡により略容器状に形成されたハウジング2と、このハウジング2の端部から略並行状態で延設された一対の側壁3と、この両側壁3の先端に取り付けられて検知素子16と発光素子17が実装された基板15等を備えている。
【0014】
前記各側壁3は、例えば所定板厚の樹脂板(もしくは金属薄板)で形成され、その外面の所定位置には外方向に突出状態で軸18がそれぞれ設けられ、この軸18が前記光学ユニット取付板5aの孔に嵌合されることにより、光学ユニット11自体がケース5(光学ユニット取付板5a)に対して回動(傾動)可能に配設されている。また、各側壁3の下部外面には、位置決め用の噛合部19が形成され、この噛合部19にケース5に設けた噛合部(図示せず)が噛合することにより、光学ユニット11の照準作業時の設置角度が所定に設定されるようになっている。
【0015】
前記基板15は、プリント基板等からなる基板本体15aと、該基板本体15aを支持する支持板15bを有し、支持板15bの両側面には軸20が一体形成され、この軸20が前記各側壁3の孔に嵌合されている。また、支持板15bの両側面上部には、外側に所定寸法突出すると共に先端が球状に形成された突起21がそれぞれ一体形成され、この突起21に対応して前記各側壁3上端部に回り止め用の凹部22が形成され、図2及び図3の設置状態において、図3(b)に示すように凹部22に突起21が係合状態とされている。
【0016】
さらに、支持板15bは、上下の各二箇所に設けた爪23が基板本体15aの上下端部に係止されることにより、基板本体15aを支持するように構成されている。なお、基板本体15aは、例えば両面プリント基板が使用され、その一方の面(設置状態においてハウジング2側)に検知素子15が実装され、他方の面(設置状態において反ハウジング2側)に発光素子16と例えば処理回路等を構成する各種電子部品(図示せず)が実装されており、この基板本体15aの他方の面が例えば透明な樹脂カバー(図示せず)で覆われることにより電子部品等が保護されている。
【0017】
このように構成された光学ユニット11は、設置状態において次のように動作する。すなわち、図2及び図3に示すように、設置状態においては、基板15の検知素子16がハウジング2方向に指向し発光素子17が反ハウジング2方向に指向しており、後述する照準作業で設定された警戒エリア内の例えば侵入者から発せられる遠赤外線が基板15の検知素子16で受光される。そして、この検知素子16で受光した検知信号が予め設定してある所定の閾値以上となった場合に、基板15の処理回路から異常信号が出力されて警備会社に通報されたり警報音が発せられることになる。
【0018】
一方、熱線センサ10を設置する際の光学ユニット11の照準作業は、次のようして行う。すなわち、ベース12及びケース5を天井に設置しカバー13を取り外して光学ユニット11を露出させた状態で、図2及び図3に示す状態から、基板15の支持板15bを手で持ちその上部を手前側に引くことにより、図4及び図5に示すように、基板15を軸20を中心に矢印イの如く回動させる。この基板15の回動に追従して支持板15bに設けた突起21も回動し、突起21の先端が側壁3の内面に当接した状態で回動して側壁3自体が変形して外側に拡がった状態(図4参照)となる。この時、突起21の先端が球状に形成されると共に、突起21の突出寸法が基板15の回動に支障ない最低寸法に設定されていることから、側壁3を僅かに変形させつつ基板15がスムーズに回動することになる。
【0019】
そして、基板15が略180度回動すると、図6及び図7に示すように、基板本体15aの検知素子16が反ハウジング2側に位置し、発光素子17がハウジング2側に位置した状態となり、この状態で発光素子17から照射されて反射鏡で反射された可視光が警戒エリアをカバーしているか否かが作業者により確かめられる。この時、光学ユニット11のケース5への取付角度を前記噛合部19を利用して行うこと等により、光学ユニット11が所定位置に設定されて、図2及び図3に示す設置状態に設定されることになる。つまり、基板15の表裏面の対向位置に検知素子16と発光素子17を実装し、この基板15を側壁3に対して180度回動可能に配設することにより、検知素子16の位置に発光素子17を簡単かつ高精度に位置させることができ、この位置で照準作業が行えることになる。
【0020】
このように、上記実施形態の光学ユニット11によれば、ハウジング2から延設された一対の側壁3の先端に検知素子16と発光素子17が実装された基板15を取り付け、この基板15を側壁3に回動可能に支持させて検知素子16がハウジング2方向に指向した位置と発光素子17がハンジング2方向に指向した位置とに設定できるため、照準作業時に基板15を180度回動させて発光素子17をハウジング2側に指向させることで、発光素子17を検知素子16の位置に簡単に設定することができる。その結果、発光素子17を検知素子16の位置に設定できて、従来ようなバネ、シャフト等の構成部品を用いずに光学ユニット11を構成簡易にして安価に形成でき、コスト安価で小型な熱線センサ10を実現することが可能となる。
【0021】
また、基板15が基板本体15aと軸20及び突起21を有する支持板15bを有し、支持板15bが軸20を中心に回動した際に突起21により側壁3を変形させつつ回動するため、側壁3の変形を利用して基板15を回動動作させることができて、回動機構を簡略化して光学ユニット11自体を一層安価に形成することができる。また同時に、突起21や凹部22により基板15が固定機能を有することから、基板15(発光素子17)を照準作業に最適な位置に設置位置に簡単に固定することができて、例えば照準作業自体の効率化を図ることができる。
【0022】
さらに、支持板15bが基板本体15aに爪23により着脱可能に係止されているため、支持板15aを基板本体15bに簡単に取り付けできる等、光学ユニット11の組立作業や照準作業等の作業性を向上させることができる。また、基板15の突起21が凹部22に係合することにより回り止めされるため、設置状態時の基板15の動きを防止して安定した設置状態が得られると共に、基板15の発光素子17側が樹脂カバーによって覆われているため、電子部品への塵埃の堆積や各種作業時の破損を防止できる等、長期に亘り安定した検知動作の熱線センサ10を得ることができる。
【0023】
また、天井に取り付けられるベース12と、光学系や検知素子等からなる光学ユニット11が取り付けられるケース5及びケース5を覆うように配置されるカバー13が、カバー13の外周部に配置されるリング状係止部材14の回動動作によって着脱されるため、リング状係止部材14の回動操作のみにより、ケース5に対してカバー13及びベース12を簡単に着脱できて、熱線センサ10の設置作業やメンテナンス作業の作業性を向上させることができると共に、熱線センサ10自体の小型化を図ることもできる。
【0024】
なお、上記実施形態においては、基板15の回動を支持板15bに設けた突起21で側板3を変形させつつ回動させたが、本発明はこの構成に限定されず、例えば支持板15bに設けた突起21を側板3への当接で変形(移動も含む)させつつ回動させたり、側板3と突起21の両方を変形させつつ回動させることもできるし、突起21を側板3に設ける構成とすることもできる。また、上記実施形態においては、基板本体15aを支持板15bで支持し、この支持板15bを回動可能に設けたが、例えば基板本体15aに軸20や突起21を直接固定して回動させることもできるし、基板15の回動時に側壁3等が変形しない回動機構を採用することも可能である。さらに、上記実施形態における熱線センサ10のケースやカバー等の構造も一例であって、例えばベース12とケース5及びカバー13をそれぞれ互いに着脱可能とした従来の構造も採用する等、本発明に係わる各発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、ベースを介して取付面としての天井に取り付けられる熱線センサに限らず、取付面としての壁面上部等に取り付けられる各種熱線センサの光学ユニットにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係わる光学ユニットを備えた熱線センサの一実施形態を示す斜視図
【図2】同その光学ユニットの設置状態時の平面図
【図3】同その側面図
【図4】同光学ユニットの動作時の平面図
【図5】同その側面図
【図6】同光学ユニットの照準作業時の平面図
【図7】同その側面図
【図8】従来の熱線センサのカバーを取り外した状態の内部斜視図
【図9】同その光学ユニットの斜視図
【符号の説明】
【0027】
2・・・ハウジング、3・・・側壁、5・・・ケース、5a・・・光学ユニット取付板、10・・・熱線センサ、11・・・光学ユニット、12・・・ベース、13・・・カバー、14・・・リング状係止部材、15・・・基板、15a・・・基板本体、15b・・・支持板、16・・・検知素子、17・・・発光素子、18・・・軸、20・・・軸、21・・・突起、22・・・凹部、23・・・爪。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系を有するハウジングと、該ハウジングの端部から略並行状態で延設された一対の側壁と、該側壁の先端に取り付けられ検知素子と発光素子が実装された基板と、を備え、
前記基板は、その一方の面に検知素子が実装され他方の面に発光素子が実装されて前記一対の側壁に回動可能に支持され、検知素子がハウジング方向に指向した位置と発光素子がハンジング方向に指向した位置とに設定可能であることを特徴とする熱線センサの光学ユニット。
【請求項2】
前記基板は、検知素子及び発光素子が実装された基板本体と、該基板本体を支持しその両側に軸と突起がそれぞれ形成された支持板を有すると共に、前記支持板が軸を中心に回動した際に前記基板本体を所定位置で固定する機能を有することを特徴とする請求項1に記載の熱線センサの光学ユニット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−108597(P2008−108597A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290845(P2006−290845)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000101400)アツミ電氣株式会社 (69)
【Fターム(参考)】