説明

熱融着性プロピレン系重合体積層フィルム及びその用途

【課題】高速、低圧下における低温ヒートシール性、密封性、ラミネート強度に優れ、且つ耐ブロッキング性、包装材料に好適な、耐衝撃性、スリップ性、透明性、光沢性等を有する熱融着性プロピレン系重合体積層フィルムを提供する。
【解決手段】DSCに基づく結晶融解曲線から求められたピーク温度(Tp)が110〜140℃及び融解開始温度(Ts)と融解終了温度(Te)との差(Te−Ts)が45℃未満のプロピレン・α―オレフィン共重合体(A)から得られる熱融着層の片面に、直鎖状低密度ポリエチレン(B)から得られる中間層を介してプロピレン・α―オレフィン共重合体(A)から得られるラミネート層が積層されてなることを特徴とする熱融着性プロピレン系重合体積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高速、低圧下における低温ヒートシール性、密封性、ラミネート強度に優れ、且つ耐ブロッキング性、包装材料に好適なスリップ性、透明性、耐衝撃強度等を有する熱融着性プロピレン系重合体積層フィルム及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン系ランダム共重合体から得られるフィルムは低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のエチレン系重合体から得られるフィルムに比べて、ヒートシール強度、透明性、腰の強さ、耐ブロッキング性、ホットタック性、耐傷付き性、耐熱性等に優れるので、菓子、パン、野菜、麺等の食品、或いはシャツ、ズボン等の衣料品を始めとする日用品等あらゆる分野の製品の包装材料として広く使用されている。そして、かかるプロピレン系ランダム共重合体からなるフィルムは低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のエチレン系重合体からなるフィルムに比べると低温ヒートシール性に劣ることから、その改良が常に要求されている。低温ヒートシール性を改良する方法としては、例えば結晶性プロピレンランダム共重合体と1−ブテン系ランダム共重合体との組成物(特許文献1)、メタロセン触媒を用いた重合方法により得られるプロピレン・α―オレフィンランダム共重合体(例えば、特許文献2)等、種々提案されている。しかしながら、いずれのフィルムも低温ヒートシール性と剛性、密封性、ラミネート強度、耐ブロッキング性等のバランスに優れるものは得られていない。
【0003】
【特許文献1】特開昭61−106648号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2002−20430号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、高速、低圧下における低温ヒートシール性、密封性、ラミネート強度に優れ、且つ耐ブロッキング性、包装材料に好適なスリップ性、透明性、耐衝撃強度等を有する熱融着性プロピレン系重合体多層フィルムを得ることを目的として種々検討した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、DSCに基づく結晶融解曲線から求められたピーク温度(Tp)が110〜140℃及び融解開始温度(Ts)と融解終了温度(Te)との差(Te−Ts)が45℃未満のプロピレン・α―オレフィン共重合体(A)から得られる熱融着層の片面に、直鎖状低密度ポリエチレン(B)から得られる中間層を介してプロピレン・α―オレフィン共重合体(A)から得られるラミネート層が積層されてなることを特徴とする熱融着性プロピレン系重合体積層フィルム及びその用途に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の熱融着性プロピレン系重合体積層フィルムは、低温ヒートシ−ル性、耐ブロッキング性、包装材料に好適な耐衝撃性、スリップ性、柔軟性、透明性等を有する熱融着性プロピレン系重合体積層フィルムとしてそのままでも包装用フィルム、中でも食パン、菓子パン等のパン類、果物、野菜等の生鮮食品類、繊維、衣料、文具及び通販用雑誌類の包装用フィルムとして好適に使用し得る。
又、本発明の熱融着性プロピレン系重合体積層フィルムは更に、耐衝撃性に優れ、且つ耐ブロッキング性、包装材料に好適なスリップ性、透明性等を有し、ヒートシ−ルされた部分が奇麗な見栄えのする包装体が得られるので、かかる特徴を活かして、上記以外の用途として、飴、せんべい、チョコレ−ト菓子、チョコレ−ト等のお菓子類、珍味等の嗜好品、ハム、ソーセージ、畜肉等の蓄肉加工品、靴下、化粧品等日用雑貨品等の包装材料(規格袋、自働包装用)にも好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(A)
本発明に係わるプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)は、DSCに基づく結晶融解曲線から求められたピーク温度(Tp)が110〜140℃、好ましくは115〜130℃、融解開始温度(Ts)と融解終了温度(Te)との差(Te−Ts)が45℃未満、好ましくは30〜40℃の範囲にあり、好ましくは融解開始温度(Ts)とピーク温度(Tp)との差(Tp−Ts)が35℃未満、より好ましくは25〜34℃の範囲にある。プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)のα―オレフィンの含有量は上記熱融解特性を有する限りとくに制限はされないが、通常はα―オレフィンの含有量は1.0〜20重量%、より好ましくは1.5〜15重量%の範囲にある。α―オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル・1−ペンテン、1−オクテン等が例示できる。これらの中では、エチレン及び/又は1−ブテンとのランダム共重合体が好ましい。又、MFR(メルトフローレート;ASTM D−1238 荷重2160g、温度230℃)はフィルムとすることができる限り特に限定はされないが、通常0.5〜20g/10分、好ましくは2〜10g/10分の範囲にある。本発明に係わるプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)は通常、分子量分布(重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比で表される)が2〜3の範囲にある。
本発明に係わるプロピレン・α―オレフィン共重合体(A)は、熱融着性プロピレン系重合体積層フィルムの熱融着層の原料、及びラミネート層の原料となる。
本発明に係わるプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)の上記ピーク温度(Tp)、融解開始温度(Ts)及び融解終了温度(Te)は以下の方法で測定した。プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)約5mgを秤量し、セイコ−電子工業株式会社製の示差走査熱量計(タイプDSC220モジュ−ル)を用いて、昇温速度;10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、降温速度;100℃/分で0℃まで冷却し、再度、昇温速度;10℃/分で0℃〜200℃まで昇温したときの融解曲線を測定し、かかる融解曲線から、ASTM D3419の方法に習い、融解曲線からピ−ク温度(Tp)、融解開始温度(Ts)、融解終了温度(Te)を求めた。尚、本発明では、ASTM D3419に記載の(Tpm1)を(Tp)、(Teim)を(Ts)及び(Tefm)を(Te)とした。
【0008】
直鎖状低密度ポリエチレン(B)
本発明に係わる直鎖状低密度ポリエチレン(B)は、通常、密度が0.900〜0.940g/cm、好ましくは0.905〜0.935g/cm、MFR(ASTM D1238 荷重2160g、温度190℃)が0.5〜20g/10分、好ましくは1〜10g/10分のエチレンとプロピレン、ブテン−1、ヘプテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチル−ペンテン−1等の炭素数が3〜10のα−オレフィン、好ましくは炭素数が6以上のα―オレフィンとのランダム共重合体である。又、かかる直鎖状低密度ポリエチレン(B)は、分子量分布(重量平均分子量:Mw、と数平均分子量:Mn、との比:Mw/Mnで表示)が通常1.5〜4.0、好ましくは1.8〜3.5の範囲にある。このMw/Mnはゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。
又、直鎖状低密度ポリエチレン(B)は、示差走査熱量計(DSC)の昇温速度10℃/分で測定した吸熱曲線から求めた鋭いピークが1個ないし複数個あり、該ピークの最高温度、すなわち融点が通常70〜130℃、好ましくは80〜120℃の範囲にある。本発明に係わる直鎖状低密度ポリエチレン(B)は、熱融着性プロピレン系重合体積層フィルムの中間層の原料となる。
【0009】
上記のような直鎖状低密度ポリエチレン(B)は、チーグラー触媒、シングルサイト触媒等を用いた従来公知の製造法により調整することができる。たとえば直鎖状低密度ポリエチレン(B)は、遷移金属のメタロセン化合物を含む触媒を用いて調整することができる。このメタロセン化合物を含む触媒は、(a)遷移金属のメタロセン化合物と、(b)有機アルミニウムオキシ化合物と、(c)担体とから形成されることが好ましく、さらに必要に応じて、これらの成分と(d)有機アルミニウム化合物および/または有機ホウ素化合物とから形成さていてもよい。
なお、このようなメタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒、および触媒を用いた直鎖状低密度ポリエチレン(B)の調整方法は、たとえば特開平8−269270号公報に記載されている。
【0010】
本発明に係わるプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)、直鎖状低密度ポリエチレン(B)には本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、滑剤、核剤、顔料等の添加剤或いは他の重合体を必要に応じて配合することができる。
中でも、熱融着性プロピレン系重合体積層フィルムの熱融着層を構成するプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)にはシリカ、タルク、雲母、ゼオライトや更には金属アルコキシドを焼成して得た金属酸化物等の無機化合物粒子、ポリメタクリル酸メチル、メラミンホルマリン樹脂、メラミン尿素樹脂、ポリエステル樹脂等の有機化合物粒子等、種々公知のブロッキング防止剤を0.01〜1重量%添加しておくと、更に耐ブロッキング性が改良されたフィルムが得られるので好ましい。これらの中でも、シリカ、ポリメタクリル酸メチルが耐ブロッキング性、透明性の面から特に好ましい。
【0011】
又、熱融着性プロピレン系重合体積層フィルムの熱融着層を構成するプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)には、炭化水素系、脂肪酸系、高級アルコ−ル系、脂肪族アミド系、金属石鹸系、エステル系等、種々公知の滑剤を0.01〜1重量%添加しておくと、更にスリップ性が改良されたフィルムが得られるので好ましい。これらの中でも即効性のあるエルカ酸アミドと遅効性のビスオレイン酸アミドあるいはベヘニン酸アミド等の併用系にするとフィルム成形直後とその後の裁断加工時、更には印刷、ラミネ−ト、製袋加工時等の作業性をバランス良く改善することができる。
更に、熱融着性プロピレン系重合体積層フィルムの熱融着層を構成するプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)には、高密度ポリエチレン、ジベンジリデンソルビト−ル、クロル置換ジベンジリデンソルビト−ル、メチル置換ジベンジリデンソルビト−ル、ヒドロキシ−ジ−アルミニウム、ビスソルビシ−ル、リン酸ビスナトリウムメチレンビスアシッドホスフェ−トナトリウム塩等、種々公知の核剤(結晶化核剤)を0.01〜1.0重量%添加しておくと、フィルム成形時のロ−ル跡の発生を抑えたり、直後でのスリップ性・ブロッキング性が改良されたフィルムが得られるので好ましい。これらの中でも比較的添加しやすく臭い等も問題ないポリエチレン結晶化核剤を利用するとフィルム成形直後の品質と加工適性をバランス良く改善することができる。
熱融着性プロピレン系重合体積層フィルムのラミネート層を構成するプロピレン・α―オレフィン共重合体(A)にも種々公知のブロッキング防止剤を0.01〜1重量%添加しておくと、更に耐ブロッキング性が改良されたフィルムが得られるので好ましい。又、種々公知の滑剤を0.01〜1重量%添加しておくと、更にスリップ性が改良されたフィルムが得られるので好ましい。
【0012】
プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)の製造方法
本発明に係わるプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)は種々公知の方法、例えば、典型的には固体状チタン触媒成分と有機金属化合物触媒成分から形成される触媒、あるいはこれら両成分および電子供与体から形成される触媒を用いて製造することができる。
【0013】
固体状チタン触媒成分としては、各種方法で製造された三塩化チタンまたは三塩化チタン組成物、あるいはマグネシウム、ハロゲン、電子供与体、好ましくは芳香族カルボン酸エステルまたはアルキル基含有エーテルおよびチタンを必須成分とする、比表面積が好適には100m/g以上の担体付チタン触媒成分が挙げられる。特に後者の担体付触媒成分を用いて製造された重合体が好適である。有機金属化合物触媒成分としては、有機アルミニウム化合物が好適であり、具体的には、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムセスキハライド、アルキルアルミニウムジハライドなどが挙げられる。これらの化合物のうち、好適な有機金属化合物触媒成分は、使用する上記チタン触媒成分の種類によって異なる。
電子供与体は、窒素、リン、イオウ、酸素、ケイ素、ホウ素などを含む有機化合物であり、好適な具体例としては、これらの元素を有する有機エステル、有機エーテルなどを挙げることができる。
担体付触媒成分を用いた重合体の製造方法に関しては、たとえば特開昭50−108385号、特開昭50−126590号、特開昭51−20297号、特開昭51−28189号、特開昭52−151691号などの各公報に開示されている。
【0014】
本発明に係わるプロピレン・α−オレフィン共重合体(A)は、特にはシングルサイト触媒を用いて製造することができる。シングルサイト触媒は、活性点が均一(シングルサイト)である触媒であり、例えばメタロセン触媒(いわゆるカミンスキー触媒)やブルックハート触媒などがあげられる。例えばメタロセン触媒は、メタロセン系遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物および上記メタロセン系遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物とからなる触媒であり、無機物に担持されていてもよい。
前記メタロセン系遷移金属化合物としては、例えば特開平5−209014号、特開平6−100579号、特開平1−301704号、特開平3−193796号、特開平5−148284号、特開2000−20431号等に記載された化合物などがあげられる。
【0015】
有機アルミニウム化合物としては、アルキルアルミニウム、または鎖状あるいは環状アルミノキサン等があげられる。上記鎖状あるいは環状アルミノキサンは、アルキルアルミニウムと水とを接触させることにより生成される。例えば重合時にアルキルアルミニウムを加えておいて、後で水を添加するか、あるいは錯塩の結晶水または有機、無機化合物の吸着水とアルキルアルミニウムとを反応させることにより得られる。
前記メタロセン系遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物は、例えば特表平1−501950号、特開平3−207704号、特開2002−20431号等に記載された化合物などがあげられる。シングルサイト触媒を担持させる前記無機物としては、シリカゲル、ゼオライト、珪藻土等があげられる。重合方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、気相重合等があげられる。これらの重合はバッチ法であっても連続法であっても良い。重合条件は通常、重合温度;−100〜+250℃、重合時間;5分〜10時間、反応圧力;常圧〜300Kg/cm(ゲージ圧)である。
【0016】
熱融着性プロピレン系重合体積層フィルム
本発明の熱融着性プロピレン系重合体積層フィルムは、プロピレン・α―オレフィン共重合体(A)得られる熱融着層、直鎖状低密度ポリエチレン(B)から得られる中間層及びプロピレン・α―オレフィン共重合体(A)から得られるラミネート層からなる。かかる中間層は一層でも二層以上の多層であってもよい。熱融着性プロピレン系重合体積層フィルムの厚さは用途により種々決定されるが、三層構成の場合は、通常熱融着層の厚さが1〜80μm、好ましくは2〜50μm、中間層の厚さが8〜498μm、好ましくは16〜96μm、ラミネート層の厚さが1〜80μm、好ましくは2〜50μmの範囲にあり、積層フィルム全体の厚さが、10〜500μm、好ましくは20〜100μmの範囲にある。本発明の熱融着性プロピレン系重合体積層フィルムは、直鎖状低密度ポリエチレン(B)から得られる中間層を有することにより、熱融着性プロピレン系重合体積層フィルムの耐熱性、耐ブロッキング性、滑性、光沢性等の性能を低下させずに、直鎖状低密度ポリエチレンの耐衝撃性、落下破袋強度、突き刺し強度、低温インパクト強度等の強靭な強度とビニロンライクな柔軟性を付与できる。
なお、ラミネート層に用いるプロピレン・α―オレフィン共重合体(A)は、熱融着層に用いるプロピレン・α―オレフィン共重合体(A)と同じ範疇の樹脂であるが、熱融着層に用いるプロピレン・α―オレフィン共重合体(A)と同一であっても、異なってもよい。
本発明の熱融着性プロピレン系重合体積層フィルムは、印刷性あるいは他のフィルムとの接着性、滑り性等を改良するために、ラミネート層の表面を、たとえば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等で表面活性化処理を行っておいてもよい。
又、用途によっては熱融着性プロピレン系重合体積層フィルムのラミネート層に後述の基材層を貼り合せて種々の用途に用いることもできる。
【0017】
本発明の熱融着性プロピレン系重合体積層フィルムは公知の種々公知のフィルム成形方法を採用し得る。その際、フィルム成形するには、熱融着層及びラミネ−ト層を構成する上記組成のプロピレン・α―オレフィン共重合体(A)及び中間層の直鎖状低密度ポリエチレン(B)を所定量計量して直接フィルム成形機に投入する。かかる積層フィルムは夫々別個にフィルムを成形後貼り合せてもよいが、三層構造の多層ダイを用いて共押出し成形による方法が最も好ましい。
【0018】
基材層
本発明に係わる基材層は、熱可塑性樹脂からなるシート状またはフィルム状のもの、紙、アルミニュム箔等からなる。熱可塑性樹脂としては、種々公知の熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル・1−ペンテン、ポリブテン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、あるいはこれらの混合物等を例示することができる。これらのうちでは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等、延伸性、透明性が良好な熱可塑性樹脂が好ましい。又、かかる熱可塑性樹脂フィルムからなる基材は、無延伸フィルムであっても、延伸フィルムであっても良いし、1種或いは2種以上の共押し出し品、押出しラミ品、ドライラミ品等の積層体であっても良い。
又、基材層の片面あるいは両面を、本発明の熱融着性プロピレン系重合体積層フィルムのラミネート層との接着性を改良するために、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理、フレーム処理等の表面活性化処理を行っておいてもよい。基材層の厚さは、通常5〜1000μm、好ましくは9〜100μmの範囲にある。
【実施例】
【0019】
次に本発明を、実施例を通して説明するが、本発明はそれら実施例によって限定されるものではない。
【0020】
本発明における各種試験法および評価法は次の通りである。
(1)ヒートシール強度(N/15mm)
ヒートシール強度を測定する前に、予め三層共押出積層フイルムを38℃オ−ブン中で15時間エ−ジングした後放冷した。三層共押出積層フイルムの熱融着層面を重ね合せ、所定の温度で、幅5mmのシールバーにより、0.2MPaの圧力で1秒間、三層共押出積層フイルムの流れ方向に対して直角方向にヒートシールした後放冷した。これから15mm幅の試験片を切り取りクロスヘッド速度500mm/分でヒートシール部を剥離し、その強度をヒートシール強度とした。
(2)ブロッキング性
ブロッキング性を測定する前に、三層共押出積層フイルムを38℃のオ−ブン中で15時間エ−ジングした後放冷した。三層共押出積層フイルムから長さ:20mm×幅:100mmの短冊状の試験片を切り取り、熱融着性面を重ね合せたものを5個ずつ作製し、試験片の中央付近で十字方向に直角に市販のプレパラ−トではさむ。試験片とプレパラ−トが重なった5.2cmの面積部分に4kgの荷重を掛け、所定の温度条件で2日間エ−ジングした後、放冷する。その後熱融着層面を重ね合せたものをクロスヘッド速度300mm/分で剪断剥離を行い、最大強度をブロッキング力とした。ブロッキング力をn=5で評価し、平均値をブロッキング力(N/5.2cm)とした。
(3)インパクト衝撃強度(J)
インパクト衝撃強度を測定する前に、三層共押出積層フイルムを38℃のオ−ブン中で15時間エ−ジングした後放冷した。三層共押出積層フイルムから長さ:3m×幅:10cmの短冊状の試験片を切り取り、東洋精機社製のプラスチックスフィルム及びシ−トの衝撃強度試験機を用いて、衝撃球1インチ、フルスケ−ル1.47Jの条件下で衝撃強度をn=20測定し、平均値をインパクト衝撃強度とした。
【0021】
実施例及び比較例で使用した重合体は次の通りである。
(1) プロピレン・エチレンランダム共重合体(1)(PER−1)
エチレン含有量:3.1重量%、Ts:94.0℃、Tp:126.6℃、Te:131.4℃、Te−Ts:37.4℃、Tp−Ts:32.6℃、Mw/Mn:2.7及びMFR:7g/10分。
(2) プロピレン・エチレンランダム共重合体(2)(PER−2)
エチレン含有量:2.8重量%、Ts:97.2℃、Tp:125.6℃、Te:134.2℃、Te−Ts:37.0℃、Tp−Ts:28.4℃、Mw/Mn:1.9及びMFR:7g/10分。
(3) プロピレン・エチレンランダム共重合体(3)(PER−3)
エチレン含有量:3.5重量%、Ts:89.2℃、Tp:120.4℃、Te:126.3℃、Te−Ts:37.1℃、Tp−Ts:31.2℃、Mw/Mn:2.2及びMFR:7g/10分。
(4) プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体(PEBR)
エチレン含有量:2.2重量%、1−ブテン含有量:2.0重量%、Ts:95.4℃、Tp:139.3℃、Te:150.3℃、Te−Ts:54.9℃、Tp−Ts:43.9℃、Mw/Mn:3.9及びMFR:7g/10分。
(5)直鎖状低密度ポリエチレン(L−L)
密度;0.909g/cm、MFR;3.6g/10分、融点;116℃
【0022】
実施例1
熱融着層として、PER−1、中間層として、L−L、及びラミネート層としてPER−1を夫々用意して別個の押出機に供給し、Tダイ法によって熱融着層/中間層/ラミネ−ト層からなる三層共押出積層フイルムを得た。フィルムの総厚は50μmで、各層の厚みは熱融着層:中間層:ラミネート層=12.5μm:25.0μm:12.5μmであった。
得られた三層共押出積層フイルムの物性等を前記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0023】
実施例2
実施例1の熱融着層とラミネ−ト層に用いたPER−1に代えて、PER−2を用いる以外は実施例1と同様に行い、三層共押出積層フイルムを得た。
得られた三層共押出積層フイルムの物性等の評価結果を表1に示す。
【0024】
実施例3
実施例1の熱融着層とラミネ−ト層に用いたPER−1に代えて、PER−3を用いる以外は実施例1と同様に行い、三層共押出積層フイルムを得た。
得られた三層共押出積層フイルムの物性等の評価結果を表1に示す。
【0025】
比較例1
実施例1の熱融着層とラミネ−ト層に用いたPER−1に代えて、PEBR用いる以外は実施例1と同様に行い、三層共押出積層フイルムを得た。
得られた三層共押出積層フイルムの物性等の評価結果を表1に示す。
【0026】
比較例2
実施例1の中間層をL−Lに代えて、PER−1を用いる以外は実施例1と同様に行い、三層共押出積層フイルムを得た。
得られた三層共押出積層フイルムの物性等の評価結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
表1から明らかなように、熱融着層とラミネ−ト層に特定のプロピレン・α―オレフィン共重合体を、中間層に線状低密度ポリエチレン層を有する熱融着性プロピレン系重合体積層フィルム(実施例1、実施例2及び実施例3)は、従来のプロピレン・α―オレフィン共重合体を用いた積層フィルム(比較例1)に比べて低温ヒ−トシ−ル性に優れているにもかかわらず耐ブロッキング性が優れていることが分る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DSCに基づく結晶融解曲線から求められたピーク温度(Tp)が110〜140℃及び融解開始温度(Ts)と融解終了温度(Te)との差(Te−Ts)が45℃未満のプロピレン・α―オレフィン共重合体(A)から得られる熱融着層の片面に、直鎖状低密度ポリエチレン(B)から得られる中間層を介してプロピレン・α―オレフィン共重合体(A)から得られるラミネート層が積層されてなることを特徴とする熱融着性プロピレン系重合体積層フィルム。
【請求項2】
請求項1記載の熱融着性プロピレン系重合体積層フィルムが包装用である熱融着性プロピレン系重合体積層フィルム。
【請求項3】
請求項2記載の熱融着性プロピレン系重合体積層フィルムが繊維類包装用である熱融着性プロピレン系重合体積層フィルム。

【公開番号】特開2010−173326(P2010−173326A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59991(P2010−59991)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【分割の表示】特願2003−69830(P2003−69830)の分割
【原出願日】平成15年3月14日(2003.3.14)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】