説明

熱誘導性褐変が減少した、噴霧可能な調理器具離型組成物

噴霧可能な調理器具離型組成物は、油、推進剤、および調理器具離型剤を含有し、この調理器具離型剤は、アルカリおよび脂肪酸で同時に処理されているか、またはアルカリと脂肪酸との混合物で処理されている、レシチンを有する。種々のアルカリおよび脂肪酸が、レシチンを処理するために使用され得、これらとしては、1種より多くのアルカリおよび1種より多くの脂肪酸が挙げられる。レシチンを処理するために適切なアルカリとしては、ソルビン酸ナトリウムおよびソルビン酸カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムおよび重炭酸カリウム、酢酸ナトリウムおよび酢酸カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム、ならびにこれらの混合物が挙げられる。レシチンを処理するために適切な脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびこれらの混合物が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、噴霧可能な調理用組成物(cooking composition)に関し、より具体的には、熱誘導性褐変が減少した固着防止剤として働く処理されたレシチンを含む、噴霧可能な調理器具離型組成物(cookware release composition)に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
加熱調理表面、台所用品(utensil)および他の加熱調理道具(cooking implement)に食品が固着しないようにするために、種々の噴霧可能な調理器具離型組成物が開発されてきた。例えば、1つの従来の調理用スプレーは、離型剤または固着防止剤と混合されているキャノーラ油を含む。従来の調理用スプレーに使用されている油は、代表的には、かなりの量の不飽和脂肪酸(例えば、85重量%以上)を含む不飽和油である。食用油は、キャリア媒体として使用されており、リン脂質が、固着防止剤または離型剤として機能する。この油と離型剤の混合物は、エアロゾル容器(例えば、ガスまたは液化炭化水素の加圧容器)から、またはポンプ加圧式エアロゾル容器から、推進剤によって分配される。他の従来の調理器具離型組成物は、レシチン、一般的な離型剤もしくは固着防止剤の固体棒状形態である。しかし、従来の調理用スプレーおよび固着防止組成物は、改善されなければならない。
【0003】
例えば、レシチンは、代表的な加熱調理温度まで加熱されると、黒変または褐変する傾向を有する。従って、レシチンを含むいくつかの調理器具離型組成物は、満足のいく離型特性を示し得る一方で、その加熱調理された食品は、褐色の着色を含み得る。この望ましくない変色は、食品の外観をあまり食欲をそそらないものにし得る。
【0004】
加熱されたレシチンの褐変を減少するために、他の従来の調理用スプレーは、アシル化により処理したレシチンを含む。例えば、有機無水物(例えば、酢酸無水物)での処理によるレシチンのアシル化である。他の従来の調理用スプレーは、ヒドロキシル化レシチンを含む。従来の調理用油は、アルカリで処理したレシチンを含む。例えば、約0.00005重量%の強塩基をレシチンに添加し、この混合物を約200°Fに加熱する。これらの処理されたレシチンは両方とも、加熱調理温度でより少ない褐変しか示さないものであり得るが、これらの処理されたレシチンの固着防止能または離型能は、代表的には損なわれている。結論として、加熱調理された食品は、未処理レシチンと比較して、加熱調理表面から同様に離れないかもしれない。結果として、使用者は、加熱調理表面から食品をこそげ取るかまたは力で押しやる必要があり得、それによって、食品または加熱調理表面に傷を与える。この食品はまた、その加熱された加熱調理表面から容易には離れないので、より焦げやすい。
【0005】
上記で議論した問題は、コーティングされていない加熱調理表面およびコーティングされている加熱調理表面の両方で起こり得る。さらに、コーティングされている表面(例えば、テフロン(登録商標)表面を繰り返し洗うかまたはこすって、その上で焼き付いたもの、この調理用スプレー、または焦げた食品を除去する場合、テフロン(登録商標)コーティングは、ひっかき傷が付き、それにより、そのコーティングされた調理器具が損傷を受け得るかまたは傷つけられ得る。従来の調理用スプレーのこれらの欠点は、食品がより高温でまたはより長時間にわたって加熱調理される場合に増幅される。なぜなら、褐変、固着および焦げの影響の程度は、代表的には、加熱調理温度が高温になるにつれて、そして加熱調理時間がより長くなるにつれて増すからである。
【0006】
これらの欠点に対処しようと試みるための別の技術は、より低温でまたはより短時間で食品を加熱調理することである。しかし、これらの選択肢は、従来の調理用スプレーを使用して食品を加熱調理することに対して制限を加え、十分に加熱調理されない食品に起因する多くの健康上の危険性を示し得る。結論として、より低温で加熱調理された食品の味、品質および安全性は、代表的な、より高い加熱調理温度およびより長い時間での食品の加熱調理と比較して、損なわれ得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、この組成物の褐変を減少または最小化すると同時に、満足のいく固着防止特性または離型特性を提供する、噴霧可能な調理器具組成物が必要である。代表的な加熱調理温度および加熱調理時間での褐変の減少は、使用者がより高温でかつより長時間にわたって、食品の外観を損ねることなく食品を加熱調理することを可能にし得る。このような組成物または調理用スプレーで食品を準備する方法がさらに必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、エアロゾル容器から分配され得る噴霧可能な調理器具離型組成物を提供する。この組成物は、油と、推進剤と、アルカリおよび脂肪酸で同時に処置されたレシチンを含む調理器具離型剤とを含む。このレシチンはまた、アルカリと脂肪酸との混合物で処理され得る。この調理器具離型剤は、油と混合される。この調理器具離型剤と油との混合物は、次いで、推進剤によりエアロゾル容器から分配される。
【0009】
また、本発明に従って、この離型剤は、任意の実質的に無水のリン脂質(例えば、実質的に無水のレシチン)であり得る。実質的に無水のリン脂質は、2.0%以下の水(例えば、1.0%〜1.8%)を含む。実質的に無水のレシチンはまた、油溶性レシチン、水に分配可能なレシチン、ヒドロキシル化レシチン、リゾリン脂質、またはこれらの混合物であり得る。さらに、種々のアルカリが、レシチンを処理するために使用され得、これらのアルカリとしては、ソルビン酸ナトリウムおよびソルビン酸カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムおよび重炭酸カリウム、酢酸ナトリウムおよび酢酸カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム、ならびにこれらの混合物が挙げられる。さらに種々の脂肪酸は、レシチンを処理するために使用され得、これらの脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびこれらの混合物のような脂肪酸が挙げられる。さらに、モノグリセリドおよびジグリセリドがまた、レシチンを処理するために使用され得る。
【0010】
調理器具離型組成物を用いて食品を準備する方法もまた、本発明に従う。アルカリおよび脂肪酸で同時に処理されたレシチンと、分留油と、推進剤とを有する調理器具離型剤が、提供される。この離型剤および分留油は混合されて、調理器具離型組成物を形成する。この混合物は、次いで、推進剤を用いてエアロゾル容器から調理器具表面に分配される。食品は、そのコーティングされた調理器具表面に適用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(詳細な説明)
以下の説明において、本発明が実施され得る具体的実施形態に言及がなされる。本発明の範囲から逸脱することなく変更が行われ得るので、他の実施形態が利用され得ることが理解されるべきである。
【0012】
本発明の一実施形態は、アルカリおよび脂肪族で処理された実質的に無水のレシチンを有する離型剤と、油(例えば、分留油)および推進剤を含む、調理器具離型組成物を提供する。処理されたレシチンと油の混合物は、推進剤により、エアロゾル容器から例えば、調理器具表面または台所用品上に分配され得る。この組成物は、食品がこの組成物でコーティングされた表面で加熱調理されて、そこから容易に取り出され得るように、固着しない表面または低摩擦の表面を提供する。さらに、この処理されたレシチンが、代表的な加熱調理温度および加熱調理時間で加熱される場合、この組成物は、未処理レシチンまたはあまり有効でない他の様式で処理されたレシチンを有する従来の組成物と比較して、少ない加熱誘導性レシチン褐変しか示さないと同時に、固着しない表面または低摩擦の表面を提供する。従って、この加熱調理された食品は変色せず、食品を傷付けることなく、加熱調理表面から取り出され得る。
【0013】
当業者は、本発明が、種々の加熱調理温度および加熱調理時間、食品ならびに焼き(baking)、揚げ(frying)および加熱調理の必要性により使用され得ることを認識する。例えば、本発明の組成物はまた、約350°F〜約450°Fで約10〜約60分間、オーブン中で食品を焼くために使用される調理器具に適用され得る。本発明の組成物はまた、例えば、食品(例えば、卵またはパンケーキ)を準備するために、同様の温度で約5〜約10分間で使用される、フライパンまたは鍋(skillet)のような調理器具に適用されるために適している。両方の加熱調理例における加熱調理表面または台所用品は、本発明の組成物でコーティングされて、代表的な加熱調理温度および加熱調理時間でのレシチンの褐変を低下または排除し得る。当然のことながら、本発明の組成物は、種々の加熱調理温度および加熱調理時間で、ならびに種々の加熱調理器具で使用され得、上記の例は、種々の加熱調理適用の例示である。
【0014】
種々の調理器具離型剤がまた、本発明で利用され得る。例示的な調理器具離型剤は、実質的に無水のリン脂質(例えば、レシチンを含む実質的に無水形態のリン含有グリセリド、リゾリン脂質およびこれらの混合物)を含む。好ましくは、その調理器具離型剤は、固着防止剤または離型剤としての、処理されたレシチンを含む。
【0015】
本発明の調理器具組成物は、種々の量のレシチン(例えば、約0.5重量%〜約50重量%のレシチン)を含み得る。好ましくは、この調理器具組成物は、約1重量%〜約40重量%のレシチン、および最も好ましくは3重量%〜約12重量%のレシチンを含む。この組成物に適したレシチンの例示的な供給源は、植物供給源および動物供給源の両方、またはそれらの混合物を含む。例えば、ダイズ、トウモロコシ胚芽、米ぬか、綿実、ひまわり種子、菜種、キャノーラ、および卵黄は全て、本発明の噴霧可能な組成物に適したレシチンの供給源である。このレシチンはさらに、例えば、ヒドロキシル化およびアシル化によって化学的に改変され得る。天然に存在するレシチンおよび化学処理されたレシチン(例えば、ヒドロキシル化レシチンおよびアシル化レシチン)の混合物もまた、利用され得る。当業者は、他の調理器具離型剤(例えば、実質的に無水形態のリゾリン脂質、分留レシチンもしくはリン脂質、水素付加レシチン、またはこれらの混合物)もまた使用され得ることを認識する。
【0016】
さらに、油の種々の型および組み合わせ(例えば、キャノーラ油、トウモロコシ油、オリーブ油、およびこれらの混合物)が、利用され得る。好ましくは、この油は、分留油(例えば、分留パーム油)である。分留パーム油は、例示目的でさらに詳細に議論されるが、本発明は、そのように限定されない。分留パーム油は、結晶または結晶様構造がないかまたは実質的になく、この組成物がエアロゾル容器から容易に分配され得るように、ある温度であり、ある量の有機溶媒を有する。分留パーム油は、全パーム油(whole palm oil)から区別される。なぜなら、全パーム油は、エアロゾル容器のノズルを詰まらせ得る結晶または結晶様構造を含むからである。従って、分留パーム油が好ましい。なぜなら、これは液体でありかつ実質的に結晶または結晶要項増がないからであり、それにより、エアロゾル容器から分配され得るために適した形態になるからである。
【0017】
一実施形態において、調理器具組成物は、約65重量%〜約80重量%の分留パーム油、より好ましくは、約77.5重量%を含む。この分留パーム油は、好ましくは、トランスエステル化されず、または代表的な加熱調理温度および加熱調理時間で重合しない分留パーム油を有する組成物である。利用され得る1つの例示的な分留パーム油は、二重分留パーム油(例えば、パームスーパーオレイン)である。他の適切な分留パーム油としては、パームオレイン、分留パーム仁油、およびパームオレインと二重分留パーム油の混合物(例えば、パームスーパーオレイン)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、好ましい分留パーム油は、41重量%のパルミチン酸、約40重量%のオレイン酸、および12重量%のリノール酸を含む。この分留パーム油はまた、二重分留パーム油であり得、約33重量%のパルミチン酸、47重量%のオレイン酸、および約13重量%のリノール酸を含む。実際に、種々の他の分留油組成物(例えば、分留パーム油仁油および綿実油)、もまた利用され得る。
【0018】
本発明に従って処理されたレシチンを調製する1つの例示的な様式は、乾燥水酸化ナトリウムもしくは濃水酸化ナトリウム水溶液(73重量%まで)を、標準強度190〜200のエタノールに、約0.4重量%の終濃度になるまで溶解することを包含する。この水酸化ナトリウムエタノール溶液は、実質的に無水のレシチンと、または2重量%〜12重量%の実質的に無水のレシチンを含む食用油と混合されて、第1の混合物を形成する。この第1の混合物は、遊離脂肪酸と合わせられて、第2の混合物を形成し、この第2の混合物は攪拌されて、均質な溶液形成する。あるいは、水酸化ナトリウムおよびエタノール混合物を添加する前に、この遊離脂肪酸は、実質的に無水のレシチンまたは油と合わされ得る。
【0019】
噴霧可能な組成物の推進剤は、食品等級の推進剤であり得、例えば、加圧ガス、液化炭化水素、またはそれらの混合物であり得る。例えば、加圧ガス推進剤は、上記組成物の液体成分のうちの約2重量%〜約8.5重量%、より好ましくは約3重量%〜約5重量%が加圧ガスであるように、使用され得る。液化炭化水素推進剤が利用される場合、上記組成物は、約10重量%〜約75重量%の液化炭化水素を含み得る。他の適切な食品等級の推進剤としては、酸化窒素、二酸化炭素、窒素、プロパン、ブタン、またはイソブテンが挙げられる。例えば、調理器具離型組成物は、約2重量%〜約8.5重量%、好ましくは約3重量%〜約5重量%の酸化窒素を含み得る。さらなる例示的な推進剤としては、酸化窒素と、微量の他の食品等級推進剤との混合物が、挙げられる。当業者は、他の推進剤(酸化窒素推進剤、二酸化炭素推進剤、窒素推進剤、プロパン推進剤、ブタン推進剤、イソブテン推進剤、またはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない)もまた利用され得ることを認識する。
【0020】
本発明の実施形態の成分を記載しているが、図1および図2は、本発明の組成物が、未処理レシチンを含む組成物または水酸化ナトリウムのみで処理したレシチンを含む組成物に対してどれほど有利であるかを示す。具体的には、図1は、代表的な加熱調理の温度および期間で加熱した際に、水酸化ナトリウムと遊離脂肪酸とで処理したレシチンを含む組成物が、未処理レシチンを含む組成物と比較して光透過性であり、そして熱誘導性褐変をそれほど示さないことを、示す。さらに、図2は、本発明に従って水酸化ナトリウムと遊離脂肪酸とで処理したレシチンを含む組成物は、水酸化ナトリウムのみで処理したレシチンよりも増強された固着防止特性または離型特性を有することを示す。
【0021】
試験1および試験2(その結果は、それぞれ、図1および図2に要約されている)は、両方とも、3種の調理器具離型組成物に関与し、その組成物の各々は、異なる形態のレシチンを含む。第一の組成物は、未処理レシチンを含む従来組成物の代表である。第二の組成物はまた、水酸化ナトリウムのみで処理したレシチンを含む従来組成物の代表である。第三の組成物はまた、本発明に従って水酸化ナトリウムと遊離脂肪酸とで処理したレシチンを含む。3種の組成物はすべて、80体積%の分留ヤシ油および10体積%のエタノール中に、5体積%のそれぞれのレシチンを含む。これらの組成物を、全て、425°Fで4分間焼き、次いで、試験した。
【0022】
試験1において、各組成物のL値(すなわち、明度値)が、Hunter Associates Laboratory,Inc.(Reston,Virginia)から得たHunterlab D25−9比色計を使用して測定された。試験1の結果が、図1において要約されており、グラフの縦軸は、L値を記録する。図1は、代表的な加熱調理の温度および期間において加熱した際に、本発明に従って水酸化ナトリウムと脂肪酸とで処理したレシチンを含む組成物が、未処理レシチンを含む従来組成物の約2倍程度の光を伝達することを示す。この試験は、本発明に従って処理されたレシチンを含む組成物が、未処理レシチンを含む従来組成物よりも熱誘導性褐変に対して抵抗性であり、そして水酸化ナトリウムのみで処理されたレシチンを含む従来組成物と少なくとも同程度には熱誘導性褐変に対して抵抗性であることを、示す。上記2種の従来組成物を超える本発明の組成物のさらなる利点が、試験2において示され、これが下記に記載される。
【0023】
試験2において、各組成物が、11インチのBallarini社のフライパンの加熱調理表面上に0.5g噴霧することによって適用された。大きな卵が、各フライパン上に配置され、その後、そのフライパンは、中高温に設定されたオーブン中に配置された。その卵は、オーブン中のフライパン上で4分間加熱調理され、その後、ひっくり返されてさらに1分間加熱調理された。その後、卵が滑り始めるまでフライパンが傾けられた。卵が静止摩擦に勝ってフライパンを滑り落ち始める角度が、図2において記録された。
【0024】
図2のグラフの縦軸は、食品が静止摩擦に勝ってクッキーシートを滑り落ち始める角度を示す。図2は、代表的な加熱調理の温度および期間で加熱した際に、水酸化ナトリウムのみで処理したレシチンを含む従来組成物でコーティングされた加熱調理表面が、未処理レシチンを含む従来組成物でコーティングされた加熱調理表面および本発明に従って水酸化ナトリウムと遊離脂肪酸とで処理されたレシチンを含む組成物でコーティングされた加熱調理表面よりも大きな静止摩擦を示したことを、示す。従って、この試験は、水酸化ナトリウムのみで処理したレシチンを含む従来組成物の固着防止能力が、アルカリと脂肪酸とで処理したレシチンを含む本発明の組成物よりも低いことを、示す。この試験はまた、本発明に従って処理されたレシチンを含む組成物が、未処理レシチンを含む組成物とほぼ同じ程度の固着防止能力を有することを、示す。
【0025】
図1および図2により要約される試験結果は、従来の調理用スプレーと比較した、本発明の組成物の多数の利点を示す。第一に、この試験結果は、本発明の組成物が、加熱誘導性褐変に対して抵抗性であり、そして従来の組成物(水酸化ナトリウムのみで処理されたレシチンを有する)と比較して改善された固着防止特性を示すことを、示す。第二に、この試験結果は、本発明の組成物が、未処理レシチンを含む従来組成物と比較して、加熱誘導性褐変に対して抵抗性であり、そして未処理レシチンと比較して改善しているかまたは同等の固着防止特性を示すことを、示す。
【0026】
本発明に従う組成物を含む製品を製造する様式が、ここに記載される。処理されたレシチン離型剤が、均質な溶液が得られるまで、分留ヤシ油成分と混合される。必要に応じた可溶性成分(例えば、抗酸化剤)が、この時点で別個に添加され得るか、または他の成分のうちの1つもしくは両方に予め導入され得る。得られた溶液中に可溶性ではない必要に応じた材料(例えば、上記のブロック剤)が、添加され、そして攪拌されて、均質な分散物が形成され得る。その容器に、得られた混合物が満たされ、真空が適用されて、その容器から空気が追い出される。あるいは、上記推進剤が、その容器の頭隙から空気を追い出すために使用され得る。その後、適切なエアロゾル弁が挿入され、適所に締められ、空密圧力シールが生成される。適切な弁要素は、Seaquist Perfect Dispensing(Cary,Illinois)から入手可能である。酸化窒素が、この容器中に注入される。炭化水素推進剤もまた、上記の様式で、またはカップガス発生(cup gassing)を使用することによって、使用され得る。また、本発明の実施において有用であるのは、壁が薄いエアロゾル容器(例えば、Dispensing Container Corporation(DCC)(Allentown,Pennsylvania)から入手可能な容器)である。上記推進剤により占められるエアロゾル容器の「頭隙」または空間は、従来の容器と比較して、(満たされた場合の)その容器の約15体積%〜約60体積%を占めるように測定される。
【0027】
上記の組成物および容器を用いると、上記の噴霧可能な調理器具離型組成物は、台所器具、型枠、フライパン、ソースパン、パン焼き皿、または他の加熱調理表面に、それらが金属材料から構成されようと、ガラス材料から構成されようと、またはセラミック材料から構成されようと、均一かつ効果的に適用され得る。薄いコーティング膜の方が、食品(卵、パンケーキ、マフィン、クッキー、および他の種々の食品)を、非固着表面を得るためにさらにグリースも油脂も塗布することを必要とせずに加熱調理することを、良好に可能にする。加熱調理の後、これらの食品は、剥がす努力がほとんどないかまたは全く無く、表面から取り外される。上記調理器具は、水および界面活性剤を使用してかまたは界面活性剤なしで水を使用してこすることも、ブラシをかけることも、または磨くこともなく、容易に洗浄され得る。好ましくは、上記組成物は、加熱調理表面を使用する度に毎回適用されるべきであるが、このコーティングは、再適用することなく、複数の加熱調理の機会の間継続し得る。
【0028】
上記調理器具離型組成物は、必要に応じて、種々の他の成分および添加剤を含み得る。上記のように、必要に応じた成分の1種は、未分留油である。この未分留油は、上記離型剤および分留ヤシ油と混合され、そしてこの混合物は、上記エアロゾル容器から推進剤によって分配される。使用され得る例示的な未分留油としては、ダイズ油、ヒマワリ油、脱ろう綿実油、トウモロコシ油、ベニバナ油、ラッカセイ油、クルミ油、ブドウ種油、オリーブ油、またはキャノーラ油が挙げられるが、これらに限定されない。分留ヤシ油と未分留油との混合物もまた、使用され得る。
【0029】
上記組成物はまた、必要に応じて、種々の食品等級添加剤を含み得、その添加剤としては、消泡剤、ブロック剤、矯味矯臭剤、保存剤、抗酸化剤、乳化剤、着色剤、結晶化阻害剤、および粘度低下剤が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、食品等級のブロック剤は、視覚的な方向付け補助剤であり、これには、穀物粉および豆粉、デンプン、タンパク質粉末、およびカルシウム石膏が挙げられる。そのようなブロック剤は、発射した噴霧がより容易に観察されるのを可能にし、それによって、使用者が、本発明の実施においてそのような発射された噴霧をより容易に方向付けるのを可能にする。有用な保存剤としては、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、ソルビン酸、またはソルビン酸塩(例えば、ソルビン酸ナトリウムおよびソルビン酸カリウム)が挙げられる。好ましいのは、約0.05重量%〜約0.1重量%の量の安息香酸ナトリウム、および約0.1重量%〜約0.3重量%の量のプロピオン酸カルシウムである。抗酸化剤は、天然に存在するものであっても(例えば、トコフェロール)または合成品であっても(例えば、TBHQ(これは、脂質成分の酸敗を防ぐように作用する))よい。使用され得る例示的な食品等級乳化剤としては、モノグリセリド、ジグリセリド、またはその組み合わせが挙げられる。容器から分配される組成物はまた、結晶化阻害剤(例えば、ポリグリセロールエステル)を含有し得る。
【0030】
必要に応じたさらなる成分としては、本願組成物において見出されるレシチン/植物油混合物の粘度を低減するための溶媒が挙げられる。好ましいのは、エチルアルコールの使用である。また、蒸気圧が15PSIG〜108PSIGの炭化水素が、使用され得る。エチルアルコールが、説明のためにさらに詳細に考察される。
【0031】
使用され得る例示的なエチルアルコールは、標準強度が約190°〜200°であり、これは、それぞれ、アルコールおよび脱水アルコールについての米国薬局方(U.S.P.)基準に従う。この標準強度が190°〜200°のエタノールは、種々の供給源(例えば、U.S.Grain Processing Corp.(Muscatine,Iowa))から入手可能である。60°Fにおいて標準強度が200 U.S.度のエタノールは、比重0.79365を有し、これは、100重量%のエチルアルコールである。60°Fにおいて標準強度が190U.S.度のエタノールは、比重0.81582であり、これは、92.423重量%のアルコールであり、7.577重量%の水を含む。この標準強度が190°エタノールは、95体積部のエチルアルコールと6.18体積部の水をと混合することによって、生成され得る。本発明において使用される場合、上記エチルアルコールは、粘度低減溶媒および清浄剤の両方として機能する。
【0032】
エチルアルコールの使用に加えて、GRAS分類された食品等級の変性剤(例えば、S.D.A.29−3)で変性されたエチルアルコールは、本発明の実施において使用され得る。S.D.A.29−3は、99%のエチルアルコールと、変性剤としての1%の酢酸エチルとを含む。酢酸エチルは、GRAS変性剤であり、これにより、食品等級製品(例えば、本願組成物)におけるS.D.A.29−3の使用が可能である。
【0033】
上記エチルアルコール成分は、液体成分の総量に基づいて、0重量%〜約25重量%の範囲の量で存在し得る。好ましくは、このエチルアルコール成分は、約5%〜約20%の範囲の量で存在する。
【0034】
食品は、本発明に従う調理器具離型組成物を使用して、下記の方法を用いて調製され得る。最初に、調理器具離型剤、油、および推進剤が、準備される。この調理器具離型剤と油とが、一緒に混合されて、調理器具離型組成物が提供される。その後、この混合物は、上記推進剤とともにエアロゾル容器から、例えば、調理器具表面または型枠へと分配される。食品が、このコーティングされた調理器具表面上に配置され、このコーティングされた調理器具表面と食品とが、上記のような、代表的な加熱調理温度まで、代表的な加熱調理期間の間加熱される。当然、当業者は、上記工程は、別の順序で実施され得ることを、認識する。例えば、食品が、加熱調理表面に配置され、その後、上記組成物が、加熱調理表面(および食品)に適用され、その後、加熱され得る。
【0035】
上記説明において種々の実施形態に対する言及がなされたが、添付の特許請求の範囲において特許請求される発明から逸脱することなく、記載された実施形態に対して実質的ではない改変、変更および置換がなされ得ることを、特に、処理されたレシチンを含む噴霧可能な組成物は種々の他の成分を含み得、この組成物は、多くの種々の調理器具表面および食品を用いて使用され得ることを考慮して、噴霧可能な加熱調理組成物の当業者は認識する。例えば、種々の型の塩基および脂肪酸が、本発明に従う組成物においてレシチンおよび他の調理器具離型剤を処理するために利用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル容器から分配するために適切な調理器具離型組成物であって:
レシチンを有する調理器具離型剤であって、該レシチンは、アルカリおよび脂肪酸で同時に処理されている、調理器具離型剤;
油;および
推進剤
を含有し、該処理されたレシチンを有する該調理器具離型剤と該油との混合物が、該推進剤によって、該エアロゾル容器から分配される、調理器具離型組成物。
【請求項2】
前記レシチンが、前記アルカリと前記脂肪酸との混合物で処理されている、請求項1に記載の調理器具離型剤。
【請求項3】
前記レシチンが、実質的に無水のレシチンを含む、請求項1に記載の調理器具離型剤。
【請求項4】
前記実質的に無水のレシチンが、約1.0重量%〜約1.8重量%の水を含有する、請求項3に記載の調理器具離型剤。
【請求項5】
前記組成物が、約0.5重量%〜約50重量%の前記処理されたレシチンを含有する、請求項1に記載の調理器具離型組成物。
【請求項6】
前記アルカリが、ソルビン酸ナトリウムを含有する、請求項1に記載の調理器具離型組成物。
【請求項7】
前記アルカリが、ソルビン酸カリウムを含有する、請求項1に記載の調理器具離型組成物。
【請求項8】
前記アルカリが、炭酸ナトリウムを含有する、請求項1に記載の調理器具離型組成物。
【請求項9】
前記アルカリが、炭酸カリウムを含有する、請求項1に記載の調理器具離型組成物。
【請求項10】
前記アルカリが、重炭酸ナトリウムを含有する、請求項1に記載の調理器具離型組成物。
【請求項11】
前記アルカリが、重炭酸カリウムを含有する、請求項1に記載の調理器具離型組成物。
【請求項12】
前記アルカリが、酢酸ナトリウムを含有する、請求項1に記載の調理器具離型組成物。
【請求項13】
前記アルカリが、酢酸カリウムを含有する、請求項1に記載の調理器具離型組成物。
【請求項14】
前記アルカリが、水酸化ナトリウムを含有する、請求項1に記載の調理器具離型組成物。
【請求項15】
前記レシチンが、該レシチンの重量に基づいて約0.5%〜約2.5%の濃度の水酸化ナトリウムで処理されている、請求項14に記載の調理器具離型組成物。
【請求項16】
前記アルカリが、水酸化カリウムを含有する、請求項1に記載の調理器具離型組成物。
【請求項17】
前記レシチンが、該レシチンの重量に基づいて約0.7%〜約3.5%の濃度の水酸化カリウムで処理されている、請求項16に記載の調理器具離型組成物。
【請求項18】
第2のアルカリをさらに含有し、前記レシチンが、該第2のアルカリで処理されている、請求項1に記載の調理器具離型組成物。
【請求項19】
前記レシチンが、前記脂肪酸、前記第1のアルカリ、および前記第2のアルカリで、同時に処理されている、請求項18に記載の調理器具離型組成物。
【請求項20】
前記脂肪酸が、オレイン酸を含有する、請求項1に記載の調理器具離型組成物。
【請求項21】
前記レシチンが、前記組成物の重量に基づいて約0.1%〜約0.5%の濃度のオレイン酸で処理されている、請求項20に記載の調理器具離型組成物。
【請求項22】
前記脂肪酸が、リノール酸を含有する、請求項1に記載の調理器具離型組成物。
【請求項23】
前記レシチンが、前記組成物の重量に基づいて約0.1%〜約0.5%の濃度のリノール酸で処理されている、請求項22に記載の調理器具離型組成物。
【請求項24】
前記脂肪酸が、パルミチン酸を含有する、請求項1に記載の調理器具離型組成物。
【請求項25】
前記レシチンが、前記組成物の重量に基づいて約0.1%〜約0.5%の濃度のパルミチン酸で処理されている、請求項24に記載の調理器具離型組成物。
【請求項26】
前記脂肪酸が、ステアリン酸を含有する、請求項1に記載の調理器具離型組成物。
【請求項27】
前記レシチンが、前記組成物の重量に基づいて約0.1%〜約0.5%の濃度のステアリン酸で処理されている、請求項26に記載の調理器具離型組成物。
【請求項28】
第2の脂肪酸をさらに含有し、前記レシチンが、該第2の脂肪酸で同時に処理されている、請求項1に記載の調理器具離型組成物。
【請求項29】
前記レシチンが、前記アルカリ、前記第1の脂肪酸、および前記第2の脂肪酸で同時に処理されている、請求項28に記載の調理器具離型組成物。
【請求項30】
前記脂肪酸が、遊離脂肪酸を含有する、請求項1に記載の調理器具離型組成物。
【請求項31】
前記脂肪酸が、植物脂肪酸を含有する、請求項1に記載の調理器具離型組成物。
【請求項32】
前記脂肪酸が、動物脂肪酸を含有する、請求項1に記載の調理器具離型組成物。
【請求項33】
前記脂肪酸が、ダイズ油、キャノーラ油、ヒマワリ油、コーン油、ヤシ油、パーム油、またはこれらの混合物に由来する、請求項1に記載の調理器具離型組成物。
【請求項34】
前記脂肪酸が、油を含まない脂肪酸を含有する、請求項1に記載の調理器具離型組成物。
【請求項35】
前記組成物が:
約76%の前記油;
約5%の前記処理されたレシチン;および
約5%の前記推進剤、
を含有し、該百分率が、該組成物の重量に基づく、請求項1に記載の調理器具離型組成物。
【請求項36】
さらにエタノールを含有し、前記レシチンが、以下:
約87%〜約97%のエタノール;
約0.4%のアルカリ;および
約1%の脂肪酸、
を有する混合物で処理されており、該百分率は、該混合物の重量に基づく、請求項1に記載の調理器具離型組成物。
【請求項37】
エアロゾル容器から分配するために適切な、調理器具離型組成物であって:
アルカリおよびモノグリセリドで同時に処理されたレシチンを有する、調理器具離型剤;
油;ならびに
推進剤、
を含有し、該処理されたレシチンを有する該調理器具離型剤と該油との混合物が、該推進剤によって、該エアロゾル容器から分配される、調理器具離型組成物。
【請求項38】
エアロゾル容器から分配するために適切な、調理器具離型組成物であって:
アルカリおよびジグリセリドで同時に処理されたレシチンを有する、調理器具離型剤;
油;ならびに
推進剤、
を含有し、該処理されたレシチンを有する該調理器具離型剤と該油との混合物が、該推進剤によって、該エアロゾル容器から分配される、調理器具離型組成物。
【請求項39】
食品を調理器具離型組成物で準備する方法であって:
レシチン、アルカリ、脂肪酸、油、および推進剤を提供する工程;
該レシチンを、該アルカリおよび該脂肪酸で同時に処理する工程;
該処理されたレシチンおよび該油を混合して、該調理器具離型組成物を形成する工程;
該調理器具離型組成物を、該エアロゾル容器から、該推進剤を用いて、調理器具の表面に分配する工程;
該食品を、該コーティングされた調理器具の表面に適用する工程;ならびに
該コーティングされた調理器具の表面および該表面上の該食品を加熱する工程、
を包含する、方法。

【公表番号】特表2007−521004(P2007−521004A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517079(P2006−517079)
【出願日】平成16年3月22日(2004.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/008758
【国際公開番号】WO2005/011392
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(505428086)コナグラ グロッサリー プロダクツ カンパニー (2)
【Fターム(参考)】