説明

熱転写受像シート

【課題】 伝導度が低くなり画像受容層において染料を受容する感度を高めることが可能な熱転写受像シートを提供する。
【解決手段】 本発明の熱転写受像シート1は、支持体シート2上に断熱層5及び画像受容層7が形成されている。そして、断熱層5が結晶性炭化水素樹脂とこれに非相溶な樹脂とをブレンドしたもの、又は結晶性炭化水素樹脂とこれに非相溶な有機系若しくは無機系フィラーとをブレンドしたものからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写シートと重ね合わせて使用される熱転写受像シートに関する。
【背景技術】
【0002】
熱転写を利用した画像の形成方法として、記録材としての昇華性染料を紙やプラスチックフィルム等の基材シートに担持させた熱転写シートと、紙やプラスチックフィルムの一方の面に昇華性染料の受容層(画像受容層)を設けた熱転写受像シートとを互いに重ね合わてフルカラー画像を形成する方法が知られている。この方法は昇華性染料を色材としているためドット単位で濃度階調を自由に調節でき、原稿通りのフルカラー画像を受像シート上にて表現することができる。染料によって形成された画像は非常に鮮明でかつ透明性に優れているため、中間色や階調の再現性にも優れ、銀塩写真に匹敵する高品質の画像を形成することができる。
【0003】
昇華型熱転写方式のプリンタにおいて高画質のプリント画像を高速で受像シート上に形成するためには、その受像シートの基材上に染料染着性樹脂(染料に染まり易い性質を有する樹脂)を主成分とする画像受容層を設けることが望ましいが、受像シートの基材にコート紙やアート紙等の紙材を用いると、これらの素材の熱伝導度が比較的高いために画像受容層において染料を受容する感度が低くなる。
【0004】
また、受像シートの基材としてポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を主成分とし、内部に空隙を有している二軸延伸の発泡フィルムを用いることがある。しかし、二軸延伸フィルムを受像シートの基材に用いた場合、延伸時の残留応力がプリント時の熱で緩和され、延伸方向にフィルムが収縮する。その結果、受像シートにカールやシワが発生し、プリンタ内を受像シートが走行する際に紙詰まり等のトラブルが生じることがある。そこで、受像シートの剛性を高めるための補剛層を形成し、その補剛層をポリオレフィン系ポリマーと非晶質炭化水素系樹脂とのブレンドを含む材料で構成したものがある(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−46149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、以上のような受像シートでも、画像受容層において染料を受容する感度が十分でない場合があった。
【0007】
そこで、本発明は熱伝導度が低くて画像受容層において染料を受領する感度を高めることが可能な熱転写受像シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明の熱転写受像シートついて説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0009】
本発明の熱転写受像シートは、支持体シート(2)上に断熱層(5)及び画像受容層(7)が形成された熱転写受像シート(1)において、前記断熱層(5)が結晶性炭化水素樹脂とこれに非相溶な樹脂とをブレンドしたもの、又は結晶性炭化水素樹脂とこれに非相溶な有機系若しくは無機系フィラーとをブレンドしたものからなることにより、上述した課題を解決する。
【0010】
この熱転写シートによれば、画像受容層と支持体シートとの間に断熱層が介在し、その断熱層は結晶性炭化水素樹脂とこれに非相溶な樹脂とをブレンドしたもの、又は結晶性炭化水素樹脂とこれに非相溶な有機系若しくは無機系フィラーとをブレンドしたものからなるので断熱層内にボイドが形成されて熱伝導度が低くなる。これにより、画像受容層において染料を受容する感度を高めることができる。
【0011】
本発明の熱転写受像シートにおいて、前記結晶性炭化水素樹脂の融点が200°C以上であり、比重が1以下であってもよいし、温度285°C、周波数960Hzにおける動的粘性率(η’)が5〜50Pa・sであってもよい。その動的粘性率(η’)が5Pa・sよりも小さいとネックイン等の加工性に問題が生じ、また50Pa・sよりも大きいと高速薄膜加工性に劣る。また、例えば、前記結晶性炭化水素樹脂がポリメチルペンテンであってもよい。この材料は融点が230°C〜245°Cと比較的高温であり、結晶性が高く比重が0.83と比較的小さいことが特徴である。これによれば、融点が比較的高いため、熱転写の際に高温であっても使用することができる。
【0012】
本発明の熱転写受像シートにおいて、前記結晶性炭化水素樹脂に非相溶な樹脂がオレフィン系樹脂であってもよい。また、前記結晶性炭化水素樹脂に非相溶な樹脂の温度285°C、周波数960Hzにおける動的粘性率(η’)は、前記結晶性炭化水素樹脂よりも高く、前記結晶性炭化水素樹脂とこれに非相溶な樹脂との温度285°C、周波数960Hzにおける動的粘性率(η’)の差が5〜50Pa・sでもよい。この場合には、前記結晶性炭化水素樹脂に非相溶な樹脂の動的粘性率(η’)の方が前記結晶性炭化水素樹脂よりも高いため、樹脂が流れにくくボイドが形成され易くなる。動的粘性率(η’)の差が5Pa・sよりも小さいと適度なボイドを形成することができず、50Pa・sよりも大きいと製膜中に膜が破断する等の加工性の劣化が問題となる。更に、前記結晶性炭化水素樹脂に非相溶なフィラーが炭酸カルシウム、ゼオライト、タルク、シリカ、又はアクリルフィラー若しくはポリカーボネートフィラーであってもよい。前記結晶性炭化水素樹脂と、このような樹脂又はフィラーとをブレンドすることにより、断熱層に良好なボイドを形成することができる。
【0013】
本発明の熱転写受像シートにおいて、前記断熱層(5)が2層以上の複層構造であってもよい。また、前記断熱層(5)及び前記画像受容層(7)はそれぞれの原料が熱溶融押出し法にて一体的に押し出された後に延伸されて形成され、前記支持体シート(2)が延伸されて形成された前記断熱層(5)及び前記画像受容層(7)の前記断熱層(5)側に貼り合わされていてもよいし、前記断熱層(5)はその原料が熱溶融押出し法にて押し出された後に延伸されて形成され、延伸されて形成された前記断熱層(5)の一方の面に画像画像受容層(7)が形成された後に前記支持体シート(2)が前記断熱層(5)の他方の面に貼り合わされたものでもよい。
【0014】
また、本発明の熱転写受像シートの製造方法は、支持体シート(2)、断熱層(5)、及び画像受容層(7)を含む熱転写シートの製造方法において、結晶性炭化水素樹脂とこれに非相溶な樹脂とをブレンドしたもの、又は結晶性炭化水素樹脂とこれに非相溶な有機系若しくは無機系フィラーとをブレンドしたものを原料として熱溶融押出し法にて押し出し、これを延伸して前記断熱層(5)を形成し、前記断熱層(5)の一方の面に前記画像受容層(7)を形成するとともに、他方の面に前記支持体シート(2)を張り合わせることにより、上述した課題を解決する。
【0015】
この製造方法によれば、上述した本発明の熱転写受像シートを構成して、上記の通りの作用効果を奏することができる。
【0016】
本発明の熱転写受像シートの製造方法において、前記断熱層(5)の原料と、前記画像受容層(7)の原料とを熱溶融押出し法にて一体的に押し出して前記断熱層(5)及び前記画像受容層(7)をそれぞれ形成してもよい。
【0017】
本発明の動的粘性率(η’)は、(株)ユービーエム製のRheogel−E4000にて下表の条件で測定されたものである。
【0018】
【表1】

【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、断熱層が結晶性炭化水素樹脂とこれに非相溶な樹脂とをブレンドしたもの、又は結晶性炭化水素樹脂とこれに非相溶な有機系若しくは無機系フィラーとをブレンドしたものからなるので、熱伝導度が低くなり画像受容層において染料を受容する感度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明の一実施形態に係る熱転写受像シート1の断面構造を示している。なお、図1では実際の熱転写受像シートにおける各層の厚さに関係なく、各層を便宜上一定の厚さで描いている。図1の熱転写受像シート1は、紙3の裏面に裏面層4を接合してなる支持体シート2と、その支持体シート2の紙3の表面に接合された断熱層5と、その断熱層5の外側に順次接合された中間層6及び画像受容層7とを備えている。
【0021】
紙3としては、例えば坪量78〜400g/m、好ましくは150〜300g/mの上質紙又はアート紙を使用することができる。裏面層4としては、例えばPETフィルムが使用されるが、その他、ポリエチレン、ポリプロピレン等の各種の樹脂が使用できる。裏面層4は各種の方法で紙3に接合してよい。紙3に対して裏面層4を押し出しラミネート法にて貼り合わせることができる。
【0022】
断熱層5は、結晶性炭化水素樹脂とこれに非相溶な樹脂とをブレンドしたもの又は結晶性炭化水素樹脂とこれに非相溶な有機若しくは無機系フィラーとをブレンドしたものから構成されている。ここで使用する結晶性炭化水素樹脂としては、融点が200°C以上であり比重が1以下の樹脂、又は温度285°C、周波数960Hzにおける動的粘性率(η’)が5〜50Pa・sである樹脂、例えばポリメチルペンテンが使用できる。動的粘性率(η’)が5Pa・sよりも小さいとネックイン等の加工性に問題が生じ、また50Pa・sよりも大きいと高速薄膜加工性に劣るためである。図7に、ポリメチルペンテン(MX004、三井化学(株)製)の温度に対する動的粘性率(η’)の変化を示す。この図から明らかなように、温度285°Cにおける動的粘性率(η’)が5〜10Pa・sの範囲に収まっていることが示されている。また、結晶性炭化水素樹脂に非相溶な樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂等のオレフィン系樹脂、又はポリカーボネート樹脂が使用できる。結晶性炭化水素樹脂に非相溶な樹脂の温度285°C、周波数960Hzにおける動的粘性率(η’)は結晶性炭化水素樹脂よりも高くてもよい。そのようにすれば、樹脂が流れにくくボイドが形成され易くなる。また、結晶性炭化水素樹脂とこれに非相溶な樹脂との温度285°C、周波数960Hzにおける動的粘性率(η’)の差は5〜50Pa・sの範囲がよい。その動的粘性率(η’)の差が5Pa・sよりも小さいと適度なボイドを形成することができず、50Pa・sよりも大きいと製膜中に膜が破断する等の加工性の劣化が問題となるためである。結晶性炭化水素樹脂とブレンドする無機系フィラーとしては、炭酸カルシウム、ゼオライト、タルク、又はシリカが使用できる。また、有機系フィラーとしては、アクリルフィラー、又はポリカーボネートフィラーが使用できる。
【0023】
断熱層5の構造は図1に示すような単層構造でもよいし、図2に示すようにコア層5aの両面にスキン層5bを積層した複層構造であってもよい。この場合、コア層5aは結晶性炭化水素樹脂とこれに非相溶な樹脂とをブレンドしたものから構成してもよいし、結晶性炭化水素樹脂とこれに非相溶な有機若しくは無機系フィラーとをブレンドしたものから構成してもよい。つまり、図2のコア層5aは図1の断熱層5に実質的に相当するものである。また、図3に示したように、スキン層5bはコア層5aのいずれか一方の側のみに設けられてもよい。図3ではコア層5aと支持体シート2との間のみにスキン層5bを設ける形態を示したが、コア層5aと中間層6との間のみにスキン層5bを設けてもよい。断熱層5の形成方法は後述する。
【0024】
中間層6は、断熱層5と画像受容層7との間に介在する全ての層を指す。中間層6は単層構造又は複層構造のいずれでもよい。中間層6には非発泡プラスチックフィルム等のシート状材料を用いてもよい。中間層6の厚さは2〜20μmの範囲が望ましい。20μmを超えると、断熱層5を設けたことによる断熱性やクッション性の向上効果が十分に発揮できないおそれがある。なお、中間層6は必要に応じて設ければよく、これを省略してもよい。
【0025】
中間層6には、隠蔽性や白色性を付与するために、また、熱転写受像シート1全体の質感を調整するために、無機顔料として、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、酸化チタン、酸化亜鉛その他公知の無機顔料や蛍光増白剤を含有させてもよい。それらの配合比は、樹脂固形分比100重量部に対して10〜200重量部が好ましい。10重量部よりも少ないと効果が十分に発揮されず、200重量部を超えると分散安定性に欠け、樹脂の性能が得られないおそれがある。
【0026】
画像受容層7は、染料によって染め易い樹脂を主成分とするワニスに、必要に応じて離型剤等の各種添加剤を加えて構成する。染料によって染め易い樹脂としては、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル等のビニル系樹脂、及びその共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリプチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンやプロビレン等のオレフィンと他のビニル系モノマーとの共重合体、アイオノマー、セルロール誘導体の単体、又は混合物を用いることができる。これらの中でも、ポリエステル系樹脂、及びビニル系樹脂が好ましい。
【0027】
画像受容層7には、画像形成時に熱転写シートとの熱融着を防ぐために離型剤を配合することもできる。離型剤は、シリコーンオイル、リン酸エステル系可塑剤フッ素系化合物を用いることができるが、特にはシリコーンオイルが好ましく用いられる。シリコーンオイルとしては、エポキシ変性、アルキル変性、アミノ変性、フッ素変性、フェニル変性、エポキシ・ポリエーテル変性等の変性シリコーンが好ましく用いられる。中でも、ビニル変性シリコーンオイル及びハイドロジェン変性シリコーンオイルとの反応物がよい。離型剤の添加量は画像受容層7を形成する樹脂に対して0.2〜30重量部が好ましい。
【0028】
画像受容層7はロールコート、バーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート等の一般的なコート方法により形成される。画像受容層の塗布量は0.5〜10g/mが好ましい。また、画像受容層7を熱溶融押出し法にて形成してもよい。
【0029】
次に、本発明の熱転写受像シートの製造方法について説明する。図4に示すように、Tダイ10から断熱層5の原料となる断熱層樹脂5′を押出し(工程(a))、その押出された断熱層樹脂5′を所定温度で延伸装置11にて延伸し断熱層5を形成する(工程(b))。そして、断熱層5の一方の面にコーティングローラ12、13にて中間層6及び画像受容層7を順次グラビア塗工する(工程(c))。次いで、水平方向に搬送される支持体シート2をロール14に巻き掛けて鉛直下方に搬送するとともに、これを断熱層5の他方の面(非塗工面)にドライラミネート法によって貼り付ける(工程(d))。これにより、図1に示した熱転写受像シート1を製造することができる。
【0030】
なお、図2又は図3に示したコア層5aとスキン層5bとを積層して断熱層5を形成する場合には、図5に示すように、Tダイ10からコア層5aの原料となるコア層樹脂5a′と、スキン層5bの原料となるスキン層樹脂5b′とを一体的に押し出して(工程(a′))、これを延伸装置11によって延伸し断熱層5を形成すればよい。以後の工程は図4と同一である。また、図6に示したように、Tダイ10から断熱層5及び画像受容層7のぞれぞれの原料となる断熱層樹脂5′と、画像受容層樹脂7′とを一体的に押し出して(工程(a′′))、これを延伸装置11によって延伸し、その後、断熱層5側に支持体シート2を貼り付けてもよい(工程(d′))。これによれば、中間層6を省略した熱転写受像シート1を形成することができる。なお、図6の方法において、中間層6の原料となる中間層樹脂6′を、断熱層樹脂5′及び画像受容層樹脂7′とともに一体的に押し出してもよい。これによれば、中間層6を備えた熱転写受像シート1を製造することができる。
【実施例】
【0031】
以下に、本発明をその実施例によってさらに具体的に説明する。
【0032】
(実施例1) 下記組成からなる断熱層樹脂を厚み100μmで熱溶融押出しを行い、温度200°Cにて手動式2軸延伸装置を用いて3倍延伸した。この延伸フィルム(断熱層)の一方の面に下記組成からなる中間層及び画像受容層をそれぞれの乾燥時の塗布量が2.0g/m、4.0mとなるようにグラビアコート法にて塗工、乾燥し、次いで延伸フィルムの他方の面(非塗工面)に坪量158g/mのコート紙を含んだ支持体シートをドライラミネート法にて張り合わせることにより実施例1の熱転写受像シートを形成した。なお、以下に示すη’は、温度285°C、周波数960Hzにおける動的粘性率[Pa・s]である。
(1)断熱層樹脂
ポリメチルペンテン樹脂(MX004、三井化学(株)製、η’=8.4)100重量部
ポリエチレン樹脂(ミラソン16P、三井化学(株)製、η’=16.7) 30重量部
(2)中間層
ポリエステル樹脂(バイロン200、東洋紡績(株)製) 10重量部
酸化チタン(TCA−888、トーケムプロダクツ製) 20重量部
メチルエチルケトン/トルエン=1/1 120重量部
(3)画像受容層
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(電気化学工業(株)、#1000A) 100重量部
アミノ変性シリコーン(信越化学工業(株)、X22−3050C) 5重量部
エポキシ変性シリコーン(信越化学工業(株)、X22−3000E) 5重量部
メチルエチルケトン/トルエン=1/1 400重量部
【0033】
(実施例2) 実施例1の断熱層樹脂に代え、下記組成の断熱層樹脂にて断熱層を形成した。これ以外は実施例1と同様にして実施例2の熱転写受像シートを形成した。
・断熱層樹脂
ポリメチルペンテン樹脂(MX004、三井化学(株)製、η’=8.4)100重量部
ポリプロピレン樹脂(F329RA、三井化学(株)製、η’=15.0) 30重量部
【0034】
(実施例3) 実施例1の断熱層樹脂に代え、下記組成の断熱層樹脂にて断熱層を形成した。これ以外は実施例1と同様にして実施例3の熱転写受像シートを形成した。
・断熱層樹脂
ポリメチルペンテン樹脂(MX004、三井化学(株)製、η’=8.4)100重量部
ポリエステル樹脂(RN9300、東洋紡績(株)製、η’=50) 20重量部
【0035】
(実施例4) 実施例1の断熱層樹脂に代え、下記組成の断熱層樹脂にて断熱層を形成した。これ以外は実施例1と同様にして実施例3の熱転写受像シートを形成した。
・断熱層樹脂
ポリメチルペンテン樹脂(MX004、三井化学(株)製、η’=8.4)100重量部
炭酸カルシウム(MSK−PO、丸尾カルシウム(株)製) 20重量部
【0036】
(実施例5) 下記組成のコア層樹脂とスキン層樹脂とを、コア層樹脂の両側にスキン層樹脂が位置するように、かつそれぞれの厚みが15μm/100μm/15μ(スキン層/コア層/スキン層)となるように熱溶融押し出しし、温度200°Cにて手動式2軸延伸装置を用いて3倍に延伸した。この延伸フィルム(断熱層)に実施例1の中間層及び画像受容層をそれぞれ形成し、実施例4の熱転写受像シートを形成した。
(1)コア層樹脂
ポリメチルペンテン樹脂(MX004、三井化学(株)製、η’=8.4)100重量部
ポリエチレン樹脂(ミラソン16P、三井化学(株)製、η’=16.7) 30重量部
(2)スキン層樹脂
ポリメチルペンテン樹脂(MX004、三井化学(株)製) 100重量部
【0037】
(比較例1) 実施例1の断熱層樹脂を下記組成にした以外は実施例1と同様にして比較例1の熱転写受像シートを形成した。
・断熱層樹脂
ポリメチルペンテン樹脂(MX004、三井化学(株)製、η’=8.4)100重量部
【0038】
(比較例2) 実施例1の断熱層樹脂を下記組成にした以外は実施例1と同様にして比較例2の熱転写受像シートを形成した。
・断熱層樹脂
ポリメチルペンテン樹脂(MX004、三井化学(株)製、η’=8.4)100重量部
ポリメチルペンテン樹脂(DX820、三井化学(株)製、η’=8.9) 30重量部
【0039】
(比較例3) 実施例1の断熱層樹脂を下記組成にした以外は実施例1と同様にして比較例3の熱転写受像シートを形成した。
・断熱層樹脂
ポリメチルペンテン樹脂(MX004、三井化学(株)製、η’=8.4)100重量部
オレフィン系樹脂(η’=12) 30重量部
【0040】
(評価方法) 次に、下記の要領で各実施例及び各比較例の熱転写受像シートを評価した。
【0041】
(1)熱転写記録の実施方法
熱転写シートとしてソニー株式会社製の昇華転写プリンタUP−D70A用転写フィルムUPC−740を、その熱転写シートと組み合わせて使用されるべき熱転写受像シートとして、上記実施例1〜4及び比較例1の熱転写受像シートをそれぞれ使用し、熱転写シートの染料層と熱転写受像シートの画像受容層とを互いに対向させて重ね合わせ、熱転写シートをその裏面側からサーマルヘッドで加熱してY、M、C、及び保護層の順に熱転写記録を行った。熱転写記録の条件は次の通りである。
【0042】
〈熱転写記録条件〉 下記の条件にてグラデーション画像を形成した。
・サーマルヘッド:KYT−86−12MFW11(京セラ(株)製)
・発熱体平均抵抗値:4412Ω
・主走査方向印字密度:300dpi
・副走査方向印字密度:300dpi
・印加電力:0.136W/dot
・1ライン周期:6msec.
・印字開始温度:30°C
・プリントサイズ:100mm×150mm
・階調プリント:1ライン周期中に、1ライン周期を256等分したパルス長を持つ分割パルス数を0〜255個の間で変更可能なマルチパルス方式のテストプリンタを用い、各分割パルスのデューティー比を40%に固定し、1ライン周期あたりのパルス数を1ステップでは0個、2ステップでは17個、3ステップでは34個といったように、0から255個まで17個ずつ段階的に増加させて1ステップから16ステップまでの16階調を制御した。
・保護層の転写:上記と同様のテストプリンタを用い、各分割パルスのデューティー比を50%に固定し、1ライン周期あたりのパルス数を210個に固定していわゆるベタプリントを行ってプリント物の全面に保護層を転写した。
【0043】
(2)プリント濃度の評価
上記の要領で形成したプリント物を光学反射濃度計(マクベス社製、マクベスRD−918)を用いて、ビジュアルフィルターにて最大反射濃度を測定した。最大反射濃度1.7以上を○、1.7未満を×としてそれぞれ評価した。評価結果は下記表2の通りであった。
【0044】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の熱転写受像シートの一例を示す図。
【図2】本発明の熱転写受像シートの他の例を示す図。
【図3】スキン層をコア層のいずれか一方の側のみに設けた熱転写シートの一例を示す図。
【図4】本発明による熱転写受像シートの製造方法の一例を示す図。
【図5】本発明による熱転写受像シートの製造方法の他の例を示す図。
【図6】断熱層及び画像受容層のぞれぞれの原料となる断熱層樹脂と画像受容層樹脂7とを一体的に押し出す製造方法の一例を示す図。
【図7】ポリメチルペンテンの温度に対する動的粘性率(η’)の変化を示した図。
【符号の説明】
【0046】
1 熱転写受像シート
2 支持体シート
3 紙
4 裏面層
5 断熱層
6 中間層
7 画像受容層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体シート上に断熱層及び画像受容層が形成された熱転写受像シートにおいて、
前記断熱層が結晶性炭化水素樹脂とこれに非相溶な樹脂とをブレンドしたもの、又は結晶性炭化水素樹脂とこれに非相溶な有機系若しくは無機系フィラーとをブレンドしたものからなることを特徴とする熱転写受像シート。
【請求項2】
前記結晶性炭化水素樹脂の融点が200°C以上であり、比重が1以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱転写受像シート。
【請求項3】
前記結晶性炭化水素樹脂の温度285°C、周波数960Hzにおける動的粘性率(η’)が5〜50Pa・sであることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱転写受像シート。
【請求項4】
前記結晶性炭化水素樹脂がポリメチルペンテンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱転写受像シート。
【請求項5】
前記結晶性炭化水素樹脂に非相溶な樹脂がオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱転写受像シート。
【請求項6】
前記結晶性炭化水素樹脂に非相溶な樹脂の温度285°C、周波数960Hzにおける動的粘性率(η’)は、前記結晶性炭化水素樹脂よりも高く、前記結晶性炭化水素樹脂と前記結晶性炭化水素樹脂に非相溶な樹脂との温度285°C、周波数960Hzにおける動的粘性率(η’)の差が5〜50Pa・sであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱転写受像シート。
【請求項7】
前記フィラーが炭酸カルシウム、ゼオライト、タルク、シリカ、又はアクリルフィラー若しくはポリカーボネートフィラーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱転写受像シート。
【請求項8】
前記断熱層が2層以上の複層構造であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱転写受像シート。
【請求項9】
前記断熱層及び前記画像受容層はそれぞれの原料を熱溶融押出し法にて一体的に押し出された後に延伸されて形成され、前記支持体シートが延伸されて形成された前記断熱層及び前記画像受容層の前記断熱層側に貼り合わされていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱転写受像シート。
【請求項10】
前記断熱層はその原料を熱溶融押出し法にて押し出された後に延伸されて形成され、延伸されて形成された前記断熱層の一方の面に画像画像受容層が形成された後に前記支持体シートが前記断熱層の他方の面に貼り合わされていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱転写受像シート。
【請求項11】
支持体シート、断熱層、及び画像受容層を含む熱転写シートの製造方法において、結晶性炭化水素樹脂とこれに非相溶な樹脂とをブレンドしたもの、又は結晶性炭化水素樹脂とこれに非相溶な有機系若しくは無機系フィラーとをブレンドしたものを原料として熱溶融押出し法にて押し出し、これを延伸して前記断熱層を形成し、前記断熱層の一方の面に前記画像受容層を形成するとともに、他方の面に前記支持体シートを張り合わせることを特徴とする熱転写受像シートの製造方法。
【請求項12】
前記断熱層の原料と、前記画像受容層の原料とを熱溶融押出し法にて一体的に押し出して前記断熱層及び前記画像受容層をそれぞれ形成することを特徴とする請求項11に記載の熱転写受像シートの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−192684(P2006−192684A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6166(P2005−6166)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】