説明

熱電気変換素子、熱電気変換モジュール及びそれらの製造方法

【課題】毒性がなく安全で、製造上の特性が安定的で重量も軽く、低価格な熱電気変換素子、熱電気変換モジュール及びそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】グラファイトにインターカレート物質を加えた作製した熱電気変換素はビスマス・テルル合金の欠点が無く安定に作製でき、軽量で扱いやすい熱電気変換素子およびモジュールを提供できる。さらに外気を遮断する保護カバーを付ければより一層安定化した熱電気変換素子およびモジュールを提供できる。さらにグラファイト粉末にインターカレート物質を加えて高分子の樹脂と複合化した材料を用いて作製した熱電気変換素子は安定化すると同時に熱電気変換効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電気変換素子、熱電気変換モジュール及びそれらの製造方法に関し、特に、温度差のある所を利用して発電を行う熱電気変換素子、熱電気変換モジュール及びそれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の熱電気変換素子はビスマス・テルル合金、ビスマス・アンチモン合金、鉛テルル合金、鉄シリコン合金等からなる半導体素子が使用されてきた。(特許文献1,2、非特許文献1参照)
【0003】
以下、図15、図16により従来の熱電気変換素子について説明する。図15は各合金における温度Tと、その温度と性能指数の積ZTとの関係を示す図である。
性能指数とはZ=α/κρであらわされる熱電材料の性能を表す指数である。ここでZは性能指数、αは熱電能、κは熱伝導率、ρは比抵抗である。0℃〜200℃(273K〜473K)でもっとも性能指数が高いものはビスマス・テルル合金である。このためこの温度付近の熱電気変換素子の材料としてビスマス・テルル合金が用いられている。
【0004】
図16にビスマス・テルル合金を用いた熱電気変換素子の例を示す。9はp型ビスマス・テルル合金、10はn型ビスマス・テルル合金、5は金属板、4は正極電極、3は負極電極である。12は正極電極をつなぐリード線、11は負極電極をつなぐリード線である。
【0005】
図16において上方が高温、下方が低温として熱が上方から下方に流れるとすると9と10の間に起電力を生じる。この素子が多数、直列につながることにより、3と4の間で数ボルトの起電力を得ることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−290030号公報
【特許文献2】特開平8−228027号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「株式会社 リアライズ社 熱電変換工学―基礎と応用―」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上述べた0℃〜200℃の温度領域における従来の熱電気変換素子はn型およびp型のビスマス・テルル合金を用いたpn接合が使用されているが、ビスマス・テルル合金は溶製材料では偏析を起こしやすく特性が安定しないという欠点を有していた。また、柔らかすぎて取り扱いにくい欠点も有していた。さらにビスマス・テルル合金中のテルルには毒性があり安全上の問題があった。
【0009】
粉末による焼結体としてプレスによる製造においては、ビスマス・テルル合金が構造に敏感なためプレスによる歪みにより熱電能が著しく低下するという欠点を有していた。また熱処理条件に敏感で焼結温度の違いによりp型にもn型にも変化するという欠点を有していた。
【0010】
また、ビスマス・テルル合金は比重も大きく素子自体が重いという欠点も有していた。図16のようなモジュールを作製すると重くなってしまい取り扱いにくいという欠点を有していた。
【0011】
こうした特性上の不安定さに加え、テルルの年間産出量は100トン程度で供給に不安があり、高価格であり、最終製品が高価なものになってしまうという欠点を有していた。
【0012】
本発明は、このような従来の熱電気変換素子が有していた問題を解決しようとするもので、毒性がなく安全で、製造上、特性が安定的で重量も軽く、低価格な熱電気変換素子、熱電気変換モジュール及びそれらの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記の目的を達成するために材料をグラファイトにリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ランタン、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウムホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムの一種類または二種類以上を加えて得たグラファイトのインターカレーション化合物をn型とし、グラファイトに銅,鉄,コバルト,ニッケル,マグネシウム,亜鉛,マンガン,パラジウム、白金、水銀、カドミウム、ジルコニウム,ハフニウム、アンチモン,ビスマス,ニオブ,タンタル,モリブデン,ウラニウム、ボロン、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、クロム、ルテニウム、オスミウム、金、イットリウム、ランタン、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウムホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、テルル又はタングステンの塩化物、鉄,水銀、カドミウム、アルミニウム、タリウム、金又はガリウムの臭化物、あるいはホウ素、リン,ヒ素,アンチモン,ニオブ,タンタル,ヨウ素,モリブデン又はタングステンのフッ化物の一種類または二種類以上を加えて得たグラファイトのインターカレーション化合物をp型としてpn接合を作製して熱電気変換素子とそのモジュールを得ることである。
【0014】
また、グラファイトのインターカレーションによるpn接合は大気中の水分と反応して不安定になるものもあるので、大気と遮断するため素子全体を水分から遮断する高分子の樹脂で覆って安定化させることである。
【0015】
さらに熱伝導を抑えることにより本発明の熱電機変換素子の熱電気変換性能を向上させることを狙い、グラファイトのインターカレーション化合物と高分子材料を均一に混合させて複合材料を作製し、これを用いてn型及びp型の熱電素子を作製し、熱電気変換素子とそのモジュールを得ることである。
【発明の効果】
【0016】
これらの熱電気変換素子とそのモジュールの利点は従来のビスマス・テルル合金と比較して偏析を起こすことも無く、柔らかすぎて扱いにくいことも無く、また粉末による焼結体としてとしてはプレスによる歪で特性が大幅に劣化することも無い。熱処理条件にも敏感では無く安定している。さらに、グラファイトの比重は小さいため、ビスマス・テルル合金に比べると軽い。素子を大量に搭載したモジュールを作製しても重くならないという効果を発揮する。また毒性も無く安全である。材料費も低価格である。本発明の熱電気変換素子とそのモジュールは加圧成形して加熱することにより容易に作製できる利点もある。
【0017】
また、熱電気変換素子とそのモジュールを大気と遮断するため高分子の樹脂で覆うことにより安定した特性が得られる。
【0018】
さらにグラファイトのインターカレーション化合物と高分子材料を均一に混合させて複合化させることにより、熱電素子の熱伝導が大幅に小さくなり、性能指数Zが大幅に向上し、熱電気変換素子の高い発電効率が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1におけるp型熱電素子の作製プロセスを示す図である。
【図2】本発明の実施例1におけるn型熱電素子の作製プロセスを示す図である。
【図3】本発明の実施例1における熱電気変換素子の概観を示す図であ
【図4】本発明の実施例5における熱電気変換素子の概観を示す図である。
【図5】本発明の実施例6における熱電気変換モジュールを示す図である。
【図6】本発明の実施例6における熱電気変換モジュールの斜視図、上面図及び底面図である。
【図7】本発明の実施例7における熱電気変換モジュールを示す図である。
【図8】本発明の実施例7における第1層の単位モジュールの上面側及び底面側を示す図である。
【図9】本発明の実施例7における第2層の単位モジュールの上面側及び底面側を示す図である。
【図10】本発明の実施例7における第3層の単位モジュールの上面側及び底面側を示す図である。
【図11】本発明の実施例9におけるp型熱電素子の作製プロセスを示す図である。
【図12】本発明の実施例9のエポキシ樹脂とp型インターカレーション化合物とを混合し複合化させた場合における、当該混合物全体に対するp型インターカレーション化合物の混合体積分率と、熱電気変換素子の電気抵抗との関係を示すグラフである。
【図13】本発明の実施例9におけるn型熱電素子の作製プロセスを示す図である。
【図14】本発明の実施例10におけるポリイミド樹脂とp型インターカレーション化合物をホットプレスを用いて混合し複合化させた場合の、当該混合物全体に対するp型インターカレーション化合物の体積分率と、熱電気変換素子の電気抵抗との関係を示すグラフである。
【図15】従来の各合金における温度Tと、その温度と性能指数の積ZTとの関係を示す図である。
【図16】従来のビスマス・テルル合金を用いた熱電気変換素子の概観図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態(実施例1〜11)を図1〜14に基づいて説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の実施例1におけるp型熱電素子の作製プロセスを示す図である。以下、本図を用いて、本実施例において比較的大気中で安定なp型熱電素子を作製するプロセスを説明する。
まず、グラファイトの粉末と、銅,鉄,コバルト,ニッケル,マグネシウム,亜鉛,マンガン,パラジウム、白金、水銀、カドミウム、ジルコニウム,ハフニウム、アンチモン,ビスマス,ニオブ,タンタル,モリブデン,ウラニウム、ボロン、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、クロム、ルテニウム、オスミウム、金、イットリウム、ランタン、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウムホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、テルル又はタングステンの塩化物、鉄,水銀、カドミウム、アルミニウム、タリウム、金又はガリウムの臭化物、あるいはホウ素、リン,ヒ素,アンチモン,ニオブ,タンタル,ヨウ素,モリブデン又はタングステンのフッ化物の粉末(これらを以後p型のインターカレートと呼ぶ)の一種類または二種類以上とをグラファイト粉末6モルに対しp型のインターカレート1モル以下0.01モル以上の比率になるようにメノウ乳鉢等を利用して混合する。
このとき、グラファイト粉末6モルに対して、p型のインターカレートが1モルより多い場合には、未反応のp型のインターカレートが残り特性上の悪影響が出る。また、0.01モル未満であると添加した効果がなくなる。
この混合過程は水分と酸素が存在しない不活性ガス中で行うことが望ましいが大気中でも可能である。
【0022】
上記のようにして得たグラファイトとp型インターカレートの混合粉末を型に入れ加圧して小さなブロック状に形成する。このブロック状に形成した混合物において、グラファイト粉末の結晶は加圧方向に対してa軸が垂直に、c軸が平行になるように並ぶ。
次に、そのブロック状に形成した混合物を不活性ガス中で200℃から600℃の範囲の温度で加熱し、ブロック状のp型のインターカレーション化合物を作製する。
このインターカレーション化合物は、グラファイト層間化合物(GIC)とも呼ばれる。
【0023】
図2は、本発明の実施例1におけるn型熱電素子の作製プロセスを示す図である。以下、本図を用いて、本実施例において大気中では不安定なn型熱電素子を作製するプロセスを説明する。
まず、グラファイトの粉末とリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ランタン、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウムホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムの粉末(これらを以後n型のインターカレートと呼ぶ)の一種類または二種類以上をグラファイト粉末6モルに対しn型のインターカレート1モル以下0.01モル以上の比率になるようにメノウ乳鉢等を利用して混合する。
このとき、グラファイト粉末6モルに対して、n型のインターカレートが1モルより多い場合には未反応のn型のインターカレートが残り特性上の悪影響が出る。また0.01モル未満であると添加した効果がなくなる。この混合過程は水分と酸素が存在しない不活性ガス中で行う。
【0024】
上記のようにして得たグラファイトとn型インターカレートの混合粉末を型に入れ加圧して小さなブロック状に形成する。このブロック状に形成した混合物において、グラファイト粉末の結晶は加圧方向に対してa軸が垂直に、c軸が平行になるように並ぶ。
次に、そのブロック状に形成した混合物を不活性ガス中で200℃〜600℃の範囲の温度で加熱し、ブロック状のn型のインターカレーション化合物(GIC)を作製する。
【0025】
図3は、本発明の実施例1における熱電気変換素子の概観を示す図であって、1はn型熱電素子、2はp型熱電素子、3は平板状の負極電極板、4は平板状の正極電極板、5はn型熱電素子とp型熱電素子を連結する平板状の金属板である。
n型熱電素子1及びp型熱電素子2は、略直方体形状をなしている。また、負極電極板3、正極電極板4及び金属板5は互いに略平行に設けられる。
【0026】
次に、上述のように作製したブロック状のp型及びn型のインターカレーション化合物(GIC)から小さいp型熱電素子2及びn型熱電素子1を切り出す。
そして、図3に示すように、上記切りだしたp型熱電素子2を負極電極3に接合し、上記切りだしたn型熱電素子1を正極電極4に接合するとともに、これら切りだしたp型熱電素子2及びn型熱電素子1を金属板5に接合して、熱電気変換素子を作製する。
このとき重要なことは、これら切りだした各素子1,2におけるグラファイト粉末の結晶のc軸が電極板3、4及び連結する金属板5の平板面と平行に、かつ上記グラファイト粉末の結晶のa軸が電極板3、4及び連結する金属板5の平板面と垂直になるように熱電気変換素子を作製することにある。
このように作製することにより、熱電気変換素子の内部抵抗を低下させることが可能となる。
【0027】
上述のように作製した熱電気変換素子において、金属板5の上方から熱を与え金属板5と電極板3、4との間に温度差を与えると電極板3と電極板4の間に起電力が現れる。100℃程度の温度差で数ミリボルトの起電力を得ることができる。また熱電素子のc軸が電極板3、4及び連結する金属板5と平行に、a軸が電極板3、4及び連結する金属板5と垂直としたことにより内部抵抗を下げることが可能となる。
【実施例2】
【0028】
次に、本発明の実施例2における熱電気変換素子について説明する。以下、特記しない限り、本実施例における熱電気変換素子は、実施例1における熱電気変換素子と同様の構成、作用及び製造方法であるものとして説明を進める。
【0029】
n型のインターカレーション化合物(GIC)を次のように作製する。
n型インターカレント(リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどの一種類又は二種類以上)とグラファイトをガラス管あるいはステンレス管の中に離して置きガラス管あるいはステンレス管の一端を封じ真空排気する。
十分排気した後に他端を封じる。
グラファイトとn型インターカレントの比率はグラファイト6モルに対しn型のインターカレート1モル以下0.01モル以上とする。
このガラス管あるいはステンレス管を熱してグラファイトに上記n型インターカレントの蒸気を接触させn型インターカレーション化合物(GIC)を作製する。
【0030】
p型のインターカレーション化合物(GIC)を次のように作製する。
グラファイトの粉末と、p型インターカレント(銅,鉄,コバルト,ニッケル,マグネシウム,亜鉛,マンガン,パラジウム、白金、水銀、カドミウム、ジルコニウム,ハフニウム、アンチモン,ビスマス,ニオブ,タンタル,モリブデン,ウラニウム、ボロン、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、クロム、ルテニウム、オスミウム、金、イットリウム、ランタン、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウムホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、テルル又はタングステンの塩化物などの一種類又は二種類以上)をガラス管あるいはステンレス管の中に離して置き、ガラス管あるいはステンレス管の一端を封じ真空排気する。
十分排気した後に他端を封じる。グラファイトとp型インターカレントの比率はグラファイト6モルに対しp型のインターカレート1モル以下0.01モル以上とする。
【0031】
真空排気後に塩素ガスをガラス管あるいはステンレス管の中に導入した方がp型インターカレーション化合物(GIC)が作製が加速される。このガラス管あるいはステンレス管を熱してグラファイトに上記p型インターカレントの蒸気を接触させp型インターカレーション化合物(GIC)を作製する。
【0032】
上記のようにして得たn型、p型の粉末状のインターカレーション化合物(GIC)を型に入れ加圧して、実施例1と同様のブロック状のn型、p型のインターカレーション化合物(GIC)を形成する。このブロック状に形成したインターカレーション化合物(GIC)において、グラファイト粉末の結晶は加圧方向に対してa軸が垂直に、c軸が平行になるように並ぶ。
そして、実施例1と同様に、そのブロック状のn型、p型のインターカレーション化合物(GIC)から、それぞれn型の熱電素子1及びp型の熱電素子2を作製する。
【0033】
上記のようにして作製したn型、p型の熱電素子1,2をpn接合し、実施例1と同様に図3のような熱電気変換素子を作製する。この熱電気変換素子において、電極板3,電極板4間に所定以上の温度差が生じると、電極板3と電極板4の間に起電力が現れる。100℃程度の温度差で数ミリボルトの起電力を得ることができる。
【実施例3】
【0034】
次に、本発明の実施例3における熱電気変換素子について説明する。以下、特記しない限り、本実施例における熱電気変換素子は、実施例1における熱電気変換素子と同様の構成、作用及び製造方法であるものとして説明を進める。
【0035】
n型のインターカレーション化合物(GIC)を次のように作製する。
n型インターカレート(リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ランタン、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウムホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムなどの一種類又は二種類以上)の粉末を液体アンモニア溶液に浸す。
グラファイトをこの溶液に十分浸した後に脱気処理してアンモニアを放出させ200℃〜400℃で過熱して作製する。
【0036】
p型のインターカレーション化合物(GIC)は実施例1又は実施例2の製造方法により作製する。
そして、実施例1と同様に、このようにして得たn型、p型のインターカレーション化合物(GIC)を用いて、n型、p型の熱電素子1,2を作製する。
上記のようにして作製したn型、p型の熱電素子1,2をpn接合し、実施例1と同様に図3のような熱電気変換素子を作製する。この熱電気変換素子において、電極板3,電極板4間に所定以上の温度差が生じると、電極板3と電極板4の間に起電力が現れる。100℃程度の温度差で数ミリボルトの起電力を得ることができる。
【0037】
なお、本実施例において用いた液体アンモニア溶液の代わりにメチルアミン、タフタレンとテトラヒドロフランの混合液、等の溶媒を用いても同様の結果が得られる。
【実施例4】
【0038】
次に、本発明の実施例4における熱電気変換素子について説明する。以下、特記しない限り、本実施例における熱電気変換素子は、実施例1における熱電気変換素子と同様の構成、作用及び製造方法であるものとして説明を進める。
【0039】
n型のインターカレーション化合物(GIC)を次のように作製する。
ペンタン中でリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ランタン、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウムホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムの粉末とコバルトの錯塩Co(C)(PCHを激しく攪拌し分散させる。これにグラファイトを接触させるとn型インターカレーション化合物(GIC)が得られる。
【0040】
p型のインターカレーション化合物(GIC)は実施例1又は実施例2の製造方法により作製する。
そして、実施例1と同様に、このようにして得たn型、p型のインターカレーション化合物(GIC)を用いて、n型、p型の熱電素子1,2を作製する。
上記のようにして作製したn型、p型の熱電素子1,2をpn接合し、実施例1と同様に図3のような熱電気変換素子を作製する。この熱電気変換素子において、電極板3,電極板4間に所定以上の温度差が生じると、電極板3と電極板4の間に起電力が現れる。100℃程度の温度差で数ミリボルトの起電力を得ることができる。
【実施例5】
【0041】
次に、本発明の実施例5における熱電気変換素子について説明する。以下、特記しない限り、本実施例における熱電気変換素子は、実施例1における熱電気変換素子と同様の構成、作用及び製造方法であるものとして説明を進める。
図4は、本発明の実施例5における熱電気変換素子の概観を示す図である。
図に示すように、本実施例における熱電気変換素子は、実施例1における熱電気変換素子に対し、保護カバー6が追加されて構成されている。保護カバー6は、p型熱電素子2及びn型熱電素子1を大気から遮断するためにポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の耐熱性高分子の樹脂で覆っている。
【0042】
熱電素子1,2のインターカレート、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムのアルカリ金属、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属は空気中の水分と反応しやすい。
本実施例によれば、上記高分子の樹脂からなる保護カバー6で大気から熱電気変換素子を遮断しているので、上記グラファイト中の活性な物質の反応を抑制し、熱電素子1,2の劣化を防ぐことが出来る。
【実施例6】
【0043】
次に、本発明の実施例6における熱電気変換素子について説明する。以下、特記しない限り、本実施例における熱電気変換モジュールを構成する熱電気変換素子は、実施例5における熱電気変換素子と同様の構成、作用及び製造方法であるものとして説明を進める。
本実施例では、グラファイトのインターカレートとして塩化銅(II)を選び、グラファイト1モルに対し、塩化銅(II)0.04モルのモル比で混合、加圧、そして400℃の温度で加熱して作製したp型熱電素子と、グラファイトのインターカレートとしてリチウムを選び、グラファイト1モルに対し、リチウム0.04モルのモル比で混合、加圧、そして400℃の温度で加熱して作製したn型熱電素子とでpn接合による熱電気変換モジュールを作製する。
【0044】
図5は、本発明の実施例6における熱電気変換モジュールを示す図である。
また、図6は、本発明の実施例6における熱電気変換モジュールの斜視図、上面図及び底面図である。
図5において、7は高分子材料で作製された熱電素子の格納ケースである。
格納ケース7は、耐熱性高分子樹脂により形成され、隔壁によって縦横に複数の区画に区切られた升目状の容器である。その区切られた各区画内には、n型熱電素子1又はp型熱電素子2が収容される。
図5,6に示すように、n型熱電素子1に隣り合う素子が必ずp型熱電素子2になるように各区画内に配列し、p型熱電素子2に隣り合う素子が必ずn型熱電素子1になるように各区画内に配列する。
金属板5はn型熱電素子1とp型熱電素子2を接続する金属板である。図6に示すように、熱電気変換素子は、全体が直列接続するように表裏両面(上面側・底面側)が金属板5で接続されている。n型熱電素子1とp型熱電素子2の結晶軸aとcの方向は実施例1と同様に配列する。
【0045】
このようにして作製した熱電気変換モジュールのp型熱電素子2及びn型熱電素子1を大気から遮断するために、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の耐熱性高分子からなる保護カバー6で覆い、大気と遮断する。
【0046】
本実施例によれば、熱電気変換素子が軽量なグラファイトで作製されているため、モジュール全体が軽く出来きて、高分子の格納ケース7に本熱電気変換素子を搭載することにより、モジュール全体の強度を保つことができる。
【0047】
このようにして作製した熱電気変換モジュールから100℃の温度差に対して数十ミリボルト程度の起電力が得られる。
【0048】
なお、本例では、p型のインターカレートとして塩化銅(II)を用い、n型のインターカレートとしてリチウムを用いたが、あくまでも一例であって、実施例1であげた他のインターカレートを用いてもよい。
【実施例7】
【0049】
次に、本発明の実施例7における熱電気変換素子について説明する。以下、特記しない限り、本実施例における熱電気変換モジュールは、実施例6における熱電気変換モジュールと同様の構成、作用及び製造方法であるものとして説明を進める。
図7は、本発明の実施例7における熱電気変換モジュールを示す図である。
図に示すように、本実施例における熱電気変換モジュールは、実施例6の熱電気変換モジュールを多段に実装したものである。すなわち、n型熱電素子1とp型熱電素子2が必ず隣接するように(n型熱電素子1の隣りが必ずp型熱電素子2となるように)水平方向に配列して、n型熱電素子とp型熱電素子とを金属板5で交互に直列に接続して単位モジュールを構成するとともに、水平方向に構成した単位モジュールを複数垂直方向に多段に積重して多層化したものである。
本実施例では、図に示すように、一例として、上面側から順に、第1層、第2層、第3層の単位モジュールの3層構造であるとする。
また、本図において、8は絶縁性を有する高分子樹脂で作られた絶縁シートである。本実施例における熱電気変換モジュールを200℃以上で用いる場合は、絶縁シート8の材料としてポリイミド樹脂を使用する。
【0050】
図8〜10は、本発明の実施例7において、上記第1〜第3層の単位モジュールそれぞれの上面側及び底面側を示す図である。
図に示すように、第1〜第3層の単位モジュールは、それぞれ上面側・底面側ともに金属板5によりn型熱電素子とp型熱電素子とを交互に直列に接続されて構成される。
また、図に示すように、第1層の電極13と第2層の電極14が、第2層の電極15と第3層の電極16とがそれぞれ接続されており、熱電気変換モジュール全体でn型熱電素子とp型熱電素子とが交互に直列に接続されている。
【0051】
上記熱電素子1,2を水平方向に配置して構成した各単位モジュール間には、上記絶縁シートを介挿し、上述の電極13〜16を除き、上述のように垂直方向に多段に積重した熱電素子1,2を上下方向(垂直方向)で電気的に絶縁する。
【0052】
さらに、このようにして作製した熱電気変換モジュールを大気から遮断するためにポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の耐熱性高分子樹脂からなる保護カバー6で覆い、大気と遮断する。
【0053】
以上説明したように、本実施例によれば、熱電素子1,2によるpn接合の数を2次元的(平面的)に増加させるばかりでなく、3次元的にも増加させることができる。このように熱電素子1,2を3次元的に増加させて多数直列に実装することにより200℃の温度差に対して電極の間で数ボルトの起電力が得られ、大気と遮断したことにより安定に長期間動作させることが可能となる。
【実施例8】
【0054】
次に、本発明の実施例8における熱電気変換素子について説明する。以下、特記しない限り、本実施例における熱電気変換素子及び熱電気変換モジュールは、実施例6における熱電気変換素子及び熱電気変換モジュールと同様の構成、作用及び製造方法であるものとして説明を進める。
【0055】
実施例6ではn型のインターカレートとしてリチウムを用いていたのに対し、本実施例では、グラファイト1モルに対しリチウムとバリウムを混合して0.04モルとしたものを用いる。
このように、リチウムにバリウムを加えることにより、n型キャリアーが増加し、特性が向上すると共に、水分による劣化をより抑制することができ、耐熱性高分子の樹脂による保護カバー6と合わせてより信頼性が増す。
【0056】
また、実施例6ではp型のインターカレートとして塩化銅(II)を用いていたのに対し、本実施例では、グラファイト1モルに対し塩化銅(II)と塩化鉄(II)を混合して0.04モルとしたものを用いる。
このように、塩化銅(II)に塩化鉄(II)を加えることにより、塩化銅(II)の持つ毒性が希釈され、安全性が増す。熱電気変換モジュールとしては実施例6の場合とほぼ同程度の特性が得られ、安定性の面では更なる改善が見られるようになる。
【実施例9】
【0057】
次に、本発明の実施例9における熱電気変換素子及び熱電気変換モジュールについて説明する。以下、特記しない限り、本実施例における熱電気変換素子は、実施例1における熱電気変換素子と同様の構成、作用及び製造方法であるものとして説明を進める。
図11は、本発明の実施例9におけるp型熱電素子の作製プロセスを示す図である。以下、本図を用いて、本実施例において比較的大気中で安定なp型熱電素子を作製するプロセスを説明する。
まず、グラファイト粉末1モルに対し、塩化銅(II)を0.04モルの比率になるようにメノウ乳鉢等を利用して混合する。この混合過程は水分と酸素が存在しない不活性ガス中で行うことが望ましいが大気中でも可能である。
【0058】
上記のようにして得た混合粉末を不活性ガス中で200℃から600℃の範囲の温度で加熱した後、室温まで冷却してp型インターカレーション化合物(GIC)の粉末を作製する。
【0059】
次に、エポキシ樹脂中に上記p型インターカレーション化合物(GIC)の粉末が略均一に分散するように十分に混合する。
図12は、本発明の実施例9のエポキシ樹脂とp型インターカレーション化合物(GIC)とを混合し複合化させた場合における、当該混合物全体(エポキシ樹脂+p型インターカレーション化合物(GIC))に対するp型インターカレーション化合物(GIC)の混合体積分率と、熱電気変換素子の電気抵抗との関係を示すグラフである。
図に示すように、混合物全体に対してp型インターカレーション化合物(GIC)の体積分率が15%未満では電気抵抗が大きく、40%でほとんど導通する。また、上記混合体積分率が80%を超えると熱伝導度が大きくなり性能指数Zが悪くなる。
このため、混合物全体におけるp型インターカレーション化合物(GIC)の粉末の混合体積分率は、15〜80%が好ましく、特に40%が好ましい。本実施例では、その混合体積分率を40%とする。
【0060】
こうして作製したp型インターカレーション化合物(GIC)とエポキシ樹脂との混合物のブロックからペレットを切り出してp型熱電素子とする。
【0061】
図13は、本発明の実施例9におけるn型熱電素子の作製プロセスを示す図である。以下、本図を用いて、本実施例において比較的大気中で安定なn型熱電素子を作製するプロセスを説明する。
まず、グラファイト粉末1モルに対し、リチウムを0.04モルの比率になるようにメノウ乳鉢等を利用して混合する。この混合過程は水分と酸素が存在しない不活性ガス中で行う。
【0062】
上記のようにして得た混合粉末を不活性ガス中で200℃〜600℃の範囲の温度で加熱した後、室温まで冷却してn型インターカレーション化合物(GIC)の粉末を作製する。
【0063】
次に、エポキシ樹脂中に上記n型インターカレーション化合物(GIC)の粉末が略均一に分散するように十分に混合する。
このときの混合物全体に対するn型インターカレーション化合物(GIC)の粉末の混合体積分率は15〜80%が好ましく、特に30%が好ましい。本実施例では、その混合体積分率を30%とする。この理由はp型インターカレーション化合物(GIC)を複合化させた場合と同様である。
【0064】
こうして作製したn型インターカレーション化合物(GIC)とエポキシ樹脂の複合材料のブロックからペレットを切り出してn型熱電素子とする。
【0065】
このように作製したp型とn型の熱電素子(p型熱電素子2,n型熱電素子1)を用いて、図3に示すような熱電気変換素子を作製した。金属板5の上方から熱を与え金属板5と電極板3、4との間に温度差を与えると電極板3と電極板4の間に起電力が現れる。100℃程度の温度差で数ミリボルトの起電力を得ることができる。
また、上記作製したp型とn型の熱電素子を用いて、図5に示すような熱電気変換素子を直列に接合した熱電気変換モジュールを作製した。熱電気変換素子を50個直列に接合した熱電気変換モジュールでは数ボルトの起電力が得られる。
【実施例10】
【0066】
次に、本発明の実施例10における熱電気変換素子及び熱電気変換モジュールについて説明する。以下、特記しない限り、本実施例における熱電気変換素子は、実施例9における熱電気変換素子と同様の構成、作用及び製造方法であるものとして説明を進める。
【0067】
まず、実施例9と同様に、グラファイト粉末1モルに対し、塩化鉄(II)の粉末を0.02モルの比率になるようにメノウ乳鉢等を利用して混合する。このようにして得た混合粉末を不活性ガス中で200℃から600℃の範囲の温度で加熱した後、室温まで冷却してp型インターカレーション化合物(GIC)の粉末とする。
【0068】
次に、ポリイミド樹脂中に上記p型インターカレーション化合物(GIC)の粉末が略均一に分散するように十分に混合する。
この混合物に対し、ホットプレスを用いて250℃から350℃の温度範囲、3メガパスカルの圧力のもとでペレットに成形し、p型熱電素子を作製する。
【0069】
図14は、本発明の実施例10におけるポリイミド樹脂とp型インターカレーション化合物(GIC)をホットプレスを用いて混合し複合化させた場合の、当該混合物全体(ポリイミド樹脂+p型インターカレーション化合物(GIC))に対するp型インターカレーション化合物(GIC)の体積分率と、熱電気変換素子の電気抵抗との関係を示すグラフである。
図に示すように、混合物全体に対してp型インターカレーション化合物(GIC)の体積分率が15%未満では電気抵抗が大きく、30%でほとんど導通する。つまり、ホットプレスを用いた場合はグラファイトの結晶が一方向に並ぶためp型インターカレーション化合物(GIC)の体積分率が小さくても導通する。また、上記混合体積分率が80%を超えると熱伝導度が大きくなり性能指数Zが悪くなる。
このため、混合物全体におけるp型インターカレーション化合物(GIC)の粉末の混合体積分率は、15〜80%が好ましく、特に30%が好ましい。本実施例では、その混合体積分率を30%とする。
【0070】
次に、グラファイト粉末に対して実施例2で用いた方法によりカリウムによるn型インターカレーション化合物(GIC)を作製する。実施例2におけるグラファイトとカリウムの加熱温度を300℃にし、カリウムが飽和したn型インターカレーション化合物(GIC)の粉末を作製する。
【0071】
次に、ポリイミド樹脂中に上記n型インターカレーション化合物(GIC)の粉末が略均一に分散するように十分に混合する。
このときの混合物全体に対するn型インターカレーション化合物(GIC)の粉末の混合体積分率は、15〜80%が好ましく、特に30%が好ましい。本実施例では、その混合体積分率を30%とした。この混合物に対し、ホットプレスを用いて250℃から350℃の温度範囲、3メガパスカルの圧力のもとでペレットに成形し、n型熱電素子を作製する。これらのプロセスも不活性ガス中で行う。
【0072】
ホットプレスで加圧成形するプロセスにおいて、p型及びn型熱電素子内のグラファイト粉末の結晶は、加圧方向に対してa軸が垂直に、c軸が平行になるように並ぶ。
これらp型及びn型熱電素子(p型熱電素子2、n型熱電素子1)を用いて、図3に示すような熱電気変換素子を作製する場合、これら各素子1,2におけるグラファイト粉末の結晶のc軸が電極板3、4及び連結する金属板5の平板面と平行に、かつ上記グラファイト粉末の結晶のa軸が電極板3、4及び連結する金属板5の平板面と垂直になるように熱電気変換素子を作製することにある。
このように作製することにより、熱電気変換素子の内部抵抗を低下させることが可能となる。グラファイトの混合体積分率が小さくても導通する。
【0073】
上記のようにして作製した図3に示すような熱電気変換素子は、100℃程度の温度差で数十ミリボルトの起電力を得ることができる。また図5に見られるようなpn接合を直列にしたモジュールで、50個直列に繋いだモジュールでは数ボルトの起電力が得られる。
【実施例11】
【0074】
次に、本発明の実施例11における熱電気変換素子について説明する。以下、特記しない限り、本実施例における熱電気変換素子は、実施例1における熱電気変換素子と同様の構成、作用及び製造方法であるものとして説明を進める。
【0075】
まず、グラファイト1モルに対し、リチウムとバリウムを合わせて0.02モル加え、メノウ乳鉢等を利用して混合して、n型インターカレーション化合物(GIC)の粉末とする。
そして、このn型インターカレーション化合物(GIC)の粉末を、熱硬化性樹脂、例えばフェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂に対し体積比35%で混合し、金型に入れて、加熱、加圧して成形し、n型熱電素子のペレットを作製する。
この作製したn型熱電素子は、リチウムだけでなくバリウムを加えているので、n型キャリアーが増加し、特性が向上する。
【0076】
また、グラファイト1モルに対し、塩化銅(II)と塩化鉄(II)を混合したものを0.04モル加え、メノウ乳鉢等を利用して混合して、p型インターカレーション化合物(GIC)の粉末とする。
そして、このp型インターカレーション化合物(GIC)の粉末を、熱硬化性樹脂、例えばフェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂に対し体積比40%で混合し、金型に入れて、加熱、加圧して成形し、p型熱電素子のペレットを作製する。
この作製したp型熱電素子は、塩化銅(II)だけでなく塩化鉄(II)を加えているので、塩化銅(II)の持つ毒性が希釈され、安全性が増す。
【0077】
上記金型に入れて加圧成形するプロセスにおいて、p型及びn型熱電素子内のグラファイト粉末の結晶は、加圧方向に対してa軸が垂直に、c軸が平行になるように並ぶ。
これらp型及びn型熱電素子(p型熱電素子2、n型熱電素子1)を用いて、図3に示すような熱電気変換素子を作製する場合、これら各素子1,2におけるグラファイト粉末の結晶のc軸が電極板3、4及び連結する金属板5の平板面と平行に、かつ上記グラファイト粉末の結晶のa軸が電極板3、4及び連結する金属板5の平板面と垂直になるように熱電気変換素子を作製することにある。
このように作製することにより、熱電気変換素子の内部抵抗を低下させることが可能となる。グラファイトの混合体積分率が小さくても導通する。
【0078】
上記のようにして作製した図3に示すような熱電気変換素子は、100℃程度の温度差で数ミリボルトの起電力を得ることができる。また図5に見られるようなpn接合を直列にしたモジュールで、50個直列に繋いだモジュールでは数ボルトの起電力が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本熱電気変換素子を用いれば熱が発生する所での発電が可能で、例えば温泉地帯の地熱、工場における廃熱、自動車や燃料電池の廃熱、高レベル核廃棄物冷却時に発生する熱などによる発電が可能である。
【0080】
太陽電池は太陽が出ている昼だけしか発電できないが熱電気変換素子による発電は昼夜にかかわらず発電できる。また作製価格が太陽電池より安く、メンテナンスフリーでもあり本格的に大量に使われれば電力の節約に大いに寄与できる。
【0081】
また、熱電気変換素子による発電は太陽電池と同様に電力を得るのに炭酸ガスを発生せず、大気汚染も引き起こさない。
【符号の説明】
【0082】
1 n型熱電素子
2 p型熱電素子
3 (負極)電極板
4 (正極)電極板
5 金属板
6 ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の耐熱性高分子材料による保護カバー
7 ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の耐熱性高分子材料で作製された熱電気変換素子を格納する格納ケース
8 ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の耐熱性高分子で作られた絶縁シート
9 n型ビスマス・テルル合金
10 p型ビスマス・テルル合金
11 負極電極をつなぐリード線
12 正極電極をつなぐリード線
13〜16 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型熱電素子とp型熱電素子とをpn接合して構成される熱電気変換素子であって、
前記n型熱電素子は、1モルのグラファイトに対し、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、イットリウム、ランタン、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウムホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムのn型のドナーとなり得る物質の一種類または二種類以上を0.01モル以上0.17モル以下の比率のn型のインターカレーション化合物を含有して形成され、
前記p型熱電素子は、1モルのグラファイトに対し、銅,鉄,コバルト,ニッケル,マグネシウム,亜鉛,マンガン,パラジウム、白金、水銀、カドミウム、ジルコニウム,ハフニウム、アンチモン,ビスマス,ニオブ,タンタル,モリブデン,ウラニウム、ボロン、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、クロム、ルテニウム、オスミウム、金、イットリウム、ランタン、ネオジウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウムホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、テルル又はタングステンの塩化物、鉄,水銀、カドミウム、アルミニウム、タリウム、金又はガリウムの臭化物、あるいはホウ素、リン,ヒ素,アンチモン,ニオブ,タンタル,ヨウ素,モリブデン又はタングステンのフッ化物のp型のドナーとなり得る物質の一種類または二種類以上を0.01モル以上0.17モル以下の比率のp型のインターカレーション化合物を含有して形成されることを特徴とする熱電気変換素子。
【請求項2】
前記n型及びp型熱電素子を耐熱性高分子樹脂で覆い、大気から遮断した構造を有することを特徴とする請求項1記載の熱電気変換素子。
【請求項3】
前記n型熱電素子は、前記n型のインターカレーション化合物に高分子樹脂を混合した混合物から形成され、
前記n型のインターカレーション化合物は、該高分子樹脂に対し、体積比15〜80%の割合で混合され、
前記p型熱電素子は、前記p型のインターカレーション化合物に高分子樹脂を混合した混合物から形成され、
前記p型のインターカレーション化合物は、該高分子樹脂に対し、体積比15〜80%の割合で混合されることを特徴とする請求項1又は2記載の熱電気変換素子。
【請求項4】
前記n型熱電素子及び前記p型熱電素子は、前記n型及びp型のインターカレーション化合物を高分子樹脂に混合した混合物をホットプレスにより成形されてなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の熱電気変換素子。
【請求項5】
前記n型熱電素子及び前記p型熱電素子は、前記n型及びp型のインターカレーション化合物を熱硬化性樹脂に混合した混合物を金型を用いて加熱及び加圧して成形されてなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の熱電気変換素子。
【請求項6】
耐熱性高分子樹脂により形成され隔壁によって縦横に複数の区画に区切られた升目状の容器の各区画内に、請求項1から5のいずれか1項に記載の熱電気変換素子における前記p型熱電素子及び前記n型熱電素子を、前記p型熱電素子と前記n型熱電素子とが必ず隣接するように配列し、
前記n型熱電素子と前記p型熱電素子とを金属板で交互に直列に接続し、
前記n型熱電素子及び前記p型熱電素子を耐熱性高分子樹脂で覆い、大気と遮断した構造を有することを特徴とする熱電気変換モジュール。
【請求項7】
前記n型熱電素子と前記p型熱電素子が必ず隣接するように水平方向に配列して、前記n型熱電素子と前記p型熱電素子とを金属板で交互に直列に接続して単位モジュールを構成するとともに、前記水平方向に構成した単位モジュールを複数垂直方向に多段に積重して多層化し、
前記各単位モジュール間には、電気絶縁性を有する耐熱性高分子樹脂で作製されたシートを介挿し、
前記n型熱電素子及び前記p型熱電素子を耐熱性高分子樹脂で覆い、大気と遮断した構造を有することを特徴とする請求項6記載の熱電気変換モジュール。
【請求項8】
前記耐熱性高分子樹脂は、ポリイミド樹脂又はエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項6又は7記載の熱電気変換モジュール。
【請求項9】
1モルのグラファイトの粉末に対し、リチウム,ナトリウム,カリウム,セシウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウムのn型のドナーとなり得る物質の一種類または二種類以上を0.01モル以上0.17モル以下の比率となるように加えて得たn型のインターカレーション化合物を成形してn型熱電素子を形成するn型熱電素子形成工程と、
1モルのグラファイトの粉末に対し、銅,鉄,コバルト,ニッケル,マグネシウム,亜鉛,マンガン,ジルコニウム,アンチモン,ビスマス,ニオブ,タンタル,モリブデン,テルル又はタングステンの塩化物、鉄,アルミニウム又はガリウムの臭化物あるいはリン,ヒ素,アンチモン,ニオブ,タンタル,ヨウ素,モリブデン又はタングステンのフッ化物をp型のドナーとなり得る物質の一種類または二種類以上を0.01モル以上0.17モル以下の比率となるように加えて得たp型のインターカレーション化合物を成形してp型熱電素子を形成するp型熱電素子形成工程と、
前記n型熱電素子と前記p型熱電素子とをpn接合して熱電気変換素子を形成する熱電気変換素子形成工程とを有することを特徴とする熱電気変換素子の製造方法。
【請求項10】
前記pn接合したn型及びp型熱電素子を耐熱性高分子樹脂で覆って大気から遮断する耐熱性高分子樹脂被覆工程をさらに有することを特徴とする請求項9記載の熱電気変換素子の製造方法。
【請求項11】
前記n型熱電素子形成工程は、高分子樹脂に対し、体積比15〜80%の割合で前記n型のインターカレーション化合物を混合した混合物から前記n型熱電素子を形成し、
前記p型熱電素子形成工程は、高分子樹脂に対し、体積比15〜80%の割合で前記p型のインターカレーション化合物を混合した混合物から前記p型熱電素子を形成することを特徴とする請求項9又は10記載の熱電気変換素子の製造方法。
【請求項12】
前記n型熱電素子形成工程は、前記n型のインターカレーション化合物を高分子樹脂に混合した混合物をホットプレスにより成形して前記n型熱電素子を形成し、
前記p型熱電素子形成工程は、前記p型のインターカレーション化合物を高分子樹脂に混合した混合物をホットプレスにより成形して前記p型熱電素子を形成することを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の熱電気変換素子の製造方法。
【請求項13】
前記n型熱電素子形成工程は、前記n型のインターカレーション化合物を熱硬化性樹脂に混合した混合物を金型を用いて加熱及び加圧して成形して前記n型熱電素子を形成し、
前記p型熱電素子形成工程は、前記p型のインターカレーション化合物を熱硬化性樹脂に混合した混合物を金型を用いて加熱及び加圧して成形して前記p型熱電素子を形成することを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の熱電気変換素子の製造方法。
【請求項14】
請求項9から13のいずれか1項に記載の熱電気変換素子の製造方法により製造された熱電気変換素子を用いて熱電気変換モジュールを製造する熱電気変換モジュールの製造方法であって、
耐熱性高分子樹脂により形成され隔壁によって縦横に複数の区画に区切られた升目状の容器の各区画内に、前記n型熱電素子と前記p型熱電素子とを、前記p型熱電素子とp型熱電素子とが必ず隣接するように配列する熱電素子配列工程と、
前記n型熱電素子と前記p型熱電素子とを金属板で交互に直列に接続する熱電素子接続工程と、
前記n型熱電素子及び前記p型熱電素子を耐熱性高分子樹脂で覆って、大気と遮断させる耐熱性高分子樹脂被覆工程とを有することを特徴とする熱電気変換モジュールの製造方法。
【請求項15】
前記熱電素子配列工程は、前記n型熱電素子と前記p型熱電素子とが必ず隣接するように水平方向に配列し、
前記熱電素子接続工程は、前記n型熱電素子と前記p型熱電素子とを金属板で交互に直列に接続して単位モジュールを構成し、
前記水平方向に構成した単位モジュールを複数垂直方向に多段に積重して多層化する多層化工程と、
前記各単位モジュール間に、電気絶縁性を有する耐熱性高分子樹脂で作製されたシートを介挿する絶縁シート介挿工程とを有することを特徴とする請求項14記載の熱電気変換モジュールの製造方法。
【請求項16】
前記耐熱性高分子樹脂は、ポリイミド樹脂又はエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項14又は15記載の熱電気変換モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−65801(P2013−65801A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213069(P2011−213069)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(396008646)ジェイエムシー株式会社 (2)
【Fターム(参考)】