説明

熱音響装置の製造方法

【課題】本発明は、熱音響装置の製造方法に関するものである。
【解決手段】本発明の熱音響装置の製造方法は、第一表面及び該第一表面に対向する第二表面を有する金属基材を提供するステップS11と、前記金属基材にグラフェン構造体を成長させるステップS12と、第一表面及び該第一表面に対向する第二表面を有する非金属基材を提供するステップS13と、前記グラフェン構造体の、前記金属基材に隣接する表面とは反対の表面を前記非金属基材の第一表面に隣接させるステップS14と、前記金属基材の少なくとも一部を除去するステップS15と、前記非金属基材をエッチングして少なくとも一つのスルーホールを形成し、前記グラフェン構造体の一部を該スルーホールに対して暴露させるステップS16と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱音響装置の製造方法に関し、特に、グラフェン構造体を利用した熱音響装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、音響装置は、信号装置及び音波発生器を含む。前記信号装置は、信号を前記音波発生器に伝送する。熱音響装置は、熱音響現象を利用した音響装置の一種である。非特許文献1及び非特許文献2には、導電体に交流電流を流すと熱により音が発生する熱音響装置が掲載されている。前記導電体に交流電流を流すと、熱音響装置に熱が生じ、周辺の媒体へ伝播される。伝播された熱によって生じた熱膨張及び圧力波が原因で、音波を発生させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第2008248235号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第101284662号明細書
【特許文献3】特開2008−297195号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“The Thermophone”,EDWARD C. WEMTE,Vol.XTX,No.4,p.333−345
【非特許文献2】“On Some Thermal Effects of Electric Currents”,William Henry Preece,Proceedings of the Roal Society of London,Vol.30,p.408−411(1879−1881)
【非特許文献3】H.D.Arnold、I.B.Crandall, “The thermophone as a precision source of sound”, Phys. 1917年、第10巻, 第22−38頁、
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献3に、熱音響現象によって製造されたサーモホン(thermophone)が掲載されている。熱音響現象とは、音と熱が関わり合う現象であり、エネルギー変換とエネルギー輸送という2つの側面がある。熱音響装置に信号を転送すると、熱音響装置に熱が生じ、周辺の媒体へ伝播される。伝播された熱によって生じた熱膨張及び圧力波により音波を発生させることができる。ここで、厚さが7×10−5cmの白金片が熱音響部品として利用されている。しかし、厚さが7×10−5cmの白金片に対して、単位面積当たりの熱容量は2×10−4J/cm・Kである。白金片の単位面積当たりの熱容量が非常に高いので、白金片を利用したサーモホンを室外で利用する場合、熱音響周波数及び熱音響効果が低いという課題がある。
【0006】
従って、本発明は、前記課題を解決するための熱音響装置の製造方法を提供する。前記熱音響装置の製造方法で製造した電子装置は、熱音響周波数及び熱音響効果が高くなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱音響装置の製造方法は、第一表面及び該第一表面に対向する第二表面を有する金属基材を提供する第一ステップと、前記金属基材の第一表面にグラフェン構造体を成長させる第二ステップと、第一表面及び該第一表面に対向する第二表面を有する非金属基材を提供する第三ステップと、前記グラフェン構造体の、前記金属基材に隣接する表面とは反対の表面を前記非金属基材の第一表面に隣接させ、前記グラフェン構造体を前記金属基材及び前記非金属基材の間に設置する第四ステップと、前記金属基材の少なくとも一部を除去する第五ステップと、前記非金属基材をエッチングして少なくとも一つのスルーホールを形成し、前記グラフェン構造体の一部を該スルーホールに対して暴露させる第六ステップと、を含む。
【0008】
本発明の熱音響装置の製造方法は、第一表面及び該第一表面に対向する第二表面を有する非金属基材を提供する第一ステップと、少なくとも一つのグラフェンシートからなるグラフェン構造体を提供し、該グラフェン構造体を前記非金属基材の第一表面に形成する第二ステップと、前記非金属基材をエッチングして少なくとも一つのスルーホールを形成し、前記グラフェン構造体の一部を該スルーホールに対して暴露させる第三ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
従来の技術と比べて、本発明の熱音響装置の製造工程において、該熱音響装置の非金属基材をエッチングして少なくとも一つのスルーホールを形成し、前記グラフェン構造体の一部を該スルーホールに対して暴露させるため、前記熱音響装置におけるグラフェン構造体と周辺の空気との接触面積を大きくなり、前記熱音響装置の熱音響効果が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1に係るグラフェン構造体の製造工程のフローチャートである。
【図2】実施例1に係るグラフェン構造体を示す図である。
【図3】実施例1に係るグラフェン−カーボンナノチューブ複合構造体の製造工程における熱圧工程を示す図である。
【図4】実施例1に係る一つの熱音響装置の構造を示す図である。
【図5】実施例1に係るもう一つの熱音響装置の構造を示す図である。
【図6】実施例1に係るドローン構造カーボンナノチューブフィルムの走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】図6中のカーボンナノチューブフィルムのカーボンナノチューブセグメントの構造を示す図である。
【図8】実施例1に係る綿毛構造カーボンナノチューブフィルムの走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】カーボンナノチューブが配向せずに配置されるプレシッド構造カーボンナノチューブフィルムの走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】カーボンナノチューブが配向して配置されるプレシッド構造カーボンナノチューブフィルムの走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】実施例1に係るもう一つの熱音響装置の構造を示す図である。
【図12】本発明の実施例2に係るグラフェン構造体の製造工程のフローチャートである。
【図13】本発明の実施例2に係る帯状電極の製造工程のフローチャートである。
【図14】実施例2に係る熱音響装置の構造を示す図である。
【図15】実施例3に係る熱音響装置の製造工程のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0012】
(実施例1)
図1を参照すると、本実施例の熱音響装置の製造方法は、第一表面102及び該第一表面に対向する第二表面104を有する金属基材100を提供するステップS11と、前記金属基材100の、第一表面102にグラフェン構造体106を成長させるステップS12と、第一表面122及び該第一表面に対向する第二表面124を有する非金属基材120を提供するステップS13と、前記グラフェン構造体106の、前記金属基材100に隣接する表面とは反対の表面を、前記非金属基材120の第一表面122に隣接させ、前記グラフェン構造体106を前記金属基材100及び前記非金属基材120の間に設置するステップS14と、前記金属基材100を除去するステップS15と、前記非金属基材120の第二表面124から該非金属基材120をエッチングして少なくとも一つのスルーホール126を形成し、前記グラフェン構造体106の一部を前記少なくとも一つのスルーホール126に対して暴露させるステップS16と、を含む。
【0013】
前記ステップS11において、前記金属基材100は、一定の厚さを有する。前記金属基材100は、銅、ニッケルなどのような金属薄膜からなる。前記金属基材100の厚さは、100nm〜100μmであり、その寸法は制限せずに、実際の応用に応じて選択することができる。例えば、反応炉の寸法によって、前記金属基材100の寸法を選択する。または、前記金属基材100を巻き、反応炉内に置いて、前記反応炉のスペースの利用率を向上させ、グラフェン構造体106の寸法を増加させる。本実施例において、前記金属基材100は、銅箔からなり、その厚さが、25μmである。
【0014】
前記ステップS12において、化学気相成長法で前記金属基材100の第一表面102にグラフェン構造体106を成長させる。その製造方法は、前記金属基材100を反応室に置いて、前記金属基材100の第一表面102を高温処理するステップaと、前記反応室に炭素源ガスを導入し、前記金属基材100の第一表面102に前記グラフェン構造体106を成長させるステップbと、前記金属基材100を室温まで冷却した後、前記グラフェン構造体106が成長された前記金属基材100を前記反応室から取り出すステップcと、を含む。
【0015】
前記ステップaにおいて、前記反応室は、吸気口及び排気口を有する密封チャンバーである。前記吸気口から水素ガス及びメタンを導入することができる。前記排気口は、空気抽出装置と連通する。前記排気口を介して、前記空気抽出装置は、前記反応室の真空度及び気圧を制御することができる。更に、前記反応室における前記金属基材100の温度を制御するために、前記反応室は、水冷装置を備えることもできる。本実施例において、前記反応室は、石英管である。
【0016】
前記金属基材100の第一表面102を平らにするために、それを高温処理する。これにより、前記グラフェン構造体106の成長に役立つことができる。前記高温処理方法は、前記金属基材100を真空反応室に置くと同時に、前記吸気口から該反応室に流量が2sccm〜35sccmの水素ガスを導入するステップa1と、前記反応室の温度を高めて、前記金属基材100の第一表面102を1時間高温処理するステップa2と、を含む。
【0017】
前記ステップa1において、前記水素ガスの流量は2sccmである。
【0018】
前記ステップa2において、前記反応室の温度は、800℃〜1500℃であり、その気圧は、10−1〜10Paである。本実施例において、前記反応室の気圧が13.3Paであり、その温度が1000℃であり、その昇温時間が40分であり、その恒温時間が、20分である。
【0019】
前記ステップbにおいて、前記反応室に流量が2sccmの水素ガスを継続的に導入するとともに、高温環境下で炭素源ガスを導入することによって、前記金属基材100の第一表面102に炭素原子が堆積して前記グラフェン構造体106が形成される。前記炭素源ガスは、メタン、エタン、エチレンまたはアセチレンである。前記反応室の温度は、800℃〜1500℃であり、その気圧は、10−1〜10Paである。その温度は、1000℃であり、恒温時間は、10〜60分である。本実施例において、前記炭素源ガスは、流量が2sccmのメタンである。前記反応室の気圧が66.5Paであり、その温度が、1000℃であり、その恒温時間が、30分である。
【0020】
前記ステップcにおいて、前記炭素源ガス及び水素ガスの流量が変わらないように、前記反応室に継続的に導入するとともに、前記金属基材100を室温まで冷却する。本実施例において、前記金属基材100の冷却工程において、前記反応室に流量が25sccmのメタン及び流量が2sccmの水素ガスを導入する。前記反応室の気圧は66.5Paで前記金属基材100を1時間冷却した後、前記反応室から取り出し、前記金属基材100の第一表面102に前記グラフェン構造体106が形成される。
【0021】
本実施例において、前記グラフェン構造体106は、一定の面積を有する二次元の一体構造体である。ここで、一体構造体とは、前記グラフェン構造体106は、平面上で連続性を有するものである。前記グラフェン構造体106は、1〜5層のグラフェンシートからなるが、1層のグラフェンシートからなることが好ましい。前記グラフェン構造体106の厚さは、0.34nm〜10nmである。前記グラフェン構造体106は、複数のグラフェンシートからなる場合、前記複数のグラフェンシートは、並列して接続して、大きな面積のグラフェン構造体106を形成し、または、重ね合わせて、積層されたグラフェン構造体106を形成する。図2を参照すると、前記グラフェン構造体106におけるグラフェンシートは、1原子の厚さのsp結合炭素原子のシートであり、炭素原子とその結合からできた蜂の巣のような六角形格子構造をとっている。
【0022】
単層のグラフェンの透光率は、97.7%に達するので、該単層グラフェンからなるグラフェン構造体106は、良好な透光性を有する。前記グラフェン構造体106は、非常に薄いので、その熱容量が小さい。例えば、単層グラフェンの熱容量は、5.57×10−4J/K・molである。前記グラフェン構造体106は、自立構造を有するものである。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記グラフェン構造体106を独立して利用することができる形態のことである。すなわち、前記グラフェン構造体106を対向する両側から支持して、前記グラフェン構造体106の構造を変化させずに、前記グラフェン構造体106を懸架させることができることを意味する。前記グラフェン構造体106の寸法は、1cm以上である。ここで、前記グラフェン構造体106の寸法は、前記グラフェン構造体106の一点から他点までの距離が最大となる時の距離である。前記グラフェン構造体106の正投影の面積は、1cm以上である。前記グラフェン構造体106の寸法は、実際の応用に応じて選択する。本実施例において、前記グラフェン構造体106は、単層のグラフェンからなり、その形状は、辺長が4cmの正方形である。
【0023】
前記ステップS13において、前記非金属基材120の形状、寸法及び厚さは制限されない。その第一表面122と第二表面124とは、対向して設置されている。前記第一表面122及び第二表面124は、平面状又は湾曲面状であることができる。前記非金属基材120の材料は、一定の強度を有する硬質材料又は柔軟性材料である。詳しくは、その材料は、ガラス、セラミックス、石英、ダイヤモンド、プラスチック、樹脂及び木材である。本実施例において、前記非金属基材120が、長方体のシリコン片であり、その厚さが12.5μm〜50μmであるが、25μmであることが好ましい。本実施例において、前記非金属基材120の前記第一表面122及び第二表面124は、辺長が4cmの正方形である。
【0024】
前記グラフェン構造体106の、前記金属基材100に隣接する表面とは反対の表面を前記非金属基材120の第一表面122に隣接させて、それらに機械力を加える、又は、前記金属基材100の第一表面102に形成されたグラフェン構造体106及び前記非金属基材120の第一表面122の間に高分子材料層が設置され、前記グラフェン構造体106と、前記非金属基材120と、を緊密に結合させることができる。
【0025】
前記金属基材100の第一表面102に形成されたグラフェン構造体106及び非金属基材120の間に高分子材料層が設置され、該グラフェン構造体106と、前記非金属基材120と、を緊密に結合させる。その方法は、前記非金属基材120の第一表面122に高分子材料層(図示せず)を被覆するステップa11と、前記金属基材100の第一表面102に形成されたグラフェン構造体106を、前記高分子材料層の、前記非金属基材120の第一表面122に隣接する表面とは反対の表面に設置し、前記金属基材100の第二表面104に圧力を印加し、前記金属基材100の一つの表面102に設置されたグラフェン構造体106と、前記非金属基材120の第一表面122と、を緊密に結合させるステップa12と、を含む。
【0026】
前記ステップa12において、前記高分子材料層が固化しない形態で、前記金属基材100の第一表面102に形成されたグラフェン構造体106を、前記高分子材料層の、前記非金属基材120の第一表面122に隣接する表面とは反対の表面に設置する。これにより、前記非金属基材120と、前記グラフェン構造体106との接着性を高めることができる。
【0027】
前記高分子材料層は、溶融状態の高分子材料又は高分子材料溶液からなる。前記高分子材料溶液は、高分子材料を揮発性有機溶液に溶解して形成される。前記溶融状態の高分子材料又は高分子材料溶液は一定の接着性を有し、好ましくは、その接着性が1Pa・s以上である。常温で前記高分子材料は一定の透明度を有する固体である。前記揮発性有機溶液は、アルコール、メタノール、アセトン、ジクロロエタン、クロロホルムの一種又は多種である。前記高分子材料は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、テレフタレート、スチレン−シクロブテン又は環状オレフィンポリマーなどの材料である。本実施例において、前記高分子材料は、ポリメチルメタクリレートである。
【0028】
熱圧法又は冷圧法の方法によって、機械力を加えることにより、前記金属基材100の第一表面102に形成されたグラフェン構造体106と、前記非金属基材120の第一表面122と、を緊密に結合させることができる。本実施例において、熱圧法を採用する。図3を参照すると、該熱圧法は、前記非金属基材120の第一表面122を前記金属基材100の第一表面102に形成されたグラフェン構造体106に被覆して、金属基材−グラフェン構造体−非金属基材複合構造体130を形成し、金属基材−グラフェン−非金属基材複合構造体130を、ローラー42を有する熱圧装置40の中に置くステップb1と、前記ローラー42を加熱するステップb2と、金属基材−グラフェン−非金属基材複合構造体130を、均一な速度で前記加熱されたローラー42から通過させると同時に、該ローラー42に所定の圧力を印加して、該金属基材100の第一表面102に形成されたグラフェン構造体106及び前記非金属基材120の第一表面122を緊密に結合させるステップb3と、を含む。
【0029】
前記ステップb1において、前記グラフェン構造体106と、前記金属基材100の第一表面102と、を同時に接触させる。前記熱圧装置40は、加圧装置(図示せず)と、加熱装置(図示せず)と、を含む。本実施例において、前記熱圧装置40は、熱圧機またはシールプレス機であり、前記ローラー42は、金属からなる。
【0030】
前記ステップb2において、前記熱圧装置40の加熱装置で前記金属ローラー42を加熱する。前記ローラー42の温度及び圧力は、実際の応用に応じて選択することができる。本実施例において、前記熱圧装置40によって、前記ローラー42の加熱温度が110℃〜120℃であり、その圧力が49Pa〜196Paである。
【0031】
本実施例において、前記ステップb3において、前記金属基材−グラフェン−非金属基材複合構造体130を1ミリメートル/分〜10メートル/分の速度で前記加熱されたローラー42から通過させると同時に、該ローラー42に一定の圧力を印加して、前記金属基材100の第一表面102に形成されたグラフェン構造体106及び前記非金属基材120の第一表面122と、を緊密に結合させる。
【0032】
本実施例において、金属基材−グラフェン−非金属基材複合構造体130を前記加熱されたローラー42に通過させる場合に、前記グラフェン構造体106は、前記金属基材100及び前記非金属基材120の間に設置されるので、前記ローラー42に直接接触せず、該グラフェン構造体106が損傷されない。
【0033】
さらに、前記金属基材100の第一表面102に形成されたグラフェン構造体106及び前記非金属基材120を有機溶液で処理することによって、前記グラフェン構造体106と前記非金属基材120とを結合させる方法は、前記非金属基材120の第一表面122を前記金属基材100の第一表面102に形成されたグラフェン構造体106に被覆して、複合構造体を形成させるステップc1と、有機溶剤で前記複合構造体を浸漬するステップc2と、前記有機溶剤を除去するステップc3と、を含む。
【0034】
前記ステップc2において、ドロッパーで有機溶剤を前記複合構造体の表面に滴下し、該有機溶剤で複合構造体を浸漬させる。又は、全て前記複合構造体を有機溶剤の中に入れて浸漬させる。これにより、前記グラフェン構造体106と、前記非金属基材120の第一表面122と、を緊密に結合させる。
【0035】
前記ステップc2において、前記有機溶液は、アルコール、メタノール、アセトン、ジクロロエタン、クロロホルムの一種又は多種の揮発性有機溶液である。本実施例において、前記揮発性有機溶液は、アルコールである。
【0036】
前記ステップS15において、ドライエッチングまたはウェットエッチングなどのエッチング方法で前記金属基材100を除去する。本実施例において、ウェットエッチングを採用する。該方法は、酸素プラズマで前記金属基材100の第二表面を処理して、前記金属基材100を酸化するステップd1と、前記酸化された金属基材100、前記非金属基材120及びそれらの間に設置された前記グラフェン構造体106を、硝酸鉄溶液に一定時間浸漬するステップd2と、前記非金属基材120の第一表面122に被覆された前記グラフェン構造体106を前記硝酸鉄溶液から取り出すステップd3と、を含む。
【0037】
前記ステップd1において、本実施例の前記金属基材100は、銅箔であり、酸化した後、前記金属基材100が酸化銅となる。
【0038】
前記ステップd2において、金属基材−グラフェン−非金属基材複合構造体130を、硝酸鉄溶液に浸漬する時間は、前記金属基材100の寸法及び前記硝酸鉄溶液の濃度に関係する。前記硝酸鉄溶液は、0.06mol/Lである場合、前記浸漬時間は4分〜15分である。
【0039】
前記ステップd3で得られた前記非金属基材120の第一表面122に被覆された前記グラフェン構造体106を脱イオン水で一定時間浸漬して洗浄する。前記洗浄する時間は、該グラフェン構造体106の寸法及び前記脱イオン水の量に関係する。本実施例において、300mlの脱イオン水で前記グラフェン構造体106を15分浸漬洗浄する。前記グラフェン構造体106を数回繰り返して洗浄することができる。
【0040】
前記ステップS16において、エッチング法で前記非金属基材120の第二表面124から、該非金属基材120をエッチングして少なくとも一つのスルーホール126を形成する。前記スルーホール126の深さは、前記非金属基材120の厚さと同じである。前記スルーホール126の断面形状は制限せずに、円形、正方形、長方形、三角形、多辺形、工字形または他の不規則な形状であることができる。前記非金属基材120が、複数のスルーホール126を含む場合、隣接する二つのスルーホール126の距離は、制限されないが、100μm〜3mmであることが好ましい。本実施例において、前記複数のスルーホール126は、円柱形であり、前記非金属基材120中に均一に分散する。
【0041】
更に、前記グラフェン構造体106の、前記非金属基材120の第一表面122に隣接する表面とは反対の表面に、互いに間隔を有するように配置された少なくとも二つの電極が設置される。前記二つの電極は、それぞれ前記グラフェン構造体106に電気的に接続されている。前記電極は、金属、カーボンナノチューブフィルム、導電性銀ペースト層または他の導電性材料からなる。本実施例において、前記二つの電極は、導電性銀ペースト層であり、スクリーン印刷、パッド印刷またはスプレーなどの方法で形成される。本実施例において、前記導電性銀ペーストを前記グラフェン構造体106の、前記非金属基材120の第一表面122に隣接する表面とは反対の表面に被覆した後、オーブン内に置いて10分〜60分ベークして、該導電性銀ペーストを固化させる。前記ベーク温度は100℃〜120℃である。
【0042】
更に、該グラフェン構造体106と、少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造体110とを結合することができる。その結合方法は、次の(1)〜(3)の種類が挙げられる。
【0043】
(1)図4を参照すると、前記グラフェン構造体106と、少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造体110とを結合した後、前記非金属基材120の第一表面122に被覆し、前記グラフェン構造体106を、前記非金属基材120の第一表面122及び前記カーボンナノチューブ構造体110に隣接させるステップe1と、前記非金属基材120の第二表面124から、該非金属基材120をエッチングするステップe2と、を含む。
【0044】
(2)図5を参照すると、前記グラフェン構造体106と、少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造体110とを結合した後、前記非金属基材120の第一表面122に被覆し、前記カーボンナノチューブ構造体110を、前記非金属基材120の第一表面122及び前記グラフェン構造体106に隣接させるステップf1と、前記非金属基材120の第二表面124から、該非金属基材120をエッチングするステップf2と、を含む。
【0045】
(3)前記非金属基材120の第二表面124から、該非金属基材120をエッチングするステップg1と、前記グラフェン構造体106と、少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造体110とを結合した後、前記非金属基材120の第一表面122に被覆し、前記グラフェン構造体106を、前記非金属基材120の第一表面122及び前記カーボンナノチューブ構造体110に隣接させるまたは前記カーボンナノチューブ構造体110を、前記非金属基材120の第一表面122及び前記グラフェン構造体106に隣接させるステップg2と、を含む。
【0046】
前記カーボンナノチューブ構造体110は、複数のカーボンナノチューブからなり、該複数のカーボンナノチューブが均一に分散されている。各々の前記カーボンナノチューブは分子間力で接続されている。前記カーボンナノチューブ構造体に、前記複数のカーボンナノチューブが配向し又は配向せずに配置されている。前記複数のカーボンナノチューブの配列方式により、前記カーボンナノチューブ構造体は非配向型のカーボンナノチューブ構造体及び配向型のカーボンナノチューブ構造体の二種に分類される。本実施例における非配向型のカーボンナノチューブ構造体では、前記複数のカーボンナノチューブが異なる方向に沿って配置され、又は絡み合っている。配向型のカーボンナノチューブ構造体では、前記複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されている。又は、配向型のカーボンナノチューブ構造体において、カーボンナノチューブ構造体が二つ以上の領域に分割される場合、各々の領域における複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されている。この場合、異なる領域におけるカーボンナノチューブの配列方向は異なる。前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブである。前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである場合、直径は0.5nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブである場合、直径は1nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである場合、直径は1.5nm〜50nmに設定される。前記カーボンナノチューブ構造体の厚さは0.5nm〜100μmに設けられる。前記カーボンナノチューブ構造体に、隣接するカーボンナノチューブは、隙間を有するように並列され、前記複数の微孔が形成される。前記複数の微孔の直径は50μm以下に設定される。
【0047】
前記カーボンナノチューブ構造体は、自立構造の薄膜の形状に形成されている。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記カーボンナノチューブ構造体を独立して利用することができる形態のことである。すなわち、前記カーボンナノチューブ構造体を対向する両側から支持して、前記カーボンナノチューブ構造体の構造を変化させずに、前記カーボンナノチューブ構造体を懸架させることができることを意味する。
【0048】
本発明のカーボンナノチューブ構造体としては、以下の(一)〜(三)のものが挙げられる。
【0049】
(一)ドローン構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、図6に示すように、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム143aを含む。このカーボンナノチューブフィルムはドローン構造カーボンナノチューブフィルム(drawn carbon nanotube film)である。前記カーボンナノチューブフィルム143aは、超配列カーボンナノチューブアレイから引き出して得られたものである。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って、端と端が接続されている。即ち、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、分子間力で長さ方向端部同士が接続された複数のカーボンナノチューブを含む。図6及び図7を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、複数のカーボンナノチューブセグメント143bを含む。前記複数のカーボンナノチューブセグメント143bは、長さ方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメント143bは、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ145を含む。単一の前記カーボンナノチューブセグメント143bにおいて、前記複数のカーボンナノチューブ145の長さが同じである。前記カーボンナノチューブフィルム143aを有機溶剤に浸漬させることにより、前記カーボンナノチューブフィルム143aの靭性及び機械強度を高めることができる。有機溶剤に浸漬された前記カーボンナノチューブフィルムの単位面積当たりの熱容量が低くなる。前記カーボンナノチューブフィルム143aの幅は100μm〜10cmに設けられ、厚さは0.5nm〜100μmに設けられる。
【0050】
前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、前記超配列カーボンナノチューブアレイを提供するステップS11と、ピンセットなどの工具を利用して前記カーボンナノチューブアレイから、少なくとも、一枚のカーボンナノチューブフィルムを引き伸ばすステップS12と、を含む。詳しい説明は特許文献1に掲載されている。
【0051】
前記カーボンナノチューブ構造体は、積層された複数の前記カーボンナノチューブフィルムを含むことができる。この場合、隣接する前記カーボンナノチューブフィルムは、分子間力で結合されている。隣接する前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、それぞれ0°〜90°の角度で交差している。隣接する前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが0°以上の角度で交差する場合、前記カーボンナノチューブ構造体に複数の微孔が形成される。又は、前記複数のカーボンナノチューブフィルムは、隙間なく並列されることもできる。
【0052】
(二)綿毛構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含む。このカーボンナノチューブフィルムは綿毛構造カーボンナノチューブフィルム(flocculated carbon nanotube film)である。図8を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブは、絡み合い、等方的に配列されている。前記カーボンナノチューブ構造体においては、前記複数のカーボンナノチューブが均一に分布されている。複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されている。単一の前記カーボンナノチューブの長さは、100nm以上であり、100nm〜10cmであることが好ましい。前記カーボンナノチューブ構造体は、自立構造の薄膜の形状に形成されている。前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で接近して、相互に絡み合って、カーボンナノチューブネット状に形成されている。前記複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されて、多くの微小な穴が形成されている。ここで、単一の前記微小な穴の直径が10μm以下になる。前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブは、相互に絡み合って配置されるので、該カーボンナノチューブ構造体は柔軟性に優れ、任意の形状に湾曲して形成させることができる。用途に応じて、前記カーボンナノチューブ構造体の長さ及び幅を調整することができる。前記カーボンナノチューブ構造体の厚さは、1μm〜1mmである。
【0053】
前記綿毛構造カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、カーボンナノチューブ原料(綿毛構造カーボンナノチューブフィルムの素になるカーボンナノチューブ)を提供するステップS11と、前記カーボンナノチューブ原料を溶剤に浸漬し、該カーボンナノチューブ原料を処理して、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を形成するステップS12と、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶液をろ過して、最終的な綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を取り出すステップS13と、を含む。詳しい説明は、特許文献2に掲載されている。
【0054】
(三)プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含む。このカーボンナノチューブフィルムは、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム(pressed carbon nanotube film)である。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブは、等方的に配列されているか、所定の方向に沿って配列されているか、または、異なる複数の方向に沿って配列されている。前記カーボンナノチューブフィルムは、押し器具を利用することにより、所定の圧力をかけて前記カーボンナノチューブアレイを押し、該カーボンナノチューブアレイを圧力で倒すことにより形成された、シート状の自立構造を有するものである。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの配列方向は、前記押し器具の形状及び前記カーボンナノチューブアレイを押す方向により決められている。
【0055】
図9を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向せずに配置される。該カーボンナノチューブフィルムは、等方的に配列されている複数のカーボンナノチューブを含む。隣接するカーボンナノチューブが分子間力で相互に引き合い、接続する。該カーボンナノチューブ構造体が平面等方性を有する。該カーボンナノチューブフィルムは、平面を有する押し器具を利用して、カーボンナノチューブアレイが成長された基板に垂直な方向に沿って前記カーボンナノチューブアレイを押すことにより形成される。
【0056】
図10を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向して配列される。該カーボンナノチューブフィルムは、同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含む。ローラー形状を有する押し器具を利用して、同じ方向に沿って前記カーボンナノチューブアレイを同時に押す場合、基本的に同じ方向に配列されるカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。また、ローラー形状を有する押し器具を利用して、異なる方向に沿って、前記カーボンナノチューブアレイを同時に押す場合、前記異なる方向に沿って、選択的な方向に配列されるカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。
【0057】
前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの傾斜の程度は、前記カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブと該カーボンナノチューブフィルムの表面とは、角度αを成し、該角度αは0°以上15°以下である。好ましくは、前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが該カーボンナノチューブフィルムの表面に平行する。前記圧力が大きくなるほど、前記傾斜の程度が大きくなる。前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは、前記カーボンナノチューブアレイの高さ及び該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。即ち、前記カーボンナノチューブアレイの高さが大きくなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が小さくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さが大きくなる。これとは逆に、カーボンナノチューブアレイの高さが小さくなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が大きくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さが小さくなる。前記プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、特許文献3に掲載されている。
【0058】
図11を参照すると、本実施例の熱音響装置の製造方法を利用して製造された熱音響装置10は、非金属基材120及びグラフェン構造体106からなる。前記グラフェン構造体106は、前記非金属基材120の一つの表面に被覆する。前記非金属基材120が、複数の円柱形のスルーホール126を有するので、前記グラフェン構造体106と周辺の空気との接触面積が大きくなり、前記熱音響装置10の熱音響効果が高くなる。且つ前記グラフェン構造体106は、単位面積当たりの熱容量が小さく、比表面積が大きく、熱交換の速度が速いので、音を良好に発生することができる。
【0059】
(実施例2)
図12を参照すると、本実施例の熱音響装置の製造方法は、第一表面202及び該第一表面202に対向する第二表面204を有する金属基材200を提供するステップS21と、化学気相成長法で前記金属基材200の第一表面202にグラフェン構造体206を成長させるステップS22と、第一表面222及び該第一表面222に対向する第二表面224を有する非金属基材220を提供するステップS23と、前記グラフェン構造体206の、前記金属基材200の第一表面202に隣接する表面とは反対の表面を前記非金属基材220の第一表面222に近接させ、前記グラフェン構造体206を前記金属基材200及び前記非金属基材220の間に設置するステップS24と、前記金属基材200の少なくとも一部を除去するステップS25と、前記非金属基材220の第二表面224から、該非金属基材220をエッチングして複数のスルーホール226を形成し、前記グラフェン構造体206の一部を前記複数のスルーホール226に対して暴露させるステップS26と、を含む。実施例1と比べると、本実施例のステップS25において、前記金属基材200の少なくとも一部を除去する点が異なる。前記金属基材200及び前記非金属基材220の材料、形状及び寸法は、実施例1の金属基材100及び非金属基材120と同じである。
【0060】
前記ステップS25において、ドライエッチング方法で前記金属基材200の少なくとも一部を除去することができる。図13を参照すると、ドライエッチング方法で前記金属基材200が複数の帯状電極208になる。前記ドライエッチング方法は、前記金属基材200の第二表面204に複数の帯状の溝230を有する犠牲層228を形成するステップh1と、複数の帯状の溝230に対応する前記金属基材200の部分をエッチングし、前記グラフェン構造体206の一部を暴露させるステップh2と、前記複数の帯状の溝230を含む犠牲層228を、除去するステップh3と、を含む。
【0061】
前記ステップh1において、前記金属基材200の第二表面204に犠牲層228を形成した後、エッチング方法で前記犠牲層228の一部をエッチングして、複数の帯状の溝230を有する犠牲層228を形成することができる。前記犠牲層228は、ポリマーからなる。前記ポリマーは、ポリメタクリル酸メチル、エポキシ、不飽和ポリエステル、シリコンエーテル樹脂などの熱硬化性樹脂である。
【0062】
前記ステップh2において、エッチング方法によって、前記金属基材200から複数の帯状電極208が形成される。前記複数の帯状電極208は、前記グラフェン構造体206に電気的に接続される。
【0063】
前記エッチング方法は、ドライエッチングまたはウェットエッチングである。本実施例において、ドライエッチングを採用する。詳しくは、前記犠牲層228が被覆された金属基材200を誘導結合プラズマシステムに置いて、酸素ガス及び塩素ガスをエッチングガスとして、前記複数の帯状の溝230に対応する前記金属基材200の一部をエッチングすることにより、前記グラフェン構造体206の一部を暴露させる。本実施例において、前記誘導結合プラズマシステムの効率は50ワットである。流量が24sccmの酸素ガス及び流量が24sccmの塩素ガスを前記誘導結合プラズマシステムに導入する。前記誘導結合プラズマシステムの気圧は、2Pa〜10Paである。前記金属基材200の第二表面204を40秒〜55秒間エッチングする。
【0064】
前記金属基材200が、銅箔である場合、ウェットエッチングで該銅箔をエッチングする。詳しくは、前記金属基材200を一定量の濃度が0.06mol/L〜0.25mol/Lの塩化第三鉄溶液中に4分〜15分間浸漬した後、前記複数の帯状の溝230に対応する前記金属基材200の部分は前記犠牲層228で保護されないので、前記塩化第三鉄溶液で除去され、前記グラフェン構造体206の一部を暴露させる。
【0065】
前記ステップh3において、有機溶液で前記犠牲層228を除去する。本実施例において、有機溶液は、アセトンである。
【0066】
図14を参照すると、熱音響装置20は、複数のスルーホール226を有する非金属基材220と、グラフェン構造体206と、複数の帯状電極208と、を含む。前記グラフェン構造体206は、前記非金属基材220の一つの表面に被覆する。前記複数の帯状電極208は、相互に平行して配列されて、前記グラフェン構造体206の、前記非金属基材220に隣接する表面とは反対の表面に設置される。前記複数の帯状電極208は、前記グラフェン構造体206に電気的に接続されている。前記複数の帯状電極208は、前記グラフェン構造体206を保護することができる。
【0067】
(実施例3)
図15を参照すると、本実施例の熱音響装置の製造方法は、第一表面322及び該第一表面に対向する第二表面324を有する非金属基材320を提供するステップS31と、少なくとも一つのグラフェン構造体306を前記非金属基材320の、第一表面322に成形するステップS32と、前記非金属基材320の、第二表面324から該非金属基材320をエッチングして複数のスルーホール326が形成され、該複数のスルーホール326によって、前記グラフェン構造体306の一部を暴露させるステップS33と、を含む。前記非金属基材320の材料、形状及び寸法は、実施例1の非金属基材120と同じである。
【0068】
本実施例と実施例1との異なる点は、本実施例のステップS32において、前記グラフェン構造体306は、LB法、溶液法、機械加工法または機械的剥離法などの方法で製造することができることである。
【0069】
本実施例において、機械加工法で前記グラフェン構造体306を製造する。前記機械加工法は、酸素プラズマで前記非金属基材320の第一表面322を処理して、該第一表面322に酸化層を形成させるステップi1と、高配向性熱分解グラファイトを提供し、該高配向性熱分解グラファイトに対して浄化処理を行った後、前記酸化層の、前記第一表面322に隣接する表面とは反対の表面に、前記高配向性熱分解グラファイトを設置するステップi2と、機械加工法によって、前記グラフェン構造体306が形成されるステップi3と、を含む。
【0070】
前記ステップi3において、挾持具で前記グラフェン構造体306及び非金属基材320を加圧装置に置いて、98Pa〜196Paの圧力5〜10分間を印加した後、圧力の印加を止め、前記高配向性熱分解グラファイトを除去し、前記非金属基材320を取り出して、前記第一表面322に形成された酸化層の、前記非金属基材320に隣接する表面の反対の表面に前記グラフェン構造体306が形成される。
【符号の説明】
【0071】
10、20 熱音響装置
100、200 金属基材
102、202 第一表面
104、204 第二表面
106、206、306 グラフェン構造体
208 帯状電極
110、210 カーボンナノチューブ構造体
120、220、320 非金属基材
122、222、322 第一表面
126、226、326 スルーホール
130 金属基材−グラフェン−非金属基材複合構造体
143a カーボンナノチューブフィルム
143b カーボンナノチューブセグメント
145 カーボンナノチューブ
200 測定試料
228 犠牲層
230 溝
40 熱圧装置
42 金属ローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一表面及び該第一表面に対向する第二表面を有する金属基材を提供するステップ(S11)と、
前記金属基材第一表面にグラフェン構造体を成長させるステップ(S12)と、
第一表面及び該第一表面に対向する第二表面を有する非金属基材を提供するステップ(S13)と、
前記グラフェン構造体の、前記金属基材に隣接する表面とは反対の表面を前記非金属基材の第一表面に隣接させ、前記グラフェン構造体を前記金属基材及び前記非金属基材の間に設置するステップ(S14)と、
前記金属基材の少なくとも一部を除去するステップ(S15)と、
前記非金属基材をエッチングして少なくとも一つのスルーホールを形成し、前記グラフェン構造体の一部を該スルーホールに対して暴露させるステップ(S16)と、
を含むことを特徴とする熱音響装置の製造方法。
【請求項2】
第一表面及び該第一表面に対向する第二表面を有する非金属基材を提供するステップ(S11)と、
少なくとも一つのグラフェン構造体を提供し、該グラフェン構造体を前記非金属基材の第一表面に形成するステップ(S12)と、
前記非金属基材をエッチングして複数のスルーホールを形成し、前記グラフェン構造体の一部を前記複数のスルーホールに対して暴露させるステップ(S13)と、
を含むことを特徴とする熱音響装置の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図2】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−249274(P2012−249274A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190457(P2011−190457)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】