説明

熱風発生装置

【課題】高炉発生ガス(低圧Bガス)に含まる大量の水分を大幅に減少することができ、これによりガスダクトや熱風炉のS分による侵食を低減し、ドレン抜きの必要数を減らし、予熱装置の性能低下を抑制し、補助燃料の必要性を低減することができる熱風発生装置を提供する。
【解決手段】熱風炉12の燃焼用の燃料ガス3に含まれる水分を熱風炉12での燃焼前に除去する水分除去装置18を備える。水分除去装置18は、水分を含むガスを間接冷却する冷却装置18aと、間接冷却後のガス中に存在する水滴を遠心分離するサイクロン18bとからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉用の熱風発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉は、鉄鉱石とコークスを頂部から供給し、下部から加熱空気を供給して内部で鉄鉱石を還元し鉄を製造する装置である。また、熱風発生装置は、高炉に加熱空気を供給する装置である。
従来の高炉及び熱風発生装置は、例えば特許文献1、2に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されているように、従来の高炉及び熱風発生装置では、高炉で発生した高炉発生ガスは炉頂発電装置に供給され、高炉発生ガスの圧力で発電して減圧し、低圧の高炉発生ガスを熱風炉に供給し、熱風炉で高炉発生ガスを低圧空気で燃焼させて蓄熱し、この蓄熱により高炉に供給する圧縮空気を予熱するようになっている。
なお、熱風炉は通常、バッチ式であり、2基以上の燃焼室及び蓄熱室を備え、蓄熱室の蓄熱と放熱(空気の予熱)を交互に繰り返すようになっている。
以下、2基以上の燃焼室及び蓄熱室を備えた熱風炉を、「熱風発生装置」と称する。
【0004】
また特許文献2は、高炉ガスからCOガスを分離回収する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−309067号公報、「高炉ガスの利用方法」
【特許文献2】特開昭63−141622号公報、「高炉ガスの処理方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の高炉及び熱風発生装置において、高炉で発生した圧力0.3〜0.4MPaの高炉発生ガス(以下、「高圧Bガス」と呼ぶ)は炉頂発電装置に供給するために、ダスト除去装置で粗粒子を除去し、ベンチュリスクラバで微粒子を除去している。
しかし、その過程で高炉発生ガス(高圧Bガス)は大量の水分を含み、炉頂発電装置の出口において、圧力10〜20kPa、温度30〜40℃、発熱量700〜800kcal/Nmの低発熱量かつ高水分のガス(以下、「低圧Bガス」と呼ぶ)となっている。
【0007】
この低発熱量かつ高水分の低圧Bガスは、飽和水分を超え、大量の水滴を含み、かつガス中にS分等を含むため、以下の問題点があった。
(1)水分とガス中のS分等が結合して硫酸となるため、低圧Bガスの流路(ガスダクト)や熱風炉内の煉瓦を侵食する。
(2)ガスダクトの侵食を低減するため、ガスダクトの各所に水滴を除去するドレン抜きが必要となる。
(3)低圧Bガス中の水分を含んだダストが燃料ガス予熱装置の伝熱管に付着し堆積しやすいため、燃料ガス予熱装置の伝熱性能が短期間で低下し、頻繁なメンテンスが必要となる。
(4)低圧Bガスの発熱量が低いため、燃焼性能を高めるため、コークス炉ガス(以下「Cガス」)など補助燃料ガスが必要となる。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、高炉発生ガス(低圧Bガス)に含まる大量の水分を大幅に減らすことができ、これによりガスダクトや熱風炉のS分による侵食を低減し、ドレン抜きの必要数を減らし、燃料ガス予熱装置の性能低下を抑制し、補助燃料ガスの必要量を低減することができる熱風発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、高炉から排出された高炉発生ガスを熱風炉で燃焼させて燃焼ガスを発生させ、該燃焼ガスにより高炉送風用空気を加熱する熱風発生装置であって、
前記燃焼用の燃料ガスに含まれる水分を前記燃焼前に除去する水分除去装置を備える、ことを特徴とする熱風発生装置が提供される。
【0010】
本発明の実施形態によれば、前記水分除去装置は、水分を含むガスを間接冷却する冷却装置と、該間接冷却後のガス中に存在する水滴を遠心分離するサイクロンとからなる。
【0011】
前記冷却装置は、冷媒を冷却する冷却器と、該冷媒が内部を流れる冷却伝熱管とを有する。
【0012】
また、燃焼室と蓄熱室をそれぞれ有する複数の熱風炉を備え、高炉送風用空気を前記熱風炉の1つで加熱して加熱空気を高炉に供給し、高炉から排出された高炉発生ガスを別の熱風炉の燃焼室で燃焼させて燃焼ガスを発生させ、該燃焼ガスにより当該熱風炉の蓄熱室を加熱するようになっており、
前記水分除去装置は、高炉から排出され減圧された低圧の高炉発生ガスを熱風炉の燃焼室に供給するガス循環ラインに設けられる。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明の構成によれば、水分除去装置により、燃焼用の燃料ガスに含まれる水分を熱風炉での燃焼前に除去するので、熱風炉で燃焼させる燃料ガスの発熱量を高めることができ、熱風炉のS分による侵食を低減し、コークス炉ガス(Cガス)などの補助燃料ガスの必要性を低減することができる。
【0014】
特に、前記水分除去装置を、高炉から排出され減圧された低圧の高炉発生ガスを熱風炉の燃焼室に供給するガス循環ラインに設置することにより、ガス循環ラインのガスダクトのS分による侵食を低減し、ドレン抜きの必要数を減らすことができる。
また、水分が少ないためガス中のダストが燃料ガス予熱装置の伝熱管に付着し難くなり、燃料ガス予熱装置の性能低下を抑制し、メンテンスの必要性を低減することができる。

【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による熱風発生装置を備えた高炉設備の全体系統図である。
【図2】本発明による水分除去装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明による熱風発生装置を備えた高炉設備の全体系統図である。
この図において、10は本発明による熱風発生装置、20は高炉、22は除塵器(ダスト除去装置)、24は集塵機(ベンチュリスクラバ)、26は炉頂発電装置、26aはバイパス弁、27は減圧弁である。なおこの図において、装置を繋ぐ線が分岐又は合流する部分には、丸印を付している。
【0018】
高炉20は、鉄鉱石とコークスを炉頂部21から供給し、熱風環状管20aから加熱空気9を供給して内部で鉄鉱石を還元して鉄を製造する。高炉送風用の加熱空気9の温度は例えば1200〜1400℃、圧力は0.4〜0.5MPaの高圧である。
【0019】
高炉20で発生した高炉発生ガス1は、例えば0.3〜0.4MPaの高圧であり、除塵器22で除塵され、さらに集塵機24で集塵された後、高圧燃料ガスライン25を介して炉頂発電装置26に供給され、高炉発生ガス1の圧力で発電して減圧される。
炉頂発電装置26の上流側(高圧燃料ガスライン25)の圧力は、例えば0.3〜0.4MPaの高圧であり、炉頂発電装置26の下流側の圧力は、例えば10〜20kPaの低圧である。
【0020】
炉頂発電装置26で減圧された低圧の高炉発生ガス2は、減圧弁27によりさらに減圧され、ガスホルダ(図示せず)内に貯蔵される。減圧弁27の下流側圧力は、例えば約9kPaであり、ガスホルダの圧力は、例えば600〜900mmAqである。ガスホルダ内に貯蔵された低圧の高炉発生ガスは、余剰燃料ガスとして、系外に供給される。
【0021】
この図において、本発明の熱風発生装置10は、燃焼室13aと蓄熱室13bをそれぞれ有する複数(この例では2基)の熱風炉12を備えたバッチ式である。
【0022】
熱風炉12を構成する燃焼室13aと蓄熱室13bは、この例では上部で連通されており、燃焼室13aから蓄熱室13bへ燃焼ガスが自由に流入するようになっている。
また、蓄熱室13bには、図示しない蓄熱媒体(例えば、耐熱レンガ)が充填され、蓄熱室13bを通過する燃焼ガスとの間で直接熱交換し、蓄熱するようになっている。
【0023】
なお、熱風炉12の構造はこの例に限定されず、例えば燃焼室13aと蓄熱室13bが二重管の外側と内側でありその一部で連通する構造(二重管式)、或いは、その他の構造であってもよい。
【0024】
すなわち、本発明の熱風発生装置10は、高炉送風用空気6を熱風炉12の1つで加熱して加熱空気9を高炉20に供給し、高炉20から排出された高炉発生ガス1を別の熱風炉の燃焼室13aで燃焼させて燃焼ガスを発生させ、この燃焼ガスにより当該熱風炉12の蓄熱室13bを直接加熱するようになっている。
【0025】
なお、各熱風炉12には、燃料ガス3、酸化ガス4、燃焼排ガス5、高炉送風用空気6、及び加熱空気9を供給又は排出する開閉弁15a〜15eがそれぞれ設けられ、これらの開閉弁15a〜15eを順次切り替えることにより、蓄熱室13bの蓄熱と放熱(空気の予熱)を交互に繰り返すようになっている。
【0026】
酸化ガス4は、熱風炉の燃焼室13aで燃料ガス3を燃焼させるための燃焼用空気である。また、燃料ガス3は、低圧の高炉発生ガス2に補助燃料ガス8(後述する)が混合したガスである。
【0027】
図1において、本発明の熱風発生装置10は、さらに、燃料ガス予熱装置16、スタック17、及び水分除去装置18を備える。
【0028】
燃料ガス予熱装置16は、減圧弁27の上流側と熱風炉12の燃焼室13aを結ぶガス循環ライン14に設けられたガス−ガスの熱交換器であり、蓄熱室13bを出た高温の燃焼排ガス5で、燃焼室13aで燃焼用の燃料ガス3を予熱し、燃料ガス3の燃焼性を高めるようになっている。
【0029】
この熱交換により温度の下がった燃焼排ガス5は、スタック17に送られ、大気中に放出される。
【0030】
この図において、減圧弁27の上流側と燃料ガス予熱装置16の中間位置で、ガス循環ライン14にコークス炉ガス(Cガス)が補助燃料ガス8として、補助燃料供給弁14aを介して供給されるようになっている。
【0031】
水分除去装置18は、燃焼用の燃料ガス3に含まれる水分を熱風炉12での燃焼前に除去する装置である。
【0032】
この例で、水分除去装置18は、ガス循環ライン14の補助燃料ガス8の供給位置Aより上流側と、ガス循環ライン14の補助燃料ガス8の供給位置Aと燃料ガス予熱装置16との間に設けられている。
供給位置Aより上流側の水分除去装置18は、低圧の高炉発生ガス2に含まれる水分を除去し、間接的に燃焼用の燃料ガス3に含まれる水分を除去する。
また、供給位置Aと燃料ガス予熱装置16との間の水分除去装置18は、燃焼用の燃料ガス3に含まれる水分を直接除去する。
なお、ガス循環ライン14上の水分除去装置18は、いずれか一方を省略してもよい。
【0033】
また、この例では、補助燃料ガス8の供給ラインにも水分除去装置18を設けている。この水分除去装置18は、補助燃料ガス8に含まれる水分を除去し、間接的に燃焼用の燃料ガス3に含まれる水分を除去する。
なお、補助燃料ガス8の水分が少ない場合には、これを省略することができる。
【0034】
図2は、本発明による水分除去装置18の構成図である。
この図において、水分除去装置18は、冷却装置18aとサイクロン18bからなる。
【0035】
冷却装置18aは、冷媒を冷却する冷却器19aと、冷媒が内部を流れる冷却伝熱管19bとを有し、水分を含むガスを冷却伝熱管19bにより間接冷却する。
冷却器19aは、例えば水を蒸発させて冷却する蒸発塔、又はフロン等の冷媒を冷却する冷凍機である。水分を含むガスは、燃料ガス3、低圧の高炉発生ガス2、又は補助燃料ガス8である。
【0036】
サイクロン18bは、冷却装置18aによる間接冷却後のガス中に存在する水滴を遠心分離する。
【0037】
なお、水分除去装置18は、この構成に限定されず、その他の構成、例えば水蒸気のみを透す半透膜を用いて、水分を除去する装置であってもよい。
【0038】
上述した本発明の構成によれば、水分除去装置18により、高炉20から排出された高炉発生ガス2に含まれる水分を熱風炉12での燃焼前に除去するので、高炉発生ガス2の発熱量を高めることができ、熱風炉12のS分による侵食を低減し、コークス炉ガス(Cガス)などの補助燃料ガス8の必要性を低減することができる。
【0039】
特に、水分除去装置18を、熱風炉12の燃焼室13aより上流側のガスダクト(ガス循環ライン14)に設置することにより、ガスダクトのS分による侵食を低減し、ドレン抜きの必要数を減らすことができる。
また、水分が少ないためガス中のダストが燃料ガス予熱装置16の伝熱管に付着し難くなり、燃料ガス予熱装置16の性能低下を抑制し、メンテンスの必要性を低減することができる。
【0040】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0041】
1 高圧の高炉発生ガス、2 低圧の高炉発生ガス、
3 燃料ガス、4 酸化ガス、5 燃焼排ガス、
6 高炉送風用空気、8 補助燃料ガス、9 加熱空気、
10 熱風発生装置、12 熱風炉、
13a 燃焼室、13b 蓄熱室、
14 ガス循環ライン、14a 補助燃料供給弁、
15a〜15e 開閉弁、
16 燃料ガス予熱装置、17 スタック、
18 水分除去装置、18a 冷却装置、18b サイクロン、
19a 冷却器、19b 冷却伝熱管、
20 高炉、20a 熱風環状管、21 炉頂部、
22 除塵器(ダスト除去装置)、24 集塵機(ベンチュリスクラバ)、
25 高圧燃料ガスライン、26 炉頂発電装置、
26a バイパス弁、27 減圧弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉から排出された高炉発生ガスを熱風炉で燃焼させて燃焼ガスを発生させ、該燃焼ガスにより高炉送風用空気を加熱する熱風発生装置であって、
前記燃焼用の燃料ガスに含まれる水分を前記燃焼前に除去する水分除去装置を備える、ことを特徴とする熱風発生装置。
【請求項2】
前記水分除去装置は、水分を含むガスを間接冷却する冷却装置と、該間接冷却後のガス中に存在する水滴を遠心分離するサイクロンとからなる、ことを特徴とする請求項1に記載の熱風発生装置。
【請求項3】
前記冷却装置は、冷媒を冷却する冷却器と、該冷媒が内部を流れる冷却伝熱管とを有する、ことを特徴とする請求項2に記載の熱風発生装置。
【請求項4】
燃焼室と蓄熱室をそれぞれ有する複数の熱風炉を備え、高炉送風用空気を前記熱風炉の1つで加熱して加熱空気を高炉に供給し、高炉から排出された高炉発生ガスを別の熱風炉の燃焼室で燃焼させて燃焼ガスを発生させ、該燃焼ガスにより当該熱風炉の蓄熱室を加熱するようになっており、
前記水分除去装置は、高炉から排出され減圧された低圧の高炉発生ガスを熱風炉の燃焼室に供給するガス循環ラインに設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の熱風発生装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−193403(P2012−193403A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57360(P2011−57360)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】