説明

燃料タンクにおけるタンクミキサーの運転方法

【課題】 一定ではなく、適正な運転時間でタンクミキサーを運転することで、必要以上にタンクミキサーを運転することによる無駄な動力の消費を無くし、以て、ランニングコストの低減を図ることができるタンクミキサーの運転方法を提供する。
【解決手段】 貯蔵される燃料油の撹拌を行うタンクミキサーを備えた燃料タンクにおけるタンクミキサーの運転方法であって、所定のパラメータ情報を入力することによりタンクミキサーの運転時間が求まる相関情報を用意し、該相関情報に基づいてタンクミキサーの運転時間を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原油や重油を貯蔵する燃料タンクにおいて、スラッジ堆積防止等を目的とした設けられたタンクミキサーの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油火力発電所等で使用する重質燃料油を貯蔵する燃料タンクは、燃料油受け入れ時に同伴されるスラッジが燃料タンクの底部に堆積するのを防止すること、燃料油受け入れ時に燃料タンク内の燃料油とよく混合させること、及び燃料タンク内の燃料油の性状均一化を図ることなどを目的として、備え付けのタンクミキサーを運転させて燃料タンク内の燃料油の撹拌を行うようにしている。
【0003】
図5は、燃料タンクの一般的な構造を表す図である。燃料タンク1は、円形状の底板2と、この底板2の外周に立設された側板3と、この側板3に設けられた複数のタンクミキサー(撹拌機)4と、屋根板5とを含んで構成されている。タンクミキサー4は、回転軸41を有するモータ40と、回転軸41に取り付けられた羽根42とで構成され、モータ40を駆動させると羽根42が回転し、回転軸41の軸線方向に燃料油を押し出すようになっている。尚、各タンクミキサー4の燃料油を送り出す方向、つまり回転軸41の方向は、自由に設定可能とされている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−103229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タンクミキサーは、燃料タンクに1〜3台取り付けられており、タンクミキサーの運転時間は、例えば一日8時間という一定時間での運用がなされている。しかしながら、燃料タンク内の燃料油の貯蔵量が少ない場合は、8時間という運転時間は過剰であろうことが推測できるし、また、燃料タンク内の燃料油の貯蔵量が一杯である場合でさえも、8時間という運転時間は過剰であるかもしれない。その辺りの事情がわかっていないところで運用がなされているのが現状である。
【0005】
本発明は、燃料タンク内の貯蔵量(タンクレベル)に関係なく、タンクミキサーの運転時間が一定であったことの問題に鑑みてなされたもので、適正な運転時間でタンクミキサーを運転することで、必要以上にタンクミキサーを運転することによる無駄な動力の消費を無くし、これにより、ランニングコストの低減を図ることができるタンクミキサーの運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、貯蔵される燃料油の撹拌を行うタンクミキサーを備えた燃料タンクにおけるタンクミキサーの運転方法であって、所定のパラメータ情報を入力することによりタンクミキサーの運転時間が求まる相関情報を用意し、該相関情報に基づいてタンクミキサーの運転時間を設定することを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、タンクミキサーの運転時間は可変となっており、燃料タンク内の燃料油の状態、性状等に応じてタンクミキサーの運転時間が設定される。例えば、燃料タンクに貯蔵される燃料油の貯蔵量が多ければ、タンクミキサーの運転時間は長くなり、貯蔵量が少なければ、タンクミキサーの運転時間は短くなる。
【0008】
この場合、前記パラメータ情報は、燃料タンク内の燃料油のタンクレベル情報、容量情報又は重量情報を採用することができる。これらは、燃料油の貯蔵量を把握するためのパラメータ情報である。
【0009】
そして、タンクミキサーの運転中に燃料油の受け入れあるいは払い出しが行われる場合、タンクミキサーの運転時間が再設定されるようにするのがより好ましい。これによって、さらなる最適運転状態を実現することができる。例えば、燃料油の受け入れが行われる場合は貯蔵量が増えるから、タンクミキサーの運転時間が延長されるように再設定が行われる一方、燃料油の払い出しが行われる場合は貯蔵量が減るから、タンクミキサーの運転時間が短縮されるように再設定が行われる。
【発明の効果】
【0010】
以上の如く、本発明は、タンクミキサーの運転時間が可変となっており、燃料タンク内の燃料油の状態、性状等に応じた最適な運転時間でタンクミキサーが運転されるようになっているため、必要以上にタンクミキサーを運転することによる無駄な動力の消費を無くすことができる分、ランニングコストの低減を図ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参酌しつつ説明する。燃料タンクや、タンクミキサーの構成は、何ら従来と変わるところはない。本実施形態で特徴となるのは、タンクミキサーの運転時間を設定する回路にある。
【0012】
図1(イ)は、1万キロリットルの燃料タンク(断面積は約110平方メートル、高さは約15メートル、タンクミキサーは1台)に適用されるタンクミキサー運転時間設定用回路の概要図である。回路要素(タンクレベル計)10で把握されたタンクレベル情報(底から液面までの高さ情報)は、回路要素(折線関数)11に入力され、ここで、タンクレベル情報に基づいてタンクミキサーの運転時間が求められる。
【0013】
図2は、タンクレベル及びタンクミキサー運転時間の相関図であり、回路要素11はこの相関情報を具備している。相関情報は、スラッジ堆積の発生の有無に関する実験を行って求められるか、あるいは理論計算から求められるものであり、タンクミキサーの運転時間を設定する上で重要な要素である。例えば、タンクレベルが6メートルであれば、タンクミキサーの運転時間は約4時間であり、タンクレベルが11メートルであれば、運転時間は約7時間である。尚、運転時間は最高8時間と決めているので、これを越えることのないよう相関情報は規定されるが、これに限定されるものではない。
【0014】
図1(イ)に戻り、求められたタンクミキサー運転時間情報は、回路要素(可変時定数オン・ディレイ・タイマ)12に入力され、ここでは、回路要素(デジタル入力信号)13からのタンクミキサー起動信号を入力して、求められたタンクミキサー運転時間だけタンクミキサー起動信号が出力されるようになっている。そして、タンクミキサー運転時間経過後、タンクミキサー起動信号が停止され、その日におけるタンクミキサーの運転が完了する。
【0015】
次に、図1(ロ)は、2.5万キロリットルの燃料タンク(断面積は約146平方メートル、高さは約20メートル、タンクミキサーは2台)に適用されるタンクミキサー運転時間設定用回路の概要図である。この例においては、通常2台運転であるが、故障で1台しか運転できない場合も適正な運転時間にすることが可能である。そこで、まず、1台のみ運転する場合について説明する。尚、便宜上、1台のみ運転する場合のタンクミキサーをタンクミキサーAと呼び、2台運転する場合に追加されるタンクミキサーをタンクミキサーBと呼ぶことがある。
【0016】
タンクミキサーを1台のみ運転する場合は、基本的には、図1(イ)の例の場合と同様の回路構成である。回路要素(タンクレベル計)15で把握されたタンクレベル情報は、回路要素(折線関数)16に入力され、ここで、タンクレベル情報に基づいてタンクミキサーの運転時間が求められる。
【0017】
図3中の実線は、タンクミキサーを1台のみ運転する場合のタンクレベル及びタンクミキサー運転時間の相関図であり、回路要素16はこの相関情報を具備している。相関情報は、図2に示す相関情報と同様、実験あるいは理論計算から求められるものである。例えば、タンクレベルが2メートルであれば、タンクミキサーの運転時間は約3時間であり、タンクレベルが5メートルであれば、運転時間は約8時間である。尚、運転時間は最高8時間と決めているので、これを越えることのないよう相関情報は規定されているが、これに限定されるものではない。
【0018】
図1(ロ)に戻り、求められたタンクミキサー運転時間情報は、回路要素(可変時定数オン・ディレイ・タイマ)17に入力され、ここでは、回路要素(デジタル入力信号)18からのタンクミキサーA起動信号を入力して、求められたタンクミキサー運転時間だけタンクミキサーA起動信号が出力されるようになっている。そして、タンクミキサー運転時間経過後、タンクミキサーA起動信号が停止され、その日におけるタンクミキサーAの運転が完了する。
【0019】
タンクミキサーを2台両方で運転する場合は、回路要素(タンクレベル計)19で把握されたタンクレベル情報(底から液面までの高さ情報)は、回路要素(折線関数)20に入力され、ここで、タンクレベル情報に基づいてタンクミキサーの運転時間が求められる。
【0020】
図3中の破線は、タンクミキサーを2台両方で運転する場合のタンクレベル及びタンクミキサー運転時間の相関図であり、回路要素20はこの相関情報を具備している。相関情報は、1万キロリットルの燃料タンクの場合、2.5万キロリットルの燃料タンクにおいてタンクミキサーを1台のみで運転する場合と同様、実験あるいは理論計算から求められるものである。例えば、タンクレベルが5メートルであれば、タンクミキサーの運転時間は約3時間であり、タンクレベルが12メートルであれば、運転時間は約7時間である。
【0021】
図1(ロ)に戻り、求められたタンクミキサー運転時間情報は、回路要素(可変時定数オン・ディレイ・タイマ)21に入力され、ここでは、上述した回路要素18からのタンクミキサーA起動信号と、回路要素(デジタル入力信号)22からのタンクミキサーB起動信号とを入力して、求められたタンクミキサー運転時間だけタンクミキサーA起動信号及びタンクミキサーB起動信号が出力されるようになっている。そして、タンクミキサー運転時間経過後、タンクミキサーA起動信号及びタンクミキサーB起動信号が停止され、その日におけるタンクミキサーA及びタンクミキサーBの運転が完了する。
【0022】
このように、本実施形態によれば、タンクレベルに応じてタンクミキサー運転時間が設定されるようになっており、また、その設定は、実験あるいは理論計算から求められた根拠のある相関情報に基づくものであるため、タンクレベルに応じた最小限の運転(最適省エネルギー運転)が可能となり、必要以上にタンクミキサーを運転することによる無駄な動力の消費を無くすことができる分、ランニングコストの低減を図ることができるようになる。
【0023】
尚、以上は、燃料油の受け入れ、払い出しを伴わない場合についての説明であるが、燃料油の受け入れ、払い出しは、タンクミキサーの運転中にも当然に起こり得ることである。そこで、次は、受け入れ、払い出しを伴う場合のタンクミキサー運転時間の設定方法について図4に基づき説明する。
【0024】
まず、最初(タンクミキサー運転開始前、例えば朝)は、上述した手順でタンクミキサーの運転時間が設定され(初期設定:S1)、次いで、タンクミキサーの運転が開始される(S2)。そして、タンクミキサーの運転中、燃料油の受け入れあるいは払い出しがあるか否かがチェックされ(S3)、これがYESの場合、受け入れ後あるいは払い出し後のタンクレベル情報に基づいてタンクミキサー運転時間が再設定される(S4)。
【0025】
一方、回路要素12,17,21は、タンクミキサーの運転時間経過をカウントしており(S5)、そこで、S4にてタンクミキサー運転時間が再設定される時点でのカウント値が取得され(S6)、このカウント値と再設定されたタンクミキサー運転時間とが比較される(S7)。もし、再設定されたタンクミキサー運転時間がカウント値以下であれば(S7がYES)、直ちにタンクミキサーの運転が完了する(S8)一方、再設定されたタンクミキサー運転時間がカウント値よりも大きければ(S7がNO)、再設定されたタンクミキサー運転時間からカウント値を引いた時間(残り運転時間)が求められ(S9)、カウント値が一旦リセットされる(S10)と共に、新たに開始されるカウントのカウント値が残り運転時間となるまでタンクミキサーの運転が継続される。
【0026】
そして、残り運転時間と再カウント値とが比較され(S11)、これがYESの場合、タンクミキサーの運転が完了する(S12)と共に、カウントも完了する(S13)。
【0027】
1万キロリットルの燃料タンクの場合を用いて具体的に説明すると、タンクレベルが5メートルであるために運転時間が約3.5時間に設定され、しかる後、撹拌を1時間行った時点で受け入れが行われてタンクレベルが12mになったとする。その場合の運転時間は約8時間であるが、既に1時間撹拌しているため、残り7時間の運転となる。
【0028】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0029】
上記実施形態においては、タンクレベル情報はタンクレベル計から自動的に取得するようにしているが、これに限定されず、オペレータが入力するようにしてもよい。
【0030】
また、上記実施形態においては、燃料油の受け入れ、払い出しを伴う場合、S6、S9〜S11を行うようにしている、即ち、カウントを一旦リセットし、再カウント値が残り運転時間となれば、タンクミキサーの運転を完了するようにしているが、これに限定されず、例えば、S10にてカウントをリセットすることなく、S4にて再設定されたタンクミキサー運転時間がS5からのカウント値となれば、タンクミキサーの運転を完了するようにしてもよい。
【0031】
また、上記実施形態においては、タンクレベルをパラメータ情報としてタンクミキサー運転時間を求めるようにしているが、タンクミキサーの運転時間に係る相関情報におけるパラメータ情報はタンクレベルに限定されず、例えば、燃料タンク内の燃料油の容量あるいは重量であってもよい。しかも、油種、油温によって燃料油の粘性が異なってくるから、油種及び/又は油温毎にタンクミキサーの運転時間に係る相関情報を用意しておくのも好ましい。
【0032】
また、上記実施形態のタンクミキサー運転時間設定用回路は例示であって、これに限定されるものではない。要は、タンクミキサーの運転時間に係る相関情報に基づいてタンクミキサーの運転時間をソフト回路又はハード回路を使用して(ソフト回路・ハード回路の組み合わせでもよい)設定できる構成であればよい。
【0033】
また、上記実施形態においては、タンクミキサーの運転時間が設定されると、その時間分だけタンクミキサーが連続して運転されるようになっているが、これに限定されるものではなく、断続運転であってもよい。但し、連続運転の方が撹拌効果が高いので、上記実施形態においてはそれを採用している。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(イ)は、1万キロリットルの燃料タンク(タンクミキサーは1台)に適用されるタンクミキサー運転時間設定用回路の概要図、(ロ)は、2.5万キロリットルの燃料タンク(タンクミキサーは2台)に適用されるタンクミキサー運転時間設定用回路の概要図を示す。
【図2】1万キロリットルの燃料タンク(タンクミキサーは1台)におけるタンクレベル情報−タンクミキサー運転時間情報相関図を示す。
【図3】2.5万キロリットルの燃料タンク(タンクミキサーは2台)におけるタンクレベル情報−タンクミキサー運転時間情報相関図であって、実線はタンクミキサーを1台のみ運転する場合、破線はタンクミキサーを2台両方で運転する場合を示す。
【図4】燃料油の受け入れ、払い出しを伴う場合のタンクミキサー運転時間の設定方法に係るフローチャートを示す。
【図5】燃料タンクの概略断面側面図を示す。
【符号の説明】
【0035】
1…燃料タンク、4…タンクミキサー、10,15,19…タンクレベル計、11,16,20…折線関数、12,17,21…可変時定数オン・ディレイ・タイマ、13,18,22…デジタル入力信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵される燃料油の撹拌を行うタンクミキサーを備えた燃料タンクにおけるタンクミキサーの運転方法であって、
所定のパラメータ情報を入力することによりタンクミキサーの運転時間が求まる相関情報を用意し、
該相関情報に基づいてタンクミキサーの運転時間を設定することを特徴とするタンクミキサーの運転方法。
【請求項2】
前記パラメータ情報は、燃料タンク内の燃料油のタンクレベル情報、容量情報又は重量情報である請求項1に記載のタンクミキサーの運転方法。
【請求項3】
タンクミキサーの運転中に燃料油の受け入れあるいは払い出しが行われる場合、タンクミキサーの運転時間が再設定される請求項1又は2に記載のタンクミキサーの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−224978(P2006−224978A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38691(P2005−38691)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】