説明

燃料タンク取付部材の構造

【課題】部品点数を増やさずに強固且つ安定した取り付けをすることができる燃料タンク取付部材の構造を提供する。
【解決手段】タンク取付部材8には、エンジン3上部へ燃料タンク5を取り付ける取付部6を配設すると共に、該取付部6にはその後方に連結部材16を一体に形成し、連結部材16の後端、つまり延設部17の後端にはスリーブ状の支持部18を一体に設ける。そして、支持部18を旋回台1bにおける補強板1e外側の相反する方向から挟み込むようにボルト21によって固定させることで、剛性の高い旋回台1bに対して強固に連結固定させることができるものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕耘機等の走行作業機に係り、詳しくは、機体上に搭載されるエンジンに燃料タンクを取り付ける燃料タンク取付部材の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、その上部に燃料タンクを付設したエンジンが搭載された走行作業機においては、該エンジン上部に配設された鉄製の燃料タンクから鉄製の連結部材が延出されるなどし、後方の操縦ハンドルを取り付ける取付機枠に該連結部材が接続固定されるものが見受けられた。これにより、エンジン及び取付機枠並びに該取付機枠に取り付けられるハンドルの振れが防止されるような防振構造を実現した走行作業機における防振装置が知られている。
【0003】
そして、上記したような防振装置に対し、エンジン上部に介装して燃料タンクを取り付ける取付板を、燃料タンクが載置される遮熱面と、この遮熱面の端部でマフラ設置側の上方で燃料タンクの側面を覆うように起立した仕切面とで形成し、該取付板の端部と上記取付機枠とを連結部材により連結固定した走行作業機の防振装置が提案されている(特許文献1参照)。これにより、エンジンに一体的に固定される取付板を、その適所から連結部材を介して取付機枠と剛性を高く連結固定することができるようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−11558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載された走行作業機の防振装置では、取付板と取付機枠とを連結固定する連結部材が別部材として設けられ、更には該連結部材がブロック状となっているため、部品点数が増え、その部品分の組み付け工数が増えるものとなっていた。
【0006】
また、上記連結部材が肉厚とはされているものの、ブロック状の複数部材にて連結されることから、各部材の連結部分にてきしみが生じ得る構造となっていた。
【0007】
そこで本発明は、部品点数を増やさずに強固且つ安定した取り付けをすることができる燃料タンク取付部材の構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る本発明は(例えば図1ないし図5参照)、機体(2)前部にエンジン(3)及び燃料タンク(5)を配設すると共に機体(2)後部にハンドルフレーム(1b)を配設し、該エンジン(3)からの動力を駆動装置(23)に伝達して走行する走行作業機(1)において、
前記エンジン(3)上部に前記燃料タンク(5)を取り付ける取付部材(6)を配設すると共に、該取付部材(6)にはその後方に連結部材(16)を一体に形成し、
該連結部材(16)の後端にスリーブ状の連結部(18)を一体に設け、該連結部(18)を、前記ハンドルフレーム(1b)に相反する方向から挟み込むようにネジ(21)止め固定させることで連結した、
ことを特徴とする燃料タンク取付部材の構造にある。
【0009】
請求項2に係る本発明は(例えば図1ないし図5参照)、前記取付部材(6)が、前記エンジン(3)からの熱を遮る遮熱板(6a)を有すると共に、該遮熱板(6a)の端部には前記燃料タンク(5)とその側方に配設されるマフラ(7)との間を仕切る仕切板(19)を有した、
請求項1記載の燃料タンク取付部材の構造にある。
【0010】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る本発明によると、走行作業機にあって、エンジン上部に燃料タンクを取り付ける取付部材を配設すると共に、該取付部材にはその後方に連結部材を一体に形成し、該連結部材の後端にスリーブ状の連結部を一体に設け、該連結部を、ハンドルフレームに相反する方向から挟み込むようにネジ止め固定させることで連結するものとした。従来の取付部材に形成する連結部材は、複数部材から形成されていたと共に、該連結部材と取付部材とが別体として構成されていることが一般的であった。そのため、それらの組み付け時における部品数が複数になると共に、組み付け時に要する手数も部品数相応のものとなっていた。しかし、本発明によれば、連結部材自身が予め一体に設けられ、更に該連結部材と取付部材とが一体となった状態で走行作業機の組み付け作業をすることができるので、組み付け時における部品点数の増加を抑制することができる。このことは、作業工数の増加をも防止することとなり、走行作業機における組み付け作業の容易化及び効率化を図ることができるものとなる。
【0012】
また、連結部材全体が一体となるように設けられ、更に該連結部材と取付部材とが一体に形成されることにより、ネジ止め部分等の経年変化し易い箇所が連結部材に含まれなくなるので、ネジの緩み等に起因するきしみや、エンジンの振動に伴うびびり音等の発生を防止することができる。
【0013】
請求項2に係る本発明によると、取付部材が、エンジンからの熱を遮る遮熱板を有すると共に、該遮熱板の端部には燃料タンクとその側方に配設されるマフラとの間を仕切る仕切板を有したので、エンジンからの熱やマフラからの熱が燃料タンクに伝わることを抑え、燃料タンクにおける温度上昇を可及的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に沿って、本実施の形態について説明する。なお、図1は本実施の形態に係る走行作業機1の要部を示す側面図、図2は本実施の形態に係る走行作業機1の要部を示す平面図、図5は本実施の形態に係る走行作業機1を示す側面図である。
【0015】
本実施の形態に示す走行作業機1は、ティラー型の小型管理作業機であり、図1及び図2は走行作業機1における機体フレーム(機体)2の上方、つまり本発明に係る要部周辺を特に示すものである。また、図5は上記要部周辺を含む走行作業機1全体の側面を示している。機体フレーム2上の前部には、後傾されたシリンダ室3aを有するOHV方式のエンジン3が搭載されており、エンジン3後方の機体フレーム2上には、該エンジン3からの駆動力を伝達する不図示の伝動部を覆う伝動ケース1aが配設されている。該伝動ケース1aは、その下部に走行輪(駆動装置)23を有しており、該走行輪23は、エンジン3からの駆動力が上記伝動部を介して伝達されることで回動する。伝動ケース1aの上下中間位置には、作業機取付用のヒッチ25が設けられている。そして、伝動ケース1a上部には、ハンドルフレームの一部をなす旋回台1bが配設されており、該旋回台1bの上部には、当該位置から後方に向けて延出されるハンドル22の基部が、旋回軸1cを中心として水平方向に旋回可能となるように取り付けられる。
【0016】
エンジン3上方には燃料タンク5が配置され、該燃料タンク5は、その上部に供給口5aを有し、下部には送油口5bを有するものとなっている。これらエンジン3及び燃料タンク5の側方には、エンジン3における排気の際の減圧消音を行うマフラ7が配設され、該マフラ7はマフラカバー7aによって覆われている。
【0017】
エンジン3は、エンジンケース3bによって覆われてなり、該エンジンケース3bは、エンジン3から後方に向ってせり上がるシリンダ室3aを有する形状となっている。そして、エンジンケース3bは、上部に比較的平らな面部を有しており、該面部の上方には燃料タンク5がタンク取付部材8が有する取付部(取付部材)6を介して設置される。燃料タンク5は、不図示ではあるが、複数のボルトとその外周に設けられるゴム製の防振部材とを介して取付部6に取り付けて固定される。
【0018】
次いで、前述した取付部6を有するタンク取付部材8について図3及び図4を参照して詳細に説明する。図3は取付部6を有するタンク取付部材8を示す平面図、図4は図3の側面図である。タンク取付部材8は、図3及び図4に示すように、燃料タンク5をエンジン3上部に設置するための取付部6を有し、該取付部6と一体となるように形成される排熱案内板13、仕切板19、及び連結部材16から構成される。
【0019】
取付部6は、燃料タンク5を載置すると共にエンジン3からの熱を遮断する比較的平らな遮熱面(遮熱板)6aを有し、該遮熱面6aの平面視における内方にはエンジン3と燃料タンク5との間で通気させる穴部6bが形成されている。遮熱面6aの前部には、その前端部に沿う形状で上方に立ち上がる立上り板9が設けられ、該立上り板9の上部には後方に向って水平方向に屈曲される屈曲部10が形成されている。また、遮熱面6aの後部における左右幅方向の一側には、徐々に立ち上がる立上り板11aと、これに引き続いてやや急激に立ち上がる立上り板11bとが、取付部6と一体に形成されており、該立上り板11bの上部には後方に向って水平方向に屈曲される屈曲部12が形成されている。上記屈曲部10及び屈曲部12には、ボルト止めするための貫通孔10a,12aがそれぞれに形成されており、これら貫通孔10a,12aによって燃料タンク5をボルト止めする。そして、上記立上り板9と立上り板11aとは、共に立ち上がり分の高さを有することから、固定された際の燃料タンク5とエンジン3との間に間隙を形成することとなる。これにより、該間隙による通気性が確保されると共に、遮熱面6aからだけでなく立上り板9及び立上り板11aからも放熱し得るものとなり、取付部6全体の冷却効果を高めるものとなっている。
【0020】
遮熱面6aの平面視背面側における左右端部には、下方に向う壁状のエンジン取付部15が垂設されている。該エンジン取付部15には複数の貫通孔が設けられており、該貫通孔にてエンジンケース3bとボルト止めされることにより、取付部6を有するタンク取付部材8がエンジン3に固定される。
【0021】
遮熱面6aの側方(走行作業機1における正面視右側)には、水平方向に突出する排熱案内板13が溶接によって一体に設けられ、該排熱案内板13の端部からは傾斜しつつ上方に向う仕切板19が立設されている。仕切板19は、燃料タンク5とマフラカバー7aとの間を仕切る板部材であり、作業中のマフラカバー7aからの熱が燃料タンク5に伝わることを抑えることができると共に、自身が吸収した熱を放熱させる放熱板としての役割を有している。
【0022】
そして、遮熱面6aの後部であって、上記した立上り板11aと隣り合う端部には、後方の旋回台1bと連結される連結部材16が連結されている。この連結部材16は、板状の延設部17と円筒形のスリーブ状の支持部(連結部)18とから構成される。支持部18は、円柱形状に貫通した貫通孔18aが延設部17の延設方向と直交する向きとなるように延設部17の一側端部に溶接によって接合され、延設部17と一体に設けられている。そして、支持部18と延設部17とが一体となった連結部材16は、延設部17の端部にて取付部6と一体となるように溶接して接合されることにより、遮熱面6a端部から後方に向って緩やかに上昇傾斜しながら延設されるものとなっている。
【0023】
このようなタンク取付部材8の組み付け作業を行うにあたっては、初めに取付部6の後部に延設部17と支持部18とが溶接等で接合され、これらからなる連結部材16がタンク取付部材8と予め一体となるように設けられる。そして、この状態から該タンク取付部材8が、エンジン3上部へと取り付けられ、その上方に燃料タンク5が配設されるなどして、連結部材16の支持部18が旋回台1bと連結されるように組み付けが進められることとなる。
【0024】
ここで、従来、上記したような連結部材は複数部材から形成されていたと共に、該連結部材とタンク取付部材とが別体として構成されることが一般的な態様となっていた。そのため、組み付ける部品数が複数になると共に、組み付け時に要する手数も部品数相応のものとなっていた。しかし、本実施の形態におけるタンク取付部材8にあっては、組み付けに要する部品点数の減少及びそれに伴う作業工数の低減を図ることができることから、走行作業機1における組み付け作業の容易化及び効率化を図ることができる。
【0025】
また、連結部材16が延設部17と支持部18とで一体に設けられ、該連結部材16がタンク取付部材8として一体となるように形成されることにより、ネジ止め部分等の経年変化し易い連結箇所を連結部材16内から取り除くことができるようになる。これにより、上記連結箇所にて生じ得るきしみやエンジンの振動に伴うびびり音等の発生を防止することができるようになる。
【0026】
次いで、連結部材16における支持部18と、該支持部18を連結させる旋回台1bとの連結態様について説明する。旋回台1bは、旋回軸1cの台座となる台座部1dと、台座部1dを補強するためにその端部から垂下するように設けられた補強板1eとからなる。該補強板1eは、台座部1dの正面視における左右端部にて互いの面が対向するように配設されることから、台座部1dと補強板1eとによってコの字状をなすと共に、その間に間隙Gを形成する。
【0027】
ここで、連結部材16における支持部18と上記旋回台1bとを連結させる際には、図1に示すように、支持部18の長手方向を間隙Gの幅方向に合わせた姿勢にて該間隙Gの間に差し込む。そして、向い合う補強板1e内の対向する位置に設けられた貫通孔20と、差し込んだ支持部18の貫通孔18aとの位置を合わせ、それぞれ補強板1eの外側から相反する向きでボルト止めをすることにより、支持部18を連結固定する。これにより、支持部18は、通常のボルト止めされた場合と同様、ボルト(ネジ)21の締着力によって補強板1eと強く接着し合うと共に、補強板1eがボルト端部の頭部によって間隙G内方に向って押圧されることから、補強板1eによって両側から挟み込まれるように支持されるものとなる。これにより、支持部18は、通常のボルト止め(例えば1点止め)がされた場合に比して、旋回台1bに対して強固に連結固定できるものとなる。
【0028】
また、支持部18と旋回台1bとが、上記した態様にて連結固定されると、ボルト止めによる締着力の持続性が向上することとなり、旋回台1bでのきしみやガタ等が生じにくくなることでビビリ音の発生等を防ぐことができるようになる。
【0029】
なお、以上で説明した本実施の形態におけるタンク取付部材8では、連結部材16における延設部17の一側端部が溶接によって支持部18と一体に形成される。そして、上記連結部材16は、延設部17の他側端部にて溶接によってタンク取付部材8と一体に形成され、該タンク取付部材8は、支持部18がハンドルフレームである旋回台1bに対してボルト止めされることで連結固定される。これにより、基部が機体フレーム2に固定されることでその上部が振動し易くなるエンジン3が、タンク取付部材8を介して剛性の高い旋回台1bと強固に連結固定されることとなる。このように、エンジン3上部と旋回台1bとが強固に連結されると、エンジン3にて生ずる振動を剛性の高い旋回台1bによって抑えたり、両者にて生じ得る共振を抑制させたりすることができるものとなる。
【0030】
また、連結部材16にあっては、延設部17と支持部18とを溶接によって一体に設けるとして説明したが、これらを一体に設ける際にネジ等の補助的な部材を用いない方法(例えば接着剤により接着するなど)であれば特にそのやり方は限定されるものではない。これについては、連結部材16と取付部6とを一体に設ける場合についても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施の形態に係る走行作業機の要部を示す側面図である。
【図2】本実施の形態に係る走行作業機の要部を示す平面図である。
【図3】取付部を有するタンク取付部材を示す平面図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】本実施の形態に係る走行作業機を示す側面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 走行作業機
1b ハンドルフレーム(旋回台)
2 機体(機体フレーム)
3 エンジン
5 燃料タンク
6 取付部材(取付部)
6a 遮熱板(遮熱面)
7 マフラ
16 連結部材
18 連結部(支持部)
19 仕切板
21 ネジ(ボルト)
23 駆動装置(走行輪)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体前部にエンジン及び燃料タンクを配設すると共に機体後部にハンドルフレームを配設し、該エンジンからの動力を駆動装置に伝達して走行する走行作業機において、
前記エンジン上部に前記燃料タンクを取り付ける取付部材を配設すると共に、該取付部材にはその後方に連結部材を一体に形成し、
該連結部材の後端にスリーブ状の連結部を一体に設け、該連結部を、前記ハンドルフレームに相反する方向から挟み込むようにネジ止め固定させることで連結した、
ことを特徴とする燃料タンク取付部材の構造。
【請求項2】
前記取付部材は、前記エンジンからの熱を遮る遮熱板を有すると共に、該遮熱板の端部には前記燃料タンクとその側方に配設されるマフラとの間を仕切る仕切板を有した、
請求項1記載の燃料タンク取付部材の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−37275(P2008−37275A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214913(P2006−214913)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】